JP3938635B2 - 板圧延における板形状制御方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、個別に荷重検出および圧下制御可能な分割バックアップロールを備えた板圧延機における板厚および板形状制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、3分割以上に分割された分割バックアップロールのそれぞれについて荷重分布を検出して、圧延材〜ワークロール間の荷重分布を推定し、推定した荷重分布に基づいて板形状を制御する板圧延機が注目されている(例えば、特開平5−48375号公報参照)。この板圧延機では、原理的に圧延機出側で板形状を計測してフィードバックする必要はなく、したがって時間遅れなく直接的に板形状を制御することができる。この板圧延機によれば、良好な板品質、つまり良好な板クラウンおよび平坦度を得ることができる。以下、このような板圧延機を知能型板圧延機という。
【0003】
また、特開平6−262228号公報には、知能型板圧延機の圧延制御方法が示されている。
第i分割バックアップロールに作用する荷重をqi 、その位置に対応する圧延材〜ワークロール間荷重をpi とし、ワークロール軸心たわみの変形マトリクスをKW ij、バックアップロール系の変形マトリクスをKB ij、ロールクラウンの形式で表現したワークロールプロフィルをCW i 、分割バックアップロールプロフィルをCB i 、上ワークロール軸心たわみをYW i とすると、分割バックアップロールとワークロールの適合条件より、式(1)が得られる。
【数1】
Figure 0003938635
式(1)でワークロールベンダーは圧延荷重分布qi に影響を及ぼし、ワークロールベンダーがある場合には力の釣り合いと、モーメントの釣り合いの条件を考慮する必要がある。
なお、この明細書の数式では、同添字の繰り返しがある場合にはアインシュタインの総和規約を用いて表現する。また、KB ijは第j分割バックアップロールに単位荷重が負荷された時の第i分割バックアップロールの変位を表す影響係数マトリクスであるが、ここでは、ハウジングの変形およびワークロール〜分割バックアップロールの接触による両ロールの偏平変形を含めた変形マトリクスを表す。KB ij、KW ij、YW i はすべてミルセンターからの相対位置のみを抽出する。
【0004】
一方、上ワークロール軸心たわみYW i は、変形マトリクスKW ijおよび圧延材〜ワークロール間に作用する圧延荷重分布pi を用いて、次の式(2)で表される。
【数2】
Figure 0003938635
式(1)、式(2)よりYW i を消去し、整理すると式(3)が得られる。
【数3】
Figure 0003938635
上式の右辺で、[KB +KW -1 ijはKB +KW ijの逆マトリクスである。
【0005】
ところで、圧延荷重pi は、一般に、入側板厚H、出側板厚h、変形抵抗k、摩擦係数μ、平均入側張力σb 、平均出側張力σf 、板形状を表現する伸びひずみ差Δεの関数であり、式(4)で与えられる。
【数4】
Figure 0003938635
ここで、ロールバイト中の変形抵抗k、および摩擦係数μは板幅方向にほとんど一定であり計算および実験によって求めることがでる。入側板厚H、出側板厚h、平均入側張力σb 、および平均出側張力σf は所望とする圧延条件を入力することによって与えられる。したがって、式(4)より目標とする伸びひずみ差Δεを代入すれば、所望の形状が得られるための圧延荷重pi が求められる。
【0006】
この圧延荷重pi を式(3)に代入することによって、所望の形状が得られるための各分割バックアップロールの荷重qi が求められる。このようにして、所望の圧延荷重pi となるように各分割バックアップロールの荷重分布を制御する。
【0007】
ただし、この圧延荷重の調整方法では、第i番目の分割バックアップロールの変位を変えると、上ワークロールに作用する力が変化するため、基本的にはすべての分割バックアップロールの荷重が変化する。したがって、分割バックアップロールの荷重分布を所望の荷重分布と一致させることはかなり困難である。このため、オペレータは高い熟練度が要求される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記知能型板圧延機では、形状制御するために分割バックアップロールの圧下位置を制御すると、ロール軸方向の荷重分布だけではなくロールギャップが変化する。タンデム圧延の場合、第1スタンド以外のロールギャップが変化しても、後方張力が変化して、ロールギャップ変化とミルストレッチが相殺されるので、最終的には上記方法で板厚が変化することはない。しかしながら、単スタンドの場合はこのような張力変化はないので、板厚も変化する。したがって、形状は良くなっても板厚精度が悪化するという問題があった。
