JP3943783B2 - 固体電解コンデンサ内蔵基板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性高分子化合物を固体電解質として用いた固体電解コンデンサの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電解コンデンサは、絶縁性酸化皮膜形成能を有する金属、例えばアルミニウムやタンタル等のいわゆる弁金属を陽極に用い、この金属の表面を陽極酸化して誘電体層となる絶縁性酸化皮膜を形成した後、実質的に陰極として機能する電解質層を形成し、さらにグラファイトや銀などの導電層を陰極として設けることにより形成される。
【0003】
例えばアルミニウム電解コンデンサは、エッチング処理により比表面積を拡大した多孔質アルミニウム箔を陽極とし、この陽極表面に形成した酸化アルミニウム層と陰極箔との間に、電解液を含浸させた隔離紙を設けた構造となっている。
【0004】
絶縁性酸化皮膜と陰極との問の電解質層に電解液を利用する電解コンデンサは、シーリング部分からの液漏れや、電解液の蒸発によって寿命が決定されるなどの問題がある。これに対し、金属酸化物や有機化合物からなる固体電解質を用いた固体電解コンデンサは、このような問題がないため好ましい。金属酸化物からなる固体電解質としては、二酸化マンガンが代表的である。一方、有機化合物からなる固体電解質としては、例えば特開昭52−79255号公報、特開昭58−191414号公報に記載されている7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯塩が検討されている。
【0005】
ところで近年、電子機器の電源回路の高周波化に伴い、使用される電解コンデンサに対してもそれに対応した性能が求められている。しかし、上記した二酸化マンガンまたはTCNQ錯塩からなる電解質層を用いた固体電解コンデンサには、以下のような問題を有していた。
【0006】
二酸化マンガンからなる固体電解質層は、一般に硝酸マンガンの熱分解を繰り返すことにより形成するが、この熱分解の際の加熱によって、また、熱分解の際に発生するNOx ガスの酸化作用によって、誘電体である絶縁性酸化皮膜が損傷あるいは劣化するので、例えば漏れ電流値が大きくなってしまうなど、最終的に得られる固体電解コンデンサの諸特性が低くなりやすい。また、二酸化マンガンを固体電解質として用いると、高周波領域においてインビーダンスが高くなってしまう。一方、TCNQ錯塩は、電導度が〜1S/cm程度であり、現在の電解コンデンサに対する低インビーダンス化の要求に対して十分に満足とはいえない。また、TCNQ錯塩が絶縁性酸化皮膜との密着性に劣ること、半田固定時の熱安定性や経時的な熱安定性に欠けることなどから、信頼性が低くなってしまうことが指摘されている。さらには、TCNQ錯塩は高価であるという問題もあった。
【0007】
これらの欠点を補い、より優れた特性を得るため、製造コストが比較的低く、また、絶縁性酸化被膜との付着性が比較的良好で、熱安定性にも優れた高導電性の高分子化合物を利用する固体電解コンデンサが提案されている。
【0008】
例えば、特許第2725553号には、陽極表面の酸化皮膜上に、化学酸化重合によりポリアニリンを形成した固体電解コンデンサが記載されている。
【0009】
また、特公平8−31400号公報において、化学酸化重合法のみでは陽極酸化被膜上に強度の高い導電性高分子膜を形成することが困難であり、また、陽極酸化皮膜が電気絶縁体であるため、電解重合法で陽極酸化皮膜上に直接電解重合膜を形成することは、不可能ないし非常に困難であると記されている。そこで、酸化皮膜上に、金属または二酸化マンガンの薄膜を形成し、この上に、導電性高分子膜を電解重合法により形成することが記載されている。
【0010】
また、特公平4−74853号公報には、上記特公平8−31400号公報の二酸化マンガンの薄膜に替えて、化学酸化重合により形成した導電性高分子膜を設けた固体電解コンデンサが記載されている。これら両公報では、使用する導電性高分子として、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフランが挙げられている。
【0011】
また一方、電子機器の小型、薄型化の追求によって、そこに使用される電子部品の集積化および配線基板の多層化技術が大きく進展している。従って電子部品にはより一層の小型・高性能化が、また回路基板には薄さ・多層化による高機能化が要求されている。特に最近開発が進んだICカードでは、カードの厚みが1mm以下、また携帯型パーソナルコンピュータでは厚みが20mm以下と非常に薄いものとなり、そこに搭載される電子部品や、それらを実装した配線基板に対して数mm〜数百ミクロンの厚みが要求されている。
【0012】
しかし、上述の固体電解コンデンサは、いずれも単体の部品として製造され、配線基板に半田層を介して実装され使用されている。このような実装方法では、電子部品の集積化・高密度化に限界が生じてしまう。
【0013】
そこで、固体電解コンデンサを配線基板の抵抗機能や導電体パターンと同様に、予め基板と一体的に形成しておけば、単体としてのコンデンサを基板上に実装する必要がなく、電子部品の高密度実装化や回路基板の薄型化、およびノイズ対策の観点から有効であると考えられる。この考え方は、特開平2−54510号公報、あるいは特許第2950587号公報でその方法が開示されており、一枚の基板上に複数個の固体電解コンデンサを形成した回路基板が提案されている。
【0014】
