JP4053671B2 - 固体電解コンデンサの製造方法 - Google Patents

固体電解コンデンサの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性高分子化合物を固体電解質として用いた固体電解コンデンサの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電解コンデンサは、絶縁性酸化被膜形成能を有する金属、例えばアルミニウムやタンタルなどのいわゆる弁金属を陽極に用い、この金属の表面を陽極酸化して誘電体層となる絶縁性酸化被膜を形成した後、実質的に陰極として機能する電解質層を形成し、さらにグラファイトや銀などの導電層を陰極として設けることにより、形成される。
【0003】
例えばアルミニウム電解コンデンサは、エッチング処理により比表面積を拡大した多孔質アルミニウム箔を陽極とし、この陽極表面に形成した酸化アルミニウム層と陰極箔との間に、電解液を含浸させた隔離紙を設けた構造となっている。
【0004】
絶縁性酸化被膜と陰極との間の電解質層に電解液を利用する電解コンデンサは、シーリング部分からの液漏れや、電解液の蒸発によって寿命が決定されるなどの問題がある。これに対し、金属酸化物や有機化合物からなる固体電解質を用いた固体電解コンデンサは、このような問題がないため好ましい。金属酸化物からなる固体電解質としては、二酸化マンガンが代表的である。一方、有機化合物からなる固体電解質としては、例えば特開昭52−79255号公報、特開昭58−191414号公報に記載されている7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯塩が検討されている。
【0005】
ところで近年、電子機器の電源回路の高周波化に伴い、使用される電解コンデンサに対してもそれに対応した特性が求められている。中でもインピーダンスの低減が大きな課題となっている。しかし、上記した二酸化マンガンまたはTCNQ錯塩からなる電解質層を用いた固体電解コンデンサには、以下の問題がある。二酸化マンガンからなる固体電解質層は、一般に硝酸マンガンの熱分解を繰り返すことにより形成するが、この熱分解の際の加熱によって、また、熱分解の際に発生するNOxガスの酸化作用によって、誘電体である絶縁性酸化被膜が損傷あるいは劣化するので、例えば漏れ電流値が大きくなってしまうなど、最終的に得られる固体電解コンデンサの諸特性が低くなりやすい。また、二酸化マンガンを固体電解質として用いると、高周波領域においてインピーダンスが高くなってしまう。一方、TCNQ錯塩は、電導度が〜1S/cm程度であり、現在の電解コンデンサに対する低インピーダンス化の要求に対して十分に満足とはいえない。また、TCNQ錯塩が絶縁性酸化被膜との密着性に劣ること、 半田固定時の熱安定性や経時的な熱安定性に欠けることなどから、信頼性が低くなってしまうことが指摘されている。さらには、TCNQ錯塩は高価であるという問題もある。
【0006】
これらの欠点を補い、より優れた特性を得るため、製造コストが比較的低く、また、絶縁性酸化被膜との付着性が比較的良好で、熱安定性にも優れた高導電性の高分子化合物を利用する固体電解コンデンサが提案されている。
【0007】
例えば、特許第2725553号には、陽極表面の酸化被膜上に、化学酸化重合によりポリアニリンを形成した固体電解コンデンサが記載されている。
【0008】
また、特公平8−31400号公報では、化学酸化重合法では陽極酸化被膜上に強度の高い導電性高分子膜が形成できず、また、陽極酸化被膜が電気絶縁体であるため、電解重合法では陽極酸化被膜上に電解重合膜を形成することが不可能ないし非常に困難であるとして、酸化被膜上に、金属または二酸化マンガンの薄膜を形成し、この上に、固体電解質である導電性高分子膜を電解重合法により形成することが記載されている。また、特公平4−74853号公報には、上記特公平8−31400号公報の二酸化マンガンの薄膜に替えて、化学酸化重合により形成した導電性高分子膜を設けた固体電解コンデンサが記載されている。これら両公報では、使用する導電性高分子として、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフランが挙げられている。
【0009】
