JP2005183256A - 固体電解質およびその形成方法、ならびに電子部品およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 導電率を可能な限り安定的に向上させることが可能な固体電解質およびその形成方法を提供する。
【解決手段】 導電性高分子を生成するための主単量体とドーパント重合体を生成するための副単量体とを混合した状態で含む単量体溶液を調製したのち、その単量体溶液中の主単量体を重合させることにより導電性高分子を生成すると共に、副単量体を重合させることによりドーパント重合体を生成する。単量体溶液中において主単量体および副単量体の双方がほぼ均一に分散された状態において、それらの主単量体および副単量体がそれぞれ重合されるため、導電性高分子の高分子鎖とドーパント重合体の高分子鎖とが互いに絡みやすくなる。これにより、導電性高分子に対するドーパント重合体の定着性が向上するため、そのドーパント重合体のドーピング率が安定的に向上する。
【選択図】 図2
【解決手段】 導電性高分子を生成するための主単量体とドーパント重合体を生成するための副単量体とを混合した状態で含む単量体溶液を調製したのち、その単量体溶液中の主単量体を重合させることにより導電性高分子を生成すると共に、副単量体を重合させることによりドーパント重合体を生成する。単量体溶液中において主単量体および副単量体の双方がほぼ均一に分散された状態において、それらの主単量体および副単量体がそれぞれ重合されるため、導電性高分子の高分子鎖とドーパント重合体の高分子鎖とが互いに絡みやすくなる。これにより、導電性高分子に対するドーパント重合体の定着性が向上するため、そのドーパント重合体のドーピング率が安定的に向上する。
【選択図】 図2
Description
本発明は、固体電解質およびその形成方法、ならびに固体電解質層を備えた電子部品およびその製造方法に関する。
近年、高周波用途に適した電子部品のうちの1つとして、多様な電子機器に電解コンデンサが搭載されている。この電解コンデンサに関しては、例えば、電子機器のデジタル化、小型化および高速化が加速的に進行している情勢下において、大容量化や低インピーダンス化が要望されていると共に、動作安定性や動作信頼性の確保、ならびに高寿命化も併せて要望されている。
電解コンデンサは、例えば、弁作用金属により構成された陽極と、この陽極の表層が陽極酸化されることにより形成された酸化皮膜よりなる誘電体層と、電解質層と、陰極とがこの順に積層された構造を有している。
この電解コンデンサは、主に、電解質層の種類に応じて2種類に大別される。すなわち、液体材料により構成された電解質層(電解液)を備え、主にイオン伝導性を利用した導電特性を有する液体電解コンデンサと、錯塩や導電性高分子などの固体材料により構成された電解質層(固体電解質層)を備え、主に電子伝導性を利用した導電特性を有する固体電解コンデンサである。これらの2種類の電解コンデンサを作動特性の安定性の観点において比較すると、例えば、電解液を含んでいる液体電解コンデンサでは、その電解液の漏洩や蒸発に起因して作動特性が経時劣化し得るのに対して、電解液を含んでいない固体電解コンデンサでは、電解液の漏洩や蒸発に起因する作動特性の経時劣化が当然ながら起こり得ないため、今後主流になり得る電解コンデンサとして、最近では液体電解コンデンサに代えて固体電解コンデンサに関する研究開発が活発に進められている。この固体電解コンデンサに関する研究過程では、例えば、漏れ電流特性、インピーダンス特性ならびに耐熱特性などの一連の作動特性を考慮して、固体電解質層の主要部が二酸化マンガンや錯塩から共役系の導電性高分子に急速に移行しつつある。
この固体電解質層に関しては、特に、導電性高分子の導電率を高めるために、その導電性高分子に電子供与性または電子受容性の物質(ドーパント)を含有させる(ドープさせる)技術が既に広く使用されている。具体的には、例えば、ドーパントとしてアリールスルホン酸やアリールリン酸のナトリウム塩を使用する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、固体電解コンデンサの導電率を安定化させるために、導電性高分子に2種類のドーパント(固定性ドーパント,易動性ドーパント)をドープさせる技術も知られている(例えば、特許文献2参照。)。特に、最近では、ドーパントのドーピング量を増加させることにより導電率を飛躍的に向上させる研究も進められており、例えば、金属の導電率(約105 S/cm)と同等程度の導電率を有する導電性高分子も報告されている。
特許第3273761号明細書
特公平06−068926号公報
ところで、固体電解コンデンサの作動特性を確保するためには、例えば、導電率を可能な限り安定的に向上させるために、ドーパントのドーピング率を安定的に向上させる必要がある。しかしながら、上記した従来の固体電解コンデンサの製造方法では、ドーピング量を増加させることにより初期のドーピング率が高まるものの、そのドーピング率が経時的に低下しやすいため、固体電解コンデンサの導電率を安定的に向上させることが困難であるという問題があった。しかも、ドーピング率の経時劣化は、ドーピング量が増加するにしたがって顕著になるため、従来の固体電解コンデンサの製造方法では、固体電解コンデンサの導電率を高めるためにドーピング量を増加させるほど、ドーピング率が経時劣化しやすくなる。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、導電率を可能な限り安定的に向上させることが可能な固体電解質およびその形成方法を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、導電率を可能な限り安定的に向上させることが可能な電子部品およびその製造方法を提供することにある。
