JP3935772B2 - 建築物の吹き付け塗装方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自然石、特に大理石と同様の美観を有する建築物用壁装材を得るための建築物の吹き付け塗装方法に関する。さらに詳細には、大理石特有の『虫喰い模様(虫喰い穴)』の立体的な陰影感を容易に実現することのできる建築物の吹き付け塗装方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、建築物の外壁等の仕上げとして、その美観と耐候性から、天然の石がよく用いられている。例えば、大理石をそのまま壁や柱に使用するか、薄い板状にして外壁等に張り付ける方法がある。ここで、『建築物』には、構築された物だけでなく、ブロック、パネル、ボード等の建築物に使用する建材も含まれる。また、張付けなどで所定の模様のものを配置する場合を除き、特に断らない限り、建築物の表面に流動性を有する材料を用いて模様等を付する作業を『塗装』又は『塗布』という。
【0003】
建築物の外壁等の表面に模様等を付する方法としては、例えば、リシン系(骨材が含まれる配合)及び塗料系の材料を、コテ塗り法、ローラー塗装法、吹き付け塗装法等によって塗布する方法がある。コテ塗り法は、コテを用いて材料を建築物の表面に移して延ばす方法である。ローラー塗装法は、ローラーやコテを用いて材料を建築物の表面に移し、ローラーによって延ばす方法である。これらは手作業によって行われるため、大きな模様を付することはできるが、厚塗りや大面積の塗装には適していない。吹き付け塗装法は、圧縮空気の力を利用してスプレーガンから材料を噴出して塗装する方法である。ここで、リシン系の材料を用いた塗装法においては、材料が天然石、セラミック、焼成骨材等の粒状材料と、合成樹脂エマルジョンと、塗料等からなるため、ある程度までの厚塗りが可能となる。
【0004】
以下に、大理石調の建築物用壁装材を得るための従来の建築物の吹き付け塗装方法について説明する。図8は従来技術における建築物の吹き付け塗装方法を示す概略工程図である。
【0005】
まず、図8(a)に示すように、建築物の外壁等50の上に、金ゴテを用いて樹脂モルタルを塗布する。次いで、その上にエアースプレーを用いてシーラーを吹き付ける。これにより、建築物の外壁等50の上にプライマー層51が形成される。
【0006】
次に、図8(b)に示すように、プライマー層51の上に、所定の色に調合され、かつ、水で希釈された吹き付け材を満遍なく吹き付けて、下吹き層53を形成する。
【0007】
次に、図8(c)に示すように、下吹き層53が完全に乾燥した後、下吹き層53の上に、下吹き層53と同じ色に調合された吹き付け材を希釈せずにそのまま用い、大きな玉状でランダムに吹き付けて、上吹き層54を形成する。この場合、上吹き層54は大きな玉状でランダムに吹き付けられるので、上吹き層54の所々に下吹き層53が露出した箇所55が存在した状態となる。
【0008】
次に、図8(d)に示すように、上吹き層54を形成した後すぐに、その上から水を霧吹きし、ステンレス製の金ゴテを用いて、上吹き層54を形成する吹き付け材を一方方向に移動させることにより、上吹き層54の上面を均す。
【0009】
最後に、上吹き層54が完全に乾燥した後、アクリル−シリコン系塗料を用いてトップコートを2回施す。これにより、大理石調の建築物用壁装材が得られる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のような従来の吹き付け塗装方法には、以下のような問題点があった。
【0011】
