JP3933500B2 - 半導体式ガス検知素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化亜鉛粒子を主成分とする金属酸化物半導体ペーストを焼成して作製した感応部を有する半導体式ガス検知素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体式ガス検知素子は金属酸化物半導体を主成分とするガス感応部を有し、検知対象ガス(以下被検知ガスとする)と接触自在に設けられている。被検知ガスが前記半導体式ガス検知素子に接触して、前記ガス感応部において前記金属酸化物半導体により酸化され、その酸化反応に伴う電子の授受に伴い前記半導体式ガス検知素子の抵抗値が定量的に変化する。そのため、前記半導体式ガス検知素子を備えたガス検知装置は、前記抵抗値の変化に基づく出力値から被検知ガスの濃度を求めることが出来る。
【0003】
被検知ガスとしては、メタン(CH4)やアルコール等の可燃性ガス、一酸化炭素(CO)や窒素酸化物(NOX)ガス等の有毒ガス、硫黄化合物等の悪臭ガス等があげられ、これらは、金属酸化物を半導体式ガス検知素子の主成分として利用した前述のガス検知装置により検知することが出来るため、未然にガス爆発やガス中毒等の事故を防ぐことができるのである。
【0004】
前述の悪臭ガスに関して、悪臭の原因となる成分として、硫黄化合物、アミン類、カルボン酸類、ケトン類、アルデヒド類などがあり、これらが大気中に放出されることによって悪臭ガスとなる。可燃性ガスなどを検知するには、雰囲気中に検知対象ガス(被検知ガス)が数千ppm程度存在するのを検知測定するのに対して、悪臭ガスを検知測定するためには、例えば1ppm以下といった極めて稀薄な悪臭ガスに対して感度を有することが要求されていた。このような要求を満たすために使用されていた悪臭ガス検知装置として、酸化亜鉛半導体をガス感応部に有するガス検知装置が使用されていた。
【0005】
しかし、このような酸化亜鉛半導体をガス感応部に有するガス検知装置は、通常の環境レベルに存在する数十ppm程度のアルコール等の検出対象以外のガス(妨害ガス)を検知してしまい、本来検知すべき悪臭ガス(H2S等)を検知した場合と区別がつかないという問題点が有った。
【0006】
そのため、酸化亜鉛半導体よりなるガス感応部の表面に、タングステン、モリブデン、バナジウムの中から選ばれた少なくとも一種の金属の酸化物を含む触媒層を具備した半導体式ガス検知素子を設けた悪臭ガスセンサが提案された(特開平04−66857号公報)。この触媒層は、被検知ガスである悪臭ガスには作用せず、妨害ガスのみを選択的に分解除去する。そのため、前記触媒層を具備した半導体式ガス検知素子は、悪臭ガスに対して優れた選択性と極めて高いガス感度を有している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述した酸化亜鉛を感応部として有する半導体式ガス検知素子は、硫黄化合物を含む悪臭を高感度に検出することが可能であるが、以下の問題点を有していた。
(1)ガス検知時の応答が遅い。
90%応答時間(メーターの指示値の変化が始まってから、飽和出力の90%に達するまでに要した時間)に210秒以上要する。
(2)被検知ガス中から清浄空気に戻した時のセンサ出力の復帰が遅い。
例えば、1ppmH2S検知後、清浄空気中に戻した時に、センサ出力が0.01ppmH2S相当出力のレベルまで復帰するのに560秒以上要するため、1点の測定に多大な時間を要し非効率的であった。
(3)ウォーミングアップ時間(電源を印加してからガス検知可能な状態になるまでの時間)が長い。
例えば、1週間無通電で放置した状態から電源印加後、センサ出力が0.01ppmH2S相当出力の1/2レベルまで復帰するのに30分以上要するため、実使用上、非常に不便であった。