特開平2−54510号公報では,絶縁基板上に電気導体、および絶縁性酸化皮膜を形成できる弁金属基体のパターンを形成し、この弁金属基体パターンの1箇所もしくは複数箇所の表面に絶縁性酸化皮膜層、複素環式化合物の導電性ポリマー層、導電体層を順次形成してなる固体電解コンデンサ内蔵回路基板を作製する方法が開示されている。また絶縁基板の両面に電気導体、および絶縁性酸化皮膜を形成できる弁金属基体のパターンを形成し、この金属基体パターンの1箇所もしくは複数箇所の表面に絶縁性酸化皮膜層、複素環式化合物の導電性ポリマー層、導電体層を順次形成して固体電解コンデンサ内蔵回路基板を構成した後、この回路基板の両面に他の回路基板を積層して多層構造とした固体電解コンデンサ内蔵回路基板も提案されている。同公報には、導電性高分子を用いた固体電解コンデンサを回路基板の抵抗体層や導電体パターンと同様に予め基板と一体に形成しておけば、個々のコンデンサを回路基板上に実装する必要がなく、電子部品の高密度実装化において有意義であり、かつノイズ対策といった電気特性的にも好ましいものになるという趣旨の効果が記載されている。
【0015】
絶縁基板としては、特に具体的な例示は示されていないが、柔軟性のある樹脂製絶縁基板の適用可能性が示唆されている。
【0016】
弁金属基体パターンは、まず絶縁基板上に銅箔等で電気導体部分を形成し、その上に、表面に絶縁性酸化皮膜が形成可能なアルミニウム箔等を設置することにより形成している。銅箔等上にアルミニウム箔等の金属基体パターンを形成する方法は、箔の貼り付け処理後、エッチング処理して所定形状のパターンを形成するか、銅箔等の電気導体部分上に導電性ペーストを印刷して形成する方法が記載されている。
【0017】
弁金属基体パターンを金属箔のエッチング処理により形成した場合には、金属基体パターン上に電気化学的手法により絶縁性酸化皮膜を形成する。また、印刷により形成した場合には、絶縁性酸化皮膜を形成できる物質を塗布し、熱処理等により形成する。特にアルミニウムを用いる場合には、金属基体パターン形成後、表面を粗面化しておき、この表面に酸化皮膜を形成する。複素環式ポリマーはピロール、フラン、チオフエンの導電性ポリマーを用い、電解重合により、絶縁性酸化皮膜層上にポリマー層を形成している。複素環式ポリマー層上には、ポリマーが形成されている部分を除いてマスキング処理を行った後、カーボンペースト、銀ペーストを順次塗布・硬化をして導電体層を形成する。
【0018】
なお、同公報には固体電解コンデンサ内蔵回路基板およびその作製方法に関して、その他の情報は記載されていない。
【0019】
特許第2950587号公報においても、プリント基板上への固体電解コンデンサの形成方法が記載されている。同公報では、板状の陽極体(弁金属基体と同意)の両面に、誘電体層、電解質層および導電体層を順次生成し、各導電体層を介して陰極端子を設けてコンデンサ素子となし、このコンデンサ素子の両面に、所望の配線パターンを備えたプリント基板を、樹脂層を配して接合した固体電解コンデンサが開示されている。また、コンデンサ素子を、表面に誘電体層、導電性高分子の電解質層および導電体層が順次生成された複数の陽極体を貼り合わせて形成する請求項1記載の固体電解コンデンサの製造方法が提案されている。
【0020】
この発明は、固体電解コンデンサにおいて、板状の陽極体の両面に、誘電体層、電解質層および導電体層を順次生成し、各導電体層を介して陰極端子を設けてコンデンサ素子となし、このコンデンサ素子の両面に、所望の配線パターンを備えたプリント基板を、樹脂層を配して接合したことを特徴としている。また、この固体電解コンデンサの製造方法において、コンデンサ素子を、一方の表面に誘電体層、電解質層および導電体層が順次生成された複数の陽極体を貼り合わせて形成することを特徴としている。
【0021】
これらの特徴により、機械的強度が脆弱な固体電解質であっても、両面に配置されるプリント基板により保護され、信頼性の高い固体電解コンデンサを得ることができる。また、プリント基板に予め所望の配線パターンを形成しておけば、他の電子部品の実装することができ、高密度実装が容易になる。更に、この固体電解コンデンサの製造方法において、単体の基体に順次電解質層等を生成することにより、貼り合わせる陽極体の表面の電解質層等を各々均一に生成することが容易になり、製造工程が簡略になるほか信頼性が向上すると記載されている。
【0022】
なお、同公報には固体電解コンデンサを内蔵した回路基板、およびその作製方法に関して、その他の情報は記載されていない。
【0023】
本発明者らは、上記特開平2−54510号公報に記載されているように絶縁基板上に電気導体および絶縁酸化被膜を形成できる弁金属基体のパターンを形成し、この弁金属基体パターンの1箇所もしくは複数箇所の表面に絶縁性酸化被膜層、複素環式化合物の導電性ポリマー層、導電体層を順次形成して固体電解コンデンサ内蔵回路基板を作製した。このようにして作製した固体電解コンデンサでは、絶縁性酸化皮膜を形成できる弁金属基体のパターンの表面のみしか利用していない。つまり絶縁基板上の電気導体と、弁金属基体パターンが接している面はコンデンサとして機能していない。
【0024】
電解コンデンサの静電容量は、一般に
ε(酸化皮膜の誘電率)×S(酸化皮膜の表面積)/d(酸化皮膜の厚み)
に比例する。静電容量を増大させるため、一般的には表面積を拡大する方法を採り、電極表面のエッチング(拡面化)を行う方法が有効とされている。
【0025】
特開平2−62028号公報には、エッチング処理や絶縁性酸化皮膜層形成処理をしたアルミニウム箔を陽極電極とし、セパレータを隔てて陰極箔と対向させ、これら電極を巻回して一体化して電解コンデンサの電極部を構成している。この場合陽極および陰極箔は、表裏両面が機能している。
【0026】
上式に従い、酸化被膜の厚みや、酸化皮膜の誘電率が一定とすれば、電解コンデンサの静電容量は、酸化皮膜が成膜されている電極表面積が大きいほど大きくなる。基板に一体化させて形成した電解コンデンサでは、実質的な電極面積が表面だけであるから、箔の両面を使用し、巻回して電極部を形成した電解コンデンサの半分の静電容量しか得られないことになる。
【0027】
