JP3943781B2 - トナー及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電荷像を現像するためのトナー又は、トナージェット方式の画像形成方法におけるトナー像を形成するためのトナー、及び、該トナーの製造方法に関し、特に、トナーによって形成されたトナー画像を転写材の如きプリントシートに加熱加圧定着させる方式に好適に供されるトナー、及び該トナーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
静電荷現像方法においては、帯電したトナー粒子が、ドラム上の電位差に応じた静電気力によってドラム上の静電潜像を現像するように構成されている。この際、トナー粒子の帯電は、具体的には、トナー粒子とトナー粒子との間、或いはトナー粒子とキャリア粒子との間の摩擦によって生じるが、この摩擦を効率よく均一に起こさせるためには、トナーに流動性を保持させることが重要である。
【0003】
これに対し、トナーに流動性を付与する一般的な方法としては、シリカ、チタン、アルミナ等に代表される無機微粒子や、高分子化合物による有機微粒子等の流動化剤をトナー粒子表面に外添する方法がよく知られている。又、上記の如き流動化剤を添加する手法については、色々な工夫がなされている。例えば、トナー粒子と流動化剤との静電力、或いはファンデルワールス力によりトナー粒子の表面に流動化剤を付着せしめる手法が一般的である。このトナー粒子の表面に流動化剤を付着せしめる手法としては、撹拌機や混合機を用いて行なわれる方法がある。
【0004】
しかしながら、上記の手法においては、流動化剤を均一にトナー粒子の表面に分散させて付着させることが容易ではなく、又、トナー粒子に未付着の流動化剤同士が凝集物となり、これが、所謂、遊離状態となって含有された「遊離した添加剤」の存在を避けることは難しい。このような場合には、現像剤の流動性が低下することが生じ、例えば、摩擦帯電量が低下し、充分な画像濃度が得られなくなったり、或いは逆にかぶりの多い画像になったりする。更に、上記したように、従来の場合は、流動化剤は、トナー粒子の表面に、静電力、或いは、ファンデルワールス力等により付着しているだけであるので、連続コピーを行なった場合に、トナー粒子表面からの流動化剤の遊離や、トナー粒子に対する流動化剤の埋め込みが増加し、連続コピーの後半においては耐久初期の画像を保持し得なくなるという問題を生じる。
【0005】
流動化剤を使用することなしにトナーに流動性を付与する手法としては、例えば、特開平7−181722号公報に記載されているように、トナー粒子の表面にワックス微粒子を固着させ、更にその外側にアミノシランアルコキサイド及びアルキルアルコキシシランの重縮合より得られたポリシロキサン層を設ける方法や、特開平8−95284号公報に記載されているように、有機シラン化合物を添加したモノマー系を重合することによってトナーを得る方法等が知られている。しかしながら、これらの手法によって得られるトナーは、トナー粒子表面が平滑であるために、転写効率が低下する現象がみられるという問題があった。
【0006】
更に、最近、電子写真分野では、より高画質な画像を求める動きが強くなってきている。そして、画像の高画質を達成する手段の一つとして、現像剤に使用するトナーの帯電量分布のシャープ化が挙げられる。トナーの帯電量分布がシャープになると、トナーを構成する一つ一つのトナー粒子の帯電量が均一になるので、形成される画像のかぶりや飛び散りが少なくなり、ドラム上に形成された潜像に対して忠実なトナー像を再現することが可能になる。一般的に、トナー粒子の帯電量はトナー粒子の粒子径に比例することから、トナーの帯電量分布のシャープ化を図るためには、トナーの粒度分布をシャープにすることが効果的であると考えられる。トナー粒子に十分な帯電量を付与させるためには、一般的に、シリカ、チタン及びアルミナ等に代表される無機微粒子や高分子化合物による有機微粒子等といった所謂外添剤を添加する方法が採られている。
【0007】
しかしながら、これらの外添剤は、撹拌器や混合器を用いてトナー粒子表面に機械的に固着させるのが一般的であるため、特に、連続印刷等を行った場合等において、外添剤がトナー粒子から遊離したり、逆にトナー粉体に対して埋め込まれたりする現象がおきてしまう。そして、これらの現象によってトナー粒子の表面状態が変化してしまうために、画像形成を行なった場合に、耐久初期におけるトナーの帯電量を、継続的に保持することが困難となり、初期のシャープな帯電量分布を保持することが耐久において困難になるという問題点を有していた。
【0008】
更に、近年、パーソナルコンピューターが驚異的な普及を遂げる中、電子写真方式を用いたプリンターや複写機の需要は、オフィス向けから一般ユーザー向けへと拡大傾向にある。それに伴い、これらの電子写真方式のプリンターや複写機に対しては、装置の小型化、エコロジー対応に伴う省資源化、低コスト化等が望まれている。これらの課題を解決する一つの方法として、定着温度の低温化が挙げられ、その達成手段として、トナーを構成する結着樹脂の低分子量化、又は、ガラス転移点(Tg)の低温化、トナーに含有させるワックスの含有量の増量が試みられている。
しかしながら、結着樹脂の低分子量化やガラス転移点の低温化によって、溶融温度は低くなるものの、それと同時にトナーの保存安定性が悪化してしまい、特に、高温環境下において、現像器内への融着を起こしたり、トナー同士が融着し、流動性が低下してしまうといった問題を生じていた。
【0009】
このような問題を解決するために、シラン化合物を用いた手法が提案されている。例えば、特開平7−98516号公報ではポリエステル樹脂と金属アルコキシドを混練架橋させる方法が、又、特開平7−239573号公報ではビニルモノマーと不飽和二重結合およびアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤とが共有結合されたビニル系樹脂を結着樹脂として用いる方法が提案されている。しかしながら、これらの手法では、結着樹脂の組成が限られていたり、シラン化合物がトナー粒子内部まで存在することになるため、実質的に、定着性と保存安定性という相反する性能をコントロールすることが困難であった。
【0010】
ほかの手法としては、例えば、特開平6−289647号公報ではトナー粒子表面に硬化型シリコーン樹脂を被覆する方法が、特開平8−15894号公報ではトナー粒子表面に金属アルコキシドを付着させたトナーが、及び、特開平9−179341号公報にはシランカップリング剤を用いて、トナー粒子表面を連続した薄膜の形で覆う手法が、それぞれ提案されている。これらの方法は、比較的低Tgの樹脂を用いて母粒子を作成し、その表面にシリコーン樹脂や金属アルコキシド等の堅い素材を被覆することにより、ブロッキングの発生を防ぎ、同時に定着温度を低温下する試みであるが、これらのトナー粒子表面は上記シラン化合物で充分に覆われていなかったり、覆われている場合でもその被覆層表面は平滑であるために、熱ロール等の定着部材との接触面積が少なく、熱吸収効率が悪く、母粒子のTgと実際の溶融温度との間には大きな差が生じてしまい、充分な低温定着化をはかるのが困難であった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、流動化剤を用いなくても優れた流動性を有し、しかも高い転写効率を得ることのできるトナー、及び該トナーの製造方法を提供することにある。
本発明の目的は、流動化剤を用いないトナーを提供することによって、連続して現像を繰り返しても流動化剤の遊離や、トナー粒子への流動化剤の埋め込みがなく、耐久後においても安定した画像濃度を保持できる定着性に優れたトナー、及び該トナーの製造方法を提供することにある。
本発明の目的は、長時間の画出しを行った耐久において、トナーの帯電量分布のシャープ性が継続的に保持されることで、かぶりや飛び散りが少ないドットの再現性の高い高画質画像を安定して得ることのできるトナー、及び該トナーの製造方法を提供することにある。
本発明の目的は、低い定着温度で良好に定着するにもかかわらず、耐ブロッキング性に優れたトナー、及び該トナーの製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。即ち、本発明は、少なくとも結着樹脂と着色剤とを有するトナー粒子で構成されるトナーにおいて、上記トナー粒子の表面に、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成された被覆層を有し、該被覆層は、ケイ素化合物の重縮合物によって形成されてなることを特徴とするトナー、表面に被覆層を有するトナー粒子で構成されるトナーの製造方法であって、少なくとも結着樹脂と着色剤とを有するトナー粒子を調製するトナー粒子調製工程;及び該トナー粒子の外部から、該トナー粒子の表面にケイ素化合物の重縮合物を堆積させることにより、トナー粒子の表面に、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着することによって形成される被覆層を形成する被覆層形成工程;を有することを特徴とするトナーの製造方法、及び、表面に被覆層を有するトナー粒子で構成されるトナーの製造方法であって、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有し、且つケイ素化合物が内在しているトナー粒子を調製するトナー粒子調製工程;及び該トナー粒子を水、及び水と水性溶媒との混合溶媒からなるグループから選択される液中で、該トナー粒子の表面でケイ素化合物の加水分解及び重縮合反応を行なわせて、該トナー粒子表面に少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着された状態の被覆層を形成する被覆層形成工程;を有することを特徴とするトナーの製造方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて本発明をより詳細に説明する。
本発明のトナーの特徴は、トナーを構成している少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有するトナー粒子表面に、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着された状態の被覆層が設けられていることにある。本発明における少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着された状態の被覆層とは、具体的には、例えば、シランアルコキサイドに代表されるケイ素化合物の加水分解と重縮合によってトナー粒子表面に形成し得るものであり、好ましくは、その表面にnmオーダーの微細な凹凸が観察されるように形成されている層である。
【0014】
本発明者らが鋭意検討した結果、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有するトナー粒子の表面に、上記の少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着された状態の被覆層を設ければ、従来の外添剤を用いなくても、充分な流動性が付与されたトナーになることを知見して本発明に至った。これにより、安定した帯電性を保持することができることがわかった。更に、外添剤を用いないので、連続して現像を行なった場合にも、外添剤の遊離や、トナー粒子に対する外添剤の埋め込みを起こすこともなく、耐久性に優れていることもわかった。
【0015】
以下、トナー粒子表面に設ける「少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着された状態の被覆層」について詳細に説明する。
本発明者らは、上記に述べたような優れた作用を有するトナーの表面状態について検討した結果、以下の知見を得た。先ず、本発明のトナーを構成している粒子断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することによって、トナー粒子表面に、数十nmの直径の粒状塊によって構成されている層状構造が形成されている様子を観察することができた。
更に、X線マイクロアナライザーを取り付けた走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた電子プローブ微小部分析法(electron probe microanalysis:EPMA)で、界面活性剤によりトナーを洗浄した前後のトナー粒子の表面構成を調べた結果、洗浄によって生じるケイ素元素の減少率が少ないという結果が得られ、ケイ素化合物を含む粒状塊は、トナー粒子表面に単に付着しているのではなく、粒状塊同士が固着した状態でトナー粒子表面に存在し、被覆層を形成していることが確認できた。
【0016】
以下に、本発明のトナーの構成要件である少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層の層構造の確認方法について説明する。下記の手順で、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層を確認した。
【0017】
《ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層の確認》
・透過型電子顕微鏡観察による層構造の存在の有無の確認
測定するトナーの粒子をエポキシ樹脂に埋め込んで固めた後、ミクロトームによりトナーの粒子の超薄切片を作成し、これを透過型電子顕微鏡用の測定セルに固定し、これをサンプルとした。
日立製作所製H−7500型透過型電子顕微鏡で、上記サンプルを拡大倍率1万〜5万倍で観察し、トナーの粒子表面に粒状塊による層構造が存在していることを確認した。
【0018】
・界面活性剤洗浄後のトナー粒子表面のケイ素元素の存在量の減少率による粒状塊同士の固着の確認
▲1▼トナーの粒子表面における電子プローブ微小部分析法によるケイ素原子の存在量(質量%)の測定
トナーの粒子の表面を、(株)堀場製作所製X線マイクロアナライザーX−5770Wを取り付けた(株)日立製作所製S−4500型電界放出型走査型電子顕微鏡を用いて、加速電圧20kV、試料の吸収電流値1.0×10-10A、25,000倍の条件で、電子プローブ微小部分析を行い、炭素原子、酸素原子及びケイ素原子の存在量(質量%)の総計を100%とした場合のケイ素原子の存在量Si1(質量%)を測定した。尚、測定は20視野について行い、その平均値を測定値とした。
【0019】
▲2▼トナーの粒子表面の界面活性剤による洗浄
トナー0.2gを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液5mlに分散し、超音波洗浄機に30分かけることにより、トナーの粒子表面を充分洗浄した。更に、遠心分離、洗浄を繰り返し、トナーの粒子表面のドデシルベンゼンスルホン酸を完全に取り除いた後、減圧乾燥してトナーを単離した。
【0020】
▲3▼界面剤活性剤による洗浄後のトナーの粒子表面のケイ素原子の存在量(質量%)の測定
上記▲2▼の操作によってトナーの粒子表面から脱離したケイ素原子の存在量(質量%)を測定するため、上記▲1▼と同様の方法で、界面活性剤洗浄後のトナーの粒子表面の電子プローブ微小部分析を行い、ケイ素原子の存在量Si2(質量%)を測定した。
【0021】
▲4▼トナー粒子表面に設けられたケイ素化合物を含む粒状塊同士によって形成された被覆層の状態の解析
上記▲1▼〜▲3▼の手順によって得られたSi1及びSi2の値から、下記式によって、界面活性剤洗浄によって生じたトナー粒子表面におけるケイ素元素の存在量の減少率を算出した。このトナー粒子表面におけるケイ素元素の存在比率の減少率が極端に少ない場合は、ケイ素化合物を含む粒状塊同士によってトナー粒子表面に形成された被覆層は、その表面から脱落しにくい状態で付着していると判断できる。そこで、下記式によって得られるトナー粒子表面のケイ素元素の存在量の減少率が30%以下である場合は、トナー粒子表面に形成されている被覆層は、該層を構成しているケイ素化合物を含む粒状塊同士が強固に固着された状態にあると見做し、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着した状態にあるか否かを確認する手段とした。
【0022】
【数1】
【0023】
以上説明したように、本発明においては、透過型電子顕微鏡観察による視覚的な粒状塊による層構造の確認と、界面活性剤洗浄前後に生じたトナーの粒子表面におけるケイ素元素の存在量の減少率の測定結果とを組み合せ、これを「少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層」の確認手段とする。
【0024】
上記の方法で確認されたように、本発明のトナーにあっては、トナーを構成しているトナー粒子の表面にある被覆層が、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成されているので、トナー粒子表面には微細な凹凸が存在することとなり、これによって高い転写効率が実現される。又、本発明においては、その代表的なトナーの製造例として、後述するゾルゲル法によるケイ素化合物の重縮合物によってトナー粒子表面に被覆層を形成するが、この方法によれば、重縮合物は膜状の形態をとり、しかも、ケイ素化合物の重縮合物を含む粒状塊同士が化学的に結合した状態の膜となってトナー粒子表面全体を覆った被覆層の形態となる。このため、先に述べたトナー粒子表面にシリカ等の従来の流動化剤を付着させた場合のように、流動化剤の添加によって生じる未付着の遊離微粒子や耐久劣化による遊離微粒子が発生する余地がない。このため、本発明のトナーは、耐久性に優れたものとなる。
【0025】
本発明者らの詳細な検討によれば、EPMAによってトナーの粒子表面のケイ素元素の存在量を測定した場合に、その存在量が、好ましくは0.10〜20.0質量%の範囲、より好ましくは0.1〜10.0質量%の範囲、更に好ましくは0.10〜4.0質量%の範囲にある場合に、より好ましい状態の被覆層が得られることがわかった。
即ち、トナー粒子の表面に、トナー粒子表面におけるケイ素原子の存在量が0.10質量%以上になるようなケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層を設けた場合に、トナーに、より高い流動性と高い転写効率とを付与することができることを確認した。更に、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層が設けられているトナー粒子表面のケイ素原子の存在量が0.10質量%以上であると、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層によってトナー粒子表面が十分な状態で被覆されることになるので、トナーにより高い流動性を付与することができ、十分な帯電量が付与され得るトナーが得られる。
一方、トナー粒子表面のケイ素原子の存在量が20.0質量%以下になるような被覆層を設けることで、トナーがより良好な定着性を示すことがわかった。これは、トナー粒子表面のケイ素原子の存在量が上記条件を満足するような被覆層である場合には、トナー粒子を構成している結着樹脂の熱可塑性が十分に発揮されるためであると思われる。
【0026】
本発明においては、トナーが、上記の如き特定の被覆層を、母体となるトナー粒子表面に設けられて構成されているので、トナーを形成する結着樹脂の溶融温度を低くして定着性を向上させることができ、しかも、そのような形態のトナーであっても、高温環境下においても、現像器内等への融着や、トナー同士の融着が発生して流動性が低下するといったことを起こすことがなく、保存安定性に優れるという機能を同時に満たすトナーが得られる。
このような定着性に優れたトナーの構成としては、トナーは、少なくとも60℃以下に1点以上ガラス転移点を有し、溶融開始温度が100℃以下であり、更に、該ガラス転移点と該溶融開始温度との差が38℃以下であることが好ましい。
【0027】
上記の構成のトナーの場合には、EPMAによって測定したトナーのトナー粒子表面のケイ素元素の存在量が、0.10〜10.0質量%の範囲、好ましくは0.1〜4.0質量%の範囲にある場合に、好ましい被覆層を得ることができる。
トナーの表面のケイ素原子の存在量が0.10質量%以上になるようなケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層を母体となるトナー粒子表面に設けることにより、ゾルゲル膜が母体となるトナー粒子を充分に包含することが可能となり、優れたブロッキング耐性を示しすものとなったものと思われる。これに対し、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層が設けられているトナー粒子表面におけるケイ素原子の存在量が0.10質量%よりも少ないと、これは、表面のゾルゲル膜の量が少ないことを意味することになり、よって、ゾルゲル膜による母体となるトナー粒子表面の被覆が充分でなくなってしまい、トナーの耐ブロッキング性が損なわれることになる。
【0028】
トナー粒子表面におけるケイ素原子の存在量が10.0質量%以下になるように被覆層を設けると、母体となるトナー粒子の良好な定着性を保持できる。即ち、このような被覆層が形成されている場合には、母体となるトナー粒子を構成する結着樹脂の熱可塑性が、被覆層を設けたことによって損なわれることがなく、充分に発揮される。
【0029】
更に、トナーの表面に形成される被覆層が少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成されているので、トナーを構成しているトナー粒子表面が微細な凹凸を有し、それにより表面積が大きくなっていることから、熱ロール等の定着部材とトナーとの接触面積が大きくなり、熱吸収効率がよくなる。この結果、耐ブロッキング性を目的として設けられていた従来の被覆層を有するトナーに比べ、母体となるトナー粒子のTg及び溶融開始温度と、トナーのそれとの間に差が生じることが少ないため、充分な低温定着化をはかることができる。加えて、トナー粒子表面に設ける被覆層を、代表的な例として、後述するゾルゲル法によって、ケイ素化合物の重縮合物を粒子表面に堆積させる方法で形成するが、この重縮合物は膜状の形態をとり、ケイ素化合物の重縮合物を含む粒状塊同士が化学的に結合した状態の膜がトナー粒子表面全体を覆った被覆層の形態となるため、ガラス転移点の低い低温定着性に優れた結着樹脂を主成分として用いたトナー粒子の表面が充分に包み込まれ、その結果、高温環境下においても、トナー同士が融着してしまうといったことが生じない。
【0030】
更に、本発明者らの検討によれば、本発明のトナーにあっては、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有するトナー粒子の表面に設けるケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層を、先に述べたような優れた作用を有するものとするためには、主にトナー粒子の表面近傍に、上記被覆層が形成された状態となっていることが必要であることがわかった。即ち、例えば、上記で説明した、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層の好適な構成成分であるケイ素化合物の重縮合物がトナーの粒子内部にまで存在する場合には、トナー粒子を構成する結着樹脂の熱可塑性が失われてしまい、得られるトナーの定着性が損なわれる傾向があることがわかった。
【0031】
そして、本発明者らの更なる詳細な検討の結果、トナー粒子の表面近傍に形成されるケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層の要件として、EPMAによって、トナーの粒子断面の炭素原子、酸素原子及びケイ素原子の存在量の総計を100%とした場合のケイ素原子の存在量(質量%)を測定した場合に、その測定値が4.0質量%以下であれば、充分な定着性を有するトナーが得られることが確認できた。即ち、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在量が4.0質量%を超えるということは、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層の構成成分であるケイ素化合物の重縮合物がトナーの粒子内部にまで存在していることを意味し、この結果、定着性が損なわれるものと考えられる。
【0032】
本発明において規定する上記のトナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在量(質量%)の測定方法について説明する。
《トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在量の測定方法》
測定するトナー粒子をエポキシ樹脂に埋め込んで固めた後、ミクロトームによりトナー粒子の超薄切片を作成し、測定用のサンプルとする。このサンプルを、走査型電子顕微鏡写真用のアルミニウム製のサンプル台上にのせ、導電性カーボン粘着シートを用いて固定する。このサンプルについて、上記したトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量の測定方法と同様の方法で、ケイ素原子の定量を行った。
【0033】
本発明のトナーにおいては、更に、上記した方法で測定したトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量が、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在量の2倍以上である場合に、より好ましい効果が得られる。即ち、本発明者らの検討によれば、このような要件を具備したケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層が設けられたトナーを用いて画像を形成した場合に、より優れた定着性が得られることがわかった。これは、このような構成を有する被覆層は、より一層トナー粒子の表面近傍に形成されるので、結着樹脂の熱可塑性が、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層の形成によって損なわれることがないため、より定着性が優れたものになったと考えられる。
【0034】
更に、本発明の一連の検討の結果、本発明のトナーにおいては、トナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量が4.0質量%以下である場合に、より好ましい効果が得られることがわかった。そして、かかる構成は、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層中のケイ素化合物中に、有機置換基を有するものを使用することにより達成され易く、このことによってトナーの耐久性を更に向上することができることもわかった。これは、おそらく、上記被覆層中のケイ素化合物中に有機置換基を有するものを使用すると、形成された被覆層に有機鎖の柔軟性が加わって、その結果、優れた耐久性が達成されたものと考えている。
【0035】
即ち、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層中のケイ素化合物に有機置換基がある場合には、トナーの粒子表面における炭素原子の存在量が上昇する、換言すれば、炭素原子、酸素原子及びケイ素原子の存在量の総計を100%とした場合のケイ素原子の存在量が減少すると考えられるが、本発明者らが、トナーの粒子表面のケイ素原子の存在量とトナーの耐久性とを比較検討した結果、トナーの粒子表面のケイ素原子の存在量が、炭素原子、酸素原子及びケイ素原子の存在量の総計を100%とした場合に4.0質量%以下にある場合に、形成される被覆層の耐久性がより高くなり、これによって本発明のトナーの耐久性を更に向上させることが可能となることがわかった。
【0036】
本発明のトナー粒子表面に少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着された状態の被覆層が設けられたトナーは、トナー粒子表面に未反応のシラノール基(−SiOH)が残存する場合があり、高温高湿条件下において充分な帯電量を保持するためには、被覆層の表面をカップリング剤によって処理することが好ましいことがわかった。
即ち、少なくともケイ素化合物を含む粒子同士が固着された状態の被覆層の表面に、カップリング剤を処理すると、トナー粒子表面に被覆層を設けたことによって、トナー粒子表面に残存することになった未反応のシラノール基の水酸基がキャッピングされるので、大気中の湿気の影響を軽減でき、高温高湿下においても十分な帯電性を保持することが可能なトナーとすることができ、先に述べたトナー粒子表面にある被覆層の機能をより高めることが可能となる。
【0037】
本発明において、トナーは、個数平均粒子径が0.1μm〜10.0μmの範囲内であり、且つ20.0%以下の個数分布の変動係数を有する小粒径のシャープな粒度分布を有することが、高画質画像を形成するために好ましい。
トナーの大きさ及び粒度分布をこのように制御することにより、該トナーを用いた場合には、トナーの帯電量分布はシャープとなり、カブリ、飛び散りの少ないドット再現性の高い画像を得ることが可能になる。
トナーの個数平均粒径が0.1μmよりも小さい場合には、粉体としての取り扱いが困難となり、10.0μmよりも大きいと、潜像に対してトナーの粒子径が大き過ぎることが生じ、忠実にドットを再現することが困難となる。更に、粒度分布を表す個数分布の変動係数が20.0%よりも広いと帯電量がばらつくために、カブリや飛び散りの多い画像となり、ドットの再現性は低くなる。
本発明において、上記のような目的を達成するには、より好ましくは、トナーの個数平均粒子径が1.0μm〜8.0μm、更に好ましくは3.0μm〜5.0μmの範囲であるとよく、トナーの個数分布の変動係数が、より好ましくは15.0%以下、更に好ましくは10.0%以下であることがよい。
上記のような被覆層を粒度分布がシャープなトナー粒子表面に設けたトナーの帯電量分布は、長時間の耐久後も保持される。
【0038】
以下に、本発明において用いたトナーの個数平均粒子径及び粒度分布の測定方法を示す。
先ず、日立製作所製S−4500形電界放出形走査型電子顕微鏡を用いて、トナーの5000倍の写真を撮り、その写真から、トナー粒子の累積が300個以上になるように各トナー粒子の粒径を測定し、これらの測定値から個数平均粒子径を算出した。更に、トナーの個数分布の変動係数を下記式より求めた。
【数2】
【0039】
更に、本発明のトナーは、上記した形状的な特徴に加えて、トナーの熱的特性において、少なくとも60℃以下に一点以上ガラス転移点を有し、且つ、溶融開始温度が100℃以下であり、更に、該ガラス転移点と該溶融開始温度との差が38℃以下であることが好ましく、これによって従来の定着温度よりも低い定着温度を実現でき、しかも上記したように、トナー粒子表面に設けた被覆層によって耐ブロッキング性をも満足することができる。
【0040】
以下、上記のトナーが有する特定の熱的特性について説明する。
本発明者らの検討によれば、トナーが、少なくとも60℃以下に一点以上ガラス転移点を有し、且つ、溶融開始温度が100℃以下であることとする要件を満足しない場合には、後述する定着性試験において、トナーが良好な定着性を示さないことがあることがわかった。更に、ガラス転移点と溶融開始温度の差が38℃よりも大きいと、母体となるトナー粒子が有する低温定着性が保持されず、該トナー粒子にゾルゲル膜を被覆した後のトナーは、定着性試験において良好な定着性を示さなくなる。
【0041】
上記のように、トナーの溶融開始温度およびガラス転移点を制御するためには、母体となるトナー粒子(被覆層を施す前のトナー粒子)の熱的特性を、例えば、
1)結着樹脂組成
2)結着樹脂の分子量、分子量分布
3)ワックス、離型剤含有量
を制御することにしてコントロールすればよい。そして、母体となるトナー粒子のガラス転移点(Tg)が、少なくとも60℃以下、より好ましくは40℃以下に、一つ以上Tgを有し、且つ、溶融開始温度が100℃以下、より好ましくは80℃以下となるように制御することが好ましい。
【0042】
トナーに含有させる離型剤量で溶融温度を調節する場合においては、離型剤量が、被覆層も含めたトナーの重量を基準とした場合において、80質量%以上になると、転写紙やフィルム等の上に定着した画像が剥離してしまう等のことが起こり、実質的に実用不可能であると推測される。又、定着ローラー等との離型性を考えると、離型剤を含有した形態がより好ましいといえる。従って、本発明のトナーにおいては、離型剤の含有量が、トナー全体として5〜80質量部、より好ましくは10〜60質量部の範囲であることが好ましい。
【0043】
本発明で用いることのできる離型剤としては、室温固体の固体ワックスが好ましい。具体的には室温で固体の固体ワックスが好ましい。具体的には、例えば、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、フィッシャートロピッシュワックス、アミドワックス、高級脂肪酸、エステルワックス、及びグラフト化合物、ブロック化合物の如き誘導体が挙げられる。下記一般構造式で示す炭素数が10以上の長鎖エステル部分を1個以上有するエステルワックスが、OHPの透明性を阻害せずに、耐高温オフセット性に効果を有するので特に好ましい。
本発明で使用できる好ましい具体的なエステルワックスの代表的化合物の構造式を以下に、一般構造式(1)〜(5)として示す。
【0044】
【化1】
(式(1)中、a及びbは0〜4の整数を示し、a+bは4であり、R1及びR2は炭素数が1〜40の有機基を示し、且つ、R1とR2との炭素数差が10以上である基を示し、n及びmは0〜15の整数を示し、nとmが同時に0になることはない。)
【0045】
【化2】
(式(2)中、a及びbは0〜4の整数を示し、a+bは4であり、R1は炭素数が1〜40の有機基を示し、n及びmは0〜15の整数を示し、nとmが同時に0になることはない。)
【0046】
【化3】