すなわち、上吹き層54は大きな玉状でランダムに吹き付けられ、上吹き層54の所々に下吹き層53が露出した箇所55を存在させることができるため、上吹き層54を形成する吹き付け材を一方方向に移動させることによって上吹き層54の上面を均す際に、大理石が有する虫喰い模様56を形成することは可能であるが、上記のようにして形成される虫喰い模様は天然の大理石が有する虫喰い模様と比較してそのサイズが小さく、また、天然の大理石が有する虫喰い模様に近い立体的な陰影感を出して、自然石を彷彿とさせるには至っていない。
【0012】
本発明者等は、かかる点に鑑み、天然の大理石により近い建築物用壁装材を実現すべく鋭意研究を重ね、本発明をするに至った。
【0013】
本発明は、従来技術における前記課題を解決するためになされたものであり、大理石特有の『虫喰い模様(虫喰い穴)』の立体的な陰影感を容易に実現し、天然の大理石と同様の美観を有する建築物用壁装材を得ることのできる建築物の吹き付け塗装方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明に係る建築物の吹き付け塗装方法は、建築物の表面に第1の吹き付け材を吹き付けて下吹き層を形成する工程と、前記下吹き層の上に帯状の虫喰い模様形成用部材を貼り付ける工程と、前記虫喰い模様形成用部材が貼り付けられた前記下吹き層の上にさらに第2の吹き付け材を吹き付けて上吹き層を形成する工程と、前記虫喰い模様形成用部材を除去する工程と、前記第2の吹き付け材を、前記虫喰い模様形成用部材を除去した後に形成される穴の延びる方向にほぼ沿って移動させることにより、前記上吹き層の上面を均す工程とを備えたことを特徴とする。
【0015】
この建築物の吹き付け塗装方法によれば、虫喰い模様形成用部材を除去した後に形成される穴の周りの吹き付け材が前記穴の延びる方向にほぼ沿って引き延ばされ、一部は穴に垂れ下がり、大理石特有の虫喰い模様(虫喰い穴)を形成することができる。ここで、虫喰い模様形成用部材は帯状であるため、天然の大理石とほぼ同じサイズの虫喰い模様を形成することができる。
【0016】
また、前記本発明の建築物の吹き付け塗装方法においては、前記虫喰い模様形成用部材が蛇行した帯状に形成されているのが好ましい。この好ましい例によれば、虫喰い模様形成用部材を除去した後に形成される穴の周りの吹き付け材が前記穴の延びる方向に沿って引き延ばされる際に、一部の吹き付け材が前記穴の中に落ち込むと共に、前記穴の周縁の一部が削り取られる。このため、虫喰い模様(虫喰い穴)の立体的な陰影感を容易に実現し、天然の大理石と同様の美観を有する建築物用壁装材を得ることができる。
【0017】
また、前記本発明の建築物の吹き付け塗装方法においては、前記虫喰い模様形成用部材の幅が場所によって異なるのが好ましい。この好ましい例によれば、より自然な虫喰い模様を形成することが可能となる。
【0018】
また、前記本発明の建築物の吹き付け塗装方法においては、前記第1の吹き付け材を前記建築物の表面に満遍なく吹き付けるのが好ましい。
【0019】
また、前記本発明の建築物の吹き付け塗装方法においては、前記第2の吹き付け材を大きな玉状でランダムに吹き付けるのが好ましい。この好ましい例によれば、上吹き層の所々に下吹き層が露出した箇所を存在させることができるので、これによっても小さい虫食い模様(虫喰い穴)を形成することができる。すなわち、虫喰い模様形成用部材を用いることによって大きい虫食い模様(虫喰い穴)を形成することができ、また、大きな玉状でランダムに吹き付けられた第1の上吹き層によって上記『大きい虫食い模様(虫喰い穴)』の周りに『小さい虫食い模様(虫喰い穴)』を点在させることができるので、天然の大理石に酷似した建築物用壁装材を得ることが可能となる。また、この場合には、前記虫喰い模様形成用部材を除去した後、第3の吹き付け材を前記上吹き層の表面に満遍なく吹き付けて第2の上吹き層を形成する工程をさらに備えているのが好ましい。この好ましい例によれば、天然の大理石の表面に見られる細かいあや(肌理)を醸し出すことができる。また、この場合には、前記第2の吹き付け材の色と前記第3の吹き付け材の色とがほぼ同一であるのが好ましい。