このように基板一体形成タイプの電解コンデンサでは、電極巻回しタイプの電解コンデンサと同一の静電容量を得ようとすれば、2倍の電極面積を必要とし、高容量になるほど基板に占めるコンデンサ面積が増大してしまう。また製造コストのアップも懸念される。
【0028】
このように、基板一体形成タイプの電解コンデンサが基板の高性能化、高特性化や、製品の薄型化に寄与できるとしても、電極面積増による基板の大型化や、コスト増が顕在化すれば、有効な電解コンデンサの形成方法とはいえなくなる可能性がある。
【0029】
【発明が解決しようとする課題】
本究明の目的は、基板一体形成タイプの電解コンデンサにおいて、高分子固体電解質を適用して電極面の両面が利用可能な電解コンデンサを形成し、電極巻回しタイプの電解コンデンサと比較した場合、同一電極面積で、これと同様な静電容量を得ることが可能になる電解コンデンサを作製することによって、小型・薄型化を達成し、高容量の固体電解コンデンサ内蔵回路基板およびその作製方法を実現することである。
【0030】
【課題を解決するための手投】
このような目的は、下記(1)〜(4)のいずれかによって達成される。
(1) 絶縁性樹脂基板と、
この絶縁性樹脂基板と一体化されかつ絶縁性酸化皮膜が形成可能な弁金属基体を有し、
前記絶縁性樹脂基板には前記弁金属基体の両面を開放可能な窓部を有し、
少なくとも前記弁金属基体の窓部には絶縁性酸化皮膜、高分子電解質層、導電体層が順次有形成されている固体電解コンデンサを有する固体電解コンデンサ内蔵基板。
(2) 前記高分子電解質層は、置換もしくは非置換のπ共役系複素環式化合物を原料モノマーとする導電性高分子化合物を含有する上記(1)の固体電解コンデンサ内蔵基板。
(3) 前記弁金属基体は、Al、Ta、TiおよびNbの少なくとも1種を含有する金属または合金から形成されている上記(1)または(2)の固体電解コンデンサ内蔵基板。
(4) 絶縁性樹脂基板上に両面に貫通した窓部を形成し、
少なくともこの窓部の一部に弁金属基体を基板と一体となるように配置し、
少なくとも前記窓部の弁金属基体に絶縁性酸化皮膜、高分子電解質層、導電体層を順次形成して固体電解コンデンサを形成する固体電解コンデンサ内蔵基板の製造方法。
【0031】
【作用】
現在に至るまで、アルミ電解コンデンサは単品としての部品しか販売されていない。単品の部品は、リード等で接合するのが一般的であるが、電解コンデンサを多数使用する場合、その基板上に占める面積及び、体積はかなりなものになる。
【0032】
アルミ電解コンデンサの基板一体型が商品化されていない理由としては、従来のアルミ電解コンデンサは、電解質に液体を使用していたため、構造上、一体成形が不可能であったことや、また、コンデンサに使用する箔は100μm 前後で非常に薄く、その上に他の部品を載せるという発想がなかったものと推測できる。
【0033】
本発明者らは、近年、固体電解質を用いた固体電解コンデンサが商品化されていることに注目し、この固体電解コンデンサを基板上に一体形成することに鋭意検討を重ね、本発明に至ったのである。
【0034】
先に述べたように、基板と一体に電解コンデンサを形成する考え方はすでに公知であり、特開平2−54510号公報において開示されている。
【0035】
同公報ではまず,絶縁性樹脂基板と、各電子部品を電気的に接続するための電気導体、およびアルミニウムといった弁金属からなる絶縁性酸化皮膜を形成できる弁金属基体を貼り付けるなどの手段により一体的に形成している。そして所望の電解コンデンサパターンを得るため、この弁金属基体を化学的にエッチングしてコンデンサ電極形状にバターニングしている。さらにこの弁金属基体パターンの1箇所もしくは複数箇所の表面に絶縁性酸化皮膜層、複素環式化合物の導電性ポリマー層、導電体層を順次形成した後、固体電解コンデンサ内蔵回路基板が得られると記載されている。
【0036】
同公報には、その他の適用可能性のあるデバイスの構造としてフレキシブルな基板上への電解コンデンサの形成や、また絶縁基板の両面に固体電解コンデンサ内蔵回路基板を構成した後、他の回路基板を積層して多層構造とした固体電解コンデンサ内蔵回路基板も提案されている。上記報告には、これ以外の電解コンデンサ構造、および設計に関する記載はない。
【0037】
特開平2−54510号公報に開示されている手法に基づいて固体電解コンデンサを基板上に一体形成する際、電解コンデンサの電極として機能しているのは基板表面に露出している片面のみである。これは電極箔の両面を使用する通常の電解コンデンサに比べて電極の使用率が半減しており、高容量の電解コンデンサを作製する場合には著しく不利である。
【0038】
また、登録第2950587号公報において記載されている、プリント基板上への固体電解コンデンサの形成方法では、板状の陽極体の両面に、誘電体層、電解質層および導電体層を順次生成し、各導電体層を介して陰極端子を設けてコンデンサ素子となし、このコンデンサ素子の両面に、所望の配線パターンを備えたプリント基板を、樹脂層を配して接合した固体電解コンデンサである。すなわち、一旦、固体電解コンデンサを形成した後、基板と一体化する手法である。
【0039】
本発明の固体電解コンデンサ付き電子回路基板では、絶縁基板であるプリント基板を出発材料にしており、絶縁基板上に、電気導体パターン、電解コンデンサの陽極基体、絶縁性酸化皮膜、高分子電解質層、および導電体層を順次形成して固体電解コンデンサを形成している。このため、上記公報とは根本的に作製方法が異なっている。
【0040】
そこで、固体電解コンデンサを基板上に一体形成する実験検討をさらに進めた結果、電極両面を効率的に利用できる手法を考案するに至った。本発明では、絶縁基板上の電解コンデンサが形成される領域において、予め電解コンデンサの電極形成面積部分の基板を除去すべく、窓部として貫通穴を形成しておく。次に絶縁基板上の電解コンデンサが形成される領域以外の部分について電気導体をパターニングする。パターニング後、貫通穴処理が施された電解コンデンサの電極形成面積部分を覆うように絶縁性酸化皮膜を形成できる弁金属基体のパターンを形成し、先にパターニングした電気導体と接続する。この弁金属基体パターンの1箇所もしくは複数箇所の表面に絶縁性酸化皮膜層、複素環式化合物の導電性ポリマー層等、導電体層を順次形成してなる固体電解コンデンサ内蔵回路基板を作製する。