(4)低湿度領域における湿度依存性が大きく、測定値が大きく影響を受けるため、信頼性のある測定が困難であった。
【0008】
このような問題点が有るため、限られた条件、限られた用途でしか使用できなかった。
【0009】
従って、本発明の目的は、実使用に際して効率よく検知作業が行え、かつ、信頼性の高い半導体式ガス検知素子を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、前記ガス感応部材料を改質することに着目して鋭意研究したところ、酸化亜鉛に酸化亜鉛より活性の高い所定量の酸化スズを添加することにより、酸化亜鉛の持っていた硫黄化合物を含む被検知ガスに高感度である特性を維持しつつ、硫黄化合物を含む被検知ガスに対する酸化活性が高まり、かつ、ガス感応部における吸脱着を含む反応速度が速まることを見出し、本発明を完成するに至った。
さらに、酸化亜鉛の所定量を超微粒子酸化亜鉛とすることによりウォーミングアップに要する時間の短縮が認められ、さらに、前記ガス感応部にPb,Cu,Fe,Ni,Coの金属酸化物の少なくとも一種を担持させることにより、硫黄化合物を含む被検知ガスに対して、ガス検知時の応答時間、清浄空気に戻した時の復帰時間の短縮が認められるといった優れた特性を付与することができることも新たに見出した。
ここで、超微粒子酸化亜鉛とは、酸化亜鉛の平均粒子径が50nm以下の酸化亜鉛を指すものとする。
【0011】
〔構成1〕
この目的を達成するための本発明の特徴構成は、請求項1に記載のように、
酸化亜鉛粒子を主成分とする金属酸化物半導体ペーストを焼成して作製した感応部を有する半導体式ガス検知素子であって、
前記金属酸化物半導体ペーストが、前記酸化亜鉛粒子に対して酸化スズ粒子を2〜10重量%含むことを特徴とすることにある。
【0012】
〔作用効果1〕
つまり、前記金属酸化物半導体ペーストが、前記酸化亜鉛粒子に対して酸化スズ粒子を2〜10重量%含むことにより、後述の実施例1(a)〜(f)に示したように、
酸化亜鉛に対する酸化スズの重量%が2重量%以上である場合には、(a)ガス検知時の応答時間が1/5〜1/10に短縮し、(b)被検知ガス中から清浄空気に戻した時のセンサ出力の復帰時間が1/3〜1/6に短縮し、かつ(c)ウォーミングアップ時間が1/3〜1/5に短縮する。
また、酸化亜鉛に対する酸化スズの重量%が2〜10重量%である場合には、(d)低湿度領域における湿度依存性が小さくなり(湿度変動によるメータの指示値の変動が1/2.5〜1/5になる)、(e)被検知ガスに対する感度が約2〜4倍高くなる。
さらに、酸化亜鉛に対する酸化スズの重量%を10重量%以下とすることにより、(f)ガス選択性が優れたものとなる。
【0013】
これらより、酸化亜鉛に対する酸化スズ添加量を2〜10重量%とすることにより、ガス検知時の応答時間や被検知ガス中から清浄空気に戻した時のセンサ出力の復帰が速くなるため、1サンプル当たりの測定時間が大幅に短縮されるため測定の効率化が実現すると共に測定精度が増し、高性能化が実現する。
また、ウォーミングアップ時間が短縮することにより、電源印加後、被検知ガスの測定が効率的に行えるようになり、低湿度領域における湿度依存性が改善されたため、測定可能な条件、用途が広がり、高精度な測定が可能となった。
さらに、このような半導体式ガス検知素子は、硫化水素等の被検知ガス感度や被検知ガスと妨害ガスとの選択性に優れた特性を有するものであるため、被検知ガスを精度良く検知できる信頼性の高い半導体式ガス検知素子を提供することが可能となるのである。
【0014】
さらに、前記酸化亜鉛粒子の少なくとも10重量%が50nm以下の平均粒子径を有する超微粒子酸化亜鉛であれば好ましい。
前記酸化亜鉛粒子の少なくとも10重量%を超微粒子酸化亜鉛とすることにより、後述の実施例2に示したように、ウォーミングアップに要する時間が、さらに半分に短縮される。
これにより、さらに測定の効率化が実現可能な半導体式ガス検知素子を提供できる。
