JP4057206B2 - 固体電解コンデンサの製造方法 - Google Patents

固体電解コンデンサの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性高分子化合物を固体電解質として用いた固体電解コンデンサの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電解コンデンサは、絶縁性酸化皮膜形成能を有する金属、例えばアルミニウムやタンタル等のいわゆる弁金属を陽極に用い、この金属の表面を陽極酸化して誘電体層となる絶縁性酸化皮膜を形成した後、実質的に陰極として機能する電解質層を形成し、さらにグラファイトや銀などの導電層を陰極として設けることにより形成される。
【0003】
例えばアルミニウム電解コンデンサは、エッチング処理により比表面積を拡大した多孔質アルミニウム箔を陽極とし、この陽極表面に形成した酸化アルミニウム層と陰極箔との間に、電解液を含浸させた隔離紙を設けた構造となっている。
【0004】
絶縁性酸化皮膜と陰極との問の電解質層に電解液を利用する電解コンデンサは、シーリング部分からの液漏れや、電解液の蒸発によって寿命が決定されるなどの問題がある。これに対し、金属酸化物や有機化合物からなる固体電解質を用いた固体電解コンデンサは、このような問題がないため好ましい。金属酸化物からなる固体電解質としては、二酸化マンガンが代表的である。一方、有機化合物からなる固体電解質としては、例えば特開昭52−79255号公報、特開昭58−191414号公報に記載されている7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯塩が検討されている。
【0005】
ところで近年、電子機器の電源回路の高周波化に伴い、使用される電解コンデンサに対してもそれに対応した性能が求められている。しかし、上記した二酸化マンガンまたはTCNQ錯塩からなる電解質層を用いた固体電解コンデンサには、以下のような問題を有していた。
【0006】
二酸化マンガンからなる固体電解質層は、一般に硝酸マンガンの熱分解を繰り返すことにより形成するが、この熱分解の際の加熱によって、また、熱分解の際に発生するNOx ガスの酸化作用によって、誘電体である絶縁性酸化皮膜が損傷あるいは劣化するので、例えば漏れ電流値が大きくなってしまうなど、最終的に得られる固体電解コンデンサの諸特性が低くなりやすい。また、二酸化マンガンを固体電解質として用いると、高周波領域においてインビーダンスが高くなってしまう。一方、TCNQ錯塩は、電導度が〜1S/cm程度までであり、現在の電解コンデンサに対する低インビーダンス化の要求に対して十分に満足とはいえない。また、TCNQ錯塩が絶縁性酸化皮膜との密着性に劣ること、半田固定時の熱安定性や経時的な熱安定性に欠けることなどから、信頼性が低くなってしまうことが指摘されている。さらには、TCNQ錯塩は高価であるという問題もあった。
【0007】
これらの欠点を補い、より優れた特性を得るため、製造コストが比較的低く、また、絶縁性酸化被膜との付着性が比較的良好で、熱安定性にも優れた高導電性の高分子化合物を利用する固体電解コンデンサが提案されている。
【0008】
例えば、特許第2725553号には、陽極表面の酸化皮膜上に、化学酸化重合によりポリアニリンを形成した固体電解コンデンサが記載されている。また、特公平8−31400号公報において、化学酸化重合法のみでは陽極酸化被膜上に強度の高い導電性高分子膜を形成することが困難であり、また、陽極酸化皮膜が電気絶縁体であるため、電解重合法で陽極酸化皮膜上に直接電解重合膜を形成することは、不可能ないし非常に困難であると記されている。そこで、酸化皮膜上に、金属または二酸化マンガンの薄膜を形成し、この上に、導電性高分子膜を電解重合法により形成することが記載されている。
【0009】
また、特公平4−74853号公報には、上記特公平8−31400号公報の二酸化マンガンの薄膜に替えて、化学酸化重合により形成した導電性高分子膜を設けた固体電解コンデンサが記載されている。これら両公報では、使用する導電性高分子として、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフランが挙げられている。
【0010】
また、特開昭54−136650号公報には,誘電体皮膜(酸化皮膜)上に二酸化マンガンを形成して固体電解コンデンサを製造する方法が記載されている。同公報には、二酸化マンガンの形成に際し、その前駆体である硝酸マンガンを超音波を照射しながら酸化皮膜中の微細孔に含浸させる方法が示され、これにより硝酸マンガンの含浸率が向上可能という効果が記載されている。なお、同公報には、超音波照射条件に関しての情報は記載されていない。
【0011】
