JP3946089B2 - グラフト共重合体とその製造方法、および樹脂組成物 - Google Patents

グラフト共重合体とその製造方法、および樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、グラフト共重合体とその製造方法、および、これを熱可塑性樹脂(特に塩化ビニル樹脂)に配合してなる樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、シャルピー衝撃強度、面衝撃強度等の耐衝撃性を付与し、かつ耐候性や加工性にも優れた樹脂組成物を与える衝撃強度改質剤として有用なグラフト共重合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
衝撃強度改質剤(耐衝撃改質剤とも言う)は数多くの樹脂に用いられるが、特に塩化ビニル樹脂は汎用性の高い樹脂であるにも関わらず耐衝撃性が不十分な場合があるので、各種の衝撃強度改質剤が添加されている。また、塩化ビニル樹脂は、一般に加工性不良が従来からの問題として挙げられる。
【0003】
加工性の改良の為には、従来から加工助剤が使用されているが、コスト面や配合の簡素化等の要求から、できるだけ添加量を減じる検討がなされている。したがって、本来耐衝撃性を改良する耐衝撃改質剤にも、加工性を改良する要素をもたせる必要性がある。
【0004】
耐衝撃性の改良方法については、従来から多く提案されている。例えば、ブタジエン系ゴム状重合体にメチルメタクリレート、スチレン、アクリロニトリル等をグラフト重合させたMBS樹脂を含むMBS系改質剤を、塩化ビニル樹脂に混合する方法がある。
【0005】
しかし、MBS系改質剤を塩化ビニル樹脂に混合すると、耐衝撃性は改良されるものの耐候性が低下する場合があり、その成型品を屋外で使用すると退色する場合がある。耐候性が低下する主な原因は、MBS樹脂を構成するブタジエン単位の紫外線劣化に基づくものと考えられている。
【0006】
そこで、アルキル(メタ)アクリレートと架橋剤とから得た架橋アルキル(メタ)アクリレートゴム重合体に、メチルメタクリレート、スチレン、アクリロニトリル等をグラフト重合させることにより、耐候性を改良し、かつ耐衝撃性を付与する方法が、特公昭51−28117号公報に開示されている。
【0007】
また、メタクリル樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル/スチレン系樹脂や、ポリカーボネートなど汎用の熱可塑性樹脂の耐衝撃性を改良する方法についても、数多くの従来技術がある。
【0008】
例えば、特公平4−325542号公報には、ゴム状重合体ラテックスに特定のアルコールを加えることによって、耐衝撃性を維持しつつ製品外観等を改良する方法が開示されている。また、特開平10−101869号公報には、イソブチレン系重合体セグメントとビニル重合体セグメントが相互に分離できない構造を有する複合ゴムにビニル系単量体をグラフト重合したグラフト共重合体を樹脂に配合して、耐衝撃性を向上させる方法が開示されている。また、特許第3083515号公報には、特定のアクリルゴムを用いた耐衝撃性改質剤が開示されている。
【0009】
特に塩化ビニル樹脂に関しては、耐候性を維持し、かつ加工性や機械的強度等を両立させる方法として、塩化ビニルをアクリルゴム質重合体に直接グラフトし、このグラフト共重合体を添加する方法が提案されている。このような方法を開示するものとして、例えば、特公昭39−17067号公報、特開昭60−255812号公報、特開平3−200817号公報、特開平6−157862号公報がある。
【0010】
また、特開平9−87342号公報には、シリコーン/アクリル系グラフト共重合を塩化ビニル樹脂の重合時に混合して分散させる方法が開示されている。この方法は、マトリクスに対する分散性の点では効果がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上述した塩化ビニルをグラフトしたアクリル系ゴムは、低添加部数での耐衝撃性が不足する。また、シリコーン/アクリル系グラフト共重合体を塩化ビニル樹脂の重合時に混合して分散させた樹脂組成物をもってしても、マトリクスとグラフト共重合体との界面の相互作用を直接的に強化する点では不十分であり、耐衝撃性、耐候性、引っ張り特性、流動性等の性能に一長一短があり、これらを高いレベルでバランス良く発現させること、およびさらなる物性向上を図ること等の点においては、未だ十分ではない。
【0012】
本発明は、上述の従来技術の各課題を解決すべくなされたものである。すなわち、本発明の目的は、汎用性があり、少量添加で樹脂の耐衝撃性を向上させ、かつ耐候性や加工性にも優れた樹脂組成物を与える衝撃強度改質剤として有用なグラフト共重合体、このグラフト共重合体の製造方法、および、これを熱可塑性樹脂に配合してなる樹脂組成物を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ポリオルガノシロキサン/ポリアルキル(メタ)アクリレート系複合ゴム(A)に、ビニル系単量体をグラフト重合させてグラフト部(B)を形成したグラフト共重合体において、複合ゴム(A)およびグラフト部(B)の両方が、塩素基を含有する単量体ユニットを含むことを特徴とするグラフト共重合体である。
【0014】
さらに本発明は、熱可塑性樹脂100質量部と、上記グラフト共重合体0.1〜30質量部とを含んでなる樹脂組成物である。
【0015】
さらに本発明は、上記グラフト共重合体を製造するための方法であって、複合ゴム(A)およびグラフト部(B)のどちらか一方もしくは両方を、乳化重合法により製造することを特徴とするグラフト共重合体の製造方法である。
【0016】
