JP3946907B2 - 熱可塑性粉体塗料、その製造方法、塗装方法および塗装品 - Google Patents

熱可塑性粉体塗料、その製造方法、塗装方法および塗装品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱可塑性粉体塗料に関し、さらに詳細には、本発明は、優れた外観特性(平滑性、鮮映性等)、物理特性(耐衝撃性、耐チッピング性、耐擦傷性、密着性等)、および化学特性(耐候性、耐食性、耐溶剤性等)を有する焼き付け後塗膜を発現し得て、貯蔵安定性に優れる熱可塑性粉体塗料に関する。さらに本発明は該塗料の製造法、該塗料を用いた塗装方法および塗装品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、物の塗装には溶剤型の塗料が使用され、自動車などの厳しい品質を要求される分野に使用されるために、種々の要求が満足された塗料が開発され、使用されてきた。近年、塗料の技術分野においてローカル又はグローバルな環境保全、労働安全衛生環境改善、火災や爆発の予防、省資源等、の観点から溶剤型塗料にかわって、粉体型塗料への変更が期待されてきた。
【0003】
そして、歴史的又は社会的要請により、粉体型塗料の高性能化・多様化への期待が大きくなるに従い、粉体型塗料にも、溶剤型塗料に匹敵する高度な塗膜性能(例えば、耐衝撃性、耐酸性雨性等)が要求されるようになってきた。それらの要求性能を満足させるため熱硬化性粉体塗料が開発されている。具体的にはビスフェノールAを主体とするエポキシ樹脂及びポリエステル樹脂粉体塗料等である。
【0004】
一方、熱硬化性粉体塗料に比較して熱可塑性粉体塗料は、耐熱性・耐候性・耐薬品性・貯蔵安定性に優れた特性を有し、多岐分野への応用を目的とし研究開発が進められている。
特開平7−48483には、特定の平均粒子径を有するエチレン・不飽和カルボン酸共重合体又はそのアイオノマーを含有することを特徴とする粉体加工用樹脂組成物が開示されている。しかしながら、熱可塑性粉体塗料は常温での粉砕が難しいため、これらの粉末を得る場合冷凍粉砕を行わなければならない。
冷凍粉砕法によれば、比較的容易に粉砕が可能であるものの、粉砕コストが上昇し、また、粉砕により得られる粉体の粒度分布が広く、平均粒径も大きくなるため静電塗装にむかなかった。
【0005】
【発明が解決すべき課題】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、優れた外観性(平滑性、鮮映性等)、物理特性(耐衝撃性、耐チッピング性、耐擦傷性、密着性等)、化学特性(耐候性、耐食性、耐溶剤性等)を有する焼き付け後塗膜を発現し得て、貯蔵安定性に優れ、静電塗装にも好適に使用できる熱可塑性粉体塗料、その製造法、該塗料を用いた塗装法、及び塗装品を提供することを目的としてなされたものである。
【0006】
【課題を解決する手段】
即ち、本発明は
(i)不水溶性の熱可塑性重合体、
(ii)分子鎖に結合したカルボン酸塩の基を該分子鎖1g当たり−COO−基換算で0.1〜5ミリモル当量の濃度で含む炭素数が25以上で(i)不水溶性の熱可塑性重合体より重量平均分子量が小さいカルボン酸塩化合物からなり、平均粒径が50μ以下の樹脂粉体を含有することを特徴とする熱可塑性粉体塗料を提供することにある。
【0007】
上記は、熱可塑性粉体塗料は、
(i)不水溶性の熱可塑性重合体、
(ii)分子鎖に結合したカルボン酸塩の基を該分子鎖1g当たり−COO−基換算で0.1〜5ミリモル当量の濃度で含む炭素数が25以上で(i)不水溶性の熱可塑性重合体より重量平均分子量が小さいカルボン酸塩化合物、
(iii)水
を主に含有して成り、
水分含有量が3〜50重量%の見掛上固体の水性分散体、もしくは、加水によって固形分が微細粒子として水相中に均一に分散した水性分散体を乾燥せしめることにより得られる。
【0008】
また、本発明は、
(i)不水溶性の熱可塑性重合体、
