JP3935008B2 - エンジンの動弁装置 - Google Patents

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    • F01L13/0015Modifications of valve-gear to facilitate reversing, braking, starting, changing compression ratio, or other specific operations for optimising engine performances by modifying valve lift according to various working parameters, e.g. rotational speed, load, torque
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カムシャフトホルダに支持されカムシャフトにより吸気ロッカーアームを介して吸気弁を開閉駆動するとともに、電磁アクチュエータ機構のアマチュアに接続された保持ロッドで吸気弁のステムエンドを押圧して該吸気弁を開弁状態に保持し、かつ電磁アクチュエータ機構による保持を解除されて閉弁状態に復帰する吸気弁の着座時の衝撃を油圧ダンパー機構で緩衝するエンジンの動弁装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
かかるエンジンの動弁装置において、油圧ダンパー機構を動弁室の上方の空間に配置したものが、特開昭63−295812号公報により公知である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、油圧ダンパー機構を専用の支持部材を用いて支持すると部品点数が増加する問題がある。そこで油圧ダンパー機構をヘッドカバーを利用して支持しようとすると、固定剛性の低下やエンジンの高さ方向の寸法の増加といった問題が発生し、また油圧ダンパー機構をシリンダヘッドを利用して支持しようとすると、エンジンの高さ方向の寸法が増加したり、油圧ダンパー機構の油室に連なる油路を形成するためにシリンダヘッドの加工が複雑化するといった問題が発生する。
【0004】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、エンジンの動弁装置の油圧ダンパー機構を強固にかつコンパクトに支持できるようにすることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、カムシャフトホルダに支持されカムシャフトにより吸気ロッカーアームを介して吸気弁を開閉駆動するとともに、電磁アクチュエータ機構のアマチュアに接続された保持ロッドで吸気弁のステムエンドを押圧して該吸気弁を開弁状態に保持し、かつ電磁アクチュエータ機構による保持を解除されて閉弁状態に復帰する吸気弁の着座時の衝撃を油圧ダンパー機構で緩衝するエンジンの動弁装置であって、前記油圧ダンパー機構は、前記電磁アクチュエータ機構と同軸で且つその電磁アクチュエータ機構の下方に配置されると共に前記カムシャフトホルダの内部に収納されていて、該カムシャフトホルダに支持されており、前記油圧ダンパー機構には、前記保持ロッドを挿通させる保持ロッド挿通孔が設けられ、前記カムシャフトホルダには、前記油圧ダンパー機構の油室に連なる油路が形成されることを特徴とするエンジンの動弁装置が提案される。
【0006】
上記構成によれば、電磁アクチュエータ機構による保持を解除されて閉弁状態に復帰する吸気弁の着座時の衝撃を緩衝する油圧ダンパー機構をカムシャフトホルダに支持したので、特別の支持部材が不要になって部品点数が削減され、しかも油圧ダンパー機構の油室に連なる油路をカムシャフトホルダに形成できてシリンダヘッドの加工を容易化することができる。また油圧ダンパー機構を電磁アクチュエータ機構の下方においてカムシャフトホルダの内部に収納して同ホルダに支持したので、油圧ダンパー機構をヘッドカバーに取り付ける場合に比べて油圧ダンパー機構の固定剛性を高め、かつエンジンの高さ方向の寸法を小型化することができ、更に油圧ダンパー機構ををシリンダヘッドに取り付ける場合に比べて該シリンダヘッドを小型化することができる。
【0007】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記カムシャフトホルダは複数のシリンダを結ぶ方向に連結された一体型であり、油圧ダンパー機構は、前記カムシャフトホルダの連結部に設けられたことを特徴とするエンジンの動弁装置が提案される。
【0008】