なお、本発明において「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの総称である。
【0017】
本発明のグラフト共重合体は、特定の複合ゴム(A)を含んでいるので、熱可塑性樹脂に配合すると特に低温での耐衝撃性等を向上できる。また、そのゴム成分である複合ゴム(A)およびグラフト部(B)の両方が塩素基を含有しているので、マトリクス樹脂、特に塩化ビニル樹脂のような極性の高い樹脂との混和性に優れる。したがって、このグラフト共重合体をそのような樹脂に配合すると、加工性等を向上でき、また、マトリクス親和性を向上できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明において、複合ゴム(A)は、ポリオルガノシロキサンとポリアルキル(メタ)アクリレートから構成される。
【0019】
複合ゴム(A)を構成するポリオルガノシロキサンは、例えば、ジメチルシロキサン(DMC)を主原料として得ることができる。ジメチルシロキサンとしては、例えば、3員環以上のジメチルシロキサン系環状体を用いることができ、特に3〜7員環のものが好ましい。その具体例としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられる。これらは一種を単独でまたは二種以上を混合して用いることができる。
【0020】
また、ビニル重合性官能基含有シロキサンを用いることもできる。このようなビニル重合性官能基を含有するシロキサンは、ジメチルシロキサンとシロキサン結合を介して結合し得る。ジメチルシロキサンとの反応性を考慮すると、ビニル重合性官能基を含有するアルコキシシランを用いることが好ましい。その具体例としては、β−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエトキシメチルシラン、δ−メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシラン等のメタクリロイルオキシシラン;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン等のビニルシロキサン;p−ビニルフェニルジメトキシメチルシラン等のビニルフェニルシラン;などが挙げられる。これらは一種を単独でまたは二種以上を混合して用いることができる。また、メルカプトシロキサン(例えばγ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)等のメルカプト基を持つものを併用することもできる。
【0021】
また、シロキサン系架橋剤を用いることもできる。具体的には、3官能性または4官能性のシラン系架橋剤、例えば、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン等を用いることができる。
【0022】
ポリオルガノシロキサンを製造する方法としては、乳化重合法、特に強制乳化重合法が好ましい。具体的には、例えば、ジメチルシロキサンとビニル重合性官能基含有シロキサンからなる混合物、更に必要に応じてシロキサン系架橋剤を含む混合物を、乳化剤と水によって乳化させ、このラテックスを、ホモミキサーを用いて高速回転による剪断力で微粒子化したり、あるいはホモジナイザーを用いて高圧発生機による噴出力で微粒子化し、その後、酸触媒を用いて高温下で重合させ、次いでアルカリ性物質により酸を中和する。酸触媒の添加方法としては、シロキサン混合物、乳化剤および水と共に酸触媒を混合する方法や、微粒子化後のラテックスを高温の酸触媒水溶液中に一定速度で滴下する方法等がある。特に、ポリオルガノシロキサンの粒子径の制御のし易さを考慮すると、後者の方法が好ましい。
【0023】
ポリオルガノシロキサンの製造に用いる乳化剤としては、アニオン系乳化剤が好ましい。その具体例としては、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。特に、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムが好ましい。
【0024】
シロキサン混合物、乳化剤、水、酸触媒等の各成分を混合する方法としては、高速攪拌により混合する方法、ホモジナイザー等の高圧乳化装置により混合する方法などがある。特に、ホモジナイザーにより混合する方法は、ポリオルガノシロキサンラテックスの粒子径の分布が小さくなるので好ましい。
【0025】
ポリオルガノシロキサンの製造に用いる酸触媒としては、例えば、脂肪族スルホン酸、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族置換ナフタレンスルホン酸等のスルホン酸類;硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸類;などが挙げられる。これらは一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中では、ポリオルガノシロキサンラテックスの安定化作用にも優れている点で、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸が好ましく、n−ドデシルベンゼンスルホン酸が特に好ましい。また、n−ドデシルベンゼンスルホン酸と硫酸等の鉱酸とを併用すると、ポリオルガノシロキサンラテックスの乳化剤成分に起因する樹脂組成物の外観不良を低減できる。
【0026】
ポリオルガノシロキサンを製造する際の重合温度は、50℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。また、酸触媒をシロキサン混合物、乳化剤、水等と共に混合、微粒子化させて重合する場合、その重合時間は2時間以上が好ましく、5時間以上がより好ましい。酸触媒の水溶液中にシロキサン混合物が微粒子化したラテックスを滴下する方法をとる場合は、重合の為に、ラテックスの滴下終了後1時間程度保持することが好ましい。重合の停止は、反応液を冷却、さらにラテックスを苛性ソーダ、苛性カリ、炭酸ナトリウム等のアルカリ性物質で中和することにより行うことができる。
