JP2000100665A - 固体電解コンデンサの製造方法 - Google Patents

固体電解コンデンサの製造方法

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JP2000100665A JP28199198A JP28199198A JP2000100665A JP 2000100665 A JP2000100665 A JP 2000100665A JP 28199198 A JP28199198 A JP 28199198A JP 28199198 A JP28199198 A JP 28199198A JP 2000100665 A JP2000100665 A JP 2000100665A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電解重合法により生成した導電性高分子化合
物からなる固体電解質を有する固体電解コンデンサにお
いて、良好なコンデンサ特性を安定して実現する。 【解決手段】 金属からなる陽極基体2を酸化して絶縁
性酸化被膜3を形成する工程と、前記絶縁性酸化被膜3
上に導電性下地層4を形成する工程と、超音波を照射し
ながら電解酸化重合を行って、導電性高分子化合物を含
む高分子電解質層5を前記導電性下地層4上に形成する
工程とを有し、前記高分子電解質層5を形成する際の超
音波出力値を、キャビテーション閾値の±10%以内と
する固体電解コンデンサの製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、導電性高分子化合
物を固体電解質として用いた固体電解コンデンサの製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】電解コンデンサは、絶縁性酸化被膜形成
能を有する金属、例えばアルミニウムやタンタルなどの
いわゆる弁金属を陽極に用い、この金属の表面を陽極酸
化して誘電体層となる絶縁性酸化被膜を形成した後、実
質的に陰極として機能する電解質層を形成し、さらにグ
ラファイトや銀などの導電層を陰極として設けることに
より、形成される。
【0003】例えばアルミニウム電解コンデンサは、エ
ッチング処理により比表面積を拡大した多孔質アルミニ
ウム箔を陽極とし、この陽極表面に形成した酸化アルミ
ニウム層と陰極箔との間に、電解液を含浸させた隔離紙
を設けた構造となっている。
【0004】絶縁性酸化被膜と陰極との間の電解質層に
電解液を利用する電解コンデンサは、シーリング部分か
らの液漏れや、電解液の蒸発によって寿命が決定される
などの問題がある。これに対し、金属酸化物や有機化合
物からなる固体電解質を用いた固体電解コンデンサは、
このような問題がないため好ましい。金属酸化物からな
る固体電解質としては、二酸化マンガンが代表的であ
る。一方、有機化合物からなる固体電解質としては、例
えば特開昭52−79255号公報、特開昭58−19
1414号公報に記載されている7,7,8,8−テト
ラシアノキノジメタン(TCNQ)錯塩が検討されてい
る。
【0005】ところで近年、電子機器の電源回路の高周
波化に伴い、使用される電解コンデンサに対してもそれ
に対応した特性が求められている。中でもインピーダン
スの低減が大きな課題となっている。しかし、上記した
二酸化マンガンまたはTCNQ錯塩からなる電解質層を
用いた固体電解コンデンサには、以下の問題がある。二
酸化マンガンからなる固体電解質層は、一般に硝酸マン
ガンの熱分解を繰り返すことにより形成するが、この熱
分解の際の加熱によって、また、熱分解の際に発生する
NOxガスの酸化作用によって、誘電体である絶縁性酸
化被膜が損傷あるいは劣化するので、例えば漏れ電流値
が大きくなってしまうなど、最終的に得られる固体電解
コンデンサの諸特性が低くなりやすい。また、二酸化マ
ンガンを固体電解質として用いると、高周波領域におい
てインピーダンスが高くなってしまう。一方、TCNQ
錯塩は、電導度が〜1S/cm程度であり、現在の電解コン
デンサに対する低インピーダンス化の要求に対して十分
に満足とはいえない。また、TCNQ錯塩が絶縁性酸化
被膜との密着性に劣ること、 半田固定時の熱安定性や
経時的な熱安定性に欠けることなどから、信頼性が低く
なってしまうことが指摘されている。さらには、TCN
Q錯塩は高価であるという問題もある。
【0006】これらの欠点を補い、より優れた特性を得
るため、製造コストが比較的低く、また、絶縁性酸化被
膜との付着性が比較的良好で、熱安定性にも優れた高導
電性の高分子化合物を利用する固体電解コンデンサが提
案されている。
【0007】例えば、特許第2725553号には、陽
極表面の酸化被膜上に、化学酸化重合によりポリアニリ
ンを形成した固体電解コンデンサが記載されている。
【0008】また、特公平8−31400号公報では、
化学酸化重合法では陽極酸化被膜上に強度の高い導電性
高分子膜が形成できず、また、陽極酸化被膜が電気絶縁
体であるため、電解重合法では陽極酸化被膜上に電解重
合膜を形成することが不可能ないし非常に困難であると
して、酸化被膜上に、金属または二酸化マンガンの薄膜
を形成し、この上に、固体電解質である導電性高分子膜
を電解重合法により形成することが記載されている。ま
た、特公平4−74853号公報には、上記特公平8−
31400号公報の二酸化マンガンの薄膜に替えて、化