本発明に係る固体電解質の形成方法は、第1の単量体とこの第1の単量体とは異なる第2の単量体とを混合させる工程と、第1の単量体を重合させて導電性高分子を生成する工程と、第2の単量体を重合させてドーパント重合体を生成することにより、これらの導電性高分子およびドーパント重合体を含むように固体電解質を形成する工程とを含むものである。
本発明に係る固体電解質は、第1の単量体が重合されることにより生成された導電性高分子と、第1の単量体とは異なる第2の単量体が重合されることにより生成されたドーパント重合体とを含み、フィルム状構造を有しているものである。
本発明に係る固体電解質またはその形成方法では、第1および第2の単量体が混在している状態において、それらの第1および第2の単量体がそれぞれ重合されるため、導電性高分子の高分子鎖とドーパント重合体の高分子鎖とが互いに絡みやすくなる。これにより、導電性高分子に対するドーパント重合体の定着性が向上するため、そのドーパント重合体のドーピング率が安定的に向上する。また、固体電解質がフィルム状構造を有しているため、その固体電解質の膜強度が確保される。
本発明に係る電子部品の製造方法は、第1の単量体とこの第1の単量体とは異なる第2の単量体とを混合させる工程と、第1の単量体を重合させて導電性高分子を生成する工程と、第2の単量体を重合させてドーパント重合体を生成することにより、これらの導電性高分子およびドーパント重合体を含む固体電解質層を備えるように電子部品を製造する工程とを含むものである。
本発明に係る電子部品は、第1の単量体が重合されることにより生成された導電性高分子と、第1の単量体とは異なる第2の単量体が重合されることにより生成されたドーパント重合体と、を含む固体電解質層を備えたものである。
本発明に係る電子部品またはその製造方法では、本発明の固体電解質またはその形成方法を使用して固体電解質層が形成されるため、その固体電解質層のドーピング率が安定的に向上する。
本発明に係る固体電解質またはその形成方法によれば、ドーパント重合体の定着性の向上に基づいてドーピング率が安定的に向上するため、固体電解質の導電率を安定的に向上させることができる。また、固体電解質がフィルム状構造を有している構造的特徴に基づいて膜強度が確保されるため、その固体電解質の耐熱性および高温放置特性を向上させることができる。
また、本発明に係る電子部品またはその製造方法によれば、本発明の固体電解質またはその形成方法を使用して固体電解質層が形成され、その固体電解質のドーピング率が安定的に向上するため、電子部品の導電率を可能な限り安定的に向上させることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
まず、図1を参照して、本発明の一実施の形態に係る固体電解質の構成について説明する。図1は、固体電解質1の断面構成を表している。
本実施の形態に係る固体電解質1は、例えば、電解コンデンサ、電池、電極、トランジスタ、紫外線シールド材、静電防止剤、キャパシタ、ダイオード、エレクトロクロミック素子、エレクトロルミネセンス(EL;Electro Luminescence)素子、太陽電池、光記録媒体または各種センサなどに代表される電子部品の一部を構成するものである。
固体電解質1は、導電性高分子と、この導電性高分子の導電率を高めるためのドーパント重合体とを含み、すなわち導電性高分子にドーパント重合体がドープされたものである。この固体電解質1は、例えば、図1に示したように、所定の基体2上に形成されて膜化されており、すなわちフィルム状構造を有している。特に、固体電解質1は、主単量体(導電性高分子を生成するための単量体;第1の単量体)とこの主単量体とは異なる副単量体(ドーパント重合体を生成するための単量体;第2の単量体)とが混合されたのち、主単量体が重合されることにより導電性高分子が生成されると共に、副単量体が重合されることによりドーパント重合体が生成されたものである。
導電性高分子は、例えば、ポリチオフェンまたはその誘導体により構成されており、具体的にはポリエチレンジオキシチオフェンにより構成されている。ドーパント重合体は、例えば、重合官能基を有するスルホン酸塩またはその誘導体の重合体により構成されている。上記した「重合官能基」としては、例えば、ビニル基、スチレン基またはエポキシ基などが挙げられ、「重合官能基を有するスルホン酸塩の重合体」としては、例えば、ポリスチレンスルホン酸塩(例えばポリスチレンスルホン酸ナトリウム)またはポリビニルスルホン酸塩(例えばポリビニルスルホン酸ナトリウム)などが挙げられる。特に、ドーパント重合体は、例えば、ポリスチレンスルホン酸塩またはその誘導体により構成されているのが好ましい。
基体2は、固体電解質1をフィルム化するために支持するものであり、例えば、ガラス、セラミック、ステンレス、金属、樹脂、綿布または繊維などにより構成されている。この基体2の材質に関してより具体的な例を挙げれば、固体電解質1が電解コンデンサの固体電解質層に適用される場合には、基体2は、例えば、アルミニウム、チタン、タンタルまたはニオブなどの弁作用金属箔または弁作用金属焼結体により構成される。これらの弁作用金属箔または弁作用金属焼結体は、例えば、あらかじめ拡面化処理が施されて表面凹凸構造を有していると共に、同様にあらかじめ化成処理が施されて誘電体層が形成されている。
次に、図1および図2を参照して、本実施の形態に係る固体電解質の形成方法について説明する。図2は、固体電解質1の形成工程の流れを説明するためのものである。
