JP3939060B2 - ブラックマトリックス用カーボンブラック - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば液晶カラーフィルターのブラックマトリックスとして好適に使用されるカーボンブラックに関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶ディスプレイは、液晶となる結晶材料を透明電極間に挟み、電圧を印加して液晶の分子配列を変えることにより入射光の透過を制御し、反射板と偏光板を組み合わせることにより画像や文字などを表示するものであり、消費電力が少なくて済むため、時計、カメラ、各種電気機器などの表示装置として広く使用されている。
【0003】
この液晶ディスプレイをカラー化したカラー用液晶ディスプレイは、画素ごとに赤、青、緑のフィルターを付けて光の三原色をつくり、各画素の明暗を制御して色の変化を表現するものである。一般に、液晶カラーフィルターは透明基板上に赤、青、緑の三原色の画素をつくり、これらの画素を組み合わせることにより色を表現するものであり、各画素間の表示コントラストを強調するために各画素間の光を遮断する遮光層(ブラックマトリックス)が形成されている。
【0004】
このブラックマトリックスには、当然、遮光性に優れていることが要求されるが、その他に、表面が平滑で、層の厚さが薄いこと、導電性が小さいこと、などが必要とされている。すなわち、表面平滑性が劣り、層厚が厚いと三原色の色パターンを形成する際に凹凸が生じることなり、また導電性が高いと印加電圧により導電性配線が短絡し誤作動を生じることになるためである。
【0005】
従来から、ブラックマトリックスには、▲1▼フォトリソグラフィ法によるCr、Ni、Alなどの金属薄膜からなるブラックマトリックス、▲2▼黒色顔料を分散した黒色有機樹脂膜からなるブラックマトリックス、が用いられてきた。しかしながら、金属薄膜により形成されたブラックマトリックスは導電性が高く、また金属薄膜は反射率が高いので表示品位が損なわれる難点がある。
【0006】
一方、カーボンブラックは黒色顔料として優れた黒色度を備えており、例えばカーボンブラックを分散した光重合性樹脂組成物を透明基板に塗布してブラックマトリックスを形成する方法やカーボンブラックを含有するインキを透明基板に印刷してブラックマトリックスを形成する方法などが開発されている。
【0007】
例えば、このブラックマトリックス用のカーボンブラック、あるいはカーボンブラックを用いたブラックマトリックスとして、樹脂中に少なくともカーボンブラックを含むインキにおいて、前記カーボンブラックが、カーボンブラック100g 当たり40〜130mlの吸油量を有し、かつ950℃で7分間加熱したときの揮発減量分が3重量%以上であって、樹脂100重量部に対して10〜50重量部の割合で配合されることを特徴とする液晶カラーフィルター遮光層用インキ(特開平8−262223号公報)、樹脂中に遮光剤を分散せしめてなる樹脂ブラックマトリックスにおいて、該遮光剤として下記(A)〜(D)のうち少なくとも1つを満たすカーボンブラックを用いることを特徴とする樹脂ブラックマトリックス(特開平9−15403 号公報)、などが提案されている。但し、(A)PH値が6.5以下、(B)表面のカルボキシル基濃度〔COOH〕が、全炭素原子あたりのモル比で、0.001<〔COOH〕、(C)表面の水酸基濃度〔OH〕が全炭素原子あたりのモル比で、0.001<〔OH〕、(D)表面のスルホン基濃度〔SO3 H〕が、全炭素原子あたりのモル比で0.001<〔SO3 H〕である。
【0008】
更に、黒色顔料としてカーボンブラックを含有するブラックマトリックスにおいて、該カーボンブラックの平均粒子径が40〜300nmであることを特徴とするカラーフィルター用ブラックマトリックス(特開平9−15419 号公報)、黒色顔料としてカーボンブラックを含有するブラックマトリックスにおいて、該カーボンブラックは、950℃における揮発分中のCO及びCO2 から算出した全酸素量が、カーボンブラックの表面積100m2当たり7mg以上であることを特徴とするカラーフィルター用ブラックマトリックス(特開平9−22653 号公報)、平均粒径50〜200nm、DBP吸油量10〜40ml/100g の範囲にあるカーボンブラックを含有することを特徴とするブラックマトリックス用カラーフィルターレジスト(特開平9−80220 号公報)、平均一次粒子径35〜150nm、凝集体径60〜300nm、ジブチルフタレート吸油量30〜90ml/100g のカーボンブラックを樹脂で被覆してなることを特徴とする黒色レジストパターン形成用カーボンブラック(特開平11−80583 号公報)、なども提案されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、これらカーボンブラックを黒色顔料として用いるブラックマトリックスにおいて、黒色度が高く、導電性が小さく、また分散液の粘度が小さく、ブラックマトリックス形成用に好適な黒色インキを作製することのできるカーボンブラックの提供を目的として開発されたものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明によるブラックマトリックス用カーボンブラックは、窒素吸着比表面積(N 2 SA)が50m 2 /g以上、DBP吸収量が140cm 3 /100g以下であるカーボンブラック表面の少なくとも一部が酸性、中性の官能基で化学修飾され、X線光電子分光法により測定した全炭素原子当たりの全酸素原子の原子比(酸素結合エネルギーの強度/炭素結合エネルギーの強度)が0.1以上であることを構成上の特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