学酸化重合により形成した導電性高分子膜を設けた固体
電解コンデンサが記載されている。これら両公報では、
使用する導電性高分子として、ポリピロール、ポリチオ
フェン、ポリアニリン、ポリフランが挙げられている。
【0009】また、特開平3−280519号公報に
は、陽極弁金属上に設けられた誘電体被膜(酸化被膜)
上、またはこの上に形成されたマンガン酸化物からなる
導電性被膜上に、超音波を照射しながら電解重合法によ
り導電性高分子の重合物を成長させて固体電解コンデン
サを製造する方法が記載されている。同公報には、超音
波を照射しながら電解重合を行うことにより、モノマ
ー、支持電解質、添加物等が誘電体被膜上の隅々にまで
行き渡り、導電性高分子の成長を滑らかにすることがで
き、また、陽極弁金属の細かなエッチングピット中にも
電解重合導電性高分子を成長させることが可能となるの
で、容量達成率を高くできる、という効果が記載されて
いる。同公報には、ここで用いる超音波は特別なもので
ある必要はない、と記載されている。実施例では50kH
zの超音波を用いているが、超音波に関してその他の情
報は記載されていない。同公報には、導電性高分子形成
のためのモノマーとして、ピロール、チオフェン、フラ
ンなどが挙げられている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上記特
開平3−280519号公報に記載されているように超
音波を照射しながら電解酸化重合を行って、導電性高分
子化合物からなる固体電解質層を形成し、固体電解コン
デンサを作製した。しかし、このようにして作製した固
体電解コンデンサでは、静電容量、高周波におけるイン
ピーダンス、漏れ電流値などの各種特性が、超音波照射
条件に応じて著しくばらつき、工業的な利用が実質的に
不可能であることがわかった。
【0011】本発明の目的は、電解重合法により生成し
た導電性高分子化合物からなる固体電解質を有する固体
電解コンデンサにおいて、良好なコンデンサ特性を安定
して実現することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(5)のいずれかによって達成される。 (1) 金属からなる陽極基体を酸化して絶縁性酸化被
膜を形成する工程と、前記絶縁性酸化被膜上に導電性下
地層を形成する工程と、超音波を照射しながら電解酸化
重合を行って、導電性高分子化合物を含む高分子電解質
層を前記導電性下地層上に形成する工程とを有し、前記
高分子電解質層を形成する際の超音波出力値を、キャビ
テーション閾値の±10%以内とする固体電解コンデン
サの製造方法。 (2) 超音波出力値をキャビテーション閾値の−10
%以上かつキャビテーション閾値未満として前記高分子
電解質層の一部を形成した後、超音波出力値をキャビテ
ーション閾値以上かつその+10%以下として前記高分
子電解質層の残部を形成する上記(1)の固体電解コン
デンサの製造方法。 (3) 前記高分子電解質層に含まれる導電性高分子化
合物が、置換もしくは無置換のπ共役系複素環式化合
物、共役系芳香族化合物またはヘテロ原子含有共役系芳
香族化合物を原料モノマーとするものである上記(1)
または(2)の固体電解コンデンサの製造方法。 (4) 前記導電性下地層が導電性高分子化合物を含有
し、この導電性高分子化合物が、置換もしくは無置換の
π共役系複素環式化合物、共役系芳香族化合物またはヘ
テロ原子含有共役系芳香族化合物を原料モノマーとする
ものである上記(1)〜(3)のいずれかの固体電解コ
ンデンサの製造方法。 (5) 前記陽極基体が、Al、Ta、Ti、Nbおよ
びZrの少なくとも1種を含有する金属または合金から
構成される上記(1)〜(4)のいずれかの固体電解コ
ンデンサの製造方法。
【0013】
【作用および効果】超音波は力学的エネルギーの一つで
あり、媒体中を伝搬するときの波長が、通常、10〜1
-2cm程度の疎密波である。電磁波に換算すると長波長
のラジオ波に相当し、分子レベルでは反応種を直接励起
して化学反応を直接駆動するには不十分である。しかし
ながら化学反応の制御エネルギーとしては極めて特長に
富んでいる。超音波が液体中を伝搬すると、低圧域と高
圧域とが10-4〜10-6秒程度の周期で交互に生じ、低
圧域では微小な空洞(キャビティ)が生成するが、続い
て起こる圧縮サイクルで急激に崩壊する。このとき、局
所的に超高温(1000K以上)と超高圧(100気圧
以上)とが発生する。このキャビティの生成と崩壊の繰
り返しを、一般にキャビテーションと呼び、キャビテー
ションが発生させるために必要な超音波の出力値を、一
般にキャビテーション閾値と呼ぶ。
【0014】このような超音波の特異的な性質を利用し
て電解酸化重合を行い、導電性高分子化合物を合成した
試みとしては、例えば以下のような報告がある。
【0015】シンセティックメタルズ(Synthetic Meta
ls),第18巻,145頁,1987年や、ポリマーフ
ィジクス(Polymer Physics),第30巻,19頁,1
992年には、超音波照射下での電解酸化重合により形
成されたポリチオフェン膜が、表面平滑性、ドーピング
性、レドックス特性のいずれにおいても著しく物性改良
されていることが報告されている。また、ニュー ジャ
ーナル オブ ケミストリ(New Journal of Chemistr
y),第19巻,989頁,1996年には、ポリピロ
