JP3941565B2 - 駆動力源の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、回転装置のトルクを駆動力源に与えることにより、駆動力源の回転速度を制御する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両用の駆動力源を始動する場合に、駆動力源の回転数を所定回転数まで高めるための回転装置として、駆動力源のクランキング機能のみを有する回転装置と、駆動力源のクランキング機能およびその他の機能を兼備した回転装置とが知られている。後者の回転装置の一例としては、駆動力源から車輪に至る動力伝達経路に設けられたモータ・ジェネレータが挙げられる。このようなモータ・ジェネレータを有する車両において、駆動力源を始動する場合は、蓄電装置の電力をモータ・ジェネレータに供給して電動機として駆動させ、モータ・ジェネレータのトルクを駆動力源に伝達することにより、駆動力源のクランキングをおこなうことができる。
【0003】
一方、車両の惰力走行時には、車輪の運動エネルギをモータ・ジェネレータに伝達して発電をおこない、発生した電力を蓄電装置に充電することができる。このように、動力伝達経路に設けられているモータ・ジェネレータを利用して駆動力源をクランキングさせれば、駆動力源をクランキングさせるための専用の回転装置が不要となる。
【0004】
上記のように、動力伝達経路に設けられているモータ・ジェネレータのトルクを駆動力源に伝達するためには、モータ・ジェネレータと駆動力源のクランクシャフトとの間にトルク伝達装置、例えば、回転軸を配置することとなるが、この回転軸の一端をクランクシャフトに連結するためには、必然的に軸長が長くならざるを得ない。このため、モータ・ジェネレータのトルクにより駆動力源をクランキングする場合に、モータ・ジェネレータの強制振動数と、回転軸の固有振動数とが一致し、回転軸にねじり振動が発生する可能性があった。
【0005】
このように、駆動力源とモータ・ジェネレータとを回転軸により連結するとともに、モータ・ジェネレータにより駆動力源をクランキングする場合に、回転軸のねじり振動に対処する技術の一例が、特開平10−82332号公報に記載されている。この公報においては、モータ・ジェネレータにより駆動力源をクランキングする場合に、駆動力源とモータ・ジェネレータとの間の動力伝達系におけるねじり共振エネルギを検出するとともに、検出されたねじり共振エネルギが所定値以上である場合は、モータ・ジェネレータによるクランキングを停止する制御をおこなうものとされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記公報に記載された制御によれば、回転軸でねじり振動が実際に発生し、かつ、駆動力源を始動する制御を中止せざるを得ないという、2つの不都合が共に起きるという問題があった。
【0007】
この発明は上記の事情を背景としてなされたものであり、トルク伝達装置でねじり振動が発生すること、または、駆動力源の回転速度を調整する制御が中止されること、の2つの不具合のうち、少なくとも一方の不都合を回避することのできる駆動力源の制御装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、回転装置のトルクを、トルク伝達装置を経由させて駆動力源に与えることにより、前記駆動力源の回転を制御する駆動力源の制御装置において、前記トルク伝達装置で発生するねじり振動を、前記駆動力源にトルクを与えている前記回転装置の回転加速度の絶対値が所定値以上であることにより判断するねじり振動判断手段と、このねじり振動判断手段の判断結果に基づいて、前記回転装置から前記駆動力源に与えられるトルクの増加もしくは低下を抑制して前記駆動力源の回転速度を調整する制御を継続する継続手段とを備えていることを特徴とするものである。ここで、「トルクの増加もしくは低下を抑制」には、「トルクを一定に制御すること」が含まれる。
【0009】
請求項1の発明によれば、回転装置のトルクを駆動力源に与えて、駆動力源の回転速度を調整する場合に、その回転装置の回転加速度の絶対値が所定値以上であることによりねじり振動の発生が判断され、その判断結果に基づいて駆動力源に与えられるトルクの増加もしくは低下が抑制されて、駆動力源または回転装置の強制振動数と、トルク伝達装置の固有振動数とが一致する時間を可及的に短くすることができるとともに、駆動力源の回転速度を調整する制御が継続される。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記継続手段は、前記回転装置から前記駆動力源に与えられるトルクの増加を抑制して前記駆動力源の回転速度を調整する制御を継続する手段を含むことを特徴とする駆動力源の制御装置である。
【0011】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の作用・効果を得ることができる。
【0012】
さらに、請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記継続手段は、前記回転装置から前記駆動力源に与えられるトルクの低下を抑制して前記駆動力源の回転速度を調整する制御を継続する手段を含むことを特徴とする駆動力源の制御装置である。
【0013】
請求項3の発明によれば、請求項1の発明と同様の作用・効果を得ることができる。
【0014】
さらに、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記ねじり振動判断手段によって判断された前記ねじり振動の発生回転数を判断する振動回数判断手段と、この振動回数判断手段の判断結果を車両の乗員に告知する告知手段とを更に備えていることを特徴とする駆動力源の制御装置である。
【0015】
請求項4の発明によれば、回転装置のトルクを駆動力源に与えて、駆動力源の回転速度を調整する場合に、トルク伝達装置で発生するねじり共振の回数が判断され、その判断結果が車両の乗員に告知されるとともに、駆動力源の回転速度を調整する制御が継続される。
【0016】
また、請求項5の発明は、回転装置のトルクを、トルク伝達装置を経由させて駆動力源に与えることにより、前記駆動力源の回転を制御する駆動力源の制御装置において、前記トルク伝達装置で発生するねじり振動の回数を判断する振動回数判断手段と、この振動回数判断手段の判断結果に基づいて、前記回転装置から前記駆動力源に与えられるトルクを制御するトルク制御手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項5の発明によれば、回転装置のトルクを駆動力源に与えて、駆動力源の回転速度を調整する場合に、トルク伝達装置で発生するねじり共振の回数が判断されるとともに、その判断結果に基づいて回転装置のトルクが制御され、駆動力源または回転装置の強制振動数と、トルク伝達装置の固有振動数とが一致する時間が可及的に短くなる。
【0018】
請求項6の発明は、回転装置のトルクを、トルク伝達装置を経由させて駆動力源に与えることにより、前記駆動力源の回転を制御する駆動力源の制御装置において、前記トルク伝達装置でねじり振動が発生した場合に、そのねじり振動の発生時間を判断する振動時間判断手段と、この振動時間判断手段の判断結果に基づいて、前記回転装置から前記駆動力源に与えられるトルクを制御するトルク制御手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項6の発明によれば、回転装置のトルクを駆動力源に与えて、駆動力源の回転速度を調整する場合に、トルク伝達装置でねじり共振の発生時間が判断されるとともに、その判断結果に基づいて回転装置のトルクが制御され、駆動力源または回転装置の強制振動数と、トルク伝達装置の固有振動数とが一致する時間が可及的に短くなる。
【0020】
さらに、請求項7の発明は、請求項5の構成に加えて、前記振動回数判断手段の判断結果に基づいて、前記トルク伝達装置のメンテナンスを判断するメンテナンス判断手段が、更に設けられていることを特徴とするものである。
【0021】
請求項7の発明によれば、請求項5の発明と同様の作用が生じる他に、前記判断結果に基づいて、トルク伝達装置のメンテナンスが判断される。
【0022】
さらに、請求項8の発明は、請求項6の構成に加えて、前記振動時間判断手段の判断結果に基づいて、前記トルク伝達装置のメンテナンスを判断するメンテナンス判断手段が、更に設けられていることを特徴とするものである。