【0015】
〔構成2〕
この目的を達成するための本発明の特徴構成は、請求項2に記載のように、上記構成1において、
前記超微粒子酸化亜鉛は、ガス化した金属亜鉛に酸素を供給して製造されたものであれば好ましい。
【0016】
〔作用効果2〕
前記超微粒子酸化亜鉛が、ガス化した金属亜鉛に酸素を供給して製造されたものであれば、平均粒子径が50nm以下の超微粒子酸化亜鉛を製造することができる。そして、このような粒子径を有する前記超微粒子酸化亜鉛を使用することにより、酸化亜鉛全体の比表面積が大きくなり、その結果酸化亜鉛と酸化スズとの接触面積が増し、酸化亜鉛より活性の高い酸化スズを添加する効果をより顕著なものにすることができる。
【0017】
〔構成3〕
この目的を達成するための本発明の特徴構成は、請求項3に記載のように、上記構成1〜2において、
前記感応部に、Pb,Cu,Fe,Ni,Coの金属酸化物のうち少なくとも一種を担持させてあれば好ましい。
【0018】
〔作用効果3〕
つまり、前記感応部に、Pb,Cu,Fe,Ni,Coの金属酸化物のうち少なくとも一種を担持させてあれば、前記感応部に金属酸化物を担持させない場合と比較すると、後述の実施例3(a)〜(c)に示したように、
90%応答時間は2/5〜4/5に短縮し、復帰時間は1/2〜4/5に短縮し、ウォーミングアップ時間は1/2〜5/6に短縮する。
【0019】
これにより、構成1〜2の半導体式ガス検知素子と比べてさらに測定の効率化が実現可能な半導体式ガス検知素子を提供できる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。
【0021】
本発明の半導体式ガス検知素子は、図1に示したように、アルミナ基板3の上面に酸化亜鉛と酸化スズの混合物よりなるガス感応部2と、前記ガス感応部2の電気抵抗を検知する白金電極4a〜4bと、前記アルミナ基板3の下面にヒータ5とを有する基板型半導体式ガス検知素子1とすることができる。
【0022】
前記酸化亜鉛は、所定濃度の塩化亜鉛水溶液に、所定濃度のアンモニア水を滴下して水酸化亜鉛の沈殿物を得た後、前記沈殿物を水洗、乾燥後、電気炉で600℃、2時間焼成することにより得ることができる。
【0023】
前記酸化スズは、所定濃度の四塩化スズ水溶液に、所定濃度のアンモニア水を滴下して水酸化スズの沈殿物を得た後、前記沈殿物を水洗、乾燥後、電気炉で600℃、2時間焼成することにより得ることができる。
【0024】
このようにして得られた前記酸化亜鉛および前記酸化スズを所定の割合に混合し、水で練って、前記酸化亜鉛と前記酸化スズの混合物ペースト(金属酸化物半導体ペースト)を作製する。
また、ガス感応部2の電気抵抗を検知する白金電極4a〜4b及びアルミナ基板3の他面にヒータ5を形成して素子基体を作製しておく。前記金属酸化物半導体ペーストを前記素子基体の白金電極4a〜4bを覆うように塗布し、乾燥後、900℃で2時間焼成することにより、酸化亜鉛および酸化スズからなる金属酸化物半導体をガス感応部2とする基板型半導体式ガス検知素子1を得ることができる。
【0025】
[実施例1]
以下に、酸化亜鉛に対して酸化スズを、それぞれ、1、2、3、5、10、15、20、25重量%添加して上記の方法により基板型半導体式ガス検知素子1を作製し、各基板型半導体式ガス検知素子1の諸特性(ガス検知時の応答時間、被検知ガス中から清浄空気に戻した時のセンサ出力の復帰時間、ウォーミングアップ時間、湿度依存性、被検知ガスに対する感度、ガス選択性)を調べた。
尚、下記に示すデータは、上記各重量%の酸化スズを含有する基板型半導体式ガス検知素子1を各10個づつ作製してその平均値を求めたものであり、表中の「酸化スズ/酸化亜鉛(%)」は、酸化亜鉛に対する酸化スズの重量%を示したものであり、「0」は、酸化スズを添加しない従来の酸化亜鉛よりなるガス感応部2を有する基板型半導体式ガス検知素子1のことを示したものである。