ールについても同様の効果があることが報告されてい
る。また、電気化学,第65巻,6号,495頁,19
97年には、超音波を照射しながら電解酸化重合にて白
金電極上に形成したポリアニリンについて、密着性が高
く膜質が密であることが報告されている。
【0016】そして、電気化学会第65回大会,講演要
旨集,1M18,364頁には、白金電極上に成膜した
ポリアニリン重合膜の膜質が、キャビテーションの生起
に大きく依存することが報告されている。具体的には、
キャビテーション閾値が10Wとなる条件において、超
音波出力をキャビテーション閾値未満の6Wとして電解
酸化重合した場合には、超音波非照射下で形成した膜と
同様に粒塊が絡み合った粗雑な構造と形態をもつ膜とな
り、一方、超音波出力をキャビテーション閾値を超える
17Wとした場合には、倍率10,000倍のSEM
(走査型電子顕微鏡)写真では粒塊が確認できないほど
均一な膜が得られたことが報告されている。この結果か
ら、この報告においては、キャビテーション閾値以上の
超音波をアニリンの重合系に照射することによって、膜
表面の均一化ならびに緻密化が発現することが明らかに
なった、と結論づけている。なお、この報告では、キャ
ビテーションメータの測定プローブを電解セルに挿入し
てキャビテーション閾値を測定している。
【0017】しかし、上記各報告には、超音波照射下で
の電解酸化重合により形成した導電性高分子化合物膜に
ついて、固体電解コンデンサにおける固体電解質への適
用可能性を示唆する記載はなく、当然、固体電解コンデ
ンサへの適用に際して留意すべき条件に関する記載もな
い。また、超音波照射下での電解酸化重合を固体電解コ
ンデンサの作製に適用した前記特開平3−280519
号公報には、超音波照射条件が周波数だけしか記載され
ていない。
【0018】そこで、本発明者らは、超音波照射下での
電解酸化重合により形成した導電性高分子化合物膜を、
電解コンデンサの固体電解質に適用する実験を行った。
この結果、電解コンデンサに適用する場合に特有の問題
が明らかになった。すなわち、上記した電気化学会第6
5回大会,講演要旨集,1M18,364頁に示される
ように単にキャビテーション閾値以上の超音波を照射し
た場合、電解コンデンサの陽極基体表面に形成した酸化
被膜が破壊されやすく、また、導電性高分子化合物膜の
形成速度が著しく遅くなりやすいことがわかった。酸化
被膜が破壊されると、漏れ電流が著しく大きくなり、所
望の静電容量が得られなくなる。また、超音波出力をキ
ャビテーション閾値未満としても、固体電解質としての
機能が十分に高い導電性高分子化合物膜が形成でき、し
かも、膜形成速度を向上できることがわかった。
【0019】このような実験に基づき、本発明では、固
体電解質層を形成するに際し、超音波出力をキャビテー
ション閾値の±10%以内に設定して電解酸化重合を行
う。本発明におけるキャビテーション閾値とは、上記し
た電気化学会第65回大会,講演要旨集,1M18,3
64頁に記載されたキャビテーション閾値と同じであ
り、キャビテーションメータにより測定された、キャビ
テーションの起こり始める出力強度(超音波発振器の出
力値)を意味する。なお、キャビテーションメータは市
販されており、本発明でも市販のものを利用することが
できる。
【0020】超音波出力をキャビテーション閾値の−1
0%からキャビテーション閾値未満の範囲に設定すれ
ば、均質で緻密な固体電解質層が形成でき、しかも、固
体電解質層の形成速度が速くなる。キャビテーション閾
値未満であるにもかかわらず均質で緻密な膜が得られる
ことは、従来報告されていない。すなわち、キャビテー
ションメータでは捉えられないレベルのキャビテーショ
ンにより膜質の向上が可能であることは、本発明により
初めて見いだされたことである。一方、超音波出力をキ
ャビテーション閾値からその+10%までの範囲内に設
定すれば、より均質でより緻密な固体電解質が形成で
き、しかも、絶縁性酸化被膜の破壊が生じることもな
い。キャビテーションが発生しているにもかかわらず絶
縁性酸化被膜が破壊されないのは、導電性下地層、特に
導電性高分子化合物から構成された導電性下地層が、超
音波を緩衝する効果をもつためと考えられる。
【0021】これに対し、キャビテーション閾値の−1
0%を下回る出力の超音波を照射した場合、固体電解質
層は超音波を照射しない場合と同様に粗くなってしま
い、高性能の固体電解コンデンサは得られない。これ
は、超音波出力がキャビテーション閾値の−10%を下
回ると、単に音場だけの効果となるためと考えられる。
また、キャビテーション閾値の+10%を超える出力の
超音波を照射した場合、絶縁性酸化被膜が損傷、破壊さ
れてしまうので、漏れ電流値が著しく大きくなり、コン
デンサとして機能できなくなる。
【0022】なお、固体電解質層形成の際に照射する超
音波の出力値は、電解セルの寸法や構造などの各種条件
によっても異なるが、一般に5〜20W程度とすれば十
分である。また、超音波の周波数は、通常、20〜10
0kHzとすることが好ましい。
【0023】
【発明の実施の形態】本発明により製造される固体電解
コンデンサの構成例を、図1に示す。この電解コンデン
サは、陽極基体2上に、その陽極酸化により形成された
酸化被膜3と、導電性下地層4と、高分子電解質層5
と、陰極6とを有する。以下、この固体電解コンデンサ
の各部の構成および形成方法について説明する。