【0009】
このような問題に対し、圧延機出側に板厚計を設置し、その出力からロールギャップを制御するフィードバック制御が行われていた。しかし、この方法ではむだ時間が生じるので、応答性の高い板厚制御はできなかった。
【0010】
また、板幅中央の板厚変化を防止するためには、板幅、板厚、変形抵抗などの外乱がない場合、分割バックアップロールの圧下位置を操作しても圧延荷重が一定となるようにロールギャップを制御すればよい。インナーハウジング方式の場合、インナーハウジングとミルハウジングの間にロードセルを設けてその出力を基にロールギャップを制御することも考えらるが、圧延中のインナーハウジングとメインハウジングとの間の摺動抵抗が大きいために高い精度でロールギャップ、つまり板厚を制御することはできない。したがって、板形状と板厚とが干渉することなく制御することができる板厚・板形状制御方法が望まれていた。
【0011】
この発明は、板厚精度を維持しながら高精度で板形状を制御することができる板形状制御方法を提供することを課題としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明を実施する知能型板圧延機は、ミルハウジングと、ミルハウジングに昇降可能に取り付けられた上下インナーハウジングと、インナーハウジングの一つに設けられた主圧下装置と、上下インナーハウジングのそれぞれにロールチョックを介して取り付けられた上下ワークロールと、3分割以上に分割された分割バックアップロールとを備えている。そして、分割型バックアップロールならびに分割バックアップロールごとに設けられた圧下装置、荷重検出装置、および圧下位置検出装置からなる複数の分割バックアップロール・ユニットが、少なくとも一つのインナーハウジングにそれぞれ独立して取り付けられている。
【0013】
上記知能型板圧延機における板制御方法は、制御開始前に各分割バックアップロールのロックオン荷重の合計値を求めてこれを基準荷重とし、圧延中に目標板形状となるように各分割バックアップロールの圧下位置をそれぞれ制御するとともに、各分割バックアップロールの荷重合計値が前記基準荷重と一致するように前記主圧下装置でロールギャップを制御する。
【0014】
板形状は分割バックアップロールの圧下位置を圧下装置により、板厚はワークロールのロールギャップを主圧下装置によりそれぞれ制御する。したがって、板形状制御および板厚制御が干渉することなく、目標とする板形状および板厚が得られる。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明の知能型板圧延機の概略を示している。図2は、図1に示す知能型板圧延機の主要部を模式的に示している。
知能型板圧延機10は、ミルハウジング11内に上、下のインナーハウジング12、13が昇降可能に支持されている。上のワークロール20は、ワークロールチョック15を介して上のインナールハウジング12に上下方向および水平方向に変位可能に支持されている。また、下のワークロール21は、ワークロールチョック15を介して下のインナールハウジング13に上下方向に変位可能に支持されている。
【0016】
3組の入側分割バックアップロール・ユニット27および4組の出側分割バックアップロール・ユニット28がそれぞれ、板幅方向(図2で左右方向)に一列となって上インナーハウジング12に独立して取り付けられている。入出側分割バックアップロール・ユニット27、28はそれぞれ、分割バックアップロール33、34、圧下装置36、荷重検出装置37および圧下位置検出装置38からなっている。上ワークロール20と、入出側分割バックアップロール列30、31とは、逆ピラミッド型に配置されている。また、入側分割バックアップロール33と出側分割バックアップロール34は、図2に示すように板幅方向に交互に配置されている。圧下装置36は、荷重検出装置37を介し各分割バックアップロール33、34にそれぞれ独立して圧下力を加える。圧下装置36は、例えば油圧シリンダーが用いられる。荷重検出装置37は、各分割バックアップロール33、34に加わる圧下荷重を検出する。荷重検出装置37として、例えばロードセルが用いられる。また、油圧シリンダーの圧力を検出して、圧下荷重を求めてもよい。圧下位置検出装置38は、分割バックアップロール33、34の基準位置(例えば無負荷時のロール位置)からの変位を検出する。例えば、容量形変位センサー、誘導形変位センサーなどで、圧下装置36のシリンダー位置を検出する。
【0017】