【0026】
(a)ガス検知時の応答時間
表1に、酸化亜鉛に対する酸化スズの重量%を種々変更して作製したガス感応部2を有する基板型半導体式ガス検知素子1を用いて、1ppmの硫化水素に対する90%応答時間を調べた結果を示した。
【0027】
【表1】
【0028】
この結果より、酸化スズの重量%が上昇するに従い、90%応答時間が短縮されることが判明した。また、酸化スズを1重量%添加した場合でも応答時間を短縮する効果はあるが、酸化スズを2重量%以上添加した場合で90%応答時間が従来の1/5〜1/10に短縮するという顕著な効果を示した。
【0029】
(b)被検知ガス中から清浄空気に戻した時のセンサ出力の復帰時間
表2に、酸化亜鉛に対する酸化スズの重量%を種々変更して作製したガス感応部2を有する基板型半導体式ガス検知素子1を用いて、1ppm硫化水素曝露後、0.01ppm硫化水素に相当する出力レベルまで復帰する時間(復帰時間)を調べた結果を示した。
【0030】
【表2】
【0031】
この結果より、酸化スズの重量%が上昇するに従い、0.01ppm硫化水素に相当する出力レベルへの復帰時間が短縮されることが判明した。また、酸化スズを1重量%添加した場合でも復帰時間を短縮する効果はあるが、酸化スズを2重量%以上添加した場合で復帰時間が従来の1/3〜1/6に短縮するという顕著な効果を示した。
【0032】
(c)ウォーミングアップ時間
表3に、酸化亜鉛に対する酸化スズの重量%を種々変更して作製したガス感応部2を有する基板型半導体式ガス検知素子1を用いて、ウォーミングアップに要する時間を調べた結果を示した。ここで、ウォーミングアップに要する時間として、1週間無通電放置(電源を切った状態)の後、電源を印加してからセンサ出力が0.01ppm硫化水素に対する出力の1/2以下に戻るまでに要した時間を測定基準とした。
【0033】
【表3】
【0034】
この結果より、酸化スズの重量%が上昇するに従い、ウォーミングアップ時間は短縮することが判明した。また、酸化スズを1重量%添加した場合でもウォーミングアップ時間を短縮する効果はあるが、酸化スズを2重量%以上添加した場合でウォーミングアップ時間が従来の1/3〜1/5に短縮するという顕著な効果を示した。
ウォーミングアップ時間が短縮されたメカニズムとして、酸化亜鉛より活性の高い酸化スズを加えることによりガス感応部2の活性が高まるため、吸脱着を含む反応速度が速まり、これにより、無通電放置中に吸着した各種物質の脱着が速まることにより短時間に前記ガス感応部2をリフレッシュできたため、ウォーミングアップ時間が短縮したものと考えられる。
【0035】
(d)湿度依存性
表4に、酸化亜鉛に対する酸化スズの重量%を種々変更して作製したガス感応部2を有する基板型半導体式ガス検知素子1を用いて4g/m3の湿度において0.1ppmであったメータの指示値が、湿度を4→20g/m3に変化させた場合にどのように変化したかを調べた結果を示した。
【0036】
【表4】
【0037】
この結果より、酸化スズを添加することにより、メータの指示値の変動幅が小さくなることが判明した。さらに、酸化スズを2〜10重量%添加した場合で変動幅が従来の1/2.5〜1/5になるという顕著な効果を示した。
従来の酸化亜鉛よりなるガス感応部を有する半導体式ガス検知素子では、その清浄空気中での抵抗値が湿度変動により影響を受けることは殆どないが、硫化水素に対する感度が、低湿度領域の湿度変動により大きく影響を受ける。これに対して、従来の酸化スズよりなるガス感応部を有する半導体式ガス検知素子では、清浄空気中での抵抗値が湿度変動により大きく影響を受けるが、硫化水素に対する感度は湿度変動により影響を受けることが少ない。このため、本発明のように、酸化亜鉛に酸化スズを2〜10重量%添加することにより、酸化亜鉛と酸化スズの良い特性が現れ、清浄空気中抵抗値や硫化水素に対する感度共に湿度変動により影響を受け難くなると考えられる。