【0024】陽極基体2 陽極基体は、絶縁性酸化被膜形成能のある弁金属群もし
くはその合金群から構成することができる。このような
金属ないし合金としては、例えば、Al、Ta、Ti、
NbおよびZrの1種、またはこれらの少なくとも1種
を含有する合金が好ましい。そして、これらの金属ない
し合金を、線状、箔状、板状、多孔質ブロックなどの形
状に加工し、必要に応じて積層、巻回を行って陽極基体
とすることができる。
【0025】陽極基体には、必要に応じ、非表面積拡大
のためのエッチング処理が施され、図1に示すような凹
凸が表面に形成される。
【0026】絶縁性酸化被膜3 絶縁性酸化被膜は、陽極基体表面を陽極酸化等の処理に
よって酸化させることにより形成される。
【0027】絶縁性酸化被膜の厚さは、使用電圧に応じ
て適宜決定すればよいが、一般に10nm〜1μm程度で
ある。
【0028】導電性下地層4 導電性下地層は、高分子電解質層を電解酸化重合により
形成するために必須である。導電性下地層は、金属、導
電性を有する金属酸化物、導電性高分子化合物のいずれ
から構成してもよいが、好ましくは、導電性高分子化合
物から構成する。
【0029】導電性高分子化合物からなる導電性下地層
は、化学酸化重合法により形成することが好ましい。化
学酸化重合は、例えば以下に示す手順で行うことが好ま
しい。まず、絶縁性酸化被膜上に、酸化剤を0.001
〜2.0mol/l程度含む溶液、またはこれにドーパント
種を与える化合物を含ませた溶液を塗布または噴霧など
の方法により均一に付着させる。次に、導電性高分子化
合物のモノマーを好ましくは少なくとも0.01mol/l
以上含む溶液またはモノマー自体を、絶縁性酸化被膜に
直接接触させる。これにより、導電性高分子化合物が合
成される。
【0030】化学酸化重合に使用される酸化剤は特に限
定されないが、代表的なものを例示すれば、ヨウ素、臭
素、ヨウ化臭素などのハロゲン化物、五フッ化砒素、五
フッ化アンチモン、四フッ化珪素、五塩化リン、五フッ
化リン、塩化アルミニウム、塩化モリブデンなどの金属
ハロゲン化物、硫酸、硝酸、フルオロ硫酸、トリフルオ
ロメタン硫酸、クロロ硫酸などのプロトン酸、三酸化イ
オウ、二酸化窒素などの酸素化合物、過硫酸ナトリウ
ム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸
塩、過酸化水素、過マンガン酸カリウム、過酢酸、ジフ
ルオロスルホニルパーオキサイドなどの過酸化物が挙げ
られる。
【0031】また、必要に応じて含有される、ドーパン
ト種を与える化合物としては、例えば以下のものが挙げ
られる。
【0032】陰イオンがヘキサフロロリンアニオン、ヘ
キサフロロ砒素アニオンであり、陽イオンがリチウム、
ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属カチオンであ
る塩、例えば、LiPF6、LiAsF6、NaPF6
KPF6、KAsF6などである。これらに加えて、四フ
ッ化ホウ素塩化合物、例えば、LiBF4、NaBF4
NH4BF4、(CH34NBF4、(n−C494NB
4などである。さらに、スルホン酸またはその誘導
体、例えば、p−トルエンスルホン酸、p−エチルベン
ゼンスルホン酸、p−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、
ドデシルベンゼンスルホン酸、メチルスルホン酸、ドデ
シルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、β−ナフタレン
スルホン酸およびこれらの塩、例えば、2,6−ナフタ
レンジスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナト
リウム、トルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム
などである。
【0033】金属ハロゲン化合物、例えば、塩化第二
鉄、臭化第二鉄、塩化第二銅、臭化第二銅などである。
【0034】ハロゲン化水素酸、無機酸またはその塩、
例えば、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、リン酸、
硝酸、あるいは、これらのアルカリ金属塩、アルカリ土
類金属塩またはアンモニウム塩、さらに過塩素酸、過塩
素酸ナトリウム等の過ハロゲン酸、またはその塩などで
ある。
【0035】カルボン酸類、例えば、酢酸、シュウ酸、
ギ酸、酪酸、コハク酸、乳酸、クエン酸、フタル酸、マ
レイン酸、安息香酸、サリチル酸、ニコチン酸等のモノ
またはジカルボン酸、芳香族、複素環式カルボン酸類
や、トリフルオロ酢酸等のハロゲン化されたカルボン酸
およびこれらの塩などである。
【0036】これらの酸化剤およびドーパント種を与え
ることができる化合物は、適切な溶液、つまり水や有機
溶媒に溶解させた状態で用いる。溶媒は、単独で使用し
ても、2種以上混合して使用してもよい。混合溶媒は、
ドーパント種を与える化合物の溶解度を高めるためにも
有効である。混合溶媒としては、溶媒間の相溶性を有す
るもの、および、前記化合物との相溶性を有するものが
適している。溶媒の具体例としては、有機アミド類、含
硫化合物、エステル類、アルコール類などが挙げられ
る。
【0037】化学酸化重合により合成される導電性高分
子化合物としては、置換もしくは無置換のπ共役系複素