特開昭63−283116号公報には、酸化皮膜上に半導体層を超音波の振動下で形成して固体電解コンデンサを製造する方法が記載されている。同公報には、化学的、電気化学的に析出させた二酸化鉛あるいは、二酸化鉛と硫酸鉛を主成分とした半導体層の形成を超音波の振動下で行う方法が示され、酸化皮膜中の微細孔中にも半導体層を十分含潰させることが可能という旨の効果が記載されている。同公報には、用いる超音波の周波数及び、出力については、基体の種類、酸化皮膜の厚み、半導体層の種類により変化するものとされ、超音波照射によって酸化皮膜の過度の劣化を防ぐために、反応を高温、短時間で行うことが望ましいと記載されている。実施例では出力60W、発振周波数45kHzの超音波、または出力35W、発振周波数41kHzの超音波を用いて、90℃、1分間反応させることにより半導体層を形成しているが、超音波に関してその他の情報は記載されていない。
【0012】
特開平3−280519号公報には、酸化皮膜上、またはこの上に形成されたマンガン酸化物からなる導電性皮膜上に、超音波を照射しながら電解重合法により導電性高分子の重合物を成長させて固体電解コンデンサを製造する方法が記載されている。同公報には、超音波を照射しながら電解重合を行うことにより、モノマー、支持電解質、添加物等が誘電体皮膜上の隅々にまで行き波り、導電性高分子の成長を滑らかにすることができ、また、陽極弁金属の細かなエッチングピット中にも電解重合導電性高分子を成長させることが可能となるという効果が記載されている。同公報には、ここで用いる超音波は特別なものである必要はない、と記載されている。実施例では50kHzの超音波を用いているが、超音波に関してその他の情報は記載されていない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記特開昭63−283116号公報及び、特開平3−280519号公報に記載されているように超音波を照射しながら、陽極酸化皮膜中において化学反応を誘起させて固体電解質層を形成し、固体電解コンデンサを作製した。しかし、このようにして作製した固体電解コンデンサでは、静電容量、高周波におけるインピーダンス、漏れ電流値等の各種特性が、超音波照射条件に応じて著しくばらつき、工業的利用が実質的に不可能であることがわかった。
【0014】
本発明の目的は、化学酸化重合法により生成した導電性高分子化合物からなる固体電解質を有する固体電解コンデンサの製造方法において、良好なコンデンサ特性を安定して実現することが可能な固体電解コンデンサの製造方法を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(3)のいずれかによって達成される。
(1) 金属からなる陽極基体を酸化して絶縁性酸化皮膜を形成する工程と前記絶縁性酸化皮膜上に、超音波を照射しながら化学酸化重合を行って、導電性高分子化合物を含む高分子電解質層を形成する工程とを有し、
前記高分子電解質層を形成する際の超音波周波数を100kHz以上400kHz以下とする固体電解コンデンサの製造方法。
(2)前記高分子電解質層に含まれる導電性高分子化合物は、
置換もしくは非置換のπ共役系複素環式化合物、共役系芳香族化合物またはヘテロ原子含有共役系芳香族化合物のいずれかを原料モノマーとする上記(1)の固体電解コンデンサの製造方法。
(3) 前記陽極基体は、Al、Ta、Ti、NbおよびZrのうちの少なくとも1種を含有する金属または合金から形成される上記(1)または(2)の固体電解コンデンサの製造方法。
【0016】
【作用および効果】
超音波は力学的エネルギーの一つであり、媒体中を伝搬するときの波長が、通常、10〜10-2cm程度の疎密波である。電磁波に換算すると長波長のラジオ波に相当し、分子レベルでは反応種を直接励起して化学反応を直接駆動するには不十分である。しかしながら化学反応の制御エネルギーとしては極めて特長に富んでいる。超音波が液体中を伝搬すると、低圧域と高圧域とが10-4〜10-6秒程度の周期で交互に生じ、低圧域では微小な空洞(キャビテイ)が生成するが、続いて起こる圧縮サイクルで急激に崩壊する。このとき、局所的に超高温(1000K以上)と超高圧(100気圧以上)とが発生する。このキヤビテイの生成と崩壊の繰り返しを、一般にキャビテーションと呼び、キャビテーションを発生させるために必要な超音波の出力値を、一般にキヤビテーション閾値と呼ぶ。
【0017】
このような、超音波の特異的な性質を利用して電解酸化重合を行い、導電性高分子化合物を合成した試みとしては、例えば以下のような報告がある。
【0018】
シンセテイツクメタルズ(Synthethic Metals),第18巻、145頁、1987年や、ポリマーフィジックス(Polymer Physics)、第30巻、19頁、1992年には、超音波照射下での電解酸化重合により形成されたポリチオフェン膜が、表面平滑性、ドーピング性、レドックス特性のいずれにおいても著しく物性改良されていることが報告されている。
【0019】
また、ニュージャーナル オブ ケミストリ(New Journal of Chemistry),第19巻,989頁,1996年には、ポリピロールについても同様の効果があることが報告されている。また、電気化学,第65巻,6号,495頁,1997年には、超音波を照射しながら電解酸化重合にて白金電極上に形成したポリアニリンについて、密着性が高く膜質が密であることが報告されている。