また、特開平3−280519号公報には、陽極弁金属上に設けられた誘電体被膜(酸化被膜)上、またはこの上に形成されたマンガン酸化物からなる導電性被膜上に、超音波を照射しながら電解重合法により導電性高分子の重合物を成長させて固体電解コンデンサを製造する方法が記載されている。同公報には、超音波を照射しながら電解重合を行うことにより、モノマー、支持電解質、添加物等が誘電体被膜上の隅々にまで行き渡り、導電性高分子の成長を滑らかにすることができ、また、陽極弁金属の細かなエッチングピット中にも電解重合導電性高分子を成長させることが可能となるので、容量達成率を高くできる、という効果が記載されている。同公報には、ここで用いる超音波は特別なものである必要はない、と記載されている。実施例では50kHzの超音波を用いているが、超音波に関してその他の情報は記載されていない。同公報には、導電性高分子形成のためのモノマーとして、ピロール、チオフェン、フランなどが挙げられている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記特開平3−280519号公報に記載されているように超音波を照射しながら電解酸化重合を行って、導電性高分子化合物からなる固体電解質層を形成し、固体電解コンデンサを作製した。しかし、このようにして作製した固体電解コンデンサでは、静電容量、高周波におけるインピーダンス、漏れ電流値などの各種特性が、超音波照射条件に応じて著しくばらつき、工業的な利用が実質的に不可能であることがわかった。
【0011】
本発明の目的は、電解重合法により生成した導電性高分子化合物からなる固体電解質を有する固体電解コンデンサにおいて、良好なコンデンサ特性を安定して実現することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(4)のいずれかによって達成される。
(1)金属からなる陽極基体を酸化して絶縁性酸化被膜を形成する工程と、前記絶縁性酸化被膜上に導電性下地層を形成する工程と、超音波を照射しながら電解酸化重合を行って、導電性高分子化合物を含む高分子電解質層を前記導電性下地層上に形成する工程とを有し、前記高分子電解質層を形成する際の超音波出力値を、キャビテーション閾値の±10%以内とする固体電解コンデンサの製造方法であって、超音波出力値をキャビテーション閾値の−10%以上かつキャビテーション閾値未満として前記高分子電解質層の一部を形成した後、超音波出力値をキャビテーション閾値以上かつその+10%以下として前記高分子電解質層の残部を形成する固体電解コンデンサの製造方法。
(2)前記高分子電解質層に含まれる導電性高分子化合物が、置換もしくは無置換のπ共役系複素環式化合物、共役系芳香族化合物またはヘテロ原子含有共役系芳香族化合物を原料モノマーとするものである上記(1)の固体電解コンデンサの製造方法。
(3)前記導電性下地層が導電性高分子化合物を含有し、この導電性高分子化合物が、置換もしくは無置換のπ共役系複素環式化合物、共役系芳香族化合物またはヘテロ原子含有共役系芳香族化合物を原料モノマーとするものである上記(1)または(2)の固体電解コンデンサの製造方法。
(4)前記陽極基体が、Al、Ta、Ti、NbおよびZrの少なくとも1種を含有する金属または合金から構成される上記(1)〜(3)のいずれかの固体電解コンデンサの製造方法。
【0013】
【作用および効果】
超音波は力学的エネルギーの一つであり、媒体中を伝搬するときの波長が、通常、10〜10-2cm程度の疎密波である。電磁波に換算すると長波長のラジオ波に相当し、分子レベルでは反応種を直接励起して化学反応を直接駆動するには不十分である。しかしながら化学反応の制御エネルギーとしては極めて特長に富んでいる。超音波が液体中を伝搬すると、低圧域と高圧域とが10-4〜10-6秒程度の周期で交互に生じ、低圧域では微小な空洞(キャビティ)が生成するが、続いて起こる圧縮サイクルで急激に崩壊する。このとき、局所的に超高温(1000K以上)と超高圧(100気圧以上)とが発生する。このキャビティの生成と崩壊の繰り返しを、一般にキャビテーションと呼び、キャビテーションが発生させるために必要な超音波の出力値を、一般にキャビテーション閾値と呼ぶ。
【0014】
このような超音波の特異的な性質を利用して電解酸化重合を行い、導電性高分子化合物を合成した試みとしては、例えば以下のような報告がある。
【0015】
シンセティックメタルズ(Synthetic Metals),第18巻,145頁,1987年や、ポリマーフィジクス(Polymer Physics),第30巻,19頁,1992年には、超音波照射下での電解酸化重合により形成されたポリチオフェン膜が、表面平滑性、ドーピング性、レドックス特性のいずれにおいても著しく物性改良されていることが報告されている。また、ニュー ジャーナル オブ ケミストリ(New Journal of Chemistry),第19巻,989頁,1996年には、ポリピロールについても同様の効果があることが報告されている。また、電気化学,第65巻,6号,495頁,1997年には、超音波を照射しながら電解酸化重合にて白金電極上に形成したポリアニリンについて、密着性が高く膜質が密であることが報告されている。
【0016】