【0041】
このように、絶縁基板上の電解コンデンサ形成領域において、予め窓部となる貫通穴を形成し、この部分を覆うように絶縁性酸化皮膜を形成できる弁金属基体のパターンを形成、配置することにより、基板上に一体的に形成された固体電解コンデンサにおいて、電極として両面の使用が可能になった。このような手法により、電極両面が利用されている構造を有する基板上に一体的に形成された固体電解コンデンサが得られることは、従来報告されていない。すなわち、電極両面が使用可能な基板上に一体的に形成された固体電解コンデンサが作製可能であることは、本発明により初めて見いだされたことである。
【0042】
本発明により、従来の基板上に一体的に形成された固体電解コンデンサに比べて、約半分の電極面積で同一静電容量の電解コンデンサを作製することができる。また複数個のコンデンサが一つの基板上に作製できることが可能になり、部品全体の大きさが飛躍的に小さくなる。さらに個々のコンデンサを回路基板上に実装する必要がなく、電子部品の高密度実装化において有意義である。また、部品間のリードが削減できたために、不要なインダクタンスも削減でき、回路設計時の不安定要因も削減できる。またノイズ対策といった電気特性的にも好ましいものになる。
【0043】
基板として、例えば、ポリイミドフィルム基板を用いた場合には、外部電極、配線、内部電極、有機高分子固体電解質膜から構成されるコンデンサ素子を直接形成することにより薄型で、フレキシブルな信頼性の高いコンデンサ素子付き基板を形成することができる。
【0044】
本発明の場合、コンデンサ部品が凸部となっているため、含浸、ペースト付作業がしやすい利点があり、リード接合作業も良好である。
【0045】
以上は、一枚の箔を加工した物であるが、その箔の下部または中心に芯材として陽極材と異なる材料を用いた場合でも可能である。この場合、芯材に耐エッチング性のよい材料を使用すれば、芯材の表面でちょうどエッチングが終了するため、エッチング深さの精度がよく、コンデンサ容量の精度が向上する。
【0046】
【発明の実施の形態】
本発明により製造される固体電解コンデンサ及びその作製方法を図1〜10に、別の作製方法による電解コンデンサの概略構成図(平面図)を図11に、その断面図を図12に、その断面積造の拡大図を図13に示す。図1〜10において、絶縁基板1上には銅箔等の電気導体2が形成され、この電気導体2の一部と接続されるようにアルミニウム箔等の表面に絶縁性酸化皮膜が形成できる弁金属基体パターン3が形成され、さらにこの弁金属基体パターン3の表面に絶縁性酸化皮膜が形成されている。そして、高分子電解質層6、グラファイトペースト層と銀ペースト層からなる陰電極層9が順次形成され、固体電解コンデンサを形成している。また、図11〜13において、絶縁基板31上には銅箔等の電気導体42が形成され、この電気導体42と接続されるようにアルミニウム箔等の表面に絶縁性酸化皮膜が形成できる弁金属基体パターン33が形成され、更にこの弁金属基体パターン33の表面に絶縁性酸化皮膜36、高分子電解質層39、グラファイトペースト層および銀ペースト層からなる陰電極層40を順次形成して固体電解コンデンサを形成している。以下、この固体電解コンデンサの各部の構成および形成方法について説明する。
【0047】
〔絶縁基板〕
絶縁基板は樹脂として一般に接着性や耐溶剤性等が良好な、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂や、あるいはエポキシ掛脂、ポリエステル樹脂等を適用することができる。また無機系材料としてはアルミナ基板といった金属酸化物系の基板を使用することも可能である。
【0048】
絶縁基板上の電解コンデンサが形成される部分については、電極部分の基板を貫通させて加工しておく。
【0049】
〔電気導体〕
電気的特性、後工程での加工性やコスト的観点からみて電気導体として銅を使用することが好ましい。電気導体の作製方法の槻略を説明すると、銅箔を絶縁基板に接着させたものに、レジストを塗布して露光・現像し、エッチングして電気導体回路(回路パターン)を形成する製造方法(サブトラクテイブ法)が一般的である。
【0050】
〔弁金属基体〕
弁金属基体は、絶縁酸化被膜形成後のある金属群もしくはその合金群から構成することにより、電解コンデンサの陽極基体として用いることができる。このような金属ないし合金としては、例えば、Al、Ta、Ti、NbおよびZrの1種、またはこれらの少なくとも1種を含有する合金が好ましい。そして、これらの金属ないし合金を、箔状、板状の形状に加工して陽極基体とすることができる。
【0051】
弁金属基体のパターン形成方法としては、絶縁基板上の電気導体上に、表面に絶縁性酸化皮膜が形成可能なアルミニウム箔等を一体化して固定した後、エッチング処理して所定形状の電極パターンにパターニングする方法が一般的である。パターニング後は、前述のように窓部となる貫通穴加工をした絶縁基板の貫通穴部分を覆うように陽極基体が残存している状簸になる。最後にパターニングした陽極基体と、電気導体を接続する。陽極基体には、必要に応じ、非表面積拡大のためのエッチング処理を施し、図14に示すような凹凸が表面に形成される。
【0052】
〔絶縁性酸化皮膜〕
絶縁性酸化皮膜は、ホウ酸水溶液やアジピン酸アンモニウム水溶液を電解液として、陽極基体表面を陽極酸化等の処理によって酸化させることにより形成される。絶縁性酸化皮膜の厚さは、使用電圧、おおよそ数Vから20V程度に応じて適宜決定すればよいが、一般に10nm〜1μm 程度である。
【0053】
〔高分子電解質層〕
