JP3932830B2 - 電磁誘導加熱用制御装置、電磁誘導加熱装置および画像形成装置 - Google Patents

電磁誘導加熱用制御装置、電磁誘導加熱装置および画像形成装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁誘導加熱用制御装置、電磁誘導加熱装置および画像形成装置に関し、特に直列共振回路方式の電磁誘導加熱用制御装置、当該制御装置を用いた電磁誘導加熱装置および当該加熱装置を具備する画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、複写機、プリンタなどに代表される電子写真方式の画像形成装置には、未定着トナー像を記録媒体に定着させるための加熱定着装置が搭載されている。加熱定着装置としては、例えばハロゲンランプを用いた熱ローラー方式の加熱装置が主流である。
【0003】
この熱ローラー方式の加熱装置は、ハロゲンランプ等の熱源により加熱され、所定の温度に温度調節されたヒートロールと、これに圧接したプレッシャーロールとの回転ロール対を基本構成とするものである。そして、両ロールの圧接ニップ部に記録媒体を導入して挟持搬送させることで、ヒートロールの熱により記録媒体の未定着トナー像を加熱定着させるものである。
【0004】
加熱定着装置としては、上述した熱ローラー方式の加熱装置の他に、加熱手段として帯状のヒータをエンドレスフィルムの内面に接触させて定着を行うSURF方式の加熱装置が知られている。このSURF方式の加熱装置は、帯状のヒータをエンドレスフィルムの内面に接触させ、その熱によってトナー像を記録媒体に加熱定着させるものである。
【0005】
一方、画像形成装置として、中間転写体から記録媒体にトナー像を転写する際に、トナー像を加熱して転写と定着とを同時に行う構成のものがある。この種の画像形成装置では、離型性を有する中間転写体に像担持体上のトナー像を一次転写し、この中間転写体上のトナー像を加熱・加圧手段により記録媒体上に溶融して二次転写と同時に定着させている。
【0006】
この画像形成装置に用いられる加圧・加熱手段としては、例えば中間転写体を介して圧接される加熱ロールおよび加圧ロールが知られている。かかる加圧・加熱手段は、両者の圧接部で加熱ロールによる加熱によって中間転写体上のトナーを溶融するとともに記録媒体に浸透させ、この記録媒体を中間転写体の離型効果を利用して当該中間転写体から剥離するというものである。
【0007】
このように転写と定着とを同時に行う構成の画像形成装置は、例えば、特開平2−106774号公報、特公昭64−1027号公報、特開昭57−163264号公報、特開昭50−107936号公報、特開昭49−78559号公報等に記載されている。
【0008】
しかしながら、上記のような従来の加熱装置では、以下に示すような問題点がある。すなわち、加熱手段としてハロゲンランプを用いる熱ローラー方式の加熱装置の場合は放射加熱方式であり、未定着トナー像等の被加熱体までの熱伝達の効率が低いため熱損失が大きい。また、被加熱体を直接加熱するものではないので、被加熱体に所定の熱量を付与するまでに時間がかかるといった問題を有している。この時間(ウォームアップ時間)を短縮するために、通常は、加熱ロールの温度をある設定温度に維持し待機させておくようにしている。しかし、この場合には、待機中の消費電力が大きく、省エネルギーの点で大きな問題となる。
【0009】
また、加熱手段として帯状ヒータ等を用いるSURF方式の加熱装置の場合は上記問題点については改善できるが、被加熱体に加圧接触させてヒータ自体を発熱させ、この熱を被加熱体に熱伝導させるので駆動トルクが大きく、小型機にしか適用できないという欠点を有する。一方、転写と定着とを同時に行う中間転写方式の加熱装置の場合は、加熱ロールに熱を与えて被加熱体である中間転写体に熱伝導する方式をとっており、中間転写体全体を加熱するために熱的な損失が大きいという問題点がある。
【0010】