そして、電気化学会第65回大会,講演要旨集,1M18,364頁には、白金電極上に成膜したポリアニリン重合膜の膜質が、キャビテーションの生起に大きく依存することが報告されている。具体的には、キャビテーション閾値が10Wとなる条件において、超音波出力をキャビテーション閾値未満の6Wとして電解酸化重合した場合には、超音波非照射下で形成した膜と同様に粒塊が絡み合った粗雑な構造と形態をもつ膜となり、一方、超音波出力をキャビテーション閾値を超える17Wとした場合には、倍率10,000倍のSEM(走査型電子顕微鏡)写真では粒塊が確認できないほど均一な膜が得られたことが報告されている。この結果から、この報告においては、キャビテーション閾値以上の超音波をアニリンの重合系に照射することによって、膜表面の均一化ならびに緻密化が発現することが明らかになった、と結論づけている。なお、この報告では、キャビテーションメータの測定プローブを電解セルに挿入してキャビテーション閾値を測定している。
【0017】
しかし、上記各報告には、超音波照射下での電解酸化重合により形成した導電性高分子化合物膜について、固体電解コンデンサにおける固体電解質への適用可能性を示唆する記載はなく、当然、固体電解コンデンサへの適用に際して留意すべき条件に関する記載もない。また、超音波照射下での電解酸化重合を固体電解コンデンサの作製に適用した前記特開平3−280519号公報には、超音波照射条件が周波数だけしか記載されていない。
【0018】
そこで、本発明者らは、超音波照射下での電解酸化重合により形成した導電性高分子化合物膜を、電解コンデンサの固体電解質に適用する実験を行った。この結果、電解コンデンサに適用する場合に特有の問題が明らかになった。すなわち、上記した電気化学会第65回大会,講演要旨集,1M18,364頁に示されるように単にキャビテーション閾値以上の超音波を照射した場合、電解コンデンサの陽極基体表面に形成した酸化被膜が破壊されやすく、また、導電性高分子化合物膜の形成速度が著しく遅くなりやすいことがわかった。酸化被膜が破壊されると、漏れ電流が著しく大きくなり、所望の静電容量が得られなくなる。また、超音波出力をキャビテーション閾値未満としても、固体電解質としての機能が十分に高い導電性高分子化合物膜が形成でき、しかも、膜形成速度を向上できることがわかった。
【0019】
このような実験に基づき、本発明では、固体電解質層を形成するに際し、超音波出力をキャビテーション閾値の±10%以内に設定して電解酸化重合を行う。本発明におけるキャビテーション閾値とは、上記した電気化学会第65回大会,講演要旨集,1M18,364頁に記載されたキャビテーション閾値と同じであり、キャビテーションメータにより測定された、キャビテーションの起こり始める出力強度(超音波発振器の出力値)を意味する。なお、キャビテーションメータは市販されており、本発明でも市販のものを利用することができる。
【0020】
超音波出力をキャビテーション閾値の−10%からキャビテーション閾値未満の範囲に設定すれば、均質で緻密な固体電解質層が形成でき、しかも、固体電解質層の形成速度が速くなる。キャビテーション閾値未満であるにもかかわらず均質で緻密な膜が得られることは、従来報告されていない。すなわち、キャビテーションメータでは捉えられないレベルのキャビテーションにより膜質の向上が可能であることは、本発明により初めて見いだされたことである。一方、超音波出力をキャビテーション閾値からその+10%までの範囲内に設定すれば、より均質でより緻密な固体電解質が形成でき、しかも、絶縁性酸化被膜の破壊が生じることもない。キャビテーションが発生しているにもかかわらず絶縁性酸化被膜が破壊されないのは、導電性下地層、特に導電性高分子化合物から構成された導電性下地層が、超音波を緩衝する効果をもつためと考えられる。
【0021】
これに対し、キャビテーション閾値の−10%を下回る出力の超音波を照射した場合、固体電解質層は超音波を照射しない場合と同様に粗くなってしまい、高性能の固体電解コンデンサは得られない。これは、超音波出力がキャビテーション閾値の−10%を下回ると、単に音場だけの効果となるためと考えられる。また、キャビテーション閾値の+10%を超える出力の超音波を照射した場合、絶縁性酸化被膜が損傷、破壊されてしまうので、漏れ電流値が著しく大きくなり、コンデンサとして機能できなくなる。
【0022】
なお、固体電解質層形成の際に照射する超音波の出力値は、電解セルの寸法や構造などの各種条件によっても異なるが、一般に5〜20W程度とすれば十分である。また、超音波の周波数は、通常、20〜100kHzとすることが好ましい。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明により製造される固体電解コンデンサの構成例を、図1に示す。この電解コンデンサは、陽極基体2上に、その陽極酸化により形成された酸化被膜3と、導電性下地層4と、高分子電解質層5と、陰極6とを有する。以下、この固体電解コンデンサの各部の構成および形成方法について説明する。
【0024】
陽極基体2
陽極基体は、絶縁性酸化被膜形成能のある弁金属群もしくはその合金群から構成することができる。このような金属ないし合金としては、例えば、Al、Ta、Ti、NbおよびZrの1種、またはこれらの少なくとも1種を含有する合金が好ましい。そして、これらの金属ないし合金を、線状、箔状、板状、多孔質ブロックなどの形状に加工し、必要に応じて積層、巻回を行って陽極基体とすることができる。
【0025】
