JP3939121B2 - 成形時に粘度上昇するスチレン系樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

成形時に粘度上昇するスチレン系樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、スチレン系樹脂組成物の製造方法とその溶融成形品の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、一定温度、一定歪速度下での伸長時の粘度が、通常のポリスチレンに比べ、伸長時間の経過に伴って上昇するスチレン系樹脂組成物の製造方法とそれを用いる成形品の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
スチレン系樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂に次ぐ生産規模を有する汎用の樹脂であり、その生産量は、1995年度で215万トンと言われている。現存する熱可塑性樹脂の中でももっとも加工しやすい樹脂であり、溶融温度と分解温度の差が広く、成形時の溶融粘度が低い上、透明性も優れているという特徴がある。したがって、ポリスチレンは、射出成形、ブロー成形、フィルム成形、発泡成形、紡糸等により、ボトル、タンク、シート、フィルム、発泡体、糸などの様々な加工品、具体的には、試薬ボトルやカセットケース等の透明成形品、電化製品、断熱材等の原料として、日常の広い範囲で使用されている。これら各種のポリスチレンの成形工程では、一般的にポリスチレンに伸長変形が加えられ、その変形倍率が極めて大きい。そのため、大きな伸長変形下で溶融粘度を高くするような原料スチレンを用いる必要がある。
【0003】
一般に、熱可塑性樹脂では、温度を上昇させ、流動性を持たせて成形するが、その際、溶融粘度が大きければ成形に大きな圧力を要するため、ある程度溶融粘度を低下させて成形する必要がある。しかし、溶融粘度を低下させれば耐衝撃性等の成形品の物性が低下するだけでなく、成形工程の終盤、偏肉などの問題が起こりやすくなる。例えば、ブロー成形でのパリソンの垂れ下がり(ドローダウン)等、成形機のダイを出た以降の自由表面下での変形が大きな問題となる。このようなドローダウンを防ぐには、大きい伸長変形下で溶融粘度を高くすることが有効であることが知られている。そして、このような伸長変形と溶融粘度の関係は、実際に成形を行って評価する以外に、一定歪み速度で長時間伸長粘度を測定し、時間経過に伴う伸長粘度の上昇からも評価できることが明らかになっている(1991年日本レオロジー学会誌 19巻 174〜180頁)。
【0004】
ポリスチレンの伸長粘度を上昇させる方法としては、様々なものが提案されており、一部で実用化されている。具体的には、ポリスチレンの主鎖に分岐構造を導入する方法(特開平6−80712、特開平7−166013、特開平7−278217)が知られている。しかし、このような高分子の主鎖に分岐を導入する方法は、特殊な重合方法を必要とするため、樹脂のコストが高くなるという問題があった。また、伸長粘度の上昇が十分でなく、とくにシートやボトルの成形性、または厚肉の発泡成形性の改良を要するものであった。
【0005】
また、超高分子量のポリマーを少量加える方法も知られており(XIIIth Int.Congress on Rheology, Cambridge, UK, 678-681 (Aug.2000))、伸長粘度が測定時間とともに増大することが報告されている。しかし、樹脂の価格が非常に高く、成形性が十分でないため、これまでのポリスチレン樹脂の代替品となり得るものではなかったのが実情である。
【0006】
したがって、スチレン系樹脂成形品の製造において、コストを大きく上昇させることなく、溶融成形時の伸長粘度が伸長時間にともなって上昇するような安価で汎用性の高いスチレン系樹脂やスチレン系樹脂組成物は知られていなかったのが実情である。
【0007】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、溶融成形時の伸長粘度が伸長時間に伴って上昇するような安価で汎用性の高いスチレン系樹脂組成物を提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、まず第1には、一定温度、一定歪速度下において、伸長粘度が伸長時間とともに上昇するスチレン系樹脂組成物の製造方法であって、ポリスチレンに、少なくとも、1種のスチレン−ジエン系共重合体混合加熱によりジエン部分架橋させることを特徴とするスチレン系樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0009】