導電性高分子化合物からなる高分子電解質層は、化学酸化重合法のみにより形成する。化学酸化重合は、例えば以下に示す手順で行うことが好ましい。
【0054】
まずどちらの方法を選択するにしても、前処理として、絶縁基板上に所定形状に作製された上記陽極基体パターン以外の部分にレジストを塗布して保護する処理を行い、高分子電解質層の形成が完全に完了した後にレジストを剥離する。この処理によって陽極基体パターン以外の部分に高分子電解質が形成されるのを防ぐことができる。レジスト処理後、陽極基体パターン上の絶縁性酸化皮膜上に、酸化剤を0.001〜2.0mol/l程度含む溶液、またはこれにドーバント種を与える化合物を含ませた溶液を塗布または噴霧などの方法により均一に付着させる。次に、導電性高分子化合物のモノマーを好ましくは少なくとも0.01mol/l以上含む溶液またはモノマー自体を、絶縁性酸化皮膜に直接接触させる。これにより、導電性高分子化合物が合成される。
【0055】
化学酸化重合に使用される酸化剤は特に限定されないが、代表的なものを例示すれば、ヨウ素、臭素、ヨウ化臭素などのハロゲン化物、五フツ化珪素、五フッ化アンチモン、四フッ化珪素、五塩化リン、五フッ化リン、塩化アルミニウム、塩化モリブデンなどの金属ハロゲン化物、硫酸、硝酸、フルオロ硫酸、トリフルオロメタン硫酸、クロロ硫酸などのプロトン酸、三酸化イオウ、二酸化窒素などの酸素化合物、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、過酸化水素、過マンガン酸カリウム、過酢酸、ジフルオロスルホニルバーオキサイドなどの過酸化物が挙げられる。
【0056】
また、必要に応じて含有される、トーバント種を与える化合物としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0057】
陰イオンがヘキサフロロリンアニオン、ヘキサフロロ砒素アニオンであり、陽イオンがリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属カチオンである塩、例えば、LiPF6 、LiAsF6 、NaPF6 、KPF6 、KAsF6 などである。これらに加えて、四フツ化ホウ素塩化合物、例えば、LiBF4 、NaBF4 、NH4BF4 、(CH34NBF4 、(n−C494NBF4 などである。さらに、スルホン酸またはその誘導体、例えば、P−トルエンスルホン酸、P−エチルベンゼンスルホン酸、P−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、メチルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、β−ナフタレンスルホン酸およびこれらの塩、例えば、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、2,6−ナフタレンジスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウムなどである。
【0058】
金属ハロゲン化物、例えば、塩化第二鉄、臭化第二鉄、塩化第二銅、臭化第二銅などである。
【0059】
ハロゲン化水素酸、無機酸またはその塩、例えば、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、リン酸、硝酸、あるいは、これらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはアンモニウム塩、さらに過塩素酸、過塩素酸ナトリウム等の過ハロゲン酸、またはその塩などである。
【0060】
カルボン酸類、例えば、酢酸、シュウ酸、ギ酸、酪酸、コハク酸、乳酸、クエン酸、フタル酸、マレイン酸、安息香酸、サリチル酸、ニコチン酸等のモノまたはジカルポン酸、芳香族複素環式カルボン酸類や、トリフルオロ酢酸等のハロゲン化されたカルボン酸およびこれらの塩等である。
【0061】
これらの酸化剤およびドーバント種を与えることができる化合物は、適切な溶液、つまり水や有機溶媒に溶解させた状態で用いる。溶媒は、単独で使用しても、2種以上混合して使用してもよい。混合溶媒は、ドーバント種を与える化合物の溶解度を高めるためにも有効である。混合溶媒としては、溶媒間の相溶性を有するもの、および、前記化合物との相溶性を有するものが適している。溶媒の具体例としては、有機アミド類、含硫化合物、エステル類、アルコール類などが挙げられる。
【0062】
化学酸化重合により合成される導電性高分子化合物としては、置換もしくは非置換のπ共役系複素環式化合物、共役系芳香族化合物またはヘテロ原子含有共役系芳香族化合物を原料モノマーとするものが好ましい。これらのうちでは、ポリアニリン、.ポリピロール、ポリチオフェンまたはポリフランが好ましく、特に、ポリアニリンまたはポリピロールが好ましい。
【0063】
このような導電性高分子化合物を与えるモノマーの代表例としては、未置換アニリン、アルキルアニリン類、アルコキシアニリン類、ハロアニリン類、o−フェニレンジアミン類、2,6−ジアルキルアニリン類、2,5−ジアルコキシアニリン類、4,4'−ジアミノジフエニルエーテル、ピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−プロピルピロール、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェンなどを挙げることができる。
【0064】
一方、電解酸化重合自体は、既知の方法に従えばよい。すなわち導電性下地層を作用極とし、対極電極とともに電解液中に入れ通電することにより電解酸化重合を行う。
【0065】
電解液には、導電性高分子化合物を与えるモノマーおよび支持電解質が含まれ、さらに、必要に応じ種々の添加物が含まれる。
【0066】
高分子電解質層に使用する導電性高分子化合物は、導電性下地層に使用する導電性高分子化合物と同様であり、置換もしくは非置換のπ共役系複素環式化合物、共役系芳香族化合物またはヘテロ原子含有共役系芳香族化合物を原料モノマーとするものが好ましい。