上記構成によれば、複数のシリンダを結ぶ方向に連結された一体型のカムシャフトホルダの連結部に油圧ダンパー機構を設けたので、カムシャフトホルダの高剛性の部分に油圧ダンパー機構を取り付けて固定剛性を高めることができる。
【0009】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または2の構成に加えて、前記保持ロッド挿通孔は、前記油圧ダンパー機構の油室からエアを抜くエア抜き孔を兼ねることを特徴とするエンジンの動弁装置が提案される。
【0010】
上記構成によれば、電磁アクチュエータ機構の保持ロッドを挿通すべく油圧ダンパー機構に設けられた保持ロッド挿通孔が、油圧ダンパー機構の油室からエアを抜くエア抜き孔を兼ねるので、特別のエア抜き孔を設けることなく油室のエアを抜くことができる。
【0011】
尚、実施例の第1、第2吸気ロッカーアーム30,31は本発明のロッカーアームに対応する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0013】
図1〜図8は本発明の一実施例を示すもので、図1はエンジンのシリンダヘッド部の断面図(図2の1−1線断面図)、図2は図1の2−2線断面図、図3は図1の3部拡大図、図4は図3の4−4線断面図、図5は図1の5部拡大図、図6は吸気弁閉弁タイミング遅延装置の作動状態を示す、前記図1に対応する図、図7は吸気弁の遅閉じ制御によるバルブリフト量の変化を示すグラフ、図8は吸気弁の遅閉じ制御時におけるバルブリフト量、コイルの電圧およびコイルの電流の変化を示すタイムチャートである。
【0014】
図1に示すように、SOHC型の直列4気筒エンジンEはシリンダブロック11と、シリンダブロック11の上面に結合されたシリンダヘッド12と、シリンダヘッド12の上面に結合されたカムシャフトホルダ13とを備えており、シリンダブロック11に形成したシリンダ14にピストン15が摺動自在に嵌合する。シリンダヘッド12には、シリンダ14毎に各2個の吸気ポート16,16および排気ポート17,17が形成されており、シリンダヘッド12の下面にピストン15の上面と対向するように形成され燃焼室18は吸気弁孔19,19を介して吸気ポート16,16に連通するとともに、排気弁孔20,20を介して排気ポート17,17に連通する。
【0015】
吸気弁孔19,19を開閉する機関弁としての吸気弁21,21はシリンダヘッド12に設けた弁ガイド22,22に摺動自在に案内され、吸気弁ばね23,23で閉弁方向に付勢される。排気弁孔20,20を開閉する機関弁としての排気弁24,24はシリンダヘッド12に設けた弁ガイド25,25に摺動自在に案内され、排気弁ばね26,26で閉弁方向に付勢される。カムシャフトホルダ13はシリンダヘッド12の長手方向に沿って配置された単一の部材であり、シリンダヘッド12の上面とカムシャフトホルダ13の下面との間に吸気・排気共用のカムシャフト27が支持される。カムシャフト27はクランクシャフトにタイミングチェーンを介して接続されており、クランクシャフトの2分の1の回転数で回転する。
【0016】
図2を併せて参照すると明らかなように、カムシャフト27の上方のカムシャフトホルダ13には吸気ロッカーアームシャフト28および排気ロッカーアームシャフト29が支持されており、吸気ロッカーアームシャフト28に第1吸気ロッカーアーム30および第2吸気ロッカーアーム31が隣接して配置されるとともに、第1、第2吸気ロッカーアーム30,31の軸方向両側に第1、第2排気ロッカーアーム32,33が配置される。
【0017】
第1吸気ロッカーアーム30は中間部を吸気ロッカーアームシャフト28に支持されており、二股に分岐した一端部に一方の吸気弁21のステムエンド21aに当接するアジャストボルト34と、球状の上面を有する保持ロッド受け部材35とが設けられ、また他端部にカムシャフト27に設けた吸気ハイカム36に当接するローラ37が支持される。第2吸気ロッカーアーム31は中間部を吸気ロッカーアームシャフト28に支持されており、一端部に他方の吸気弁21のステムエンド21aに当接するアジャストボルト38が設けられ、また他端部にカムシャフト27に設けた吸気ローカム39に当接するスリッパ40が設けられる。吸気ハイカム36のカム山に比べて、吸気ローカム39のカム山の高さは低く設定されている。
【0018】
吸気ロッカーアームシャフト28を挟んでローラ37およびスリッパ40の反対側の第1、第2吸気ロッカーアーム30,31に、該第1、第2吸気ロッカーアーム30,31を一体に連結して一体に揺動させ、あるいは相互に分離して独立して揺動させるべく、連結・解除機構41が設けられる。
【0019】