【0020】
そして、電気化学会第65回大会、講演要旨、1M18、364頁には、白金電極上に成膜したポリアニリン重合膜の膜質が、キャビテーションの生起に大きく依存することが報告されている。具体的には、キャビテーション閾値が10Wとなる条件において、超音波出力をキャビテーション閾値未満の6Wとして電解酸化重合した場合には、超音波照射下で形成した膜と同様に粒塊が絡み合った粗雑な構造と形態をもつ膜となり、一方、超音波出力をキャピテーション閾値を超える17Wとした場合には、倍率10000倍のSEM(走査型電子顕微鏡)写真では粒塊が確認できないほど均一な膜が得られたことが報告されている。この結果から、この報告においては、キヤビテーション閥値以上の超音波をアニリンの重合系に照射することによって、膜表面の均一化ならびに緻密化が発現することが明らかになった、と結論づけている。なお、この報告では、キャビテーションメータの測定プローブを電解セルに挿入してキャビテーション閥値を測定している。
【0021】
しかし、上記各報告には、超音波照射下での電解酸化重合により形成した導電性高分子化合物膜について、固体電解コンデンサにおける固体電解質への適用可能性を示唆する記載はなく、当然、固体電解コンデンサヘの適用に際して留意すべき条件に関する記載もない。また、超音波照射下での電解酸化重合を固体電解コンデンサの作製に適用した前記特開平3−280519号公報には、超音波照射条件が周波数だけしか記載されていない。
【0022】
そこで、本発明者らは、超音波照射下での電解酸化重合により形成した導電性高分子化合物膜を、電解コンデンサの固体電解質に適用する実験を行った。この結果、電解コンデンサに適用する場合に特有の問題が明らかになった。すなわち、上記した電気化学会第65回大会,講演要旨集,1M18,364頁に示されるように、単にキャピテーション閥値以上の超音波を照射した場合、電解コンデンサの陽極基体表面に形成した酸化被膜が破壊されやすく、また、導電性高分子化合物膜の形成速度が著しく遅くなりやすいことがわかった。酸化被膜が破壊されると、漏れ電流が著しく大きくなり、所望の静電容量が得られなくなる。また、超音波出力をキャビテーション閾値未満としても、固体電解質としての機能が十分に高い導電性高分子化合物膜が形成でき、しかも、膜形成速度を向上できることがわかった。
【0023】
このような実験に基づき、特願平10−281991号公報に記載された出願を行うに至った。先出願においては、固体電解質層を形成するに際し、超音波出力をキヤピテーション閥値の±10%以内に設定して電解酸化重合を行うことを特長とするものである。超音波照射効果を用いた電解酸化重合による導電性高分子の生成に関して、超音波照射効果の発現は、キャビテーションの生起に大きく依存しているが、過度の生起は逆効果である。キャビテーションの生起を一定の範囲内に制御すれば、電解コンデンサとして適用可能な固体電解質を得ることができる。
【0024】
電解コンデンサを作製するにあたり、電解重合によって得られる導電性高分子を固体電解質とする方法は、上述の特公平8−31400号公報または、特公平4−74853号公報に記載されているように、酸化皮膜上に、金属または二酸化マンガンの薄膜、または、化学酸化重合により形成した導電性高分子膜を設ける処理をした上で、導電性高分子を電解重合する方法が一般的である。
【0025】
このような手法が採用されている理由は、特公平8−31400号公報で指摘しているように、化学酸化重合法で得られる導電性高分子膜は、電解酸化重合法によるそれに比較して、特性的に劣っているからである。しかしながら、化学酸化重合法で得られる導電性高分子膜が、十分な特性、例えば、膜質、導電性、強度等を備えていること、言い換えれば電解重合法で得られる導電性高分子膜と同等以上の性質を具備していれば、固体電解質として電解コンデンサに適用することが可能である。このとき電解重合による導電性高分子膜の作製は不要となる。
【0026】
化学酸化重合のみの処理によって導電性高分子層を作製できれば、工程を簡略化することが可能であり、製造コストの低減効果も発生する。
【0027】
そこで実験検討を進め、超音波照射下での化学酸化重合により形成した導電性高分子化合物膜を、電解コンデンサの固体電解質に適用する実験を行った。この結果、電解コンデンサに適用する場合に特有の問題が明らかになった。すなわち、酸化皮膜上に化学酸化重合による導電性高分子を生成させる場合には、キャビテーション閥値の±10%以内に設定して化学酸化重合を行っても、酸化皮膜が破壊されてしまうことが判明した。
【0028】
酸化皮膜の損傷の原因はキャビテーションによるものと推定され、キヤビテーション強度は発振周波数に大きく依存することが知られている。実験の結果、超音波出力を一定値とし、発振周波数が40kHzの時のキャピテーション強度を1とすると、100〜120kHzでは約10分の1に、200kHzでは約100分の1に、400kHzでは1000分の1に低減化する。キャビテーションを低減できれば酸化皮膜の損傷も改善できるものと考えられる。