【0023】
請求項8の発明によれば、請求項6の発明と同様の作用が生じる他に、前記判断結果に基づいて、トルク伝達装置のメンテナンスが判断される。
【0024】
請求項9の発明は、請求項1ないし8のいずれかの構成に加えて、前記トルク伝達装置で発生するねじり振動が、前記駆動力源に対して駆動力源の回転速度の低下を抑制する向きに与えられるトルク(正のトルク)、または前記駆動力源に対して駆動力源の回転速度の上昇を抑制する向きに与えられるトルク(負のトルクもしくは回生トルク)のうち、少なくとも一方の向きのトルクにより発生するねじり振動であることを特徴とするものである。
【0025】
請求項9の発明によれば、請求項1ないし8のいずれかの発明と同様の作用が生じる他に、前記トルク伝達装置のねじり振動が、駆動力源の回転速度を増加する場合、または駆動力源の回転速度を低下させる場合のいずれかの場合に発生するねじり振動である。
【0026】
請求項10の発明は、請求項1ないし9のいずれかの構成に加えて、前記トルク伝達装置は、摩擦力によりトルク伝達をおこなう複数の摩擦部材を有し、この複数の摩擦部材同士は、伝達するべきトルクが所定値を越えた場合に相対回転する構成であることを特徴とするものである。
【0027】
請求項10の発明によれば、請求項1ないし9のいずれかの発明と同様の作用が生じる。また、摩擦部材同士の相対回転が繰り返されて摩擦部材同士の摩擦抵抗が増加すると、トルク伝達装置の軸長が見かけ長くなり、ねじり振動が増幅され易いが、このねじり振動が抑制される。各請求項において、「駆動力源の回転の制御」とは、具体的には駆動力源の回転速度(回転数)の制御を意味している。
【0028】
【発明の実施の形態】
つぎに、この発明を図面を参照しながら具体的に説明する。この発明の制御装置を適用することのできる車両の一例が、図2に示されている。図2に示されている車両50は、F・F(フロントエンジン・フロントドライブ;エンジン前置き前輪駆動)形式のハイブリッド車両であり、その車両50のパワートレーンがスケルトンで示されている。図2において、1はエンジンであり、このエンジン1としては内燃機関、具体的にはガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンまたはLPGエンジンまたはメタノールエンジンまたは水素エンジンなどを用いることができる。
【0029】
この実施例においては、便宜上、エンジン1としてガソリンエンジンを用いた場合について説明する。エンジン1は、燃料の燃焼によりクランクシャフト2から動力を出力する装置であって、吸気装置、排気装置、燃料噴射装置、点火装置、冷却装置などを備えた公知のものである。クランクシャフト2は車両50の幅方向(左右方向)に、かつ、水平に配置され、クランクシャフト2の後端部にはフライホイール3が設けられている。
【0030】
このエンジン1の外壁にケーシング4が取り付けられており、ケーシング4の内部には、インプットシャフト5、第1のモータ・ジェネレータ6、動力合成機構7、変速機構8、第2のモータ・ジェネレータ9などが設けられている。以下、これらの要素を順次説明する。まず、インプットシャフト5はクランクシャフト2と同心状に配置されている。このインプットシャフト5を構成する金属材料としては、例えば、炭素鋼、クロム鋼などが用いられる。また、インプットシャフト5であって、クランクシャフト2側の端部には、円筒形状のハブ10がスプライン嵌合されている。ハブ10の外周にはフランジ51が形成されているとともに、インプットシャフト5の外周には、環状のプレート58が設けられている。
【0031】
フランジ51とプレート58とは、インプットシャフト5の円周方向において、所定角度範囲内で相対回転可能である。このフランジ51とプレート58との間でトルク伝達をおこなうための弾性部材53が設けられている。弾性部材53は、インプットシャフト5の円周方向に伸縮自在である。これら、フランジ51、プレート58、弾性部材53によりダンパ機構12が形成されている。このダンパ機構12は、フライホイール3とインプットシャフト5との間におけるトルク変動を抑制・吸収するものである。なおプレート58の両端面には摩擦部材58A,58Bが貼り付けられている。
【0032】
また、プレート58とフライホイール3とを動力伝達可能に連結するトルクリミッタ54が設けられている。このトルクリミッタ54は、フライホイール3に固定された環状のホルダ55と、ホルダ55に保持された環状の摩擦部材56,57と、環状の板ばね57Aとを有している。摩擦部材56,57は、インプットシャフト5の軸線方向において、摩擦部材58A,58Bの両側に配置されている。そして、摩擦部材56,57により摩擦部材58A,58Bが挟み付けられるように、板ばね57Aから荷重(押圧力)が付与されている。したがって、フライホイール3とプレート58との間で伝達されるトルクは、摩擦部材58A,58Bと、摩擦部材56,57との接触面における摩擦力に応じたトルクとなる。
【0033】
この実施例では、フライホイール3とプレート58との間で伝達されるトルクが所定値を越えた場合は、摩擦部材58A,58Bと、摩擦部材56,57とが接触したまま相対回転(摺動)するように、前記荷重が設定されている。つまり、フライホイール3とプレート58との間では、前記所定値を越えるトルクは伝達されない。なお、摩擦部材56,57、ホルダ55は、鉄板、鋳物などにより構成されている。また、摩擦部材58A,58Bは、アスベスト、グラファイトなどにより構成されている。
【0034】
前記第1のモータ・ジェネレータ6は、インプットシャフト5の外側に配置され、第2のモータ・ジェネレータ9は、第1のモータ・ジェネレータ6よりもエンジン1から遠い位置に配置されている。すなわち、エンジン1と第2のモータ・ジェネレータ9との間に第1のモータ・ジェネレータ6が配置されている。第1のモータ・ジェネレータ6および第2のモータ・ジェネレータ9は、電力の供給により駆動する電動機としての機能(力行機能)と、機械エネルギを電気エネルギに変換する発電機としての機能(回生機能)とを兼ね備えている。
【0035】
第1のモータ・ジェネレータ6および第2のモータ・ジェネレータ9としては、例えば、交流同期型のモータ・ジェネレータを用いることができる。この第1のモータ・ジェネレータ6は、ケーシング4側に固定されたステータ13と、回転自在なロータ14とを有している。ステータ13は、鉄心15と、鉄心15に巻かれたコイル16とを有している。前記インプットシャフト5の外周には、中空シャフト17が取り付けられている。そして、インプットシャフト5と中空シャフト17とが相対回転可能に構成されている。前記ロータ14は中空シャフト17の外周側に連結されている。
【0036】
また、前記動力合成機構(言い換えれば動力分配機構)7は、第1のモータ・ジェネレータ6と第2のモータ・ジェネレータ9との間に設けられており、この動力合成機構7は、いわゆるシングルピニオン形式の遊星歯車機構7Aにより構成されている。すなわち、遊星歯車機構7Aは、サンギヤ18と、サンギヤ18と同心状に配置されたリングギヤ19と、サンギヤ18およびリングギヤ19に噛合するピニオンギヤ20を保持したキャリヤ21とを有している。そして、サンギヤ18と中空シャフト17とが連結され、キャリヤ21とインプットシャフト5とが連結されている。なお、リングギヤ19は、インプットシャフト5と同心状に配置された環状部材22の内周側に形成されており、この環状部材22の外周側にはカウンタドライブギヤ23が形成されている。
【0037】
一方、前記中空シャフト17と同心状に他の中空シャフト24が回転可能に配置されており、この中空シャフト24の外周側に前記第2のモータ・ジェネレータ9が配置されている。
【0038】
この第2のモータ・ジェネレータ9は、ケーシング4側に固定されたステータ25と、回転自在なロータ26とを有している。ステータ25は、鉄心27と、鉄心27に巻かれたコイル28とを有している。そして、ロータ26が中空シャフト24の外周側に連結されている。このように、インプットシャフト5および中空シャフト5と中空シャフト24とが同心状に配置されている。つまり、第1のモータ・ジェネレータ6と動力合成機構7と、第2のモータ・ジェネレータ9とが同心状に配置されている。
【0039】