これら従来方式の問題点を解決する加熱手段として、近年、電磁誘導加熱方式の加熱装置が提案されている。この加熱装置は、導電性材料からなる発熱層を形成した加熱部材の上に被加熱体を載置して、この被加熱体に対してその表面と非接触に電磁誘導コイルを配置して交番磁界を作用させる。そして、この交番磁界によって発熱層に渦電流を発生させ、電磁誘導による発熱層の自己発熱により被加熱体を加熱するものである。
【0011】
仮に、被加熱物を半径a[cm]、軸長l[cm]の円柱状の物体であるとした場合に、当該被加熱物の単位面積[cm2 ]で消費される電力密度Pe[W/cm2 ]は、
【0012】
【数1】
Figure 0003932830
【0013】
で表わされる。ここで、A2は電磁誘導コイルの結合係数、Nは電磁誘導コイルの巻数、Iは電磁誘導コイルに流れる電流、μは透磁率、fは駆動周波数、Fは関数、sは表皮深度である。式(1)から明らかなように、発生する熱量は、電磁誘導コイルに流れる電流Iの2乗と巻数Nの2乗とに比例する。
【0014】
このような電磁誘導加熱方式を用いた加熱装置は、非接触の加熱手段を用いているために、熱効率を損なう介在物を少なくし、被加熱体に対して熱を直接的に付与できるという利点がある。また、被加熱体の必要な部位だけを加熱できるので、必要以上の加熱を行う必要がなく、熱効率が高いという利点もある。
【0015】
ところで、電磁誘導加熱方式の加熱装置では、被加熱体を加熱するための電磁誘導コイルを駆動制御するのに、電磁誘導コイルに対してコンデンサを並列に接続して並列共振回路を形成したり、あるいは電磁誘導コイルに対してコンデンサを直列に接続して直列共振回路を形成して用いるのが一般的である。
【0016】
ここで、並列共振回路方式の制御装置について説明する。当該方式の制御装置としては、例えば、特開平8−44226号公報、特開平11−194632号公報等に開示されたものが知られている。並列共振回路の場合、電磁誘導コイル端での電圧をV、駆動周波数をf、電磁誘導コイルのインダクタンスをL、電磁誘導コイルの巻線抵抗をRcとすると、電磁誘導コイルに流れる電流Iは、次式(2)で表される。
I=V/(2πfL+Rc) [A] ……(2)
通常は、2πfL≧Rcである。
【0017】
ここで、並列共振回路において高熱を得ようとする場合、電源電圧を高くするか、駆動周波数fを上げるか、あるいは電磁誘導コイルのインダクタンスLを大きくするかのいずれかを採らなければならない。しかし、実際には、駆動周波数fについては、20.05kHz〜100kHzの範囲内という規制上の制限があるため、駆動周波数fを極端に上げることはできない。
【0018】
電磁誘導コイルのインダクタンスLを大きくするには、電磁誘導コイルの巻数を多くすれば良いが、巻数を多くすると電流が流れにくくなるため、電源電圧を高くせざるを得ない。しかし、電源電圧を高くすると、並列共振回路を駆動するスイッチング素子として、高耐電圧、高電流容量のものが必要となるため、コストアップの要因となる。したがって、電源電圧をあまり高く設定できなく、その結果、電磁誘導コイルの巻数が制限されるため、コイルの巻数や形状を自由に設計できないことになる。
【0019】
一方、直列共振回路方式では、電磁誘導コイルに対してコンデンサが直列に接続されているため、電源電圧を高く設定できる。したがって、電磁誘導コイルの巻数が制限されることがないため、並列共振回路方式に比べて、コイルの巻数や形状を自由に設計できるというメリットがある。この直列共振回路方式の制御装置としては、例えば、特開2000−58247号公報,特開2000−223252号公報、特開2000−223253号公報等に開示されたものが知られている。
【0020】
例えば、特開2000−223252号公報、特開2000−223253号公報に開示の制御装置では、同公報図12に示されるように、同導電型の一対のトランジスタからなる駆動回路を有し、電磁誘導コイルおよび一対のコンデンサからなる直列共振回路をこの駆動回路の一対のトランジスタに対して、同公報図12のタイミングチャートから明らかなように、パルス信号を印加することによってこれら一対のトランジスタをスイッチング駆動し、コンプリメンタリ動作をさせる構成となっている。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