環式化合物、共役系芳香族化合物またはヘテロ原子含有
共役系芳香族化合物を原料モノマーとするものが好まし
い。これらのうちでは、ポリアニリン、ポリピロール、
ポリチオフェンまたはポリフランが好ましく、特に、ポ
リアニリンまたはポリピロールが好ましい。
【0038】このような導電性高分子化合物を与えるモ
ノマーの代表例としては、未置換アニリン、アルキルア
ニリン類、アルコキシアニリン類、ハロアニリン類、o
−フェニレンジアミン類、2,6−ジアルキルアニリン
類、2,5−ジアルコキシアニリン類、4,4'−ジア
ミノジフェニルエーテル、ピロール、3−メチルピロー
ル、3−エチルピロール、3−プロピルピロール、チオ
フェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン
などを挙げることができる。
【0039】なお、上記形成方法のほか、予め合成して
おいた導電性高分子化合物を有機溶媒に溶解させて溶液
とし、この溶液を酸化被膜上に塗布することによって
も、導電性下地層を形成することが可能である。
【0040】導電性下地層は、超音波による絶縁性酸化
被膜の破壊を防止する効果を示し、特に、導電性高分子
化合物を含有する導電性下地層は、この効果が大きい。
【0041】導電性下地層は二酸化マンガンから構成し
てもよいが、この場合には、二酸化マンガン生成の際の
絶縁性酸化被膜に対するダメージが比較的大きくなる。
これに対し、導電性下地層を化学酸化重合による導電性
高分子化合物から構成すれば、導電性下地層形成の際の
絶縁性酸化被膜に対するダメージは小さい。
【0042】絶縁性酸化被膜上に化学酸化重合により形
成した導電性下地層は、表面が比較的粗くなるが、本発
明では、この導電性下地層を最終的に緻密なものとする
ことができる。本発明では、導電性下地層形成後、続い
て超音波照射下で電解酸化重合を行うが、このとき粗い
組織をもつ導電性下地層中にモノマーが侵入し、絶縁性
酸化被膜に密着するよう重合する。また、モノマーは、
導電性下地層とも重合する。この結果、導電性下地層
は、高分子電解質層との境界がわからないほど緻密化
し、両層は非常に安定な状態となる。このような効果
は、高分子電解質層の形成を超音波照射下で行わない限
り実現しない。すなわち、前記特公平4−74853号
公報のように、化学酸化重合層と電解酸化重合層とを単
に積層しただけでは実現しない。
【0043】導電性下地層の厚さは、電解酸化重合の際
に不都合が生じないように適宜設定すればよいが、一般
に0.5〜10μmの範囲から選択すればよい。なお、
導電性下地層は連続膜であることが好ましい。
【0044】高分子電解質層5 高分子電解質層は、超音波照射下で電解酸化重合法によ
り形成する。超音波照射条件については、前述したとお
りである。一方、電解酸化重合自体は、既知の方法に従
えばよい。すなわち導電性下地層を作用極とし、対極電
極とともに電解液中に入れ通電することにより電解酸化
重合を行う。
【0045】電解液には、導電性高分子化合物を与える
モノマーおよび支持電解質が含まれ、さらに、必要に応
じ種々の添加物が含まれる。
【0046】高分子電解質層に使用する導電性高分子化
合物は、導電性下地層に使用する導電性高分子化合物と
同様であり、置換もしくは無置換のπ共役系複素環式化
合物、共役系芳香族化合物またはヘテロ原子含有共役系
芳香族化合物を原料モノマーとするものが好ましい。こ
れらのうちでは、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチ
オフェンまたはポリフランが好ましく、特に、ポリアニ
リンまたはポリピロールが好ましい。ポリアニリンは、
ポリピロールと比較して導電率は同等であり、耐熱性や
経時的安定性はより優れている。
【0047】高分子電解質層形成に用いるモノマーは、
導電性下地層の説明において挙げた各種モノマーから選
択すればよい。
【0048】支持電解質は、組み合わせるモノマーおよ
び溶媒に応じてその都度選択されるが、代表的なものを
例示すると、塩基性の化合物としては、水酸化ナトリウ
ム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸ナトリ
ウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。また、酸
性の化合物としては、硫酸、塩酸、硝酸、臭化水素、過
塩素酸、トリフルオロ酢酸、スルホン酸などを挙げるこ
とができる。また、塩としては、塩化ナトリウム、臭化
ナトリウム、ヨウ化カリウム、塩化カリウム、硝酸カリ
ウム、過ヨウ素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、過
塩素酸リチウム、ヨウ化アンモニウム、塩化アンモニウ
ム、四フッ化ホウ素塩化合物、テトラメチルアンモニウ
ムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、
テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルア
ンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムパー
クロライド、テトラブチルアンモニウムパークロライ
ド、テトラメチルアンモニウム、p−トルエンスルホン
酸クロライド、ボロジサリチル酸トリエチルアミン、1