前記変速機構8は、動力合成機構7と第2のモータ・ジェネレータ9との間に配置されており、この変速機構8は、いわゆるシングルピニオン形式の遊星歯車機構8Aにより構成されている。すなわち、遊星歯車機構8Aは、サンギヤ29と、サンギヤ29と同心状に配置され、かつ、環状部材22の内周に形成されたリングギヤ30と、サンギヤ29およびリングギヤ30に噛合するピニオンギヤ31を保持したキャリヤ32とを有している。このキャリヤ32はケーシング4側に固定されている。また環状部材22の外周側には、カウンタドライブギヤ23の軸線方向の両側に軸受32,33の内輪が取り付けられている。そして、第2のモータ・ジェネレータ9側に配置された軸受33は、中空シャフト24の半径方向において、コイル28の内側に空間に配置されている。
【0040】
一方、前記ケーシング4の内部には、インプットシャフト5と平行なカウンタシャフト34が設けられている。カウンタシャフト34には、カウンタドリブンギヤ35およびファイナルドライブピニオンギヤ36が形成されている。そして、カウンタドライブギヤ23とカウンタドリブンギヤ35とが噛合されている。さらに、ケーシング4の内部にはデファレンシャル37が設けられており、デファレンシャル37は、デフケース38の外周側に形成されたファイナルリングギヤ39と、デフケース38に対してピニオンシャフト40を介して取り付けられた連結された複数のピニオンギヤ41と、複数のピニオンギヤ41に噛合されたサイドギヤ42と、サイドギヤ42に連結された2本のフロントドライブシャフト43とを有している。各フロントドライブシャフト43には前輪44が連結されている。このように、ケーシング4の内部に変速機構8およびデファレンシャル37一括して組み込んだ、いわゆるトランスアクスルを構成している。
【0041】
つぎに、車両50の全体の制御系統を図3に基づいて説明する。車両50の全体を制御するコントローラとしての電子制御装置59が設けられており、この電子制御装置59は、演算処理装置(CPUまたはMPU)および記憶装置(RAMおよびROM)ならびに入出力インターフェースを主体とするマイクロコンピュータにより構成されている。この電子制御装置59に対して、イグニッションスイッチ60の信号、エンジン回転数センサ61の信号、制動要求検知センサ62の信号、車速センサ63の信号、加速要求検知センサ64の信号、シフトポジションセンサ65の信号、第1のモータ・ジェネレータ6および第2のモータ・ジェネレータ9の回転数および回転加速度を別個に検出するレゾルバ66の信号、第1のモータ・ジェネレータ6および第2のモータ・ジェネレータ9に電力を供給する蓄電装置(図示せず)の充電量(SOC;state of charge )を検知する充電量検知センサ67の信号、エンジン冷却水温センサ68の信号などが入力される。
【0042】
一方、電子制御装置59から、エンジン1の燃料噴射装置69を制御する信号、エンジン1の点火装置70を制御する信号、第1のモータ・ジェネレータ6および第2のモータ・ジェネレータ9の出力を制御する信号、告知装置71を制御する信号などが出力される。告知装置71は、エンジン1と第1のモータ・ジェネレータ6との間におけるねじり振動の状態、またはトルクリミッタ54の滑り状態、メンテナンス情報などを、車両50の乗員に対して音声、ランプ、ブザーなどの手段により告知または警告する装置である。
【0043】
ここで、図2に示された構成とこの発明の構成との対応関係を説明すれば、エンジン1が駆動力源に相当し、インプットシャフト5、ハブ10、ダンパ機構12、トルクリミッタ54、摩擦部材56,57,58A,58Bが、トルク伝達装置に相当し、第1のモータ・ジェネレータ6がこの発明の回転装置に相当する。
【0044】
上記のように構成された車両50においては、電子制御装置59に入力される信号、および電子制御装置59に予め記憶されているデータに基づいて、エンジン1の出力、第1のモータ・ジェネレータ6および第2のモータ・ジェネレータ9が制御される。
【0045】
まず、電子制御装置59に入力される信号に基づいて、エンジン1を始動させる要求が発生した場合について説明する。この場合は、第1のモータ・ジェネレータ20が電動機として駆動されて、第1のモータ・ジェネレータ20のトルクがサンギヤ18に伝達される。すると、リングギヤ19が反力要素となってキャリヤ21が回転し、キャリヤ21のトルクがインプットシャフト5を経由してハブ10に伝達される。ハブ10のトルクは、ダンパ機構12、トルクリミッタ54、摩擦部材56,57、ホルダ55、フライホイール3を経由してクランクシャフト2に伝達されて、クランクシャフト2がクランキングされる。クランクシャフト2の回転数が所定回転数以上になると、燃料噴射制御および点火時期制御がおこなわれて、エンジン1が自律回転可能になる。なお、エンジン1が自律回転している場合、または空転している場合において、電子制御装置59に入力される信号などに基づいて、エンジン回転数を低下させる要求が発生することもある。
【0046】
また、車両50を前進走行させる場合は、エンジン1または第2のモータ・ジェネレータ9の少なくとも一方のトルクを車輪44に伝達する。このエンジン1および第2のモータ・ジェネレータ9の出力は、電子制御装置59に入力される信号、および電子制御装置59に記憶されているデータに基づいて制御される。まず、エンジン1が駆動されている場合は、エンジン1のトルクが、トルクリミッタ54、ダンパ機構12、メインシャフト5、キャリヤ21を経由して環状部材22に伝達される。
【0047】
この環状部材22のトルクは、カウンタドライブギヤ23、カウンタドリブンギヤ35、カウンタシャフト34、ファイナルドライブピニオンギヤ36、デファレンシャル37を介して前輪44に伝達され、駆動力が発生する。また、エンジン1のトルクをキャリヤ21に伝達する際に、そのトルクの一部を第1のモータ・ジェネレータ6に伝達し、かつ、第1のモータ・ジェネレータ6を発電機として機能させ、発生した電力を蓄電装置に充電することもできる。
【0048】
さらに、車両50を前進走行させる場合は、第2のモータ・ジェネレータ9を電動機として駆動させ、そのトルクを動力分配機構7に伝達することもできる。第2のモータ・ジェネレータ9のトルクが中空シャフト24を介して変速機構8のサンギヤ29に伝達されると、キャリヤ32が反力要素として作用するとともに、サンギヤ29の回転速度が減速され、かつ、サンギヤ29の回転方向とは逆方向にリングギヤ30を回転させる方向に動力が伝達される。したがって、エンジン1を駆動し、かつ、第2のモータ・ジェネレータ9を電動機として駆動させれば、エンジン1の動力および第2のモータ・ジェネレータ9の動力が動力合成機構7に入力されて合成され、合成された動力が前輪44に伝達される。
【0049】
このように、車両50を前進走行させる場合は、車速、加速要求、エンジン1の燃費などの条件に基づいて、エンジン1または第2のモータ・ジェネレータ9のうち、少なくとも一方を駆動力源として、車両50を走行させることができる。
【0050】
これに対して、車両50を後進走行(後退)させる場合は、第2のモータ・ジェネレータ9を電動機として駆動させ、そのトルクを車輪44に伝達する。ここで、第2のモータ・ジェネレータ9の回転方向は、車両50が前進走行する場合とは逆になる。
【0051】
さらに、車両50が惰力走行する場合は、車輪44の運動エネルギに対応するトルクが、前記とは逆の経路を経て環状部材22に伝達される。この環状部材22に伝達されたトルクは、エンジン1を始動する場合と同じ経路を経てエンジン1に伝達され、エンジンブレーキ力が発生する。
【0052】
ところで、図2に示すパワートレーンにおいては、エンジン1と第1のモータ・ジェネレータ6との間の動力伝達経路に、インプットシャフト5などのトルク伝達装置が配置されている。したがって、エンジン1を始動させる要求に基づいて、第1のモータ・ジェネレータ6のトルクによりエンジン1をクランキングする場合、または、エンジン回転数を低下させる要求に基づいて、第1のモータ・ジェネレータ6のトルクによりエンジン1の回転数を低下させる場合のいずれにおいても、インプットシャフト5にねじり荷重が与えられる。
【0053】
そして、エンジン1を始動する場合において、起振源である第1のモータ・ジェネレータ6の強制振動数と、エンジン1の固有振動数とが一致した場合に、第1のモータ・ジェネレータ6とエンジン1とを連結している動力伝達系、特に、インプットシャフト5のねじり振動(ねじり共振)が発生する問題がある。これに対して、エンジン1の回転数を低下させる場合は、起振源となるエンジン1の強制振動数と、第1のモータ・ジェネレータ6の固有振動数とが一致した場合に、インプットシャフト5のねじり振動が発生する問題がある。
【0054】