このように、直列共振回路方式の従来例に係る制御装置において、スイッチングで用いる場合は、共振周波数と駆動周波数とが完全に一致したところでは、電磁誘導コイルに流れる電流Iは、
I=Vin/(Rc+Zout) [A] ……(3)
となる。ここで、Vinは直列共振回路への投入電圧、Rcは電磁誘導コイルの巻線抵抗、Zoutは駆動回路の出力インピーダンスである。
【0022】
式(3)において、発熱に必要な駆動を実現するには、(Rc+Zout)≒0という条件を満足する必要がある。したがって、スイッチング素子として高電流容量の素子が必要となるため、その分だけコストが高くなるとともに、消費電力が大きくなるという課題があった。また、スイッチングで駆動する構成を採っているため、電磁誘導コイルのインダクタンスが小さい場合には高調波ノイズが発生しやすいという課題もあった。しかも、共振コンデンサを2つ用いる必要があるから、その分だけ構成が複雑になるという課題もある。
【0023】
また、特開2000−223252号公報、特開2000−223253号公報には、直列共振回路の共振コンデンサが1つの構成も示されているが(同公報図17を参照)、この場合には、駆動回路が同導電型の一対のトランジスタによって構成されていることから、出力信号の片側の極性でしか駆動できないことになる。
【0024】
さらに、同導電型の一対のトランジスタからなる駆動回路では、出力信号の正極性では正側のトランジスタが低インピーダンスを示し、共振電流が流れるが、出力信号の負極性では負側のトランジスタが高インピーダンスを示すことから、上記式(3)において、(Rc+Zout)≒0という条件を満足することができず、直列共振回路からの還流電流を利用できないため、効率が悪いという課題もあった。因みに、低インピーダンスを実現するための素子は入力容量が大きく、これ自体を駆動するのが難しいため、従来技術では実用化が困難であった。
【0025】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、特に電磁誘導コイルの巻数や形状を設計する上で並列共振回路方式よりも有利な直列共振回路方式を採る場合において、低コスト化および低消費電力化が可能であるとともに、高調波ノイズの発生が極めて少ない電磁誘導加熱用制御装置、当該制御装置を用いた電磁誘導加熱装置および当該加熱装置を具備する画像形成装置を提供することにある。
【0026】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の電磁誘導加熱用制御装置は、電磁誘導コイルおよび共振コンデンサからなる直列共振回路と、互いに導電型が異なる一対のトランジスタを接続し、該一対のトランジスタの入力を共通とした相補対称型のトランジスタ電流増幅回路を含み、前記直列共振回路を駆動する駆動回路と、前記駆動回路の入力の容量と共に並列共振回路を形成し、前記駆動回路を駆動する前置駆動回路とを備える構成となっている。かかる構成の電磁誘導加熱用制御装置において、駆動回路が直列共振回路をスイッチング動作ではなく、相補対称型のトランジスタ電流増幅回路によって電流増幅動作で駆動を行うことで、一対のトランジスタが共に低インピーダンスを示すことから、共振コンデンサが1個の直列共振回路でも、直列共振回路からの還流電流を利用できるため、効率の良い駆動を実現できる。また、前置駆動回路が駆動回路の入力の容量と共に並列共振回路を形成することで、当該入力容量が大きくてもその駆動が可能となる。したがって、駆動回路はその入力信号の極性に関係なく常に直列共振回路を低インピーダンスで駆動可能となる。
【0028】
請求項記載の電磁誘導加熱用制御装置は、請求項1記載の電磁誘導加熱用制御装置において、駆動回路が正もしくは負の単電源で動作を行う構成となっている。かかる構成の電磁誘導加熱用制御装置において、駆動回路が単電源で動作することで、入力された正弦波の入力波形が駆動回路内で半波整流されて半波の波形となる。この片側だけの極性の信号であっても、直列共振回路の正側、負側共に低インピーダンスであれば、直列共振のフライホイール効果により、両側極性の電流が流れる。