0−カンファースルホン酸ナトリウムなどが例示でき
る。
【0049】支持電解質の溶解濃度は、所望の電流密度
が得られるように設定すればよいが、一般的には0.0
5〜1.0mol/lの範囲内に設定すれば特に問題はな
い。
【0050】電解酸化重合で用いる溶媒は特に限定され
ず、例えば、水、プロトン性溶媒、非プロトン性溶媒ま
たはこれらの溶媒の2種以上を混合した混合溶媒から適
宜選択すればよい。混合溶媒としては、溶媒間の相溶性
を有するもの、および、モノマーや支持電解質との相溶
性を有するものが適している。
【0051】プロトン性溶媒としては、ギ酸、酢酸、プ
ロピオン酸、メタノール、エタノール、n−プロパノー
ル、イソプロパノール、tert-ブチルアルコール、メチ
ルセロソルブ、ジエチルアミン、エチレンジアミンなど
が例示できる。非プロトン性溶媒としては、塩化メチレ
ン、1,2−ジクロロエタン、二硫化炭素、アセトニト
リル、アセトン、プロピレンカーボネート、ニトロメタ
ン、ニトロベンゼン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、
テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジオキサン、
N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホル
ムアミド、ピリジン、ジメチルスルホキシドなどが例示
できる。
【0052】電解には、定電圧法、定電流法または電位
掃引法のいずれを用いてもよい。また、電解重合過程に
おいて定電流法と定電圧法とを組み合わせて行う方法も
利用可能である。電流密度は特に限定されないが、最大
で10mA/cm2程度である。
【0053】超音波発振装置は、出力の制御が可能なも
のが好ましい。具体的には、超音波振動子ステップホー
ンが好ましい。超音波振動子ステップホーンは、超音波
エネルギーの出力制御が容易であり、また、超音波発振
源を反応系に直接導入することが可能であるから、反応
の再現性が良好であり、また、エネルギー利用効率が高
い。
【0054】出力制御が可能な超音波発振装置を用いる
のは、キャビテーション閾値の変動に対応するためであ
る。超音波発振源の出力が一定であったとしても、キャ
ビテーション閾値は、電解セル、電極、超音波照射源等
の電解反応装置の幾何学的形状、溶液粘度等の電解液の
物理的性質などに強く依存して変動する。したがって、
使用する超音波の出力値をキャビテーション閾値に対し
特定の関係に保つ必要のある本発明では、再現性よく反
応を行うために超音波発振装置の出力制御を行うことが
好ましい。
【0055】なお、超音波発振源を反応系に直接導入し
ないで超音波照射を行う方法も利用できる。この方法
は、例えば水等を満たした超音波洗浄器中に電解槽を置
くことによって実施できる。しかし、超音波電気化学に
おける反応は、固−液不均一反応系であるので、その再
現性、制御性、効率性の点を鑑みて、超音波発振源を反
応系に直接導入する方法を利用することが好ましい。
【0056】電極反応の反応場は電極界面であるため、
超音波効果はステップホーンの先端と電極との距離に大
きく依存するが、距離を一定にすれば出力強度に応じた
超音波効果を再現できる。実際にはステップホーンの先
端と電極との距離は10cm以下、好ましくは5cm以下に
すれば問題ない。また、導電性高分子化合物を成膜する
電極の表面をステップホーンと垂直に配置することが望
ましい。
【0057】電解セルの形状については様々な設計手法
があると考えられる。つまり超音波が反応系中において
定在波を形成すれば節と腹とが生じるため、電極表面に
到達する波動が節部か腹部かによりその効果に差異が生
じるはずである。すなわち常用される周波数数十キロヘ
ルツの超音波の水中における波長は数センチメートルで
あるから、超音波振動子ホーンと電極との距離が4分の
1波長増減する毎に、超音波効果が周期的に変わること
になる。しかし、超音波の到達エネルギーが音源からの
距離に対し指数関数的に減少することによる複雑性があ
るにしても、超音波効果の4分の1波長毎の周期性は実
際には不明瞭であった。これは電解セル内の壁面からの
反射波が複雑に錯綜するためであると考えられる。
【0058】電解浴温度は、電解液の凝固点と沸点との
間であればよいが、通常、0〜60℃程度とすればよ
い。超音波エネルギーは熱エネルギーに変換されやすい
ため、反応中の温度変動を極力抑えることが可能な装置
設定とすることが好ましい。
【0059】本発明では、電解酸化重合初期において超
音波出力を抑制し、その後、本来の条件で電解酸化重合
を行ってもよい。具体的には、超音波出力値をキャビテ
ーション閾値の−10%以上かつキャビテーション閾値
未満として高分子電解質層の一部を形成した後、超音波
出力値をキャビテーション閾値以上かつその+10%以
下として高分子電解質層の残部を形成する。このような
条件で電解酸化重合を行えば、初期に形成された部分が
保護膜として機能するため、本来の条件における超音波
の衝撃を緩和することが可能となる。したがって、絶縁
性酸化被膜のダメージを小さくした上で、高分子電解質
層の緻密さを向上することが可能となる。
【0060】高分子電解質層の厚さは、図1に示すよう
に、エッチング等によって形成された陽極基体1表面の
凹凸を完全に埋めることができるように適宜決定すれば