カーボンブラック粒子の表面に存在する官能基は、カーボンブラックを分散媒中に分散させる場合に分散媒との濡れ性を左右する要因となり、またカーボンブラック粒子相互の界面における接触抵抗に影響する。すなわち、官能基はブラックマトリックス形成用のカーボンブラック分散樹脂組成物やインキを作製する際の分散媒中への分散性能および形成したブラックマトリックスの電気抵抗を決定する要因となるものである。
【0012】
本発明のブラックマトリックス用カーボンブラックは、その表面の少なくとも一部が酸性、中性の官能基で化学修飾されたものである。化学修飾はカーボンブラックを湿式酸化処理することにより行われ、酸化処理によりカーボンブラック表面には、=O、−COOH、−OHなどの官能基が形成される。本発明のブラックマトリックス用カーボンブラックは、これらの官能基量としてX線光電子分光法により測定した全炭素原子当たりの全酸素原子の原子比(酸素結合エネルギーの強度/炭素結合エネルギーの強度)の値を0.1以上に設定する点を特徴とする。
【0013】
すなわち、XPSやESCAなどのX線光電子分光法により測定される酸素結合エネルギーの強度/炭素結合エネルギーの強度比(原子比)の値が0.1未満であると、ブラックマトリックス形成用の印刷インキとした場合に溶媒中への分散不良や粘度上昇などが生じ、また形成したブラックマトリックスの絶縁不良が生じる。
【0014】
本発明のブラックマトリックス用カーボンブラックの特性は、窒素吸着比表面積(N2SA)が50m2/g以上、DBP吸収量が140cm3/100g以下のものが使用される。窒素吸着比表面積(N2SA)が50m2/g未満であると溶媒に分散させた際に、分散液中におけるカーボンブラックの平均粒径が大きくなるため、ブラックマトリックスの黒色度および光遮蔽力が低下することとなり、また遮光層の膜厚が厚くなる。更に、DBP吸収量が140cm3/100gを越えると樹脂と混合した場合、粘度が増大して遮光層の平滑性が損なわれることとなる。
【0015】
カーボンブラックを化学修飾するための湿式酸化処理は、例えば、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過硫酸塩、過硼酸塩、過炭酸塩などのアルカリ金属塩やアンモニウム塩などの酸化剤水溶液中にカーボンブラックを添加して酸化することにより行われ、酸化剤水溶液の濃度、カーボンブラックの添加量、反応温度、反応時間などを適宜に制御して、全炭素原子当たりの全酸素原子の原子比(酸素結合エネルギーの強度/炭素結合エネルギーの強度)が0.1以上となるように処理される。
【0016】
本発明のブラックマトリックス用カーボンブラックは、上記の湿式酸化処理したカーボンブラック分散液を限外濾過膜により分散液中に残存する塩を分離した後、濃縮し、更に真空乾燥して乾燥したのち、ミキサーにより粉砕することにより得ることができる。
【0017】
このカーボンブラックを用いて、ブラックマトリックス形成用の樹脂組成物や印刷インキを作製し、樹脂組成物を透明基板に塗布する方法、インキを透明基板に印刷する方法、などによりブラックマトリックスが形成される。分散媒としては、表面張力が低く、沸点、粘度が低い有機性溶媒が好ましく、例えば、エタノール、N-メチル-2- ピロリドン、2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホアキシド、ヘキサメチルホスファミド、などの極性溶媒が好ましい。また、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、などと水との混合溶液も好ましく用いることができる。
【0018】
この場合、酸化処理したカーボンブラックを樹脂にて被覆することにより、更に絶縁性に優れたブラックマトリックスを形成すことができる。被覆処理する樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、グリプタル樹脂、エポキシ樹脂、アルキルベンゼン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル酸樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエステル樹脂、など耐熱性、流動性、カーボンブラックの分散性に支障を来さない限り、各種の樹脂を使用することができる。
【0019】