(ii)分子鎖に結合したカルボン酸塩の基を該分子鎖1g当たり−COO−基換算で0.1〜5ミリモル当量の濃度で含む炭素数25以上で(i)不水溶性の熱可塑性重合体より重量平均分子量が小さいカルボン酸塩化合物及び/又は(ii')分子鎖に結合したカルボン酸基を該分子鎖あたり−COO−基換算で0.1〜5ミリモル濃度で含み、炭素数25以上で(i)不水溶性の熱可塑性重合体より重量平均分子量が小さいカルボン酸化合物および/又は分子鎖に結合したエステル基を該分子鎖1gあたり−COO−基換算で0.1〜5ミリモル当量の濃度で含み、炭素数25以上で(i)不水溶性の熱可塑性重合体より重量平均分子量が小さいカルボン酸エステル化合物、を溶融混練する工程と、この溶解混練物に全体当たり3から50重量%の水、中和ないしケン化が必要な物質が存在する場合には、塩基性物質を添加して溶解混練を行い、樹脂固形分を水性分散体に転相させる工程とから成り、必要によりこの水性分散体に追加量の水を添加して水性分散体を得、その後乾燥によって粉体微粒子を得ることを特徴とする熱可塑性粉体塗料の製造法を提供することにある。
【0009】
さらに本発明は、上記の塗料が塗布された塗装品を提供することにある。
さらに、本発明は、上記の熱可塑性粉体塗料を、静電塗装法等にて対象物に付着させ、80〜300℃で焼き付ける事を特徴とする塗装方法を提供することにある。
【0010】
【発明の具体的説明】
熱可塑性粉体塗料
樹脂粉体の構成成分
(i)熱可塑性重合体としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ3−メチル−1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、ポリ3−メチル−1−ペンテン、或いはエチレン・プロピレン共重合体、エチレン−1ブテン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体で代表されるエチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−デセン、1−ドデセン等のα−オレフィンの単独重合体又はこれらのランダム或いはブロック共重合体、またはエチレン・ブタジエン共重合体、エチレン・エチリデンノルボルネン共重合体で代表されるα−オレフィンと共役ジエン又は非共役等ジエンとの共重合体、或いはエチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン3元共重合体、エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン3元共重合体、エチレン・プロピレン・1,5−ヘキサジエン3元共重合体等で代表されるαオレフィンの2種以上と共役ジエン又は非共役ジエンとの共重合体、或いはエチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコ−ル共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体等のオレフィンと他の熱可塑性単量体との共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)、ABS、α−メチルスチレン・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリビニル化合物、スチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のようなポリビニル共重合物等、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド等あるいは混合物のいずれの重合体を挙げることができる。また、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体では、共重合体中のカルボキシル基の一部をリチウム・ナトリウム・カリウム・マグネシウム・カルシウム・亜鉛等の金属イオンにて中和したアイオノマーを使用しても一行に構わない。
【0011】
カルボン酸塩化合物(ii)としては、(ii-1)主鎖にカルボン酸塩の基が結合した熱可塑性重合体、(ii-2)炭素数25以上の脂肪族カルボン酸塩を挙げることができる。
また、本発明を限定するものではないが、カルボン酸塩化合物(ii)は(i)不水溶性の熱可塑性重合体よりGPCにより測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量が小さく、好ましくは1/2以下である。
【0012】