固体電解質1を形成する際には、まず、基体2を準備したのち、単量体溶液を調製する(ステップS101)。この単量体溶液を調製する際には、導電性高分子を生成するための主単量体と、ドーパント重合体を生成するための副単量体と、これらの主単量体および副単量体を分散させるための溶媒とを混合した状態で含むようにする。特に、単量体溶液を調製する際には、例えば、上記した主単量体および副単量体と共に、主単量体を酸化重合させるための酸化剤と、副単量体を重合させるための重合開始剤を併せて含むようにする。
単量体溶液を調製する際には、例えば、以下の材料を使用する。すなわち、主単量体としては、例えば、チオフェンまたはその誘導体を使用し、具体的には3,4−エチレンジオキシチオフェンを使用する。副単量体としては、例えば、スチレンスルホン酸塩またはその誘導体を使用し、具体的にはスチレンスルホン酸ナトリウムを使用する。溶媒としては、例えば、水や、ブタノールなどの有機溶媒等を使用する。酸化剤としては、例えば、ヨウ素または臭素などのハロゲンや、五フッ化ケイ素(SiF5 )などの金属ハロゲン化物や、硫酸などのプロトン酸や、三酸化硫黄(SO3 )などの酸素化合物や、硫酸セリウム(Ce(SO4 )2 )などの硫酸塩や、過硫酸ナトリウム(Na2 S2 O8 )などの過硫酸塩や、過酸化水素(H2 O2 )などの過酸化物や、アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えばパラトルエンスルホン酸鉄)等を使用する。重合開始剤としては、例えば、ラジカル反応系の光重合開始剤や、熱重合開始剤を使用する。
続いて、例えば、スプレー法、ローラ法、スピンコート法またはディップ法などに代表される塗布方法を使用して基体2に単量体溶液を塗布することにより、その基体2の一面に単量体溶液を付着させる(ステップS102)。なお、基体2の一面に単量体溶液を付着させる際には、上記した塗布方法に代えて浸漬方法を使用し、すなわち単純に基体2を単量体溶液に浸漬させるようにしてもよい。
続いて、基体2の一面に付着させた単量体溶液中の主単量体を重合させることにより、導電性高分子を生成する(ステップS103)。この導電性高分子を生成する際には、例えば、単量体溶液を加熱することにより、その単量体溶液中の酸化剤を使用して主単量体を酸化重合させるようにする。具体的には、例えば、主単量体として3,4−エチレンジオキシチオフェンを使用した場合には、導電性高分子としてポリエチレンジオキシチオフェンが生成される。
続いて、単量体溶液中の副単量体を重合させることにより、ドーパント重合体を生成する(ステップS104)。このドーパント重合体を生成する際には、例えば、単量体溶液に紫外線を照射したり、あるいは単量体溶液を加熱することにより、その単量体溶液中の光重合開始剤または熱重合開始剤を使用して副単量体を重合(光重合または熱重合)させるようにする。具体的には、例えば、副単量体としてスチレンスルホン酸ナトリウムを使用した場合には、ドーパント重合体としてポリスチレンスルホン酸ナトリウムが生成される。
これにより、基体2の一面に、導電性高分子およびドーパント重合体を含み、すなわち導電性高分子にドーパント重合体がドープされた構成を有する固体電解質1がフィルム状に形成される(ステップS105)。
最後に、固体電解質1を洗浄したのち、その固体電解質1を乾燥させる(ステップS106)。この洗浄処理により、固体電解質1に含まれている未反応の主単量体や副単量体、ならびに使用済みの酸化剤や重合開始剤などが洗い流されて除去される。この固体電解質1を洗浄するための洗浄液としては、導電性高分子やドーパント重合体を溶解せず、かつ基体2を浸食しないような液体を適宜使用可能であり、例えば、水、アルコール、アセトンまたはヘキサンなどを使用する。これにより、図1に示した固体電解質1が完成する。
本実施の形態に係る固体電解質1およびその形成方法では、導電性高分子を生成するための主単量体とドーパント重合体を生成するための副単量体とを混合した状態で含む単量体溶液を調製したのち、その単量体溶液中の主単量体を重合させることにより導電性高分子を生成すると共に、副単量体を重合させることによりドーパント重合体を生成するようにしたので、単量体溶液中において主単量体および副単量体の双方がほぼ均一に分散された状態において、それらの主単量体および副単量体がそれぞれ重合される。この場合には、主単量体と共に既に重合済みのドーパントを含む単量体溶液を使用し、その単量体溶液を使用して主単量体を重合させることにより導電性高分子を生成する場合と比較して、導電性高分子の高分子鎖とドーパント重合体の高分子鎖とが互いに絡みやすくなるため、その導電性高分子に対するドーパント重合体の定着性が向上する。したがって、ドーパント重合体のドーピング率が安定的に向上するため、固体電解質1の導電率を可能な限り安定的に向上させることができる。
特に、本実施の形態に係る固体電解質1では、フィルム状構造を有しているため、その固体電解質1の膜強度が確保される。したがって、固体電解質1の耐熱性および高温放置特性を向上させることができる。
以上をもって、本発明の一実施の形態に係る固体電解質およびその形成方法に関する説明を終了する。
次に、本発明の固体電解質およびその形成方法を使用した電子部品およびその製造方法について説明する。以下では、例えば、上記した一連の電子部品を代表して、本発明の固体電解質およびその形成方法を電解コンデンサおよびその製造方法に適用した場合について説明する。
まず、図3および図4を参照して、電解コンデンサの構成について説明する。図3および図4は電解コンデンサの主要部(コンデンサ素子10)の構成を表しており、図3は外観構成を示し、図4は図3に示したIV−IV線に沿った断面構成を拡大して示している。