【0029】
実験検討の結果、超音波の発振周波数を一定以上の数値とし、所定の出力で照射しながら化学酸化重合を行い、導電性高分子を生成させると、酸化皮膜の損傷の極めて少なく、かつ固体電解質としての機能が十分に高い導電性高分子化合物膜が形成できることが判明した。
【0030】
また、この導電性高分子を固体電解質とした電解コンデンサを作製して評価した結果、電解コンデンサの電気的特性及び、耐熱特性(信頼性)を改善することが可能になる。
【0031】
このように導電性高分子を化学酸化重合にて生成する場合においては、電解重合の際の効果とは異なり、キャビテーションの生起を極端に抑制して、単に音場だけの効果の比重が高まっても超音波照射効果は発現していると考えられる。
【0032】
前記特開昭63−283116号公報には、超音波照射を加えながら酸化皮膜の微細孔中で化学反応を誘起させ、半導体層を形成することにより固体電解コンデンサを作製する方法が開示されている。出力、発振周波数といった超音波照射条件は、使用する弁金属の基体の種類、酸化皮膜の厚み、半導体層の種顛により変化するものとされ、さらに超音波照射によって酸化皮膜の過度の劣化を防ぐために、反応を高温、短時間で行うことが望ましいと記載されている。しかしながら二酸化鉛や、二酸化鉛と硫酸鉛層とを形成する条件と、導電性高分子層を形成する条件とは大きく異なるものである。
【0033】
一般的には、導電性高分子層を形成するには低温、常温以下でモノマーを重合させて合成するほうが有利とされている。例えば、高温、つまり常温以上およそ50℃以上において導電性高分子を重合すると著しい導電性の低下や、収率の低下を招くことになる。さらに短時間で反応を終結することが望ましいとされているが、導電性高分子の重合は少なくとも30分以上反応させることが必要である。前記特開昭63ー283116号公報には半導体層として二酸化鉛や二酸化鉛と硫酸鉛の形成の際の超音波照射条件だけが記載されており、導電性高分子層の形成に際し、超音波照射の効果や、諸条件は記載されていない。さらに超音波照射下での電解酸化重合を固体電解コンデンサの作製に適用した前記特開平3−280519号公報には、超音波照射条件が周波数だけしか記載されていない。
【0034】
さらに前記特開昭63−283116号公報に記載されているような超音波照射条件は、キャピテーション閥値以上の照射条件であり、数分間で酸化皮膜は多大なダメージを受けてしまう。この結果、漏れ電流が著しく大きくなり、所望の静電容量が得られなくなり、最悪の場合はコンデンサとして機能しない。
【0035】
さらに、ポリピロールやポリアニリンまたはポリチオフェンといった導電性高分子を数分間以内で化学的、電気化学的に重合させるのは困難であり、仮に重合できたとしても、導電性が不十分であったり、1回の重合反応で、酸化皮膜の微細孔中で十分に含浸および生成させるには不十分である。
【0036】
本発明では、固体電解質層を形成するに際し、超音波の発振周波数を100kHz以上、400kHz以下に設定して化学酸化重合を行う。
【0037】
キャビテーション強度を発振周波数が40kHzの時の約10分の1以下、1000分の1以上の範囲に設定すれば、均質で緻密な固体電解質層が形成でき、絶縁性酸化皮膜の破壊が生じることもない。特定の発振周波数や出力値で均質で緻密な膜が得られることは、従来報告されていない。すなわち、キャビテーション強度を制御することにより、膜質の向上と酸化皮膜の破壊防止が可能であることは、本発明により初めて見いだされたことである。
【0038】
これに対し、発振周波数を100kHz以下、つまり発振周波数が40kHzの時のキャビテーション強度を約10分の1以上の超音波を照射した場合、固体電解質層は均質で緻密な固体電解質層が形成できるものの、数分間で酸化皮膜は多大なダメージを受けてしまう。
【0039】
この結果、漏れ電流が著しく大きく、かつ所望の静電容量が得られなくなり、最悪の場合はコンデンサとして機能しない。また発振周波数が400kHz以上でも十分な効果は得られると考えられるが、高出力で超音波を発振しないと超音波発振器から重合反応容器内まで伝搬しにくくなる。実際に高出力かつ400kHz以上のような超音波発振器を安価で入手したり作製することは一般的ではなく、製造上の障害となるため、適当でないと考えられる。
【0040】
なお、固体電解質層形成の際に照射する超音波の出力値は、発振周波数によって最適値を選択する必要がある。また、電解セルの寸法や、構造などの各種条件によっても異なるが、一般に5〜200W程度とすれば十分である。
【0041】
【発明の実施の形態】
本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、金属からなる陽極基体を酸化して絶縁性酸化皮膜を形成する工程と前記絶縁性酸化皮膜上に、超音波を照射しながら化学酸化重合を行って、導電性高分子化合物を含む高分子電解質層を形成する工程とを有し、前記高分子電解質層を形成する際の超音波発振周波準を100kHz以上400kHz以下とするものである。
