JP3939476B2 - 高周波用磁性材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波用磁性材料に係るもので、特に100MHz以上の高周波領域において使用するインダクタ用に適した高周波用磁性材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インダクタの使用される範囲が数百MHzからGHz帯といった高周波領域に広がりつつある。従来、高周波コイルにはNi−Zn系フェライトが主として用いられているが、周波数が高くなると損失の増加などの問題が生じるので、フェロックスプレーナ等を用いることが検討されているが、ほとんど実用化されていない。また、高周波領域では非磁性体を用いて空心コイルを構成して利用することもあるが、非磁性体を用いたのでは高いインダクタンスやQを得ることが困難となる。
【0003】
発明者は、フェロックスプレーナの一種であるコバルト−バリウム−ストロンチウム系フェライトの組成を改良し、高いμQ積が得られ、しかも高周波領域において使用できる磁性材料を得るために、特願平8-82004号でコバルトの一部を銅で置換するものを提案した。さらに低温焼成を可能にするために特願平9-157906号において、バリウムーストロンチウムの一部を鉛で置換するものを提案した。これによって、銀の内部電極が形成可能な950°Cまで焼成温度を下げることができた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、銀の融点よりも低い温度である950°C以下の温度で焼成可能で、かつ透磁率の高い高周波用磁性材料を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、六方晶の磁性材料、すなわちフェロックスプレーナ系磁性材料のバリウム−ストロンチウムの比率を選択することによって、上記の課題を解決するものである。
【0006】
すなわち、本発明による高周波用磁性材料は、一般式
2(Co0 . 6Cu0 . 4)O・3(BaxSr0 . 9 −xPb0 . 1)O・yFe2O3
で表される組成(x、yはモル)において
0.6≦x≦0.75
9≦y<12
であることに特徴を有するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
2(Co0 . 6Cu0 . 4)O・3(BaxSr0 . 9 −xPb0 . 1)O・yFe2O3におけるバリウムとストロンチウムの比率をバリウムが多い範囲を選択することによって、高周波領域における透磁率を向上させることができ、それによって高いμQ積を得ることができる。
【0008】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0009】
まず、本発明による高周波用磁性材料の製造方法について説明する。材料としてCoO、CuO、PbO、BaCO3,SrCO3,Fe2O3を所定の組成となるように秤量し、ボールミルで20時間混合した。これを1200°Cの温度で2時間仮焼し、この仮焼物を遊星ボールミルで粉砕した。これに、バインダー等を加えて成形し、910−990°Cの温度で焼成して本発明による材料を得た。
【0010】
本発明による高周波用磁性材料の特性の測定は、通常用いられる短絡同軸法により行った。焼成前の寸法で外径25mm、内径18mm、厚さ5mmに成形してトロイダル状のコアを得て各種特性を測定した。測定周波数は300MHzとした。なお、焼成温度によって特性に差が生じるので、焼成温度ごとに各サンプルの測定結果を得た。
【0011】
図1は、各焼成温度ごとにバリウム−ストロンチウムの比を変えたサンプルの初透磁率(μiac)を測定した結果を示すものである。なお、ここでyの値は9.8としてある。横軸にバリウム−ストロンチウム−鉛におけるバリウムの比率を示し、縦軸に初透磁率μiacを示してある。
【0012】
折れ線11は焼成温度を910°Cとしたものの特性を示す。バリウムの比率が0.45のときの初透磁率が3.07であったが、比率を0.6とすると初透磁率が3.75、比率を0.75とすると初透磁率が5.91と上昇し、比率が0.9(ストロンチウムが0を意味する)のときは初透磁率が4.69であった。
【0013】
折れ線12は焼成温度を930°Cとしたものの特性を示す。バリウムの比率が0.45のときの初透磁率が3.71であったが、比率を0.6とすると初透磁率が5.42、比率を0.75とすると初透磁率が6.88と上昇し、比率が0.9(ストロンチウムが0を意味する)のときは初透磁率が4.60であった。
【0014】
折れ線13は焼成温度を950°Cとしたものの特性を示す。バリウムの比率が0.45のときの初透磁率が4.94であったが、比率を0.6とすると初透磁率が6.38、比率を0.75とすると初透磁率が6.69と上昇し、比率が0.9(ストロンチウムが0を意味する)のときは初透磁率が4.95であった。
【0015】
折れ線14は焼成温度を970°Cとしたものの特性を示す。バリウムの比率が0.45のときの初透磁率が5.81であったが、比率を0.6とすると初透磁率が6.94、比率を0.75とすると初透磁率が6.67と上昇し、比率が0.9(ストロンチウムが0を意味する)のときは初透磁率が5.87であった。
【0016】
折れ線15は焼成温度を990°Cとしたものの特性を示す。バリウムの比率が0.45のときの初透磁率が6.14であったが、比率を0.6とすると初透磁率が7.34、比率を0.75とすると初透磁率が7.33と上昇し、比率が0.9(ストロンチウムが0を意味する)のときは初透磁率が6.62であった。
【0017】
上記のように、バリウムの比率が0.6、0.75のときにはいずれも初透磁率が上昇したことが確認された。そして、焼成温度を910°Cまで下げても従来950°C以上の温度で焼成していた素子と同程度の特性が得られることが確認できた。
【0018】
また、バリウムの比率を0.75としたときのμQ積を測定してみると、910°Cのとき196.93、930°Cのとき200.07、950°Cのとき205.63、970°Cのとき205.29、990°Cのとき213.49となっており、特に950°C以下の場合には比率が0.45のときよりも30%以上向上していた。
【0019】
上記のように、バリウムの比率をストロンチウムより多くする範囲で、高周波領域における特性の良好な磁性材料が得られた。そして、Baの一部をSrとPbで同時に置換することでAgの内部導体との同時焼成が可能な、より低い焼成温度で特性の良好な磁性材料が得られた。
【0020】
図2は、xを0.75としたときに、Fe2O3の量yを変えたときの透磁率の変化を示したものである。yが 9 以上、 12 未満の範囲で実用可能な透磁率となるが、特に、yが 9 以上 11 程度の範囲でそれ以外のものよりも高い透磁率が得られる。
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、100MHz以上の高周波領域において、透磁率の大きい磁性材料が得られ、しかも比較的大きなμQ積を有する磁性材料が得られる。これによって、インダクタンスの大きい、UHF帯からそれ以上の周波数帯域に適したインダクタ用の磁性材料が得られる。
【0022】
また、焼成温度を910°C程度まで下げることができ、導体材料として銀を用いることも可能となって、電気的特性も良好なインダクタ等を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による高周波用磁性材料の特性の説明図
【図2】 本発明による高周波用磁性材料の特性の説明図
Claims (2)
- 一般式
2(Co0.6Cu0.4)O・3(BaxSr0.9−xPb0.1)O・yFe2O3
で表される組成(x、yはモル)において
0.6≦x≦0.75
9≦y< 12
である初透磁率5.42以上の高周波用磁性材料。 - 一般式
2(Co0.6Cu0.4)O・3(BaxSr0.9−xPb0.1)O・yFe2O3
で表される組成(x、yはモル)において
0.6≦x≦0.75
9≦y< 12
である初透磁率5.42以上の高周波インダクタ用磁性材料。
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