【0020】
また、前記本発明の建築物の吹き付け塗装方法においては、均された前記上吹き層の上面を研磨する工程をさらに備えているのが好ましい。この好ましい例によれば、上吹き層の平面形状部分(虫喰い模様部分を除いた箇所)のエッジを鋭利(シャープ)な状態にもっていくことができる。その結果、上吹き層の平面形状部分と虫喰い模様部分との境目を明瞭にすることができるので、塗装した建築物を遠方から見た場合でも、虫喰い模様をはっきりと識別させることができるようになる
また、前記本発明の建築物の吹き付け塗装方法においては、前記第1の吹き付け材の色と前記第2の吹き付け材の色とを異ならせるのが好ましい。この好ましい例によれば、虫喰い模様をさらに鮮明に識別させることができる。
【0021】
また、前記本発明の建築物の吹き付け塗装方法においては、前記第1の吹き付け材の色として暗色を用い、前記第2の吹き付け材の色として明色を用いるのが好ましい。この好ましい例によれば、虫喰い模様をくっきりと浮き立たせることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、実施の形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
【0023】
吹き付け材としては、次の成分に調合したものを用いた。すなわち、
(1)セラミックス 61.60重量部
(2)アクリルエマルジョン(固形分50%) 25.20重量部
(3)増粘剤(ヒドロキシメチルセルロース) 11.35重量部
(4)pH調整剤(アンモニア水) 0.17重量部
(5)消泡剤(アルコール系) 0.03重量部
(6)造膜助剤(アルコール系) 0.39重量部
(7)水 1.26重量部
ここで、造膜助剤とは、エマルジョンの透明造膜の温度を下げるためのものである。また、合成樹脂としては、アクリルエマルジョンのほかに、その他のエマルジョン系や、エポキシ系、ウレタン系のものを使用することもできる。
【0024】
骨材としては、粘土に適当な色を有する顔料、例えば酸化鉄、酸化亜鉛等を混合し、約1400℃の温度で焼成してセラミックスとし、それを粉砕したものを使用した。
【0025】
骨材の粒度分布としては、建築物用壁装材の強度や美観から、次のようなものを採用した。すなわち、
以下に、上記のように調合された吹き付け材を建築物の外壁等に吹き付けて大理石調の建築物用壁装材を得る方法について説明する。図1、図2は本発明に係る建築物の吹き付け塗装方法の一実施の形態を示す工程図、図3(a)は大理石特有の『虫喰い模様(虫喰い穴)』の立体的な陰影感を実現するために本塗装方法で使用される虫喰い模様形成用部材を示す平面図、図3(b)はそのI−I断面図、図4は本塗装方法に使用する装置を示す概略構成図である。
【0026】
図3(a)、(b)に示すように、虫喰い模様形成用部材22は、発砲樹脂からなる平板状の部材を蛇行した帯状に裁断して形成されている。この場合、虫喰い模様形成用部材22の幅は一定であってもよいが、虫喰い模様形成用部材22の幅を場所によって異ならせることによって、より自然な虫喰い模様を形成することが可能となる。また、虫喰い模様形成用部材22には、その裏面及び表面に粘着材23が塗布されており、裏面及び表面にはさらに粘着防止用の離型紙24が貼られている。また、虫喰い模様形成用部材22は、幅が2〜15mm、厚みが2.0〜3.0mm、長さが100〜1000mmに形成されている。尚、虫喰い模様形成用部材22の長さは、吹き付け材を建築物の外壁等に吹き付ける際の目地割りの間隔に応じて適宜変更されるものであり、目地割りの間隔が経60cm、横90cmの場合には、長さが600mmの虫喰い模様形成用部材22を2〜4本横方向に用いるのが好ましい。