【0042】
このように、高分子電解質層を形成する際の超音波の周波数を100kHz以上400kHz以下とすることにより、超音波のキャビテーションを抑制し、陽極基体の酸化膜の破壊を防止して、漏れ電流を飛躍的に低減することができる。
【0043】
高分子電解質層を形成する際に用いる超音波の周波数は、100kHz以上400kHz以下である。400kHz超ではキャビテーションが抑制されすぎて超音波照射による効果が得にくくなると推定される。超音波の周波数が400kHzを超えた場合にも本発明の効果が得られる可能性はあるが、現時点では超音波周波数400kHz超での本発明の効果を確認することは極めて困難である。超音波の周波数が低すぎると、キャビテーションの強度が増大し、酸化被膜が破壊されやすくなる。超音波の周波数は、通常発振器の発振周波数を調節することにより、調節する。
【0044】
超音波発振器の出力は、超音波の発振周波数に応じて設定する必要がある。具体的には、発振周波数が100kHz〜250kHzにおいて、好ましくは20〜200W、特に50〜150W程度である。また、発振周波数が250kHz〜400kHzにおいて、好ましくは100〜500W、特に200〜450W程度である。
【0045】
本発明により製造される固体電解コンデンサの構成例を、図1に示す。この電解コンデンサは、陽極基体2上に、その陽極酸化により取成された酸化皮膜3と、高分子電解質層4と、陰極5を有する。以下、この固体電解コンデンサの各部の構成および形成方法について説する。
【0046】
〔陽極基体2〕
陽極基体は、絶縁性酸化皮膜形成能のある弁金属群もしくはその合金群から構成することができる。このような金属ないし合金としては、例えば、Al、Ta、Ti、NbおよびZrの1種、またはこれらの少なくとも1種を含有する合金が好ましい。そして、これらの金属ないし合金を、線状、箔状、板状、多孔質ブロックなどの形状に加工し、必要に応じて積層、巻回を行って陽極基体とすることができる。
【0047】
陽極基体には、必要に応じ、非表面積拡大のためのエッチング処理が施され、図1に示すような凹凸が表面に形成される。
【0048】
〔絶縁性酸化皮膜3〕
絶縁性酸化皮膜は、ホウ酸水溶液やアジピン酸アンモニウム水溶液を電解液として、陽極基体表面を陽極酸化等の処理によって酸化させることにより形成される。
【0049】
絶縁性酸化皮膜の厚さは、使用電圧、おおよそ数Vから20V程度に応じて適宜決定すればよいが、一般に1nm〜10nm程度である。
【0050】
〔高分子電解質層4〕
導電性高分子化合物からなる高分子電解質層は、化学酸化重合法のみにより形成する。化学酸化重合は、例えば以下に示す手順で行うことが好ましい。まず、絶縁性酸化皮膜上に、酸化剤を0.001〜2.0mol/l程度含む溶液、またはこれにドーバント種を与える化合物を含ませた溶液を塗布または噴霧などの方法により均一に付着させる。次に、導電性高分子化合物のモノマーを好ましくは少なくとも0.01mol/l以上含む溶液またはモノマー自体を、絶縁性酸化皮膜に直接接触させる。次いで、上記周波数範囲の超音波を照射しながら化学酸化重合を行う。これにより、導電性高分子化合物が合成される。
【0051】
化学酸化重合に使用される酸化剤は特に限定されないが、代表的なものを例示すれば、ヨウ素、臭素、ヨウ化臭素などのハロゲン化物、五フツ化珪素、五フッ化アンチモン、四フッ化珪素、五塩化リン、五フッ化リン、塩化アルミニウム、塩化モリブデンなどの金属ハロゲン化物、硫酸、硝酸、フルオロ硫酸、トリフルオロメタン硫酸、クロロ硫酸などのプロトン酸、三酸化イオウ、二酸化窒素などの酸素化合物、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、過酸化水素、過マンガン酸カリウム、過酢酸、ジフルオロスルホニルバーオキサイドなどの過酸化物が挙げられる。
【0052】
また、必要に応じて含有される、トーバント種を与える化合物としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0053】
陰イオンがヘキサフロロリンアニオン、ヘキサフロロ砒素アニオンであり、陽イオンがリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属カチオンである塩、例えば、LiPF6 、LiAsF6 、NaPF6 、KPF6 、KAsF6 などである。これらに加えて、四フツ化ホウ素塩化合物、例えば、LiBF4 、NaBF4 、NH4BF4 、(CH3 )4NBF4 、(n−C494NBF4 などである。さらに、スルホン酸またはその誘導体、例えば、P−トルエンスルホン酸、P−エチルベンゼンスルホン酸、P−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、メチルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、β−ナフタレンスルホン酸およびこれらの塩、例えば、プチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、2,6−ナフタレンジスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸テトラプチルアンモニウムなどである。