連結・解除機構41は、第1、第2吸気ロッカーアーム30,31に同軸に形成したピン孔30a,31aと、第1吸気ロッカーアーム30のピン孔30aに摺動自在に嵌合する第1ピン42と、第2吸気ロッカーアーム31のピン孔31aに摺動自在に嵌合する第2ピン43と、第1ピン42を第2ピン43に向けて付勢する戻しばね44と、第2ピン43の第1ピン42と反対側の端面に形成された油室45とを備えており、油室45は吸気ロッカーアームシャフト28の内部に形成した油路28aに、吸気ロッカーアームシャフト28および第2吸気ロッカーアーム31に形成した油孔28b,31bを介して常時連通する。
【0020】
従って、図示せぬ制御手段からの指令で吸気ロッカーアームシャフト28の油路28a、吸気ロッカーアームシャフト28の油孔28bおよび第2吸気ロッカーアーム31の油孔31bを介して油室45に油圧が供給されると、図2に示すように、戻しばね44の弾発力に抗して第1、第2ピン42,43が移動し、第2ピン43が両ピン孔30a,31aに跨がることで、第1、第2吸気ロッカーアーム30,31が連結されて一体に揺動可能になる。また油室45に供給される油圧を抜くと、戻しばね44の弾発力で第1、第2ピン42,43が押し戻され、第1、第2ピン42,43がそれぞれ第1、第2吸気ロッカーアーム30,31のピン孔30a,31aに収納されることで、第1、第2吸気ロッカーアーム30,31が分離されて独立して揺動可能になる。
【0021】
排気ロッカーアームシャフト29に揺動自在に支持された第1、第2排気ロッカーアーム32,33は、その一端側に設けたローラ46,47がカムシャフト27に設けた排気カム48,49に当接し、その他端側に設けたアジャストボルト50,51が排気弁24,24のステムエンド24a,24aに当接する。また符号52は点火プラグ挿入筒であり、一対の排気弁24,24の間に設けられる。
【0022】
次に、吸気弁21,21の閉弁タイミングを遅延する吸気弁閉弁タイミング遅延装置61の構造を説明する。
【0023】
吸気弁閉弁タイミング遅延装置61は、カムシャフトホルダ13に設けられるもので、4個のシリンダ14…に各々対応して電磁アクチュエータ機構62、油圧ダンパー機構63およびアマチュア固定機構64を備える。各シリンダ14に対応する電磁アクチュエータ機構62、油圧ダンパー機構63およびアマチュア固定機構64は全て同一構造であり、以下その一つを例にとって説明する。
【0024】
図3および図4から明らかなように、電磁アクチュエータ機構62は、第1端板65と、第2端板66と、重ね合わされた多数の第1積層板68…および多数の第2積層板69…よりなる2個のヨーク70,70とを備える。ヨーク70,70の第1積層板68…および第2積層板69…は左右対称な形状を有しており、それぞれ上面に開放するコイル収納溝68a,69aを備える。また第1端板65および第2端板66は、第1、第2積層板68…,69…のコイル収納溝68a,69aに連なるコイル収納溝65b,65c;66b,66cを備えており、ボビンに巻き付けられたコイル71が、第1、第2積層板68,69のコイル収納溝68a,69aおよび第1、第2端板65,66のコイル収納溝65b,65c;66b,66cに上方から嵌合し、更にその上部にコイル71と略同一形状のレアショート板72が配置される。磁束の成長を促進するためのレアショート板72は打ち抜き、鍛造、削りだし等で製作したむく材で構成されるが、それを積層板で構成すれば更に効果を高めることができる。
【0025】
概略長方形の枠状に形成されたレアショート板72は、その一部に形成されたスリット72aで切断されており、その上面が第1、第2端板65,66の上面および第1、第2積層板68…,69…の上面と面一になるように固定される。コイル71はコイル収納溝65b,65c;66b,66c;68a;69aに嵌合して樹脂で固着されるが、レアショート板72もコイル71と共に樹脂で固着される。左右のヨーク70,70間に、上端にアマチュア73を備えた保持ロッド74が摺動自在に支持される。概略長方形のアマチュア73は、その下面が第1、第2端板65,66および第1、第2積層板68…,69…の上面に対向する。
【0026】
ヨーク70,70の両端部にはそれぞれ上下一対の締結シャフト75…が配置されており、これら4本の締結シャフト75…が貫通することで第1、第2端板65,66および第1、第2積層板68…,69…が一体に締結される。第1、第2積層板68…,69…の上面の両側部、つまり締結シャフト75…の上方に位置する部分に切欠68b,69bが形成される。
【0027】
図1から明らかなように、カムシャフトホルダ13にステー88を介してセンサ89が支持されており、このセンサ89でアマチュア73の上下位置が検出される。