第2には、この出願の発明は、スチレン−ジエン系共重合体スチレン系樹脂組成物全重量に対して0.5〜50重量%含有させる前記スチレン系樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0010】
さらに、この出願の発明は、第3には、220℃以上に加熱する前記いずれかのスチレン系樹脂組成物の製造方法を、また、第4には、ジエンがブタジエンである前記いずれかのスチレン系樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
発明者らは、鋭意研究の結果、ポリスチレンに、スチレン−ジエン系共重合体を混合した後、加熱処理したポリスチレン系樹脂組成物において、一定温度、一定歪速度の条件下で、伸長時間とともに伸長粘度が上昇する挙動が見られることを見出した。一方、加熱処理しない同様の組成物では、伸長時間に伴う伸長粘度の上昇は見られないことも明らかになった。本出願の発明者らは、このような知見から、ポリスチレンに、スチレン−ジエン系共重合体を混合した後、ジエンを部分架橋することにより、一定温度、一定歪速度下での伸長時間とともに伸長粘度が上昇するような樹脂組成物が得られることを見出し、本願発明にいたったものである。
【0013】
この出願の発明のスチレン系樹脂組成物は、一定温度、一定歪速度下での伸長粘度が伸長時間とともに上昇するものであり、ポリスチレンに、少なくとも、スチレン−ジエン系共重合体を混合し、ジエンを部分架橋して得られることを特徴とする。
【0014】
このとき、ポリスチレンとスチレン−ジエン系共重合体の組成は、とくに限定されないが、好ましくは、スチレン−ジエン系共重合体がスチレン系樹脂組成物全重量に対して0.5〜50重量%含有されるものとする。スチレン−ジエン系共重合体が0.5重量%未満の場合には、十分な伸長粘度の増大が見られず、50重量%より多い場合には、ポリスチレンの特性が発揮されなくなるため、好ましくない。また、スチレン−ジエン系共重合体において、スチレンとジエンの組成比はとくに限定されないが、好ましくは、スチレン−ジエン系共重合体全量に対してスチレン部位が5〜80重量%、より好ましくは、30〜50重量%とする。これにより、得られるスチレン系樹脂組成物において、伸長粘度が十分に増大するようになる。
【0015】
また、ジエン部位の部分架橋は、発明者らの研究によれば、加熱温度を、220℃以上、より好ましくは、240℃以上とすることにより、歪み速度に関わらず、伸長粘度の上昇が見られるようになり、好ましい。すなわち、これらの温度では、部分架橋反応が十分に進行することが示されている。もちろん、このような加熱温度はこの範囲に限定されず、ポリスチレンとスチレン−ジエン系共重合体の組成、スチレン−ジエン系共重合体におけるスチレンとジエンの組成比、ジエンの種類、あるいは分子量等によって適宜選択できる。
【0016】
以上のとおりのこの出願の発明のスチレン系樹脂組成物において、ジエンは、炭素間2重結合を有するジオレフィンや脂環式化合物のシクロペンタンなど、どのようなものであってもよい。具体的には、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が好ましいものとして例示される。
【0017】
さらに、この出願の発明では、以上のとおりのスチレン系樹脂組成物を溶融成形して得られるスチレン系樹脂組成物成形品をも提供する。例えば、この出願の発明のスチレン系樹脂組成物を原料とし、押出成形、射出成形、ブロー成形等の各種成形方法によって成形されるもの、具体的には、ボトル、フィルム、シート、あるいは各種射出成形品が挙げられる。
【0018】
以下、添付した図面に沿って実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、この発明は以下の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【0019】
【実施例】
<実施例>