この実施例では、インプットシャフト5であって、エンジン1の反対側の端部に、第1のモータ・ジェネレータ6とインプットシャフト5とを連結するキャリヤが配置されている一方、インプットシャフト5であって、キャリヤ21とは反対側の端部に、ハブ10が連結されているため、インプットシャフト5の軸線方向において、トルクの入力部分と出力部分との距離が最も長く、インプットシャフト5のねじれ角度が大きくなり易い。
【0055】
また、この実施例では、インプットシャフト5とエンジン1との間の動力伝達経路にトルクリミッタ54が設けられているため、上記ねじり共振とともに、摩擦部材56,57と摩擦部材58A,58Bとの滑りが発生する可能性がある。そこで、この実施例では、エンジン1を始動する場合と、エンジン1を停止させる場合とに分けて、以下に述べるような制御により、インプットシャフト5のねじり共振およびトルクリミッタ54の滑りに対処している。なお、エンジン1を始動する制御とは、エンジン回転速度を高める制御であり、エンジン1を停止させる制御とは、エンジン回転速度を低下させる制御である。
【0056】
[エンジンを始動させる場合の制御例]
ここで、エンジン1を始動させる制御とは、エンジン回転速度を高め、かつ、エンジン回転数を、自律回転可能な回転数とする制御を意味している。具体的には、停止しているエンジン1を始動する場合と、所定回転速度以下で、空転しているエンジン1を始動する場合がある。
【0057】
(第1の実施例)
まず、第1の実施例を、図1のフローチャートに基づいて説明する。図1の制御例は、請求項1、請求項9、請求項10に対応する。まず、第1のモータ・ジェネレータ6を電動機として機能させ、そのトルクによりエンジン1をクランキングする際に、第1のモータ・ジェネレータ6の実際のトルクTgを、目標トルクTg1に近づけるように制御する(ステップS1)。第1のモータ・ジェネレータ6のトルクは、エンジン回転速度を上昇させる向きのトルク言い換えれば、“正のトルク”である。ついで、第1のモータ・ジェネレータ6によりクランキングをおこなっている時点のエンジン回転数Ne、第1のモータ・ジェネレータ6の回転数Ng、第1のモータ・ジェネレータ6の回転加速度dNgを検出する(ステップS2)。
【0058】
そして、エンジン回転数Neと第1のモータ・ジェネレータ6の回転数Ngとの差の絶対値が、所定値aよりも大きいか否かが判断される(ステップS3)。ステップS3で肯定的に判断された場合は、トルクリミッタ54の滑りが発生していると考えられる。そこで、ステップS3で肯定的に判断された場合は、第1のモータ・ジェネレータ6の目標トルクTg1を、前回の目標トルクTg1よりも下げて(ステップS4)、ステップS1に戻り、エンジン1のクランキングをおこなう。
【0059】
このステップS4で目標トルクTg1を下げる場合、一旦、目標トルクTg1を「零」にして、その後に、前回の目標トルクTg1よりも低い目標トルクTg1を設定することもできる。
【0060】
これに対して、ステップS3で否定的に判断された場合は、回転加速度dNgの絶対値が、所定値bよりも大きいか否かが判断される(ステップS5)。ステップS5で肯定的に判断された場合は、インプットシャフト5のねじり振動が発生していると考えられる。そこで、ステップS5で肯定的に判断された場合も、ステップS4に進む。
【0061】
一方、ステップS5で否定的に判断された場合は、エンジン回転数Neが所定値cよりも高回転数になったか否かが判断される(ステップS6)。ステップS6で否定的に判断された場合はステップS1に戻る。ステップS6で肯定的に判断された場合は燃料噴射制御および点火制御を実行し(ステップS7)、この制御ルーチンを終了する。
【0062】
このように第1の実施例によれば、停止しているエンジン1を自律回転させる始動制御の過程において、第1のモータ・ジェネレータ6のトルクによりエンジン1をクランキングする場合に、エンジン1をインプットシャフト5のねじり振動またはトルクリミッタ54の滑りが発生した場合でも、エンジン1の始動制御が継続される。したがって、エンジン1の始動要求を達成できる。
【0063】
ここで、図1に示された機能的手段とこの発明の構成との対応関係を説明すれば、ステップS2,S3,S5がこの発明のねじり振動判断手段に相当し、ステップS1,S4がこの発明の継続手段に相当する。また、第1のモータ・ジェネレータ6から、エンジン回転速度を上昇させるように与えられるトルク(正のトルク)が、この発明の「駆動力源の回転速度の低下を抑制する向きに与えられるトルク」に相当する。
【0064】
(第2の実施例)
つぎに、エンジン1を始動する場合の他の制御例を、図4のフローチャートに基づいて説明する。この図4の制御例は、請求項2、請求項9、請求項10に対応する。図4のフローチャートにおいて、図1のフローチャートと同じ番号が付されたステップは、図1のフローチャートのステップと同じ制御をおこなう。図4のフローチャートにおいては、ステップS3で肯定的に判断された場合、またはステップS5で肯定的に判断された場合は、第1のモータ・ジェネレータ6の目標トルクTg1として、前回の目標トルクTg1に所定値を加えたトルクを選択し(ステップS12)、ステップS1に戻る。
【0065】
すなわち、ステップS12で選択されたトルクを、ステップS1で次回の目標トルクTg1として設定される。このようにして、第1のモータ・ジェネレータ6のトルクを高めて、エンジン1をクランキングする制御が継続される。つまり、インプットシャフト5のねじり振動またはトルクリミッタ54の滑りが発生する回転領域は、所定の回転領域であるが、図4の制御をおこなえば、その回転領域を短時間で通過することができる。
【0066】
ここで、図4に示された機能的手段とこの発明の構成との対応関係を説明すれば、ステップS2,S3,S5がこの発明のねじり振動判断手段に相当し、ステップS1,S12がこの発明の継続手段に相当する。
【0067】
(第3の実施例)
ところで、第1のモータ・ジェネレータ6に電力を供給する蓄電装置の充電量が低下した場合や、低温時である場合は、第1のモータ・ジェネレータ6の出力不足が発生し易い。また、低温時にはエンジン1の潤滑用オイルの粘度が高まって、クランクシャフト2の回転抵抗が増加するため、エンジン1のクランキングに必要なトルクが高まる。したがって、このような条件下でエンジン1を始動すると、インプットシャフト5の振動や、トルクリミッタ54の滑りが、一層発生しやすい。
【0068】
このような事態に対処する制御例を図5に基づいて説明する。図5の制御例は、請求項3、請求項9、請求項10に対応する。この図5においては、エンジン1を始動する要求が発生すると、まず、第1のモータ・ジェネレータ6を駆動する前に、エンジン冷却水温および蓄電装置の充電量が検出される(ステップS13)。ついで、エンジン冷却水温に基づいて、エンジン1をクランキングするための必要トルクT1が算出され、かつ、蓄電装置の充電量に基づいて、第1のモータ・ジェネレータ6から出力可能な最大トルクT2が算出される(ステップS14)。つまり、エンジン冷却水温に基づいて潤滑用オイルの粘度を推定し、潤滑用オイルの粘度に基づいて、必要トルクを推定している。
【0069】
そして、最大トルクT2が必要トルクT1よりも低いか否かが判断され(ステップS15)、このステップS15で肯定的に判断された場合は、第1のモータ・ジェネレータ6によるエンジン1のクランキングを実行することなく、この制御ルーチンを終了する。なお、この場合は、第2のモータ・ジェネレータ9を電動機として駆動させ、第2のモータ・ジェネレータ9のトルクを車輪44に伝達して走行する。
【0070】
これに対して、ステップS15で否定的に判断された場合は、第1のモータ・ジェネレータ6のトルクによりエンジン1をクランキングする制御を開始するとともに(ステップS15A)、実際のエンジン回転数が所定値cを越えたか否かが判断される(ステップS6)。このステップS6で否定的に判断された場合は、ステップS13に戻り、ステップS6で肯定的に判断された場合はステップ7に進む。このステップ7の内容は、図1のステップS7と同じである。
【0071】
この図5の制御例によれば、第1のモータ・ジェネレータ6のトルクによりエンジン1をクランキングする制御を実行する前に、第1のモータ・ジェネレータ6のトルクによりエンジン1をクランキングした場合を予測し、インプットシャフト5のねじり共振およびトルクリミッタ54の滑りが発生すると予測された場合は、第1のモータ・ジェネレータ6によるクランキングを初めからおこなわない。したがって、インプットシャフト5のねじり共振およびトルクリミッタ54の滑りを、未然に回避できる。