【0027】
図4において、1はスプレーガンであり、スプレーガン1には吹き付け材供給装置2からホッパー3で調合された吹き付け材が導管7を介して圧送される。吹き付け材は、エアーコンプレッサー(図示せず)を用いて発生させた圧縮空気によって吹き付けられ、建築物の外壁等に塗装される。
【0028】
スプレーガン1は、エアーノズル(図示せず)の後退又は前進によって塗料ノズル11が開閉するように構成されている(ニードル弁方式)。すなわち、ピストン(図示せず)には二重構造のエアーノズルが取り付けられており、切換弁4を切り換えることによってピストンが後退又は前進し、圧縮空気及び吹き付け材が噴射又は遮断される。尚、吹き付け材の噴射は、適宜のサイクルで間欠的に行なわれる。
【0029】
まず、図1(a)に示すように、建築物の外壁等20の上に、金ゴテを用いて樹脂モルタルを約1mmの厚みで塗布した。次いで、樹脂モルタルの上に、エアースプレーを用いてシーラーを吹き付けた。以上により、建築物の外壁等20の上にプライマー層21が形成された。
【0030】
次に、図1(b)に示すように、プライマー層21の上に、黒色に調合された吹き付け材を用いて下吹きを行った。すなわち、フロースイッチ(図示せず)によって切換弁4を作動させて、流路12に圧縮空気を流し、スプレーガン1内のピストンを図4の右方向に後退させ、ピストンに取り付けられたエアーノズルを連動して後退させる。これにより、塗料ノズル11が開口する。塗料ノズル11が開口すると同時に、流路12を流れていた圧縮空気が流路15を流れ、この圧縮空気が遮断弁5の作動部に供給されて遮断弁5が開く。そして、圧縮空気供給路6とエアーノズルへの圧縮空気供給路14とが導通し、圧縮空気が圧縮空気供給路14からエアーノズルを経て塗料ノズル11から噴出する。このとき、塗料ノズル11は開口しているので、吹き付け材が塗料ノズル11へ供給され、この吹き付け材がエアーノズルから供給される圧縮空気によって塗料ノズル11から噴射される。この場合、スプレーガン1としては、塗料ノズル11の口径が4〜9mm、吹き圧が2〜4kg/cm2 に設定されたもの(リシンガン)を使用した。また、吹き付け材としては、上記のようにして調合されたもの23kgにさらに水1kgを加えて希釈したものを用いた。これにより、プライマー層21の上に、黒色に調合された吹き付け材が広いスペースで満遍なく吹き付けられ、下吹き層25が形成された。ここで、吹き付け材の吹き付け量は0.5〜1.0kg/m2 、下吹き層25の厚みは1.0〜1.5mmである。
【0031】
次に、図1(c)に示すように、下吹き層25が乾燥した後、当該下吹き層25の上に虫喰い模様形成用部材22を貼り付けた。下吹き層25の上に虫喰い模様形成用部材22を貼り付けるに際しては、虫喰い模様形成用部材22の裏面側の離型紙24が剥がされる。尚、虫喰い模様形成用部材22を下吹き層25の上に貼り付ける場合のパターンとしては、種々のものが考えられる。図5に、虫喰い模様形成用部材22の貼り付けパターンの例を示す。図5に示すような10種類以上のパターンが考えられるが、2〜3種類のパターンを繰り返して用いるのが、最も天然に近い大理石風の建築物用壁装材を得ることができて望ましい。
【0032】
次に、図1(d)に示すように、下吹き層25が完全に乾燥した後、下吹き層25の上に、下吹き層25よりも淡い色(ベージュ色)に調合された吹き付け材を用いて一回目の上吹きを行った。この場合、スプレーガン1としては、塗料ノズル11の口径が10〜18mm、吹き圧が2〜4kg/cm2 に設定されたもの(スタッコガン)を使用した。また、吹き付け材としては、上記のようにして調合された吹き付け材を希釈せずにそのまま用いた。これにより、下吹き層25の上に、ベージュ色に調合された吹き付け材が大きな玉状(相当径:3〜10mm)でランダムに吹き付けられた。ここで、吹き付け材の吹き付け量は3〜12kg/m2 である。以上により、下吹き層25の上に厚さ2〜8mmの第1の上吹き層26aが形成された。尚、第1の上吹き層26aは大きな玉状でランダムに吹き付けられるので、第1の上吹き層26aの所々に下吹き層25が露出した箇所27を存在させることができる。