(ii-1)主鎖にカルボン酸塩の基が結合した熱可塑性重合体は、前述の熱可塑性重合体又はそれを構成する単量体に中和されているか中和されていないカルボン酸基を有する単量体あるいはケン化されているかケン化されていないカルボン酸エステル基を有する単量体を付加反応等の手段で導入し、場合によっては塩基性物質により中和反応またはケン化反応を行って、該カルボン酸塩化合物中に生じたカルボン酸の塩の合計が重合体1グラム中に−COO−基換算で0.1〜5ミリモル当量、特に0.2〜4ミリモル当量含有するように調整されたものである。この際重合体中には中和もしくはケン化されていないカルボン酸基またはケン化物であってもよい。中和されたカルボン酸基及び/またはケン化されたカルボン酸エステル基の合計量が上記の範囲内のものは、熱可塑性重合体(i)の分散を助ける働きが良好である。
また塗膜物性を良好にする観点から、不水溶性あるいは水非膨潤性のものが選ばれる。
【0013】
上記カルボン酸塩化合物(ii-1)を後中和または後ケン化により得られる場合の原料となる化合物は、たとえば前述の熱可塑性重合体(i)を構成する単量体と共通な単量体、特にα−オレフィンとエチレン系不飽和カルボン酸またはそのエステルとを共重合したものであって、不飽和カルボン酸として(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クトロン酸、イソクトロン酸、ナジック酸R(エンドシス−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸)、無水マレイン酸、無水シトラコン酸等、不飽和カルボン酸エステルとして上記の不飽和カルボン酸のメチル、エチル、プロピル等のモノエステル、ジエステル等が例示できる。
勿論、複数の単量体成分を共重合する代りに、熱可塑性重合体(i)に、エチレン系不飽和カルボン酸、その無水物或いはそのエステル等の単量体をグラフト重合することにより、後中和または後ケン化用の熱可塑性重合体が得られることは当業者には自明であろう。
これらのエチレン系不飽和カルボン酸、その無水物、或いはそのエステルの単量体の導入される量は、当然のことながら、前に規定したカルボン酸塩の濃度を与えるに十分なものでなければならず、−COO−基として最低限0.1ミリモル/1g重合体の濃度を有していなければならず、好適には0.1〜5ミリモル/1g重合体の範囲である。
【0014】
また、(ii-2)炭素数25以上の脂肪族カルボン酸塩としては、炭素数25〜60、特に炭素数25〜40の脂肪族カルボン酸塩が好ましい。ここで炭素数が25以上の脂肪族カルボン酸は皮膜の耐水性を低下させず、また炭素数60以下の脂肪族カルボン酸またはその塩は入手が容易である。特に好ましい脂肪族カルボン酸塩としては、モンタン酸塩、中でもモンタン酸のナトリウム塩、カリウム塩が好ましい。
上記脂肪族カルボン酸塩は、脂肪族カルボン酸を中和するか、脂肪族カルボン酸エステルをケン化する方法によっても製造できる。
【0015】
また中和及びケン化に用いる塩基性物質としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニア及びアミン等の水中で塩基として作用する物質、アルカリ金属の酸化物、水酸化物、弱酸塩、水素化物、アルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、弱酸塩、水素化物等の水中で塩基として作用する物質、これら金属のアルコキシドなどを挙げることができる。このような物質の例を以下に示す。
(1)アルカリ金属としては、たとえばナトリウム、カリウム、アルカリ土類金属としては、たとえば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、
(2)アミンとしてはヒドロキシアミン、ヒドラジン等の無機アミン、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、シクロヘキシルアミン、
(3)アルカリ金属及びアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、水素化物としては、たとえば酸化ナトリウム、過酸化ナトリウム、酸化カリウム、過酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム、
(4)アルカリ金属及びアルカリ土類金属の弱酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、