(式(3)中、a及びbは0〜3の整数を示し、a+bは3以下であり、R1は炭素数が1〜40の有機基を示し、n及びmは0〜15の整数を示し、nとmが同時に0になることはない。)
【0047】
【化4】
(式(4)中、R1及びR2は炭素数が1〜40の炭化水素基を示し、且つ、R1及びR2は、お互いに同じでも異なる炭素数のものでもよい。)
【0048】
【化5】
(式(5)中、R1及びR2は炭素数が1〜40の炭化水素基を示し、nは2〜20の整数であり、且つ、R1及びR2は、お互いに同じでも異なる炭素数でもよい。)
【0049】
以下に、本発明において使用したガラス転移点および溶融開始点の測定方法を示す。
(ガラス転移点の測定)
樹脂のガラス転移点Tgは、示差熱分析測定装置、DSC−7(パーキンエルマー社製)を用い、ASTM D3418−82法に準じて測定した。
【0050】
(溶融開始温度の測定)
本発明における溶融開始点の測定は、フローテスターCFT−500型(島津製作所製)を用いて行った。測定する試料を約1.0〜1.5g秤量し、これを成形器を使用して9806.65kPa(100kgf/cm2)の加重で1分間加圧し、加圧サンプルを作成する。
この加圧サンプルを下記の条件で、常温常湿下(温度約20〜30℃、湿度30〜70%RH)でフローテスター測定を行い、湿度−見掛け粘度曲線を得る。得られたスムース曲線より、粘度減少が開始する温度を読み取り、溶融開始温度とした。
【0051】
・RATE TEMP:6.0(℃/1分)
・SET TEMP:70.0(℃)
・MAX TEMP:200.0(℃)
・INTERVAL:3.0(℃)
・PREHEAT:300.0(秒)
・LOAD:20.0(kgf)
・DIE(DIA):1.0(mm)
・DIE(LENG):1.0(mm)
・PLUNGER:1.0(cm2)
【0052】
次に、トナー粒子の表面に少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層を有するように構成された本発明のトナーが得られるトナーの製造方法について説明する。
【0053】
本発明のトナーの製造方法においては、少なくとも結着樹脂と着色剤からなるトナー粒子を作成し、その表面に、後述するような方法で、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層を形成させる。このトナー粒子としては、従来より知られている、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有し、必要に応じて各種の添加剤が含有されたトナー粒子であればいずれのものでもよい。即ち、本発明で使用するトナー粒子は、結着樹脂その他の任意成分とからなるトナー用組成物を混練後、混練物を冷却した後、粉砕して得られる所謂粉砕法トナーであってもよいし、或いは、結着樹脂となる重合性単量体を重合して得られる所謂重合法トナーであってもよい。しかしながら、本発明のトナーにあっては、トナー粒子の形状が不定形であると、トナー粒子同士の摩擦によって、その表面に形成した上記の被覆層がが劣化し易くなるため、トナー粒子として、球形のトナー粒子を用いることがより好ましい。尚、球形のトナー粒子は、粉砕法によって製造されたトナー粒子を球形化することにより、或いは、重合法によってトナー粒子を製造することにより容易に得ることができる。
【0054】
本発明の少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層の代表的な製造例としては、一般に、ゾルゲル法と呼ばれている手法の応用を挙げることができる。以下、このゾルゲル法による製造例について説明する。
ゾルゲル法は、一般的には、平面状の金属化合物重縮合膜や、個体状の金属化合物重縮合体を製造する手法として知られており、この手法によって生成される金属化合物の膜を、一般にゾルゲル膜と呼んでいる。
【0055】
このゾルゲル膜は、具体的には、シランアルコキサイドに代表されるケイ素化合物の加水分解重縮合によって生成され、その表面に、nmオーダーの微細な凹凸が観察される膜である。本発明者らは、鋭意検討した結果、このゾルゲル膜をトナーの粒子表面に設けることによって、従来のトナーで行なわれているように外添剤を用いなくても、充分な帯電量を付与でき、且つ、耐久によるトナーの性能低下が生じにくいトナーが得られることをことを見いだした。
【0056】
更に、本発明者らは、鋭意検討した結果、上記した特性を有するゾルゲル膜を、トナー粒子表面に設けることによって、低いTgを有する結着樹脂を含有するトナーが、その低温定着性を保ったまま、ブロッキングを起こすことがないものとなることがわかった。
【0057】
トナー粒子の表面に、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層を形成する第1の方法としては、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有するトナー粒子の外部から、トナー粒子の表面にケイ素化合物の重縮合物を堆積させて、トナー粒子の表面に上記被覆層を形成する方法がある。
具体的には、シランアルコキサイドを溶解させた水または水性媒体中に、母体となるトナー粒子を分散させた後、この分散溶液を、アルカリを加えてある水または水性媒体に滴下する方法がある。この方法によると、トナー粒子が含有されている分散溶液中に溶解していたシランアルコキサイドが、アルカリの存在下で加水分解及び重縮合を起こし、徐々に不溶化していき、更に、疎水性相互作用からトナー粒子の表面に堆積することになる。この結果、トナー粒子の表面に、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層が形成される。更に、前述した分散重合によるトナー粒子を用いる場合には、母体となるトナー粒子の重合終了後の反応系を室温まで冷却した後に、この中にシラン化合物を溶解させてトナー分散液として用いることもできる。
【0058】
上記で使用する水性媒体としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールの如きアルコール類が用いられるが、これらの溶媒の有機性が高くなるとシランアルコキサイドの重縮合物の溶解性が高まり、トナー粒子表面にシランアルコキサイドの重縮合物が堆積し難くなる。従って、上記の水性媒体としては、メタノールまたはエタノールを用いることが好ましい。
【0059】
トナー粒子の表面に、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層を形成する第2の方法としては、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有し、且つ、ケイ素化合物を内存させてあるトナー粒子を、水、または、水性溶媒と水との混合溶媒中に分散することによって、トナー粒子表面でケイ素化合物の加水分解及び重縮合反応を行なわせて、上記被覆層を形成する方法がある。
【0060】
上記の方法においては、トナー粒子が、水、または、水性溶媒と水との混合溶媒中に分散されると、トナー粒子中に内在させたケイ素化合物がトナー粒子の表面で水と接触し、加水分解を受ける。つまり、ゾルゲル反応がトナー粒子の表面近傍でのみで進行することになる。また、反応終了後に、アルコール等の溶媒で洗浄すれば、トナー粒子の内部に残っている未反応のケイ素化合物を除去することができる。この結果、トナー粒子表面に選択的にケイ素化合物の重縮合物が存在することになり、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層であって、且つ、トナーの粒子表面のケイ素原子の存在量がトナーの粒子内部における存在量よりも多い被覆層を形成することができる。
【0061】
ここで、水性溶媒とは、水に溶解し得る溶媒をいい、上記の方法において好適な、トナー粒子を分散させる際に使用する水性溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0062】
ケイ素化合物をトナー粒子中に予め内在させる方法としては、トナー粒子の製造時に混在させてもよいし、或いは母体となるトナー粒子を従来の手法で作製した後、得られた粒子中に導入してもよい。この場合に、母体となるトナー粒子を作製した後に、ケイ素化合物をトナー粒子中に導入する方法としては、水、或いは水と水性媒体の混合媒体中で、ケイ素化合物を母体となるトナー粒子に膨潤させる方法が有効である。具体的には、下記に挙げるような方法が挙げられる。
【0063】
具体的には、例えば、ケイ素化合物が溶解しない液媒体中、代表的には水に、母体となるトナー粒子とケイ素化合物とを分散させる方法がある。このようにすると、液媒体中に僅かに溶解したケイ素化合物が、液媒体中を拡散してトナー粒子に吸収される、若しくは分散されたケイ素化合物とトナー粒子とが物理的に接触することによってケイ素化合物がトナー粒子中に吸収されて、ケイ素化合物をトナー粒子中に導入することができる。
この際には、ケイ素化合物を液媒体中に安定に分散させるために、界面活性剤を用いることが好ましい。界面活性剤としては、従来公知の一般的なものを使用することができる。
【0064】
このとき、トナー粒子の分散液とケイ素化合物の分散液を別々に調製して両者を混合する場合に、ケイ素化合物の分散液をトナー粒子の分散液に加えるようにすると、トナー粒子の合着が起こり易く、反応前のトナー粒子と比較して、粒度分布のブロードなトナーとなってしまうので好ましくない。その結果、得られるトナーが、摩擦帯電量分布がブロードとなり、画像の飛び散りが多くみられる等の不具合を生じるものとなり易い。従って、トナー粒子の分散液とケイ素化合物の分散液を別々に調製して両者を混合する場合には、トナー粒子の分散液を、ケイ素化合物の分散液に加える手法がより好ましい。
【0065】
トナー粒子の表面に被覆層を形成して本発明のトナーとした後に、被覆層を形成する前のトナー粒子が有する粒度分布を保つためには、ケイ素化合物を水の如き液媒体に分散させる際に、個々のトナー粒子に対するケイ素化合物をできるだけ小さい液滴まで分散させることがより好ましい。更に、その方法としては、高速攪拌器等による機械的な攪拌させる手法や、超音波分散器等を用いて微分散させる等の手法を用いることが好ましい。
【0066】
このように、ケイ素化合物をトナー粒子中に膨潤させて内在させる場合に、膨潤速度を高める等の補助的な目的から、ケイ素化合物とその他の難水溶性溶媒を併用して、トナー粒子中にケイ素化合物を膨潤させることもできる。
この際に使用する難水溶性溶媒としては、用いるケイ素化合物より親水性が高い溶媒で、且つ、水に難溶性の溶媒ならどのような溶媒でもよい。具体的には、例えば、酢酸イソペンチル、酢酸イソブチル、酢酸メチル、酢酸エチル等が挙げられる。これらの難水溶性溶媒を用いる場合には、ケイ素化合物の重縮合反応の開始以降のいずれかの段階で、この難水溶性溶媒を蒸発させたり、疎水性媒体中にトナー粒子を投入することによって疎水性媒体中に難水溶性溶媒を溶解させる等して、トナー粒子中から除去することが必要となる。上記の操作を行えば、トナー粒子中に残存している未反応ケイ素化合物をも除去することもできる。
【0067】
更に、母体となるトナー粒子に、ケイ素化合物を膨潤させて内在させる他の方法としては、ケイ素化合物が溶解する液媒体、代表的にはアルコールに、トナー粒子を分散させ、ケイ素化合物の溶解性を下げることによりケイ素化合物をトナー中に導入する方法がある。ケイ素化合物の溶解性を下げる手法としては、例えば、温度を下げたり、ケイ素化合物が溶解する液媒体に可溶で、且つ、ケイ素化合物を溶解しない液媒体を徐々に加える方法等が挙げられる。後者の方法としては、具体的には、例えば、メタノール等の低分子量アルコールにケイ素化合物を溶解し、母体となるトナー粒子を分散させた後、水を徐々に加え、ケイ素化合物の溶解性を下げ、該ケイ素化合物をトナー粒子中に膨潤させて内在させるといった方法が挙げられる。
【0068】
以上のように、ケイ素化合物を溶解させて、ケイ素化合物をトナー粒子の内部に導入する方法を用いる場合にあっては、加水分解後のシランアルコールの溶解性が高いと、トナー粒子の表面から媒体中にシランアルコールが溶け出し、溶け出したシランアルコール同士が単独で粒子を形成する場合があるため、ケイ素化合物を加水分解して得られるシランアルコールが難溶性であるような媒体を選択する必要がある。
【0069】
ケイ素化合物が膨潤状態にある母体となるトナー粒子表面で、ケイ素化合物の重縮合反応を進行させる場合における攪拌速度は、系内の粒子濃度、系の大きさ、ケイ素化合物の膨潤量等によって異なるが、あまり遅過ぎても速過ぎても粒子同士が合着を起こし易く、得られるトナーの粒度分布を乱す原因となり得るため、速度は、適宜に調節することが必要である。
また、上記した場合においては、母体となるトナー粒子を難水溶性媒体中に安定に分散させるために、一般的な界面活性剤や高分子分散剤、固体分散剤等を用いてもよい。
【0070】
本発明のトナーにおいて、トナー粒子表面に形成される、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層は、具体的には、上記のような方法によってシランアルコキサイド等のケイ素化合物を加水分解した後、重縮合させることによって得られるケイ素化合物の重縮合物からなる被覆層である。上記の反応は基本的には室温で進行する。
【0071】
上記のような膜状の重縮合物を得るには、一分子中に少なくとも2つの加水分解、重縮合基を具備するケイ素化合物を1種以上用いる必要がある。但し、一官能化合物を併用することもできる。従って、本発明において、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層を形成する際に用いることのできるケイ素化合物としては、以下のようなものが挙げられる。
【0072】
二官能以上のシラン系アルコキサイドとしては、例えば、テトラメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、トリエトキシクロロシラン、ジ−t−ブトキシジアセトキシシラン、ヒドロキシメチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラキス(2−メタクリロキシエトキシシラン)シラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシラン、ビス(トリエトキシシリル)エチレン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)1,7−オクタジエン、2,2−(クロロメチル)アリルトリメトキシシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)トリメトキシシラン、1,3−ジビニルテトラエトキシジシロキサン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エトルトリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メタクリルアミドプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、3−(メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、1,7−オクタジエニルトリエトキシシラン、7−オクテニルトリメトキシシラン、テトラキス(エトキシエトキシ)シラン、テトラキス(2−メタクルロキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリフェノキシシランが挙げられる。
【0073】
上記の二官能以上のシラン系アルコキサイドと併用することのできる一官能のシラン系アルコキサイドとしては、例えば、(3−アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、o−アクルロキシ(ポリエチレンオキシ)トリメチルシラン、アクルロキシトリメチルシラン、1,3−ビス(メタクリロキシ)−2−トリメチルシロキシプロパン、3−クロロ−2−トリメチルシロキシプロペン、(シクロヘキセニロキシ)トリメチルシラン、メタクリロキシエトキシトリメチルシラン、(メタクリロキシメチル)ジメチルエトキシシランが挙げられる。
【0074】
更に、シランアルコキサイド以外のゾルゲル反応性化合物として、例えば、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシラザン等のアミノシランを用いることもできる。これらのゾルゲル反応性化合物は単独で用いても、或いは2種類以上を複合して用いてもよい。
一般的に、ゾルゲル反応では、反応媒体の酸性度によって生成するゾルゲル膜の結合状態が異なることが知られている。具体的には、媒体が酸性である場合には、H+がアルコキシ基(=OR基)の酸素に親電子的に付加してアルコールとして脱離する。次に、水が求核的に攻撃し、ヒドロキシ基に置換される。この際、媒体中の水の含有率が少ないときには特にヒドロキシ基の置換反応が遅いので、シランに付いたアルコキシ基のすべてが加水分解する前に重縮合反応が生じ、比較的容易に、一次元的な線状高分子や二次元的な高分子が生成し易い。
【0075】
他方、媒体がアルカリ性であると、OH−による求核置換反応によりアルコキシ基が容易にシランアルコールに変化する。特に、同一シランに3個以上のアルコキシ基を有するケイ素化合物を用いた場合には、重縮合は3次元的に生じて、3次元の架橋結合の多い重合体、つまり強度の高いゾルゲル膜が生成される。また、反応も短時間で終了する。従って、母体となるトナー粒子の表面にゾルゲル膜を形成するには、アルカリ性の下でゾルゲル反応を進めることが好ましく、具体的には、pH9以上のアルカリ性下で反応を進めることが好ましい。これによって、より強度の高い、耐久性に優れたゾルゲル膜を形成することができる。
また、上記したゾルゲル反応は、基本的には室温でも進行するが、加熱によって反応が促進するので、必要に応じて反応系に熱を加えてもよい。
【0076】
次に、上記で述べた少なくとも少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着された状態の被覆層を、更にカップリング剤で処理する方法について説明する。カップリング剤は、一般的には、材料表面に露出した水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等の官能基と結合する金属アルコキシドや金属塩化物等の反応サイトと、材料表面に、疎水性、イオン性等を与えるアルキル基やイオン性基等の機能サイトが結合して構成された分子であると表現することができる。本発明では、このカップリング剤が材料表面の水酸基と反応する性質を利用し、上記したトナー粒子表面に少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着された状態の被覆層表面を形成した場合に、残存するシラノール基と反応させ、トナー粒子表面の水酸基をキャッピングすることで、高温高湿下においてもトナーの帯電能が良好な状態で保持されるようになることを図る。従って、本発明において使用する理想的なカップリング剤には、シラノール基と容易に反応し、且つ、自身は未反応金属アルコール基を残存させないような化合物であることが好ましい。従って、一般的に末端封止剤やキャッピング剤と呼ばれる化合物や、シリル化剤と呼ばれる化合物等もこの目的に当てはまる機能を有する。そこで、本発明ではこれらの化合物も広義にカップリング剤と定義する。
【0077】
次に、本発明において行うトナー粒子表面に形成されている被覆層のカップリング剤による処理方法について説明する。その手法は、一般的な、カップリング処理、キャッピング処理、シリル化処理手法によって行うことができる。例えば、pHを4.5〜5.5に調整した酸性アルコール溶液中にカップリング剤を滴下し、ついで、シラン化合物が被覆されたトナーを投入し、5分程度攪拌した後に、濾過及び洗浄を繰り返し、乾燥してトナー粒子を単離する方法や、カップリング剤をアルコール中に溶解し、粉体をツインコートのような強力ミキサー中で攪拌している上に、上記のカップリング剤アルコール溶液を吹き付け、その後、攪拌乾燥する方法等が挙げられる。前者の方法において酸性アルコール溶液を調製する場合には、ケイ素化合物を含む被覆層をトナー粒子表面に形成する際の反応にアルカリを用いた場合には、該アルカリを除去又は中和した後に同一系内に酸を加えて酸性に調整してもよいし、アルカリ溶液から単離し、改めて調製した酸性溶液中でカップリング処理をしてもよい。
【0078】
更に、本発明のトナーの製造方法においては、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着された状態の被覆層の形成時にカップリング剤を混入して、被覆層の形成と同時にカップリング処理を施すことも可能である。この場合には、被覆層を形成させるためのシリカモノマーの反応性がカップリング剤の反応性よりも高くなる組み合わせを選び、先ず、シリカモノマー同士の反応が進んで、トナー粒子表面に被覆層が形成され、その後に被覆層表面の未反応シラノールとカップリング剤が反応して被覆層表面にカップリング処理が施されるように構成することが好ましい。
【0079】
本発明で用いることのできるカップリング剤としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
シリカ系のカップリング剤としては以下のものが挙げられる。先ず、二官能以上のシリカ系カップリング剤としては、例えば、テトラメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、トリエトキシクロロシラン、ジ−t−ブトキシジアセトキシシラン、ヒドロキシメチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラキス(2−メタクリロキシエトキシシラン)シラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシラン、ビス(トリエトキシシリル)エチレン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)1,7−オクタジエン、2,2−(クロロメチル)アリルトリメトキシシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)トリメトキシシラン、1,3−ジビニルテトラエトキシジシロキサン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メタクリルアミドプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、1,7−オクタジエニルトリエトキシシラン、7−オクテニルトリメトキシシラン、テトラキス(エトキシエトキシ)シラン、テトラキス(2−メタクルロキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、メトクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0080】
一官能のシリカ系カップリング剤としては、例えば、(3−アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、o−アクルロキシ(ポリエチレンオキシ)トリメチルシラン、アクルロキシトリメチルシラン、1,3−ビス(メタクリロキシ)−2−トリメチルシロキシプロパン、3−クロロ−2−トリメチルシロキシプロペン、(シクロヘキセニロキシ)トリメチルシラン、メタクリロキシエトキシトリメチルシラン、(メタクリロキシメチル)ジメチルエトキシシラン等が挙げられる。
【0081】
更に、アリロキシトリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ジメチルアミノトリメチルシラン、ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、トリメチルシリルジフェニル尿素、ビス(トリメチルシリル)尿素、トリメチルシリルイミダゾールの如きいわゆるシリル化剤も本発明におけるカップリング剤として用いることができる。
【0082】
更に、チタン系カップリング剤としては、例えば、O−アリルオキシ(ポリエチレンオキシド)トリイソプロポキシチタネート、チタンアリルアセトアセテートトリイソプロポキサイド、チタンビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキサイド、チタンn−ブトキサイド、チタンクロライドトリイソプロポキサイド、チタンクロライドトリイソプロポキサイド、チタンジn−ブトキサイド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンクロライドジエトキサイド、チタンジイソプロポキサイド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタンジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)、チタンエトキサイド、チタン2−エチルヘキシオキシド、チタンイソブトキサイド、チタンイソプロポキサイド、チタンラクテート、チタンメタクリレートイソプロポキサイド、チタンメタクリルオキシエチルアセトアセテートトリイソプロポキサイド、(2−メタクリルオキシエトキシ)トリイソプロポキシチタネート、チタンメトキサイド、チタンメトキシプロポキサイド、チタンメチルフェノキサイド、チタンn−ノニルオキサイド、チタンオキシドビス(ペンタンジオネート)、チタンn−プロポキサイド、チタンステアリルオキサイド、チタンテトラキス(ビス2,2−(アリルオキシメチル)ブトキサイド)、チタントリイソステアロリルイソプロポキサイド、チタンメタクリレートメトキシエトキサイド、テトラキス(トリメチルシロキシ)チタン、チタントリス(ドデシルベンゼンスルフォネート)イソプロポキサイド、チタノセンジフェノキサイドが挙げられる。
【0083】
アルミ系カップリング剤としては、例えば、アルミニウム(III)n−ブトキサイド、アルミニウム(III)s−ブトキサイド、アルミニウム(III)s−ブトキサイドビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウム(III)t−ブトキサイド、アルミニウム(III)ジ−s−ブトキサイドエチルアセトアセテート、アルミニウム(III)ジイソプロポキサイドエチルアセトアセテート、アルミニウム(III)エトキサイド、アルミニウム(III)エトキシエトキシエトキサイド、アルミニウムヘキサフルオロペンタンジオネート、アルミニウム(III)3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロネート、アルミニウム(III)イソプロポキサイド、アルミニウム−9−オクタデセニルアセトアセテートジイソプロポキサイド、アルミニウム(III)2,4−ペンタンジオネート、アルミニウムフェノキサイド、アルミニウム(III)2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネートが挙げられる。
【0084】
尚、これらは単独で用いても、複数種用いてもよく、これらを適宜に組み合わせることや、用いる処理量によって、トナーの帯電量を適宜に調節することもできる。
カップリング剤の処理量については特に規定はないが、あまり多すぎるとカップリング剤同士が結合し、被覆膜を形成してしまい、定着性を損なうおそれがある。
【0085】
次に、本発明の少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層を形成するための母体となるトナー粒子の製造方法について説明する。
【0086】
重合法によって母体となるトナー粒子を製造する場合に用いることのできる重合性単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等のスチレン系単量体、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸−2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジアミノメチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ベンジル、クロトン酸、イソクロトン酸、アシッドホスホキシエチルメタクリレート、アッシドホスホオキシプロピルメタクリレート、アクロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクルロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸系単量体、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルエーテル、イソブチルエーテル、β−クロルエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、p−メチルフェニルエーテル、p−クロルフェニルエーテル、p−ブロムフェニルエーテル、p−ニトロフェニルビニルエーテル、p−メトキシフェニルビニルエーテル、ブタジエン等のビニルエーテル系単量体、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸モノブチル、マレイン酸モノブチル等の二塩基酸系単量体、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾールの如き複素環単量体等を挙げることができる。これらの単量体は単独で用いても、或いは2種以上を組み合わせて用いてもよく、好ましい特性が得られるように、任意に組み合わせることによって好適な重合体組成を選択することができる。
【0087】
更に、分散重合法で母体となるトナー粒子を作成する場合に用いることのできる重合溶媒(重合性単量体は溶解するが、その重合体は溶解しない溶媒)としては、重合によって得られる生成物(重合体)が重合の進行に伴って析出してくるものが使用できる。具体的には、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、ターシャリーブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、ターシャリーペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチルブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、2−オクタノール、2−エチル1−ヘキサノール等の直鎖若しくは分枝鎖の脂肪族アルコール類、ブタン、2−メチルブタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、デカン、ノナン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、p−メンタン、ビシクロヘキシル等の脂肪族炭化水素のほか、芳香族炭化水類、ハロゲン化炭化水素類、エーテル類、脂肪酸類、エステル類、含硫黄化合物類、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0088】
更に、分散重合において使用できる高分子分散剤としては、具体的には、例えば、ポリスチレン、ポリヒドロキシスチレン、ポリヒドロキシスチレン−アクリル酸エステル共重合体、ヒドロキシルスチレン−ビニルエーテル若しくはビニルエステルの共重合体、ポリメチルメタクリレート、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、スチレン−アクリル共重合体、ビニルエーテル共重合体、具体的には、例えば、ポリメチルビニルエーテル、ポリエチルビニルエーテル、ポリブチルビニルエーテル、ポリイソブチルビニルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、ポリビニルアセタール、セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、アルキル化セルロース、ヒドロキシアルキル化セルロース、具体的には、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、飽和アルキルポリエステル樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート樹脂、若しくはそれらの混合物、或いは上述の高分子化合物を形成する単量体を任意の比率で使用して形成可能な共重合体を挙げることがでる。
【0089】
本発明のトナーは、トナーの構成成分として、高分子量成分若しくはゲル成分を含有させることによって、オフセット防止等、溶融粘度特性を必要に応じて調節することが可能となる。このような成分の導入は、重合性の2重結合を、一分子当たり2個以上有する架橋剤を使用することによって達成される。かかる架橋剤としては、具体的には、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセロールアクロキシジメタクリレート、N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルフォンの化合物を挙げることができる。
【0090】
これらは、単独で、或いは2種類以上を適宜に混合して使用することができる。また、これらの架橋剤は、重合性単量体に予め混合しておくこともできるし、必要に応じて適宜重合の途中で添加することもできる。本発明において使用されるこれらの架橋剤の濃度としては、製造される重合体の分子量、分子量分布等を考慮して適宜調節することができるが、使用する重合性単量体の総量の0.01〜5質量%の範囲であることが好適である。
【0091】