下インナーハウジング13には、一体型、つまり非分割型の下バックアップロール40が支持されている。上インナーハウジング12はパスライン調整装置17により昇降され、圧延材Sのパス位置が調整される。下インナーハウジング13は、主圧下装置18により圧下力が加えられる。
【0018】
上記のように構成された知能型板圧延機10において、圧延開始直後、圧延制御開始前に、板厚が目標板厚となったときの各分割バックアップロールの荷重 (ロックオン荷重)を測定する。このロックオン荷重の合計値を基準荷重とする。圧延中に、分割バックアップロール33、34ごとに荷重および圧下位置を検出する。検出した荷重および圧下位置にに基づいて、板圧延時の板形状をモデル式により推定する。モデル式は、あらかじめ実験で求めておく。推定結果に基づいて、目標板形状となるように分割バックアップロール33、34の圧下位置を制御する。同時に、各分割バックアップロールの荷重の合計値が前記基準荷重と一致するように前記主圧下装置18でワークロール20、21のロールギャップを制御する。各分割バックアップロールの圧下位置を制御することにより目標板形状が得られ、主圧下装置でロールギャップを制御することにより目標板厚が得られる。
【0019】
なお、上記実施の形態では、分割バックアップロール列は2列であったが、これを3列としてもよい。下バックアップロールは非分割バックアップロールであったが、これを分割バックアップロールとしてもよい。
【0020】
【実施例】
図1および図2に示す知能型板圧延機で試験を行った。圧延機の仕様および圧延条件を表1に示す。板形状は、圧延機の出側デフレクターロールに設けた接触式形状検出器で測定した。板厚は、圧延機出側でX線厚み計で測定した。
【表1】
Figure 0003938635
【0021】
図3は、従来技術により圧延した場合の板形状(急峻度で表す)および板厚の経時変化を示している。板形状は目標形状を維持し、良好な板形状を得ることができた。しかし、板厚は時間の経過とともに変動し、目標板厚範囲から外れる場合があった。図4は、この発明により圧延した場合の板形状および板厚の経時変化を示している。良好な板形状を得ることができ、板厚も目標板厚範囲内であった。
【0022】
【発明の効果】
この発明の板形状制御方法によれば、目標板厚とともに、良好な板形状を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の板形状制御方法を実施する知能型板圧延機の概略側面図である。
【図2】図1に示す知能型板圧延機の主要部を模式的に示す正面図である。
【図3】従来の制御方法により圧延した場合の板形状および板厚の経時変化を示す線図である。
【図4】この発明の方法により圧延した場合の板形状および板厚の経時変化を示す線図である。
【符号の説明】
10 知能型板圧延機
11 ミルハウジング
12、13 インナーハウジング
15 ワークロールチョック
17 パスライン調整装置
18 主圧下装置
20、21 ワークロール
27、28 分割バックアップロール・ユニット
30、31 分割バックアップロール列
33、34 分割バックアップロール
36 油圧シリンダー
37 分割バックアップロールの荷重検出装置
38 分割バックアップロールの圧下位置検出装置
40 下(非分割)バックアップロール
S 圧延材

Claims (1)

  1. ミルハウジングと、ミルハウジングに昇降可能に取り付けられた上下インナーハウジングと、インナーハウジングの一つに設けられた主圧下装置と、上下インナーハウジングのそれぞれにロールチョックを介して取り付けられた上下ワークロールと、3分割以上に分割された分割バックアップロールとを備え、前記分割型バックアップロールならびに分割バックアップロールごとに設けられた圧下装置、荷重検出装置、および圧下位置検出装置からなる複数の分割バックアップロール・ユニットが、少なくとも一つのインナーハウジングにそれぞれ独立して取り付けられた板圧延機で、板圧延時に検出した各分割バックアップロールの荷重および圧下位置に基づいて板圧延時の板形状を推定し、推定結果に基づいて目標板形状となるように分割バックアップロールの圧下位置を制御する方法において、制御開始前に各分割バックアップロールのロックオン荷重の合計値を求めてこれを基準荷重とし、圧延中に目標板形状となるように各分割バックアップロールの圧下位置をそれぞれ制御するとともに、各分割バックアップロールの荷重合計値が前記基準荷重と一致するように前記主圧下装置でロールギャップを制御することを特徴とする板圧延における板形状制御方法。
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