【0038】
(e)被検知ガスに対する感度
表5に、酸化亜鉛に対する酸化スズの重量%を種々変更して作製したガス感応部2を有する基板型半導体式ガス検知素子1を用いて、0.01ppm硫化水素に対する出力を調べた結果を示した。
【0039】
【表5】
【0040】
この結果より、酸化スズの添加量が増加するに従い、硫化水素に対する感度は高感度化して5重量%で最大となり、5重量%以上では感度が低下することが判った。特に、酸化スズの添加量が2〜10重量%において、従来の酸化亜鉛よりなる半導体式ガス検知素子より約2〜4倍感度が高くなっている。これは、酸化亜鉛より活性の高い酸化スズを加えることにより、硫黄化合物を含む被検知ガスに対する酸化活性が高まるため高感度化するが、酸化スズの添加量が10重量%以上では、酸化スズの特性が優勢となり、硫黄化合物を含む被検知ガスに対する感度が低感度化したものと考えられる。
【0041】
(f)ガス選択性
表6に、酸化亜鉛に対する酸化スズの重量%を種々変更して作製したガス感応部2を有する基板型半導体式ガス検知素子1を用いて、0.1 ppm硫化水素に対する出力と同一出力を与えるエタノール濃度を調べた結果を示した。
【0042】
【表6】
【0043】
この結果より、酸化スズの重量%が上昇するに従い、0.1 ppm硫化水素に対する出力と同一出力を与えるエタノール濃度が減少していることから、エタノールに対する感度は増大することが判った。そのため、酸化スズの添加量の多いガス検知素子では、硫黄化合物を含む被検知ガスを選択的に検知することが困難となる。これは、酸化スズのエタノールに対する感度は大きいため、添加量の上昇と共に、ガス検知素子は酸化スズ特性が優勢となり、エタノールに対する感度が増加すると考えられる。特に、酸化スズ添加量が10重量%以上で、ガス選択性の喪失が顕著となるため、酸化スズ添加量を10重量%以下とすることにより、ガス選択性の優れた半導体式ガス検知素子とすることができる。
【0044】
つまり、(a)〜(f)より、酸化亜鉛に対する酸化スズ添加量を2〜10重量%としたガス感応部を有する半導体式ガス検知素子とすることにより、ガス検知時の応答時間や被検知ガス中から清浄空気に戻した時のセンサ出力の復帰が速くなるため、1サンプル当たりの測定時間が大幅に短縮されるため測定の効率化が実現すると共に測定精度が増し、高性能化が実現する。
また、ウォーミングアップ時間が短縮することにより、電源印加後、被検知ガスの測定が効率的に行えるようになり、低湿度領域における湿度依存性が改善されたため、測定可能な条件、用途が広がり、高精度な測定が可能となった。
さらに、このような半導体式ガス検知素子は、硫化水素等の被検知ガス感度や被検知ガスと妨害ガスとの選択性に優れた特性を有するものであるため、被検知ガスを精度良く検知できる信頼性の高い半導体式ガス検知素子を提供することが可能となる。
【0045】
尚、(a)〜(f)より、酸化亜鉛に対する酸化スズ添加量を2重量%以下、あるいは10重量%以上としたガス感応部2を有する基板型半導体式ガス検知素子1では顕著な効果が得られないことが判る。特に、上記(b)(c)の実施例における酸化スズ添加量が2重量%以下の場合は、従来の酸化亜鉛よりなる半導体式ガス検知素子と比べて、センサ出力の復帰時間、ウォーミングアップ時間共にさほど短縮するには至らず、(e)(f)の実施例における酸化スズ添加量が10重量%以上の場合は、半導体式ガス検知素子の特性は酸化スズの特性が優勢になり被検知ガスに対する低感度化や、ガス選択性の喪失が顕著となり、硫黄化合物を含む被検知ガスを選択的に検知するという酸化亜鉛の特性がなくなるという結果が示された。
さらに、硫化水素などの曝露により応答波形がディケイするという問題を生じる。
【0046】