【0029】
請求項記載の電磁誘導加熱用制御装置は、請求項記載の電磁誘導加熱用制御装置において、前置駆動回路が駆動回路を正弦波の信号で駆動する構成となっている。かかる構成の電磁誘導加熱用制御装置において、駆動回路を正弦波の信号で駆動することで、駆動回路では、スイッチング動作ではなく、電流増幅動作が行われる。
【0030】
請求項記載の電磁誘導加熱用制御装置は、請求項記載の電磁誘導加熱用制御装置において、前置駆動回路が互いに並列に接続された抵抗、コイルおよびコンデンサからなる並列共振回路を有し、当該抵抗の抵抗値の選定によって広帯域化を図る構成となっている。かかる構成の電磁誘導加熱用制御装置において、駆動系の帯域が広帯域であると、駆動周波数を変更してもそれに追随可能となる。このことにより、直列共振回路の共振周波数が変化したとしても、その変化した共振周波数に対して駆動周波数を広い範囲で合わせることが可能となる。
【0031】
請求項記載の電磁誘導加熱用制御装置は、請求項記載の電磁誘導加熱用制御装置において、前置駆動回路が駆動回路に対して正弦波の信号を間歇的に供給する手段を有する構成となっている。かかる構成の電磁誘導加熱用制御装置において、直列共振回路の残留電流振動を利用できるため、正弦波の信号を間歇的に駆動回路に供給しても、直列共振回路に対して正弦波の信号を連続的に供給した場合とほぼ同様の駆動を実現できる。
【0032】
請求項記載の電磁誘導加熱用制御装置は、請求項記載の電磁誘導加熱用制御装置において、前置駆動回路が駆動回路に供給する正弦波の信号の振幅を制御する手段を有する構成となっている。かかる構成の電磁誘導加熱用制御装置において、駆動回路に供給する正弦波の信号の振幅を変えることで、駆動回路の出力電力、ひいては発熱量を制御できる。
【0033】
請求項記載の電磁誘導加熱用制御装置は、請求項記載の電磁誘導加熱用制御装置においてさらに、任意の周波数の信号を発生して前置駆動回路に供給する周波数信号供給手段を有する構成となっている。かかる構成の電磁誘導加熱用制御装置において、前置駆動回路に供給する信号の周波数を任意に設定できることで、直列共振回路の共振周波数が変化しても駆動周波数をそれに合わせることができる。
【0034】
請求項記載の電磁誘導加熱用制御装置は、請求項記載の電磁誘導加熱用制御装置において、周波数信号供給手段が、前置駆動回路に発振周波数の信号を供給する電圧制御発振器と、三角波の信号を発生して電圧制御発振器にその制御電圧として与える三角波発生回路と、この三角波発生回路の繰り返し周波数を制御する制御回路とを有する構成となっている。かかる構成の電磁誘導加熱用制御装置において、電圧制御発振器に対してその制御電圧として三角波信号を与え、電圧制御発振器の発振周波数、即ち駆動回路の駆動周波数を、直列共振回路の共振周波数に対して数パーセント低い周波数から高い周波数へ、またはその逆に直線的に周波数変調し、これを繰り返す操作を行うことで、電磁誘導コイルから発生する電波のスペクトルが広がり、電波のピークレベルが下がる。
【0035】
請求項記載の電磁誘導加熱用制御装置は、請求項記載の電磁誘導加熱用制御装置においてさらに、電源からの駆動電流波形を時間的に平均化して駆動回路に供給する電流平均化回路を有する構成となっている。かかる構成の電磁誘導加熱用制御装置において、電流平均化回路が電源からの駆動電流波形を時間的に平均化することで、供給電源の低電圧性を緩和できるため、供給電源として高価な電源を用いなくて済む。
【0036】
請求項10記載の電磁誘導加熱用制御装置は、互いに導電型が異なる一対のトランジスタを接続し、該一対のトランジスタの入力を共通とした相補対称型のトランジスタ電流増幅回路を含み、電磁誘導コイルおよび共振コンデンサからなる直列共振回路を駆動する駆動回路と、電源からの駆動電流波形を時間的に平均化して駆動回路に供給する電流平均化回路とを備える構成となっている。かかる構成の電磁誘導加熱用制御装置において、電流平均化回路が電源からの駆動電流波形を時間的に平均化することで、供給電源の定電圧性を緩和できるため、供給電源として高価な電源を用いなくて済む。
