JP3942215B2 - 渦電流選別機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はマグネットロールの回転による磁石の移動磁界を利用して磁性金属体、非磁性金属体、非金属体を選別する渦電流選別機に関し、更に詳細には、渦電流力の最大位置で非磁性金属片を前方に水平投射する渦電流選別機に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境保護の論調が高まる中で、リサイクルするためにアルミ缶・スチール缶・ガラス瓶等の分別収集が行なわれているが、実際には混在した状態で回収される場合も多い。また、粗大ごみは収集された後破砕されるが、種々の物質が混在した破砕片の中からスチールやアルミ等の有価物が回収されている。缶や瓶のような大きな物は視覚や触覚を利用して目視で分別することもできるが、細片化や粉体化された場合には、分別することは簡単でない。
【0003】
そこで、スチール等の磁性金属体、アルミ等の非磁性金属体、ガラス等の非金属体を機械的に自動分別するために渦電流選別機が開発されてきた。図3は従来の渦電流選別機を示すものであり、ドラム状のヘッドプーリ2の内部には、ドラム状のマグネットロール4が軸平行に配置されている。また、このマグネットロール4の外周面には強力な永久磁石6が円周方向にN,S,N,S…となるように間欠的に配列されている。
【0004】
前方のヘッドプーリ2に対して後方にはドラム状のテールプーリ8が配置され、両プーリ2、8間には無端ベルト10が緊張状態に張設されている。ケーシング12の上方にはホッパー14が設置されており、このホッパー14からクロス丸の磁性金属体、黒丸の非磁性金属体、白丸の非金属体が混合状態で投入される。ケーシング12の前方下部には、磁性金属排出口16、非金属排出口18、非磁性金属排出口20が設けられており、フラップ16a・18aを傾斜調整できるように構成されている。前記マグネットロール4は駆動装置22により矢印a方向に高速回転駆動され、テールプーリ8は駆動装置24により矢印a方向に低速回転駆動される。この結果、無端ベルト10は矢印b方向に回転移動する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来装置の欠点をその動作と共に説明する。ホッパー14から3種類が混在した被選別物を投入すると、ベルト10によりb方向に搬送され、非金属体は永久磁石6からの磁気作用を全く受けないために、ヘッドプーリ2の先端部直下にある非金属排出口18内に自由落下する。
磁性金属体には前方への渦電流力と半径内向き方向への磁気吸引力が作用するが、磁気吸引力による摩擦力が渦電流力よりも大きいためベルト面から離脱しないで下方まで移動する。しかしベルト10がヘッドプーリ2から離れ始めるC点で磁気吸引力と渦電流力が急激に小さくなり、磁性金属体はその排出口16内へと落下する。
【0006】
この従来装置の欠点は非磁性金属体の場合に特徴的に現われる。非磁性金属体には磁気吸引力は作用しないが、自由電子があるために渦電流力は作用する。渦電流力は図4に示すように、ベルト面から離れるに従い急激に弱くなる。また、接線方向力Ftの方が半径方向力Frよりも圧倒的に強い。
図3に示すように、この渦電流力はヘッドプーリ2の中心直上のd点で最大となるが、実際にはその手前のe点でも作用する。接線方向力Ftの方が半径方向力Frより大きいが、非磁性金属体にはその合力Fが作用し、d点に達する前に非磁性金属体は渦電流力Fにより斜め方向に飛び上り、点線で示すように放物線を画きながら非磁性金属排出口20内に落下する。
即ち、渦電流力Fがそれ程強くない点eで斜め上方に飛び上がれば、非磁性金属体は遠方へは到達できないで近傍に落下し、非金属排出口18と非磁性金属排出口20との分離境界が重なって選別が困難になる。特に、被選別物が小さくなる程前方へ飛ばないため選別の困難さが増し、また比重の大きい銅やステンレスは投射加速度が小さくなって選別が困難になっていた。
【0007】
上記の欠点を更に数値的に述べると、例えば厚さ3mmのアルミニウム板の場合、150mm角のものは1000mmも前方に飛ぶが、100mm角であれば800mm、50mm角なら600mmと飛距離は低下した。小さくした場合には、飛距離は更に短くなり選別は困難になった。