これらより、酸化亜鉛に対する酸化スズ添加量を2〜10重量%としたガス感応部を有する半導体式ガス検知素子とすることにより、上記種々の問題点を解決できる半導体式ガス検知素子を提供することが可能となるのである。
【0047】
[実施例2]
上記実施例において、酸化亜鉛の少なくとも10重量%を超微粒子酸化亜鉛としたものを使用することも可能である。
【0048】
前記超微粒子酸化亜鉛は、金属亜鉛をガス化(プラズマ化)し、同時に酸素を供給する気相法により得ることができる。
このようにして作製された超微粒子酸化亜鉛は、各酸化亜鉛粒子の平均粒子径が50nm以下であり、通常の酸化亜鉛の平均粒子径よりも小さいことを特徴とする。
【0049】
そして酸化スズ、超微粒子酸化亜鉛を、酸化亜鉛に対してそれぞれ2〜10、10重量%の割合になるように混合してペーストを作製し、このペーストから上述と同様の方法により作製されたガス感応部を有する基板型半導体式ガス検知素子を用いて特性を調べた。
【0050】
図2に(A)従来の酸化スズを添加しない酸化亜鉛よりなるガス感応部を有する基板型半導体式ガス検知素子と、(B)本発明の酸化亜鉛に酸化スズ及び超微粒子酸化亜鉛を添加したガス感応部を有する基板型半導体式ガス検知素子とを用いて、0.01ppm、0.1ppm、1ppm硫化水素をそれぞれ検知した場合のガス応答特性を比較した結果を示す。
【0051】
通常、電源印加後に被検知ガスを測定する前に、センサ出力が安定するまでのウォーミングアップが必要とされる。
前述したように、ウォーミングアップに要する時間とは、電源を印加してからガス検知可能な状態になるまでの時間のことであり、具体的には、1週間無通電放置(電源切った状態)の後、電源を印加してからセンサ出力が0.01ppm硫化水素に対する出力の1/2の出力に達するのに要した時間のことである。
(A)の従来の基板型半導体式ガス検知素子におけるウォーミングアップに要する時間は、センサ出力が図2中のA1に達するのに要した時間であり、約30分であった。
一方、(B)の本発明の基板型半導体式ガス検知素子におけるウォーミングアップに要する時間は、センサ出力が図2中のB1に達するのに要した時間であり、約3分であった。
【0052】
つまり、上記実施例1(c)で示したように、酸化亜鉛に酸化スズを2〜10重量%添加することにより、ウォーミングアップに要する時間は約30分から6分にまで短縮されているのに対して、本実施例2のように酸化亜鉛の10重量%を超微粒子酸化亜鉛とすることにより、さらに半分の3分にまで短縮することが可能になることが判明した。
【0053】
これは、超微粒子酸化亜鉛を用いることにより酸化亜鉛全体の比表面積が大きくなり、その結果酸化亜鉛と酸化スズとの接触面積が増し、酸化スズ添加の効果が増したと考えられる。
【0054】
[実施例3]
上記実施例において、前記ガス感応部2に、Pb,Cu,Fe,Ni,Coの金属酸化物のうち少なくとも一種を担持させることが可能である。
【0055】
例えば、前記酸化亜鉛に対して前記酸化スズを5重量%混合して水で練って得られた前記酸化亜鉛と前記酸化スズの混合物ペーストを、前記素子基体の白金電極4a〜4bを覆うように塗布し、乾燥後、900℃で2時間焼成することにより、酸化亜鉛および酸化スズの混合物からなる金属酸化物半導体を得る。
【0056】
この金属酸化物半導体に、Pb,Cu,Fe,Ni,Coの金属塩水溶液のうち少なくとも一種に含浸、乾燥、600℃で2時間焼成することにより、少なくとも一種のPb、Cu、Fe、Ni、Coの金属酸化物を担持した金属酸化物半導体をガス感応部2とする基板型半導体式ガス検知素子1を得ることができる。
【0057】
この基板型半導体式ガス検知素子1の諸特性(ガス検知時の応答時間、被検知ガス中から清浄空気に戻した時のセンサ出力の復帰時間、ウォーミングアップ時間)を調べた。
尚、以下に示すデータは、前記基板型半導体式ガス検知素子1を10個作製し、それぞれの基板型半導体式ガス検知素子1を使用して測定した結果得られたデータの平均値を示したものである。