この電解コンデンサは、図3および図4に示したコンデンサ素子10に陽極リードおよび陰極リード(いずれも図示せず)が接続され、これらの陽極リードおよび陰極リードの双方が部分的に露出するようにコンデンサ素子10がモールド樹脂(図示せず)により周囲を覆われた構造を有するものである。このコンデンサ素子10は、電解コンデンサの主要部として電気的反応を生じるものであり、例えば、図3および図4に示したように、陽極11と、この陽極11の周囲(一端部)を部分的に覆うように設けられた誘電体層12と、この誘電体層12の周囲を覆うように設けられた固体電解質層13と、この固体電解質層13の周囲を覆うように設けられた陰極14とを含み、すなわち陽極11、誘電体層12、固体電解質層13および陰極14がこの順に積層された積層構造を有している。
陽極11は、拡面化(または粗面化)された表面凹凸構造を有するものであり、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)またはニオブ(Nb)などの弁作用金属により構成されている。この陽極11は、具体的には、例えば、アルミニウムまたはチタンなどの金属箔や、タンタルまたはニオブなどの金属焼結体である。なお、拡面化された陽極11の表面凹凸構造の詳細に関しては後述する(図5参照)。
誘電体層12は、例えば、弁作用金属により構成された陽極11の表層が陽極酸化されることにより形成された酸化皮膜である。この誘電体層12は、例えば、陽極11がアルミニウムにより構成されている場合には、酸化アルミニウム(Al2 O3 ;以下、単に「アルミナ」という。)により構成されている。
固体電解質層13は、上記実施の形態において説明した固体電解質1を含んで構成されており、すなわち導電性高分子およびドーパント重合体を含んでいる。なお、固体電解質1(導電性高分子,ドーパント重合体)の構成に関しては既に詳述したので、その説明を省略する。この固体電解質層13を備えたコンデンサ素子10は、いわゆる固体電解コンデンサ素子である。
陰極14は、例えば、カーボン(グラファイト)層14Aと銀(Ag)層14Bとが積層された積層構造を有している。
なお、参考までに、陽極リードおよび陰極リードは、例えば、いずれも鉄(Fe)または銅(Cu)などの金属や、これらの金属にめっき処理(例えば錫(Sn)めっきや錫鉛(SnPb)めっき)が施されためっき処理金属により構成されており、それぞれコンデンサ素子10のうちの陽極11および陰極14に接続されている。モールド樹脂は、例えば、エポキシ樹脂などの絶縁性樹脂により構成されている。
次に、図5を参照して、コンデンサ素子10の詳細な構成について説明する。図5は、図4に示したコンデンサ素子10の断面構成を部分的に拡大して表している。
コンデンサ素子10では、例えば、図5に示したように、陽極11を覆うように誘電体層12、固体電解質層13(固体電解質1)および陰極14(カーボン層14A,銀層14B)がこの順に積層されている。このコンデンサ素子10では、上記したように、陽極11の表面積を増大させることにより高容量化を実現するために、その陽極11に拡面化処理(または粗面化処理)が施されており、すなわち陽極11が微細な表面凹凸構造を有している。これに伴い、陽極11を覆うように形成されている誘電体層12は微細な凹凸構造を有しており、この微細な凹凸構造を有する誘電体層12を覆うように固体電解質層13が設けられている。特に、誘電体層12は、凹凸構造のうちの凹部として複数の細孔12Hを構成しており、固体電解質層13は、複数の細孔12Hに部分的に入り込んでいる。
次に、図3〜図6を参照して、図3〜図5に示したコンデンサ素子10を備えた電解コンデンサの製造方法について説明する。図6は、電解コンデンサの製造工程の流れを説明するためのものである。
電解コンデンサを製造する際には、まず、図3〜図5に示したコンデンサ素子10を形成する。すなわち、まず、陽極11の形成材料として弁作用金属箔(例えばアルミニウム箔やチタン箔)を準備したのち、化学的または電気化学的エッチングを使用して弁作用金属箔に拡面化処理を施すことにより、微細な表面凹凸構造を有する陽極11を形成する(ステップS201)。陽極11の形成材料としては、例えば、上記した弁作用金属箔に代えて、タンタルまたはニオブなどの弁作用金属焼結体も使用することが可能である。なお、陽極11を形成する際には、例えば、上記したように、拡面化処理が施されていない未処理の弁作用金属箔を使用し、その弁作用金属箔に拡面化処理を別途施す代わりに、拡面化処理に要する手間を省くために、予め拡面化処理が施された処理済みの弁作用金属箔や弁作用金属焼結体を使用するようにしてもよい。
続いて、陽極11の表層を陽極酸化することにより、その陽極11の周囲を部分的に覆うように酸化皮膜よりなる誘電体層12を形成する(ステップS202)。この誘電体層12は、陽極11の表面凹凸構造に対応した凹凸構造を有し、その凹凸構造のうちの凹部として複数の細孔12Hを構成することとなる。この誘電体層12としては、例えば、陽極11の形成材料としてアルミニウム拡面化箔を使用した場合には、アルミナよりなる誘電体層12を形成することが可能である。この誘電体層12を形成する際には、例えば、陽極11を化成溶液に浸漬させたのち、その陽極11に電圧を印加することにより陽極酸化反応を進行させるようにする。この化成溶液としては、例えば、ホウ酸アンモニウム、リン酸アンモニウムまたは有機酸アンモニウムなどの緩衝溶液を使用し、好ましくはアジピン酸アンモニウム水溶液を使用する。なお、陽極11に印加する電圧は、例えば、誘電体層12の形成厚さに応じて数V〜数百Vの範囲内で自由に設定可能である。