(5)アンモニア及びアミンの化合物としては、たとえば水酸化アンモニウム、四級アンモニウム化合物たとえばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ヒドラジン水和物等を挙げることができる。
塩基性物質により中和又はケン化されたカルボン酸基あるいはカルボン酸エステル基としては、カルボン酸ナトリウム、カルボン酸カリウム等のカルボン酸アルカリ金属塩、カルボン酸アンモニウムが好適であり、中でもカルボン酸カリウムが好ましい。
【0016】
カルボン酸塩化合物(ii)は対象となる熱可塑性重合体(i)に対して相溶性の良好なものを選ぶのがよい。すなわちオレフィン系樹脂の水性分散体を経る熱可塑性粉体塗料を目的とする場合には、オレフィン系単量体を主鎖中に含む重合体を選ぶべきである。たとえばポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体などを使用する時には、これらのマレイン酸グラフト物あるいはエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体などの中和物ないしケン化物を用いるのが好ましい。適切なカルボン酸塩を選ぶに際し一つの目安となる指数は溶解度パラメーター(Sp値)である。すなわち中和ないしケン化される前の原料化合物と熱可塑性重合体(i)との溶解度パラメーターの差が2[cal/cm3]1/2以内、特に1[cal/cm3]1/2以内にあるものが好ましい。
本明細書において、溶解度パラメーター(Sp値)とは、普通の意味、即ち凝集エネルギー密度の1/2乗として定義される値である。この溶解度パラメーターは、原子団のモル容への寄与値Vi及び原子団の凝集エネルギーEnをD.W.Van Klevelen "Properties of Polymers" (Elsevier, 1972)記載の値を用い、式1
【0017】
【式1】
Figure 0003946907
で算出される。
【0018】
本発明の熱可塑性粉体塗料の樹脂粉体中には、前記(ii)カルボン酸塩化合物の前駆体である(ii')分子鎖に結合したカルボン酸基を該分子鎖あたり−COO−基換算で0.1〜5ミリモル濃度で含み、炭素数25以上のカルボン酸化合物および/又は分子鎖に結合したエステル基を該分子鎖1gあたり−COO−基換算で0.1〜5ミリモル当量の濃度で含むカルボン酸エステル化合物が含まれていてもよい。
【0019】
樹脂粉体の組成、性状
前述の熱可塑性重合体(i)とカルボン酸塩化合物(ii)との割合は、熱可塑性重合体(i)100重量部に対して、カルボン酸塩化合物(ii)が0.5〜60重量部、特に1〜20重量部が好ましい。
また、カルボン酸化合物及び/またはカルボン酸エステル化合物(ii')が存在する場合、熱可塑性重合体(i)100重量部に対して、カルボン酸塩化合物(ii)とカルボン酸化合物及び/またはカルボン酸エステル化合物(ii')の合計が、0.5〜60重量部、特に1〜20重量部が好ましい。
【0020】
本発明の熱可塑性樹脂粉体塗料中に含まれる樹脂粉体は、実質的に球状であり、小粒径で、また粒度分布も狭い。粉体の平均粒径は、50μ以下、特に1〜20μが好ましい。
粒径はマイクロトラックを用いて測定できる。
粒度分布としては、粒径4〜8μの範囲の粒子が樹脂粉体中の50重量%以上、特には80重量%以上であるのが好ましい。
【0021】
任意成分
本発明の熱可塑性粉体塗料は、上記成分以外に、酸化防止剤、カーボンブラック等の着色剤、タルク、雲母等の充填材、紫外線吸収剤、滑剤等のプラスチック各種添加剤を本発明の熱可塑性粉体塗料の特性を損なわない範囲で添加してもよい。
添加剤は、前記熱可塑性粉体とともにドライブレンドしてもよいし、前記樹脂粉体を製造する過程で添加してもよい。
【0022】
熱可塑性粉体塗料の製造方法
本発明の熱可塑性粉体塗料は、
(i)不水溶性の熱可塑性重合体、
(ii)分子鎖に結合したカルボン酸塩の基を該分子鎖1g当たり−COO−基換算で0.1〜5ミリモル当量の濃度で含む炭素数が25以上で(i)不水溶性の熱可塑性重合体よりも重量平均分子量が小さいカルボン酸塩化合物、
(iii)水
を主に含有して成り、
水分含有量が3〜40重量%の見掛上固体の水性分散体、もしくは、加水によって固形分が微細粒子として水相中に均一に分散した水性分散体を乾燥することにより得られる。
【0023】