【0067】
高分子電解質層形成に用いるモノマーは、導電性下地層の説明において挙げた各種モノマーから選択すればよい。
【0068】
支持電解質は、組み合わせるモノマーおよび溶媒に応じてその都度選択されるが、代表的なものを例示すると、塩基性の化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。また、酸性の化合物としては、硫酸、塩酸、硝酸、臭化水素、過塩素酸、トリフルオロ酢酸、スルホン酸などを挙げることができる。また、塩としては、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化カリウム、塩化カリウム、硝酸カリウム、過ヨウ素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、ヨウ化アンモニウム、塩化アンモニウム、四フツ化ホウ素塩化合物、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムパークロライド、テトラプチルアンモニウムパークロライド、テトラメチルアンモニウム、D−トルエンスルホン酸クロライド、ポロジサリチル酸トリエチルアミン、10−カンフアースルホン酸ナトリウムなどが例示できる。
【0069】
支持電解質の溶解濃度は、所望の電流密度が得られるように設定すればよいが、一般的には0.05〜1.0 mol/lの範囲内に設定すれば特に問題はない。
【0070】
電解酸化重合で用いる溶媒は特に限定されず、例えば、水、プロトン性溶媒、非プロトン性溶媒またはこれらの溶媒の2種以上を混合した混合溶媒から適宜選択すればよい。混合溶媒としては、溶媒間の相溶性を有するもの、およびモノマーや支持電解質との相溶性を有するものが適している。
【0071】
プロトン性溶媒としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、tert−ブチルアルコール、メチルセロソルフ、ジエチルアミン、エチレンジアミンなどが例示できる。非プロトン性溶媒としては、塩化メモレン、1,2−ジクロロエタン、二硫化炭素、アセトニトリル、アセトン、プロピレンカーボネート、ニトロメタン、ニトロベンゼン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジオキサン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ピリジン、ジメチルスルホキシドなどが例示できる。
【0072】
電解酸化重合には、定電圧法、定電流法または電位掃引法のいずれを用いてもよい。また、電解重合過程において定電流法と定電圧法とを組み合わせて行う方法も利用可能である。電流密度は特に限定されないが、最大で500mA/cm2 程度である。
【0073】
なお、化学酸化重合及び、電解酸化重合時において、超音波を照射しながら反応を行うことも可能である。この場合非照射時に比べて、得られる高分子電解質層の膜質を改善できる。この手法については、本出願人が先に出願した特願平10−281991号に詳細に開示してあるのでここでは省略する。
【0074】
高分子電解質層の厚さは、図14に示すように、エッチング等によって形成された陽極基体102表面の凹凸を完全に埋めることができるように適宜決定すればよいが、一般に5〜100μm 程度とする。なお、この場合の厚さは、高分子電解質層104の最大厚さである。この電解コンデンサは、陽極基体102上に、その陽極酸化により形成された酸化皮膜103と、高分子電解質層104と、陰極105を有する構成例を示したものである。
【0075】
〔その他の構成〕
導電体層として、グラファイトペースト層、および銀ペースト層は、スクリーン印刷法、スプレー塗布法により形成することができる。なお、これらのペースト層も電解コンテンサ形成部分以外には塗布されないように、メタルマスク等で電極部以外の部分を保護する必要がある。陰極構造として、グラファイトカーボン層と銀ペースト層が設けられているが、これは銀ペーストのみで陰極を形成した場合に比べて、カーボン層を設けることにより、銀のマイグレーションを防ぐことができる。
【0076】
最後に陰極の一部と陰極側の電気導体パターンを接続した後、電極表面を樹脂コーティングして外装処理を行い、電解コンデンサとする。
【0077】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0078】
<実施例1>
表1に示す高分子電解質層を有する固体電解コンデンサを、以下の手順で作製した。
【0079】
以下に作製したサンプルの電極面積は各サンプルともに同一面積である。
【0080】
図1〜10は、本発明のコンデンサ素子付き基板の製造工程におけるコンデンサ素子の形成工程を示す概略断面図である。以下に図を参照しつつその製造方法について説明する。
【0081】
図1に示すように、10μm の電気導体である銅箔2が両面に貼り合わされた厚さ1mmの樹脂基板1(10cmXl0cm)に、所定の位置3箇所に、図2に示すような1cm2 (サンプルNo. 1)、2cm2 (サンプルNo. 2)、3cm2 (サンプルNo. 3)のそれぞれ窓部となる貫通穴1aを開けた。図3に示すように、銅箔面は電気導体パターン2aを形成するために銅箔の不要部分をエッチングし、所定の電気配線パターン2aを形成した。電解コンデンサの陽極電極との接続部分を除いて、このエッチングされた銅箔パターン2aの上に、無電解メッキにより3μm のニッケルメッキを施し、更にその上に0.08μm の金メッキを施した基板を作製した。また、基板上に各種電子部品を搭載するためのスルーホール加工を施した。
【0082】