また、厚さ3mmの銅板では、150mm角の場合に飛距離は700mm、100mm角では550mm、50mm角では380mmと低下し、アルミニウムより選別が困難になった。ステンレスの場合には更に困難になる。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る渦電流選別機は上記欠点を解消するためになされたものであり、ヘッドプーリの中心直上部の最大渦電流力を利用して前方へ投射するために、次の手段を提供する。
【0009】
当該手段は、ヘッドプーリの中心より後方でベルトの上方位置にシュート下端が位置するようにシュートを配置し、非磁性金属体と磁性金属体と非磁性体とを含む被選別物を投入することである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明者等は小さな非磁性金属体が前方へ飛びにくくなる原因を追求するため、厚さ3mmで40mm角のアルミニウム板に作用する渦電流力を測定した。その結果は図4に示されており、縦軸は接線方向力Ftと半径方向力Frをg重単位で、横軸はベルト面からの距離をmm単位で表わしている。
【0011】
図4から分るように、半径方向力Frは接線方向力Ftの10%程度であり、ほとんど無視できるものであった。従って、渦電流力を接線方向力であると考えると、ベルト面上では600g重以上に達するのに対し、ベルト面から10mm上方では350g重、30mm上方では100g重となり、マグネットロールから離れるに従い急激に低下することが分る。
つまり、マグネットロールの中心直上のベルト面で非磁性金属体を前方に飛ばすことが最良の策であることが理解できる。
【0012】
図4の特性を考慮し、ベルト面上の各位置において、厚さ3mm、40mm角のアルミニウム板に作用する力を加速度に換算すると、図5が得られる。マグネットロールの中心直上位置では、アルミニウム板に46g(g:重力加速度)の加速度が作用し、前方に強く飛ばされることが分る。しかし、ベルト上を運ばれてきた物は、直上位置(中心線位置)に達するまでに渦電流力を受ける。中心線の手前45度〜30度において、1〜8gの前方斜め上向き(接線方向)の加速度が作用し、この段階で非磁性金属体は浮上してしまう。
【0013】
まず、アルミニウム板の先端が先に浮上し、その後で後端が遅れて同様の力を受けるため、非磁性金属体には回転力が生じ、飛び上った後自転しながら放物運動する。上方では渦電流力が弱く、しかも回転しているので渦電流の生じる面積が小さいから、非磁性金属体は中心線上でも渦電流力の作用を受けないままマグネットロールの上空を周回して近傍に落下してしまう。この現象は、軽くて小さい物に著しく、またマグネットロールの直径が小さい程顕著に現われ、選別効率を低下させる。
逆に、大きな物は容易に浮上することができないため、マグネットロールの中心線上において、ベルト上またはベルトに近い位置で強い渦電流力を受け、前方へ大きく水平投射されることになる。
【0014】
本発明者等は上記の実験事実から、非磁性金属体を前方へ強く飛ばすためには、マグネットロールの中心線より手前での浮上を防止し、中心線付近のベルト直上で前向きの強い渦電流力を受けさせる以外に方法がないことが分った。また、この考えを実現するために、次の方法を想到するに到った。
つまり、マグネットロールの中心線上に被処理物を投下するためにシュートを設置する方法である。
これを以下に実施態様として説明する。但し、図3と同一部分には同一番号を付してその説明は省略し、異なる番号についてはその部分を説明する。
【0015】
【実施態様1】
図1にはシュート34を配置した実施態様を示している。特に本実施態様はシュート34を従来の渦電流選別機に付設できる構造を示したものである。
【0016】
シュート34は、その下端34aが中心線fより10度〜20度の範囲に位置するようにするのが望ましい。このシュート34から被選別物を投入すると中心線fのベルト上で強力な渦電流力を受け、非磁性金属体は前方へ強く投射されることになる。シュートの傾斜角は40度以上に設定することが望ましいが、被選別物の特性に応じて可変できるように設定されている。
【0017】
【実施態様2】