【0033】
次に、図1(e)に示すように、第1の上吹き層26aを形成した後すぐに、虫喰い模様形成用部材22の表面側の離型紙24を剥がし、虫喰い模様形成用部材22を除去した。これにより、虫喰い模様形成用部材22とほぼ同形の穴31が形成された。
【0034】
次に、図2(f)に示すように、虫喰い模様形成用部材22を除去した後すぐに、第1の上吹き層26aの上に、ベージュ色に調合された吹き付け材を用いて二回目の上吹きを行った。この場合、スプレーガン1としては、下吹き層25を形成する際に使用したものと同様のもの、すなわち、塗料ノズル11の口径が4〜9mm、吹き圧が2〜4kg/cm2 に設定されたもの(リシンガン)を使用した。また、吹き付け材としても、下吹き層25を形成する際に用いたものと同様のもの、すなわち、上記のようにして調合されたもの23kgにさらに水1kgを加えて希釈したものを用いた。これにより、第1の上吹き層26aの上に、ベージュ色に調合された吹き付け材が広いスペースで満遍なく吹き付けられ、第2の上吹き層26bが形成された。尚、この場合、虫喰い模様形成用部材22を除去した後に形成される穴31の中にも、第2の上吹き層26bの材料である吹き付け材が吹き付けられた状態となる。ここで、吹き付け材の吹き付け量は、第1の上吹き層26aが2.7〜3.6kg/m2 、第2の上吹き層26bが1.5〜1.9kg/m2 である。以下、第1の上吹き層26aと第2の上吹き層26bを、単に『上吹き層26』ともいう。
【0035】
以上のようにして上吹き層26を二度吹きすることにより、天然の大理石の表面に見られる細かいあや(肌理)を醸し出すことができる。
【0036】
次に、図2(g)、図6に示すように、第2の上吹き層26bを形成した後すぐに、ステンレス製の金ゴテを用いて、上吹き層26(第1の上吹き層26aと第2の上吹き層26b)を形成する吹き付け材を、虫喰い模様形成用部材22を除去した後に形成される穴31の延びる方向にほぼ沿って移動させる(図6矢印K)。これにより、上吹き層26の上面全体が80%程度の仕上がりで均されるように移動させることで、穴31の周りの吹き付け材が穴31の延びる方向にほぼ沿って引き延ばされ、大理石特有の虫喰い模様(虫喰い穴)29aが形成される。この場合、穴31が蛇行した状態にあるので、穴31の周りの吹き付け材が穴31の延びる方向に沿って引き延ばされる際に、上吹き層26を形成する吹き付け材の一部が適当に穴31の中に落ち込むと共に、穴31の周縁部の一部が削り取られる。このため、虫喰い模様(虫喰い穴)の立体的な陰影感を容易に実現することができる。また、上記したように、第1の上吹き層26aは大きな玉状でランダムに吹き付けられ、第1の上吹き層26aの所々に下吹き層25が露出した箇所27を存在させることができるので、これによっても小さい虫食い模様(虫喰い穴)29bを形成することができる。すなわち、虫喰い模様形成用部材22を用いることによって大きな虫食い模様(虫喰い穴)29aを形成することができ、また、大きな玉状でランダムに吹き付けられた第1の上吹き層26aによって上記『大きな虫食い模様(虫喰い穴)29a』の周りに『小さい虫食い模様(虫喰い穴)29b』を点在させることができるので、天然の大理石に酷似した建築物用壁装材を得ることが可能となる。尚、上吹き層26を形成する吹き付け材を、虫喰い模様形成用部材22を除去した後に形成される穴31の延びる方向と直交する方向に沿って移動させた場合には、穴31の周りの吹き付け材のほぼ全てが穴31の中に落ち込み、穴31を埋め尽くしてしまうので、天然の大理石に不可欠の虫喰い模様(虫喰い穴)自体を形成することが困難となる。