続いて、上記実施の形態において説明した固体電解質の形成方法を使用して固体電解質1(導電性高分子,ドーパント重合体)を形成することにより、その固体電解質1を含む固体電解質層13を形成する(ステップS203)。なお、固体電解質1の形成方法に関しては上記実施の形態において既に詳述したので、その説明を省略する。
続いて、固体電解質層13の周囲を覆うように、陰極14を形成する(ステップS204)。この陰極14を形成する際には、例えば、固体電解質層13の周囲にカーボンペーストを塗布して乾燥させることによりカーボン層14Aを形成したのち、そのカーボン層14A上にさらに銀ペーストを塗布して乾燥させることにより銀層14Bを形成し、これらのカーボン層14Aおよび銀層14Bの積層構造を有するようにする。これにより、陽極11、誘電体層12、固体電解質層13および陰極14がこの順に積層された積層構造を有するコンデンサ素子10が完成する(図3〜図5参照)。
コンデンサ素子10を形成したのち、このコンデンサ素子10を使用して電解コンデンサを組み立てる。すなわち、例えば、コンデンサ素子10のうちの陽極11に陽極リードを接続させると共に、陰極14に陰極リードを接続させたのち(ステップS205)、陽極リードおよび陰極リードの双方が部分的に露出するようにコンデンサ素子10の周囲をモールド樹脂で被覆する(ステップS206)。これにより、コンデンサ素子10に陽極リードおよび陰極リードが接続され、これらの陽極リードおよび陰極リードの双方が部分的に露出するようにコンデンサ素子10がモールド樹脂により周囲を覆われた構造を有する電解コンデンサが完成する。なお、コンデンサ素子10に陽極リードおよび陰極リードを接続させる際には、例えば、溶接処理やかしめ加工を使用して直接的に接続させるようにしてもよいし、あるいは導電性接着剤を使用して間接的に接続させるようにしてもよい。
この電解コンデンサおよびその製造方法では、本発明の固体電解質およびその形成方法を使用して固体電解質1を形成することにより固体電解質層13を形成するようにしたので、上記実施の形態において説明した作用により、その固体電解質層13の導電率が安定的に向上する。したがって、電解コンデンサの導電率を可能な限り安定的に向上させることができる。
この場合には、特に、本発明の固体電解質の形成方法を使用し、すなわち導電性高分子を生成するための主単量体とドーパント重合体を生成するための副単量体とを含む単量体溶液を使用して固体電解質層13を形成することにより、複数の細孔12Hを構成する誘電体層12に単量体溶液を塗布した際に、その単量体溶液中の副単量体が細孔12Hに入り込みやすくなる。この場合には、既に重合済みのドーパントを含む単量体溶液を使用して固体電解質層13を形成する際に、その重合済みのドーパントが細孔12Hに入り込みにくくなる場合と比較して、上記した細孔12Hへの副単量体の入り込みやすさに基づき、副単量体を重合させることにより生成したドーパント重合体も細孔12Hに入り込みやすくなるため、誘電体層12に対するドーパント重合体の定着性が向上する。したがって、ドーパント重合体の定着性に関して、上記実施の形態において説明したように導電性高分子に対するドーパント重合体の定着性が向上する上、誘電体層12に対するドーパント重合体の定着性も向上するため、固体電解質層13の導電率を極めて安定的に向上させることができる。
なお、固体電解質の形成方法を使用して固体電解質層13を形成する際には、上記したように、主単量体、副単量体、酸化剤および重合開始剤の全てを含む単一の溶液(単量体溶液)を使用して固体電解質1を形成するようにしてもよいし、あるいは主単量体、副単量体、酸化剤および重合開始剤を任意の組み合わせで含む複数の溶液を使用して固体電解質1を形成するようにしてもよい。一例を挙げれば、主単量体および副単量体を含む溶液(単量体溶液)と、酸化剤および重合開始剤を含む溶液(重合補助溶液)とを準備したのち、誘電体層12が形成された陽極11を単量体溶液および重合補助溶液に順に浸漬させることにより固体電解質1を形成するようにしてもよい。この場合においても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
なお、電解コンデンサおよびその製造方法に関する上記以外の構成、製造手順および作用は、上記実施の形態と同様である。
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。
(実施例1)
上記実施の形態において説明した固体電解質の形成方法を使用して固体電解質1を形成した。すなわち、まず、基体2(図1参照)としてガラス基板(26mm×76mm×1mm)を中性洗剤溶液で超音波洗浄し、引き続き再蒸留水で十分にすすぎ洗浄したのち、その基体2を乾燥器に投入して乾燥させた。続いて、導電性高分子を生成するための主単量体として3,4−エチレンジオキシチオフェン(バイエル株式会社製Baytron M (商品名))、酸化剤としてパラトルエンスルホン酸鉄(III)50%ブタノール溶液(バイエル株式会社製Baytron C (商品名))を氷水で十分に冷却したのち、これらの単量体および酸化剤をそれぞれ0.867g、10.4g秤量し、氷水で冷却しながらマグネチックスターラーで攪拌して混合させた。続いて、ドーパント重合体を生成するための副単量体としてスチレンスルホン酸ナトリウム10%水溶液、光重合開始剤としてラジカル系光重合開始剤(日本チバガイギー株式会社製;ダロキュア184(商品名):イルガキュア1173(商品名)=1:1)をそれぞれ3.75g、0.019g秤量したのち、これらの副単量体および光重合開始剤を先の混合液にマグネチックスターラーで攪拌しながら混合させることにより、単量体溶液を調製した。続いて、スピンコート法を使用して、基体2の一面に単量体溶液を塗布した。