よいが、一般に5〜100μm程度とする。なお、この
場合の厚さは、高分子電解質層の最大厚さである。
【0061】その他の構成 陰極6は、銀、パラジウム、銅などを含有する導電性ペ
ーストの塗布により形成することができる。なお、陰極
6と高分子電解質層5との間には、カーボン層が必要に
応じて設けられる。例えば、銀ペーストにより陰極を形
成した場合、カーボン層を設けることにより、銀のマイ
グレーションを防ぐことができる。カーボン層は、高分
子電解質層をコロイダルカーボンに浸漬することにより
形成できる。
【0062】最後に陰極の一部に陰極リード端子を接続
した後、樹脂モールドするか、樹脂や金属のケースに封
入するなどして外装処理を行い、電解コンデンサとす
る。
【0063】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
るが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではな
い。
【0064】実施例1 表1に示す導電性下地層および高分子電解質層を有する
固体電解コンデンサを、以下の手順で作製した。
【0065】陽極基体として、厚さ100μmのアルミ
ニウム箔を用い、これにエッチング処理を施して表面積
を拡大した後、陽極酸化による化成処理を施して、酸化
アルミニウムからなる厚さ20nmの絶縁性酸化被膜を形
成した。その後、カシメ法にてアルミニウム箔とリード
端子とを固定し、再び化成処理を行った。次に、絶縁性
酸化被膜を0.04mol/lの過硫酸アンモニウム水溶液
中に減圧下で30分浸漬した後、乾燥した。
【0066】次いで、絶縁性酸化被膜上に、導電性下地
層を形成した。ポリピロールからなる導電性下地層は、
蒸留精製したピロールモノマーを含むアセトニトリル溶
液に、酸化被膜を減圧下で30分浸漬して化学酸化重合
を行うことにより形成した。一方、ポリアニリンからな
る導電性下地層の形成に際しては、まず、予め合成して
おいた脱ドーピングしたポリアニリンを、N−メチル−
2−ピロリドン溶液中に0.5重量%の濃度になるよう
に溶解し、さらにこの中に、ドーパントとしてクエン酸
を0.2mol/lの濃度になるように溶解した。次いで、
この溶液中に陽極基体を5分間浸漬した後、150℃で
1時間乾燥させた。この処理を5回繰り返し、ポリアニ
リンからなる導電性下地層を得た。なお、導電性下地層
の厚さは1μmとした。
【0067】次に、アニリンモノマーを0.2mol/l、
シュウ酸を0.02mol/l、支持電解質としてトルエン
スルホン酸テトラブチルアンモニウムを0.05mol/l
含む水溶液を電解セルに入れ、この中に、導電性下地層
を形成した陽極基体を浸漬した。電解セルには無隔膜セ
ルを用い、超音波照射源には超音波ステップホーン(周
波数20kHz)を用いた。作用極(陽極)である導電性
下地層はステップホーンに垂直に配置し、その距離を
2.0cmに固定した。この状態で、市販のキャビテーシ
ョンメータを用い、プローブを電解セルに直接挿入して
キャビテーション閾値を測定した結果、10Wであっ
た。
【0068】続いて、炭素棒を陰極として、超音波照射
下で電流密度を0.5mA/cm2として120分間定電流電
解を行い、最大厚さ50μmの高分子電解質層を形成し
た。このときの超音波出力を、上記キャビテーション閾
値を基準として表1に示す。なお、サンプルNo.2とサ
ンプルNo.3とについて電解時の電流量を比較したとこ
ろ、サンプルNo.3はサンプルNo.2の約4倍であった。
このことから、超音波出力値をキャビテーション閾値未
満とすることにより、高分子電解質層の形成速度が著し
く向上することがわかる。
【0069】次に、高分子電解質層表面に、カーボンペ
ースト、銀ペーストを用いて陰極を形成し、エポキシ樹
脂により外装処理を行って固体電解コンデンササンプル
を完成させた。
【0070】これらのサンプルについて、120Hzにお
ける静電容量、100kHzにおけるインピーダンスおよ
び漏れ電流値を測定した。結果を表1に示す。
【0071】また、各サンプルについて、絶縁性酸化被
膜と導電性下地層および高分子電解質層との密着性を調
べるために、陰極を形成する前に粘着テープによるピー
リング試験を行った。この試験では、粘着テープ側に殆
ど高分子電解質層が付着せず、絶縁性酸化被膜側に高分
子電解質層が残存した場合を密着性が良好であるとし、
粘着テープ側に大部分の高分子電解質層が付着し、絶縁
性酸化被膜側には殆ど高分子電解質層が残存しなかった
場合を不良とした。結果を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】表1に示す結果から、本発明の効果が明ら
かである。すなわち、超音波出力をキャビテーション閾
値の±10%以内としたサンプルでは、表1に示す特性
のすべてが良好である。これに対し、本発明で限定する
範囲を超える出力の超音波を照射したサンプルNo.4で
は、密着性を除くすべての特性が著しく悪くなってい
る。これは、高出力の超音波により絶縁性酸化被膜が破
壊された結果、絶縁性が劣化したためと考えられる。一
方、本発明で限定する範囲を下回る出力の超音波を照射
したサンプルNo.5でも、特性は低い。これは、超音波
照射による膜質向上効果が不十分であったためである。
【0074】なお、サンプルNo.1〜4およびサンプルN
o.6が明緑色であったのに対し、サンプルNo.5は暗緑