【0028】
次に、図1および図5に基づいて、電磁アクチュエータ機構62により開弁保持された吸気弁21,21の閉弁時の衝撃を吸収する油圧ダンパー機構63の構造を説明する。
【0029】
油圧ダンパー機構63はカムシャフトホルダ13の上面の厚肉部の内部に収納されるもので、カムシャフトホルダ13に形成された下面開放のシリンダ91と、このシリンダ91に摺動自在に嵌合するカップ状のピストン92と、シリンダ91およびピストン92によって区画された油室93とを備えており、電磁アクチュエータ機構62の保持ロッド74がピストン92を貫通して固定される。シリンダ91の内壁面には複数のオリフィス94…が形成され、またピストン92にも、それを貫通するように複数のオリフィス92a…が形成される。ピストン92の上方に形成された油室93には油圧源からチェック弁(図示せず)を介してオイルが供給され、油室93からオリフィス94…を介して排出されたオイルはチェック弁(図示せず)を介してオイルタンクに戻される。
【0030】
油室93の上方において、保持ロッド74の外周を囲む保持ロッド挿通孔95がカムシャフトホルダ13の上面まで延びており、この保持ロッド挿通孔95と保持ロッド74との間にエア抜き用の空間が形成される。従って、電磁アクチュエータ機構62をカムシャフトホルダ13に締結する前に、油室93およびそれに連なる油路にオイルを充填する際に、保持ロッド挿通孔95を介してエア抜きを行うことが可能となり、特別のエア抜き孔が不要となる。
【0031】
次に、図1および図5に基づいて、電磁アクチュエータ機構62の非作動時にアマチュア73を上昇位置に保持するアマチュア固定機構64,64の構造を説明する。
【0032】
カムシャフトホルダ13の上面の厚肉部の内部に、各シリンダ14に対応して一対のアマチュア固定機構64,64が油圧ダンパー機構63を挟むように配置される。各々のアマチュア固定機構64は、カムシャフトホルダ13に形成されたシリンダ96と、それに摺動自在に嵌合するピストン97と、ピストン97を上向きに付勢する戻しばね98と、ピストン97の上面に形成された油室99と、ピストン97の上面から上向きに突出してアマチュア73の突起73aの下面に当接可能なアマチュア係止部材100とを備える。アマチュア係止部材100はカムシャフトホルダ13を貫通して上方に突出する(図6参照)。
【0033】
吸気弁閉弁タイミング遅延装置61の非作動時に、図1および図5に示すようにアマチュア固定機構64,64の油室99,99の油圧は抜かれており、戻しばね98,98の弾発力でアマチュア係止部材100,100が上昇してアマチュア73の突起73a,73aを押し上げた位置に保持するため、第1吸気ロッカーアーム30の揺動に伴って保持ロッド74がアマチュア73と共に不要な上下動をするのが防止される。
【0034】
これにより、保持ロッド74およびアマチュア73の慣性重量や摺動抵抗が第1吸気ロッカーアーム30のスムーズな揺動を阻害することが防止され、また吸気第1ロッカーアーム30の揺動に保持ロッド74の昇降が追従できないエンジンEの高速運転時に、保持ロッド74の下端が第1吸気ロッカーアーム30の保持ロッド受け部材35から離反したり衝突したりして騒音の発生や耐久性の低下の原因となることが防止される。
【0035】
一方、吸気弁閉弁タイミング遅延装置61の作動時には、図6に示すように、アマチュア固定機構64,64の油室99,99に油圧が供給され、戻しばね98,98の弾発力に抗してアマチュア係止部材100,100が下降する。その結果、アマチュア係止部材100,100がアマチュア73から下方に離反し、アマチュア73および保持ロッド74は自由に昇降できる状態となる。
【0036】
保持ロッド74を挟んで対称的に配置した一対のアマチュア固定機構64,64のアマチュア係止部材100,100でアマチュア73の一対の突起73a,73aを固定するので、アマチュア73の傾きや保持ロッド74のコジリを確実に阻止できる。
【0037】
次に、上記構成を備えた実施例の作用を説明する。
【0038】
図2において、エンジンEの低速運転領域で吸気弁21,21の動弁系に設けたけた連結・解除機構41の油室45の油圧を抜くと、戻しばね44の弾発力で第1、第2ピン42,43が押し戻され、第1、第2ピン42,43がそれぞれ第1、第2吸気ロッカーアーム30,31のピン孔30a,31aに収納されることで、第1、第2吸気ロッカーアーム30,31が分離されて独立して揺動可能になる。その結果、カム山が高い吸気ハイカム36にローラ37を当接させた第1吸気ロッカーアーム30は大きく揺動して一方の吸気弁21を大きなリフト量で開閉する一方、カム山が低い吸気ローカム39にスリッパ40を当接させた第2吸気ロッカーアーム31は小さく揺動して他方の吸気弁21を小さなリフト量で開閉することで、燃焼室18内に吸気スワールを発生させて混合気の燃焼効率を高めることができる。