陽極基体には、必要に応じ、非表面積拡大のためのエッチング処理が施され、図1に示すような凹凸が表面に形成される。
【0026】
絶縁性酸化被膜3
絶縁性酸化被膜は、陽極基体表面を陽極酸化等の処理によって酸化させることにより形成される。
【0027】
絶縁性酸化被膜の厚さは、使用電圧に応じて適宜決定すればよいが、一般に10nm〜1μm程度である。
【0028】
導電性下地層4
導電性下地層は、高分子電解質層を電解酸化重合により形成するために必須である。導電性下地層は、金属、導電性を有する金属酸化物、導電性高分子化合物のいずれから構成してもよいが、好ましくは、導電性高分子化合物から構成する。
【0029】
導電性高分子化合物からなる導電性下地層は、化学酸化重合法により形成することが好ましい。化学酸化重合は、例えば以下に示す手順で行うことが好ましい。まず、絶縁性酸化被膜上に、酸化剤を0.001〜2.0mol/l程度含む溶液、またはこれにドーパント種を与える化合物を含ませた溶液を塗布または噴霧などの方法により均一に付着させる。次に、導電性高分子化合物のモノマーを好ましくは少なくとも0.01mol/l以上含む溶液またはモノマー自体を、絶縁性酸化被膜に直接接触させる。これにより、導電性高分子化合物が合成される。
【0030】
化学酸化重合に使用される酸化剤は特に限定されないが、代表的なものを例示すれば、ヨウ素、臭素、ヨウ化臭素などのハロゲン化物、五フッ化砒素、五フッ化アンチモン、四フッ化珪素、五塩化リン、五フッ化リン、塩化アルミニウム、塩化モリブデンなどの金属ハロゲン化物、硫酸、硝酸、フルオロ硫酸、トリフルオロメタン硫酸、クロロ硫酸などのプロトン酸、三酸化イオウ、二酸化窒素などの酸素化合物、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、過酸化水素、過マンガン酸カリウム、過酢酸、ジフルオロスルホニルパーオキサイドなどの過酸化物が挙げられる。
【0031】
また、必要に応じて含有される、ドーパント種を与える化合物としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0032】
陰イオンがヘキサフロロリンアニオン、ヘキサフロロ砒素アニオンであり、陽イオンがリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属カチオンである塩、例えば、LiPF6、LiAsF6、NaPF6、KPF6、KAsF6などである。これらに加えて、四フッ化ホウ素塩化合物、例えば、LiBF4、NaBF4、NH4BF4、(CH34NBF4、(n−C494NBF4などである。さらに、スルホン酸またはその誘導体、例えば、p−トルエンスルホン酸、p−エチルベンゼンスルホン酸、p−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、メチルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、β−ナフタレンスルホン酸およびこれらの塩、例えば、2,6−ナフタレンジスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウムなどである。
【0033】
金属ハロゲン化合物、例えば、塩化第二鉄、臭化第二鉄、塩化第二銅、臭化第二銅などである。
【0034】
ハロゲン化水素酸、無機酸またはその塩、例えば、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、リン酸、硝酸、あるいは、これらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはアンモニウム塩、さらに過塩素酸、過塩素酸ナトリウム等の過ハロゲン酸、またはその塩などである。
【0035】
カルボン酸類、例えば、酢酸、シュウ酸、ギ酸、酪酸、コハク酸、乳酸、クエン酸、フタル酸、マレイン酸、安息香酸、サリチル酸、ニコチン酸等のモノまたはジカルボン酸、芳香族、複素環式カルボン酸類や、トリフルオロ酢酸等のハロゲン化されたカルボン酸およびこれらの塩などである。
【0036】
これらの酸化剤およびドーパント種を与えることができる化合物は、適切な溶液、つまり水や有機溶媒に溶解させた状態で用いる。溶媒は、単独で使用しても、2種以上混合して使用してもよい。混合溶媒は、ドーパント種を与える化合物の溶解度を高めるためにも有効である。混合溶媒としては、溶媒間の相溶性を有するもの、および、前記化合物との相溶性を有するものが適している。溶媒の具体例としては、有機アミド類、含硫化合物、エステル類、アルコール類などが挙げられる。
【0037】
化学酸化重合により合成される導電性高分子化合物としては、置換もしくは無置換のπ共役系複素環式化合物、共役系芳香族化合物またはヘテロ原子含有共役系芳香族化合物を原料モノマーとするものが好ましい。これらのうちでは、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンまたはポリフランが好ましく、特に、ポリアニリンまたはポリピロールが好ましい。