【0027】
複合ゴム(A)を構成するポリアルキル(メタ)アクリレートは、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、メトキシトリプロピレングリコールアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートを用いて得ることができる。これらは一種を単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0028】
これらアルキル(メタ)アクリレートと他の単量体を共重合してもよい。他の単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族アルケニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;メタクリル酸変性シリコーン;フッ素含有ビニル化合物;などが挙げられる。他の単量体の使用量は、30質量%以下が好ましい。
【0029】
また、通常は、架橋剤またはグラフト交叉剤、例えば、分子中に2個以上の不飽和結合を有する単量体を併用して重合を行うことにより、ポリアルキル(メタ)アクリレート系ゴムを生成し、これにより複合ゴム(A)を構成できる。架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、多官能メタクリル基変性シリコーン等が挙げられる。グラフト交叉剤としては、例えば、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。アリルメタクリレートは架橋剤として用いることもできる。これらは一種を単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0030】
ポリアルキル(メタ)アクリレート系ゴム部分は、架橋度の異なる部分を含むことがより好ましい。この状態は、例えば、架橋剤またはグラフト交差剤の量を変えることによって実現できる。また、始めに重合する単量体の架橋度が、その後に重合する単量体の架橋度よりも小さい状態が特に好ましい。この状態は、例えば、使用する架橋剤またはグラフト交差剤の不飽和結合の数を、後に重合する成分中に多く存在させることによって実現できる。
【0031】
ポリアルキル(メタ)アクリレートの製造方法は、特に限定されない。通常は、乳化重合により製造し、必要があれば強制乳化重合法によっても良い。特に単量体として、2−エチルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレートを選択した場合、これらは水溶性に乏しいので、強制乳化重合法で製造することが好ましい。
【0032】
以上説明したポリオルガノシロキサンとポリアルキル(メタ)アクリレートを複合化する方法は、特に限定されない。例えば、まずポリオルガノシロキサンゴムのラテックスを調製し、このラテックスにポリアルキル(メタ)アクリレート用の単量体を添加して重合することにより、これらが複合化したゴムを得ることができる。
【0033】
複合ゴム(A)を構成するポリオルガノシロキサン/アルキル(メタ)アクリレートの比率は、質量比で1/99〜99/1の範囲内が好ましく、1/99〜80/20がより好ましく、1/99〜60/40の範囲内が特に好ましい。上記各範囲におけるポリオルガノシロキサンの比率の下限値は、低温の耐衝撃性等の点で意義が有る。また上限値は、引っ張り強度等の機械的特性の点で意義が有る。
【0034】
複合ゴム(A)の分子構造に、塩素基を含有する単量体ユニット(単量体単位)を導入する場合は、例えば、上述した各種単量体と共に塩素基含有単量体を共重合させればよい。この塩素基含有単量体としては、塩化ビニル、2−クロロエタン酸ビニル等が挙げられる。汎用の重合容器での製造等を考慮すると、塩素基含有単量体は、23℃、1気圧下で液体状を呈するものが好ましい。そのような単量体としては、2−クロロ酢酸ビニルが挙げられる。この他、塩化ビニルオリゴマーを重合鎖中に取り込むこともできる。また、複合ゴム(A)を調製した後で塩素基を導入してもかまわない。なお、塩素基を有する部分は、複合ゴム(A)およびグラフト部(B)の両方であ
【0035】
塩素含有単量体の量の下限値については、複合ゴム(A)100質量部に対して0.001質量部以上が好ましく、0.01質量部以上がより好ましく、また、上限値については、70質量部以下が好ましく、40重量部以下がより好ましく、15質量部以下が特に好ましく、7質量部以下が最も好ましい。これが0.001質量部以上であれば加工性が十分向上し、また、20質量部以下であれば十分な耐衝撃性を実現できる。
【0036】
複合ゴム(A)の粒子径の分布は、特に制限されない。ただし、複合ゴム(A)の60質量%以上のものの粒子径が、50〜600nmの範囲内にあることが好ましく、50〜500nmの範囲内にあることがより好ましい。この範囲内の粒子径の複合ゴム(A)は、耐衝撃性(特に塩化ビニル樹脂のような樹脂を対象とした場合の耐衝撃性)等の物性を良好に発現させる点で非常に有効であり、この範囲内のものの量が多い方が、良好な物性発現に有利である。
【0037】
以上述べたポリオルガノシロキサン/ポリアルキル(メタ)アクリレート系複合ゴム(A)に、ビニル系単量体をグラフト重合させてグラフト部(B)を形成することにより、グラフト共重合体を得ることができる。
【0038】