図2はベルトコンベア形式をなくした構造でシュート34を配置した実施態様である。従って、駆動装置24はヘッドプーリ2を直接低速回転駆動しており、またスクレーパ36がヘッドプーリ2の下部近傍に配置されている。
【0018】
シュート34の下端34aは水平折曲板状に形成されており、被選別物がシュート34から投入されたときにヘッドプーリ2の上端に乗り易い構造になっている。特に、スクレーパ36は磁性金属体をヘッドプーリ2から脱落させる部材で、磁性金属排出口16への落下を円滑に行なわせる。シュート下端位置が中心線fから10度〜20度の範囲、シュート傾斜角が40度以上の点については実施態様1と変更はないが、これらについてはより適切な設計変更ができる。
【0019】
本発明は上記実施態様に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々の設計変更や変形例は本発明の技術的範囲内に包含されるものである。
【0020】
【発明の効果】
本発明は以上詳述した構成をしているをしているから、被選別物、特に非磁性金属体がヘッドプーリから離れた中間位置で飛上することが抑制され、その結果、マグネットロールの中心線直上のベルト位置で強力な渦電流力を作用することができ、非磁性金属体を強く前方へ水平投射することができる。
【0021】
従って、本発明は簡単な構造でありながら、被選別物をその材質に応じて効果的に選別することができ、実用上極めて優れた効用を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る渦電流選別機の実施態様1の構成図である。
【図2】 本発明に係る渦電流選別機の実施態様2の構成図である。
【図3】 従来例に係る渦電流選別機の構成図である。
【図4】 試験片としてアルミニウム板を用いたときの渦電流力の特性図である。
【図5】 アルミニウム板に作用する加速度の説明図である。
【符号の説明】
2…ヘッドプーリ、4…マグネットロール、6…永久磁石、8…テールプーリ、10…無端ベルト、12…ケーシング、14…ホッパー、16…磁性金属排出口、16a…フラップ、18…非金属排出口、18a…フラップ、20…非磁性金属排出口、22…駆動装置、24…駆動装置、32…枢点、34…シュート、34a…シュート下端。
Claims (2)
- 前方側のヘッドプーリと後方側のテールプーリの間に張設された無端ベルトと、ヘッドプーリの内部に同心状に配置されたマグネットロールと、このマグネットロールの外周面に周方向に間欠配置される複数の永久磁石と、無端ベルトを回転移動させる駆動装置と、前記マグネットロールを前記ヘッドプーリと同一方向へ回転させる駆動装置と、ヘッドプーリの鉛直方向に延びる中心線fより後方でベルトの上方に設けられ、シュート下端をベルトの上面に近接させると共に前記中心線fよりベルトの上流側へ傾斜させて配置したシュートとから構成され、且つ、前記シュートの傾斜角は可変できるように設定されていると共に、シュートの下端がマグネットロールの前記中心線fから10〜20度の範囲内に位置するように配置されており、前記シュートから磁性金属体と非磁性金属体と非金属体を含む被選別物を投入することを特徴とする渦電流選別機。
- ヘッドプーリの内部に同心状に配置されたマグネットロールと、このマグネットロールの外周面に周方向に間欠配置された複数の永久磁石と、前記ヘッドプーリを回転させる駆動装置と、マグネットロールを前記ヘッドプーリと同一方向に回転させる駆動装置と、前記ヘッドプーリの下部近傍に配置されて磁性金属体をヘッドプーリから脱落させるスクレーパと、前記ヘッドプーリの鉛直方向に延びる中心線fより後方でヘッドプーリの上方に設けられ、シュート下端を前記ヘッドプーリの外周面に近接させると共に前記中心線fよりヘッドプーリの回転方向と逆の方向へ傾斜させて配置したシュートとから構成され、且つ、前記シュートの傾斜角は可変できるように設定されていると共に、シュートの下端がマグネットロールの中心線fから10〜20度の範囲に位置し、更に、シュートの下端は水平折曲板状に形成されており、前記シュートから磁性金属体と非磁性金属体と非金属体を含む被選別物を投入することを特徴とする渦電流選別機。
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