次に、図4に示すように電解コンデンサ用陽極として使用する厚さ100μm のアルミニウム箔3(予め拡面化処理が済んでいる。)を所定の寸法に切断して、先に基板1上に作製した貫通穴1aを覆うように貼り付け、基板1と一体化させた。そして、図5に示すように、電気配線パターン2aの端部である銅箔部分とアルミ箔3を溶接、あるいは半田等を用いて電気的に接続し、接続部分のみを樹脂4でコーティングした。
【0083】
続いて、図6に示すように、窓部に相当するアルミニウム陽極基体3両面部分をマスキングして保護し、それ以外の部分にレジスト5を塗布した。ついで、陽極基体であるアルミニウム箔3が一体化された基板1を、アルミニウム陽極基体3の表面が浸漬するように、7wt%、pH=6.0に調整されたアジピン酸アンモニウム水溶液中に入れ、化成電流密度が50〜100mA/cm2 、化成電圧が35Vの条件下でアルミニウム陽極基体3の表面を陽極酸化によって酸化させ、陽極基体3表面に絶縁性酸化皮膜を形成した。
【0084】
次いで、図7に示すように、レジスト処理した絶縁基板1のアルミニウム陽極基体3表面上に、化学酸化重合によるポリピロールからなる高分子電解質層6を形成した。ポリピロールは、蒸留精製したピロールモノマー:0.1 mol/l、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム:0.1 mol/l、硫酸鉄(III):0.05 mol/lを含むエタノールー水渥合溶液セル中に絶縁基板を入れ、30分浸漬・撹拌して化学酸化重合を行うことにより型成した。この化学酸化重合処理を計3回繰り返した。この結果、最大厚さ50μm 程度の高分子電解質層を形成した。
【0085】
次に、図8に示すように、高分子電解質層を形成後、絶縁基板をレジスト剥離液中に浸漬させてコーティングしてあったレジストを剥離した。この処理により、アルミニウム陽極基体3の絶縁性酸化皮膜上のみに高分子電解質層6を形成した。
【0086】
次に、図9に示すように、高分子電解質層6表面に、カーボンペースト、銀ペーストを塗布して陰極9を形成した後、陰極9のリード端子部分と電気導体パターン2aの一部分と接続した。この際、アルミ二ウム陽極基体3近傍に予め作製しておいたスルーホール8を利用してアルミニウム陽極基体両面の高分子電解質上に形成されている陰極9間をスルーホール8に充填したペーストを介して接続した。
【0087】
最後に、図10に示すようにアルミニウム陽極基体上の陰電極9上にエポキシ樹脂10をコーティングして外装処理を行い、固体電解コンデンサ、サンプルNo. 1〜3を完成させた。
【0088】
<実施例2>
図11は、本発明のコンデンサ素子付き基板の他の構成例を示す平面図であり、図12はその断面図、図13はコンデンサ部分の拡大図である。以下にその製造方法について説明する。
【0089】
10μm の銅箔が両面に貼り合わされた厚さ1mmの樹脂基板31(10cmXl0cm)に、所定の位置1カ所に、1cm2 (サンプルNo. 4)の貫通穴31aを開けた。このとき、貫通穴31aの一部分を所定の寸法よりも大きめに加工しておいた。銅箔面は、電気導体パターンを形成するために銅箔の不要部分をエッチングし、所定の電気配線パターン41,42を形成した。電解コンデンサの陽極電極との接続部分を除いて、このエッチングされた銅箔パターン41,42の上に、無電解メッキにより3μm のニッケルメッキを施し、更にその上に0.08μm の金メッキを施した基板を作製した。また、基板上には各種電子部品を搭載するためのスルーホール加工を施した。
【0090】
次に、電解コンデンサ用陽極として使用する厚さ100μm のアルミニウム箔33(予め拡面化処理が済んでいる。)を所定の寸法に切断し、先に基板31上に作製した貫通穴31aを覆うように貼り付け、基板31と一体化させた。この際、先に加工してある拡張した貫通穴部分を塞がないようにして一体化させた。(固定する面積は実施例1と同一である。)電気配線パターンの端部である銅箔部分42と、アルミ箔を溶接、あるいは半田等を用いて電気的に接続し、接続部分を樹脂34でコーテイングした。
【0091】
以下実施例1と同様にして、アルミニウム陽極基体33の表面を陽極酸化によって酸化させ、絶縁性酸化皮膜36、高分子電解質層39、カーボンペースト、銀ペーストを塗布して陰極40を形成し、配線パターン41と接続部43を介して接続し、固体電解コンデンサ、サンプルNo. 4を形成した。
【0092】
<実施例3>
実施例1と同様に貫通孔の面積を1cm2 として樹脂基板を加工し、アルミニウム陽極基体表面部分をマスキングして保護し、絶縁基板表面にレジストを塗布した。
【0093】
次いで、レジスト処理した絶縁基板のアルミニウム陽極基体表面上の絶縁性酸化被膜上に超音波を照射しながら、化学酸化重合によるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)からなる高分子電解質層を形成した。ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)は、蒸留精製した3,4−エチレンジオキシチオフェンモノマー:0.5 mol/l、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム:0.1 mol/l、硫酸鉄(III):0.05 mol/lを含むエタノール−水混合溶液セル中に絶縁基板を入れ、60分浸漬・撹拌して化学酸化重合を行うことにより形成した。この化学酸化重合処理を計3回繰り返した。この結果、最大厚さ50μm 程度の高分子電解質を形成した。
【0094】
以下実施例1と同様にして固体電解コンデンサ(サンプルNo. 5)を形成した。
【0095】
<実施例4>
実施例1と同様に貫通孔の面積を1cm2 として樹脂基板を加工し、アルミニウム陽極基体表面部分をマスキングして保護し、絶縁基板表面にレジストを塗布した。
【0096】