グラフト部(B)を構成するビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族アルケニル化合物;メチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等のメタクリル酸エステル;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート等のアクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;などが挙げられる。これらは一種を単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0039】
また、必要に応じて、架橋剤またはグラフト交叉剤、例えば、分子中に2個以上の不飽和結合を有する単量体を併用してもよい。架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、多官能メタクリル基変性シリコーン等が挙げられる。グラフト交叉剤としては、例えば、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。それらの使用量の下限値については、0.1質量%以上が好ましく、上限値については20質量%以下が好ましく、18質量%以下がより好ましい。
【0040】
グラフト部(B)の分子構造に、塩素基を含有する単量体ユニット(単量体単位)を導入する場合は、例えば、上述した各種ビニル系単量体と共に塩素基含有単量体を共重合させればよい。この塩素基含有単量体としては、先に複合ゴム(A)で述べたものと同様のものが好ましい。また同様に、グラフト部(B)を調製した後で塩素基を導入してもかまわない。
【0041】
塩素含有単量体の量の下限値については、グラフト部(B)100質量部に対して0.001質量部以上が好ましく、0.01質量部以上がより好ましい。これが0.001質量部以上であればマトリクスとの混和性が良好となり、加工性が十分向上する。基本的には上限は無い、これらは少量でも、マトリクスの混和性に対して効果があるので、必要以上に添加する必要はない。
【0042】
グラフト共重合体において、複合ゴム(A)の量と、グラフト部(B)を構成するビニル系単量体の量の割合に関しては、添加剤として使用することを考慮し、耐衝撃性の点から、グラフト共重合体100質量部中、複合ゴム(A)の量の下限値は50質量部以上が好ましく、60質量部以上がより好ましく、70質量部以上が特に好ましく、80質量部以上が最も好ましい。また、マトリクス樹脂中での分散性の点から、複合ゴム(A)の量の上限値は99.9質量部以下が好ましく、95質量部以下がより好ましい。
【0043】
以上のようにして得たグラフト共重合体は、例えば、熱可塑性樹脂に配合する衝撃強度改質剤として非常に有用である。グラフト共重合体の配合量に関しては、得られる熱可塑性樹脂組成物の性能の観点から、熱可塑性樹脂100質量部に対して、その配合量の下限値は0.1質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、また上限値は30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
【0044】
グラフト共重合体を配合する熱可塑性樹脂としては、特に硬質塩化ビニル系樹脂が好ましいが、それ以外の樹脂にも有効である。熱可塑性樹脂の具体例としては、硬質塩化ビニル系樹脂、半硬質塩化ビニル系樹脂、軟質塩化ビニル系樹脂等の塩化ビニル系樹脂(PVC系樹脂);ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のオレフィン系樹脂;ポリスチレン(PS)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、(メタ)アクリル酸エステル・スチレン共重合体(MS)、スチレン・アクリロニトリル共重合体(SAN)、スチレン・無水マレイン酸共重合体(SMA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル・スチレン・アクリレート共重合体(ASA)、アクリロニトリル・EPDM・スチレン共重合体(AES)等のスチレン系樹脂(St系樹脂);ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル系樹脂(Ac系樹脂);ポリカーボネート系樹脂(PC系樹脂);ポリアミド系樹脂(PA系樹脂);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂(PEs系樹脂)、(変性)ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE系樹脂)、ポリオキシメチレン系樹脂(POM系樹脂)、ポリスルフォン系樹脂(PSO系樹脂)、ポリアリレート系樹脂(PAr系樹脂)、ポリフェニレン系樹脂(PPS系樹脂)、熱可塑性ポリウレタン系樹脂(PU系樹脂)等のエンジニアリングプラスチックス;スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマー、1,2−ポリブタジエン、トランス1,4−ポリイソプレン等の熱可塑性エラストマー(TPE);PC/ABS等のPC系樹脂/St系樹脂アロイ、PVC/ABS等のPVC系樹脂/St系樹脂アロイ、PA/ABS等のPA系樹脂/St系樹脂アロイ、PA系樹脂/TPEアロイ、PA/PP等のPA系樹脂/ポリオレフィン系樹脂アロイ、PBT系樹脂/TPE、PC/PBT等のPC系樹脂/PEs系樹脂アロイ、ポリオレフィン系樹脂/TPE、PP/PE等のオレフィン系樹脂同士のアロイ、PPE/HIPS、PPE/PBT、PPE/PA等のPPE系樹脂アロイ、PVC/PMMA等のPVC系樹脂/Ac系樹脂アロイ等のポリマーアロイ;などが挙げられる。