前記水性分散体中には(ii')分子鎖に結合したカルボン酸基を該分子鎖あたり−COO−基換算で0.1〜5ミリモル濃度で含み、炭素数25以上で(i)不水溶性の熱可塑性重合体よりも重量平均分子量が小さいカルボン酸化合物および/又は分子鎖に結合したエステル基を該分子鎖1gあたり−COO−基換算で0.1〜5ミリモル当量の濃度で含む炭素数25以上で(i)不水溶性の熱可塑性重合体よりも重量平均分子量が小さいカルボン酸エステル化合物が含まれていてもよい。
【0024】
前記水性分散体は、
(i)不水溶性の熱可塑性重合体、
(ii)分子鎖に結合したカルボン酸塩の基を該分子鎖1g当たり−COO−基換算で0.1〜5ミリモル当量の濃度で含む炭素数25以上で(i)不水溶性の熱可塑性重合体よりも重量平均分子量が小さいカルボン酸塩化合物及び/又は(ii')分子鎖に結合したカルボン酸基を該分子鎖あたり−COO−基換算で0.1〜5ミリモル濃度で含み、炭素数25以上で(i)不水溶性の熱可塑性重合体よりも重量平均分子量が小さいカルボン酸化合物および/又は分子鎖に結合したカルボン酸基を該分子鎖あたり−COO−基換算で0.1〜5ミリモル濃度で含み、炭素数25以上で(i)不水溶性の熱可塑性重合体よりも重量平均分子量が小さいカルボン酸エステル化合物、を溶融混練する工程と、この溶解混練物に全体当たり3から50重量%、好ましくは35から45重量%の水、中和ないしケン化が必要な物質が存在する場合には、塩基性物質を添加して溶解混練を行い、樹脂固形分を水性分散体に転相させる工程とから成り、必要によりこの水性分散体に追加量の水を添加することにより得られる。
【0025】
原料の溶融混練手段は公知のいかなる手段、例えばニーダー、バンバリーミキサー、一軸押出機、二軸押出機、が挙げられ、特に二軸押出機を用いるのが好ましい。
また、水性分散体を製造する際に、アニオン活性剤、ノニオン界面活性剤等の界面活性剤、あるいは中和ないしケン化により界面活性剤になる物質を使用してもよい。
【0026】
アニオン界面活性剤としてはたとえば第1級高級脂肪酸塩、第2級高級脂肪酸塩、第1級高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルジスルホン酸塩、スルホン酸化高級脂肪酸塩、高級脂肪酸硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩、高級アルコールエーテルのスルホン酸塩、高級脂肪酸アミドのアルキロール化硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェノールスルホン酸塩、アルキルナフタリンスルホン酸塩、アルキルベンゾイミダゾールスルホン酸塩等塩基性物質と反応してアニオン界面活性剤となったものなら如何なるものでもよい。これらの界面活性剤のより具体的な化合物名は、たとえば堀口博著「合成界面活性剤」(昭和41、三共出版)に開示してある。これらの中でも取り分けて好適なものとして高級脂肪酸類とくに炭素原子数10〜20の飽和または不飽和の高級脂肪酸アルカリ金属塩が好適であり、より具体的にはカプリン酸、ウンデカン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラキン酸等の飽和脂肪族、リンデル酸、ツズ酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪族、あるいはこれらの混合物等のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0027】
一方、ノニオン界面活性剤としては、HLBが10以上、特に好適にはHLBが13以上のノニオン界面活性剤が使用される。ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドエーテル、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸ショ糖エステル、アルキロールアミド、ポリオキシアルキレンブロックコポリマー等の内からHLBが上記範囲内にあるものを使用する。例えば、これらのノニオン界面活性剤では一般に、ポリオキシエチレン単位の含有量が増大するとHLBが増大するので、エチレンオキサイドの付加モル数を調整することにより、所望のHLBのノニオン界面活性剤を入手することができる。
界面活性剤の使用量は、前記熱可塑性重合体(i)100重量部に対して、0.1〜20重量部、特に、0.5〜2重量部使用するのが好ましい。