ブラックマトリックス形成用のカーボンブラックと溶媒、樹脂との混合比は、カーボンブラック2〜20wt%、溶媒70〜96wt%、樹脂2〜10wt%の範囲に調節することが望ましい。カーボンブラックが2wt%未満であると遮光性が低く、20wt%を越えると膜厚が厚くなり、樹脂分が2wt%未満であると膜強度が低下し、10wt%を越えると粘度が増大して膜厚の制御が困難となり、溶媒が70wt%未満であると流動性が低下し、96wt%を越えると遮光性が低下する傾向があるためである。
【0020】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して具体的に説明する。
【0021】
実施例1〜3、比較例1〜3
表1に示した窒素吸着比表面積(N2SA)、DBP吸収量が異なるカーボンブラックを用いて、カーボンブラック150g を濃度1.5Nの過硫酸アンモニウム水溶液3000mlに添加し、反応温度60℃、反応時間10時間、攪拌速度300rpm で処理した。この酸化反応液から限外濾過膜(旭化成、AHP-1010、分画分子量 50000)により反応液中に残存する塩を分離したのち、固形分20%に濃縮した。次いで、真空乾燥機により110℃で乾燥したのち、ミキサーにて粉砕してカーボンブラック試料を作製した。これらのカーボンブラック試料について酸素結合エネルギー強度と炭素結合エネルギー強度をSurface Science Instruments 社製 S-Prove ESCA 2803型により測定し、全炭素原子当たりの全酸素原子の原子比を求め、表1に併記した。
【0022】
比較例4〜9
酸化処理として、オゾン発生機(日本オゾン社製 IOT-4A6)を用いて発生電圧200V、オゾン発生量18 g/hで5時間処理してカーボンブラック試料を作製した。これらのカーボンブラック試料について、実施例1〜3と同様に酸素結合エネルギー強度と炭素結合エネルギー強度をSurface Science Instruments 社製 S-Prove ESCA 2803型により測定し、全炭素原子当たりの全酸素原子の原子比を求めて、その結果を表1に併記した。
【0023】
【表1】
【0024】
これらのカーボンブラック試料について、その電気比抵抗を下記の方法により測定した。また、各カーボンブラック試料20g に、エタノール10g 、N,N-ジメチルホルムアミド68g 、フェノール樹脂2g を加え、軽く混合したのち、ホモジナイザーにより微分散させてカーボンブラック分散液を調製した。この分散液の粘度および表面張力を下記の方法により測定した。
▲1▼電気比抵抗;
乾燥したカーボンブラック試料をミキサーにて粉砕し、直径20mm、内容量110mlのテフロン容器にサンプル2.0g を入れて、50kg/cm2の圧力でプレスした状態の電気抵抗を測定した。
▲2▼粘度;
回転振動式粘度計(山一電機株式会社製、VM-100A-L )により、温度25℃における粘度を測定した。
▲3▼表面張力;
表面張力測定装置(島津製作所製、DN)により測定した。
【0025】
次いで、トリクロロエチレンにて洗浄した透明ガラス板に、これらの分散液をスピンコーターを用いて回転数2000 rpmで塗布した後、常温で30分間静置し、次いで160℃で乾燥して、ブラックマトリックスを形成した。このブラックマトリックスの膜厚および光学的濃度を下記の方法により測定した。
▲4▼膜厚;
カットした断面を走査型電子顕微鏡(SEM) により測定した。
▲5▼光学的濃度(OD値);
マクベス濃度計(コルモーゲン社製、RD-927)により測定した。
【0026】
得られた結果を、表2に示した。
【0027】
【表2】
【0028】
表1、2の結果から、実施例1〜3はカーボンブラックの電気比抵抗、分散液の表面張力とも良好であり、またブラックマトリックスの膜厚、OD値も良好な水準にある。これに対して、比較例1〜3は電気比抵抗やOD値は良好であるが膜厚が厚くなることが判る。更に、カーボンブラックをオゾン酸化した比較例4〜9では電気比抵抗が小さく、膜厚が厚い割にはOD値が小さくなることが認められ、分散液中においてカーボンブラックの凝集が生じていることが原因と思われる。
【0029】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明のブラックマトリックス用カーボンブラックを遮光剤として形成したブラックマトリックスによれば、膜厚に対するOD値が大きく、高遮光率で表面反射率が低く、膜厚の薄いブラックマトリックスを低コストで形成することが可能である。したがって、透明保護膜や透明絶縁膜が不要で、例えば液晶カラーフィルター用のブラックマトリックスを形成することのできる、高性能のカーボンブラックを提供することができる。
Claims (1)
- 窒素吸着比表面積(N 2 SA)が50m 2 /g以上、DBP吸収量が140cm 3 /100g以下であるカーボンブラック表面の少なくとも一部が酸性、中性の官能基で化学修飾され、X線光電子分光法により測定した全炭素原子当たりの全酸素原子の原子比(酸素結合エネルギーの強度/炭素結合エネルギーの強度)が0.1以上であることを特徴とするブラックマトリックス用カーボンブラック。
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