ポリスチレン(PS、Mw = 22,000、Mw/Mn = 2.1、旭化成工業(株)(PS666))とポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)トリブロック共重合体(SBS、Mw =80,000、Mw/Mn = 1.3、組成比:S/B/S = 20/60/20、旭化成工業(株)(タフプレン))を混合 90/10で5重量%THFに添加し、溶液とした後、3日間攪拌して均一に溶解させた。これを平板状金属トレーに液面の深さが約1cmとなるように注いだ。
【0020】
ドラフト内で3日間自然乾燥し、溶媒を蒸発させた後、さらに80℃の真空乾燥機にて1日置き、溶媒を除去してPS/SBS混合樹脂とした。このものの加熱処理条件を、なし、 220 60 分、 240 60 分、 260 60 分とし、その後、一軸伸長粘度を測定した。
【0021】
すなわち、得られたPS/SBSシートを粉砕ペレット状にした後、長さ約55mm、幅7mm、厚さ1〜2mmの直方体状に圧縮成形し、試料片とした。
【0022】
この試料片を、一軸伸長レオメーター(RME、Rheometrics Scientific Co. Ltd.)のクランプ間にセットし、約10分間180℃に保持した後、歪み速度0.5、0.2、0.1、0.05、0.02、および0.01s-1で180℃の一軸伸長粘度を測定した。
【0023】
結果を図(図(a)加熱なし、(b)220℃60分、(c)240℃60分、(d)260℃60分)に示した。
【0024】
より、PS/SBS混合樹脂を加熱処理しない場合には、伸長時間の経過に伴う伸長粘度の上昇は見られなかった。一方、220℃以上の温度で60分間加熱した場合には、いずれの歪み速度においても、伸長粘度は、伸長時間の経過とともに明らかな増大を示した。
【0025】
これより、PS中にSBSを添加するだけでなく、加熱によりSBSが部分架橋することが重要な因子であることが示された。
<比較例>
実施例と同様に、PS/SBS = 100/0、95/5、90/10のPS/SBS混合樹脂を調製し加熱処理を行わずに、実施例と同様の方法で一軸伸長粘度を測定した。
【0026】
結果を図(図(a)PS/SBS = 100/0、(b)PS/SBS = 95/5、(c)PS/SBS = 90/10)に示した。
【0027】
より、PS/SBS混合樹脂においてSBSの部分架橋を行わない場合には、伸長時間に伴う伸長粘度の上昇は見られないことが確認された。
【0028】
これより、この出願の発明のスチレン系樹脂組成物は、ポリスチレンおよびスチレン−ジエン系共重合体を混合し、スチレン−ジエン系共重合体を部分架橋することにより、従来のポリスチレンやポリスチレン系樹脂組成物に比較して高い成形性が得られるものであることが示された。
【0029】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この発明によって、溶融成形時の伸長粘度が伸長時間に伴って上昇するような安価で汎用性の高いスチレン系樹脂組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施例においてPS/SBS混合樹脂(PS/SBS = 90/10)の一軸伸長粘度測定を行った際の伸長時間と伸長粘度の関係を、各加熱処理条件下で比較した図である。((a)加熱処理なし、(b)220℃ 60分、(c)240℃ 60分、(d)260℃ 60分)
【図】 この発明の比較例においてPS/SBS混合樹脂の一軸伸長粘度測定を行った際の伸長時間と伸長粘度の関係を示した図である。((a)PS、(b)PS/SBS = 95/5、(c)PS/SBS = 90/10)

Claims (4)

  1. 一定温度、一定歪速度下において、伸長粘度が伸長時間とともに上昇するスチレン系樹脂組成物の製造方法であって、ポリスチレンに、少なくとも、1種のスチレン−ジエン系共重合体を混合し、加熱によりジエンを部分架橋させることを特徴とする前記のスチレン系樹脂組成物の製造方法。
  2. スチレン−ジエン系共重合体を、スチレン系樹脂組成物全重量に対して0.5〜50重量%含有させる請求項1のスチレン系樹脂組成物の製造方法。
  3. 220℃以上に加熱する請求項1または2のいずれかのスチレン系樹脂組成物の製造方法。
  4. ジエンは、ブタジエンである請求項1ないし3のいずれかのスチレン系樹脂組成物の製造方法。
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