次いで、レジスト処理した絶縁基板のアルミニウム陽極基体表面上の絶縁性酸化皮膜上に、超音波を照射しながら、化学酸化重合によるポリピロールからなる高分子電解質層を形成した。ポリピロールは、蒸留精製したピロールモノマー:0.1 mol/l、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム:0.1 mol/l、硫酸鉄(III):0.05 mol/lを含むエタノール−水混合溶液セル中に絶縁基板を入れ、30分浸漬・撹拌して化学酸化重合を行うことにより形成した。この化学酸化重合処理を計3回繰り返した。この結果、最大厚さ50μm 程度の高分子電解質層を形成した。超音波照射源には周波数120kHz(サンプルNo. 6)と400kHz(サンプルNo. 7)を用いた。陽極基体と発振器(超音波振動子)の距離は20cmとした。発振器の設定出力は100W (サンプルNo. 6)と200W (サンプルNo. 7)であった。
【0097】
以下、実施例1と同様に処理して、固体電解コンデンサ、サンプルNo. 6と7を完成させた。
【0098】
<比較例1>
10μm の銅箔が両面に貼り合わされた厚さ1mmの樹脂基板1(10cm×10cm)について、貫通穴加工を行わないことを除いて、実施例1と同様にして固体電解コンデンサを完成させた(サンプルNo. 8)。
【0099】
これらのサンプルについて、120Hzにおける静電容量、100kHzにおけるインピーダンスおよび漏れ電流値を測定した。結果を表1に示す。
【0100】
また、超音波照射下での化学酸化重合により形成した高分子電解質の耐熱性を調べるために、耐熱試験を実施した。耐熱環境は85℃一定の温度下、大気中であり、そこにサンプルを放置し、所定時間放置後に特性値の変化を調べた。
【0101】
【表1】
Figure 0003943783
【0102】
表1に示す結果から、本発明の効果が明らかである。すなわち、貫通穴加工をしたサンプルでは、表1に示す静電容量特性が比較例のほぼ2倍になっており、両面の電極が機能していることがわかる。また、実施例2においても実施例1の結果と同様の結果が得られており、貫通穴の加工方法を変えても影響がないことがわかる。また高分子電解質の化合物を変えても同様な特性を得ることが可能である。また、超音波照射を行いながら化学酸化重合を行って高分子電解質の形成した場合には固体電解コンデンサの特性改善効果も得られる。さらに、信頼性試験としておこなった耐熱試験でも1000時間の特性変化が小さく、実用上問題がないことがわかった。
【0103】
以上の実施例の結果から、本発明の効果が明らかである。
【0104】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、基板一体形成タイプの電解コンデンサにおいて、電極巻回しタイプの電解コンデンサと比較した場合、同一電極面積で、同一の静電容量を得ることが可能になる電解コンデンサを作製することによって、小型・薄型化を達成し、高容量の固体電解コンデンサ内蔵回路基板およびその作製方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1により製造される固体電解コンデンサの製造工程を示した概略断面図である。
【図2】本発明の実施例1により製造される固体電解コンデンサの製造工程を示した概略断面図である。
【図3】本発明の実施例1により製造される固体電解コンデンサの製造工程を示した概略断面図である。
【図4】本発明の実施例1により製造される固体電解コンデンサの製造工程を示した概略断面図である。
【図5】本発明の実施例1により製造される固体電解コンデンサの製造工程を示した概略断面図である。
【図6】本発明の実施例1により製造される固体電解コンデンサの製造工程を示した概略断面図である。
【図7】本発明の実施例1により製造される固体電解コンデンサの製造工程を示した概略断面図である。
【図8】本発明の実施例1により製造される固体電解コンデンサの製造工程を示した概略断面図である。
【図9】本発明の実施例1により製造される固体電解コンデンサの製造工程を示した概略断面図である。
【図10】本発明の実施例1により製造される固体電解コンデンサの製造工程を示した概略断面図である。
【図11】本発明の実施例2により製造される固体電解コンデンサを示した概略平面図である。
【図12】図11のA−A’断面矢視図である。
【図13】図12の部分拡大図である。
【図14】本発明に用いられる固体電解コンデンサの概略構成を示した部分断面図である。
【符号の説明】
1,31 絶縁基板
2,41,42, 電気導体(銅箔)
2a 配線パターン
3,33 弁金属基体
6,36 高分子電解質層
11 導電体層
10 樹脂コーティング

Claims (4)

  1. 絶縁性樹脂基板と、
    この絶縁性樹脂基板と一体化されかつ絶縁性酸化皮膜が形成可能な弁金属基体を有し、
    前記絶縁性樹脂基板には前記弁金属基体の両面を開放可能な窓部を有し、
    少なくとも前記弁金属基体の窓部には絶縁性酸化皮膜、高分子電解質層、導電体層が順次有形成されている固体電解コンデンサを有する固体電解コンデンサ内蔵基板。
  2. 前記高分子電解質層は、置換もしくは非置換のπ共役系複素環式化合物を原料モノマーとする導電性高分子化合物を含有する請求項1の固体電解コンデンサ内蔵基板。
  3. 前記弁金属基体は、Al、Ta、TiおよびNbの少なくとも1種を含有する金属または合金から形成されている請求項1または2の固体電解コンデンサ内蔵基板。
  4. 絶縁性樹脂基板上に両面に貫通した窓部を形成し、
    少なくともこの窓部の一部に弁金属基体を基板と一体となるように配置し、
    少なくとも前記窓部の弁金属基体に絶縁性酸化皮膜、高分子電解質層、導電体層を順次形成して固体電解コンデンサを形成する固体電解コンデンサ内蔵基板の製造方法。
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