【0028】
塗装品、塗装方法
本発明の塗装品は、前記の熱可塑性粉体塗料を、金属、プラスチック、ガラス、コンクリート、 紙、木材等の各種材質の、任意の形状の対象物の表面に塗装することにより製造される。
塗装に先立ち、対象物の表面を溶剤、界面活性剤などで処理してもよい。
塗膜の厚さは、特に制限されるものではないが、10〜500μ、特に30〜70μが好ましい。
塗装品の用途としては、建材、道路資材、家電、自動車部品、電気・電子部品、パイプ、容器等、種々の分野の用途が挙げられる。
本発明の樹脂粉体は、粒径が小さく、粒度分布が狭いので、流動浸漬法の他に、静電粉体塗装に適用した場合でも塗膜の均一付着性が良好である。
これらの方法により、塗料を対象物に付着させた後、樹脂粉末の融点以上の温度、好ましくは80〜300℃、特に好ましくは100〜200℃で焼き付ける。
【0029】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例で説明するが、本発明はこれらの実施例により限定するものではない。また、以下の実施例及び比較例で得られた粉体塗料についての目視外観、耐衝撃性試験、塗膜密着性、耐候性、耐食性、保存安定性の評価または測定は下記方法に従って行った。
【0030】
<GPCにより測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量>
実施例中のエチレン・メタアクリル酸共重合体およびエチレン・アクリル酸共重合体は前処理として
通常の方法でエチルエステル化処理を行って、以下の方法で測定した。
ウォータース社製GPC150Cを用い、温度140℃、溶媒o−ジクロルベンゼン、測定流量1.0ml/minで濃度0.1wt%で測定した。試料の分子量算出にあたっては、単分散ポリスチレン標準試料により測定した検量線を使用した。カラムとして、東ソー(株)製GMH−HT(60cm、商標)とGMH−HTL(60cm、商標)を連結したものを用いた。
【0031】
<評価方法>
1.金属への粉体塗料塗装品の作製法
厚み2mmの光沢のある金属製角版をオーブン内で予熱温度260〜300℃、10分加熱する。その後、静電粉体塗装装置を用いて、角板に均一に膜厚が0.5mmとなるよう静電塗装し、オーブン温度200℃のオーブンで5分間焼き付けを行った後、室温冷却し、金属への粉体塗料塗装品を得た。
【0032】
2.物性評価方法
2−1 目視外観
塗膜外観を観察し、特に平滑性、鮮映性、について、目視で観察し、特に平滑性、鮮映性について優れているものを○、平滑性、鮮映性に劣るものを×とし、目視外観の評価の指標とした。
2−2 耐衝撃性(デュポン式衝撃性試験)
JIS K5400に記載されているデュポン式衝撃試験の方法に準じて、前記にて作成した粉体塗料塗装品の試料に、重りの重量を1Kgとし高さ50cmより落下させた時の塗膜の割れやはがれの発生を評価し、割れ、はがれの無いものを○、割れ、はがれを生じるものを×とした。
2−3 密着性
JIS K5400に記載されている碁盤目試験の方法に準じて、前記にて作成した粉体塗料塗装品の試料に、碁盤目を付けた試験片を作成し、粘着テープ(ニチバン(株)、商品名セロテープ)を試験片の碁盤目上に張り付けた後、粘着テープを速やかに90°の方向に引っ張って剥離させ、碁盤目100の内で剥離されなかった碁盤目の数を数え、(剥離されなかった碁盤目の数)/100の値を塗膜密着性の評価の指標とした。
剥離のないものを○、それ以外を×とした。
2−4 耐候性
QUVテスターによる300時間の促進テストを行い、促進テスト前後の塗膜光沢(60°)を測定し、光沢保持率(%)を求めた。光沢保持率が80%以上の物を○、それ以下を×とした。
【0033】
2−5 耐食性
2−5−1 耐酸性
40vol%の硫酸を塗膜表面に滴下し、60℃にて20分放置した後水洗し塗膜外観を観察した。痕跡の全く無いものを○、塗膜が侵蝕されている物を×とした。
2−5−2 耐アルカリ性
40vol%の水酸化ナトリウムを塗膜表面に滴下し、60℃にて20分放置した後水洗し塗膜外観を観察した。痕跡の全く無いものを○、塗膜が侵蝕されている物を×とした。
2−5−3 耐溶剤性
アセトンを塗膜表面に滴下し、60℃にて20分放置した後水洗し塗膜外観を観察した。痕跡の全く無いものを○、塗膜が侵蝕されている物を×とした。
【0034】
2−6 貯蔵安定性