又、粉砕法でトナー粒子を製造する場合に用いることのできる結着樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエンの如きスチレン置換体の単重合体;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体の如きスチレン系共重合体、ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂等が挙げられる。架橋されたスチレン系共重合体及び架橋されたポリエステル樹脂も好ましい結着樹脂である。
本発明のトナーにおいては、溶融時のオフセットを防止するために、結着樹脂にゲル分を含有させることもできる。
【0092】
母体となるトナー粒子を構成する着色剤としては、任意の顔料や染料を用いることができ、その両者を併用することもできる。用いられる黒色着色剤としては、例えば、カーボンブラック、磁性体、以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色されたものが利用される。
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、168、174、176、180、181、191が好適に用いられる。
【0093】
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が特に好ましい。
【0094】
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が特に好適に利用できる。
【0095】
これらの着色剤は、単独または混合して使用することもでき、更には固溶体の状態で用いることもできる。
着色剤の添加量は、磁性体を用いた場合には結着樹脂100質量部当たり40〜150質量部添加することが好ましく、その他の着色剤を用いた場合には、結着樹脂100質量部当たり5〜20質量部添加することが好ましい。
【0096】
また本発明のトナーは、磁性体を含有させて磁性トナーとすることもできる。この場合、磁性材料は着色剤の役割を兼ねることもできる。本発明のトナーに使用できる磁性体としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の如き酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属或いはこれらの金属のアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウム等の金属の合金及びその混合物が挙げられる。
【0097】
本発明のトナーに用いられる磁性体は、より好ましくは表面改質された磁性体を用いるとよい。この際に用いることのできる表面改質剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等を挙げることができる。これらの磁性体は、平均粒径が1μm以下、好ましくは0.1μm乃至0.5μmのものがよい。7.96×102kA/m(10kエスルテッド)印加での磁気特性が、保磁力(Hc)が1.59×103乃至2.39×104A/m(20乃至300エルステッド)、飽和磁化(σs)が50乃至200A・m2/kg(50乃至200emu/g)、残留磁化(σr)が2乃至20A・m2/kg(2乃至20emu/g)である磁性体を使用することが好ましい。
【0098】
上記した着色剤の添加量は、磁性体を用いた場合には、結着樹脂100質量部当たり40〜150質量部の範囲で添加することが好ましく、その他の着色剤を用いた場合には、結着樹脂100質量部当たり5〜20質量部の範囲で添加することが好ましい。
【0099】
本発明のトナーは、磁性粉を含有させて磁性トナーとすることもできる。この場合、下記に挙げるような磁性粉を使用することができる。この際に使用できる磁性粉としては、磁場の中におかれて磁化される物質が用いられ、例えば、鉄、コバルト、ニッケルの如き強磁性金属の微粒子、若しくは、マグネタイト、フェライトの如き、磁性酸化物の微粒子等が挙げられる。これらは、着色剤としての役割も兼ねることもできる。
【0100】
また、本発明のトナーには、荷電制御剤が必要に応じて添加されていてもよい。この場合には、従来公知のいかなる荷電制御剤でも用いることができるが、トナーの帯電スピードが速く、且つ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤を用いることが好ましい。具体的には、ネガ系の荷電制御剤としては、例えば、サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸等の金属化合物;スルホン酸、カルボン酸を側鎖にもつ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリークスアレーン等を用いることが好ましい。ポジ系の荷電制御剤としては、例えば、四級アンモニウム塩、該四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物等を用いることが好ましい。これらの荷電制御剤は、結着樹脂100質量部に対して、0.5乃至10質量部の範囲で添加することが好ましい。
【0101】
更に、本発明のトナーでは、特に、熱ロール定着器と組み合わせて使用したとき等における離型性を向上させるために、可塑剤、ワックス等の低温流動化成分を母体となるトナー粒子中に導入させることもできる。この際に使用できるワックスとしては、例えば、パラフィン、ポリオレフィン系ワックス及びこれらの変性物、例えば、酸化物やグラフト処理物の他、高級脂肪酸及びその金属塩、高級脂肪族アルコール、高級脂肪族エステル、脂肪族アミドワックス等が挙げられる。本発明のトナーにおいては、これらのワックスの中でも、環球法(JIS K2531)によって測定した軟化点が、30〜130℃の範囲内にあるものを使用することが好ましい。また、これらのワックス類を母体となるトナー粒子中に導入する場合には、微粉体状で添加するように構成することが好ましい。
【0102】
更に、本発明のトナーにおいては、トナー粒子に付与される帯電量を適宜なものに調節するために、シリカ、チタン、アルミナ等の一般的な無機微粒子や有機微粒子を、外添剤として補助的に用いてもよい。
【0103】
以上のようにして得られる本発明のトナーの粒子径は、特に制限されるものではないが、高い流動性を有するものとするためには、その個数平均粒子径が、0.1μm〜10.0μmと小粒径であり、更に、その個数分布の変動係数が20.0%以下のシャープな粒度分布を有するものであることが好ましい。この様な粒径、粒度分布を達成するためには、上記で述べたトナーの製造工程に加えて、所謂、分級操作を用いることが必要な場合もある。そこで、本発明においては、母体となるトナー粒子を製造する場合に、上記で述べた分散重合法を用いることがより好ましい。分散重合法とは、一般的に、重合性単量体は溶解するが、その重合体は溶解しない重合溶媒中で、高分子分散剤に代表される粒子安定剤の存在下で、該単量体を重合することにより粒子を製造する方法であり、粒度分布の揃った粒子が得られる方法として知られているトナーの製造方法である。更に、この分散重合法によれば、他の重合法に比べ、トナーとしてより好適な、1μm〜5μm程度の粒子径の小粒径の粒子を製造することができる。従って、本発明においては、この分散重合により母体となるトナー粒子を製造することがより好ましい。
【0104】
上記のような構成を有する本発明のトナーは、一成分系現像剤として用いることもできるし、キャリアと混合して二成分系現像剤として用いることもできる。本発明のトナーと磁性キャリアとを混合して二成分系現像剤を調製する場合には、その混合比率は、現像剤中のトナー濃度として、2〜15質量%の範囲内とすることが好ましい。即ち、トナー濃度が2質量%未満では画像濃度が低下し易く、一方、15質量%を超えるとカブリや機内飛散が発生し易い。
キャリアとしては、下記の磁気特性を有するものを使用することが好ましい。即ち、磁気的に飽和させた後の79.57kA/m(1000エルステッド)における磁化の強さが、30乃至300kA/m(30乃至300emu/cm3)のものを使用することが好ましい。使用するキャリアの磁化の強さが300kA/m(300emu/cm3)より大きい場合には、高画質なトナー画像が得られにくくなる。一方、30kA/m(30emu/cm3)未満であると、磁気的な拘束力が減少するためにキャリア付着を生じ易い。
【0105】
【実施例】
以下、本発明のトナー及びその製造方法の具体的な構成を、実施例に基づいて説明する。
[実施例1−1]
<母体となるトナー粒子の作成>
高速攪拌装置TK−ホモミキサーを備えた四つ口フラスコ中に、イオン交換水910質量部とポリビニルアルコール100質量部とを添加し、回転数1200rpmにて攪拌しながら、55℃に加熱して水系分散媒とした。一方、下記組成をアトライターを用いて3時間分散させた後、重合開始剤である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)3質量部を添加してモノマー分散液を調製した。
(モノマー分散液の組成)
・スチレン単量体 90質量部
・n−ブチルアクリレート単量体 30質量部
・カーボンブラック 10質量部
・サリチル酸シラン化合物 1質量部
・離型剤(パラフィンワックス155) 20質量部
【0106】
次に、得られたモノマー分散液を、上記の四つ口フラスコ内の分散媒中に投入し、上記の回転数を維持しつつ10分間の造粒を行なった。続いて、50rpmの攪拌下において、55℃で1時間、次に、65℃で4時間、更に、80℃で5時間の重合を行った。上記の重合の終了後、スラリーを冷却し、精製水で洗浄を繰り返すことにより分散剤を除去した。更に洗浄、乾燥を行なうことにより、ブラックトナーの母体となるトナー粒子を得た。日立製作所製S−4500形電界放出形走査型電子顕微鏡を用いて、トナーの5000倍の写真をとり、その写真から、累積300個以上になるように粒子径を測定し、数平均粒子径を算出したところ、8.30μmであった。更に、この結果から、個数平均粒子径の標準偏差(S.D)をコンピュータを用いて算出し、これよりこのトナーの個数分布の変動係数を以下の式によって算出した。その結果、このトナーの変動係数は38.4%であった。
【数3】
【0107】
<少なくともケイ素化合物の重縮合物を含む粒子から構成される被覆層の作成>
上記で得た母体となるブラックトナー粒子0.9質量部をメタノール4.1質量部に分散させた後、ケイ素化合物として、2.5質量部のテトラエトキシシランを溶解し、更に40質量部のメタノールを添加した。次いで、この溶液を、28質量%のNH4OH水溶液10質量部に対して100質量部のメタノールを混合したアルカリ性の溶液中に滴下しながら加え、室温にて48時間攪拌することによって、少なくともケイ素化合物の重縮合物を含む粒子から構成される膜をトナー粒子の表面に堆積させた。
【0108】
反応終了後に、得られた粒子を精製水で洗浄し、次いでメタノールで洗浄した後、粒子を濾別、乾燥することにより、少なくともケイ素化合物の重縮合物を含む粒子から構成される被覆層によって被覆されているトナーを得た。
得られたトナーの粒径を前述の方法で測定したところ、数平均粒径は8.33μmであった。このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約40nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察から、このトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認できた。
【0109】
更に、EPMAにより求めた上記のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は15.32質量%であった。同様にして、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率は0.03%であった。よって、トナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率の510.67倍であり、トナーの粒子内部にケイ素化合物の重縮合物は殆ど存在していなかった。
更に、このトナーを、5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナー粒子表面のケイ素原子の存在比率は11.44%であった。従って、界面活性剤による洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するケイ素原子の減少率は25.33%であった。よって、上記で得たトナーの粒子表面に形成されている被覆層は、粒状塊同士が固着された状態の層であることが確認された。
【0110】
続いて、上記のトナー5質量部と、粒径40μmのフェライトコアにシリコーン樹脂をコートしてなるキャリア粒子95質量部とを混合することによって2成分系現像剤を調製した。そして、この2成分系現像剤のトナーの帯電量を下記の方法によって測定したところ−32.60mC/kgであった。トナーの帯電量の測定方法は、次の通りである。
【0111】
上記の2成分系現像剤10gを50mlのポリビンに入れ、シェーカーにて、10分間振り、帯電させる。これをブローオフ粉体帯電量測定装置(東芝ケミカル社製 TB−200)で、メッシュは625メッシュ、吹き込みガスN2、圧力:9.81×10-2MPa(1kgf/cm2)で測定し、30秒後の値を、そのトナーの帯電量(mC/kg)とする。
更に、上記の現像剤を使用し、温度25℃、湿度30%Rhの環境下で、キヤノン製フルカラーレーザーコピア複写機CLC700改造機(プロセススピードを200mm/secにし、25℃/30%Rh環境における転写電流が400μAになるように改造した)を用いて画像を形成し、以下の要領でトナー性能評価を行なった。更に、同機により、3万枚の耐久試験を行なった。この耐久試験後の2成分系現像剤のトナーの帯電量を測定したところ、−32.10mC/kgであり、耐久によっても安定した帯電量が保持されていることが確認された。
【0112】
画像評価
(1)定着性
OHPシート上にベタ画像のコピーを行なった後、得られた画像の一部を切り取り、走査型顕微鏡を用いて1000倍で観察し、トナーの粒子形状が残存しているかどうかを評価した。その結果、粒子形状は観察されず、良好に定着されていることが確認できた。
【0113】
(2)転写効率
印字動作の途中、まだ転写動作が全て完了していない段階で装置の運転を停止させ、先ず、転写前の感光体上のトナー量(A)を測定し、次いで、転写を完了したときに、記録媒体に転写されずに感光体上に残ったトナー量(B)を測定し、下記式によって転写効率を算出した。
【数4】
その結果、本実施例のトナーの転写効率は98.5%であり、良好な状態で転写されていることが確認された。
【0114】
(3)耐久試験後のトナーの粒子表面の観察
耐久試験後におけるトナーの粒子表面の走査型顕微鏡写真観察を行なったところ、トナーの粒子表面少なくともケイ素化合物の重縮合物を含む粒子から構成される膜は破損しておらず、耐久試験前のトナーの粒子と同等の表面状態を保持していた。
【0115】
[実施例1−2]
<母体となるトナー粒子の作成>
以下の方法を用いて粉砕法によって母体となるトナー粒子を調製した。
・スチレン/ブチルアクリレート=80/20の共重合体 100質量部
・カーボンブラック 6質量部
・ジ−tert−ブチルサリチル酸のクロム錯塩 4質量部
上記組成を充分予備混合を行った後、溶融混練し、冷却後ハンマーミルを用いて、粒径約1〜2mm程度に粗粉砕した。次いで、エアージェット方式による微粉砕機で微粉砕した。更に、得られた微粉砕物をエルボジェット分級機を用いて分級した。実施例1−1と同様にして、日立製作所製S−4500形電界放出形走査型電子顕微鏡を用いて、トナーの5000倍の写真をとり、その写真から、累積300個以上になるように粒子径を測定し、数平均粒子径を算出したところ、8.9μmであった。
【0116】
<少なくともケイ素化合物の重縮合物を含む粒子から構成される被覆層の作成>
上記で得たブラックトナー粒子を母体となるトナー粒子に用いる以外は実施例1−1と同様にして、少なくともケイ素化合物の重縮合物を含む粒子から構成される被覆層で被覆されているトナーを得た。
得られたトナーの粒径を実施例1−1と同様の方法で測定したところ、数平均粒径は9.00μmであった。このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約40nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察からこのトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認できた。
【0117】
更に、EPMAにより求めた上記のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は15.24質量%であった。同様にして測定した、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率は0.02%であった。よって、トナー粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率の762.00倍であり、トナーの粒子内部にケイ素化合物の重縮合物は殆ど存在していなかった。
更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量は、11.66%であった。従って、界面活性剤洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するケイ素原子の減少率は23.49%であった。よって、上記で得たトナーの粒子表面に形成されている被覆層は、粒状塊同士が固着された状態の層であることが確認できた。
【0118】
続いて、得られたトナーを使用し、実施例1−1と同様にして、2成分系現像剤を調製した。そして、この2成分系現像剤のトナーの帯電量を測定したところ−33.40mC/kgであった。
更に、この現像剤を用いた場合の画像評価を、実施例1−1にて説明したと同様の方法で行なったところ、下記の通りの結果が得られた。この耐久試験後の2成分系現像剤のトナーの帯電量を測定したところ、−32.80mC/kgであり、耐久によっても比較的安定した帯電量が保持されていることが確認された。
【0119】
画像評価
(1)定着性
実施例1−1と同様にして評価した。その結果、粒子形状は観察されず、良好に定着されていることが確認できた。
【0120】
(2)転写効率
実施例1−1と同様にして転写効率を算出した。その結果、本実施例のトナーの転写効率は98.2%であり、良好な状態で転写されていることが確認された。
【0121】
(3)耐久試験後のトナーの粒子表面の観察
実施例1−1と同様にして耐久試験後におけるトナーの粒子表面の走査型顕微鏡写真観察を行なったところ、トナーの粒子表面の少なくともケイ素化合物の重縮合物を含む粒子から構成される膜は僅かに破損している部分が確認されたが、問題のない程度であった。
【0122】
[実施例1−3]
ポリビニルアルコール0.02質量部をエタノール/水=1:1(質量比)の混合溶液20質量部に溶解した混合溶媒中に、実施例1−1で母体として用いたトナー粒子と同じブラックトナー粒子を0.9質量部分散させて、次いで、ケイ素化合物として3−(メタクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン5質量部を溶解させた。続いて、水120質量部を徐々に滴下することによってケイ素化合物の溶解性を下げて、滴下終了後、更に5時間の攪拌を行なって、トナー粒子内に3−(メタクリルオキシ)プロピルトリメトキシシランを膨潤させて内在させた。
【0123】
次いで、この系内に28質量%のNH4OH水溶液を20質量部加えて、12時間室温にて攪拌することによって、トナー粒子表面でゾルゲル反応を進行させて、少なくともケイ素化合物の重縮合物を含む粒子から構成される膜を形成した。反応終了後に、得られた黒色粉末をエタノールで洗浄することにより、粒子内部の未反応ケイ素化合物を洗浄し、更に濾別、乾燥することにより、少なくともケイ素化合物の重縮合物を含む粒子で構成される膜で被覆されているトナーを得た。
【0124】
上記で得られたトナーの粒径を前述の方法で測定したところ、重量平均粒径は8.32μmであった。このトナーの粒子を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約40nm直径の微細な粒状凹凸が形成された膜が観察された。更に、このトナーの粒子断表面の透過型電子顕微鏡写真観察から、トナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認できた。
【0125】
更に、EPMAにより求めた上記のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は3.33質量%であった。同様にして測定したトナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率は0.25%であった。よって、トナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率の13.32倍であり、トナーの粒子内部におけるケイ素化合物の重縮合物は僅かであった。
更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面のケイ素原子の存在比率は、2.98%であった。従って、界面活性剤洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するケイ素原子の減少率は10.51%であった。よって、上記で得たトナーの粒子表面に形成されている被覆層は、粒状塊同士が固着された状態の層であることが確認された。
【0126】
上記のトナーを用いて、実施例1−1と同様にして2成分現像剤を調製した。この2成分系現像剤のトナーの帯電量を測定したところ、−30.2mC/kgであった。更に、この現像剤を用いた場合の画像評価を、実施例1−1にて説明したと同様の方法で行なったところ、下記の通りの結果が得られた。耐久試験後における2成分系現像剤のトナーの帯電量は、−30.18mC/kgであり、実施例1−1と同様に耐久によっても安定した帯電量が保持されていた。
【0127】
画像評価
(1)定着性
実施例1−1と同様にして評価した。その結果、粒子形状は観察されず、良好に定着されていることを確認した。
【0128】
(2)転写効率
実施例1−1と同様にして転写効率を算出した。その結果、本実施例のトナーの転写効率は98.4%であり、良好な状態で転写されていた。
【0129】
(3)耐久試験後のトナーの粒子表面の観察
実施例1−1と同様にして耐久試験後におけるトナーの粒子表面の走査型顕微鏡写真観察を行なったところ、トナーの粒子表面の少なくともケイ素化合物の重縮合物を含む粒子から構成される膜は破損しておらず、耐久試験前のトナーの粒子と同等の表面状態が保持されていた。
【0130】
[実施例1−4]
0.3質量%のドデシルスルホン酸ナトリウム水溶液120質量部に、ジブチルフタレート4質量部を超音波ホモジナイザーを用いて微分散させ、ジブチルフタレート乳化液を調製した。次いで、実施例1−1で母体として用いたと同じブラックトナー粒子を0.9質量部、0.3質量%のドデシルスルホン酸ナトリウム水溶液4.0質量部に分散させて、トナー粒子の分散液を調製した。その後、上記で得たジブチルフタレート乳化液を、トナー粒子の分散液に投入し、室温で2時間の攪拌を行なった。
【0131】
次いで、0.3質量%のドデシルスルホン酸ナトリウム水溶液100質量部に、ケイ素化合物として3−(メタクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン5質量部を入れて、超音波ホモジナイザーを用いて微分散させた分散液を、上記で得たトナー粒子の分散液に投入し、室温で4時間攪拌して、母体となるトナー粒子とケイ素化合物を分散させ、3−(メタクリルオキシ)プロピルトリメトキシシランをトナー粒子に吸収させて、トナー粒子中にケイ素化合物を導入した。
【0132】
その後、30質量%のNH4OH水溶液10質量部を投入し、室温で12時間攪拌し、トナー粒子表面でゾルゲル反応を行なって、トナー粒子表面に少なくともケイ素化合物の重縮合物を含む粒子から構成される膜を形成した。反応終了後、系内に多量のエタノールを投入して、粒子内部の未反応3−(メタクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン及びジブチルフタレートを除去した。次いで、得られたトナー粒子をエタノールで再度洗浄し、続いて精製水で洗浄し、濾別、乾燥することにより、本実施例のトナーを得た。
【0133】
得られたトナーの粒径を前述の方法で測定したところ、重量平均粒径は8.69μmであった。このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約40nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察からこのトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認された。
【0134】
更に、EPMAにより求めた上記のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は3.42質量%であった。同様にして、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率は0.25%であった。よって、トナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率の13.68倍であり、トナーの粒子内部のケイ素化合物の重縮合物の存在は僅かであった。更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面のケイ素原子の存在比率は3.04%であった。従って界面活性剤洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するケイ素原子の減少率は11.11%であった。よって、上記で得たトナーの粒子表面に形成されている被覆層は、粒状塊同士が固着された状態の層であることが確認できた。
【0135】
上記のトナーを用いて、実施例1−1と同様にして2成分現像剤を調製した。この2成分系現像剤のトナーの帯電量を測定したところ、−29.64mC/kgであった。この現像剤を用いた場合の画像評価を上記の実施例1−1にて説明したのと同様にして行なったところ、下記の通りの結果を得た。耐久試験後における2成分系現像剤のトナーの帯電量は、−29.60mC/kgであり、実施例1−1と同様に、耐久によっても帯電量が安定に維持されていた。
【0136】
画像評価
(1)定着性
実施例1−1と同様にして評価した。その結果、粒子形状は観察されず、良好に定着されていることを確認した。
【0137】
(2)転写効率
実施例1−1と同様にして転写効率を算出した。その結果、本実施例のトナーの転写効率は98.4%であり、良好な状態で転写されていた。
【0138】
(3)耐久試験後のトナーの粒子表面の観察
実施例1−1と同様にして耐久試験後におけるトナーの粒子表面の走査型顕微鏡写真観察を行なったところ、トナーの粒子表面の少なくともケイ素化合物の重縮合物を含む粒子から構成される膜は破損しておらず、耐久試験前のトナーの粒子と同等の表面状態が保持されていた。
【0139】
[実施例1−5]
酢酸イソアミル2質量部と、ケイ素化合物として、テトラエトキシシラン3.5質量部、メチルトリエトキシシラン0.5質量部とを混合した混合溶液を、0.3質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液30質量部に投入した後、超音波ホモジナイザーを用いて攪拌することにより、酢酸イソアミルとテトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシランの混合分散液を調製した。
次いで、実施例1−1で母体として用いたと同じブラックトナー粒子0.9質量部を、0.3質量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液30質量部に分散させた分散液に、上記で得た酢酸イソアミルとケイ素化合物との混合分散液を投入し、室温で2時間の攪拌を行なって、ケイ素化合物をトナー粒子中に導入した。
【0140】
次いで、28質量%NH4OH水溶液5質量部を混合し、室温で12時間攪拌することにより、ゾルゲル反応を行なって、トナーの粒子表面に少なくともケイ素化合物の重縮合物を含む粒子から構成される膜を形成した。次に、系内に多量のエタノールを投入し、未反応のテトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン及び酢酸イソアミルをトナー粒子の内部から除去し、更にエタノールで粒子を洗浄した後、精製水で洗浄し、濾別、乾燥することにより、トナーを得た。
【0141】
上記で得られたトナーの粒径を前述の方法で測定したところ、重量平均粒径は8.74μmであった。このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約40nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察からこのトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることを確認できた。
【0142】
更に、EPMAにより求めた上記のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は3.15質量%であった。同様にして、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率は0.33%であった。よって、トナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率の9.55倍であり、トナーの粒子内部のケイ素化合物の重縮合物の存在は僅かであった。更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面のケイ素原子の存在比率は2.98%であった。従って、界面活性剤洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するケイ素原子の減少率は5.40%であった。よって、上記で得たトナーの粒子表面に形成されている被覆層は、粒状塊同士が固着された状態の層であることが確認された。
【0143】
上記のトナーを用いて、実施例1−1と同様にして2成分現像剤を調製した。この2成分系現像剤のトナーの帯電量を測定したところ、−28.24mC/kgであった。この現像剤を用いた場合の画像評価を上記の実施例1−1にて説明したのと同様にして行なったところ、下記の通りの結果を得た。耐久試験後における2成分系現像剤のトナーの帯電量は、−28.21mC/kgであり、実施例1−1と同様に、耐久によっても帯電量が安定に維持されていた。
【0144】
画像評価
(1)定着性
実施例1−1と同様にして評価した。その結果、粒子形状は観察されず、良好に定着されていることを確認した。
【0145】
(2)転写効率
実施例1−1と同様にして転写効率を算出した。その結果、本実施例のトナーの転写効率は98.4%であり、良好な状態で転写されていた。
【0146】
(3)耐久試験後のトナーの粒子表面の観察
実施例1−1と同様にして耐久試験後におけるトナーの粒子表面の走査型顕微鏡写真観察を行なったところ、トナーの粒子表面の少なくともケイ素化合物の重縮合物を含む粒子から構成される膜は破損しておらず、耐久試験前のトナーの粒子と同等の表面状態が保持されていた。
【0147】
(4)飛び散り
ドラム上に形成されたトナー像の飛び散り具合を目視評価したところ、元のトナー粒子よりは若干飛び散りが多くなっていた。
【0148】
[実施例1−6]
実施例1−5で、トナー粒子の分散液にケイ素化合物の分散液を加えたところを、ケイ素化合物の分散液にトナー粒子の分散液を投入する方法に変えた以外は全く同様の方法を用いて、本実施例のトナーを得た。
【0149】
得られたトナーの粒径を前述の方法で測定したところ、重量平均粒径は8.49μmであり、この粒子の変動係数は、38.8%で元のトナー粒子とほぼ同じの変動係数を示した。このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約40nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察から、このトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認できた。
【0150】
更に、EPMAにより求めた上記のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は3.75質量%であった。同様にして、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率は0.31%であった。よって、トナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率の12.10倍であり、トナーの粒子内部のケイ素化合物の重縮合物の存在は僅かであった。更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面のケイ素原子の存在比率は3.63%であった。従って、界面活性剤洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在する比率の減少率は3.20%であった。よって、上記で得たトナーの粒子表面に形成されている被覆層は、粒状塊同士が固着された状態の層であることが確認された。
【0151】
上記のトナーを用いて、実施例1−1と同様にして2成分現像剤を調製した。この2成分系現像剤のトナーの帯電量を測定したところ、−31.80mC/kgであった。この現像剤を用いた場合の画像評価を上記の実施例1−1にて説明したのと同様にして行なったところ、下記の通りの結果を得た。耐久試験後における2成分系現像剤のトナーの帯電量は、−31.78mC/kgであり、実施例1−1と同様に、耐久によっても帯電量が安定に維持されていた。