【0037】
次に、図2(h)に示すように、上吹き層26の上面を均した後すぐに、第2の上吹き層26bの上に、上吹き層26よりも淡い異なる二色、又は濃い異なる二色、又は淡い色一色と濃い色一色の吹き付け材(以下『吹き付け材』という)32、33を別々のノズルから同時に吹き付けた。この場合、スプレーガン1としては、塗料ノズル11の口径が7〜9mm、吹き圧が2〜4kg/cm2 に設定され、ホッパー3、塗料ノズル11等が対になったもの(二頭ガン)を使用した。また、吹き付け材としては、上記のようにしてそれぞれ調合された吹き付け材を希釈せずにそのまま用いた。これにより、第2の上吹き層26bの上に、二色の組み合わせの吹き付け材32、33が玉状に吹き付けられた。ここで、吹き付けられる吹き付け材の吹き付け量は、二色合わせて50g/m2 程度である。尚、図2においては、二色のうち淡い色を白色で、濃い色を黒色で吹き付け材32、33として示している。
【0038】
次に、図2(i)に示すように、二色の吹き付け材32、33を用いて吹き付けを行った後すぐに、その上から水を霧吹きし、ステンレス製の金ゴテを用いて第2の上吹き層26bの上面を一方方向にしごいた。これにより、第2の上吹き層26bの上に玉状に吹き付けられた濃淡二色の吹き付け材32、33が筋状に引き延ばされた状態となり、第2の上吹き層26bの表面に濃淡二色の筋状の模様が形成された。その結果、天然の大理石により近い建築物用壁装材を実現することができた。
【0039】
次に、まず、ディスクサンダーを用いて、第2の上吹き層26bの上面を軽く研磨し、次いで、オービタルサンダーを用いて、第2の上吹き層26bの上面をほぼ完全に研磨して、鏡面に近い状態に仕上げた。これにより、上吹き層26の平面形状部分のエッジが鋭利(シャープ)な状態となった。その結果、上吹き層26の平面形状部分と虫喰い模様(凹部)29部分との境目が明瞭となり、塗装した建築物を遠方から見た場合でも、虫喰い模様29をはっきりと識別することができるようになった。また、より実物に近い虫喰い模様の感じを醸し出すことができるようになった。さらに、この場合、下吹き層25として黒色の吹き付け材が用いられ、上吹き層26として下吹き層25よりも淡い色(ベージュ色)の吹き付け材が用いられているので、虫喰い模様をさらに鮮明に識別させることができる。
【0040】
最後に、研磨カスを除去した後、アクリル−シリコン系塗料を用いて、全体にトップコートを2回施した。このようにトップコートを施すことにより、吹き付け面の耐久性及び耐候性を向上させることができる。以上の工程により、大理石特有の虫喰い模様を有する建築物用壁装材が得られた。得られた建築物用壁装材の厚みは2.0〜5.0mmであった。
【0041】
以上のようにして塗装した建築物の外壁等の外観の一部を図7(a)に示し、図7(a)のII−II断面を図7(b)に示す。
【0042】
尚、本実施の形態においては、吹き付け材として上記のように調合されたものを用いているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、安価な砂壁吹き付け仕上げ材を用いて吹き付け塗装しても同様の効果が得られる。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、虫喰い模様形成用部材を除去した後に形成される穴の周りの吹き付け材が前記穴の延びる方向にほぼ沿って引き延ばされ、大理石特有の虫喰い模様(虫喰い穴)を形成することができる。特に、虫喰い模様形成用部材を蛇行した帯状に形成すれば、虫喰い模様形成用部材を除去した後に形成される穴の周りの吹き付け材が前記穴の延びる方向に沿って引き延ばされる際に、一部の吹き付け材が前記穴の中に落ち込むと共に、前記穴の周縁の一部が削り取られる。このため、虫喰い模様(虫喰い穴)の立体的な陰影感を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る建築物の吹き付け塗装方法の一実施の形態を示す工程図