粉体塗料組成物を、40℃1ヵ月貯蔵し、10mmΦ、0.3gのペレット状粉体塗料を調整し、プレート上に貼付した後、垂直に保ち、140℃で、30分間、焼き付けした際の、ペレットの垂れ状態を測定した。フロー性の良好な物を○、劣る物を×とした。
【0035】
実施例1
エチレン・メタアクリル酸共重合体(三井デュポンポリケミカル(株)製 ニュクレル1560、−COO−基:1.74mmol当量/g、Sp値=8.8(cal/cm31/2、重量平均分子量100,000)を3000g、エチレン・アクリル酸共重合体(アライド製 AC−5120、−COO−基:2.97mmol当量/g、Sp値=8.6(cal/cm31/2、重量平均分子量3000〜4000)を300g、界面活性剤としてエマルゲン430(花王製)を30gとを混合し、2軸スクリュー押出機(池貝鉄工製 PCM−30 L/D=20)のホッパーより3000g/時間の速度で供給し、同押出機のベント部に設けた供給口より、水酸化カリウムの2.5%溶液を1500g/時間の割合で供給し、加熱温度180℃で連続的に押出した。押出された樹脂混合物は同押出機口に設置したジャケット付きスタティックミキサーで90℃まで冷却し、さらに80℃の温水中に投入され、収率99%で固形分濃度35%の水分散体を得た。
得られた水分散体の平均粒径はマイクロトラックで測定したところ6.5μmで分布も狭いものであった。得られた水分散体を通常の方法で乾燥し、熱可塑性粉体塗料を得た。得られた粉体塗料を用い金属への粉体塗料塗装品の作製法に従って評価試験片を作製し、各種評価試験を実施した。結果を表1に示す。
【0036】
実施例2
実施例1と同様のエチレン・メタアクリル酸共重合体を3000g、モンタン酸ワックス(クラリアント製 ヘキストワックスS、−COO−基:3.22mmol当量/g、Sp値=9.6(cal/cm31/2、重量平均分子量400〜500)を150g、界面活性剤としてエマルゲン430(花王製)を30gとを混合し、2軸スクリュー押出機(池貝鉄工製 PCM−30 L/D=20)のホッパーより3000g/時間の速度で供給し、同押出機のベント部に設けた供給口より、水酸化カリウムの2.5%溶液を1000g/時間の割合で供給し、加熱温度180℃で連続的に押出した。押出された樹脂混合物は同押出機口に設置したジャケット付きスタティックミキサーで90℃まで冷却し、さらに80℃の温水中に投入され、収率99%で固形分濃度35%の水分散体を得た。
得られた水分散体の平均粒径はマイクロトラックで測定したところ7.5μmで分布も狭いものであった。得られた水分散体を通常の方法で乾燥し、熱可塑性粉体塗料を得た。得られた粉体塗料を用い金属への粉体塗料塗装品の作製法に従って評価試験片を作製し、各種評価試験を実施した。結果を表1に示す。
【0037】
比較例1
熱硬化型ポリエステル系樹脂を粉砕機により通常の粉砕方法で粉砕して、熱硬化性粉体塗料を得た。得られた粉体塗料を用い金属への粉体塗料塗装品の作製法に従って評価試験片を作製し、各種評価試験を実施した。結果を表1に示す。
【0038】
比較例2
実施例1と同様のエチレン・メタアクリル酸共重合体を3000g、エチレン・アクリル酸共重合体を300gとを混合し、押出機へ投入し混合・混練してペレット状とした後、常温粉砕を試みたが粉砕時に発生する熱により樹脂が一部溶解し粉砕品を得ることが出来なかった。
【0039】
比較例3
比較例2と同様にしてペレットを得た後、凍結粉砕を試み、粉砕を行った。得られた粉体塗料の粒子径を測定したところ平均粒径100μmで粒子分布は広かった。得られた粉体塗料を用い金属への粉体塗料塗装品の作製法に従って評価試験片を作製したところ、平均粒子径が大きく粒度分布も広いので静電塗装することが不可能であった。
【0040】
【発明の効果】
本発明の塗料は、静電塗装用粉体塗料として使用した場合、塗膜外観、物性、耐候性、耐食性及び塗料の貯蔵安定性に優れた、塗装品を得ることができる。
【0041】
【表1】
Figure 0003946907

Claims (11)

  1. (i)不水溶性の熱可塑性重合体、
    (i)分子鎖に結合したカルボン酸塩の基を該分子鎖1g当たり−COO−基換算で0.1〜5ミリモル当量の濃度で含む炭素数が25以上で(i)不水溶性の熱可塑性重合体より重量平均分子量が小さいカルボン酸塩化合物からなり、平均粒径が50μ以下の樹脂粉体を含有することを特徴とする熱可塑性粉体塗料。