【0152】
(1)定着性
実施例1−1と同様にして評価した。その結果、粒子形状は観察されず、良好に定着されていることを確認した。
【0153】
(2)転写効率
実施例1−1と同様にして転写効率を算出した。その結果、本実施例のトナーの転写効率は97.5%であり、良好な状態で転写されていた。
【0154】
(3)耐久試験後のトナーの粒子表面の観察
実施例1−1と同様にして耐久試験後におけるトナーの粒子表面の走査型顕微鏡写真観察を行なったところ、トナーの粒子表面の少なくともケイ素化合物の重縮合物を含む粒子から構成される膜は破損しておらず、耐久試験前のトナーの粒子と同等の表面状態が保持されていた。
【0155】
(4)飛び散り
ドラム上のトナー像の飛び散り具合を目視評価したところ、元の粒子と同程度の飛び散り具合であった。
【0156】
[実施例1−7]
実施例1−1で得られたトナーを1成分系現像剤として用い、市販の電子写真複写機FC−2(キヤノン社製)改造機に投入して、温度25℃、湿度30%Rhの環境下で、3万枚のベタしろ白画像による耐久試験行ない、実施例1−1と同様の評価を行ったところ、下記の通りの結果を得た。
【0157】
画像評価
(1)定着性
実施例1−1と同様にして評価した。その結果、粒子形状は観察されず、良好に定着されていることを確認した。
【0158】
(2)転写効率
実施例1−1と同様にして転写効率を算出した。その結果、本実施例のトナーの転写効率は98.6%であり、良好な状態で転写されていた。
【0159】
(3)耐久試験後のトナーの粒子表面の観察
実施例1−1と同様にして耐久試験後におけるトナーの粒子表面の走査型顕微鏡写真観察を行なったところ、トナー粒子表面少なくともケイ素化合物の重縮合物を含む粒子から構成される膜は破損しておらず、耐久試験前のトナーの粒子と同等の表面状態を保持していた。
【0160】
この1成分系現像剤として用いたトナーの帯電量を以下の方法で測定したところ、−30.70mC/kgであり、3万枚の耐久試験後の1成分系現像剤(トナー)の帯電量は−30.30mC/kgであり、耐久後においても帯電量が安定していた。
【0161】
上記のトナーの帯電量の測定方法は、次の通りである。
鉄粉キャリア(EFV−100/200)9.5gとトナー0.5gを50mlのポリビンに入れ、シェーカーにて、10分間振り、帯電させる。これをブローオフ粉体帯電量測定装置(東芝ケミカル社製 TB−200)で、メッシュは625メッシュ,吹き込みガスN2、圧力:9.81×10-2MPa(1kgf/cm2)で測定し、30秒後の値を、そのトナーの帯電量とする。
【0162】
[実施例1−8]
モノマー分散液として、実施例1−1で使用したモノマー分散液の組成中に、更に、ケイ素化合物として5質量部のテトラエトキシシランを加え、且つ、その系内にNH4OH水溶液を加えて、該モノマー分散液をアルカリ性にすること以外は実施例1−1の重合方法と同一の手法によって重合を行なった。この結果、重合トナーの製造時にトナー粒子中に内在されるケイ素化合物が、熱によりゾルゲル反応を起こし易くなる。その後、多量のエタノールで洗浄して粒子内部の未反応のテトラエトキシシランを除去し、更に濾別、乾燥することにより、少なくともケイ素化合物の重縮合物を含む粒子から構成される膜が設けられたトナーを得た。
【0163】
このトナーの粒径を前述の方法で測定したところ、重量平均粒径は8.65μmであった。このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約40nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察からこのトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認された。
【0164】
更に、EPMAにより求めた上記のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は10.12質量%であった。同様にして、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率は5.75%であった。よって、トナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率の1.76倍であり、トナーの粒子内部にも、ケイ素化合物の重縮合物が存在していることが確認された。更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面のケイ素原子の存在比率は9.84%であった。従って、界面活性剤洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するケイ素原子の減少率は2.77%であった。よって、上記で得たトナーの粒子表面に形成されている被覆層は、粒状塊同士が固着された状態の層であることが確認された。
【0165】
上記のトナーを用いて、実施例1−1と同様にして2成分現像剤を調製した。この2成分系現像剤のトナーの帯電量を測定したところ、−33.24mC/kgであった。この現像剤を用いた場合の画像評価を上記の実施例1−1にて説明したのと同様にして行なったところ、下記の通りの結果を得た。耐久試験後の2成分系現像剤のトナーの帯電量は−32.84mC/kgであり、耐久後においても安定していた。
【0166】
画像評価
(1)定着性
実施例1−1と同様にして評価した。その結果、部分的に現像剤の粒子形状が観察され、他の実施例の場合よりも定着性に劣ることが確認されたが、全体的には平滑であり実用上の問題はなかった。
【0167】
(2)転写効率
実施例1−1と同様にして転写効率を算出した。その結果、本実施例のトナーの転写効率は98.5%であり、良好な状態で転写されていた。
【0168】
(3)耐久試験後のトナーの粒子表面の観察
実施例1−1と同様にして耐久試験後におけるトナーの粒子表面の走査型顕微鏡写真観察を行なったところ、トナーの粒子表面の少なくともケイ素化合物の重縮合物を含む粒子から構成される膜は破損しておらず、耐久試験前のトナーの粒子と同等の表面状態が保持されていた。
【0169】
[実施例1−9]
実施例1−1において、ゾルゲル反応を行う際に、テトラエトキシシランの量を0.5質量部にした以外は実施例1−1と同様の方法により少なくともケイ素化合物の重縮合物を含む粒子から構成される膜が設けられたトナーを得た。
【0170】
このトナーの粒径を前述の方法で測定したところ、重量平均粒径は8.35μmであった。このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約40nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察からこのトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認された。
【0171】
更に、EPMAにより求めた上記のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は0.08質量%であった。同様にして、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率は0.01%であった。よって、トナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率の8.00倍であった。更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面のケイ素原子の存在比率は0.06%であった。従って、界面活性剤洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するケイ素原子の減少率は25.00%であった。よって、上記で得たトナーの粒子表面に形成されている被覆層は、粒状塊同士が固着された状態の層であることが確認された。
【0172】
上記のトナーを用いて、実施例1−1と同様にして2成分現像剤を調製した。この2成分系現像剤のトナーの帯電量を測定したところ、−26.01mC/kgであった。この現像剤を用いた場合の画像評価を上記の実施例1−1にて説明したのと同様にして行なったところ、下記の通りの結果を得た。耐久試験後の2成分系現像剤のトナーの帯電量は−25.51mC/kgであり、耐久後においても安定していた。
【0173】
画像評価
(1)定着性
実施例1−1と同様にして評価した。その結果、トナーの粒子形状は観察されず、良好に定着されていた。
【0174】
(2)転写効率
実施例1−1と同様にして転写効率を算出した。その結果、本実施例のトナーの転写効率は97.2%であり、良好な状態で転写されていた。
【0175】
(3)耐久試験後のトナーの粒子表面の観察
実施例1−1と同様にして耐久試験後におけるトナーの粒子表面の走査型顕微鏡写真観察を行なったところ、トナーの粒子表面の少なくともケイ素化合物の重縮合物を含む粒子から構成される膜は破損しておらず、耐久試験前のトナーの粒子と同等の表面状態が保持されていた。
【0176】
[実施例1−10]
実施例1−1において、ゾルゲル反応を行う際に、テトラエトキシシランの量を6.0質量部にした以外は実施例1−1と同様の方法により、少なくともケイ素化合物の重縮合物を含む粒子から構成される膜が設けられたトナーを得た。
【0177】
得られたトナーの粒径を前述の方法で測定したところ、重量平均粒径は8.79μmであった。このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約40nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察からこのトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認された。
【0178】
更に、EPMAにより求めた上記のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は10.33質量%であった。同様にして、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率は0.04%であった。よって、トナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率の258.25倍であり、多量のケイ素化合物の重縮合物が粒子表面に存在していることが確認された。更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面のケイ素原子の存在比率は、7.66%であった。従って、界面活性剤洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するケイ素原子の減少率は25.85%であった。よって、上記で得たトナーの粒子表面に形成されている被覆層は、粒状塊同士が固着された状態の層であることが確認された。
【0179】
上記のトナーを用いて、実施例1−1と同様にして2成分現像剤を調製した。この2成分系現像剤のトナーの帯電量を測定したところ、−33.59mC/kgであった。この現像剤を用いた場合の画像評価を上記の実施例1−1にて説明したのと同様にして行なったところ、下記の通りの結果を得た。耐久試験後の2成分系現像剤のトナーの帯電量は−32.99mC/kgであり、耐久後においても安定していた。
【0180】
画像評価
(1)定着性
実施例1−1と同様にして評価した。その結果、部分的に現像剤の粒子形状が観察され、他の実施例の場合よりも定着性に劣ることが確認されたが、全体的には平滑であり実用上の問題はなかった。
【0181】
(2)転写効率
実施例1−1と同様にして転写効率を算出した。その結果、本実施例のトナーの転写効率は98.7%であり、良好な状態で転写されていた。
【0182】
(3)耐久試験後のトナーの粒子表面の観察
実施例1−1と同様にして耐久試験後におけるトナーの粒子表面の走査型顕微鏡写真観察を行なったところ、トナーの粒子表面の少なくともケイ素化合物の重縮合物を含む粒子から構成される膜は破損しておらず、耐久試験前のトナーの粒子と同等の表面状態が保持されていた。
【0183】
[比較例1−1]
実施例1−1で得られたブラックのトナー粒子を、表面に被覆層を形成することなくそのままの状態で利用して、実施例1−1と同様にして2成分現像剤を調製した。この2成分系現現像剤のトナーの帯電量を測定したところ、−10.4mC/kgであった。この現像剤を用いた場合の画像評価を上記の実施例1−1にて説明したのと同様にして行なったところ、下記の通りの結果を得た。耐久試験後の2成分系現像剤のトナーの帯電量は−8.95mC/kgであり、耐久後の帯電量はやや減少していた。
【0184】
画像評価
(1)定着性
実施例1−1と同様にして評価した。その結果、粒子形状は観察されず、良好に定着されていることを確認した。
【0185】
(2)転写効率
実施例1−1と同様にして転写効率を算出した。その結果、本比較例のトナーの転写効率は、68.9%であり、実施例と比較すると劣っていた。
【0186】
[比較例1−2]
実施例1−1で得られたブラックのトナー粒子100質量部に対して、重量平均粒径40nmの疎水化シリカ微粉体5質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合することによってシリカ微粉末を流動化剤として外添してなるトナーを得た。
【0187】
上記で得られたトナーの粒径を前述の方法で測定したところ、重量平均粒径は8.33μmであった。このトナーを走査型顕微鏡写真で観察したところ、トナーの粒子表面に粒状物が観察されたものの、粒子−粒子間に多数の間隙が存在しており、膜状物とはなっていなかった。更に、このトナー断面の透過型電子顕微鏡写真観察をしたところ、トナーの粒子表面に所々粒子の存在や連続定な層が確認できるものの、連続的な層は確認されなかった。
【0188】
EPMAにより求めた上記のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は0.45質量%であった。同様にして、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率は0.00%であった。更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面のケイ素原子の存在比率は0.30%であった。従って、界面活性剤洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するケイ素原子の減少率は33.33%であった。よって、このトナーは界面活性剤洗浄によるケイ素の減少率が高いため、固着層とは認められなかった。
【0189】
上記のトナーを用いて、実施例1−1と同様にして2成分現像剤を調製した。この2成分系現像剤のトナーの帯電量を測定したところ、−29.8mC/kgであった。更に、この現像剤を用いた場合の画像評価を、実施例1−1にて説明したと同様の方法で行なったところ、下記の通りの結果が得られた。耐久試験後における2成分系現像剤のトナーの帯電量は、−26.4mC/kgであり、若干低下していた。
【0190】
画像評価
(1)定着性
実施例1−1と同様にして評価した。その結果、粒子形状は観察されず、良好に定着されていることを確認した。
【0191】
(2)転写効率
実施例1−1と同様にして転写効率を算出した。その結果、本比較例のトナーの転写効率は89.7%であり、実施例と比べると若干劣っていた。
【0192】
(3)耐久試験後のトナーの粒子表面の観察
実施例1−1と同様にして耐久試験後におけるトナーの粒子表面の走査型顕微鏡写真観察を行なったところ、外添シリカ粒子が、所々に遊離していたり、或いはトナー粒子に埋め込まれたりしており、シリカ粒子−シリカ粒子間の間隙の増加が認められた。
【0193】
表1に、実施例1−1〜1−10及び比較例1−1、1−2におけるトナー粒子及びトナーの特性をまとめて示した。表2に、実施例1−1〜1−10及び比較例1−1、1−2におけるトナーを用いた現像剤を使用した場合における画像評価試験の結果をまとめて示した。
【0194】
【表1】
【0195】
【表2】
【0196】
尚、表中の定着性は、OHPシート上に現像、定着した後に、走査型顕微鏡で1000倍に拡大して観察したときのものであり、下記のように評価した。
A:トナーの粒子形状を保っている部分が観察されない
B:トナーの粒子形状を保っている部分が数箇所に存在する
C:トナーの粒子形状を保っている部分が殆どである
【0197】
[実施例2−1]
<母体となるトナー粒子の作成>
高速攪拌装置TK−ホモミキサーを備えた四つ口フラスコ中に、イオン交換水910質量部とポリビニルアルコール100質量部とを添加し、回転数1200rpmにて攪拌しながら、55℃に加熱して水系分散媒とした。一方、下記組成をアトライターを用いて3時間分散させた後、重合開始剤である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)3質量部を添加してモノマー分散液を調製した。
(モノマー分散液の組成)
・スチレン単量体 85質量部
・n−ブチルアクリレート単量体 35質量部
・カーボンブラック 12質量部
・サリチル酸シラン化合物 1.5質量部
・離型剤 20質量部
【0198】
次に、得られたモノマー分散液を、上記の四つ口フラスコ内の分散媒中に投入し、上記の回転数を維持しつつ10分間の造粒を行なった。続いて、50rpmの攪拌下において、55℃で1時間、次に、65℃で4時間、更に、80℃で5時間の重合を行った。上記の重合の終了後、スラリーを冷却し、精製水で洗浄を繰り返すことにより分散剤を除去した。更に洗浄、乾燥を行なうことにより、ブラックトナーの母体となるトナー粒子を得た。日立製作所製S−4500形電界放出形走査型電子顕微鏡を用いて、トナーの5000倍の写真をとり、その写真から、累積300個以上になるように粒子径を測定し、数平均粒子径を算出したところ、8.30μmであった。更に、この結果から、個数平均粒子径の標準偏差(S.D)をコンピュータを用いて算出し、これより個数分布の変動係数を算出した。その結果、このトナー粒子における変動係数は38.4%であった。
【0199】
<少なくともケイ素化合物の重縮合物を含む粒子から構成される被覆層の作成>
上記で得た母体となるブラックトナー粒子0.9質量部をメタノール3.5質量部に分散させた後、ケイ素化合物として、3.0質量部のテトラエトキシシラン及び、0.5質量部のメチルトリメトキシシランを溶解し、更に40質量部のメタノールを添加した。次いで、この溶液を、28質量%のNH4OH水溶液10質量部に対して100質量部のメタノールを混合したアルカリ性の溶液中に滴下しながら加え、室温にて12時間攪拌することによって、少なくともケイ素化合物の重縮合物を含む粒子から構成される膜をトナー粒子の表面に堆積させた。
【0200】
次に、この反応系を50℃に加熱し、蒸発物を冷却して、系外に取り除くことで系内のアンモニアを除去し、その後、液量が加熱前と同程度になるようにメタノールを加え、更に、酢酸を徐々に加えていき、pH2となるまで加え続けた。次いで、この系にジメチルエトキシシラン0.2質量部を加えた後、30分間攪拌してカップリング処理を行った後、濾過及び洗浄を繰り返し、乾燥して本実施例のトナーを得た。
得られたトナーの粒径を前述の方法で測定したところ、数平均粒径は8.65μmであった。このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約45nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察からこのトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認できた。
【0201】
更に、EPMAにより求めた上記のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は16.32質量%であった。同様にして、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率は0.03質量%であった。よって、トナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率の544倍であり、トナーの粒子内部にケイ素化合物の重縮合物は殆ど存在していなかった。
更に、このトナーを、5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナー粒子表面のケイ素原子の存在比率は15.34質量%であった。従って、界面活性剤による洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するケイ素原子の減少率は6.00%であった。よって、上記で得たトナーの粒子表面に形成されている被覆層は、粒状塊同士が固着された状態の層であることを確認できた。
【0202】
続いて、上記のトナー5質量部と、粒径40μmのフェライトコアにシリコーン樹脂をコートしてなるキャリア粒子95質量部とを混合することによって2成分系現像剤を調製した。得られた2成分系現像剤のトナーの帯電量を温度25℃、湿度30%Rhの環境下で測定したところ、−32.46mC/kgであった。
【0203】
更に、上記で得た2成分系現像剤を使用し、温度25℃、湿度30%Rhの環境下で、実施例1−1で用いたと同じキヤノン製フルカラーレーザーコピア複写機CLC700の改造機を用いて画像を形成し、以下の項目について以下の要領でトナーの性能評価を行なった。同機により、3万枚の耐久試験を行なった。この耐久試験後の2成分系現像剤のトナーの帯電量を上記の方法で測定したところ、−31.86mC/kgであり、耐久によっても安定した帯電量が保持されていることが確認され、耐久後の画像も劣化は見られず、良好であった。その評価結果を表4に示した。
【0204】
画像評価
(1)定着性
実施例1−1と同様にして評価した。その結果、粒子形状は観察されず、良好に定着されていることが確認できた。評価結果を表4に示した。
【0205】
(2)転写効率
実施例1−1と同様にして転写効率を算出した。その結果、本実施例のトナーの転写効率は98.6%であり、良好な状態で転写されていることが確認された。
【0206】
(3)耐久試験後のトナーの粒子表面の観察
実施例1−1と同様にして耐久試験後におけるトナーの粒子表面の走査型顕微鏡写真観察を行なったところ、トナー粒子表面少なくともケイ素化合物の重縮合物を含む粒子から構成される膜は破損しておらず、耐久試験前のトナーの粒子と同等の表面状態を保持していた。
【0207】
更に上記と同様の評価を30℃、湿度80%Rhの環境下で行ったところ、耐久初期のトナーの帯電量は−32.22mC/kgであり、環境変化による影響は少なかった。3万枚耐久後のトナーの帯電量は−31.74mC/kgであり、高温高湿下においても、耐久前後で帯電量の大きな減少は見られず、得られる画像も安定しており、良好であった。
【0208】
[実施例2−2]
実施例2−1と同様の方法で、ケイ素化合物の重縮合物を含む粒子から構成された被覆層を設けた後、濾過及び洗浄を繰り返し、濾別した粒子を、アルコール40質量部に再分散し、実施例2−1と同様の方法でカップリング処理をして、本実施例のトナー粒子を得た。このトナーの粒径を前述の方法で測定したところ、数平均粒径は8.45μmであった。このトナー粒子を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナー粒子表面に微細な粒状凹凸を有する膜が観察された。更に、このトナー断面の透過型電子顕微鏡写真観察からこのトナー表面に被覆層が形成されていることが確認できた。更に、このトナー粒子の表面の走査型電子顕微鏡観察から、表面の微細な粒の直径を測定することによって求めたトナー粒子表面の膜中粒子の数平均粒子径は43nmであった。
【0209】
更に、EPMAにより求めた上記のトナー粒子の表面におけるケイ素原子の存在比率は15.98質量%であった。同様にして測定したトナー断面におけるケイ素原子の存在比率は0.02質量%であった。よって、トナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率の799倍であり、トナー粒子内部にシラン化合物の重縮合物は殆ど存在していなかった。
【0210】
更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面のケイ素原子の存在比率は15.39質量%であった。従って、界面活性剤洗浄前後におけるトナーの粒子表面におけるケイ素原子の減少率は3.69%であった。よって、上記で得たトナーの粒子表面に形成されている被覆層は、粒状塊同士が固着された層であることが確認できた。
【0211】
続いて、得られたトナーを使用し、実施例2−1と同様の方法で2成分系現像剤を調製し、この2成分系現像剤のトナーの帯電量を25℃、湿度30%Rhの環境下で測定したところ−31.15mC/kgであった。
更に、この現像剤を使用し、25℃、湿度30%Rhの環境下で、キヤノン製フルカラーレーザーコピア複写機CLC700の改造機を用いて画像を形成し、実施例2−1と同様の3万枚の耐久試験を行なった。この耐久試験後の2成分系現像剤のトナーの帯電量を測定したところ、−30.77mC/kgであり、耐久によっても安定した帯電量が保持されていることが確認された。耐久後の画像も劣化が見られず、良好であった。これらの結果を表4に示した。
【0212】
更に、同様の測定を、30℃、湿度80%Rhの環境下で行ったところ、耐久初期の帯電量は−30.86mC/kgと、環境変化による影響は少なかった。3万枚耐久後の帯電量は−30.35mC/kgであり、高温高湿下でも、耐久前後で帯電量の大きな減少は見られず画像も良好であった。
【0213】
[実施例2−3]
実施例2−1と同様の方法で、ケイ素化合物の重縮合物を含む粒子から構成された被覆層がトナー粒子表面に形成されたトナーを調製し、被覆層形成後、十分に洗浄し、濾別及び乾燥してトナー粒子を単離した。次いで、ジメチルエトキシシランの25%メタノール溶液を調整し、上記の方法で単離して得たトナー50質量部に対して、10質量部の割合で上記のメタノール溶液を吹き付けながら、ヘンシェルミキサーで20分間攪拌し、その後、流動乾燥してトナーを調製した。
このトナーの粒径を前述の方法で測定したところ、数平均粒径は8.82μmであった。このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約50nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察からこのトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認できた。
【0214】
更に、EPMAにより求めた上記のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は15.87質量%であった。同様にして、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率は0.03質量%であった。よって、トナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率の529倍であり、トナーの粒子内部にケイ素化合物の重縮合物は僅かであった。
更に、このトナーを、5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナー粒子表面のケイ素原子の存在比率は15.28質量%であった。従って、界面活性剤による洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するケイ素原子の減少率は3.72%であった。よって、上記で得たトナーの粒子表面に形成されている被覆層は、粒状塊同士が固着された状態の層であることが確認できた。
【0215】
続いて、得られたトナーを使用し、実施例2−1と同様の方法で2成分系現像剤を調製し、この2成分系現像剤のトナーの帯電量を25℃、湿度30%Rhの環境下で測定したところ−31.52mC/kgであった。
更に、この現像剤を使用し、25℃、湿度30%Rhの環境下で、キヤノン製フルカラーレーザーコピア複写機CLC700の改造機を用いて画像を形成し、実施例2−1と同様の3万枚の耐久試験を行なった。この耐久試験後の2成分系現像剤のトナーの帯電量を測定したところ、−31.13mC/kgであり、耐久によっても安定した帯電量が保持されていることが確認された。耐久後の画像も劣化が見られず、良好であった。
【0216】
更に、同様の測定を、30℃、湿度80%Rhの環境下で行ったところ、耐久初期の帯電量は−31.33mC/kgと、環境変化による影響は少なかった。3万枚耐久後の帯電量は−30.86mC/kgであり、高温高湿下でも、耐久前後で帯電量の大きな減少は見られず画像も良好であった。これらの結果を表4に示した。
【0217】
[実施例2−4]
実施例2−1の製造方法で、カップリング剤をチタンエトキサイドに変えた以外は同様の方法にして、チタンカップリング剤で処理された、ケイ素を含む被覆層を有するトナーを得た。
このトナーの粒径を前述の方法で測定したところ、数平均粒径は8.69μmであった。このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約46nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察から、このトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認できた。
【0218】
更に、EPMAにより求めた上記のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は13.55質量%であった。同様にして、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率は0.03質量%であった。よって、トナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率の452倍であり、トナーの粒子内部にケイ素化合物の重縮合物は僅かであった。
更に、このトナーを、5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナー粒子表面のケイ素原子の存在比率は12.56質量%であった。従って、界面活性剤による洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するケイ素原子の減少率は7.31%であった。よって、上記で得たトナーの粒子表面に形成されている被覆層は、粒状塊同士が固着された状態の層であることが確認できた。
【0219】
続いて、得られたトナーを使用し、実施例2−1と同様の方法で2成分系現像剤を調製し、この2成分系現像剤のトナーの帯電量を25℃、湿度30%Rhの環境下で測定したところ−33.21mC/kgであった。
更に、この現像剤を使用し、25℃、湿度30%Rhの環境下で、キヤノン製フルカラーレーザーコピア複写機CLC700の改造機を用いて画像を形成し、実施例2−1と同様の3万枚の耐久試験を行なった。この耐久試験後の2成分系現像剤のトナーの帯電量を測定したところ、−32.77mC/kgであり、耐久によっても安定した帯電量が保持されていることが確認された。耐久後の画像も劣化が見られず、良好であった。
【0220】
更に、同様の測定を、30℃、湿度80%Rhの環境下で行ったところ、耐久初期の帯電量は−33.00mC/kgと、環境変化による影響は少なかった。3万枚耐久後の帯電量は−32.48mC/kgであり、高温高湿下でも、耐久前後で帯電量の大きな減少は見られず画像も良好であった。これらの結果を表4に示した。
【0221】
[実施例2−5]
実施例2−1のトナーの製造方法において、カップリング剤をアルミニウム(III)n−ブトキサイドに変えた以外は同様の方法で、アルミニウムカップリング剤で処理された、ケイ素を含む被覆層で処理されたトナーを得た。
このトナーの粒径を前述の方法で測定したところ、数平均粒径は8.74μmであった。このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約48nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察からこのトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認できた。
【0222】
更に、EPMAにより求めた上記のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は12.54質量%であった。同様にして、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率は0.02質量%であった。よって、トナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率の627倍であり、トナーの粒子内部にケイ素化合物の重縮合物は僅かであった。
更に、このトナーを、5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナー粒子表面のケイ素原子の存在比率は11.57質量%であった。従って、界面活性剤による洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するケイ素原子の減少率は7.74%であった。よって、上記で得たトナーの粒子表面に形成されている被覆層は、粒状塊同士が固着された状態の層であることが確認できた。
【0223】
続いて、得られたトナーを使用し、実施例2−1と同様の方法で2成分系現像剤を調製し、この2成分系現像剤のトナーの帯電量を25℃、湿度30%Rhの環境下で測定したところ−33.25mC/kgであった。