【0037】
請求項11記載の電磁誘導加熱用制御装置は、請求項または10記載の電磁誘導加熱用制御装置において、電流平均化回路が、電源からの駆動電流波形を時間的に平均化する複数の充放電回路と、これら複数の充放電回路の各出力電圧に基づいていずれか一つの出力電圧を選択して駆動回路に供給する切り替え手段とを有する構成となっている。かかる構成の電磁誘導加熱用制御装置において、電流平均化回路を構成する充電回路を複数化し、それらの出力電圧に基づいていずれか一つの出力電圧を選択する操作を繰り返すことで、電源から駆動回路に供給する平均化電流を抑制できる。
【0038】
以上の請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の電磁誘導加熱用制御装置は、被加熱体を加熱する発熱部材と、電磁誘導によって当該発熱部材を発熱させる制御装置とを具備する電磁誘導加熱装置において、その制御装置として用いられる。また、この電磁誘導加熱装置は、複写機やプリンタなどに代表される画像形成装置に搭載され、定着ローラ、定着ベルトあるいは固体インクの支持部材を発熱部材としてそれらを発熱させて被加熱体を加熱する。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0040】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る電磁誘導加熱用制御装置の構成を示すブロック図である。図1において、本実施形態に係る電磁誘導加熱用制御装置は、電磁誘導コイルL11に対して共振コイルC11が直列に接続されてなる直列共振回路11に対して、これを駆動する駆動回路12およびその前置駆動回路13を有する構成となっている。
【0041】
図2に、駆動回路12および前置駆動回路13の具体的な回路構成の一例を示す。図2において、駆動回路12は、低電源電圧での駆動を可能にするために、例えば図2に示すように、ゲート同士およびソース同士がそれぞれ共通に接続された、即ちシングルエンドの相補対称接続(コンプリメンタリ接続)の互いに導電型が異なる一対のトランジスタ、例えばNチャネルFET(電界効果トランジスタ)Q11およびPチャネルFETQ12からなるインピーダンス変換回路構成となっている。
【0042】
FETQ11のドレインには正側電源電圧VCCが印加され、FETQ12のドレインには負側電源電圧VEEが印加される。FETQ11,Q12のゲート共通接続ノードN11には、前置駆動回路13から駆動信号が与えられる。FETQ11,Q12のソース共通接続ノードN12には、直列共振回路11の入力端、本例では電磁誘導コイルL11に対して直列に接続された共振コイルC11の一端が接続されている。
【0043】
このように、直列共振回路11を用いた電磁誘導加熱用制御装置において、電磁誘導コイルL11の駆動周波数をf、インダクタンスをL、巻線抵抗をRc、駆動回路12の出力インピーダンスをZoutとすると、形成されるQ(quality)ファクタは、
Q=2πfL/(Rc+Zout) ……(4)
で表される。Qファクタは振動系の鋭さを表す量である。
【0044】
直列共振回路11への投入電圧をVinとすると、電磁誘導コイルL11にはV=QVinなる電圧Vが印加され、また式(3)で表される電流Iが流れる。ここで、駆動回路12の出力インピーダンスZoutは、
Q=2πfL/(Rc+Zout)≫1 ……(5)
なる条件を満足するように設定される。このため、出力インピーダンスZoutはほぼ0オームである。
【0045】
前置駆動回路13は、信号ライン14とグランドとの間に互いに並列に接続された抵抗R11、コイルL12およびコンデンサC12によって構成され、その出力端がコンデンサC13を介して駆動回路12の入力端(ノードN11)に接続されている。この前置駆動回路13は、駆動回路12のFETQ11,Q12の入力容量と共振する並列共振回路を形成し、動作時の入力信号(駆動信号)におけるインピーダンスを大きくすることにより、FETQ11,Q12の入力容量が大きくても、これらFETQ11,Q12の駆動を容易に実現できるようにしている。