【図2】本発明に係る建築物の吹き付け塗装方法の一実施の形態を示す工程図
【図3】(a)は大理石特有の『虫喰い模様(虫喰い穴)』の立体的な陰影感を実現するために本塗装方法で使用される虫喰い模様形成用部材を示す平面図、(b)はそのI−I断面図
【図4】本発明に係る建築物の吹き付け塗装方法の一実施の形態に使用する装置を示す概略構成図
【図5】本発明に係る建築物の吹き付け塗装方法の一実施の形態に使用する虫喰い模様形成用部材の貼り付けパターンを示す図
【図6】本発明に係る建築物の吹き付け塗装方法の一実施の形態における、虫喰い模様を形成する際の金ゴテの移動方向を示す図
【図7】(a)は本発明に係る建築物の吹き付け塗装方法を用いて塗装された建築物の外壁等の外観の一部を示す平面図、(b)はそのII−II断面図
【図8】従来技術における建築物の吹き付け塗装方法を示す概略工程図である。
【符号の説明】
1 スプレーガン
2 吹き付け材供給装置
3 ホッパー
4 切換弁
5 遮断弁
6 圧縮空気供給路
7 導管
11 塗料ノズル
12、15 流路
14 圧縮空気供給路
20 建築物の外壁等
21 プライマー層
22 虫喰い模様形成用部材
23 粘着材
24 離型紙
25 下吹き層
26 上吹き層
27 下吹き層が露出した箇所
29 虫喰い模様
Claims (10)
- 建築物の表面に第1の吹き付け材を吹き付けて下吹き層を形成する工程と、前記下吹き層の上に帯状の虫喰い模様形成用部材を貼り付ける工程と、前記虫喰い模様形成用部材が貼り付けられた前記下吹き層の上にさらに第2の吹き付け材を吹き付けて上吹き層を形成する工程と、前記虫喰い模様形成用部材を除去する工程と、前記第2の吹き付け材を、前記虫喰い模様形成用部材を除去した後に形成される穴の延びる方向にほぼ沿って移動させることにより、前記上吹き層の上面を均す工程とを備えた建築物の吹き付け塗装方法。
- 前記虫喰い模様形成用部材が蛇行した帯状に形成されている請求項1に記載の建築物の吹き付け塗装方法。
- 前記虫喰い模様形成用部材の幅が場所によって異なる請求項1又は2に記載の建築物の吹き付け塗装方法。
- 前記第1の吹き付け材を前記建築物の表面に満遍なく吹き付ける請求項1〜3のいずれかに記載の建築物の吹き付け塗装方法。
- 前記第2の吹き付け材を大きな玉状でランダムに吹き付ける請求項1〜4のいずれかに記載の建築物の吹き付け塗装方法。
- 前記虫喰い模様形成用部材を除去した後、第3の吹き付け材を前記上吹き層の表面に満遍なく吹き付けて第2の上吹き層を形成する工程をさらに備えた請求項5に記載の建築物の吹き付け塗装方法。
- 均された前記上吹き層の上面を研磨する工程をさらに備えた請求項1〜6のいずれかに記載の建築物の吹き付け塗装方法。
- 前記第1の吹き付け材の色と前記第2の吹き付け材の色とを異ならせる請求項1〜5に記載の建築物の吹き付け塗装方法。
- 前記第2の吹き付け材の色と前記第3の吹き付け材の色とがほぼ同一である請求項6に記載の建築物の吹き付け塗装方法。
- 前記第1の吹き付け材の色として暗色を用い、前記第2の吹き付け材の色として明色を用いる請求項1〜5に記載の建築物の吹き付け塗装方法。
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JP2002140708A JP3935772B2 (ja) | 2002-05-15 | 2002-05-15 | 建築物の吹き付け塗装方法 |
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