更に、この現像剤を使用し、25℃、湿度30%Rhの環境下で、キヤノン製フルカラーレーザーコピア複写機CLC700の改造機を用いて画像を形成し、実施例2−1と同様の3万枚の耐久試験を行なった。この耐久試験後の2成分系現像剤のトナーの帯電量を測定したところ、−32.90mC/kgであり、耐久によっても安定した帯電量が保持されていることが確認された。耐久後の画像も劣化が見られず、良好であった。
更に、同様の測定を、30℃、湿度80%Rhの環境下で行ったところ、耐久初期の帯電量は−30.92mC/kgと、環境変化による影響は少なかった。3万枚耐久後の帯電量は−30.40mC/kgであり、高温高湿下でも、耐久前後で帯電量の大きな減少は見られず画像も良好であった。これらの結果を表4に示した。
【0224】
[実施例2−6]
実施例2−1の製造方法において、カップリング剤をメタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランに変えた以外は同様の方法で、シランカップリング処理された、ケイ素を含む被覆層で覆われたトナーを得た。
このトナーの粒径を前述の方法で測定したところ、数平均粒径は8.69μmであった。このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約48nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察からこのトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認できた。
【0225】
更に、EPMAにより求めた上記のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は16.54質量%であった。同様にして、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率は0.03質量%であった。よって、トナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率の551倍であり、トナーの粒子内部にケイ素化合物の重縮合物は僅かであった。
更に、このトナーを、5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナー粒子表面のケイ素原子の存在比率は15.67質量%であった。従って、界面活性剤による洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するケイ素原子の減少率は5.26%であった。よって、上記で得たトナーの粒子表面に形成されている被覆層は、粒状塊同士が固着された状態の層であることが確認できた。
【0226】
続いて、得られたトナーを使用し、実施例2−1と同様の方法で2成分系現像剤を調製し、この2成分系現像剤のトナーの帯電量を25℃、湿度30%Rhの環境下で測定したところ−31.41mC/kgであった。
更に、この現像剤を使用し、25℃、湿度30%Rhの環境下で、キヤノン製フルカラーレーザーコピア複写機CLC700の改造機を用いて画像を形成し、実施例2−1と同様の3万枚の耐久試験を行なった。この耐久試験後の2成分系現像剤のトナーの帯電量を測定したところ、−31.01mC/kgであり、耐久によっても安定した帯電量が保持されていることが確認された。耐久後の画像も劣化が見られず、良好であった。
【0227】
更に、同様の測定を、30℃、湿度80%Rhの環境下で行ったところ、耐久初期の帯電量は−33.76mC/kgと、環境変化による影響は少なかった。3万枚耐久後の帯電量は−33.23mC/kgであり、高温高湿下でも、耐久前後で帯電量の大きな減少は見られず画像も良好であった。これらの結果を表4に示した。
【0228】
[実施例2−7]
実施例2−1のカップリング剤をヘキサメチルジシラザンに変えた以外は実施例2−1と同様にして、目的のトナーを得た。このトナーの粒径を前述の方法で測定したところ、数平均粒径は8.82μmであった。このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約50nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察からこのトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認できた。
【0229】
更に、EPMAにより求めた上記のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は16.25質量%であった。同様にして、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率は0.03質量%であった。よって、トナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率の542倍であり、トナーの粒子内部にケイ素化合物の重縮合物は僅かであった。
更に、このトナーを、5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナー粒子表面のケイ素原子の存在比率は15.41質量%であった。従って、界面活性剤による洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するケイ素原子の減少率は5.17%であった。よって、上記で得たトナーの粒子表面に形成されている被覆層は、粒状塊同士が固着された状態の層であることが確認できた。
【0230】
続いて、得られたトナーを使用し、実施例2−1と同様の方法で2成分系現像剤を調製し、この2成分系現像剤のトナーの帯電量を25℃、湿度30%Rhの環境下で測定したところ−32.11mC/kgであった。
更に、この現像剤を使用し、25℃、湿度30%Rhの環境下で、キヤノン製フルカラーレーザーコピア複写機CLC700の改造機を用いて画像を形成し、実施例2−1と同様の3万枚の耐久試験を行なった。この耐久試験後の2成分系現像剤のトナーの帯電量を測定したところ、−31.69mC/kgであり、耐久によっても安定した帯電量が保持されていることが確認された。耐久後の画像も劣化が見られず、良好であった。
【0231】
更に、同様の測定を、30℃、湿度80%Rhの環境下で行ったところ、耐久初期の帯電量は−31.89mC/kgと、環境変化による影響は少なかった。3万枚耐久後の帯電量は−31.43mC/kgであり、高温高湿下でも、耐久前後で帯電量の大きな減少は見られず画像も良好であった。これらの結果を表4に示した。
【0232】
[実施例2−8]
カップリング剤としてジメチルエトキシシランを2.0質量部にした以外は実施例2−1と同様の方法で、目的のトナーを得た。
このトナーの粒径を前述の方法で測定したところ、数平均粒径は8.99μmであった。このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約54nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察からこのトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認できた。
【0233】
更に、EPMAにより求めた上記のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は17.02質量%であった。同様にして、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率は0.02質量%であった。よって、トナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率の851倍であり、トナーの粒子内部にもケイ素化合物の重縮合物が存在していることが確認された。
【0234】
更に、このトナーを、5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナー粒子表面のケイ素原子の存在比率は16.24質量%であった。従って、界面活性剤による洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するケイ素原子の減少率は4.58%であった。よって、上記で得たトナーの粒子表面に形成されている被覆層は、粒状塊同士が固着された状態の層であることが確認できた。
【0235】
続いて、得られたトナーを使用し、実施例2−1と同様の方法で2成分系現像剤を調製し、この2成分系現像剤のトナーの帯電量を25℃、湿度30%Rhの環境下で測定したところ−33.24mC/kgであった。
更に、この現像剤を使用し、25℃、湿度30%Rhの環境下で、キヤノン製フルカラーレーザーコピア複写機CLC700の改造機を用いて画像を形成し、実施例2−1と同様の3万枚の耐久試験を行なった。この耐久試験後の2成分系現像剤のトナーの帯電量を測定したところ、−32.65mC/kgであり、耐久によっても安定した帯電量が保持されていることが確認された。耐久後の画像も劣化が見られず、良好であった。
【0236】
更に、同様の測定を、30℃、湿度80%Rhの環境下で行ったところ、耐久初期の帯電量は−32.98mC/kgと、環境変化による影響は少なかった。3万枚耐久後の帯電量は−32.47mC/kgであり、高温高湿下でも、耐久前後で帯電量の大きな減少は見られず画像も良好であった。これらの結果を表4に示した。
【0237】
[実施例2−9]
カップリング剤としてジメチルエトキシシランを0.1質量部にした以外は実施例2−1と同様の方法で、目的のトナーを得た。
このトナーの粒径を前述の方法で測定したところ、数平均粒径は8.55μmであった。このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約44nm直径のnmオーダーの粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察からこのトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認できた。
【0238】
更に、EPMAにより求めた上記のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は15.35質量%であった。同様にして、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率は0.02質量%であった。よって、トナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率の768倍であった。
更に、このトナーを、5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナー粒子表面のケイ素原子の存在比率は14.46質量%であった。従って、界面活性剤による洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するケイ素原子の減少率は5.80%であった。よって、上記で得たトナーの粒子表面に形成されている被覆層は、粒状塊同士が固着された状態の層であることが確認できた。
【0239】
続いて、得られたトナーを使用し、実施例2−1と同様の方法で2成分系現像剤を調製し、この2成分系現像剤のトナーの帯電量を25℃、湿度30%Rhの環境下で測定したところ−32.54mC/kgであった。
更に、この現像剤を使用し、25℃、湿度30%Rhの環境下で、キヤノン製フルカラーレーザーコピア複写機CLC700の改造機を用いて画像を形成し、実施例2−1と同様の3万枚の耐久試験を行なった。この耐久試験後の2成分系現像剤のトナーの帯電量を測定したところ、−31.10mC/kgであり、耐久によっても安定した帯電量が保持されていることが確認された。耐久後の画像も劣化が見られず、良好であった。
【0240】
更に、同様の測定を、30℃、湿度80%Rhの環境下で行ったところ、耐久初期の帯電量は−30.89mC/kgと、環境変化による影響は少なかった。3万枚耐久後の帯電量は−30.40mC/kgであり、高温高湿下でも、耐久前後で帯電量の大きな減少は見られず画像も良好であった。これらの結果を表4に示した。
【0241】
[比較例2−1]
実施例2−1で母体として用いたブラックのトナー粒子を、表面に被覆層を形成することなくそのままの状態で利用して、実施例2−1と同様にして2成分現像剤を調製した。
続いて、得られたトナーを使用し、実施例2−1と同様の方法で2成分系現像剤を調製し、この2成分系現像剤のトナーの帯電量を25℃、湿度30%Rhの環境下で測定したところ−10.40mC/kgであった。
更に、この現像剤を使用し、25℃、湿度30%Rhの環境下で、キヤノン製フルカラーレーザーコピア複写機CLC700の改造機を用いて画像を形成し、実施例2−1と同様の3万枚の耐久試験を行なった。この耐久試験後の2成分系現像剤のトナーの帯電量を測定したところ、−8.95mC/kgであり、耐久後の帯電量はやや減少していた。
【0242】
更に、同様の測定を、30℃、湿度80%Rhの環境下で行ったところ、耐久初期の帯電量は−5.24mC/kgと、25℃、湿度30%Rhの環境下における初期帯電量に比べ低い値であり、帯電量の環境変動が観察された。3万枚耐久後の帯電量は−3.32mC/kgであり、高温高湿下においても、耐久による耐電量の減少が見られた。これらの結果を表4に示した。
【0243】
[比較例2−2]
実施例2−1で母体として用いたブラックのトナー粒子100質量部に対して、重量平均粒径40nmの疎水化シリカ微粉体5質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合することによってシリカ微粉末を流動化剤として外添してなるトナーを得た。
このトナーの粒径を前述の方法で測定したところ、重量平均粒径は8.33μmであった。このトナーを走査型顕微鏡写真で観察したところ、トナーの粒子表面に粒状物が観察されたものの、粒子−粒子間に多数の間隙が存在しており、膜状物とはなっていなかった。更に、このトナー断面の透過型電子顕微鏡写真観察からは、トナー粒子表面に所々粒子の存在や連続定な層が確認できるものの、連続的な層は確認されなかった。
【0244】
更に、EPMAにより求めた上記のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在比率は0.45質量%であった。同様にして、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在比率は0.00質量%であった。
更に、このトナーを、5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナー粒子表面のケイ素原子の存在比率は0.30質量%であった。従って、界面活性剤による洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するケイ素原子の減少率は33.33%であった。よって、このトナーは界面活性剤洗浄によるケイ素の減少が多いため、固着層とは認められなかった。
【0245】
続いて、得られたトナーを使用し、実施例2−1と同様の方法で2成分系現像剤を調製し、この2成分系現像剤のトナーの帯電量を25℃、湿度30%Rhの環境下で測定したところ−29.80mC/kgであった。
更に、この現像剤を使用し、25℃、湿度30%Rhの環境下で、キヤノン製フルカラーレーザーコピア複写機CLC700の改造機を用いて画像を形成し、実施例2−1と同様の3万枚の耐久試験を行なった。この耐久試験後の2成分系現像剤のトナーの帯電量を測定したところ、−26.40mC/kgであり、耐久によっても安定した帯電量が保持されていることが確認された。耐久後帯電量は若干減少していた。
【0246】
更に、同様の測定を、30℃、湿度80%Rhの環境下で行ったところ、耐久初期の帯電量は−19.45mC/kgと、25℃、湿度30%Rhの環境下における初期帯電量に比べ低い値であり、帯電量の環境変動が観察された。。3万枚耐久後の帯電量は−17.23mC/kgであり、高温高湿下においても、同様に耐久による耐電量の減少が見られた。これらの結果を表4に示した。
【0247】
表3に、実施例2−1〜2−9及び比較例2−1、2−2におけるトナー粒子及びトナーの特性をまとめて示した。表4に、実施例2−1〜2−9及び比較例2−1、2−2におけるトナーを用いた現像剤を使用した場合における画像評価試験の結果をまとめて示した。
【0248】
【表3】
【0249】
【表4】
【0250】
[実施例3−1]
<母体となるトナー粒子の作成>
先ず、以下のようにして母体となるトナー粒子を作成した。
・メタノール 95質量部
・スチレン 40質量部
・ポリビニルピロリドン 5質量部
・n−ブチルアクリレート 10質量部
・2,2−アゾビスイソブチロニトリル 2質量部
・カーボンブラック 2質量部
【0251】
上記の材料を充分に撹拌して、溶解、分散させた後、窒素置換した反応容器に入れ、窒素気流下で65℃に加熱し、20.0時間反応させた。得られた反応物を濾過し、濾過物をメタノール希釈し、充分に撹拌した後、これを再び濾過した。この希釈洗浄の操作を合計3回繰り返した。次に、得られた濾過物を真空乾燥機で充分に乾燥し、ブラックトナー粒子を得た。得られたブラックトナー粒子の数平均粒子径は5.04μmであり、標準偏差は0.61であった。よって、このブラックトナー粒子の個数分布の変動係数は12.10%であった。
【0252】
<少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成さ れる被覆層の作成方法>
上記の方法で得た母体となるブラックトナー粒子0.9質量部を、メタノール40質量部に分散せしめ、その後、2.5質量部のテトラエトキシシランを溶解させた。次いで、この溶液を、28%NH4OH水溶液10質量部に対して100質量部のメタノールを添加した混合溶液中に滴下しながら加え、室温で48時間攪拌することにより、ケイ素化合物の縮合物膜をトナー粒子表面に堆積させた。反応終了後、得られた粒子を、精製水、次いでメタノールで洗浄した後、粒子を濾別、乾燥することにより、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層で被覆された本実施例のブラックトナーを得た。
【0253】
得られたトナーについて粒度分布を測定したところ、数平均粒子径が5.45μmであり、標準偏差が1.09、及び、個数分布の変動係数が20.00%であり、小粒径のシャープな粒度分布を有するトナーであった。
このトナーの粒子表面を走査型電子顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約40nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察から、このトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認できた。
【0254】
更に、EPMAにより、前述の方法で求めたトナー表面におけるケイ素原子の存在比率は、10.70質量%であった。同様にして求めたトナー断面におけるケイ素原子の存在比率は0.03質量%であった。よって、トナー断面のケイ素原子に対するトナー表面のケイ素原子の比率は319.05であり、トナーの粒子内部にケイ素化合物の重縮合物は殆ど存在していないことがわかった。
更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量は8.54質量%であった。従って界面活性剤洗浄前後によるトナーの粒子表面に存在するシリカの変化率は20.14%であった。よって、このトナーには、粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層が形成されていることが確認された。
【0255】
上記のようにして得られたトナー5質量部と、粒径が40μmのフェライトコアにシリコーン樹脂をコートしたキャリア95質量部とを混合して2成分系現像剤を調製した。この2成分系現像剤の帯電量を実施例1−1と同様にして測定したところ、−46.36mC/kgであった。
【0256】
[評価]
上記で得られた2成分系現像剤について、以下の要領で、定着性、ドット再現性及び耐久性の各評価を行った。
(定着性)
OHPシート上にベタ画像のコピーを行い、得られた画像の一部を切り取り、走査型電子顕微鏡を用いて1000倍でその画像を観察し、トナーの粒子形状が残存しているかどうかで定着性を評価した。その結果、観察した画像上にはトナーの粒子形状の存在は観察されなかった。
【0257】
(ドット再現性)
25℃、湿度30%の環境下で、キヤノン製フルカラーレーザーコピア複写機CLC700を、プロセススピード200mm/sec、25℃/30%Rh環境下における転写電流を40μAになるように設定し、更に露光光源として、波長が680nmで出力が35mWである半導体レーザーを用いるよう改造した改造機を用いてオリジナル画像のコピーを行った。そして、被転写紙に転写する前のドラム上のトナー画像について顕微鏡観察を行い、ドット再現性を評価した。この結果、トナー画像のドット形状は全体に均一に再現されており、かぶりや飛び散りもなく、ドット再現性に優れていた。
【0258】
(耐久性)
続いて、上記のドット再現性試験に用いたと同様の装置を用いて、25℃、湿度30%の環境下で10万枚の画出しを行った。この耐久後におけるトナーの帯電量、及び、ドラム上に形成されたトナー画像について観察し、ドット再現性を評価した。この結果、帯電量は−43.26mC/kgであり、耐久前よりもやや帯電量が減少する傾向にあったが、実用上問題のない程度の減少度であった。10万枚目の画像形成後にドラム上のドットを評価したところ、耐久初期におけるよりもやや飛び散りが増加したものの、ドット形状は均一であり、ドット再現性に優れた画像が得られた。
【0259】
[実施例3−2]
実施例3−1で用いたのと同様のブラックトナー粒子を母体として用い、実施例3−1で使用した金属化合物の縮合物膜の構成成分であるテトラエトキシシラン2.5質量部を、テトラエトキシシラン2.0質量部、メチルトリエトキシシラン0.5質量部に代えた以外は実施例3−1と同様にして、本実施例のブラックトナーを作成した。得られたトナーの数平均粒子径は5.31μmであり、標準偏差は0.63であり、個数分布の変動係数は11.86%であった。
得られたトナーの粒子表面を走査型電子顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約40nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察から、このトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認できた。
【0260】
更に、EPMAにより前述の方法で求めたトナー表面におけるケイ素原子の存在比率は4.21質量%であった。同様に求めたトナー断面におけるケイ素原子の存在比率は0.06質量%であった。よって、トナー断面のケイ素原子に対するトナー表面のケイ素原子の比率は74.69であり、トナーの粒子内部にケイ素化合物の重縮合物は殆ど存在していなかった。
【0261】
更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量は3.20質量%であった。従って、界面活性剤洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するシリカの変化率は24.15%であった。よって、このトナーの粒子表面には、粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層が形成されていることが確認された。
上記の方法で得られたブラックトナーを用いて、実施例3−1と同様の方法で2成分系現像剤を作製し、実施例3−1と同様にして評価を行ったところ、以下の結果を得た。
【0262】
[評価]
上記で得られたトナー及び2成分系現像剤について、実施例3−1の場合と同様の要領で各評価を行った。
(初期帯電量)
実施例3−1と同様の方法で帯電量を測定したところ、−47.96mC/kgであった。
【0263】
(定着性)
OHPシート上にベタ画像のコピーを行い、得られた画像の一部を切り取り、走査型顕微鏡を用いて1000倍でその画像を観察し、トナーの粒子形状が残存しているかどうかで定着性を評価した。その結果、観察した画像上にはトナーの粒子形状の存在は観察されなかった。
【0264】
(ドット再現性)
ドラム上に形成されたトナー画像のドット形状は均一であり、かぶりや、飛び散りもなく、高いドット再現性を示した。
【0265】
(耐久性)
耐久後の帯電量は−46.69mC/kgであり、帯電量の減少は僅かであった。10万枚目の画像形成後にドラム上のドットを評価したところ、耐久初期におけるのと同等のドット再現性を示していた。
【0266】
[実施例3−3]
ポリビニルアルコール0.02質量部を、エタノール/水=1:1混合溶液20.0質量部中に溶解し、これに実施例3−1で母体として用いたのと同様のブラックトナー粒子0.9質量部を分散せしめ、次いで、3−(メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン5質量部を溶解させた。その後、水120.0質量部を徐々に滴下し、滴下終了後、5時間攪拌させることにより、上記アルコキシシランをブラックトナー粒子に膨潤せしめた。次いで、系内に、28%NH4OH溶液を20.0質量部加え、12時間室温にて攪拌することによってゾルゲル反応を行った。反応終了後、得られたブラックトナーをエタノールで洗浄することにより、粒子内部の未反応ケイ素化合物を洗浄、濾別し、その後、乾燥して本実施例のブラックトナーを得た。
【0267】
得られたトナーの数平均粒子径は5.43μmであり、標準偏差は0.77であり、個数分布の変動係数は14.48%であった。
このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約40nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察から、このトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認できた。
【0268】
更に、EPMAにより前述の方法で求めたトナー表面におけるケイ素原子の存在比率は5.82質量%であった。同様の方法で求めたトナー断面におけるケイ素原子の存在比率は0.44質量%であった。よって、トナー断面のケイ素原子の存在量に対するトナー表面のケイ素原子の比率は13.13であり、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることにより形成される被覆層は、トナー表面に形成されていることが確認できた。
【0269】
更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後、トナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量を測定したところ、4.53質量%であった。従って、界面活性剤洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するシリカの変化率は22.12%であった。よって、このトナーの粒子表面には、粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層が形成されていることが確認できた。
上記の方法で得られたブラックトナーを用いて、実施例3−1と同様の方法で2成分系現像剤を作製し、実施例3−1と同様にして評価を行ったところ、以下の結果を得た。
【0270】
[評価]
上記で得られたトナー及び2成分系現像剤について、実施例3−1の場合と同様の要領で各評価を行った。
(初期帯電量)
実施例3−1と同様の方法で帯電量を測定したところ、−45.86mC/kgであった。
【0271】
(定着性)
OHPシート上にベタ画像のコピーを行い、得られた画像の一部を切り取り、走査型顕微鏡を用いて1000倍でその画像を観察し、トナーの粒子形状が残存しているかどうかで定着性を評価した。その結果、粒子形状は一部観察されたものの、全体的には平滑な表面であった。
【0272】
(ドット再現性)
ドット形状は均一であり、かぶりや飛び散りもなく、充分なドット再現性を示した。
【0273】
(耐久性)
耐久後の帯電量は−44.48mC/kgであり、帯電量の減少は僅かであった。10万枚後のドラム上のトナー像を評価したところ、耐久前と同等のドット再現性を示していた。
【0274】
[実施例3−4]
0.3質量%のドデシルスルホン酸ナトリウム水溶液120.0質量部にジブチルフタレート4質量部を超音波ホモジナイザーを用いて微分散し、ジブチルフタレート乳化液を調製した。次いで、実施例3−1で母体として用いたブラックトナー粒子0.9質量部を、0.3質量%のドデシルスルホン酸ナトリウム4.0質量部に分散し、トナー粒子分散液を調製した。その後、ジブチルフタレート分散液と、トナー粒子分散液を混合し、室温で2時間攪拌した。次いで、0.3質量%ドデシルスルホン酸ナトリウム水溶液に3−(メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシランを超音波ホモジナイザーを用いて微分散させた分散液をトナー分散液に投入し、4時間室温で攪拌させた。その後、30質量%のNH4OH水溶液10質量部を投入し、室温で12時間攪拌し、ゾルゲル反応を行った。反応終了後、系内に多量のエタノールを投入し、粒子内部の未反応3−(メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン及びジブチルフタレートを除去した。次いで得られたトナーをエタノールで再度洗浄した後、精製水で洗浄し、濾別、乾燥後ブラックトナーを得た。
【0275】
得られたトナーの粒径を測定したところ、数平均粒子径が5.21μmであり、標準偏差は0.54であり、個数分布の変動係数は10.36%であった。このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約40nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察からこのトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認された。
【0276】
更に、EPMAにより前述の方法で求めたトナー表面のケイ素原子の存在比率は6.23質量%であった。同様に求めたトナー断面におけるケイ素原子の存在比率は0.30質量%であった。よって、トナー断面のケイ素原子に対するトナー表面のケイ素原子の比率は20.75であり、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることにより形成される被覆層はトナー表面に形成されていることが確認された。
更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面のケイ素原子の存在量は5.58%であった。従って、界面活性剤洗浄前後によるトナーの粒子表面に存在するシリカの変化率は10.46%であった。よってこのトナーは粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層が形成されていることが確認された。
上記の方法で得られたブラックトナーを用いて、実施例3−1と同様の方法で2成分系現像剤を作製し、実施例3−1と同様にして評価を行ったところ、以下の結果を得た。
【0277】
[評価]
上記で得られたトナー及び2成分系現像剤について、実施例3−1の場合と同様の要領で各評価を行った。
【0278】
(初期帯電量)
実施例3−1と同様の方法で帯電量を測定したところ、−47.55mC/kgであった。
【0279】
(定着性)
OHPシート上にベタ画像のコピーを行い、得られた画像の一部を切り取り、走査型顕微鏡を用い、1000倍で観察し、トナーの粒子形状が残存しているかどうかを評価した。その結果、粒子形状は一部観察されたものの、全体的には平滑な表面であった。
【0280】
(ドット再現性)
ドット形状は均一で、かぶり飛び散りもなく、ドット再現性に優れていた。
【0281】
(耐久性)
耐久後の帯電量は−46.87mC/kgであり、帯電量の減少はわずかであった。10万枚後のドラム上トナー像を評価したところ、耐久前と同等のドット再現性を示した。
【0282】
[実施例3−5]
酢酸イソペンチル2質量部と3−(メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン4質量部を混合した溶液を、0.3質量%ドデシルスルホン酸ナトリウム水溶液30質量部に投入した後、超音波ホモジナイザーを用いて酢酸イソペンチル及びメチルトリエトキシシラン分散液を調製した。次いで、実施例3−1で母体として用いたブラックトナー粒子0.9質量部を0.3質量%ドデシルスルホン酸ナトリウム水溶液30質量部に分散し、前述の酢酸イソペンチル及びメチルトリエトキシシラン分散液を投入し、室温で2時間攪拌した。次いで、28質量%NH4OH水溶液5質量部混合し、室温で12時間攪拌することによりゾルゲル反応を行った。次いで、系内に多量のエタノールを投入し、未反応のメチルトリエトキシシラン及び酢酸イソペンチルをトナー粒子内部より除去した。再度エタノールで粒子を洗浄した後、精製水で洗浄し、濾別、乾燥することによりブラックトナーを得た。
【0283】
得られたトナーの粒径を測定したところ、数平均粒子径が5.20μmであり、標準偏差は0.69であり、個数分布の変動係数は13.27%であった。このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約40nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察から、このトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認できた。
【0284】