色を呈していた。また、走査型電子顕微鏡で観察したと
ころ、サンプルNo.5は膜質が粗かったが、他のサンプ
ルは緻密であった。
【0075】上記サンプルのほかに、原料モノマーとし
て3−メチルピロールまたは3−メチルチオフェンを用
いて、それぞれポリピロールまたはポリチオフェンから
なる高分子電解質層を形成し、そのほかは上記各サンプ
ルと同様にして固体電解コンデンサを作製したところ、
高分子電解質層形成時のキャビテーション閾値に対する
超音波出力に応じ、上記表1と同様な結果が得られた。
【0076】実施例2 超音波照射が高分子電解質層の緻密さに与える影響を調
べるため、以下の手順でポリアニリン薄膜を形成した。
【0077】まず、アニリンモノマーを0.1mol/l、
塩酸を4.0mol/l含む電解液を調製した。次いで、陽
極、陰極ともに白金電極として、0〜1.0V vs SC
E、掃引速度100mV/sとして50回繰り返し電位掃引
電解を行い、白金電極上にポリアニリン薄膜を形成し
た。電解の際には、超音波を照射した。電解セルおよび
超音波照射源は実施例1と同じとしたが、本実施例にお
けるキャビテーション閾値は7Wであり、電解の際の照
射強度も7Wに設定した。電解終了後、0V vs SCEに
保持して脱ドーピングを行った。
【0078】このポリアニリン薄膜の重さを白金電極の
重量増加分から求め、また、薄膜の厚さを表面粗さ計お
よび光学顕微鏡により測定し、これらから薄膜の密度を
求めたところ、0.1g/cm3であった。一方、超音波を
照射しなかったほかは上記と同様にして白金電極上にポ
リアニリン薄膜を形成し、これについても密度を求めた
ところ、0.037g/cm3であった。この結果から、超
音波を照射しない場合には、ポリアニリン薄膜の膜質が
著しく粗くなることがわかる。
【0079】また、超音波照射下での電解重合により形
成した高分子電解質の耐酸化性を調べるために、超音波
照射下で白金電極上に形成したポリアニリン膜を電解セ
ル中に入れ、4.0mol/l塩酸溶液中において1.0〜
1.1Vで繰り返し電位掃引を行い、第一酸化ピーク電
流値の推移を調べた。また、比較のために、超音波を照
射せずに白金電極上に形成したポリアニリン膜について
も、同様な測定を行った。結果を図2に示す。超音波照
射を照射せずに形成したポリアニリン膜では、掃引回数
が増えるにしたがって第一酸化ピーク電流値が顕著に減
少している。これは、膜の酸化により導電性が失われた
ためと考えられる。これに対し、超音波照射下で形成し
たポリアニリン膜は、掃引回数増加に伴う電流値の減少
量が少ない。この結果から、超音波照射によりポリアニ
リン膜の耐酸化性が著しく向上することがわかる。
【0080】以上の実施例の結果から、本発明の効果が
明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明により製造される固体電解コンデンサの
構造を示す断面図である。
【図2】塩酸溶液中において電位掃引を行ったときの、
電位掃引回数と第一酸化ピーク電流値との関係を示すグ
ラフである。
【符号の説明】
2 陽極基体 3 絶縁性酸化被膜 4 導電性下地層 5 高分子電解質層 6 陰極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 南波 憲良 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属からなる陽極基体を酸化して絶縁性
    酸化被膜を形成する工程と、前記絶縁性酸化被膜上に導
    電性下地層を形成する工程と、超音波を照射しながら電
    解酸化重合を行って、導電性高分子化合物を含む高分子
    電解質層を前記導電性下地層上に形成する工程とを有
    し、前記高分子電解質層を形成する際の超音波出力値
    を、キャビテーション閾値の±10%以内とする固体電
    解コンデンサの製造方法。
  2. 【請求項2】 超音波出力値をキャビテーション閾値の
    −10%以上かつキャビテーション閾値未満として前記
    高分子電解質層の一部を形成した後、超音波出力値をキ
    ャビテーション閾値以上かつその+10%以下として前
    記高分子電解質層の残部を形成する請求項1の固体電解
    コンデンサの製造方法。
  3. 【請求項3】 前記高分子電解質層に含まれる導電性高
    分子化合物が、置換もしくは無置換のπ共役系複素環式
    化合物、共役系芳香族化合物またはヘテロ原子含有共役
    系芳香族化合物を原料モノマーとするものである請求項
    1または2の固体電解コンデンサの製造方法。
  4. 【請求項4】 前記導電性下地層が導電性高分子化合物
    を含有し、この導電性高分子化合物が、置換もしくは無
    置換のπ共役系複素環式化合物、共役系芳香族化合物ま
    たはヘテロ原子含有共役系芳香族化合物を原料モノマー
    とするものである請求項1〜3のいずれかの固体電解コ
    ンデンサの製造方法。
  5. 【請求項5】 前記陽極基体が、Al、Ta、Ti、N
    bおよびZrの少なくとも1種を含有する金属または合
    金から構成される請求項1〜4のいずれかの固体電解コ
    ンデンサの製造方法。
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