この際、スピンコート条件としては、回転数=2000rpm、回転時間=2分間とした。続いて、単量体溶液が塗布された基体2を室温下において1時間程度放置したのち、その基体2を加熱し、酸化剤を使用して主単量体を酸化重合させることにより、基体2の一面に導電性高分子としてポリエチレンジオキシチオフェンを生成した。この際、加熱条件としては、加熱温度=95℃、加熱時間=1時間とした。続いて、単量体溶液が塗布された基体2に紫外線を照射し、光重合開始剤を使用して副単量体を光重合させることにより、ドーパント重合体としてポリスチレンスルホン酸ナトリウムを生成した。これにより、基体2の一面に、導電性高分子にドーパント重合体がドープされた構成を有する固体電解質1が形成された。最後に、固体電解質1を蒸留水で十分に洗浄することにより、未反応の単量体や副単量体、ならびに使用済みの酸化剤や光重合開始剤を洗い流したのち、その固体電解質1を乾燥させた。なお、固体電解質1の膜厚を調べたところ、その膜厚は0.1μm〜0.5μmであった。
上記実施の形態において説明した固体電解質の形成方法を使用して固体電解質1を形成した。すなわち、まず、基体2(図1参照)としてガラス基板(26mm×76mm×1mm)を中性洗剤溶液で超音波洗浄し、引き続き再蒸留水で十分にすすぎ洗浄したのち、その基体2を乾燥器に投入して乾燥させた。続いて、導電性高分子を生成するための主単量体として3,4−エチレンジオキシチオフェン(バイエル株式会社製Baytron M (商品名))、酸化剤としてパラトルエンスルホン酸鉄(III)50%ブタノール溶液(バイエル株式会社製Baytron C (商品名))を氷水で十分に冷却したのち、これらの単量体および酸化剤をそれぞれ0.867g、10.4g秤量し、氷水で冷却しながらマグネチックスターラーで攪拌して混合させた。続いて、ドーパント重合体を生成するための副単量体としてスチレンスルホン酸ナトリウム10%水溶液、光重合開始剤としてラジカル系光重合開始剤(日本チバガイギー株式会社製;ダロキュア184(商品名):イルガキュア1173(商品名)=1:1)をそれぞれ3.75g、0.019g秤量したのち、これらの副単量体および光重合開始剤を先の混合液にマグネチックスターラーで攪拌しながら混合させることにより、単量体溶液を調製した。続いて、スピンコート法を使用して、基体2の一面に単量体溶液を塗布した。この際、スピンコート条件としては、回転数=2000rpm、回転時間=2分間とした。続いて、単量体溶液が塗布された基体2を室温下において1時間程度放置したのち、その基体2を加熱し、酸化剤を使用して主単量体を酸化重合させることにより、基体2の一面に導電性高分子としてポリエチレンジオキシチオフェンを生成した。この際、加熱条件としては、加熱温度=95℃、加熱時間=1時間とした。続いて、単量体溶液が塗布された基体2に紫外線を照射し、光重合開始剤を使用して副単量体を光重合させることにより、ドーパント重合体としてポリスチレンスルホン酸ナトリウムを生成した。これにより、基体2の一面に、導電性高分子にドーパント重合体がドープされた構成を有する固体電解質1が形成された。最後に、固体電解質1を蒸留水で十分に洗浄することにより、未反応の単量体や副単量体、ならびに使用済みの酸化剤や光重合開始剤を洗い流したのち、その固体電解質1を乾燥させた。なお、固体電解質1の膜厚を調べたところ、その膜厚は0.1μm〜0.5μmであった。
(実施例2)
上記した電解コンデンサの製造方法を使用して電解コンデンサを製造した。すなわち、まず、陽極11として拡面化処理済みのアルミニウム箔(15mm×30mm)を準備し、化成溶液としてのアジピン酸アンモニウム7%水溶液にアルミニウム箔を浸漬させたのちに電圧(=23V)を印加して陽極酸化反応を進行させることにより、そのアルミニウム箔の表層に酸化アルミニウム皮膜よりなる誘電体層12を形成した。続いて、実施例1において説明した単量体溶液(主単量体,副単量体,溶媒,酸化剤,光重合開始剤)を調整し、誘電体層12が形成された陽極11を単量体溶液に30秒間に渡って浸漬させることにより、その陽極11に形成されている誘電体層12に単量体溶液を付着させたのち、陽極11を0.5mm/秒で引き上げて室温乾燥させた。続いて、単量体溶液に浸漬済みの陽極11を乾燥器(温度=95℃)に投入して加熱し、その単量体溶液に含まれている酸化剤を使用して主単量体を酸化重合させることにより導電性高分子を生成した。続いて、陽極11に紫外線を照射し、単量体溶液に含まれている光重合開始剤を使用して副単量体を光重合させることによりドーパント重合体を生成した。これにより、実施例1の固体電解質1を含む固体電解質層13が誘電体層12を覆うように形成された。この固体電解質層13を形成する際には、上記した固体電解質層13の形成手順を10回繰り返すことにより、最終的に固体電解質層13の厚さが1μm〜5μmとなるようにした。この際、酸化重合反応の完了時ごとに蒸留水やエタノールで固体電解質層13を洗浄することにより、未反応の単量体や副単量体、ならびに使用済みの酸化剤や光重合開始剤を随時除去した。続いて、固体電解質層13の周囲にカーボンペーストを5μm〜10μmの厚さとなるように塗布して乾燥させることによりカーボン層14Aを成膜したのち、さらにカーボン層14A上に銀ペーストを20μm〜50μmの厚さとなるように塗布して乾燥させることにより銀層14Bを成膜し、これらのカーボン層14Aと銀層14Bとの積層構造を有するように陰極14を形成した。これにより、陽極11、誘電体層12、固体電解質層13および陰極14がこの順に積層された積層構造を有するコンデンサ素子10が形成された。最後に、コンデンサ素子10に銅製の陽極リードおよび陰極リードを接続させたのち、モールド樹脂としてエポキシ樹脂で陽極リードおよび陰極リードが部分的に露出するようにコンデンサ素子10の周囲を覆うことにより、電解コンデンサが完成した。