【0073】
(第4の実施例)
エンジン1を始動する場合の他の制御例を図6に基づいて説明する。この図6の制御例は、請求項4、請求項9、請求項10に対応する。図6において、図1と同じ内容のステップについては、図1と同じステップ番号を付してある。図6においては、ステップS3またはステップS5で肯定的に判断された場合は、トルクリミッタ54の滑りが発生した回数と、インプットシャフト5でねじり共振が発生した回数とが、別個にカウンタNに積算される(ステップS16)。
【0074】
ついで、カウンタNに積算された累積回数が所定回数dを越えたか否かが判断される(ステップS17)。なお、ステップS17の判断は、トルクリミッタ54の滑りが発生した回数と、インプットシャフト5でねじり共振が発生した回数とが、別個におこなわれる。ステップS17で、トルクリミッタ54の滑りが発生した回数、およびインプットシャフト5でねじり共振が発生した回数が、共に、所定回数d以下である場合は、ステップS17で否定的に判断されて、ステップS6に進む。
【0075】
これに対して、ステップS17で、トルクリミッタ54の滑りが発生した回数、または、インプットシャフト5でねじり共振が発生した回数の少なくとも一方の回数が、所定回数dを越えた場合は、ステップS17で肯定的に判断されて、ステップS18に進む。ステップS18では、トルクリミッタ54の滑りが発生した回数、または、インプットシャフト5でねじり共振が発生した回数の少なくとも一方の回数が、所定回数dを越えたことを告知装置71により告知または警告して、ステップS6に進む。
【0076】
なお、図6のフローチャートを、ステップS16において、トルクリミッタ54で滑りが発生した場合の累積時間、またはインプットシャフト5のねじり振動が発生した場合の累積時間をカウントし、前記ステップS17において、各累積時間が所定時間を越えたか否かを判断し、そのステップS17で肯定的に判断された場合はステップ18に進み、そのステップ17で否定的に判断された場合はステップS6に進むようなルーチンに変更することもできる。
【0077】
さらに、ステップS18において、トルクリミッタ54で滑りが発生した累積時間または累積回数のうちの少なくとも一方に基づいて、トルクリミッタ54のメンテナンスを判断し、かつ、その判断結果を告知することもできる。さらにまた、ステップS18において、インプットシャフト5でねじり振動が発生した累積時間または累積回数のうちの少なくとも一方に基づいて、インプットシャフト5のメンテナンスを判断し、かつ、その判断結果を告知することもできる。ここで、メンテナンスを判断とは、サービスによる、故障の有無の判断、耐久性の判断、交換時期の判断、保全・手入れの判断などを意味している。
【0078】
このような制御をおこなうことにより、車両50の乗員が、トルクリミッタ54の滑り状態、インプットシャフト5のねじり振動状態、トルクリミッタ54のメンテナンス、インプットシャフト5のメンテナンスなどの情報を認識および判断できる。なお、図6の制御例においては、トルクリミッタ54の滑りまたはインプットシャフト5のねじり振動発生後も、ステップS6,S1またはステップS7のように、エンジン1の始動制御が継続される。
【0079】
ここで、図6に示された機能的手段とこの発明の構成との対応関係を説明すれば、ステップS2,S3,S16,S17が、この発明の振動回数判断手段および振動時間判断手段に相当し、ステップS18がこの発明の告知手段およびメンテナンス判断手段に相当し、ステップS1,S6がこの発明の継続手段に相当する。
【0080】
(第5の実施例)
エンジン1を始動する場合の他の制御例を図7に基づいて説明する。この図7の制御例は、請求項5、請求項9、請求項10に対応する。図7において、図1と同じ内容のステップについては、図1と同じステップ番号を付してある。図7の制御例においては、ステップS16についで、カウンタNに積算された累積回数が所定回数eを越えたか否かが判断される(ステップS19)。なお、ステップS19の判断は、トルクリミッタ54の滑りが発生した回数と、インプットシャフト5でねじり共振が発生した回数とが、別個におこなわれる。ステップS17で、トルクリミッタ54の滑りが発生した回数、およびインプットシャフト5でねじり共振が発生した回数が、共に、所定回数e以下である場合は、ステップS19で否定的に判断されて、ステップS6に進む。
【0081】
これに対して、ステップS19で、トルクリミッタ54の滑りが発生した回数、または、インプットシャフト5でねじり共振が発生した回数の少なくとも一方の回数が、所定回数eを越えた場合は、ステップS19で肯定的に判断されて、ステップS20に進む。ステップS20では、目標トルクTg1に所定トルクfを加える制御をおこない、ステップS6に進む。
【0082】
なお、図7のフローチャートを、ステップS16において、トルクリミッタ54で滑りが発生した場合の累積時間、またはインプットシャフト5のねじり振動が発生した場合の累積時間をカウントし、前記ステップS19において、各累積時間が所定時間を越えたか否かを判断し、そのステップS19で肯定的に判断された場合はステップ20に進み、そのステップ19で否定的に判断された場合はステップS6に進むようなルーチンに変更することもできる。
【0083】
図7の制御例においても、図1の制御例と同じ内容部分については、図1の制御例と同じ効果を得られる。また、図7の制御例においては、トルクリミッタ54の滑りが発生した回数、または、インプットシャフト5でねじり共振が発生した回数の少なくとも一方の回数が、所定回数eを越えた場合に、第1のモータ・ジェネレータ6のトルクを増加することができる。さらに、トルクリミッタ54の滑りが発生した累積時間、または、インプットシャフト5でねじり共振が発生した累積時間の少なくとも一方の累積時間が、所定累積時間を越えた場合に、第1のモータ・ジェネレータ6のトルクを増加することができる。なお、ステップS20において、目標トルクTg1から所定トルクfを減じる制御をおこない、ステップS6に進むこともできる。したがって、インプットシャフト5のねじり振動またはトルクリミッタ54の滑りが発生する回転領域を短時間で通過することができる。
【0084】
ここで、図7に示された機能的手段とこの発明の構成との対応関係を説明すれば、ステップS2,S3,S5,S16,S19が、この発明の振動回数判断手段および振動時間判断手段に相当し、ステップS20がこの発明のトルク制御手段に相当する。
【0085】
上記の各制御例によれば、エンジン1の回転速度を上昇させる場合において、インプットシャフト5でねじり振動が発生すること、およびエンジン1の回転速度を上昇する制御が中止されること、の2つの不具合のうち、少なくとも一方を回避することができる。
【0086】
また、上記各制御例において、所定値cと温度(例えばエンジン冷却水温度)とを対応させたマップを予め用意し、温度に応じて所定値cを選択することもできる。また、目標トルクTg1と温度(例えばエンジン冷却水温度)とを対応させたマップを予め用意し、温度に応じて目標トルクTg1を選択することもできる。このような制御をおこなうことにより、潤滑用オイルの粘度が高く、エンジン1のクランキングに必要なトルクが高い場合や、燃料への点火および燃焼が不安定な場合でも、クランキングを円滑におこなうことができる。
【0087】
[エンジンを停止させる場合の制御例]
ここで、エンジン1を停止させる制御とは、車両50の停止状態、または走行状態において、エンジン回転速度を低下させる制御の一例である。
(第6の実施例)
第6の実施例を、図8のフローチャートに基づいて説明する。図8の制御例は、請求項1、請求項9、請求項10に対応する。まず、エンジン1を停止させる要求が発生すると、燃料噴射制御および点火制御が停止され、エンジン回転速度が低下する。つまり、エンジン1は、いわゆる空転状態となる。そして、第1のモータ・ジェネレータ6を発電機として機能させ、その回生トルク(負のトルク)によりエンジン回転速度の低下を促進する場合に、第1のモータ・ジェネレータ6により発生する実際のトルクTgを、目標トルクTg1に近づけるように制御する(ステップS21)。ついで、第1のモータ・ジェネレータ6の回生トルクをインプットシャフト5に与えた場合のエンジン回転数Ne、第1のモータ・ジェネレータ6の回転数Ng、第1のモータ・ジェネレータ6の回転加速度dNgを検出する(ステップS22)。