【0058】
(a)ガス検知時の応答時間
表7に、担持させる金属酸化物(Pb,Cu,Fe,Ni,Co)を種々変更して作製したガス感応部2を有する基板型半導体式ガス検知素子1を用いて、1ppmの硫化水素に対する90%応答時間を調べた結果を示した。
【0059】
【表7】
【0060】
この結果より、何れの金属酸化物を用いた場合においても、ガス感応部2に金属酸化物を担持させない場合と比較すると、90%応答時間は2/5〜4/5に短縮されることが判明した。
【0061】
(b)被検知ガス中から清浄空気に戻した時のセンサ出力の復帰時間
表8に、担持させる金属酸化物(Pb,Cu,Fe,Ni,Co)を種々変更して作製したガス感応部2を有する基板型半導体式ガス検知素子1を用いて、1ppm硫化水素曝露後、0.01ppm硫化水素に相当する出力レベルまで復帰する時間(復帰時間)を調べた結果を示した。
【0062】
【表8】
【0063】
この結果より、何れの金属酸化物を用いた場合においても、ガス感応部2に金属酸化物を担持させない場合と比較すると、復帰時間は1/2〜4/5に短縮されることが判明した。
【0064】
(c)ウォーミングアップ時間
表9に、担持させる金属酸化物(Pb,Cu,Fe,Ni,Co)を種々変更して作製したガス感応部2を有する基板型半導体式ガス検知素子1を用いて、ウォーミングアップに要する時間を調べた結果を示した。
【0065】
【表9】
【0066】
この結果より、何れの金属酸化物を用いた場合においても、ガス感応部2に金属酸化物を担持させない場合と比較すると、ウォーミングアップ時間は1/2〜5/6に短縮されることが判明した。
【0067】
以上の結果より、少なくとも一種のPb,Cu,Fe,Ni,Coの金属酸化物を担持した金属酸化物半導体をガス感応部2とする基板型半導体式ガス検知素子1の諸特性(ガス検知時の応答時間、被検知ガス中から清浄空気に戻した時のセンサ出力の復帰時間、ウォーミングアップ時間)は、ガス感応部2に金属酸化物を担持させない場合と比較すると向上し、特に、Pb,Cuの金属酸化物の担持が効果的であることが判明した。このメカニズムは不明であるが、Pb,Cu,Fe,Ni,Coの金属はいずれも硫化物をつくり易く、Pb,Cu,Fe,Ni,Coの金属酸化物も硫黄化合物を含む悪臭に対し高活性であると考えられる。このため硫黄化合物に対する反応が速く進み、ガス検知時の応答、清浄空気に戻した時の復帰を速くすることができ、また、ウォーミングアップ時間を短縮することもできたと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基板型半導体式ガス検知素子の概略図
【図2】酸化亜鉛よりなるガス感応部を有する基板型半導体式ガス検知素子と、酸化亜鉛に酸化スズ及び超微粒子酸化亜鉛を添加したガス感応部を有する基板型半導体式ガス検知素子とのガス応答特性を比較した図。
【符号の説明】
1 基板型半導体式ガス検知素子
2 ガス感応部
3 アルミナ基板
4a〜4b 白金電極
5 ヒータ
Claims (3)
- 酸化亜鉛粒子を主成分とする金属酸化物半導体ペーストを焼成して作製した感応部を有する半導体式ガス検知素子であって、
前記金属酸化物半導体ペーストが、前記酸化亜鉛粒子に対して酸化スズ粒子を2〜10重量%含み、前記酸化亜鉛粒子の少なくとも10重量%が50nm以下の平均粒子径を有する超微粒子酸化亜鉛とした半導体式ガス検知素子。 - 前記超微粒子酸化亜鉛は、ガス化した金属亜鉛に酸素を供給して製造されたものである請求項1に記載の半導体式ガス検知素子。
- 前記感応部に、Pb,Cu,Fe,Ni,Coの金属酸化物のうち少なくとも一種を担持させてある請求項1又は2に記載の半導体式ガス検知素子。
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