【0046】
前置駆動回路13において、コイルL12のインダクタンスLpの値は、
Lp=1/(2πf)2 Co ……(6)
に設定される。ここで、駆動回路12のFETQ11,Q12の入力容量をそれぞれCiss1,Ciss2、コンデンサC12の容量をCpとすると、Co=Ciss1+Ciss2+Cpである。
【0047】
抵抗R11の抵抗値Rpは、上記並列共振回路のQファクタを設定している。このQファクタをQ<5、したがって
Rp≦Q/2πfCo ……(7)
なる条件を満足する抵抗値Rpを設定することにより、駆動回路12および前置駆動回路13からなる駆動系の広帯域化を図ることができる。
【0048】
このように、駆動系の帯域が広帯域であることにより、駆動周波数を変更してもそれに追随可能となる。このことにより、電磁誘導コイルL11および共振コンデンサC11によって構成される直列共振回路11の共振周波数が変化したとしても、その変化した共振周波数に対して駆動周波数を広い範囲で合わせることが可能となる。したがって、常に、最大効率の値に対して共振コンデンサC11の容量値を調整することなく利用できるようにすることが可能となる。
【0049】
上述したように、第1実施形態に係る電磁誘導加熱用制御装置では、電磁誘導コイルL11の巻数や形状を設計する上で並列共振回路方式よりも有利な直列共振回路方式を採る一方、この直列共振回路11を駆動する駆動回路12として、互いに導電型が異なる一対のFETQ11,Q12を相補対称接続(コンプリメンタリ接続)してなるトランジスタ電流増幅回路を用いて構成したことで、当該駆動回路12が直列共振回路11をスイッチング動作ではなく、電流増幅動作で駆動を行うことができ、一対のFETQ11,Q12が共に低インピーダンスを示すことから、共振コンデンサが1個の直列共振回路でも、直列共振回路からの還流電流を利用できるため、効率の良い駆動を実現できることになる。
【0050】
したがって、第1実施形態に係る電磁誘導加熱用制御装置においては、前置駆動回路13を設けることを前提として説明したが、相補対称型のトランジスタ電流増幅回路を含む駆動回路12を設けるだけでも、上述した如き作用効果を得ることができる。これに加えて、直列共振回路11を駆動する駆動回路12に対して、これらFETQ11,Q12の入力容量と共に並列共振回路を形成する前置駆動回路13を設けることにより、FETQ11,Q12の入力容量が大きくても、FETQ11,Q12の駆動が可能となるという作用効果を奏する。
【0051】
これにより、駆動回路12はその入力信号が正極性でも負極性でも、即ち入力信号の極性に関係なく常に低インピーダンスで駆動することができるため、直列共振回路11において、形成されるQファクタ(式(4)を参照)を積極的に活用し、低電源電圧で大電流を発生させると同時に、直列共振のフライホイール効果も利用して電磁誘導コイルL11を駆動することができる。その結果、コストと消費電力を大幅に低減できる。
【0052】
また、前置駆動回路13には、発振部(図示せず)から所定周波数のパルス信号が入力されることになるが、このパルス信号は前置駆動回路13を通ることで図3に示すような正弦波の信号となって、駆動回路12に駆動信号として入力される。これにより、駆動回路12では、スイッチング動作ではなく、電流増幅動作が行われることになるため、高調波ノイズが発生しにくくなるというメリットもある。
【0053】
なお、本実施形態では、双方向のソースフォロアのFETQ11,12によって相補対称接続の駆動回路12を構成する場合を例に採って説明したが、回路素子としては電界効果トランジスタに限られるものではなく、図4に示すように、ベース同士およびエミッタ同士がそれぞれ共通に接続された双方向のエミッタフォロアのNPNバイポーラトランジスタQ13およびPNPトランジスタQ14によって相補対称接続の駆動回路12を構成しても良いことは勿論である。
【0054】