【0039】
エンジンEの中・高速運転領域で連結・解除機構41の油室45に油圧を供給すると、図2に示すように、戻しばね44の弾発力に抗して第1、第2ピン42,43が移動し、第2ピン43が両ピン孔30a,31aに跨がることで、第1、第2吸気ロッカーアーム30,31が連結されて一体に揺動可能になる。その結果、カム山が高い吸気ハイカム36にローラ37を当接させた第1吸気ロッカーアーム30と一体に第2吸気ロッカーアーム31が大きく揺動し、両方の吸気弁21,21を大きなリフト量で開閉してエンジンEの出力が増加する。
【0040】
吸気弁閉弁タイミング遅延装置61の非作動時、つまり電磁アクチュエータ機構62のコイル71への通電が行われないとき、図1に示すようにアマチュア固定機構64,64の油室99,99の油圧は抜かれており、戻しばね98,98の弾発力でアマチュア係止部材100,100が上昇して突起73a,73aに係合することでアマチュア73を押し上げた位置に保持するため、第1吸気ロッカーアーム30の揺動に伴って保持ロッド74がアマチュア73と共に不要な上下動をするのが防止される。
【0041】
これにより、保持ロッド74およびアマチュア73の慣性重量や摺動抵抗が第1吸気ロッカーアーム30のスムーズな揺動を阻害することが防止され、吸気弁29のスムーズな開閉が可能になる。特に、エンジンEの高速運転時には、吸気第1ロッカーアーム30の揺動に保持ロッド74の昇降が追従できず、保持ロッド74の下端が第1吸気ロッカーアーム30の保持ロッド受け部材35から離反したり衝突したりする状況となり、騒音の発生や耐久性の低下の原因となる可能性があるが、かかるエンジンEの高速運転時に戻しばね98,98の弾発力でアマチュア係止部材100,100を上昇させてアマチュア73を上昇位置に保持すれば、上記騒音の発生や耐久性の低下を確実に防止できる。
【0042】
一方、吸気弁閉弁タイミング遅延装置61の作動時、つまり電磁アクチュエータ機構62のコイル71への通電が行われるとき、図6に示すようにアマチュア固定機構64,64の油室99,99に油圧が供給され、戻しばね98,98の弾発力に抗してアマチュア係止部材100,100が下降する。その結果、アマチュア係止部材100,100がアマチュア73の突起73a,73aから下方に離反し、アマチュア73および保持ロッド74は自由に昇降できる状態となる。
【0043】
しかして、第1吸気ロッカーアーム30が吸気弁21のステムエンド21aを押し下げて該吸気弁21のリフト量が最大になるのにタイミングを合わせて電磁アクチュエータ機構62のコイル71を励磁すると、ヨーク70,70にアマチュア73が吸引されることで保持ロッド74が下降し、その下端が保持ロッド受け部材35を下方に押圧する。すると、第1吸気ロッカーアーム30が揺動し、その一端側のアジャストボルト34が吸気弁21のステムエンド21aを押圧して該吸気弁21を開弁させたままの状態に保持する。このとき、第1吸気ロッカーアーム30の他端側のローラ37はカムシャフト27の吸気ハイカム36から離反して空転する。
【0044】
所定時間の経過後にコイル71を消磁すると、吸気弁ばね23の弾発力で吸気弁21が閉弁位置に上昇し、第1吸気ロッカーアーム30が逆方向に揺動してローラ37が吸気ハイカム36に当接するとともに、保持ロッド受け部材35に下端を押し上げられた保持ロッド74と共にアマチュア73が上昇してヨーク70,70の上面から離反する。このように、電磁アクチュエータ機構62のコイル71を所定のタイミングで励磁および消磁することにより、吸気弁21の閉弁時期を任意の長さだけ遅延させることができ、ポンピングロスの低減による燃料消費の低減を図ることができる。図7には、エンジンEの回転数が650rpmの場合および3000rpmの場合について、吸気弁21の遅閉じ制御によるバルブリフト量の変化が示される。
【0045】
尚、電磁アクチュエータ機構62の作動時に、連結・解除機構41で第1、第2吸気ロッカーアーム30,31が一体に結合されていれば、2個の吸気弁21,21の閉弁タイミングを共に遅延させることができる。また連結・解除機構41で第1、第2吸気ロッカーアーム30,31を分離していれば、第1吸気ロッカーアーム30側の吸気弁21の閉弁タイミングだけが遅延し、第2吸気ロッカーアーム30側の吸気弁21は吸気ローカム39のプロフィールに応じたバルブリフト量で開閉する。