【0045】
熱可塑性樹脂組成物には、その物性を損なわない限りにおいて、目的に応じて樹脂のコンパウンド時、混練時、成形時等の所望の段階で、従来より知られる各種の安定剤、充填剤等を添加できる。
【0046】
安定剤には、金属系安定剤と、非金属系安定剤がある。金属系安定剤の具体例としては、三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、塩基性亜硫酸鉛、ケイ酸鉛等の鉛系安定剤;カリウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛、カドミウム、鉛等の金属と、2−エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、ベヘン酸等の脂肪酸から誘導される金属石けん系安定剤;アルキル基、エステル基等と、脂肪酸塩、マレイン酸塩、含硫化物等から誘導される有機スズ系安定剤;Ba−Zn系、Ca−Zn系、Ba−Ca−Sn系、Ca−Mg−Sn系、Ca−Zn−Sn系、Pb−Sn系、Pb−Ba−Ca系等の複合金属石けん系安定剤;バリウム、亜鉛等の金属と、2−エチルヘキサン酸、イソデカン酸、トリアルキル酢酸等の分岐脂肪酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸、ナフテン酸等の脂肪環族酸、石炭酸、安息香酸、サリチル酸、それらの置換誘導体などの芳香族酸といった通常二種以上の有機酸から誘導される金属塩系安定剤;これら安定剤を、石油系炭化水素、アルコール、グリセリン誘導体等の有機溶剤に溶解し、さらに亜リン酸エステル、エポキシ化合物、発色防止剤、透明性改良剤、光安定剤、酸化防止剤、プレートアウト防止剤、滑剤等の安定化助剤を配合してなる金属塩液状安定剤;などが挙げられる。非金属系安定剤の具体例としては、エポキシ樹脂、エポキシ化大豆油、エポキシ化植物油、エポキシ化脂肪酸アルキルエステル等のエポキシ化合物;リンが、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシル基等で置換され、かつプロピレングリコール等の2価アルコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA等の芳香族化合物を有する有機亜リン酸エステル;2,4−ジ−t−ブチル−3−ヒドロキシトルエン(BHT)や硫黄やメチレン基等で二量体化したビスフェノール等のヒンダードフェノール、サリチル酸エステル、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール等の紫外線吸収剤;ヒンダードアミンまたはニッケル錯塩の光安定剤;カーボンブラック、ルチル型酸化チタン等の紫外線遮蔽剤;トリメロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール等の多価アルコール;β−アミノクロトン酸エステル、2−フェニルインドール、ジフェニルチオ尿素、ジシアンジアミド等の含窒素化合物;ジアルキルチオジプロピオン酸エステル等の含硫黄化合物;アセト酢酸エステル、デヒドロ酢酸、β−ジケトン等のケト化合物;有機珪素化合物;ほう酸エステル;などが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
充填剤の具体例としては、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム等の炭酸塩;酸化チタン、クレー、タルク、マイカ、シリカ、カーボンブラック、グラファイト、ガラスビーズ、ガラス繊維、カーボン繊維、金属繊維等の無機質系の充填剤;ポリアミド等の有機繊維、シリコーン等の有機質系の充填剤;木粉等の天然有機物;などが挙げられる。
【0048】
さらに必要に応じて、上述した以外の各種の添加剤を使用することができる。その具体例としては、MBS、ABS、AES、NBR(アクリロニトリル・ブタジエン共重合ゴム)、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)、塩素化ポリエチレン、アクリルゴム、ポリアルキル(メタ)アクリレートゴム系グラフト共重合体、熱可塑性エラストマー等の本発明のもの以外の耐衝撃改質剤;(メタ)アクリル酸エステル系共重合体等の加工助剤;ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジウンデシルフタレート、トリオクチルトリメリテート、トリイソオクチルトリメリテート等の芳香族多塩基酸のアルキルエステル;ジブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジシオノニルアジぺート、ジブチルアゼレート、ジオクチルアゼレート、ジイソノニルアゼレート等の脂肪酸多塩基酸のアルキルエステル;トリクレジルフォスフェート等のリン酸エステル、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸等の多価カルボン酸と、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール等の多価アルコールとの分子量600〜8,000程度の重縮合体の末端を一価アルコールまたは一価カルボン酸で封止した化合物等のポリエステル系可塑剤;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化トール油脂肪酸−2−エチルヘキシル等のエポキシ系可塑剤;塩素化パラフィン等の可塑剤;流動パラフィン、低分子量ポリエチレン等の純炭化水素、ハロゲン化炭化水素、高級脂肪酸、オキシ脂肪酸等の脂肪酸、脂肪酸アミド、グリセリド等の脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸の脂肪アルコールエステル(エステルワックス)、金属石けん、脂肪アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、ポリグリセロール、脂肪酸と多価アルコールの部分エステル、脂肪酸とポリグリコール、ポリグリセロールの部分エステル等のエステル、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体等の滑剤;塩素化パラフィン、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、ハロゲン化合物等の難燃剤;(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、イミド系共重合体、スチレン・アクリロニトリル系共重合体等の耐熱向上剤;離型剤、結晶核剤、流動性改良剤、着色剤、帯電防止剤、導電性付与剤、界面活性剤、防曇剤、発泡剤、抗菌剤;などが挙げられる。
【0049】
熱可塑性樹脂組成物を製造する方法は、特に制限されない。従来より知られる各種の混合方法を使用できるが、通常は、溶融混合法が好ましい。また、必要に応じて少量の溶剤を使用してもよい。混合に使用する装置としては、押出機、バンバリーミキサー、ローラー、ニーダー等が挙げられる。これら装置は、回分的または連続的に運転すればよい。成分の混合順は特に限定されない。
【0050】
得られた樹脂組成物の用途は、特に制限されない。例えば、建材、自動車、玩具、文房具などの雑貨、さらにはOA機器、家電機器などの耐衝撃性が必要とされる成型品に広く利用できる。
【0051】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によって制限されるものではない。なお、特に断りがない限り、「部」は「質量部」を「%」は「質量%」を示し、試薬は市販の良好品を使用した。また、複合ゴムの粒子径分布測定と樹脂組成物の耐衝撃性等の評価は、以下の方法に従い実施した。
【0052】
(1)複合ゴムの粒子径分布測定:
複合ゴムのラテックスを蒸留水で希釈し、これを試料として、米国MATEC社製CHDF2000型粒度分布計を用いて測定した。測定条件は、MATEC社が推奨する標準条件で行った。具体的には、専用の粒子分離用キャピラリー式カートリッジおよびキャリア液を用い、液性を中性、流速を1.4mL/min、圧力を27.6MPa、温度を35℃に保った状態で、濃度3%の希釈ラテックス試料の0.1mLを用いて測定した。また、標準粒子径物質として、米国DUKE社製の粒子径既知の単分散ポリスチレンの粒子径0.02μmから0.8μmの範囲内のものを、合計12点用いた。
【0053】
(2)塩化ビニル樹脂組成物の耐衝撃性:
アクリルゴム系グラフト共重合体を衝撃強度改質剤として塩化ビニル樹脂に配合し、得られた塩化ビニル樹脂組成物の耐衝撃性をアイゾット耐衝撃試験によって評価した。即ち、以下の2種の配合割合の塩化ビニル樹脂組成物(配合AおよびB)を製造し、190℃に調温した25mmφ単軸押出機で、1/2”×1/4”角棒を押し出し、ASTM D 256に準拠して評価した。なお、配合Aの塩化ビニル樹脂組成物は23℃で、配合Bの塩化ビニル樹脂組成物は0℃で測定し、それぞれ測定A、測定Bと記載した(表2)。
【0054】
配合A:
信越化学社製塩化ビニル樹脂(数平均重合度700) 100部
日東化成社製ジブチル錫マレート 3.5部
花王社製ステアリルアルコール 0.8部
三菱レイヨン社製加工助剤メタブレンP−700 0.4部
三菱化学社製カーボンブラック#690B 0.5部
衝撃強度改質剤(アクリルゴム系グラフト共重合体) 7.5部。
【0055】
配合B:
信越化学社製塩化ビニル樹脂(数平均重合度1100) 100部
堺化学社製二塩基性亜リン酸鉛 2.5部
堺化学社製二塩基性ステアリン酸鉛 0.7部
境化学社製ステアリン酸鉛 0.5部
品川化工社製ステアリン酸カルシウム 0.9部
三井化学社製ポリエチレンワックス(数平均分子量2200) 0.1部
石原産業社製炭酸カルシウム 5.0部
三菱レイヨン社製加工助剤メタブレンP−501 1.0部
三菱化学社製カーボンブラック#690B 0.5部
衝撃強度改質剤(アクリルゴム系グラフト共重合体) 7.5部。
【0056】
(3)塩化ビニル樹脂組成物の耐候性試験後の衝撃強度:
上述した配合Bの塩化ビニル樹脂組成物を製造し、関西ロール(株)製6インチテストロール機を用いて、200℃、15rpmで5分間混練りし、200℃の金型に6分間はさみ、その後4.9MPaの圧力を加えながら冷却し、得られたシートからIzod試験片を切り出し、60℃に調温した大日本プラスチックス(株)製アイスーパーUVテスターに8時間かけ、60℃、95%に調温および調湿した恒温恒湿器に16時間入れる操作を5回繰り返し、その試験片のIzod衝撃強度を測定した。結果を測定Cとして記載した(表2)。
【0057】
<製造例i:ポリオルガノシロキサンゴム(A−S1)の製造>
テトラエトキシシラン2部、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン0.5部、およびジメチルシクロシロキサン(ヘキサメチルシクロトリシロキサン約5%、オクタメチルシクロテトラシロキサン約75%、デカメチルシクロヘキサシロキサン約20%の混合物)97.5部を混合し、シロキサン混合物100部を得た。ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムおよびデシルベンゼンスルホン酸をそれぞれ1部溶解した蒸留水200部に、上記シロキサン混合物100部を加え、ホモミキサーにて10,000rpmで予備攪拌し、ホモジナイザーにより29MPaの圧力で乳化、分散させ、オルガノシロキサンラテックスを得た。この混合液を、コンデンサーおよび攪拌翼を備えたセパラブルフラスコに移し、攪拌混合しながら80℃で5時間加熱し、その後20℃で放置し、48時間後に、水酸化ナトリウム水溶液でこのラテックスのpHを7.4に中和し、重合を完結して、ポリオルガノシロキサンゴム(A−S1)のラテックスを得た。