【0088】
そして、エンジン回転数Neと第1のモータ・ジェネレータ6の回転数Ngとの差の絶対値が、所定値aよりも大きいか否かが判断される(ステップS23)。ステップS23で肯定的に判断された場合は、トルクリミッタ54の滑りが発生していると考えられる。そこで、ステップS23で肯定的に判断された場合は、第1のモータ・ジェネレータ6の目標トルクTg1を、前回の目標トルクTg1よりも下げて(ステップS24)、ステップS11に戻る。
【0089】
このステップS24で目標トルクTg1を下げる場合、一旦、目標トルクTg1を「零」にして、その後に、前回の目標トルクTg1よりも低い目標トルクTg1を設定することもできる。
【0090】
これに対して、ステップS23で否定的に判断された場合は、回転加速度dNgの絶対値が、所定値bよりも大きいか否かが判断される(ステップS25)。ステップS25で肯定的に判断された場合は、インプットシャフト5のねじり振動が発生していると考えられる。そこで、ステップS25で肯定的に判断された場合も、ステップS24に進む。
【0091】
一方、ステップS25で否定的に判断された場合は、エンジン回転数Neが所定値cよりも低回転数になったか否かが判断される(ステップS26)。ステップS26で否定的に判断された場合はステップS21に戻る。ステップS26で肯定的に判断された場合は、第1のモータ・ジェネレータ6の回生トルクを零に制御し(ステップS27)、この制御ルーチンを終了する。
【0092】
このように第6の実施例によれば、エンジン1が回転している場合に、第1のモータ・ジェネレータ6の回生トルクにより、エンジン1の回転速度を低下させる過程において、インプットシャフト5のねじり振動またはトルクリミッタ54の滑りが発生した場合でも、エンジン1の回転速度を低下させる制御が継続される。したがって、エンジン1の回転速度を低下させる要求を満足できる。
【0093】
ここで、図8に示された機能的手段とこの発明の構成との対応関係を説明すれば、ステップS22,S23,S25がこの発明のねじり振動判断手段に相当し、ステップS21,S24がこの発明の継続手段に相当する。また、第1のモータ・ジェネレータ6から、エンジン回転速度を低下させるように与えられるトルク(回生トルク)が、この発明の「駆動力源の回転速度の上昇を抑制する向きに与えられるトルク」に相当する。
【0094】
(第7の実施例)
つぎに、燃料噴射制御および点火制御を停止するとともに、エンジン回転速度の低下を促進する場合の他の制御例を、図9のフローチャートに基づいて説明する。この図9の制御例は、請求項2、請求項9、請求項10に対応する。図9のフローチャートにおいて、図8のフローチャートと同じ番号が付されたステップは、図8のフローチャートのステップと同じ制御をおこなう。図9のフローチャートにおいては、ステップS23で肯定的に判断された場合、またはステップS25で肯定的に判断された場合は、第1のモータ・ジェネレータ6の目標トルクTg1として、前回の目標トルクTg1に所定値を加えた回生トルクを選択し(ステップS28)、ステップS21に戻る。
【0095】
すなわち、ステップS28で選択されたトルクが、ステップS21で次回の目標トルクTg1として設定される。このようにして、第1のモータ・ジェネレータ6の回生トルクを高めて、エンジン回転速度を低下させる制御が継続される。つまり、インプットシャフト5のねじり振動またはトルクリミッタ54の滑りが発生する回転領域は、所定の回転領域であるが、図9の制御をおこなえば、その回転領域を短時間で通過することができる。
【0096】
ここで、図9に示された機能的手段とこの発明の構成との対応関係を説明すれば、ステップS22,S23,S25がこの発明のねじり振動判断手段に相当し、ステップS21,S28がこの発明の継続手段に相当する。
【0097】
(第8の実施例)
ところで、低温時にはエンジン1の潤滑用オイルの粘度が高まって、クランクシャフト2の回転抵抗が増加するため、エンジン1のクランキングに必要なトルクは比較的低くて済む。しかしながら、蓄電装置の充電量が所定値以上である場合は、第1のモータ・ジェネレータ6による発電が規制され、回生トルクを高めにくい。したがって、必要トルクと回生トルクとの相対関係によっては、エンジン回転速度を低下させる際に、インプットシャフト5の振動や、トルクリミッタ54の滑りが発生する可能性がある。
【0098】
このような事態に対処する制御例を図10に基づいて説明する。図10の制御例は、請求項3、請求項9、請求項10に対応する。この図10においては、エンジン1を停止させる要求が発生すると、燃料噴射制御および点火制御を停止する前であり、かつ、第1のモータ・ジェネレータ6から回生トルクを出力する前に、エンジン冷却水温および蓄電装置の充電量が検出される(ステップS33)。ついで、エンジン冷却水温に基づいて、エンジン回転速度を目標回転速度に低下させるための必要トルク(回生トルク)T1が算出され、かつ、蓄電装置の充電量に基づいて、第1のモータ・ジェネレータ6から出力可能な最大トルク(回生トルク)T2が算出される(ステップS34)。つまり、エンジン冷却水温に基づいて潤滑用オイルの粘度を推定し、潤滑用オイルの粘度に基づいて、必要トルクを推定している。
【0099】
そして、最大トルクT2が必要トルクT1よりも低いか否かが判断され(ステップS35)、このステップS35で肯定的に判断された場合は、この制御ルーチンを終了する。つまり、燃料噴射制御および点火制御が継続される一方、第1のモータ・ジェネレータ6からは回生トルクを出力しない。
【0100】
これに対して、ステップS35で否定的に判断された場合は、燃焼噴射制御を停止し、かつ、点火制御を停止するとともに、第1のモータ・ジェネレータ6から回生トルクを出力し、エンジン回転速度の低下を促進する。(ステップS36)。ついで、エンジン回転数が所定回転数c未満まで低下したか否かが判断され(ステップS26)、ステップS26で肯定的に判断されるまで、ステップS26を繰り返す。そして、ステップS26で肯定的に判断された場合は、ステップS27を経由してこの制御ルーチンを終了する。
【0101】
この図10の制御例によれば、第1のモータ・ジェネレータ6の回生トルクによりエンジン回転速度を低下させる制御を実行する前に、第1のモータ・ジェネレータ6から回生トルクを出力した場合を予測し、インプットシャフト5のねじり共振およびトルクリミッタ54の滑りが発生すると予測された場合は、エンジン1を停止させる制御自体を実施しない。したがって、インプットシャフト5のねじり共振およびトルクリミッタ54の滑りを、未然に回避できる。
【0103】
(第9の実施例)
エンジン回転速度の低下を促進させる場合の他の制御例を図11に基づいて説明する。この図11の制御例は、請求項4、請求項9、請求項10に対応する。図11において、図8と同じ内容のステップについては、図9と同じステップ番号を付してある。図11においては、ステップS23またはステップS25で肯定的に判断された場合は、トルクリミッタ54の滑りが発生した回数と、インプットシャフト5でねじり共振が発生した回数とが、別個にカウンタNに積算される(ステップS37)。
【0104】
ついで、カウンタNに積算された累積回数が所定回数dを越えたか否かが判断される(ステップS38)。なお、ステップS38の判断は、トルクリミッタ54の滑りが発生した回数と、インプットシャフト5でねじり共振が発生した回数とが、別個におこなわれる。ステップS38で、トルクリミッタ54の滑りが発生した回数、およびインプットシャフト5でねじり共振が発生した回数が、共に、所定回数d以下である場合は、ステップS38で否定的に判断されて、ステップS26に進む。
【0105】
これに対して、ステップS38で、トルクリミッタ54の滑りが発生した回数、または、インプットシャフト5でねじり共振が発生した回数の少なくとも一方の回数が、所定回数dを越えた場合は、ステップS38で肯定的に判断されて、ステップS39に進む。ステップS39では、トルクリミッタ54の滑りが発生した回数、または、インプットシャフト5でねじり共振が発生した回数の少なくとも一方の回数が、所定回数dを越えたことを告知装置71により告知または警告して、ステップS26に進む。
【0106】
なお、図11のフローチャートを、ステップS37において、トルクリミッタ54で滑りが発生した場合の累積時間、またはインプットシャフト5のねじり振動が発生した場合の累積時間をカウントし、前記ステップS38において、各累積時間が所定時間を越えたか否かを判断し、そのステップS38で肯定的に判断された場合はステップ39に進み、そのステップ38で否定的に判断された場合はステップS26に進むようなルーチンに変更することもできる。