また、本実施形態では、FETQ11,12の各ドレインに対して正側電源電圧VCCおよび負側電源電圧VEEをそれぞれ与える構成としたが、低消費電力を実現するために、FETQ11,12のどちらかのドレインを接地した構成を採ることも可能である。すなわち、図5(A)に示すように、FETQ12のドレインを接地し、FETQ11のドレインに正側電源電圧VCCを与えるか、図5(B)に示すように、FETQ11のドレインを接地し、FETQ12のドレインに負側電源電圧VEEを与える構成である。この片側接地の回路構成については、回路素子としてバイポーラトランジスタを用いた駆動回路に対しても同様のことが言える。
【0055】
このように、駆動回路12の片側の電源をグランドとし、単電源化した構成を採った場合には、入力された正弦波の入力波形(全波)は、図6に太い実線Aで示すように、駆動回路12内で半波整流された波形となる。この片側だけの極性(半波)の入力信号であっても、直列共振回路11の正側、負側共に低インピーダンスであれば、直列共振のフライホイール効果により、図6に細い実線Bで示すように、両側極性の電流が流れる。したがって、両側極性の入力信号を正負の電源で駆動する場合の1/2の投入電力で、電磁誘導コイルL11の電磁誘導に起因して発生する渦電流による発熱量を同じにすることができる。
【0056】
<前置駆動回路の変形例1>
図7は、変形例1に係る前置駆動回路13Aの構成を示す回路図である。図7から明らかなように、本変形例に係る前置駆動回路13Aは、並列に接続された抵抗R11、コイルL12およびコンデンサC12からなり、駆動回路12のFETQ11,Q12の入力容量と共振する並列共振回路部15に加えて、この並列共振回路部15に対してパルス信号を間歇的に供給する発振制御部16を有する構成となっている。
【0057】
発振制御部16は、制御入力端子17とグランドとの間に接続された抵抗R12と、制御入力端子17に一端が接続されたコンデンサC13と、このコンデンサC13の他端とグランドとの間に接続された抵抗R13と、コンデンサC13の他端に一端が接続された抵抗R14と、この抵抗R14の他端とグランドとの間に接続されたコンデンサC14と、コンデンサC13の他端にゲートが接続され、抵抗R14の他端にソースが接続されたNチャネルFETQ15とから構成されている。ただし、この回路構成は一例に過ぎず、これに限定されるものではない。
【0058】
この発振制御部16には、その発振状態を制御する制御信号が制御入力端子17を介して外部から入力される。この制御信号として例えば高レベルの信号が入力されているときには、発振制御部16はフリーラン周波数にて発振動作を継続する。これにより、ある一定の周波数のパルス信号が発振制御部16から並列共振回路部15に供給される。一方、制御信号が低レベルになる、発振制御部16は発振動作を停止する。
【0059】
したがって、制御信号を間歇的に高レベルから低レベルに遷移させることにより、発振制御部16から並列共振回路部15に対して間歇的にパルス信号が与えられることになる。その結果、並列共振回路部15を通して駆動回路11には、図8に示すように、正弦波の信号が間歇的に入力されることになる。また、駆動回路11を単電源化した場合には、図9に太い実線で示すように、駆動回路12内で半波整流されて直列共振回路11に間歇的に供給されることになる。
【0060】
このように、前置駆動回路13A内に並列共振回路部15に加えて、この並列共振回路部15に対してパルス信号を間歇的に供給する発振制御部16を設け、その制御によって直列共振回路11への電流供給を間歇的に行い、残留電流振動を利用することにより、直列共振回路11の駆動が停止する分だけ駆動回路12で消費する電力を削減できるため、消費電力のさらなる低減が可能となる。
【0061】
<前置駆動回路の変形例2>
図10は、変形例2に係る前置駆動回路13Bの構成を示す回路図である。図10から明らかなように、本変形例に係る前置駆動回路13Bは、並列共振回路部15および発振制御部16に加えて、駆動回路12に与える駆動信号の振幅を制御する電圧振幅制御部18を有する構成となっている。
【0062】