【0054】
金属ハロゲン化物、例えば、塩化第二鉄、臭化第二鉄、塩化第二銅、臭化第二銅などである。
【0055】
ハロゲン化水素酸、無機酸またはその塩、例えば、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、リン酸、硝酸、あるいは、これらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはアンモニウム塩、さらに過塩素酸、過塩素酸ナトリウム等の過ハロゲン酸、またはその塩などである。
【0056】
カルポン酸類、例えば、酢酸、シュウ酸、ギ酸、酪酸、コハク酸、乳酸、クエン酸、フタル酸、マレイン酸、安息香酸、サリチル酸、ニコチン酸等のモノまたはジカルポン酸、芳香族複素環式カルボン酸類や、トリフルオロ酢酸等のハロゲン化されたカルポン酸およびこれらの塩等である。
【0057】
これらの酸化剤およびドーバント種を与えることができる化合物は、適切な溶液、つまり水や有機溶媒に溶解させた状態で用いる。溶媒は、単独で使用しても、2種以上混合して使用してもよい。混合溶媒は、ドーバント種を与える化合物の溶解度を高めるためにも有効である。混合溶媒としては、溶媒間の相溶性を有するもの、および、前記化合物との相溶性を有するものが適している。溶媒の具体例としては、有機アミド頼、含硫化合物、エステル類、アルコール類などが挙げられる。
【0058】
化学酸化重合により合成される導電性高分子化合物としては、置換もしくは無置換のπ共役系複素環式化合物、共役系芳香族化合物またはヘテロ原子含有共役系芳香族化合物を原料モノマーとするものが好ましい。これらのうちでは、ポリアニリン、.ポリピロール、ポリチオフェンまたはポリフランが好ましく、特に、ポリアニリンまたはポリピロールが好ましい。
【0059】
このような導電性高分子化合物を与えるモノマーの代表例としては、未置換アニリン、アルキルアニリン類、アルコキシアニリン類、ハロアニリン類、o−フェニレンジアミン類、2,6−ジアルキルアニリン類、2,5−ジアルコキシアニリン類、4,4'−ジアミノジフエニルエーテル、ピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−プロピルピロール、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェンなどを挙げることができる。
【0060】
超音波発振装置は、超音波発振源を反応系に直接導入することができるものが最適である。超音波振動子が反応溶液中に共存することができれば、反応の再現性が良好であり、また、エネルギー利用効率が高い。
【0061】
また超音波発振装置は、出力の制御が可能なものが好ましい。出力制御が可能な超音波発振装置を用いるのは、キャビテーション強度の変動に対応するためである。超音波発振源の出力が一定であったとしても、キャビテーション強度は、電解セル、電極、超音波照射源等の電解反応装置の幾何学的形状、溶液粘度等の電解液の物理的性質などに依存して変動する。従って、再現性よく反応を行うために超音波発振装置の出力制御を行うことが好ましい。
【0062】
なお、超音波発振源を反応系に直接導入しないで超音波照射を行う方法も利用できる。この方法は、例えば水等を満たした超音波洗浄器中に電解槽を置くことによって実施できる。しかし、超音波照射下での化学酸化重合反応は、固−液不均一反応系の一種であるので、その再現性、制御性、効率性の点を鑑みて、超音波発振源を反応系に直接導入する方法を利用することが好ましい。
【0063】
超音波効果は発振器と反応基体との距離に依存するが、距離を一定にすれば出力強度に応じた超音波効果を再現できる。実際には発振器と電極との距離は20cm以下、好ましくは10cm以下にすれば問題ない。
【0064】
反応溶液セルの形状については、様々な設計手法があると考えられる。つまり超音波が反応系中において定在波を形成すれば節と腹とが生じるため、電極表面に到達する波動が節部か腹部かによりその効果に差異が生じるはずである。すなわち常用される周波数が100キロヘルツ〜数100キロヘルツの超音波の水中における波長は数センチメートル〜数ミリメートルであるから、超音波振動子と反応基体との距離が4分の1波長増減する毎に、超音波効果が周期的に変わることになる。しかし、超音波の到達エネルギーが音源からの距離に対し指数関数的に減少することによる複雑性があるにしても、超音波効果の4分の1波長毎の周期性は実際には不明瞭であった。これは反応溶液セル内の壁面から反射波が複雑に錯綜するためであると考えられている。
【0065】
反応溶液温度は、基本的には反応溶液の擬固点と沸点との間であればよいが、通常、0〜60℃程度とすればよい。超音波エネルギーは、熱エネルギーに変換されやすいため、反応中の温度変動を極力抑えることが可能な装置設定とすることが好ましい。