上記した電解コンデンサの製造方法を使用して電解コンデンサを製造した。すなわち、まず、陽極11として拡面化処理済みのアルミニウム箔(15mm×30mm)を準備し、化成溶液としてのアジピン酸アンモニウム7%水溶液にアルミニウム箔を浸漬させたのちに電圧(=23V)を印加して陽極酸化反応を進行させることにより、そのアルミニウム箔の表層に酸化アルミニウム皮膜よりなる誘電体層12を形成した。続いて、実施例1において説明した単量体溶液(主単量体,副単量体,溶媒,酸化剤,光重合開始剤)を調整し、誘電体層12が形成された陽極11を単量体溶液に30秒間に渡って浸漬させることにより、その陽極11に形成されている誘電体層12に単量体溶液を付着させたのち、陽極11を0.5mm/秒で引き上げて室温乾燥させた。続いて、単量体溶液に浸漬済みの陽極11を乾燥器(温度=95℃)に投入して加熱し、その単量体溶液に含まれている酸化剤を使用して主単量体を酸化重合させることにより導電性高分子を生成した。続いて、陽極11に紫外線を照射し、単量体溶液に含まれている光重合開始剤を使用して副単量体を光重合させることによりドーパント重合体を生成した。これにより、実施例1の固体電解質1を含む固体電解質層13が誘電体層12を覆うように形成された。この固体電解質層13を形成する際には、上記した固体電解質層13の形成手順を10回繰り返すことにより、最終的に固体電解質層13の厚さが1μm〜5μmとなるようにした。この際、酸化重合反応の完了時ごとに蒸留水やエタノールで固体電解質層13を洗浄することにより、未反応の単量体や副単量体、ならびに使用済みの酸化剤や光重合開始剤を随時除去した。続いて、固体電解質層13の周囲にカーボンペーストを5μm〜10μmの厚さとなるように塗布して乾燥させることによりカーボン層14Aを成膜したのち、さらにカーボン層14A上に銀ペーストを20μm〜50μmの厚さとなるように塗布して乾燥させることにより銀層14Bを成膜し、これらのカーボン層14Aと銀層14Bとの積層構造を有するように陰極14を形成した。これにより、陽極11、誘電体層12、固体電解質層13および陰極14がこの順に積層された積層構造を有するコンデンサ素子10が形成された。最後に、コンデンサ素子10に銅製の陽極リードおよび陰極リードを接続させたのち、モールド樹脂としてエポキシ樹脂で陽極リードおよび陰極リードが部分的に露出するようにコンデンサ素子10の周囲を覆うことにより、電解コンデンサが完成した。
(比較例1)
単量体溶液に紫外線を照射せず、すなわち副単量体を光重合させることによりドーパント重合体を生成しなかった点を除き、実施例1と同様の手順を経て固体電解質を形成した。
単量体溶液に紫外線を照射せず、すなわち副単量体を光重合させることによりドーパント重合体を生成しなかった点を除き、実施例1と同様の手順を経て固体電解質を形成した。
(比較例2)
固体電解質層13を形成する際に、単量体溶液に紫外線を照射せず、すなわち副単量体を光重合させることによりドーパント重合体を生成しなかった点を除き、実施例2と同様の手順を経て電解コンデンサを製造した。
固体電解質層13を形成する際に、単量体溶液に紫外線を照射せず、すなわち副単量体を光重合させることによりドーパント重合体を生成しなかった点を除き、実施例2と同様の手順を経て電解コンデンサを製造した。
これらの実施例1および比較例1の固体電解質、ならびに実施例2および比較例2の電解コンデンサの諸特性を調べたところ、以下の結果が得られた。
まず、実施例1および比較例1の固体電解質の膜質を調べたところ、表1に示した結果が得られた。表1は、固体電解質の外観状態を表している。なお、表1には、参考までに、紫外線の照射の有無(ドーパント重合体の生成の有無)を示している。
表1から判るように、副単量体を光重合させることによりドーパント重合体を生成しなかった比較例1では、固体電解質が粉状であったのに対して、副単量体を光重合させることによりドーパント重合体を生成した実施例1では、固体電解質がフィルム状であった。このことから、実施例1では、比較例1とは異なり、導電性高分子の高分子鎖とドーパント重合体の高分子鎖とが互いに絡みやすくなる結果、固体電解質の膜強度が増加することが確認された。これにより、実施例1では、比較例1と比較して、導電性高分子に対するドーパント重合体の定着性が向上し、そのドーパント重合体のドーピング率が安定的に向上するため、固体電解質の導電率を可能な限り安定的に向上させることが可能である。
続いて、実施例2の電解コンデンサの製造品質を比較例2の電解コンデンサの製造品質と比較したところ、上記したように、比較例1の固体電解質が粉状であったのに対して実施例1の固体電解質がフィルム状であった事実に基づき、粉状の固体電解質を使用して比較例2の電解コンデンサを製造した場合と同等以上の製造品質となるように、フィルム状の固体電解質を使用して実施例2の電解コンデンサを製造することが可能であった。このことから、上記したドーピング率の安定的向上に基づき、実施例2では比較例2と比較して電解コンデンサの導電率を可能な限り安定的に向上させることが可能である。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態や実施例に限定されず、種々の変形が可能である。
具体的には、上記実施の形態および実施例では、主単量体として3,4−エチレンジオキシチオフェンを挙げると共に、副単量体としてスチレンスルホン酸塩を挙げたが、必ずしもこれに限られるものではなく、副単量体を重合させてドーパント重合体を生成することによりドーピング率を安定的に向上させることが可能な限り、主単量体や副単量体として他の材料を使用するようにしてもよい。この場合においても、上記実施の形態および実施例と同様の効果を得ることができる。