【0058】
<製造例ii:ポリオルガノシロキサンゴム(A−S2)の製造>
テトラエトキシシランを添加せず、かつγ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシランの添加量を1.0部に変更したこと以外は、製造例iと同様にして、ポリオルガノシロキサンゴム(A−S2)のラテックスを得た。
【0059】
参考例1>
製造例iで得たポリオルガノシロキサンゴム(A−S1)のラテックスを、その固形分が10部となるように採取し、攪拌機を備えたセパラブルフラスコに入れ、系内の蒸留水量が195部となるように蒸留水を追加した。次いで、(メタ)アクリレート系ゴム成分の単量体として、アリルメタクリレート2.0%を含むn−ブチルアクリレート78部、およびtert−ブチルヒドロペルオキシド0.32部の混合液を仕込み、10分間攪拌し、この混合液をポリオルガノシロキサンゴム(A−S1)に浸透させた。次いで、ポリオキシエチレンエーテル硫酸塩を0.5部追加し、さらに10分間撹拌し、窒素置換を行い、系内を50℃に昇温し、硫酸第一鉄0.002部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.006部、ロンガリット0.26部および蒸留水5部の混合液を仕込んでラジカル重合を開始させ、その後内温70℃で2時間保持し、重合を完了して、ポリオルガノシロキサン/ポリアルキル(メタ)アクリレート系複合ゴム(A)のラテックスを得た。
【0060】
このラテックスを一部採取し、複合ゴム(A)の粒子径分布を測定した。粒子径分布の測定結果を図1(質量分布)に示す。複合ゴム(A)の粒子径は、個数分布において、0.20μmに最大のピークを有する。また、質量分布から、複合ゴム(A)を構成する全重量の60%以上が粒子径50〜400nmの範囲内に存在することが分かる。
【0061】
また、この複合ゴム(A)のラテックスを乾燥して固形物を得、トルエンを用いて90℃で12時間抽出し、ゲル含量を測定したところ99.2%であった。
【0062】
次いで、この複合ゴム(A)のラテックスに、tert−ブチルヒドロペルオキシド0.06部、メチルメタクリレート10部、および2−クロロエタン酸ビニル2部の混合液を70℃にて15分間にわたり滴下し、その後70℃で4時間保持し、複合ゴム(A)へのグラフト重合(グラフト部(B)形成)を完了し、アクリルゴム系グラフト共重合体のラテックスを得た。この際のメチルメタクリレートの重合率は99.4%、2−クロロエタン酸ビニルの重合率は99.0%であった。
【0063】
このグラフト共重合体のラテックスを、硫酸アルミニウム1.5%の熱水200部中に滴下し、凝固、分離、洗浄し、75℃で16時間乾燥し、粉末状のグラフト共重合体(M1)を得た。
【0064】
<実施例
(メタ)アクリレート系ゴム成分の単量体として、アリルメタクリレート2.0%を含むn−ブチルアクリレート77部、2−クロロエタン酸ビニル1部、およびtert−ブチルヒドロペルオキシド0.32部の混合液を用いたこと以外は、参考例1と同様にして、ポリオルガノシロキサン/ポリアルキル(メタ)アクリレート系複合ゴム(A)のラテックスを得た。
【0065】
この複合ゴム(A)の粒子径は、個数分布において0.21μmに最大のピークを有し、質量分布から、複合ゴム(A)を構成する全質量の60%以上が粒子径50〜400nmの範囲内に存在していた。また、ゲル含量は99.5%であった。
【0066】
次いで、メチルメタクリレートの量を11部、2−クロロエタン酸ビニルの量を1部に変更したこと以外は、参考例1と同様にして、アクリルゴム系グラフト共重合体のラテックスを得た。この際のメチルメタクリレートの重合率は99.3%、2−クロロエタン酸ビニルの重合率は99.9%であった。
【0067】
このグラフト共重合体のラテックスを、塩化カルシウム1.5%の熱水200部中に滴下し、凝固、分離、洗浄し、75℃で16時間乾燥し、粉末状のグラフト共重合体(M2)を得た。
【0068】
<実施例
製造例iiで得たポリオルガノシロキサンゴム(A−S2)のラテックスを用い、かつ(メタ)アクリレート系ゴム成分の単量体として、アリルメタクリレート0.5%を含むn−ブチルアクリレート67部、およびtert−ブチルヒドロペルオキシド0.32部の混合液を用いたこと以外は、参考例1と同様にして、ポリオルガノシロキサンゴム(A−S2)に単量体混合液を浸透させ、ラジカル重合を開始させた。その後内温70℃で2時間保持した。引き続き、さらにアリルメタクリレート3.0%を含むn−ブチルアクリレート10部、2−クロロエタン酸ビニル1.0部、およびtert−ブチルヒドロペルオキシド0.32部の混合液を、70℃にて15分間にわたり滴下し、その後70℃で2時間保持し、複合ゴム(A)のラテックスを得た。
【0069】
この複合ゴム(A)の粒子径は、個数分布において0.21μmに最大のピークを有し、質量分布から、複合ゴム(A)を構成する全質量の60%以上が粒子径50〜400nmの範囲内に存在していた。また、ゲル含量は99.5%であった。
【0070】
次いで、メチルメタクリレートの量を11部、2−クロロエタン酸ビニルの量を1部に変更したこと以外は、参考例1と同様にして、アクリルゴム系グラフト共重合体のラテックスを得た。この際のメチルメタクリレートの重合率は99.3%、2−クロロエタン酸ビニルの重合率は99.9%であった。
【0071】