【0038】
このような導電性高分子化合物を与えるモノマーの代表例としては、未置換アニリン、アルキルアニリン類、アルコキシアニリン類、ハロアニリン類、o−フェニレンジアミン類、2,6−ジアルキルアニリン類、2,5−ジアルコキシアニリン類、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、ピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−プロピルピロール、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェンなどを挙げることができる。
【0039】
なお、上記形成方法のほか、予め合成しておいた導電性高分子化合物を有機溶媒に溶解させて溶液とし、この溶液を酸化被膜上に塗布することによっても、導電性下地層を形成することが可能である。
【0040】
導電性下地層は、超音波による絶縁性酸化被膜の破壊を防止する効果を示し、特に、導電性高分子化合物を含有する導電性下地層は、この効果が大きい。
【0041】
導電性下地層は二酸化マンガンから構成してもよいが、この場合には、二酸化マンガン生成の際の絶縁性酸化被膜に対するダメージが比較的大きくなる。これに対し、導電性下地層を化学酸化重合による導電性高分子化合物から構成すれば、導電性下地層形成の際の絶縁性酸化被膜に対するダメージは小さい。
【0042】
絶縁性酸化被膜上に化学酸化重合により形成した導電性下地層は、表面が比較的粗くなるが、本発明では、この導電性下地層を最終的に緻密なものとすることができる。本発明では、導電性下地層形成後、続いて超音波照射下で電解酸化重合を行うが、このとき粗い組織をもつ導電性下地層中にモノマーが侵入し、絶縁性酸化被膜に密着するよう重合する。また、モノマーは、導電性下地層とも重合する。この結果、導電性下地層は、高分子電解質層との境界がわからないほど緻密化し、両層は非常に安定な状態となる。このような効果は、高分子電解質層の形成を超音波照射下で行わない限り実現しない。すなわち、前記特公平4−74853号公報のように、化学酸化重合層と電解酸化重合層とを単に積層しただけでは実現しない。
【0043】
導電性下地層の厚さは、電解酸化重合の際に不都合が生じないように適宜設定すればよいが、一般に0.5〜10μmの範囲から選択すればよい。なお、導電性下地層は連続膜であることが好ましい。
【0044】
高分子電解質層5
高分子電解質層は、超音波照射下で電解酸化重合法により形成する。超音波照射条件については、前述したとおりである。一方、電解酸化重合自体は、既知の方法に従えばよい。すなわち導電性下地層を作用極とし、対極電極とともに電解液中に入れ通電することにより電解酸化重合を行う。
【0045】
電解液には、導電性高分子化合物を与えるモノマーおよび支持電解質が含まれ、さらに、必要に応じ種々の添加物が含まれる。
【0046】
高分子電解質層に使用する導電性高分子化合物は、導電性下地層に使用する導電性高分子化合物と同様であり、置換もしくは無置換のπ共役系複素環式化合物、共役系芳香族化合物またはヘテロ原子含有共役系芳香族化合物を原料モノマーとするものが好ましい。これらのうちでは、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンまたはポリフランが好ましく、特に、ポリアニリンまたはポリピロールが好ましい。ポリアニリンは、ポリピロールと比較して導電率は同等であり、耐熱性や経時的安定性はより優れている。
【0047】
高分子電解質層形成に用いるモノマーは、導電性下地層の説明において挙げた各種モノマーから選択すればよい。
【0048】
支持電解質は、組み合わせるモノマーおよび溶媒に応じてその都度選択されるが、代表的なものを例示すると、塩基性の化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。また、酸性の化合物としては、硫酸、塩酸、硝酸、臭化水素、過塩素酸、トリフルオロ酢酸、スルホン酸などを挙げることができる。また、塩としては、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化カリウム、塩化カリウム、硝酸カリウム、過ヨウ素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、ヨウ化アンモニウム、塩化アンモニウム、四フッ化ホウ素塩化合物、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムパークロライド、テトラブチルアンモニウムパークロライド、テトラメチルアンモニウム、p−トルエンスルホン酸クロライド、ボロジサリチル酸トリエチルアミン、10−カンファースルホン酸ナトリウムなどが例示できる。
【0049】
支持電解質の溶解濃度は、所望の電流密度が得られるように設定すればよいが、一般的には0.05〜1.0mol/lの範囲内に設定すれば特に問題はない。