【0046】
以上、吸気弁21,21の動弁作用について説明したが、排気弁24,24の動弁作用は従来のものと同様である。即ち、図2において、カムシャフト27に設けた排気カム48,49にローラ46,47を当接させた第1、第2排気ロッカーアーム32,33が排気ロッカーアームシャフト29まわりに揺動することで、それら第1、第2排気ロッカーアーム32,33に設けたアジャストボルト50,51にステムエンド24a,24aを当接させた排気弁24,24が開閉駆動される。
【0047】
図3から明らかなように、ヨーク70,70の第1、第2積層板68…,69…および第1、第2端板65,66を一体に結合する4本の締結シャフト75…は、該ヨーク70,70に形成される磁路C,Cを避けた両側位置に配置されるので、締結シャフト75…の影響による磁束密度の低下を最小限に抑えることができ、しかも締結シャフト75…が磁路C,Cの側方に配置されるので、電磁アクチュエータ機構62の上下方向寸法を小型化することができる。またアマチュア73が吸着されるヨーク70,70の上面における第1、第2積層板68…,69…の両端位置に、つまり締結シャフト75…の上方位置に切欠68b,69bを形成したので、締結シャフト75…を通過する磁束量を減少させて該締結シャフト75…の影響による磁束密度の低下を更に低減することができる。そして前記切欠68b,69bを持たない下面側で第1、第2積層板68…,69…をカムシャフトホルダ13に固定したので、固定面積を充分に確保してカムシャフトホルダ13に対する電磁アクチュエータ機構62の固定強度を高めることができる。
【0048】
更に、アマチュア73の移動方向に測った切欠68b,69bの高さは、アマチュア73がヨーク70,70の吸着面に吸着されたときのアマチュア73およびヨーク70,70間のギャップよりも大きいため、アマチュア73の吸着時にヨーク70,70の吸着面を通過する磁束量を最大限に確保してアマチュア73の吸着力を増加させることができる。しかも片側2本の締結シャフト75,75は上下方向(アマチュア73の吸着方向)に離間して配置されているので、第1、第2積層板68…,69…を強固に締結してヨーク70,70の吸着面における口開き(締結の緩み)を防止し、アマチュア73の吸着力の低下を抑制することができる。
【0049】
ところで、電磁アクチュエータ機構62は、弁ばね23の強い弾発力に抗して吸気弁21を開弁状態に保持するために、アマチュア73を大きな吸着力で吸着する必要があり、また電磁アクチュエータ機構62の駆動回路の損失を最小限に抑えるためにも、その駆動電圧が高い方が望ましい。そのために従来の電磁アクチュエータ機構62は、車載のバッテリの電圧である12Vを例えば42Vに昇圧して使用することを前提としていた。電磁アクチュエータ機構62を低電圧(つまり車載のバッテリの電圧である12V)で駆動するのが難しいのは、以下のような理由からである。
【0050】
ある電圧(例えば、42V)で適切に作動するように設計された電磁アクチュエータ機構62をより低い電圧で作動させるには、高い電圧の場合と比べてコイル71に対する電圧印加時間を長くしてヨーク70,70における磁束の成長を促す必要がある。しかしながら、エンジンEの回転数が高い場合には前記磁束の成長を待つ時間的な余裕がないため、アマチュア73を適切なタイミングで応答性良く吸着することが難しくなる。またコイル71に対する電圧印加時間を長くするために早いタイミングで電圧を印加すると、その電圧の印加を開始する時点でアマチュア73とヨーク70,70との距離が離れているため、電磁アクチュエータ機構62の電気端子から見込んだ等価的なインダクタンスが非常に小さくなり、低電圧にも拘わらずコイル71に大電流が流れてしまう。その結果、電磁アクチュエータ機構62のコイル71の直流抵抗や駆動回路の駆動素子の損失が大きくなって磁束の成長への貢献が不充分になり、所望の磁束を得るために更にコイル71に対する電圧印加タイミングを早めなければならず、電磁アクチュエータ機構62の消費電力が過大になるか、あるいはアマチュア73を吸着できなくなる事態に至る。
【0051】
しかしながら、本実施例では、電磁アクチュエータ機構62のヨーク70,70を構成する第1、第2積層板68…,69…および第1、第2端板65,66のコイル収納溝65b,65c;66b,66c;68a;69aに嵌合するコイル71の上面にレアショート板72を配置したことで、前記コイル収納溝65b,65c;66b,66c;68a;69aを磁気的にレアショートさせ、コイル71に電圧を印加した後のヨーク70,70の磁束の成長を促進することができる。その結果、車載のバッテリの電圧である12Vを昇圧することなく、またコイル71に対する電圧印加タイミングをあまり早めることなく、ヨーク70,70に充分な磁束を速やかに発生させてアマチュア73を適切なタイミングで吸着することができ、エンジンEの高速回転時にも吸気弁21の遅閉じ制御を可能になすることができる。