【0066】
本発明では、化学酸化重合初期において超音波出力を極端に抑制し、その後、本来の条件で化学酸化重合を行ってもよい。具体的には、使用する超音波発振器の最大出力値の5%程度以下として超音波出力値を設定し、化学酸化重合による高分子電解質層の一部を形成した後、超音波出力値を10〜100%として高分子電解質層の残部を形成する。このような条件で化学酸化重合を行えば、初期に形成された部分が保護膜として機能するため、本来の条件における超音波の衝撃を緩和することが可能となる。従って、絶縁性酸化被膜のダメージを小さくした上で、高分子電解質層の緻密さを向上させることが可能となる。
【0067】
高分子電解質層の厚さは、図1に示すように、エッチング等によって形成された陽極基体1表面の凹凸を完全に埋めることができるように適宜決定すればよいが、一般に5〜100μm 程度とする。なお、この場合の厚さは、高分子電解質層の最大厚さである。
【0068】
〔その他の構成〕
陰極5は、銀、バラジウム、銅などを含有する導電性ペ←ストの塗布により形成することができる。なお、陰極5と高分子電解質層4との問には、カーボン層が必要に応じて設けられる。例えば、銀ペーストにより陰極を形成した場合、カーボン層を設けることにより、銀のマイグレーションを防ぐことができる。カーボン層は、高分子電解質層をコロイダルカーボンに浸漬することにより形成できる。
【0069】
最後に陰極の一部に陰極リード端子を接続した後、樹脂モールドするか、樹脂や金属のケースに封入するなどして外装処理を行い、電解コンデンサとする。
【0070】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0071】
表1に示す高分子電解質層を有する固体電解コンデンサを、以下の手順で作製した。
【0072】
陽極基体として、厚さ100μm のアルミニウム箔を用い、これにエッチング処理を施して表面積を拡大した後、アジピン酸アンモニウム水溶液を電解液として、陽極酸化による化成処理を施して、酸化アルミニウムからなる厚さ20nmの絶縁性酸化皮膜を形成した。
【0073】
その後、カシメ法にてアルミニウム箔とリード端子とを固定し、再び化成処理を行った。以下に作製したサンプルの電極面積は各サンプルともに同一面積である。
【0074】
<実施例1>
次いで、絶縁性酸化皮膜上に、化学酸化重合によるポリアニリンからなる高分子電解質層を形成した。ポリアニリンは、蒸留精製したアニリンモノマー0.1mol/l、ポリビニルスルホン酸0.1mol/l、硫酸0.2mol/l、過硫酸アンモニウム0.05mol/lを含むエタノール−水混合溶液セル中に陽極基体入れ、30分浸漬して化学酸化重合を行うことにより形成した。この化学酸化重合処理を計2回繰り返した。
【0075】
この結果、最大厚さ50μm 程度の高分子電解質層を形成した。超音波照射源には周波数120kHz(サンフルNo.1)と400kHz(サンプルNo.2)を用いた。陽極基体と発振器は垂直な位置関係になるように配置し、その距離を20cmに固定した。発振器の設定出力は100W(サンプルNo.1)と200W(サンプルNo.2)であった。
【0076】
比較のため、超音波照射源には周波数42kHz(サンプルNo.3)を用いた。陽極基体と発振器は垂直な位置関係になるように配置し、その距離を20cmに固定した。発振器の設定出力は70Wであった。さらに、超音波を照射せず、その他の条件を同一にして作製したサンプル(サンプルNo.4)も作製した。
【0077】
<実施例2>
また、絶縁性酸化皮膜上に、化学酸化重合によるポリピロールからなる高分子電解質層を形成した。ポリピロールは、蒸留精製したビロールモノマー0.2mol/l、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム0.2mol/l、硫酸鉄(III)水溶液0.5mol/lを含むエタノールー水混合溶液セル中に陽極基体入れ、20分浸漬して化学酸化重合を行うことにより形成した。この化学酸化重合処理を計3回繰り返した。
【0078】
この結果、最大厚さ50μm程度の高分子電解質層を形成した。超音波照射源には周波数120kHz(サンプルNo.5)と400kHz(サンプルNo.6)を用いた。陽極基体と発振器は垂直な位置関係になるように配置し、その距離を20cmに固定した。発振器の設定出力は100W(サンプルNo.)と200W(サンプルNo.)であった。
【0079】
比較のため、超音波照射源には周波数42kHz(サンプルNo.7)を用いた。陽極基体と発振器は垂直な位置関係になるように配置し、その距離を20cmに固定した。発振器の設定出力は70Wであった。さらに超音波を照射せず、その他の条件を同一にして作製したサンプル(サンプルNo.8)も作製した。
【0080】
次に、高分子電解質層表面に、カーボンペースト、銀ペーストを用いて陰極を形成し、エポキシ樹脂により外装処理を行って固体電解コンデンササンプルを完成させた。
【0081】