【0050】
電解酸化重合で用いる溶媒は特に限定されず、例えば、水、プロトン性溶媒、非プロトン性溶媒またはこれらの溶媒の2種以上を混合した混合溶媒から適宜選択すればよい。混合溶媒としては、溶媒間の相溶性を有するもの、および、モノマーや支持電解質との相溶性を有するものが適している。
【0051】
プロトン性溶媒としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、tert-ブチルアルコール、メチルセロソルブ、ジエチルアミン、エチレンジアミンなどが例示できる。非プロトン性溶媒としては、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、二硫化炭素、アセトニトリル、アセトン、プロピレンカーボネート、ニトロメタン、ニトロベンゼン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジオキサン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ピリジン、ジメチルスルホキシドなどが例示できる。
【0052】
電解には、定電圧法、定電流法または電位掃引法のいずれを用いてもよい。また、電解重合過程において定電流法と定電圧法とを組み合わせて行う方法も利用可能である。電流密度は特に限定されないが、最大で10mA/cm2程度である。
【0053】
超音波発振装置は、出力の制御が可能なものが好ましい。具体的には、超音波振動子ステップホーンが好ましい。超音波振動子ステップホーンは、超音波エネルギーの出力制御が容易であり、また、超音波発振源を反応系に直接導入することが可能であるから、反応の再現性が良好であり、また、エネルギー利用効率が高い。
【0054】
出力制御が可能な超音波発振装置を用いるのは、キャビテーション閾値の変動に対応するためである。超音波発振源の出力が一定であったとしても、キャビテーション閾値は、電解セル、電極、超音波照射源等の電解反応装置の幾何学的形状、溶液粘度等の電解液の物理的性質などに強く依存して変動する。したがって、使用する超音波の出力値をキャビテーション閾値に対し特定の関係に保つ必要のある本発明では、再現性よく反応を行うために超音波発振装置の出力制御を行うことが好ましい。
【0055】
なお、超音波発振源を反応系に直接導入しないで超音波照射を行う方法も利用できる。この方法は、例えば水等を満たした超音波洗浄器中に電解槽を置くことによって実施できる。しかし、超音波電気化学における反応は、固−液不均一反応系であるので、その再現性、制御性、効率性の点を鑑みて、超音波発振源を反応系に直接導入する方法を利用することが好ましい。
【0056】
電極反応の反応場は電極界面であるため、超音波効果はステップホーンの先端と電極との距離に大きく依存するが、距離を一定にすれば出力強度に応じた超音波効果を再現できる。実際にはステップホーンの先端と電極との距離は10cm以下、好ましくは5cm以下にすれば問題ない。また、導電性高分子化合物を成膜する電極の表面をステップホーンと垂直に配置することが望ましい。
【0057】
電解セルの形状については様々な設計手法があると考えられる。つまり超音波が反応系中において定在波を形成すれば節と腹とが生じるため、電極表面に到達する波動が節部か腹部かによりその効果に差異が生じるはずである。すなわち常用される周波数数十キロヘルツの超音波の水中における波長は数センチメートルであるから、超音波振動子ホーンと電極との距離が4分の1波長増減する毎に、超音波効果が周期的に変わることになる。しかし、超音波の到達エネルギーが音源からの距離に対し指数関数的に減少することによる複雑性があるにしても、超音波効果の4分の1波長毎の周期性は実際には不明瞭であった。これは電解セル内の壁面からの反射波が複雑に錯綜するためであると考えられる。
【0058】
電解浴温度は、電解液の凝固点と沸点との間であればよいが、通常、0〜60℃程度とすればよい。超音波エネルギーは熱エネルギーに変換されやすいため、反応中の温度変動を極力抑えることが可能な装置設定とすることが好ましい。
【0059】
本発明では、電解酸化重合初期において超音波出力を抑制し、その後、本来の条件で電解酸化重合を行ってもよい。具体的には、超音波出力値をキャビテーション閾値の−10%以上かつキャビテーション閾値未満として高分子電解質層の一部を形成した後、超音波出力値をキャビテーション閾値以上かつその+10%以下として高分子電解質層の残部を形成する。このような条件で電解酸化重合を行えば、初期に形成された部分が保護膜として機能するため、本来の条件における超音波の衝撃を緩和することが可能となる。したがって、絶縁性酸化被膜のダメージを小さくした上で、高分子電解質層の緻密さを向上することが可能となる。
【0060】
高分子電解質層の厚さは、図1に示すように、エッチング等によって形成された陽極基体1表面の凹凸を完全に埋めることができるように適宜決定すればよいが、一般に5〜100μm程度とする。なお、この場合の厚さは、高分子電解質層の最大厚さである。