【0052】
またレアショート板72の上面は第1、第2端板65,66および第1、第2積層板68…,69…の上面と面一に配置されているので、レアショート板72の上面をアマチュア73を吸着する吸着面の一部として機能させることができる。これにより、ヨーク70,70に吸着されたアマチュア73がレアショート板72と一体になり、該アマチュア73の実質的な磁路断面積が増加して磁気飽和が緩和されるので、僅かではあるがアマチュア73を薄くして軽量化を図るとともに、電磁アクチュエータ機構62の上下方向寸法を小型化することができる。しかもレアショート板72の位置が高くなるので、その下方のコイル収納溝65b,65c;66b,66c;68a;69aの容積を拡大してコイル71を大型化することができる。
【0053】
またレアショート板72とコイル収納溝65b,65c;66b,66c;68a;69aとの間のギャップα(図3および図4参照)は、アマチュア73が吸着された状態で該アマチュア73とヨーク70,70の吸着面とのギャップ(実質的に0)よりも大きいため、前記ギャップαに磁束が漏れるのを防止してアマチュア73の吸着力を高めることができる。更に、長方形のレアショート板72の一部にスリット72aを形成したことで、ヨーク70,70に発生する磁束に起因する誘導起電力によりレアショート板72に渦電流が流れるのを抑制し、コイル71の消費電力を削減することができる。
【0054】
レアショート板72を持たないもの(図8(A)参照)と、レアショート板72を持つもの(図8(B)参照)とを比較すると明らかなように、レアショート板72を設けたことにより、電圧印加のタイミングを遅らせ、かつアマチュア73の吸着に至るまでの時間においてコイル71に供給する電流および投入エネルギーを大幅に低減しても、吸気弁21のバルブリフト量を最大バルブリフト位置に保持することができる。
【0055】
さて、吸気弁21の開弁保持を解除すべくコイル71の励磁状態から消磁状態に切り換えると、吸気弁ばね23の弾発力で吸気弁21が閉弁する。このとき、吸気弁21が吸気弁孔19に衝撃的に着座するのを防止するために油圧ダンパー機構63が作用する。即ち、閉弁する吸気弁21のステムエンド21によって保持ロッド74が押し上げられると、保持ロッド74に押圧された油圧ダンパー機構63のピストン92が、図6の下降位置から図1の上昇位置へと押し上げられる。シリンダ91内をピストン92が上昇すると、ピストン92の上方の油室93の容積が減少する。ピストン92が下降位置にあるとき、油室93には開弁した入口側チェック弁を介して油圧が供給されているが、ピストン92の上昇によって油室93の容積が減少すると入口側チェック弁が閉弁し、油室93内のオイルは出口側チェック弁を開弁して排出される。このとき、油室93内のオイルがシリンダ91の壁面のオリフィス94…及びピストン92のオリフィス92a…を通過することで、吸気弁21が吸気弁孔19に衝撃的に着座するのを防止する油圧緩衝力が発生する。
【0056】
上記油圧緩衝力の発生メカニズムを更に詳細に説明する。ピストン92が図6に示す下降位置から上昇を開始するとき、シリンダ91の壁面のオリフィス94…をオイルが通過することで油圧緩衝力が発生し、バルブリフト量は一定の比率で減少する。ピストン92の上動に伴い、該ピストン92の上端がシリンダ91の壁面のオリフィス94…を閉塞すると、それ以後はピストン92の小径のオリフィス92a…をオイルが通過することで更に強い油圧緩衝力が発生し、バルブリフト量の減少率が低下して吸気弁21は衝撃を発生することなくゆっくりと着座する。
【0057】
以上のように、油圧ダンパー機構63およびアマチュア固定機構64,64をカムシャフトホルダ13の内部に設けたので、エンジンEの高さ方向の寸法を小型化するとともに、それらを支持する特別の支持部材を不要にして部品点数を削減し、かつ油圧ダンパー機構63およびアマチュア固定機構64,64に連なる油路をカムシャフトホルダ13に形成することでシリンダヘッド12の加工を容易化することができる。更に油圧ダンパー機構63およびアマチュア固定機構64,64をヘッドカバーに取り付ける場合に比べて固定剛性を高め、かつエンジンEの高さ方向の寸法を小型化することができ、またそれらをシリンダヘッド12に取り付ける場合に比べて該シリンダヘッド12を小型化することができる。特に、一体型のカムシャフトホルダ13の高剛性の連結部(つまりカムシャフト27のジャーナルを支持するジャーナル支持部を連結する部分)に油圧ダンパー機構63を設けたので、油圧ダンパー機構63の固定剛性を高めることができる。