また、超音波照射下での化学酸化重合により形成した高分子電解質の耐熱性を調べるために、これらの各サンプルについて、ペースト塗布を一切行わず、固体電解質層が露出している状態で耐熱試験環境下に放置した。耐熱環境は125℃一定の温度下、大気中であり、そこにサンプルを放置し、所定時間放置後に上記各ペースト塗布をして、エボキシ樹脂により外装処理を行って固体電解コンデンササンプルを完成させた。
【0082】
これらのサンプルについて、初期値と熱処理後の120Hzおよび10kHzにおける静電容量、100kHzにおけるインビーダンスおよび漏れ電流値を測定した。なお、熱処理は、ポリアニリンについては125℃で100時間、ポリピロールについては125℃で500時間行った。結果を表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
表1に示す結果から、本発明の効果が明らかである。すなわち、超音波発振周波数を100kHz以上,400kHz以下としたサンプルでは、表1に示す特性のすべてが良好である。これに対し、本発明で限定する範囲を下回る超音波発振周波数を照射したサンプルNo.3及び、7では、密着性を除くすべての特性が劣っている。これは、キャビテーション強度が十分であるため、膜質向上効果は得られているものの、キャビテーション強度が高く、かつ高出力であるため、絶縁性酸化皮膜が破壊された結果と考えられる。一方、本発明で限定する範囲を上回る周波数の超音波を照射しようと実験を試みたが、装置を入手することが困難な状況であり、断念せざるを得なかった。また、全く超音波を照射しないで高分子電解質層を形成したサンプルNo.4及び、8は、本発明で限定する範囲内の超音波発振周波数を照射したサンプルNo.1,2及び5,6とを比較すると特性は低い。これは、超音波照射による膜質向上効果が不十分であったためと考えられる。
【0085】
なお、サンプルN0.1〜3および5〜7が明緑色であったのに対し、サンプルNo.4及び、8は暗緑色を呈していた。また、走査型電子頼微鏡で観察したところ、サンプルNo.4及び、8は膜質が粗かったが、他のサンプルは緻密であった。
【0086】
上記サンプルのほかに、原料モノマーとして3−メチルピロールまたは3−メチルチオフェンを用いて、それぞれポリピロールまたはポリチオフェンからなる高分子電解質層を形成し、そのほかは上記各サンプルと同様にして固体電解コンデンサを作製したところ、高分子電解質層形成時のに対する超音波に応じ、上記表1と同様な傾向を有する結果が得られた。
【0087】
<実施例2>
超音波照射が高分子電解質層の緻密さに与える影響を調べるため、以下の手順でポリアニリン薄膜を形成した。
【0088】
まず、ポリアニリンは、蒸留精製したアニリンモノマー0.1mol/l、ポリビニルスルホン酸0.1mol/l、硫酸0.2mol/l、過硫酸アンモニウム0.05mol/lを含むエタノールー水混合溶液セル中に1mm厚ガラス板入れ、30分浸漬して化学酸化重合を行うことにより形成した。この化学酸化重合処理を計2回繰り返して高分子電解質層を形成した。超音波照射源には周波数120kHz(出力100W)を用いた。反応セルおよび超音波照射源は実施例1と同一である。重合終了後、0.2N−アンモニア水中に30分間浸漬して脱ドーピングを行った。
【0089】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、化学酸化重合法により生成した導電性高分子化合物からなる固体電解質を有する固体電解コンデンサの製造方法において、良好なコンデンサ特性を安定して実現することが可能な固体電解コンデンサの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法により製造される固体電解コンデンサの構造を示す断面図である。
【符号の説明】
2 陽極基体
3 絶縁性酸化皮膜
4 高分子電解質層
5 陰極

Claims (3)

  1. 金属からなる陽極基体を酸化して絶縁性酸化皮膜を形成する工程と前記絶縁性酸化皮膜上に、超音波を照射しながら0〜60℃で化学酸化重合を行って、導電性高分子化合物を含む高分子電解質層を形成する工程とを有し、
    前記高分子電解質層を形成する際の超音波周波数を120kHz以上400kHz以下とする固体電解コンデンサの製造方法。
  2. 前記高分子電解質層に含まれる導電性高分子化合物は、
    置換もしくは非置換のπ共役系複素環式化合物、共役系芳香族化合物またはヘテロ原子含有共役系芳香族化合物のいずれかを原料モノマーとする請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  3. 前記陽極基体は、Al、Ta、Ti、NbおよびZrのうちの少なくとも1種を含有する金属または合金から形成される請求項1又は2に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
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