【0061】
その他の構成
陰極6は、銀、パラジウム、銅などを含有する導電性ペーストの塗布により形成することができる。なお、陰極6と高分子電解質層5との間には、カーボン層が必要に応じて設けられる。例えば、銀ペーストにより陰極を形成した場合、カーボン層を設けることにより、銀のマイグレーションを防ぐことができる。カーボン層は、高分子電解質層をコロイダルカーボンに浸漬することにより形成できる。
【0062】
最後に陰極の一部に陰極リード端子を接続した後、樹脂モールドするか、樹脂や金属のケースに封入するなどして外装処理を行い、電解コンデンサとする。
【0063】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0064】
実施例1
表1に示す導電性下地層および高分子電解質層を有する固体電解コンデンサを、以下の手順で作製した。
【0065】
陽極基体として、厚さ100μmのアルミニウム箔を用い、これにエッチング処理を施して表面積を拡大した後、陽極酸化による化成処理を施して、酸化アルミニウムからなる厚さ20nmの絶縁性酸化被膜を形成した。その後、カシメ法にてアルミニウム箔とリード端子とを固定し、再び化成処理を行った。次に、絶縁性酸化被膜を0.04mol/lの過硫酸アンモニウム水溶液中に減圧下で30分浸漬した後、乾燥した。
【0066】
次いで、絶縁性酸化被膜上に、導電性下地層を形成した。ポリピロールからなる導電性下地層は、蒸留精製したピロールモノマーを含むアセトニトリル溶液に、酸化被膜を減圧下で30分浸漬して化学酸化重合を行うことにより形成した。一方、ポリアニリンからなる導電性下地層の形成に際しては、まず、予め合成しておいた脱ドーピングしたポリアニリンを、N−メチル−2−ピロリドン溶液中に0.5重量%の濃度になるように溶解し、さらにこの中に、ドーパントとしてクエン酸を0.2mol/lの濃度になるように溶解した。次いで、この溶液中に陽極基体を5分間浸漬した後、150℃で1時間乾燥させた。この処理を5回繰り返し、ポリアニリンからなる導電性下地層を得た。なお、導電性下地層の厚さは1μmとした。
【0067】
次に、アニリンモノマーを0.2mol/l、シュウ酸を0.02mol/l、支持電解質としてトルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウムを0.05mol/l含む水溶液を電解セルに入れ、この中に、導電性下地層を形成した陽極基体を浸漬した。電解セルには無隔膜セルを用い、超音波照射源には超音波ステップホーン(周波数20kHz)を用いた。作用極(陽極)である導電性下地層はステップホーンに垂直に配置し、その距離を2.0cmに固定した。この状態で、市販のキャビテーションメータを用い、プローブを電解セルに直接挿入してキャビテーション閾値を測定した結果、10Wであった。
【0068】
続いて、炭素棒を陰極として、超音波照射下で電流密度を0.5mA/cm2として120分間定電流電解を行い、最大厚さ50μmの高分子電解質層を形成した。このときの超音波出力を、上記キャビテーション閾値を基準として表1に示す。なお、サンプルNo.2とサンプルNo.3とについて電解時の電流量を比較したところ、サンプルNo.3はサンプルNo.2の約4倍であった。このことから、超音波出力値をキャビテーション閾値未満とすることにより、高分子電解質層の形成速度が著しく向上することがわかる。
【0069】
次に、高分子電解質層表面に、カーボンペースト、銀ペーストを用いて陰極を形成し、エポキシ樹脂により外装処理を行って固体電解コンデンササンプルを完成させた。
【0070】
これらのサンプルについて、120Hzにおける静電容量、100kHzにおけるインピーダンスおよび漏れ電流値を測定した。結果を表1に示す。
【0071】
また、各サンプルについて、絶縁性酸化被膜と導電性下地層および高分子電解質層との密着性を調べるために、陰極を形成する前に粘着テープによるピーリング試験を行った。この試験では、粘着テープ側に殆ど高分子電解質層が付着せず、絶縁性酸化被膜側に高分子電解質層が残存した場合を密着性が良好であるとし、粘着テープ側に大部分の高分子電解質層が付着し、絶縁性酸化被膜側には殆ど高分子電解質層が残存しなかった場合を不良とした。結果を表1に示す。
【0072】
【表1】
Figure 0004053671
【0073】
表1に示す結果から、本発明の効果が明らかである。すなわち、超音波出力をキャビテーション閾値の±10%以内としたサンプルでは、表1に示す特性のすべてが良好である。これに対し、本発明で限定する範囲を超える出力の超音波を照射したサンプルNo.4では、密着性を除くすべての特性が著しく悪くなっている。これは、高出力の超音波により絶縁性酸化被膜が破壊された結果、絶縁性が劣化したためと考えられる。一方、本発明で限定する範囲を下回る出力の超音波を照射したサンプルNo.5でも、特性は低い。これは、超音波照射による膜質向上効果が不十分であったためである。