  2. (i)不水溶性の熱可塑性重合体、
    (i)分子鎖に結合したカルボン酸塩の基を該分子鎖1g当たり−COO−基換算で0.1〜5ミリモル当量の濃度で含む炭素数が25以上で(i)不水溶性の熱可塑性重合体より重量平均分子量が小さいカルボン酸塩化合物、
    (i)水
    を主に含有して成り、
    水分含有量が3〜50重量%の見掛上固体の水分散体、もしくは、加水によって固形分が微細粒子として水相中に均一に分散した水性分散体を乾燥せしめることにより得られることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性粉体塗料。
  3. (i)不水溶性の熱可塑性重合体、
    (ii)分子鎖に結合したカルボン酸塩の基を該分子鎖1g当たり−COO−基換算で0.1〜5ミリモル当量の濃度で含む炭素数が25以上で(i)不水溶性の熱可塑性重合体より重量平均分子量が小さいカルボン酸塩化合物、
    (ii')分子鎖に結合したカルボン酸基を該分子鎖1gあたり−COO−基換算で0.1〜5ミリモル当量の濃度で含む炭素数が25以上で(i)不水溶性の熱可塑性重合体より重量平均分子量が小さいカルボン酸化合物および/又は、分子鎖に結合したエステル基を該分子鎖1gあたり−COO−基換算で0.1〜5ミリモル当量の濃度で含む炭素数が25以上で(i)不水溶性の熱可塑性重合体より重量平均分子量が小さいカルボン酸エステル化合物、
    (iii)水
    を主に含有して成り、
    水分含有量が3〜50重量%の見掛上固体の水性分散体、もしくは、加水によって固形分が微細粒子として水相中に均一に分散した水性分散体を乾燥せしめることにより得られることを特徴とする請求項2記載の熱可塑性粉体塗料。
  4. 不水溶性の熱可塑性重合体(i)およびカルボン酸塩化合物(ii)は、該化合物(ii)が中和ないしケン化される前の状態でそれらの溶解度
    パラメーター(SP値)の差が2[cal/cm3]1/2以下となるように組み合わされる請求項2の熱可塑性粉体塗料。
  5. 不水溶性の熱可塑性重合体(i)100重量部に対してカルボン酸塩化合物(ii)が0.5〜60重量部の割合で存在する請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性粉体塗料。
  6. 不水溶性の熱可塑性重合体(i)100重量部に対してカルボン酸塩化合物(ii)とカルボン酸化合物および/又はカルボン酸エステル化合物(ii')が合計0.5〜60重量部の割合で存在する請求項3記載の熱可塑性粉体塗料。
  7. さらに不溶性の熱可塑性重合体(i)100重量部に対して界面活性剤を0.1〜20重量部使用する請求項1ないし3のいずれかに記載の熱可塑性粉体塗料。
  8. (i)不水溶性の熱可塑性重合体、
    (ii)分子鎖に結合したカルボン酸塩の基を該分子鎖1g当たり−COO−基換算で0.1〜5ミリモル当量の濃度で含む炭素数25以上で(i)不水溶性の熱可塑性重合体より重量平均分子量が小さいカルボン酸塩化合物及び/又は(ii')分子鎖に結合したカルボン酸基を該分子鎖あたり−COO−基換算で0.1〜5ミリモル濃度で含み、炭素数25以上で(i)不水溶性の熱可塑性重合体より重量平均分子量が小さいカルボン酸化合物および/又は分子鎖に結合したエステル基を該分子鎖1gあたり−COO−基換算で0.1〜5ミリモル当量の濃度で含むカルボン酸エステル化合物、
    を溶融混練する工程と、この溶解混練物に全体当たり3から50重量%の水、中和ないしケン化が必要な物質が存在する場合には塩基性物質を添加して溶解混練を行い、樹脂固形分を水性分散体に転相させる工程とから成り、必要によりこの水性分散体に追加量の水を添加することにより水性分散体を得、その後乾燥によって粉体微粒子を得ることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性粉体塗料の製造法。
  9. 請求項1の熱可塑性粉体塗料を塗装した塗装品。
  10. 請求項1の熱可塑性粉体塗料を対象物に付着させ、80〜300℃で焼き付ける事を特徴とする塗装方法。
  11. 静電塗装により熱可塑性粉体塗料を対象物に付着させることを特徴とする請求項10記載の塗装方法。
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