また、上記実施の形態および実施例では、光重合または熱重合可能な副単量体を使用し、光重合開始剤または熱重合開始剤を使用して副単量体を重合(光重合または熱重合)させることによりドーパント重合体を生成するようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、副単量体を重合させることによりドーパント重合体を生成することが可能な限り、その副単量体の重合様式は自由に変更可能である。具体的には、例えば、電子線架橋可能な副単量体を使用し、電子線架橋剤を使用して副単量体を電子線架橋させることによりドーパント重合体を生成するようにしてもよい。この場合においても、上記実施の形態および実施例と同様の効果を得ることができる。
また、上記実施の形態および実施例では、本発明の固体電解質およびその形成方法を電解コンデンサおよびその製造方法に適用した場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、本発明の固体電解質およびその形成方法は、上記した電解コンデンサ以外の他の電子部分およびその製造方法に適用することも可能である。これらの他の電子部品の製造方法に本発明の固体電解質およびその形成方法を適用した場合においても、上記実施の形態および実施例と同様の効果を得ることができる。
本発明に係る固体電解質およびその形成方法は、電解コンデンサに代表される電子部品およびその製造方法に適用することが可能である。
1…固体電解質、2…基体、10…コンデンサ素子、11…陽極、12…誘電体層、12H…細孔、13…固体電解質層、14…陰極、14A…カーボン層、14B…銀層。
Claims (10)
- 第1の単量体とこの第1の単量体とは異なる第2の単量体とを混合させる工程と、
前記第1の単量体を重合させて導電性高分子を生成する工程と、
前記第2の単量体を重合させてドーパント重合体を生成することにより、これらの導電性高分子およびドーパント重合体を含むように固体電解質を形成する工程と
を含むことを特徴とする固体電解質の形成方法。 - 前記第1の単量体として、チオフェンまたはその誘導体を使用する
ことを特徴とする請求項1記載の固体電解質の形成方法。 - 酸化剤を使用して前記第1の単量体を酸化重合させることにより、前記導電性高分子を生成する
ことを特徴とする請求項2記載の固体電解質の形成方法。 - 前記第2の単量体として、重合官能基を有するスルホン酸塩またはその誘導体を使用する
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の固体電解質の形成方法。 - 光重合開始剤または熱重合開始剤を使用して前記第2の単量体を重合させることにより、前記ドーパント重合体を生成する
ことを特徴とする請求項4記載の固体電解質の形成方法。 - 第1の単量体が重合されることにより生成された導電性高分子と、前記第1の単量体とは異なる第2の単量体が重合されることにより生成されたドーパント重合体とを含み、
フィルム状構造を有している
ことを特徴とする固体電解質。 - 第1の単量体とこの第1の単量体とは異なる第2の単量体とを混合させる工程と、
前記第1の単量体を重合させて導電性高分子を生成する工程と、
前記第2の単量体を重合させてドーパント重合体を生成することにより、これらの導電性高分子およびドーパント重合体を含む固体電解質層を備えるように電子部品を製造する工程と
を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。 - 前記電子部品として、第1の電極層と、誘電体層と、前記固体電解質層と、第2の電極層とがこの順に積層された積層構造を有する電解コンデンサを製造する
ことを特徴とする請求項7記載の電子部品の製造方法。 - 第1の単量体が重合されることにより生成された導電性高分子と、前記第1の単量体とは異なる第2の単量体が重合されることにより生成されたドーパント重合体と、を含む固体電解質層を備えた
ことを特徴とする電子部品。 - 第1の電極層と、誘電体層と、前記固体電解質層と、第2の電極層とがこの順に積層された積層構造を有する電解コンデンサである
ことを特徴とする請求項9記載の電子部品。
Priority Applications (1)
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JP2003424512A JP2005183256A (ja) | 2003-12-22 | 2003-12-22 | 固体電解質およびその形成方法、ならびに電子部品およびその製造方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP5824190B1 (ja) * | 2014-07-16 | 2015-11-25 | 昭和電工株式会社 | 固体電解コンデンサ素子の製造方法 |
WO2016009680A1 (ja) * | 2014-07-16 | 2016-01-21 | 昭和電工株式会社 | 固体電解コンデンサ素子の製造方法 |
CN117013058A (zh) * | 2023-09-28 | 2023-11-07 | 广东工业大学 | 基于金属-有机框架的固态电解质及其制备方法与应用 |
-
2003
- 2003-12-22 JP JP2003424512A patent/JP2005183256A/ja not_active Withdrawn
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