【0074】
なお、サンプルNo.1〜4およびサンプルNo.6が明緑色であったのに対し、サンプルNo.5は暗緑色を呈していた。また、走査型電子顕微鏡で観察したところ、サンプルNo.5は膜質が粗かったが、他のサンプルは緻密であった。
【0075】
上記サンプルのほかに、原料モノマーとして3−メチルピロールまたは3−メチルチオフェンを用いて、それぞれポリピロールまたはポリチオフェンからなる高分子電解質層を形成し、そのほかは上記各サンプルと同様にして固体電解コンデンサを作製したところ、高分子電解質層形成時のキャビテーション閾値に対する超音波出力に応じ、上記表1と同様な結果が得られた。
【0076】
実施例2
超音波照射が高分子電解質層の緻密さに与える影響を調べるため、以下の手順でポリアニリン薄膜を形成した。
【0077】
まず、アニリンモノマーを0.1mol/l、塩酸を4.0mol/l含む電解液を調製した。次いで、陽極、陰極ともに白金電極として、0〜1.0V vs SCE、掃引速度100mV/sとして50回繰り返し電位掃引電解を行い、白金電極上にポリアニリン薄膜を形成した。電解の際には、超音波を照射した。電解セルおよび超音波照射源は実施例1と同じとしたが、本実施例におけるキャビテーション閾値は7Wであり、電解の際の照射強度も7Wに設定した。電解終了後、0V vs SCEに保持して脱ドーピングを行った。
【0078】
このポリアニリン薄膜の重さを白金電極の重量増加分から求め、また、薄膜の厚さを表面粗さ計および光学顕微鏡により測定し、これらから薄膜の密度を求めたところ、0.1g/cm3であった。一方、超音波を照射しなかったほかは上記と同様にして白金電極上にポリアニリン薄膜を形成し、これについても密度を求めたところ、0.037g/cm3であった。この結果から、超音波を照射しない場合には、ポリアニリン薄膜の膜質が著しく粗くなることがわかる。
【0079】
また、超音波照射下での電解重合により形成した高分子電解質の耐酸化性を調べるために、超音波照射下で白金電極上に形成したポリアニリン膜を電解セル中に入れ、4.0mol/l塩酸溶液中において1.0〜1.1Vで繰り返し電位掃引を行い、第一酸化ピーク電流値の推移を調べた。また、比較のために、超音波を照射せずに白金電極上に形成したポリアニリン膜についても、同様な測定を行った。結果を図2に示す。超音波照射を照射せずに形成したポリアニリン膜では、掃引回数が増えるにしたがって第一酸化ピーク電流値が顕著に減少している。これは、膜の酸化により導電性が失われたためと考えられる。これに対し、超音波照射下で形成したポリアニリン膜は、掃引回数増加に伴う電流値の減少量が少ない。この結果から、超音波照射によりポリアニリン膜の耐酸化性が著しく向上することがわかる。
【0080】
以上の実施例の結果から、本発明の効果が明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明により製造される固体電解コンデンサの構造を示す断面図である。
【図2】塩酸溶液中において電位掃引を行ったときの、電位掃引回数と第一酸化ピーク電流値との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
2 陽極基体
3 絶縁性酸化被膜
4 導電性下地層
5 高分子電解質層
6 陰極

Claims (4)

  1. 金属からなる陽極基体を酸化して絶縁性酸化被膜を形成する工程と、前記絶縁性酸化被膜上に導電性下地層を形成する工程と、超音波を照射しながら電解酸化重合を行って、導電性高分子化合物を含む高分子電解質層を前記導電性下地層上に形成する工程とを有し、前記高分子電解質層を形成する際の超音波出力値を、キャビテーション閾値の±10%以内とする固体電解コンデンサの製造方法であって、超音波出力値をキャビテーション閾値の−10%以上かつキャビテーション閾値未満として前記高分子電解質層の一部を形成した後、超音波出力値をキャビテーション閾値以上かつその+10%以下として前記高分子電解質層の残部を形成する固体電解コンデンサの製造方法。
  2. 前記高分子電解質層に含まれる導電性高分子化合物が、置換もしくは無置換のπ共役系複素環式化合物、共役系芳香族化合物またはヘテロ原子含有共役系芳香族化合物を原料モノマーとするものである請求項の固体電解コンデンサの製造方法。
  3. 前記導電性下地層が導電性高分子化合物を含有し、この導電性高分子化合物が、置換もしくは無置換のπ共役系複素環式化合物、共役系芳香族化合物またはヘテロ原子含有共役系芳香族化合物を原料モノマーとするものである請求項1または2の固体電解コンデンサの製造方法。
  4. 前記陽極基体が、Al、Ta、Ti、NbおよびZrの少なくとも1種を含有する金属または合金から構成される請求項1〜のいずれかの固体電解コンデンサの製造方法。
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