更に、EPMAにより前述の方法で求めたトナー表面のケイ素原子の存在比率は5.99質量%であった。同様に求めたトナー断面におけるケイ素原子の存在比率は0.39質量%であった。よって、トナー断面のケイ素原子に対するトナー表面のケイ素原子の比率は15.36であり、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることにより形成される被覆層はトナー表面に形成されていることが確認された。
【0285】
更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面のケイ素原子の存在量は4.30%であった。従って、界面活性剤洗浄前後によるトナーの粒子表面に存在するシリカの変化率は28.22%であった。よってこのトナーは粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層が形成されていることが確認された。
上記の方法で得られたブラックトナーを用いて、実施例3−1と同様の方法で2成分系現像剤を作製し、実施例3−1と同様にして評価を行ったところ、以下の結果を得た。
【0286】
[評価]
上記で得られたトナー及び2成分系現像剤について、実施例3−1の場合と同様の要領で各評価を行った。
(初期帯電量)
実施例3−1と同様の方法で帯電量を測定したところ、−47.59mC/kgであった。
【0287】
(定着性)
OHPシート上にベタ画像のコピーを行い、得られた画像の一部を切り取り、走査型顕微鏡を用い、1000倍で観察し、トナーの粒子形状が残存しているかどうかを評価した。その結果、粒子形状は一部観察されたものの、全体的には平滑な表面であった。
【0288】
(ドット再現性)
ドット形状も均一で、かぶり飛び散りもなく、ドット再現性に優れていた。
【0289】
(耐久性)
耐久後の帯電量は−45.69mC/kgであり、帯電量の減少は僅かであった。10万枚後のドラム上トナー像を評価したところ耐久前と同等のドット再現性を示した。
【0290】
[実施例3−6]
実施例3−1のトナーの調製の際に、反応系内に5質量部の3−(メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシランを溶解する以外は同様の方法にて重合を行った後に、系内にNH4OH水溶液を加えてアルカリ性にし、その後多量のエタノールで洗浄することにより、粒子内部の未反応の3−(メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシランを除去し、次いで濾別、乾燥することにより、ブラックトナーを得た。
【0291】
得られたトナーの粒径を測定したところ、数平均粒子径が5.68μmであり、標準偏差は0.98μmであり、個数分布の変動係数は17.25%であった。このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約40nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察からこのトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認された。
【0292】
更に、EPMAにより前述の方法で求めたトナー表面のケイ素原子の存在比率は4.42質量%であった。同様に求めたトナー断面におけるケイ素原子の存在比率は0.12質量%であった。よって、トナー断面のケイ素原子に対するトナー表面のケイ素原子の比率は37.94であり、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることにより形成される被覆層はトナー表面に形成されていることが確認された。
【0293】
更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面のケイ素原子の存在量は3.38質量%であった。従って、界面活性剤洗浄前後によるトナーの粒子表面に存在するシリカの変化率は23.56%であった。よってこのトナーは粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層が形成されていることが確認された。
上記の方法で得られたブラックトナーを用いて、実施例3−1と同様の方法で2成分系現像剤を作製し、実施例3−1と同様にして評価を行ったところ、以下の結果を得た。
【0294】
[評価]
上記で得られたトナー及び2成分系現像剤について、実施例3−1の場合と同様の要領で各評価を行った。
【0295】
(初期帯電量)
実施例3−1と同様の方法で帯電量を測定したところ、−47.59mC/kgであった。
【0296】
(定着性)
OHPシート上にベタ画像のコピーを行い、得られた画像の一部を切り取り、走査型顕微鏡を用い、1000倍で観察し、トナーの粒子形状が残存しているかどうかを評価した。その結果、粒子形状は観察されなった。
【0297】
(ドット再現性)
ドットの形状は均一で、かぶり飛び散りもなく、ドット再現性に優れていた。
【0298】
(耐久性)
耐久後の帯電量は−46.32mC/kgであり、帯電量の減少はわずかであった。10万枚後のドラム上トナー像を評価したところ耐久前と同等のドット再現性を示した。
【0299】
[実施例3−7]
実施例3−3で行なったトナーの製造方法において、被覆層を形成するためのゾルゲル反応の後に行なう洗浄を水のみで行なうことにより、粒子内部の未反応アルコキシドを粒子内部に内存させたまま、再度水中に分散し、50℃に加熱することで、粒子内部までゾルゲル反応を進行させた以外は、実施例3−3と同様にして、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層を有するブラックトナーを作成した。
【0300】
得られたトナーの粒径は、数平均粒子径が6.89μmであり、標準偏差は1.05μmであり、個数分布の変動係数は15.24%であった。このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約40nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察からこのトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認された。
【0301】
更に、EPMAにより前述の方法で求めたトナー表面のケイ素原子の存在比率は6.32質量%であった。同様に求めたトナー断面におけるケイ素原子の存在比率は5.45質量%であった。よって、トナー断面のケイ素原子の比率に対するトナー表面のケイ素原子の比率は1.16であり、ケイ素化合物の重縮合物がトナーの比較的内部にまで存在していることがわかった。
【0302】
更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面のケイ素原子の存在量は4.99質量%であった。従って、界面活性剤洗浄前後によるトナーの粒子表面に存在するシリカの変化率は21.11%であった。よってこのトナーは粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層が形成されていることが確認された。
上記の方法で得られたブラックトナーを用いて、実施例3−1と同様の方法で2成分系現像剤を作製し、実施例3−1と同様にして評価を行ったところ、以下の結果を得た。
【0303】
[評価]
上記で得られたトナー及び2成分系現像剤について、実施例3−1の場合と同様の要領で各評価を行った。
【0304】
(初期帯電量)
実施例3−1と同様の方法で帯電量を測定したところ、−47.55mC/kgであった。
【0305】
(定着性)
粒子形状がやや多めに観察されたが、かろうじて問題ない程度であった。
【0306】
(ドット再現性)
ドット形状は均一でかぶり飛び散りもなく、ドット再現性に優れていた。
【0307】
(耐久性)
耐久後の帯電量は−46.98mC/kgであり、帯電量の減少はわずかであった。10万枚後のドラム上トナー像を評価したところ耐久前と同等のドット再現性を示した。
【0308】
[実施例3−8]
実施例3−2の製造方法において、テトラエトキシシラン及びメチルトリエトキシシランの量を夫々、10.0質量部、5質量部にした以外は同様にしてブラックトナーを得た。得られた粒子の数平均粒子径が6.55μmであり、標準偏差は0.85であり、個数分布の変動係数は12.98%であった。
このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約40nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察からこのトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認された。
【0309】
更に、EPMAにより前述の方法で求めたトナー表面のケイ素原子の存在比率は20.16質量%であった。同様に求めたトナー断面におけるケイ素原子の存在比率は0.19質量%であった。よって、トナー断面のケイ素原子の比率に対するトナー表面のケイ素原子の比率は107.91であり、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることにより形成される被覆層はトナー表面に形成されていることが確認された。
更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面のケイ素原子の存在量は16.09質量%であった。従って、界面活性剤洗浄前後によるトナーの粒子表面に存在するシリカの変化率は20.21%であった。よってこのトナーは粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層が形成されていることが確認された。
上記の方法で得られたブラックトナーを用いて、実施例3−1と同様の方法で2成分系現像剤を作製し、実施例3−1と同様にして評価を行ったところ、以下の結果を得た。
【0310】
[評価]
上記で得られたトナー及び2成分系現像剤について、実施例3−1の場合と同様の要領で各評価を行った。
(初期帯電量)
実施例3−1と同様の方法で帯電量を測定したところ、−45.23mC/kgであった。
【0311】
(定着性)
粒子形状が多く観察されたが、かろうじて問題ない程度であった。
【0312】
(ドット再現性)
ドット形状は均一であり、かぶり飛び散りもなく、ドット再現性に優れていた。
【0313】
(耐久性)
耐久後の帯電量は−45.24mC/kgであり、帯電量の減少はわずかであった。10万枚後のドラム上トナー像を評価したところ耐久前と同等のドット再現性を示した。
【0314】
[実施例3−9]
実施例3−2のトナーの製造方法において用いたテトラエトキシシラン及びメチルトリエトキシシランの量を、夫々、テトラエトキシラン0.9質量部、メチルトリエトキシシラン0.3質量部に代えた以外は同様にして、ブラックトナーを作成した。
得られたトナーは、数平均粒子径が5.33μmであり、標準偏差は0.99であり、個数分布の変動係数は18.57%であった。このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約40nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察からこのトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認された。
【0315】
更に、EPMAにより前述の方法で求めたトナー表面のケイ素原子の存在比率は1.01質量%であった。同様に求めたトナー断面におけるケイ素原子の存在比率は0.01質量%であった。よって、トナー断面のケイ素原子の比率に対するトナー表面のケイ素原子の比率は92.14であり、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることにより形成される被覆層はトナー表面に形成されていることが確認された。
【0316】
更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面のケイ素原子の存在量は0.92質量%であった。従って界面活性剤洗浄前後によるトナーの粒子表面に存在するシリカの変化率は9.24%であった。よってこのトナーは粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層が形成されていることが確認された。
上記の方法で得られたブラックトナーを用いて、実施例3−1と同様の方法で2成分系現像剤を作製し、実施例3−1と同様にして評価を行ったところ、以下の結果を得た。
【0317】
[評価]
上記で得られたトナー及び2成分系現像剤について、実施例3−1の場合と同様の要領で各評価を行った。
(初期帯電量)
実施例3−1と同様の方法で帯電量を測定したところ、−40.21mC/kgであった。
【0318】
(定着性)
粒子形状は確認されず、定着性は良好であった。
【0319】
(ドット再現性)
ドット形状は均一であり、かぶり飛び散りもなく、ドット再現性に優れていた。
【0320】
(耐久性)
耐久後の帯電量は−36.02mC/kgであり、帯電量の減少はわずかであった。10万枚後のドラム上トナー像を評価したところ耐久前よりややかぶりや飛び散りは増加したが、ドット形状は均一であり、ドット再現性は良好であった。
【0321】
[実施例3−10]
実施例3−1で行なったトナーの製造方法において、重合終了後に反応系を室温まで冷却した後、反応溶液20質量部に対し、メタノール20質量部を追加した溶液に、テトラエトキシシラン28質量部、及びメチルトリエトキシシラン7質量部を溶解させ、この溶液を、28%NH4OH水溶液10質量部に対し100質量部のメタノールを添加した溶液中に滴下しながら加え、室温で48時間攪拌することによりケイ素化合物の縮合物膜をトナー粒子に堆積させた。反応終了後得られた粒子を精製水、次いでメタノールで洗浄した後、粒子を濾別、乾燥することにより、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層で被覆されたトナーを得た。
【0322】
得られた粒子の数平均粒子径が5.29μmであり、標準偏差は0.71であり、個数分布の変動係数は13.42%であった。このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約40nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察からこのトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認できた。
【0323】
更に、EPMAにより前述の方法で求めたトナー表面のケイ素原子の存在比率は4.15質量%であった。同様に求めたトナー断面におけるケイ素原子の存在比率は0.05質量%であった。よって、トナー断面のケイ素原子に対するトナー表面のケイ素原子の比率は83.00であり、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることにより形成される被覆層はトナー表面に形成されていることが確認された。
【0324】
更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面のケイ素原子の存在量は3.23質量%であった。従って、界面活性剤洗浄前後によるトナーの粒子表面に存在するシリカの変化率は22.14%であった。よって、このトナーは粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層が形成されていることが確認された。
このトナーを1成分系現像剤として用い、市販の電子写真複写機FC−2(キヤノン社製)改造機に投入して、温度25℃、湿度30%Rhの環境下で実施例3−1と同様の評価を行っところ、以下の結果を得た。
【0325】
[評価]
上記で得られた1成分系現像剤について、実施例3−1の場合と同様の要領で各評価を行った。
(初期帯電量)
実施例3−1と同様の方法で帯電量を測定したところ、−47.89μq/であった。
【0326】
(定着性)
OHPシート上にベタ画像のコピーを行い、得られた画像の一部を切り取り、走査型顕微鏡を用い、1000倍で観察し、トナーの粒子形状が残存しているかどうかを評価した。その結果、粒子形状は観察されなかった。
【0327】
(ドット再現性)
ドット形状は均一であり、かぶり飛び散りもなくドット再現性に優れていた。
【0328】
(耐久性)
耐久後の帯電量は−45.14mC/kgであり、帯電量の減少はわずかであった。10万枚後の画像を評価したところ耐久前と同等のドット再現性を示していた。
【0329】
[実施例3−11]
母体となるトナー粒子を以下の要領で作成する以外は実施例3−2と同様にして、ブラックトナーを作成した。
<母体となるトナー粒子の作成>
高速撹拌装置TK−ホモミキサーを備えた反応容器に、イオン交換水890質量部とポリビニルアルコール95質量部を添加し、回転数を3600rpmに調整し、55℃に加熱せしめた。
・スチレン単量体 85質量部
・n−ブチルアクリレート単量体 34質量部
・カーボンブラック 10質量部
上記混合物をアトライターを用い3時間分散させた後、重合開始剤である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)3質量部を添加し、この分散物を前述の分散媒体中に投入し。回転数を維持しつつ、10分間造粒した。その後、50rpm、55℃1時間、65℃で4時間、更に80℃で5時間夫々重合を行った。
【0330】
重合終了後、スラリーを冷却し、精製水で洗浄を繰り返すことで分散剤を除去した。更に洗浄し、乾燥することで、母体となるブラックトナー粒子を得た。上記の方法で得られたトナー粒子は、分級を繰り返すことで、数平均粒子径10.24μmであり、標準偏差1.20であり、個数分布の変動係数が11.71%のトナー粒子として得た。このトナー粒子を母体として用い、実施例3−2と同様の方法で、該トナー粒子に、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着することによって形成される被覆層を設け、ブラックトナーを作成した。
【0331】
得られたトナーの個数平均粒子径は、10.60μmであり、標準偏差は1.38であり、個数分布の変動係数は13.03%であり、粒径の比較的大きなトナーとなった。
このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約40nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察からこのトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認された
【0332】
更に、EPMAにより前述の方法で求めたトナー表面のケイ素原子の存在比率は13.05質量%であった。同様に求めたトナー断面におけるケイ素原子の存在比率は0.04質量%であった。よって、トナー断面のケイ素原子に対するトナー表面のケイ素原子の比率は326.25であった。
更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面のケイ素原子の存在量は10.38%であった。従って、界面活性剤洗浄前後によるトナーの粒子表面に存在するシリカの変化率は20.45%であった。よって、このトナーは粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層が形成されていることが確認された。
【0333】
上記の方法で得られたトナーを用いて、実施例3−1と同様の方法で2成分系現像剤を作製し、実施例3−1と同様にして評価を行ったところ、以下の結果を得た。
【0334】
[評価]
上記で得られたトナー及び2成分系現像剤について、実施例3−1の場合と同様の要領で各評価を行った。
(初期帯電量)
実施例3−1と同様の方法で帯電量を測定したところ、−42.14mC/kgであった。
【0335】
(定着性)
粒子は観察されず、良好な定着性を示した。
【0336】
(ドット再現性)
飛び散り、かぶりが若干生じており、ドットは所々つながっている部分がみられ、形状は均一ではなかったが、画質としては問題なかった。
【0337】
(耐久性)
耐久後の帯電量は−41.53mC/kgであり、帯電量の減少は僅かであった。10万枚後のドラム上トナー像は耐久前と同程度であった。
【0338】
[実施例3−12]
実施例3−3で母体として用いたトナー粒子の分級条件を変更した以外は同様にして、ブラックトナーを作成した。得られたトナーの数平均粒子径は6.59μmであり、標準偏差は1.89であり、個数分布の変動係数は28.68%であった。
上記の方法で得られたトナーを用いて、実施例3−1と同様の方法で2成分系現像剤を作製し、実施例3−1と同様にして評価を行ったところ、以下の結果を得た。
【0339】
[評価]
上記で得られたトナー及び2成分系現像剤について、実施例3−1の場合と同様の要領で各評価を行った。
(初期帯電量)
実施例3−1と同様の方法で帯電量を測定したところ、−42.01mC/kgであった。
【0340】
(定着性)
粒子形状は観察されず、良好な定着性を示した。
【0341】
(ドット再現性)
ドット間に飛び散り、かぶりが若干発生しており、ドット形状が均一ではなく、画質はやや劣るものの、実質上問題はなかった。
【0342】
(耐久性)
耐久後の帯電量は−41.25mC/kgであり、帯電量の減少はわずかであった。10万枚後のドラム上トナー像は耐久前と同等であった。
【0343】
[比較例3−1]
実施例3−1で母体として用いた重合後のブラックトナー粒子を、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着することによって形成される被覆層を施すことなしに使用し、実施例3−1と同様にして2成分系現像剤を調製した。この現像剤評価を実施例3−1と同様にして評価した。
【0344】
[評価]
上記で得られた2成分系現像剤について、実施例3−1の場合と同様の要領で各評価を行った。
(初期帯電量)
実施例3−1と同様の方法で帯電量を測定したところ、−7.56mC/kgであった。
【0345】
(定着性)
OHPシート上にベタ画像のコピーを行い、得られた画像の一部を切り取り、走査型顕微鏡を用い、1000倍で観察し、トナーの粒子形状が残存しているかどうかを評価した。その結果、粒子形状は観察されなった。
【0346】
(ドット再現性)
画像濃度が極めて薄く、ドットは所々消えており、ドットは充分に再現されていなかった。
【0347】
(耐久性)
10枚の耐久を行おうとしたところ、耐久3千枚目でトナー同士が融着を起こし、耐久を進めることができなかった。
【0348】
[比較例3−2]
実施例3−6において、3−(メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシランをテトラエトキシシランに代え、NH4OHを加えないことでテトラエトキシシランの加水分解、重縮合反応を起こりにくくした以外は同様の方法でブラックトナーを得た。得られたトナーの数平均粒子径は5.10μmであり、標準偏差は0.79であり、個数分布の変動係数は15.49%であった。
【0349】
このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面には所々粒状物が確認されるものの、個々の粒子は互いに離れて存在しており、被覆層の形態にはなっていなかった。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察も同様で、被覆層は確認できなかった。これはおそらく、アルカリ処理をしなかったため、ケイ素化合物の加水分解反応が進まず、被覆層を形成するのに十分な重縮合物が形成されなかったためと思われる。
【0350】
更に、EPMAにより前述の方法で求めたトナー表面のケイ素原子の存在比率は0.03質量%であった。同様に求めたトナー断面におけるケイ素原子の存在比率は0.01質量%であった。よって、トナー断面のケイ素原子の比率に対するトナー表面のケイ素原子の比率は3.00であった。
更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面のケイ素原子の存在量は0.02質量%であった。従って、界面活性剤洗浄前後によるトナーの粒子表面に存在するシリカの変化率は33.33%であり、このトナーには十分な被覆層を形成しているとは判断できなかった。
上記の方法で得られたトナーを用いて、実施例3−1と同様の方法で2成分系現像剤を作製し、実施例3−1と同様にして評価を行ったところ、以下の結果を得た。
【0351】
[評価]
上記で得られたトナー及び2成分系現像剤について、実施例3−1の場合と同様の要領で各評価を行った。
(初期帯電量)
実施例3−1と同様の方法で帯電量を測定したところ、−10.25mC/kgと低い帯電量であった。
【0352】
(定着性)
OHPシート上にベタ画像のコピーを行い、得られた画像の一部を切り取り、走査型顕微鏡を用い、1000倍で観察し、トナーの粒子形状が残存しているかどうかを評価した。その結果、粒子形状は観察されなった。
【0353】
(ドット再現性)
全体的に画像濃度が薄く、ドットも所々消えていた。
【0354】
(耐久性)
10万枚の耐久試験を行おうとしたところ、耐久5千枚目で、トナーが現像器内で融着を起こし、現像困難となった。これは、本実施例のトナーではケイ素化合物の被覆層が形成されなかったためであると思われる。
【0355】
[比較例3−3]
実施例3−2で母体として用いたブラックトナー粒子100質量部に対して、平均粒径40nmの疎水化シリカ粒子を5質量部混合し、ヘンシェルミキサーで混合することにより、シリカ微粒子を上記トナー粒子表面に外添し、ブラックトナーを得た。このトナーの粒子径を測定したところ、数平均粒子径が5.04μmであり、標準偏差が0.98μmであり、個数分布の変動係数が19.44%であった。
【0356】
このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約40nm直径の微細な粒子の存在が確認されたが、粒子は個々に存在しており、被覆層を形成してはいなかった。このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察も同様の結果であった。更に、EPMAにより前述の方法で求めたトナー表面のケイ素原子の存在比率は0.54質量%であった。同様に求めたトナー断面におけるケイ素原子の存在比率は0.00質量%であった。
【0357】
更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面のケイ素原子の存在量は0.38質量%であった。従って、界面活性剤洗浄前後によるトナーの粒子表面に存在するシリカの変化率は30.18%であった。この洗浄によるケイ素濃度の変化率は少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着することによって形成される被覆層に比べ大きいものとなった。
上記の方法で得られたトナーを用いて、実施例3−1と同様の方法で2成分系現像剤を作製し、実施例3−1と同様にして評価を行ったところ、以下の結果を得た。
【0358】
[評価]
上記で得られたトナー及び2成分系現像剤について、実施例3−1の場合と同様の要領で各評価を行った。
(初期帯電量)
実施例3−1と同様の方法で帯電量を測定したところ、−44.12mC/kgであった。
【0359】
(定着性)
粒子は観察されなかった。
【0360】
(ドット再現性)
ドット形状は均一であり、飛び散りもなくドット再現性に優れていた。
【0361】
(耐久性)
耐久後の帯電量は−21.0mC/kgであり、帯電量の減少がみられた。10万枚後のドラム上トナー像を観察すると、飛び散りが多く発生しており、ドット形状も不均一で所々ドットがつながっている箇所が見られた。下記表5及び表6に実施例3−1〜3−12及び比較例3−1、3−2におけるトナー粒子及びトナーの特性をまとめて示し、表7に評価結果を示した。
【0362】
【表5】
【0363】
【表6】
【0364】
【表7】
【0365】
表7中の定着性は、OHPシート上にベタ画像を現像・定着後、トナーの粒子形状が残存しているかどうかを走査型顕微鏡を用いて1000倍で観察し、その結果を下記の基準で示した。
A:粒子は観察されない。
B:粒子形状を保った部分が数か所ある。
C:ほとんどの粒子は粒子形状を保っている。
【0366】
表7中のドット再現性は、25℃、湿度30%の環境下で、キヤノン製フルカラーレーザーコピア複写機CLC700改造機を用いてオリジナル画像のコピーを行い、被転写紙に転写する前及び10万枚耐久後のドラム上のトナー画像について顕微鏡観察を行い、その結果を下記の基準で示した。
【0367】
[実施例4−1]
<母体となるトナー粒子の作成>
先ず、本実施例に用いる母体となるトナー粒子を、次の如くして調製した。
高速攪拌装置TK−ホモミキサーを備えた四つ口フラスコ中に、イオン交換水820質量部とポリビニルアルコール97質量部を添加し、回転数を1000rpmに調節し、55℃に加熱せしめて分散媒を調製した。
【0368】
一方モノマー分散液は、下記のようにして調製した。
・スチレン重合体 60質量部
・n−ブチルアクリレート単量体 40質量部
・カーボンブラック 10質量部
・サリチル酸金属化合物 1質量部
・離型剤(パラフィンワックス155) 20質量部
上記組成からなる混合物をアトライターを用い3時間分散させた後、重合開始剤である2,2’−アゾビス(2,4―ジメチルバレロニトリル)3質量部を添加し、この分散物を上記で調製した分散媒中に投入し、回転数を維持しつつ、10分間造粒した。その後、50rpm、55℃で1時間、65℃で、4時間、更に、80℃で5時間維持して、重合を行った。
【0369】
重合終了後、スラリーを冷却し、精製水で洗浄を繰り返すことにより未反応物を除去した。更に洗浄し、乾燥を行うことでブラックトナー粒子を得た。該トナー粒子の粒径を測定したところ、ブラックトナー粒子の数平均粒子径は、6.01μmであった。更に、このトナー粒子のガラス転移点(Tg)を測定したところ、27.86℃であった。
【0370】
<被覆層(ゾルゲル膜)の作成方法>
上記の方法で得たブラックトナー粒子0.8質量部と、テトラエトキシシラン2.5質量部を、メタノール40質量部に分散及び溶解させ、トナー分散液を調製した。その後、28%NH4OH水溶液8質量部に対して100質量部のメタノールを添加した溶液中に、先に調製したトナー分散液中を滴下し、滴下終了後、室温で48時間攪拌することにより、加水分解及び重縮合してゾルゲル膜をトナー粒子表面に堆積させた。反応終了後、得られた粒子を、精製水、次いでメタノールで洗浄した後、粒子を濾別、乾燥してゾルゲル膜で被覆された本実施例のトナーを得た。
【0371】
得られたトナーの粒径を、実施例1−1の場合と同様にして測定したところ、数平均粒子径は6.35μmであった。
このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約40nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察から、このトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認できた。
【0372】
EPMAより求めたトナーの粒子表面における炭素原子、酸素原子、及びケイ素原子の存在量の総計を100%とした場合のケイ素原子の存在比率は、6.39質量%であった。更に、同様にして求めたトナーの粒子断面における炭素原子、酸素原子、及びケイ素原子の存在量の総計を100%とした場合のケイ素原子の存在比率は0.07質量%であった。よって、トナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量は、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在量の91.00倍であった。従って、ケイ素化合物の重縮合物は、大部分がトナーの粒子表面に存在し、トナーの粒子内部には殆ど存在していないことがわかった。
【0373】
更に、このトナーを、5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量は4.76質量%であった。従って、界面活性剤洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するシリカの減少率は25.46%であった。よって、このトナーのトナー粒子表面には、粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層が形成されていることが確認された。
【0374】
上記のようにして得られたトナーの、溶融開始温度をフローテスターを用いて測定したところ、53.95℃であった。更に、このトナーのガラス転移点(Tg)を求めたところ、35.71℃であった。よって、このトナーの溶融開始温度とガラス転移点の差は18.24℃であった。
【0375】
<評価>
上記で得られた本実施例のトナーについて、下記の方法で、耐ブロッキング性と定着性についての評価を行なった。尚、実施例および比較例のトナーの評価結果は、表9にまとめて示した。
(1)耐ブロッキング性
上記のトナー30gを30mlのサンプル瓶に入れ、50℃の恒温槽中に2日間放置した後、その瓶を傾けて流動性を観察することにより、ブロッキング試験を行った。この結果、トナーは良好な流動性を保持したままであり、耐ブロッキング性は良好であることが確認された。
【0376】
(2)定着性
上記で得られたトナー5質量部と、粒径が40μmのフェライトコアにシリコーン樹脂をコートしたキャリア95質量部とを混合して2成分系現像剤を調製した。この現像剤をCLC500を以下の条件に変えた改造機を用いて、OHPシート上にベタ画像を印刷した。この際の定着条件を以下に示した。
・ロール圧力=3.43×10-1MPa(3.5kg/cm2)
・ロールスピード70mm/sec.