【0107】
さらに、ステップS37において、トルクリミッタ54で滑りが発生した累積時間または累積回数のうちの少なくとも一方に基づいて、トルクリミッタ54のメンテナンスを判断し、かつ、その判断結果を告知することもできる。さらにまた、ステップS39において、インプットシャフト5でねじり振動が発生した累積時間または累積回数のうちの少なくとも一方に基づいて、インプットシャフト5のメンテナンスを判断し、かつ、その判断結果を告知することもできる。ここで、メンテナンスを判断とは、サービスによる、故障の有無の判断、耐久性の判断、交換時期の判断、保全・手入れの判断などを意味している。
【0108】
このような制御をおこなうことにより、車両50の乗員が、トルクリミッタ54の滑り状態、インプットシャフト5のねじり振動状態、トルクリミッタ54のメンテナンス、インプットシャフト5のメンテナンスなどの情報を認識および判断できる。なお、図11の制御例においては、トルクリミッタ54の滑りまたはインプットシャフト5のねじり振動発生後も、ステップS26,S21においては、エンジン回転速度を低下させる制御が継続される。
【0109】
ここで、図11に示された機能的手段とこの発明の構成との対応関係を説明すれば、ステップS22,S23,S37,S38が、この発明の振動回数判断手段および振動時間判断手段に相当し、ステップS39がこの発明の告知手段およびメンテナンス判断手段に相当し、ステップS21,S26がこの発明の継続手段に相当する。
【0110】
(第10の実施例)
エンジン1を始動する場合の他の制御例を、図12のフローチャートに基づいて説明する。このフローチャートは、請求項5、請求項9、請求項10に対応する。図12において、図8と同じ内容のステップについては、図8と同じステップ番号を付してある。図12のフローチャートにおいては、ステップS37についで、カウンタNに積算された累積回数が所定回数eを越えたか否かが判断される(ステップS40)。なお、ステップS40の判断は、トルクリミッタ54の滑りが発生した回数と、インプットシャフト5でねじり共振が発生した回数とが、別個におこなわれる。ステップS40で、トルクリミッタ54の滑りが発生した回数、およびインプットシャフト5でねじり共振が発生した回数が、共に、所定回数e以下である場合は、ステップS40で否定的に判断されて、ステップS26に進む。
【0111】
これに対して、ステップS40で、トルクリミッタ54の滑りが発生した回数、または、インプットシャフト5でねじり共振が発生した回数の少なくとも一方の回数が、所定回数eを越えた場合は、ステップS40で肯定的に判断されて、ステップS41に進む。ステップS41では、目標トルクTg1に所定トルクfを加えて回生トルクを強める制御をおこない、ステップS26に進む。
【0112】
なお、図12のフローチャートを、ステップS37において、トルクリミッタ54で滑りが発生した場合の累積時間、またはインプットシャフト5のねじり振動が発生した場合の累積時間をカウントし、前記ステップS40において、各累積時間が所定時間を越えたか否かを判断し、そのステップS40で肯定的に判断された場合はステップ41に進み、そのステップ40で否定的に判断された場合はステップS26に進むようなルーチンに変更することもできる。
【0113】
図12の制御例においても、図8の制御例と同じ部分では、図8の制御例と同じ効果を得られる。また、図12の制御例においては、トルクリミッタ54の滑りが発生した回数、または、インプットシャフト5でねじり共振が発生した回数の少なくとも一方の回数が、所定回数eを越えた場合に、第1のモータ・ジェネレータ6の回生トルクを増加することができる。さらに、トルクリミッタ54の滑りが発生した累積時間、または、インプットシャフト5でねじり共振が発生した累積時間の少なくとも一方の累積時間が、所定累積時間を越えた場合に、第1のモータ・ジェネレータ6の回生トルクを増加することができる。なお、ステップS41において、目標トルクTg1から所定トルクfを減じて回生トルクを弱める制御をおこない、ステップS26に進むこともできる。このように、図13の制御例においても、インプットシャフト5のねじり振動またはトルクリミッタ54の滑りが発生する回転領域を短時間で通過することができる。
【0114】
ここで、図12に示された機能的手段とこの発明の構成との対応関係を説明すれば、ステップS22,S23,S25,S37,S40が、この発明の振動回数判断手段および振動時間判断手段に相当し、ステップS41がこの発明のトルク制御手段に相当する。
【0115】
このように、エンジン回転速度を低下させる各制御例において、所定値cと温度(例えばエンジン冷却水温度)とを対応させたマップを予め用意し、温度に応じて所定値cを選択することもできる。また、目標トルクTg1と温度(例えばエンジン冷却水温度)とを対応させたマップを予め用意し、温度に応じて目標トルクTg1を選択することもできる。このような制御をおこなうことにより、潤滑用オイルの粘度が低く、エンジン1のクランキングに必要なトルクが低い場合に、必要以上に回生トルクが発生することを防止できる。
【0116】
また、図8ないし図13の制御例では、エンジン1が自律回転している場合に、燃料噴射制御および点火制御を中止して、エンジン1が空転状態となる場合に、第2のモータ・ジェネレータ6の回生トルクにより、エンジン回転速度の低下を促進し、エンジン1を停止させる制御を主として述べているが、エンジン1が空転している場合に、エンジン1を停止させることなく、エンジン回転速度を低下させる際に、図8ないし図13の制御を適用することもできる。さらに、燃料噴射制御および点火制御が実行され、かつ、車輪44の運動エネルギに相当するトルクが車輪44からエンジン1に伝達されている場合(つまり、惰力走行状態または減速状態である場合)に、第1のモータ・ジェネレータ6の回生トルクによりエンジン回転速度の低下を促進させるために、図8ないし図13の制御を適用することもできる。
【0117】
なお、図2のパワートレーンにおいては、第1のモータ・ジェネレータ6のトルクを直接制御することにより、エンジン回転速度を制御するように構成されているが、第1のモータ・ジェネレータ6とインプットシャフト5との間に変速機構(図示せず)を設け、その変速機構の変速比を制御することにより、エンジン回転速度を制御するように構成されたパワートレーンに対しても、各制御例を適用できる。この場合、第1のモータ・ジェネレータ6のトルクに代えて、変速機構の変速比を制御することとなる。
【0118】
また、課題を解決するための手段として、特許請求の範囲に対応して記載した各手段において、各手段に記載されている事項の少なくとも一つを削除することもできる。また、発明の実施の形態に記載した各種の事項の少なくとも一つを各手段のいずれかに追加することもできる。また、各種の制御例の2つ以上の制御例同士を組み合わせて(順次)実行すること、または並行しておこなうこともできる。
【0119】
また、各請求項に記載されている「ねじり振動判断手段」を「ねじり振動判断器」または「ねじり振動判断用コントローラ」と読み替え、「継続手段」を「継続器」または「継続用コントローラ」と読み替え、「振動回数判断手段」を「振動回数判断器」または「振動回数判断用コントローラ」と読み替え、「振動時間判断手段」を「振動時間判断器」または「振動時間判断用コントローラ」と読み替え、「トルク制御手段」を「トルク制御器」または「トルク制御用コントローラ」と読み替え、「メンテナンス判断手段」を「メンテナンス判断器」または「メンテナンス判断用コントローラ」と読み替えることもできる。各、「器」または「コントローラ」は、電子制御装置に相当する。
【0120】
また、「ねじり振動判断手段」を「ねじり振動判断ステップ」と読み替え、「継続手段」を「継続ステップ」と読み替え、「振動回数判断手段」を「振動回数判断ステップ」と読み替え、「振動時間判断手段」を「振動時間判断ステップ」と読み替え、「トルク制御手段」を「トルク制御ステップ」と読み替え、「メンテナンス判断手段」を「メンテナンス判断ステップ」と読み替え、「駆動力源の制御装置」を、「駆動力源の制御方法」と読み替えることもできる。各制御ステップの機能は、電子制御装置の機能である。