【0058】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0059】
例えば、本発明はクランクシャフトを鉛直方向に配置した船外機のような船舶推進用エンジンに対しても適用することができる。
【0060】
【発明の効果】
以上のように請求項1に記載された発明によれば、電磁アクチュエータ機構による保持を解除されて閉弁状態に復帰する吸気弁の着座時の衝撃を緩衝する油圧ダンパー機構をカムシャフトホルダに支持したので、特別の支持部材が不要になって部品点数が削減され、しかも油圧ダンパー機構の油室に連なる油路をカムシャフトホルダに形成できてシリンダヘッドの加工を容易化することができる。また油圧ダンパー機構を電磁アクチュエータ機構の下方においてカムシャフトホルダの内部に収納して同ホルダに支持したので、油圧ダンパー機構をヘッドカバーに取り付ける場合に比べて油圧ダンパー機構の固定剛性を高め、かつエンジンの高さ方向の寸法を小型化することができ、更に油圧ダンパー機構ををシリンダヘッドに取り付ける場合に比べて該シリンダヘッドを小型化することができる。
【0061】
また請求項2に記載された発明によれば、複数のシリンダを結ぶ方向に連結された一体型のカムシャフトホルダの連結部に油圧ダンパー機構を設けたので、カムシャフトホルダの高剛性の部分に油圧ダンパー機構を取り付けて固定剛性を高めることができる。
【0062】
また請求項3に記載された発明によれば、電磁アクチュエータ機構の保持ロッドを挿通すべく油圧ダンパー機構に設けられた保持ロッド挿通孔が、油圧ダンパー機構の油室からエアを抜くエア抜き孔を兼ねるので、特別のエア抜き孔を設けることなく油室のエアを抜くことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 エンジンのシリンダヘッド部の断面図(図2の1−1線断面図)
【図2】 図1の2−2線断面図
【図3】 図1の3部拡大図
【図4】 図3の4−4線断面図
【図5】 図1の5部拡大図
【図6】 吸気弁閉弁タイミング遅延装置の作動状態を示す、前記図1に対応する図
【図7】 吸気弁の遅閉じ制御によるバルブリフト量の変化を示すグラフ
【図8】 吸気弁の遅閉じ制御時におけるバルブリフト量、コイルの電圧およびコイルの電流の変化を示すタイムチャート
【符号の説明】
13 カムシャフトホルダ
14 シリンダ
21 吸気弁
21a ステムエンド
27 カムシャフト
30 第1吸気ロッカーアーム(ロッカーアーム)
31 第2吸気ロッカーアーム(ロッカーアーム)
62 電磁アクチュエータ機構
63 油圧ダンパー機構
73 アマチュア
74 保持ロッド
93 油室
95 保持ロッド挿通孔

Claims (3)

  1. カムシャフトホルダ(13)に支持されカムシャフト(27)により吸気ロッカーアーム(30,31)を介して吸気弁(21)を開閉駆動するとともに、電磁アクチュエータ機構(62)のアマチュア(73)に接続された保持ロッド(74)で吸気弁(21)のステムエンド(21a)を押圧して該吸気弁(21)を開弁状態に保持し、かつ電磁アクチュエータ機構(62)による保持を解除されて閉弁状態に復帰する吸気弁(21)の着座時の衝撃を油圧ダンパー機構(63)で緩衝するエンジンの動弁装置であって、
    前記油圧ダンパー機構(63)は、前記電磁アクチュエータ機構(62)と同軸で且つその電磁アクチュエータ機構(62)の下方に配置されると共に前記カムシャフトホルダ(13)の内部に収納されていて、該カムシャフトホルダ(13)に支持されており、
    前記油圧ダンパー機構(63)には、前記保持ロッド(74)を挿通させる保持ロッド挿通孔(95)が設けられ、
    前記カムシャフトホルダ(13)には、前記油圧ダンパー機構(63)の油室(93)に連なる油路が形成されることを特徴とする、エンジンの動弁装置。
  2. 前記カムシャフトホルダ(13)は複数のシリンダ(14)を結ぶ方向に連結された一体型であり、前記油圧ダンパー機構(63)は、前記カムシャフトホルダ(13)の連結部に設けられたことを特徴とする、請求項1に記載のエンジンの動弁装置。
  3. 前記保持ロッド挿通孔(95)は、前記油圧ダンパー機構(63)の油室(93)からエアを抜くエア抜き孔を兼ねることを特徴とする、請求項1又は2に記載のエンジンの動弁装置。
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