・定着温度100℃
・プロセススピード200mm/sec
次に、得られた画像の一部を切り取り、走査型顕微鏡を用い、1000倍で観察し、トナー粒子の形状が残存しているかどうかによって定着性を評価した。観察は、お互いが完全に重複しない視野を5カ所観察することによって行なった。その結果、粒子形状は観察されなかった。
【0377】
[実施例4−2]
ポリビニルアルコール0.02質量部を、エタノール/水=1:1混合溶液中25質量部に溶解し、これに、実施例4−1で母体として用いたのと同様のブラックトナー粒子0.9質量部を分散せしめ、次いでヘキシルトリメトキシシラン5質量部を溶解させた。その後、水120質量部を徐々に滴下することによって、ヘキシルトリメトキシシランをブラックトナー粒子に吸収させ、滴下終了後、5時間攪拌させた。次いで、系内に28%NH4OH溶液20質量部を加え、12時間室温にて攪拌することにより、ゾルゲル反応(加水分解及び重縮合)を行った。反応終了後、得られた黒色の母体となるトナー粒子をエタノールで洗浄することにより、トナー内部の未反応アルコキサイドを洗浄し、濾別乾燥して、本実施例のブラックトナーを得た。得られたトナーの数平均粒子径を実施例4−1と同様の方法で測定したところ、6.78μmであった。
【0378】
このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約40nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察から、このトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認できた。
【0379】
EPMAより求めたトナーの粒子表面における炭素原子、酸素原子、及びケイ素原子の存在量の総計を100%とした場合のケイ素原子の存在比率は4.75質量%であった。同様にして求めたトナーの粒子断面における炭素原子、酸素原子、及びケイ素原子の存在量の総計を100%とした場合のケイ素原子の存在比率は0.26質量%であった。よって、トナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量は、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在量の18.05倍であった。従って、ケイ素化合物の重縮合物は、トナーの粒子内部に比較し、トナーの粒子表面に多く存在してることがわかった。
【0380】
更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量は、3.59質量%であった。よって、界面活性剤洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するシリカの減少率は、24.58%であった。従って、このトナーには、粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層が形成されていることが確認された。
【0381】
上記で得られたトナーの溶融開始温度を実施例4−1と同様の方法を用いて測定したところ、64.69℃であった。実施例4−1と同様の方法でこのトナーのガラス転移点(Tg)を求めたところ、34.55℃であった。よって、このトナーの溶融開始温度とガラス転移点の差は、30.14℃であった。
【0382】
更に、上記のトナーについて、ブロッキング試験を実施例4−1と同様の方法で行ったところ、トナーは良好な流動性を保持したままであり、耐ブロッキング性は良好であった。上記のトナーを用いて実施例4−1と同様の方法で2成分系現像剤を調製し、この2成分系現像剤を用いて、実施例4−1と同様の方法で定着性評価用の画像を作成し、定着性の評価を行った。その結果、粒子形状は観察されず、定着性は良好であった(表9参照)。
【0383】
[実施例4−3]
0.5質量%のドデシルスルホン酸ナトリウム水溶液100質量部に、ジブチルフタレート4質量部を超音波ホモジナイザーを用いて微分散し、ジブチルフタレート乳化液(分散液)を調製した。次いで、実施例4−1で母体として用いたと同様のブラックトナー粒子0.9質量部を、0.5質量%のドデシルスルホン酸ナトリウム6.0質量部に分散し、トナー粒子分散液を調製した。その後、ジブチルフタレート分散液と、トナー粒子分散液を混合し、室温で2時間攪拌し、ジブチルフタレートをブラックトナー粒子に導入した。
【0384】
次いで、0.5質量%ドデシルスルホン酸ナトリウム水溶液に、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン5質量部を超音波ホモジナイザーを用いて微分散させた分散液を、上記で調製したトナー分散液に投入し、5時間室温で攪拌させることによって、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシランをブラックトナー粒子に吸収させた。その後、30質量%のNH4OH水溶液10質量部を投入し、室温で12時間攪拌し、ブラックトナー粒子表面においてゾルゲル反応を行った。
【0385】
反応終了後、系内に多量のエタノールを投入し、トナー内部の未反応(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシランおよびジブチルフタレートを除去した。次いで、得られたトナー粒子をエタノールで再度洗浄した後、精製水で洗浄し、濾別、乾燥して、本実施例のブラックトナーを得た。得られたトナーの数平均粒子径を実施例4−1と同様にして測定したところ、6.89μmであった。
【0386】
このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約40nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察から、このトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認できた。
【0387】
EPMAより求めたトナーの粒子表面における、炭素原子、酸素原子、及びケイ素原子の存在量の総計を100%とした場合のケイ素原子の存在比率は5.15質量%であった。又、同様に求めたトナーの粒子断面における炭素原子、酸素原子、及びケイ素原子の存在量の総計を100%とした場合のケイ素原子の存在比率は0.19質量%であった。よって、トナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量は、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在量の27.85倍であった。従って、ケイ素化合物の重縮合物は、トナーの粒子内部に比較し、トナーの粒子表面に多く存在してることがわかった。
【0388】
更に、このトナーを、5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量は、4.61質量%であった。従って、界面活性剤洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するシリカの減少率は10.56%であった。よって、このトナーの粒子表面には、粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層が形成されていることが確認された。
【0389】
上記で得られたトナーの溶融開始温度を実施例4−1と同様の方法を用いて測定したところ、57.64℃であった。実施例4−1と同様の方法でこのトナーのガラス転移点(Tg)を求めたところ、33.08℃であった。よって、このトナーの溶融開始温度とガラス転移点の差は24.56℃であった。
【0390】
更に、上記のトナーのブロッキング試験を実施例4−1と同様の方法で行ったところ、トナーは良好な流動性を保持したままであり、耐ブロッキング性は良好であった。上記のトナーを用いて実施例4−1と同様の方法で2成分系現像剤を調製し、この2成分系現像剤を用いて、実施例4−1と同様の方法で定着性評価用の画像を作成し、定着性の評価を行った。その結果、粒子形状は観察されず、定着性は良好であった(表9参照)。
【0391】
[実施例4−4]
酢酸イソプロピル2.3質量部と(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン4質量部を混合した溶液を、0.5質量%ドデシルスルホン酸ナトリウム水溶液50質量部に投入した後、T.Kホモミクサーで5000回転で30分間処理をした後、コスモ計装(株)社製、ナノマイザーシステムLA−30Cを用い、処理圧力1300kg/cm2、1パスの条件で、酢酸イソプロピルおよび(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン分散液を調製した。
【0392】
次いで、実施例4−1で母体として用いたと同様のブラックトナー粒子0.9質量部を、0.5質量%ドデシルスルホン酸ナトリウム水溶液40質量部に分散させた分散液に、上記で作製した酢酸イソプロピルおよび(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン分散液を投入し、室温で2時間攪拌した。次いで、28質量%NH4OH水溶液を8質量部入れて混合し、室温で12時間攪拌することにより、ゾルゲル反応を行った。次いで、系内に多量のエタノールを投入し、未反応の(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシランおよび酢酸イソプロピルをトナー粒子内部より除去した。更に、再度エタノールでトナーを洗浄した後、精製水で洗浄し、濾別、乾燥することにより、本実施例のブラックトナーを得た。得られたトナーの数平均粒子径を実施例4−1と同様にして測定したところ、6.57μmであった。
【0393】
このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約40nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察から、このトナーの粒子表面には被覆層が形成されていることが確認できた。
【0394】
EPMAより求めたトナーの粒子表面における炭素原子、酸素原子、及びケイ素原子の存在量の総計を100%とした場合のケイ素原子の存在比率は3.91質量%であった。同様に求めたトナーの粒子断面における炭素原子、酸素原子、及びケイ素原子の存在量の総計を100%とした場合のケイ素原子の存在比率は0.13質量%であった。よって、トナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量は、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在量の29.26倍であった。従って、ケイ素化合物の重縮合物は、トナーの粒子内部に比較し、トナーの粒子表面に多く存在してることがわかった。更に、このトナーを、5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量は、3.12質量%であった。従って、界面活性剤洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するシリカの減少率は20.14%であった。よって、このトナーは、粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層が形成されていることが確認された。
【0395】
上記で得られたトナーの溶融開始温度を実施例4−1と同様の方法を用いて測定したところ、56.24℃であった。実施例4−1と同様の方法でこのトナーのガラス転移点(Tg)を求めたところ、33.60℃であった。従って、このトナーの溶融開始温度とガラス転移点の差は22.64℃であった。
【0396】
更に、上記のトナーのブロッキング試験を実施例4−1と同様の方法で行ったところ、トナーは良好な流動性を保持したままであり、耐ブロッキング性は良好であった。又、上記のトナーを用いて実施例4−1と同様の方法で2成分系現像剤を調製し、この現像剤を用いて実施例4−1と同様の方法で定着性評価用の画像を作成し、定着性の評価を行った。その結果、粒子形状は観察されず定着性は良好であった(表9参照)。
【0397】
[実施例4−5]
実施例4−1のトナーの製造方法で用いたテトラエトキシシランの処方量を5.0質量部に代えた以外は実施例4−1と同様の方法を用いて、ゾルゲル膜被覆トナーを得た。得られたトナーの数平均粒子径を実施例4−1と同様にして測定したところ、6.59μmであった。
【0398】
このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約40nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察からこのトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認できた。
EPMAより求めたトナーの粒子表面における炭素原子、酸素原子、及びケイ素原子の存在量の総計を100%とした場合のケイ素原子の存在比率は19.73質量%であった。同様に求めたトナーの粒子断面における炭素原子、酸素原子、及びケイ素原子の存在量の総計を100%とした場合のケイ素原子の存在比率は0.02質量%であった。よって、トナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量は、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在量の873.66倍であった。従って、ケイ素化合物の重縮合物は、大部分がトナーの粒子表面に存在し、トナーの粒子内部には殆ど存在していないことがわかった。
【0399】
更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量は15.87質量%であった。従って、界面活性剤洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するシリカの減少率は19.56%であった。よって、このトナーは、粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層が形成されていることが確認された。
【0400】
上記で得られたトナーの溶融開始温度を実施例4−1と同様の方法を用いて測定したところ、67.72℃であった。実施例4−1と同様の方法でこのトナーのガラス転移点(Tg)を求めたところ、33.48℃であった。よって、このトナーの溶融開始温度とガラス転移点の差は34.24℃であった。
【0401】
更に、上記のトナーのブロッキング試験を実施例4−1と同様の方法で行ったところ、トナーは良好な流動性を保持したままであり、耐ブロッキング性は良好であった。上記のトナーを用いて実施例4−1と同様の方法で2成分系現像剤を調製し、この現像剤を用いて実施例4−1と同様の方法で定着性評価用の画像を作成し、定着性の評価を行った。その結果、一視野中に平均5.5個の粒子が観察されたが、粒子の殆どは良好に定着していた(表9参照)。
【0402】
[実施例4−6]
実施例4−5のトナーの製造方法でゾルゲル膜の形成時に用いたテトラエトキシラン5質量部に加えて、トリメトキシシラン2質量部を更に用いた以外は実施例4−5と同様にしてゾルゲル膜で被覆された本実施例のブラックトナーを得た。得られた粒子の数平均粒子径を実施例4−1と同様にして測定したところ、6.82μmであった。
このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約40nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察からこのトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認できた。
【0403】
EPMAより求めたトナーの粒子表面における炭素原子、酸素原子、及びケイ素原子の存在量の総計を100%とした場合のケイ素原子の存在比率は12.79質量%であった。同様に求めたトナーの粒子断面における炭素原子、酸素原子、及びケイ素原子の存在量の総計を100%とした場合のケイ素原子の存在比率は0.06質量%であった。よって、トナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量は、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在量の221.65倍であった。従って、ケイ素化合物の重縮合物は、その大部分がトナーの粒子表面に存在し、トナーの粒子内部には殆ど存在していないことがわかった。更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量は9.71質量%であった。従って、界面活性剤洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するシリカの減少率は24.10%であった。よって、このトナーは粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層が形成されていることが確認できた。
【0404】
上記のようにして得られたトナーの溶融開始温度を実施例4−1と同様の方法を用いて測定したところ、71.41℃であった。実施例4−1と同様の方法でこのトナーのガラス転移点(Tg)を求めたところ、33.52℃であった。よって、このトナーの溶融開始温度とガラス転移点の差は37.89℃であった。
【0405】
更に、上記のトナーのブロッキング試験を実施例4−1と同様の方法で行ったところ、トナーは良好な流動性を保持したままであり、耐ブロッキング性は良好であった。上記のトナーを用いて実施例4−1と同様の方法で2成分系現像剤を調製し、この現像剤を用いて実施例4−1と同様の方法で定着性評価用の画像を作成し、定着性の評価を行った。その結果、一視野中に平均6.3個の粒子形状が観察されたが、粒子の殆どは良好に定着していた(表9参照)。
【0406】
[実施例4−7]
実施例4−1のトナーの調製の際に、モノマー分散液中に5質量部の(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシランを加え、且つ、系内にNH4OH水溶液を加えてアルカリ性にする以外は実施例4−1と同様の方法にて重合を行った。その後、多量のエタノールで洗浄することにより、粒子内部の未反応の(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシランを除去し、次いで、濾別、乾燥することにより、本実施例のブラックトナーを得た。上記で得られたトナーの数平均粒子径を実施例4−1と同様にして測定したところ、6.22μmであった。
【0407】
このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に、約40nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察からこのトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認できた。
【0408】
EPMAより求めたトナーの粒子表面における炭素原子、酸素原子、及びケイ素原子の存在量の総計を100%とした場合のケイ素原子の存在比率は4.10質量%であった。同様に求めたトナーの粒子断面における炭素原子、酸素原子、及びケイ素原子の存在量の総計を100%とした場合のケイ素原子の存在比率は4.00質量%であった。よって、トナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量は、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在量の1.03倍であった。従って、ケイ素化合物の重縮合物は、トナーの粒子表面のみならず、トナーの粒子内部にも同様の割合で存在していることがわかった。更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量は、3.68質量%であった。従って、界面活性剤洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するシリカの減少率は10.25であった。よって、このトナーは、粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層が形成されていることが確認された。
【0409】
上記で得られたトナーの溶融開始温度を実施例4−1と同様の方法を用いて測定したところ、72.99℃であった。実施例4−1と同様の方法でこのトナーのガラス転移点(Tg)を求めたところ、36.45℃であった。よって、このトナーの溶融開始温度とガラス転移点の差は36.54℃であった。
【0410】
更に、上記のトナーのブロッキング試験を実施例4−1と同様の方法で行ったところ、トナーは良好な流動性を保持したままであり、耐ブロッキング性は良好であった。上記のトナーを用いて実施例4−1と同様の方法で2成分系現像剤を調製し、この現像剤を用いて実施例4−1と同様の方法で定着性評価用の画像を作成し、定着性の評価を行った。その結果、一視野中に平均2.4個の粒子が観察されたが、粒子の殆どは良好に定着していた(表9参照)。
【0411】
[実施例4−8]
実施例4−1の母体となるトナー粒子の製造方法において、重合組成物中に、エステルワックス(融点50℃)を加えた以外は実施例4−1と同様にして、トナー粒子を作成した。このトナー粒子の数平均粒子径を実施例4−1と同様にして測定したところ、6.31μmであった。更に、このトナー粒子のガラス転移点は20.13℃であった。
【0412】
上記で得られた母体となるトナー粒子に対して実施例4−1と同様の方法を用いてゾルゲル膜を被覆し、本実施例のトナーを作成した。得られたトナーの数平均粒子径を実施例4−1と同様にして測定したところ、6.62μmであった。このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約40nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察から、このトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認された。
【0413】
EPMAより求めたトナーの粒子表面における炭素原子、酸素原子、及びケイ素原子の存在量の総計を100%とした場合のケイ素原子の存在比率は5.78質量%であった。同様に求めたトナーの粒子断面における炭素原子、酸素原子、及びケイ素原子の存在量の総計を100%とした場合のケイ素原子の存在比率は0.06質量%であった。よって、トナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量は、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在量の101.29であった。従って、ケイ素化合物の重縮合物は、その大部分がトナーの粒子表面に存在し、トナーの粒子内部には殆ど存在していないことがわかった。
【0414】
更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量は4.88質量%であった。従って、界面活性剤洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するシリカの減少率は15.49%であった。よってこのトナーは粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層が形成されていることが確認された。
【0415】
上記で得られたトナーの溶融開始温度を実施例4−1と同様の方法を用いて測定したところ、44.11℃であった。実施例4−1と同様の方法でこのトナーのガラス転移点(Tg)を求めたところ、28.69℃であった。よって、このトナーの溶融開始温度とガラス転移点の差は15.42℃であった。
【0416】
更に、上記のトナーのブロッキング試験を実施例4−1と同様の方法で行ったところ、トナーは良好な流動性を保持したままであり、耐ブロッキング性は良好であった。上記のトナーを用いて実施例4−1と同様の方法で2成分系現像剤を調製し、この現像剤を用いて実施例4−1と同様の方法で定着性評価用の画像を作成し、定着性の評価を行った。その結果、粒子形状は確認できず、定着性は良好であった(表9参照)。
【0417】
[実施例4−9]
実施例4−1の母体となるトナー粒子の作成で、スチレンモノマーを120質量部ブチルアクリレートを30質量部に代えた以外は同様の方法を用いて、トナー粒子を作成した。得られたトナー粒子の数平均粒子径を実施例4−1と同様にして測定したところ、6.32μmであった。このトナー粒子に対して、実施例4−1と同様の方法でゾルゲル膜を被覆して本実施例のトナーを得た。得られたトナーの数平均粒子径は6.44μmであった。
【0418】
このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約40nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察からこのトナーの粒子表面に少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着することによって形成される被覆層が形成されていることが確認できた。
【0419】
EPMAより求めたトナーの粒子表面における炭素原子、酸素原子、及びケイ素原子の存在量の総計を100%とした場合のケイ素原子の存在比率は4.80質量%であった。同様に求めたトナーの粒子断面における炭素原子、酸素原子、及びケイ素原子の存在量の総計を100%とした場合のケイ素原子の存在比率は0.05質量%であった。よって、トナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量は、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在量の99.93倍であり、ケイ素化合物の重縮合物は、その大部分がトナーの粒子表面に存在し、トナーの粒子内部には殆ど存在していないことがわかった。
【0420】
更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量は3.61質量%であった。従って界面活性剤洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するシリカの減少率は24.78%であった。よって、このトナーは粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層が形成されていることが確認された。
【0421】
上記のようにして得られたトナーの溶融開始温度を実施例4−1と同様の方法を用いて測定したところ、104.40℃であった。実施例4−1と同様の方法でこのトナーのガラス転移点(Tg)を求めたところ、64.18℃であり、このトナーの溶融開始温度とガラス転移点の差は40.22℃であった。
【0422】
更に、上記で得られたトナーについて、ブロッキング試験を実施例4−1と同様の方法で行ったところ、トナーの流動性は良好であり、耐ブロッキング性は良好であった。
上記のトナーを用いて実施例4−1と同様の方法で2成分系現像剤を調製し、この現像剤を用いて実施例4−1と同様の方法で定着性評価用の画像を作成し、定着性の評価を行った。その結果、一視野中につき平均6.7個の粒子が観察されたが、定着性に問題はなかった。これはこのトナーの少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着することによって形成される被覆層の被覆量が過剰であるために、本発明で行なった定着性試験において充分な熱定着性が得られなかったためと思われる。
【0423】
[実施例4−10]
<母体となるトナー粒子の作成>
先ず、母体となるトナー粒子を以下の手法を用いて作成した。高速攪拌装置TK−ホモミキサーを備えた四つ口フラスコ中にイオン交換水1000質量部とポリビニルアルコール45質量部を添加し、攪拌装置NO回転数を3000pmに調整し、55℃に加熱せしめて分散媒を調製した。
【0424】
一方、モノマー分散液は、下記のようにして調製した。
・スチレン重合体 3質量部
・n−ブチルアクリレート単量体 20質量部
・カーボンブラック 5質量部
・サリチル酸金属化合物 0.5質量部
・離型剤(パラフィンワックス155) 8質量部
上記組成をアトライターを用い3時間分散させた後、重合開始剤である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.4質量部を添加し、この分散物を前述の分散媒中に投入し、回転数を維持しつつ10分間造粒した。その後、50rpm、55℃で1時間、65℃で4時間、更に、80℃で5時間、それぞれ重合を行った。
【0425】
重合終了後、スラリーを冷却し、精製水で洗浄を繰り返すことにより分散剤を除去した。更に洗浄し、乾燥を行うことで母体となるトナー粒子を得た。実施例4−1と同様の方法で測定したトナー粒子の数平均粒子径は、5.02μmであった。更に、このトナー粒子のガラス転移点(Tg)を測定したところ、27.86℃であった。
【0426】
<被覆層(ゾルゲル膜)の作成>