このグラフト共重合体のラテックス対して、参考例1と同様の処理を行い、粉末状のグラフト共重合体(M3)を得た。
【0072】
<実施例および
表1に示すモノマー種、量を採用したこと以外は、参考例1と同様にして、グラフト共重合体(M4)および(M5)を得た。
【0073】
<比較例1>
撹拌機を備えたセパラブルフラスコに、牛脂酸カリウムを固形分として0.7部溶解した蒸留水295部を加えて10分間攪拌し、さらにホウ酸0.3部、炭酸ナトリウム0.03部を加え、窒素置換をしてから50℃に昇温した。次いで、アリルメタクリレート2%を含むn−ブチルアクリレート88部、およびtert−ブチルヒドロペルオキシド0.4部の混合液を仕込み、30分間撹拌し、この混合液をポリオルガノシロキサン粒子に浸透させた。次いで、硫酸第1鉄0.002部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.006部、ロンガリット0.26部および蒸留水5部の混合液を仕込んでラジカル重合を開始させ、その後内温70℃で2時間保持し、重合を完了して、ポリアルキル(メタ)アクリレート系ゴムラテックスを得た。
【0074】
このラテックスを一部採取し、参考例1と同様にポリアルキル(メタ)アクリレート系ゴムの粒子径を測定したところ、0.2μmをピークとする単分散であった。また、ゲル含量は97.3%であった。
【0075】
このポリアルキル(メタ)アクリレート系ゴムラテックスに、tert−ブチルヒドロペルオキシド0.06部、およびメチルメタクリレート12部の混合液を70℃にて15分間にわたり滴下し、その後70℃で4時間保持し、ポリアルキル(メタ)アクリレート系ゴムへのメチルメタクリレートのグラフト重合を完了し、アクリルゴム系グラフト共重合体のラテックスを得た。この際のメチルメタクリレートの重合率は、97.2%であった。
【0076】
このグラフト共重合体のラテックスを、硫酸アルミニウム1.0%の熱水200部中に滴下し、凝固、分離、洗浄し、75℃で16時間乾燥し、粉末状のアクリルゴム系グラフト共重合体(C1)を得た。
【0077】
<比較例2>
市販のMBS系改質剤(三菱レイヨン社製、商品名メタブレンC−223)を比較の為に、衝撃強度改質剤として使用した。
【0078】
以上の参考例、実施例および比較例の組成を表1に、その測定結果を表2に示す。
【0079】
【表1】
Figure 0003946089
【0080】
【表2】
Figure 0003946089
【0081】
表2に示す結果から明らかなように、実施例1〜のグラフト共重合体(M)〜(M5)を衝撃強度改質剤として塩化ビニル樹脂に配合して得た樹脂組成物は、常温、低温問わず耐衝撃性に優れ、かつ耐候性試験後の耐衝撃性も良好であった。また、これらの成形時の加工性についても塩素基を含まないものに比較して良好であった。一方、比較例1のアクリルゴム系グラフト共重合体(C1)を配合した樹脂組成物は、耐衝撃性が不十分であった。また、比較例2の市販のMBS系改質剤を配合した樹脂組成物は、耐候性試験後の試験片の耐衝撃性が不良であり、耐候性も不十分であった。
【0082】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のグラフト共重合体は、汎用性があり、少量添加で樹脂の耐衝撃性(特に低温衝撃性)を向上させ、かつ耐候性や加工性にも優れた樹脂組成物を与える衝撃強度改質剤として非常に有用である。また、本発明の製造方法は、上述のような優れたグラフト共重合体を簡易且つ良好に製造できる方法である。
【0083】
また、本発明の樹脂組成物は、上述のような各種の特性に優れた組成物であり、面衝撃強度およびシャルピー衝撃強度等が必要な窓枠、パイプおよび平板等の異型押出し成形品など、各種用途において非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例における粒子径分布の測定結果を示す図である。

Claims (9)

  1. ポリオルガノシロキサン/ポリアルキル(メタ)アクリレート系複合ゴム(A)に、ビニル系単量体をグラフト重合させてグラフト部(B)を形成したグラフト共重合体において、
    複合ゴム(A)およびグラフト部(B)の両方が、塩素基を含有する単量体ユニットを含むことを特徴とするグラフト共重合体。
  2. ポリオルガノシロキサン/ポリアルキル(メタ)アクリレート系複合ゴム(A)の60質量%以上のものの粒子径が、50〜600nmの範囲内にある請求項1記載のグラフト共重合体。
  3. 複合ゴム(A)を構成するポリオルガノシロキサン/ポリアルキル(メタ)アクリレートの質量比が、1/99〜99/1の範囲内にある請求項1または2記載のグラフト共重合体。
  4. 複合ゴム(A)を構成するポリアルキル(メタ)アクリレートが、架橋度の異なる部分を含む請求項1〜3の何れか一項記載のグラフト共重合体。
  5. 塩素基を含有する単量体ユニットが、ビニル系単量体に由来するユニットである。請求項1〜4の何れか一項記載のグラフト共重合体。
  6. 塩素基を含有する単量体ユニットを構成する塩素基含有単量体が、23℃、1気圧下において液体状態をとる単量体である請求項1〜5の何れか一項記載のグラフト共重合体。
  7. 熱可塑性樹脂100質量部と、請求項1〜6の何れか一項記載のグラフト共重合体0.1〜30質量部とを含んでなる樹脂組成物。
  8. 熱可塑性樹脂が、硬質塩化ビニル系樹脂である請求項7記載の樹脂組成物。
  9. 請求項1〜6の何れか一項記載のグラフト共重合体を製造するための方法であって、複合ゴム(A)およびグラフト部(B)のどちらか一方もしくは両方を、乳化重合法により製造することを特徴とするグラフト共重合体の製造方法。
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