【0121】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1の発明によれば、駆動力源または回転装置の強制振動数と、トルク伝達装置の固有振動数とが一致して、トルク伝達装置でねじり振動が発生する時間する時間を可及的に短くすることができるとともに、駆動力源の回転速度を調整する制御を継続できる。したがって、駆動力源の回転速度を上昇させる場合、または低下させる場合のいずれにおいても、トルク伝達装置でねじり振動が発生すること、および駆動力源の回転速度を調整する制御が中止されることの2つの不具合を、共に回避することができる。
【0122】
請求項2の発明によれば、駆動力源に与えられるトルクの低下を抑制することにより、駆動力源または回転装置の強制振動数と、トルク伝達装置の固有振動数とが一致して、トルク伝達装置のねじり振動が発生する時間を可及的に短くすることができるとともに、駆動力源の回転速度を調整する制御が継続される。したがって、駆動力源の回転速度を上昇させる場合、または低下させる場合のいずれにおいても、トルク伝達装置でねじり振動が発生すること、および駆動力源の回転速度を調整する制御が中止されることの2つの不具合を、共に回避することができる。
【0123】
請求項3の発明によれば、請求項1の発明と同様の作用・効果を得ることができる。
【0124】
請求項4の発明によれば、トルク伝達装置で発生するねじり共振の回数が判断され、その判断結果が車両の乗員に告知されるとともに、駆動力源の回転速度を調整する制御を継続できる。また、駆動力源の回転速度を調整する制御が中止されることを回避することができる。
【0125】
請求項5の発明によれば、トルク伝達装置で発生するねじり共振の回数を判断し、その判断結果に基づいて回転装置のトルクを制御するため、トルク伝達装置でねじり振動が発生する時間を可及的に短くすることができる。また、駆動力源の回転速度を調整する制御が中止されることを回避することができる。
【0126】
請求項6の発明によれば、トルク伝達装置でねじり共振が発生する時間を判断するとともに、その判断結果に基づいて回転装置のトルクを制御するため、トルク伝達装置でねじり振動が発生する時間を可及的に短くすることができる。また、駆動力源の回転速度を調整する制御が中止されることを回避することができる。
【0127】
請求項7の発明によれば、請求項5の発明と同様の効果を得られる他に、前記判断結果に基づいて、トルク伝達装置のメンテナンスを判断できる。したがって、トルク伝達装置の保守、点検が容易となる。
【0128】
請求項8の発明によれば、請求項6の発明と同様の効果を得られる他に、前記判断結果に基づいて、トルク伝達装置のメンテナンスを判断できる。したがって、トルク伝達装置の保守、点検が容易となる。
【0129】
請求項9の発明によれば、請求項1ないし8のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、トルク伝達装置のねじり共振が、駆動力源の回転速度を増加する場合、または駆動力源の回転速度を低下させる場合、のいずれの場合においても、ねじり共振を抑制できる。
【0130】
請求項10の発明によれば、請求項1ないし9のいずれかの発明と同様の効果を得られる。また、摩擦部材同士の相対回転が繰り返されて摩擦部材同士の摩擦抵抗が増加すると、トルク伝達装置の軸長が見かけ長くなり、ねじり振動が増幅され易いが、このねじり振動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一制御例を示すフローチャートである。
【図2】 この発明の各制御例を適用できるハイブリッド車のパワートレーンを示すスケルトン図である。
【図3】 図2に示すハイブリッド車の制御系統を示すブロック図である。
【図4】 この発明の他の制御例を示すフローチャートである。
【図5】 この発明の他の制御例を示すフローチャートである。
【図6】 この発明の他の制御例を示すフローチャートである。
【図7】 この発明の他の制御例を示すフローチャートである。
【図8】 この発明の他の制御例を示すフローチャートである。
【図9】 この発明の他の制御例を示すフローチャートである。
【図10】 この発明の他の制御例を示すフローチャートである。
【図11】 この発明の他の制御例を示すフローチャートである。
【図12】 この発明の他の制御例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…エンジン、 5…インプットシャフト、 6…第1のモータ・ジェネレータ、 10…ハブ、 12…ダンパ機構、 54…トルクリミッタ、 56,57,58A,58B…摩擦部材、 59…電子制御装置。
Claims (10)
- 回転装置のトルクを、トルク伝達装置を経由させて駆動力源に与えることにより、前記駆動力源の回転を制御する駆動力源の制御装置において、
前記トルク伝達装置で発生するねじり振動を、前記駆動力源にトルクを与えている前記回転装置の回転加速度の絶対値が所定値以上であることにより判断するねじり振動判断手段と、
このねじり振動判断手段の判断結果に基づいて、前記回転装置から前記駆動力源に与えられるトルクの増加もしくは低下を抑制して前記駆動力源の回転速度を調整する制御を継続する継続手段と
を備えていることを特徴とする駆動力源の制御装置。 - 前記継続手段は、前記回転装置から前記駆動力源に与えられるトルクの増加を抑制して前記駆動力源の回転速度を調整する制御を継続する手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の駆動力源の制御装置。
- 前記継続手段は、前記回転装置から前記駆動力源に与えられるトルクの低下を抑制して前記駆動力源の回転速度を調整する制御を継続する手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の駆動力源の制御装置。
- 前記ねじり振動判断手段によって判断された前記ねじり振動の発生回転数を判断する振動回数判断手段と、
この振動回数判断手段の判断結果を車両の乗員に告知する告知手段と
を更に備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の駆動力源の制御装置。 - 回転装置のトルクを、トルク伝達装置を経由させて駆動力源に与えることにより、前記駆動力源の回転を制御する駆動力源の制御装置において、
前記トルク伝達装置で発生するねじり振動の回数を判断する振動回数判断手段と、
この振動回数判断手段の判断結果に基づいて、前記回転装置から前記駆動力源に与えられるトルクを制御するトルク制御手段と
を備えていることを特徴とする駆動力源の制御装置。 - 回転装置のトルクを、トルク伝達装置を経由させて駆動力源に与えることにより、前記駆動力源の回転を制御する駆動力源の制御装置において、
前記トルク伝達装置でねじり振動が発生した場合に、そのねじり振動の発生時間を判断する振動時間判断手段と、
この振動時間判断手段の判断結果に基づいて、前記回転装置から前記駆動力源に与えられるトルクを制御するトルク制御手段と
を備えていることを特徴とする駆動力源の制御装置。 - 前記振動回数判断手段の判断結果に基づいて、前記トルク伝達装置のメンテナンスを判断するメンテナンス判断手段が、更に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の駆動力源の制御装置。
- 前記振動時間判断手段の判断結果に基づいて、前記トルク伝達装置のメンテナンスを判断するメンテナンス判断手段が、更に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の駆動力源の制御装置。
- 前記トルク伝達装置で発生するねじり振動が、前記駆動力源に対して駆動力源の回転速度の低下を抑制する向きに与えられるトルク、または前記駆動力源に対して駆動力源の回転速度の上昇を抑制する向きに与えられるトルクのうち、少なくとも一方の向きのトルクにより発生するねじり振動であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の駆動力源の制御装置。
- 前記トルク伝達装置は、摩擦力によりトルク伝達をおこなう複数の摩擦部材を有し、この複数の摩擦部材同士は、伝達するべきトルクが所定値を越えた場合に相対回転する構成であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の駆動力源の制御装置。
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