上記で得られた母体となるトナー粒子を用いて、使用するテトラエトキシシランの量を2.5質量部から10質量部に代えた以外は実施例4−1と同様にして、トナー粒子に少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着することによって形成される被覆層を被覆した。その結果、得られた本実施例のトナーの数平均粒子径を実施例4−1と同様の方法で測定したところ、6.32μmであった。
【0427】
このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約40nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察からこのトナーの粒子表面に被覆層が形成されていることが確認できた。
【0428】
EPMAより求めたトナーの粒子表面における炭素原子、酸素原子、及びケイ素原子の存在量の総計を100%とした場合のケイ素原子の存在比率は20.49質量%であった。同様に求めたトナーの粒子断面における炭素原子、酸素原子、及びケイ素原子の存在量の総計を100%とした場合のケイ素原子の存在比率は1.70質量%であった。この被覆層は比較的被覆量の多い被覆層であるといえる。上記の測定値から、トナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量は、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在量の12.08倍であり、トナーの粒子内部にケイ素化合物の重縮合物がある程度存在していることがわかった。
【0429】
更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量は14.86質量%であった。従って、界面活性剤洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するシリカの減少率は27.48%であった。よって、このトナーは、粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層が形成されていることが確認された。
【0430】
上記のようにして得られたトナーの溶融開始温度を実施例4−1と同様の方法を用いて測定したところ、142.40℃であった。実施例4−1と同様の方法でこのトナーのガラス転移点(Tg)を求めたところ、34.55℃であった。よって、このトナーの溶融開始温度とガラス転移点の差は107.9℃であった。
【0431】
更に、上記のトナーのブロッキング試験を実施例4−1と同様の方法で行ったところ、トナーの流動性は良好であり、よって耐ブロッキング性は良好であった。
上記のトナーを用いて実施例4−1と同様の方法で2成分系現像剤を調製し、この現像剤を用いて実施例4−1と同様の方法で定着性評価用の画像を作成し、定着性の評価を行った。その結果、一視野中につき平均7.9個の粒子が観察されたが、定着性に問題はなかった。これはおそらく、トナーに対する被覆量が比較的多く、トナー内部にもケイ素化合物の重縮合物が存在しているために、本発明における定着性の試験において、充分な熱定着性が得られなかったものと思われる。
【0432】
[実施例4−11]
実施例4−1でゾルゲル膜を被覆する際に、室温で2日間反応させた後、アルコールを系内に投入せずに、粒子を濾過し、その後トナー粒子表面を洗浄した後、50℃の乾燥機内で1晩加熱することによりトナーを得た。得られたトナーの数平均粒子径を実施例4−1と同様の方法で測定したところ、6.25μmであった。
【0433】
このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面に約40nm直径の微細な粒状凹凸を有する被覆層が観察された。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察からこのトナーの粒子表面に少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着することによって形成される被覆層が形成されていることが確認できた。
【0434】
EPMAより求めたトナーの粒子表面における炭素原子、酸素原子、及びケイ素原子の存在量の総計を100%とした場合のケイ素原子の存在比率は6.05質量%であった。同様に求めたトナーの粒子断面における炭素原子、酸素原子、及びケイ素原子の存在量の総計を100%とした場合のケイ素原子の存在比率は5.32質量%であった。よって、トナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量は、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在量の1.14倍であり、トナーの粒子内部にもトナーの表面と同程度にケイ素化合物の重縮合物が存在していることがわかった。
【0435】
更に、このトナーを、5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量は4.55質量%であった。従って、界面活性剤洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するシリカの減少率は24.78%であった。よって、このトナーは、粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層が形成されていることが確認された。
【0436】
上記のようにして得られたトナーの溶融開始温度を実施例4−1と同様の方法を用いて測定したところ、99.57℃であった。実施例4−1と同様の方法でこのトナーのガラス転移点(Tg)を求めたところ、35.83℃であった。よって、このトナーの溶融開始温度とガラス転移点の差は63.74℃であった。
【0437】
更に、上記のトナーのブロッキング試験を実施例4−1と同様の方法で行ったところ、トナーの流動性は良好であり、耐ブロッキング性は良好であった。
上記トナーを用いて実施例4−1と同様の方法で2成分系現像剤を調製し、この現像剤を用いて実施例4−1と同様の方法で定着性評価用の画像を作成し、定着性の評価を行った。その結果、一視野中につき平均8.5個の粒子が観察されたが、定着性に問題はなかった。これはおそらく、トナー内部にまでケイ素化合物の重縮合物が存在するものであるために定着性が若干低下したものと思われる(表9参照)。
【0438】
[比較例4−1]
実施例4−1で用いた重合後のブラックトナー粒子に、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着することによって形成される被覆層を施すことなしに、本比較例のトナーとした。この粒子のガラス転移点は実施例4−1でも述べた通り、27.86℃であった。このトナーの溶融開始温度を実施例4−1と同様の方法を用いて測定したところ、32.89℃であった。よって、このトナーの溶融開始温度とガラス転移点の差は5.03℃であった。
【0439】
更に、上記のトナーのブロッキング試験を実施例4−1と同様の方法で行ったところ、トナーは完全に溶融し、サンプル瓶底に膜状に固着していた。
上記のトナーを用いて実施例4−1と同様の方法で2成分系現像剤を調製し、この現像剤を用いて実施例4−1と同様の方法で定着性評価用の画像を作成しようと試みたが、撹拌器内でトナー同士が融着を起こし、充分な画像形成が不可能であった(表9参照)。
【0440】
[比較例4−2]
実施例4−1で用いたテトラエトキシシランの量を0.1質量部に代えた以外は同様の方法を用い、トナーを作成した。得られたトナーの数平均粒子径を実施例4−1と同様にして測定したところ、6.35μmであった。
このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、該トナーの粒子表面にシリカ被覆層由来の凹凸は確認できなかった。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察も同様で、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着することによって形成される被覆層は確認できなかった。
【0441】
EPMAより求めたトナーの粒子表面における炭素原子、酸素原子、及びケイ素原子の存在量の総計を100%とした場合のケイ素原子の存在比率は0.09質量%であった。同様に求めたトナーの粒子断面における炭素原子、酸素原子、及びケイ素原子の存在量の総計を100%とした場合のケイ素原子の存在比率は0.02質量%であった。
【0442】
更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量は0.07質量%であった。従って界面活性剤洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するシリカの減少率は30.15%であった。以上の結果から、このトナーはシリカ原子の存在は確認されたものの、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着することによって形成される被覆層を有してはいなかった。
【0443】
上記のようにして得られたトナーの溶融開始温度を実施例4−1と同様の方法を用いて測定したところ、49.15℃であった。実施例4−1と同様の方法でこのトナーのガラス転移点(Tg)を求めたところ、28.74℃であった。よって、このトナーの溶融開始温度とガラス転移点の差は20.41℃であった。
【0444】
更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量は、2.85質量%であった。従って、界面活性剤洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するシリカの減少率は22.14%であった。以上の結果から、このトナーはケイ素化合物を含む被覆層を有するものの、その被覆層表面は平滑であり、粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層とは明らかに異なるものであることがわかった。
【0445】
上記のようにして得られたトナーの溶融開始温度を実施例4−1と同様の方法を用いて測定したところ、106.21℃であった。実施例4−1と同様の方法でこのトナーのガラス転移点(Tg)を求めたところ、28.55℃であった。よって、このトナーの溶融開始温度とガラス転移点の差は77.66℃であった。
【0446】
更に、上記のトナーのブロッキング試験を実施例4−1と同様の方法で行ったところ、トナーの流動性は良好であり、耐ブロッキング性は良好であった。上記のトナーを用いて実施例4−1と同様の方法で2成分系現像剤を調製し、この現像剤を用いて実施例4−1と同様の方法で定着性評価用の画像を作成し、定着性の評価を行った。その結果、殆どの粒子は定着されておらず、粒子形状を保ったままであった。これはおそらく、トナー粒子表面が平滑なために熱伝導が悪く、本発明で行なった定着性試験において、充分な定着性を示さなかったものと思われる。
【0447】
[比較例4−3]
実施例4−1で用いた母体となるトナー粒子100質量部に対して、常温硬化型シリコーンレジン0.50質量部を添加して、サンプル瓶内に投入し、30分、ロールミルで撹拌し、その後40℃雰囲気下で更に撹拌を3時間続けることにより、シリコーン樹脂で被覆されたトナーを得た。得られたトナーの数平均粒子径は、6.63μmであった。
【0448】
このトナーの粒子の表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、トナーの粒子表面は平滑であり、粒子状の凹凸は観察されなかった。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察から、このトナーの粒子表面に何らかの被覆層が形成されていることが確認できた。
【0449】
EPMAより求めたトナーの粒子表面における炭素原子、酸素原子、及びケイ素原子の存在量の総計を100%とした場合のケイ素原子の存在比率は3.66質量%であった。同様に求めたトナーの粒子断面における炭素原子、酸素原子、及びケイ素原子の存在量の総計を100%とした場合のケイ素原子の存在比率は0.07質量%であった。よって、トナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量は、トナーの粒子断面におけるケイ素原子の存在量の54.65倍であり、ケイ素化合物の重縮合物はトナーの粒子表面に主に存在し、トナーの粒子内部には殆ど存在していなかった。
【0450】
更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量は、2.85質量%であった。従って、界面活性剤洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するシリカの減少率は22.14%であった。以上の結果から、このトナーはケイ素化合物を含む被覆層を有するものの、その被覆層表面は平滑であり、粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層とは明らかに異なるものであることがわかった。
【0451】
上記のようにして得られたトナーの溶融開始温度を実施例4−1と同様の方法を用いて測定したところ、106.21℃であった。実施例4−1と同様の方法でこのトナーのガラス転移点(Tg)を求めたところ、28.55℃であった。よって、このトナーの溶融開始温度とガラス転移点の差は77.66℃であった。
【0452】
更に、上記のトナーのブロッキング試験を実施例4−1と同様の方法で行ったところ、トナーの流動性は良好であり、耐ブロッキング性は良好であった。上記のトナーを用いて実施例4−1と同様の方法で2成分系現像剤を調製し、この現像剤を用いて実施例4−1と同様の方法で定着性評価用の画像を作成し、定着性の評価を行った。その結果、殆どの粒子は定着されておらず、粒子形状を保ったままであった。これはおそらく、トナー粒子表面が平滑なために熱伝導が悪く、本発明で行なった定着性試験において、充分な定着性を示さなかったものと思われる。
【0453】
[比較例4−4]
実施例4−1で用いた母体となるトナー粒子100質量部に対して平均粒径40nmの疎水化シリカ粒子を5質量部混合して、ヘンシェルミキサーで混合することによりシリカ微粒子を外添し、トナーを得た。得られたトナーの数平均粒子径を実施例4−1と同様の方法で測定したところ、6.10μmであった。
【0454】
このトナーの粒子表面を走査型顕微鏡写真で観察したところ、トナー粒子表面に粒状物は確認されるものの、粒子−粒子間には多数の間隙が存在し、膜状物は観察されなかった。更に、このトナーの粒子断面の透過型電子顕微鏡写真観察から、このトナーの粒子表面にシリカ粒子が観察されたが、シリカ粒子同士は個々に存在していることが確認された。
【0455】
EPMAより求めたトナーの粒子表面における炭素原子、酸素原子、及びケイ素原子の存在量の総計を100%とした場合のケイ素原子の存在比率は0.55質量%であった。又、同様に求めたトナーの粒子断面における炭素原子、酸素原子、及びケイ素原子の存在量の総計を100%とした場合のケイ素原子の存在比率は0.01質量%であった。更に、このトナーを5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液で洗浄した後のトナーの粒子表面におけるケイ素原子の存在量は0.37質量%であった。従って、界面活性剤洗浄前後におけるトナーの粒子表面に存在するシリカの減少率は、33.48%であった。
【0456】
上記のようにして得られたトナーの溶融開始温度を実施例4−1と同様の方法を用いて測定したところ、43.33℃であった。実施例4−1と同様の方法でこのトナーのガラス転移点(Tg)を求めたところ、29.75℃であった。よって、このトナーの溶融開始温度とガラス転移点の差は13.58℃であった。
【0457】
更に、上記のトナーのブロッキング試験を実施例4−1と同様の方法で行ったところ、トナーは完全に溶融し、瓶底に膜状に固着していた。
上記のトナーを用いて実施例4−1と同様の方法で2成分系現像剤を調製し、この現像剤を用いて実施例4−1と同様の方法で定着性評価用の画像を作成し、定着性の評価を行った。その結果、粒子形状は確認されなかった。
下記表8に実施例4−1〜4−11及び比較例4−1〜4−4におけるトナー粒子及びトナーの特性を示し、表9に評価結果を示した。
【0458】
【表8】
【0459】
【表9】
【0460】
表9中の耐ブロッキング性は、トナー粒子30gを30mlのサンプル瓶に入れ、50℃の恒温槽に2日間放置した後、トナーの様子を目視で観察結果観察を行い、その結果を下記の基準で示した。
A:瓶を傾けると粒子は流動する。
B:瓶底を軽くたたくと粒子は流動する。
C:瓶を傾けると粒子が固まりで流動する。
D:粒子の一部は融解し、瓶に固着。
E:粒子は完全に融解し、瓶底に膜状に固着。
【0461】
表9中の定着性は、OHPシート上にベタ画像を現像・定着後、トナーの粒子形状が残存しているかどうかを走査型顕微鏡を用いて1000倍で観察し、その結果を下記の基準で示した。
A:粒子形状は観察されない。
B:粒子形状を保った部分が一視野につき6個以下ある。
C:粒子形状を保った部分が一視野につき10個以下ある。
D:殆どの粒子は粒子形状を保っている。
【0462】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、母体となるトナー粒子表面に少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成される被覆層を設けることによって、流動化剤を用いなくても優れた流動性を示し、耐久においても安定した帯電量を保持することができ、且つ、高い転写効率を達成し得る良好な画像形成が可能なトナーが提供される。
又、本発明によれば、流動化剤を用いないため、連続現像を行なった場合においても、従来のように、流動化剤の遊離や、流動化剤のトナー粒子に対する埋め込みの発生を起こすことがなく、しかも、耐久においても優れた流動性が安定して保持され、且つ耐久に優れたトナーが提供される。
更に、本発明によれば、上記の特性を有する優れたトナーを、容易に且つ安定して得ることができるトナーの製造方法が提供される。
Claims (34)
- 少なくとも結着樹脂と着色剤とを有するトナー粒子で構成されるトナーにおいて、上記トナー粒子の表面に、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着されることによって形成された被覆層を有し、該被覆層は、ケイ素化合物の重縮合物によって形成されてなることを特徴とするトナー。
- 該ケイ素化合物の重縮合物は、ゾルゲル法によって形成されたものである請求項1に記載のトナー。
- 該被覆層は、ケイ素化合物の重縮合物を含む粒状塊同士が化学的に結合した状態にある請求項1又は2に記載のトナー。
- 該トナーの粒子表面における電子プローブ微小部分析法によって測定された炭素原子、酸素原子及びケイ素原子の存在量の総計に対するケイ素原子の存在比率が0.1〜20.0質量%である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のトナー。
- 該トナーの粒子断面における電子プローブ微小部分析法によって測定された炭素原子、酸素原子及びケイ素原子の存在量の総計に対するケイ素原子の存在比率が4.0質量%以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のトナー。
- 該トナーの粒子表面における電子プローブ微小部分析法によって測定された炭素原子、酸素原子及びケイ素原子の存在量の総計に対するケイ素原子の存在比率が0.1〜20.0質量%であり、且つ、該トナーの粒子断面における電子プローブ微小部分析法によって測定された炭素原子、酸素原子及びケイ素原子の存在量の総計に対するケイ素原子の存在比率が4.0質量%以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のトナー。
- 該トナーの粒子表面における電子プローブ微小部分析法によって測定された炭素原子、酸素原子及びケイ素原子の存在量の総計に対するケイ素原子の存在比率が0.1〜10.0質量%であり、且つ、該トナーの粒子断面における電子プローブ微小部分析法によって測定された炭素原子、酸素原子及びケイ素原子の存在量の総計に対するケイ素原子の存在比率が0.1質量%以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のトナー。
- 該被覆層が設けられているトナーの粒子表面のケイ素原子の存在比率が、該トナーの粒子断面のケイ素原子の存在比率の2倍以上である請求項1乃至7のいずれか1項に記載のトナー。
- 該結着樹脂が、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、及び、これらの混合物からなるグループから選択される樹脂を含む請求項1乃至8のいずれか1項に記載のトナー。
- 該被覆層の表面は、カップリング剤により処理されている請求項1乃至9のいずれか1項に記載のトナー。
- 該カップリング剤は、該被覆層表面に存在するシラノール基と反応し得る請求項10に記載のトナー。
- 該トナーは、個数平均粒子径が0.1μm〜10.0μmであり、且つ、20.0%以下の個数分布の変動係数を有している請求項1乃至11のいずれか1項に記載のトナー。
- 該トナーは、少なくとも60℃以下に一点以上ガラス転移点を有し、溶融開始温度が100℃以下であり、且つ、該ガラス転移点と該溶融開始温度との差が38℃以下である請求項1乃至12のいずれか1項に記載のトナー。
- 該トナーは、更に離型剤成分を80質量%以下の範囲で含有する請求項13に記載のトナー。
- 表面に被覆層を有するトナー粒子で構成されるトナーの製造方法であって、
少なくとも結着樹脂と着色剤とを有するトナー粒子を調製するトナー粒子調製工程;及び
該トナー粒子の外部から、該トナー粒子の表面にケイ素化合物の重縮合物を堆積させることにより、トナー粒子の表面に、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着することによって形成される被覆層を形成する被覆層形成工程;
を有することを特徴とするトナーの製造方法。 - 該被覆層形成工程は、少なくともケイ素化合物を溶解させた水性溶媒中に、又は、該水性溶媒と水との混合溶媒中に、少なくとも結着樹脂及び着色剤を含有するトナー粒子を分散させて、トナー分散液を調製する工程;及び
アルカリ性水性溶媒中に、又は、該アルカリ性水性溶媒と水との混合溶媒中に、該分散液を添加し、ケイ素化合物を加水分解反応によって重縮合させることにより、重縮合物をトナー粒子表面に外部から堆積させて、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着された被覆層を形成する工程;
を有している請求項15に記載のトナーの製造方法。 - 得られたトナーが、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のトナーである請求項15又は16に記載のトナーの製造方法。
- 該結着樹脂に、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、及び、これらの混合物からなるグループから選択される樹脂のいずれかを用いる請求項15乃至17のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
- 更に、該被覆層の表面をカップリング剤により処理する請求項15乃至18のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
- 該カップリング剤は、該被覆層表面に存在するシラノール基と反応し得る請求項19に記載のトナーの製造方法。
- 得られたトナーは、個数平均粒子径が0.1μm〜10.0μmであり、且つ、20.0%以下の個数分布の変動係数を有している請求項15乃至20のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
- 該トナー粒子調製工程において、結着樹脂を形成するための重合性単量体は溶解するがその重合体は溶解しない溶媒に少なくとも該重合性単量体を溶解し、該溶媒中で該重合性単量体を重合することにより、少なくとも結着樹脂と着色剤とを有するトナー粒子を調製する請求項21に記載のトナーの製造方法。
- 該結着樹脂を合成するための重合性単量体は溶解し得るがその重合体は溶解し得ない溶媒中に少なくとも該重合性単量体を溶解し、該溶媒中で該重合性単量体を重合することにより、少なくとも結着樹脂及び着色剤を含有するトナー粒子を製造し、該トナー粒子が分散されているトナー分散液を調製する工程;及び
アルカリ性水性溶媒中に、又は、該アルカリ性水性溶媒と水との混合溶媒中に、該分散液を添加し、ケイ素化合物を加水分解反応によって重縮合させることにより、該重縮合物を該トナー粒子表面に外部から堆積させて、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着された被覆層を形成する工程;
を有している請求項21に記載のトナーの製造方法。 - 該結着樹脂を合成するための重合性単量体は溶解し得るがその重合体は溶解し得ない溶媒中に少なくとも重合性単量体を溶解させて、該溶媒中で該重合性単量体を重合することにより、少なくとも結着樹脂及び着色剤を含有するトナー粒子を製造し、該トナー粒子が分散されているトナー分散液を調製する工程;及び
該トナー分散液を室温まで冷却し、冷却された該トナー分散液中に少なくともケイ素化合物及びアルカリを加えて、該ケイ素化合物を加水分解反応によって重縮合させることにより、該重縮合物を該トナー粒子表面に外部から堆積させて、少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着された被覆層を形成する工程;
を有している請求項21に記載のトナーの製造方法。 - 得られたトナーが、請求項13又は14に記載のトナーである請求項15乃至24のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
- 表面に被覆層を有するトナー粒子で構成されるトナーの製造方法であって、
少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有し、且つケイ素化合物が内在しているトナー粒子を調製するトナー粒子調製工程;及び
該トナー粒子を水、及び水と水性溶媒との混合溶媒からなるグループから選択される液中で、該トナー粒子の表面でケイ素化合物の加水分解及び重縮合反応を行なわせて、該トナー粒子表面に少なくともケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着された状態の被覆層を形成する被覆層形成工程;
を有することを特徴とするトナーの製造方法。 - 該トナー粒子調製工程は、
水、及び水と水性溶媒との混合溶媒からなるグループから選択される液中に、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含有し、且つ、ケイ素化合物を内在していないトナー粒子を分散させてトナー粒子分散液を調製する工程;
水、及び水と水性溶媒との混合溶媒からなるグループから選択される液中に、少なくともケイ素化合物を分散させてケイ素化合物分散液を調製する工程;及び
上記トナー粒子分散液を上記ケイ素化合物分散液に添加して、上記トナー粒子中に上記ケイ素化合物を膨潤させ、該トナー粒子中にケイ素化合物を内在させる工程;
を有している請求項26に記載のトナーの製造方法。 - 得られたトナーが、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のトナーである請求項26又は27に記載のトナーの製造方法。
- 該結着樹脂に、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、及び、これらの混合物からなるグループから選択される樹脂のいずれかを用いる請求項26乃至28のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
- 更に、被覆層の表面をカップリング剤により処理する請求項26乃至29のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
- 該カップリング剤は、該被覆層表面に存在するシラノール基と反応し得る請求項30に記載のトナーの製造方法。
- 得られたトナーは、個数平均粒子径が0.1μm〜10.0μmであり、且つ、20.0%以下の個数分布の変動係数を有している請求項26乃至31のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
- 該トナー粒子調製工程において、結着樹脂を形成するための重合性単量体は溶解するがその重合体は溶解しない溶液に少なくとも該重合性単量体を溶解させて、該溶媒中で該重合性単量体を重合することにより、少なくとも結着樹脂と着色剤とを有するトナー粒子を調製する請求項32に記載のトナーの製造方法。
- 得られたトナーが、請求項13又は14に記載のトナーである請求項26乃至33のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
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