電圧振幅制御部18は、電源端子19とグランドとの間に接続された可変抵抗VRと、この可変抵抗VRの可動端子にゲートが接続され、ドレインが接地されたNチャネルFETQ16と、このFETQ16のソースと電源端子19との間に接続された抵抗R15と、電源端子19とグランドとの間に接続されたコンデンサC15とからなり、電源端子19には負側電源電圧VEEが与えられる構成となっている。ただし、この回路構成は一例に過ぎず、これに限定されるものではない。
【0063】
上記構成の電圧振幅制御部18において、FETQ16のソースは発振制御部16におけるFETQ15のソースに接続されている。したがって、可変抵抗VRの可動端子の位置によってFETQ16のゲートバイアス電圧を変化させることにより、発振制御部16から並列共振回路部15に入力するクロック信号の振幅、ひいては駆動回路12に入力する駆動信号の振幅を制御することが可能となる。
【0064】
このように、前置駆動回路13Bに電圧振幅制御部18を設け、この電圧振幅制御部18によって駆動回路12に入力する駆動信号の振幅を制御することで、電磁誘導コイルL11の電磁誘導に起因して発生する渦電流による発熱量を制御することができる。これにより、可変抵抗VRの抵抗値を調整することにより、発熱量を任意に設定することが可能となる。
【0065】
また、被加熱体の近傍にサーミスタや赤外線センサなどの温度感知センサを配置し、この感度感知センサによって被加熱体の温度を検知し、その検知信号に基づいて可変抵抗VRの抵抗値を調整可能な構成を採ることにより、例えば電磁誘導コイルL11の特性が変化した場合でも発熱量が一定になるように自動的に制御することが可能となる。
【0066】
なお、本変形例に係る前置駆動回路13Bでは、並列共振回路15に与えるパルス信号を発生する発振部として、パルス信号を間歇的に発生する発振制御部16を用いた場合を例に採ったが、これに限られるものではなく、所定周波数のパルス信号を連続的に発生する発振部を用いた場合にも同様に適用可能である。
【0067】
[第2実施形態]
図11は、本発明の第2実施形態に係る電磁誘導加熱用制御装置の構成を示すブロック図であり、図中、図1と同等部分には同一符号を付して示している。図11において、本実施形態に係る電磁誘導加熱用制御装置は、電磁誘導コイルL11に対して共振コイルC11が直列に接続されてなる直列共振回路11に対して、これを駆動する駆動回路12および電流平均化回路21を有する構成となっている。
【0068】
駆動回路12としては、第1実施形態の場合と同様の回路構成のもの、即ち双方向のソースフォロアまたはエミッタフォロワのトランジスタからなる相補対称接続のトランジスタ回路構成のものが用いられる。また、第1実施形態の場合と同様に、駆動回路12には、駆動信号として正弦波の信号が入力される。
【0069】
電流平均化回路21は、駆動回路12に供給する駆動電流波形を時間的に平均化して供給電源(VCC,VEE)の定電圧性を緩和するために設けられたものである。図12に、電流平均化回路21の具体的な回路構成の一例を示す。同図に示すように、本例に係る電流平均化回路21は、正側の充電回路22と負側の充電回路23とを有する構成となっている。
【0070】
正側の充電回路22は、一端が正側電源端子24に、他端が駆動回路12の正側電源供給端にそれぞれ接続された充電抵抗R21と、この充電抵抗R21の他端とグランドとの間に接続された充電コンデンサC21とから構成されている。負側の充電回路23は、一端が負側電源端子25に、他端が駆動回路12の負側電源供給端にそれぞれ接続された充電抵抗R22と、この充電抵抗R22の他端とグランドとの間に接続された充電コンデンサC22とから構成されている。
【0071】
ここで、駆動回路12での低インピーダンスによる正弦波の駆動においては、駆動信号周波数と直列共振回路11の共振周波数とが一致したときには、電磁誘導コイルL11には先述した式(3)で示す電流Iが流れる。この電流Iは駆動回路12から供給される。したがって、充分な発熱を得るために、例えば駆動周波数fが20〜100kHzで20Aピークの電流Iを電磁誘導コイルL11に流すには、駆動回路12に電力を供給する電源として、20Aピークを保証できる定電圧性に優れたものでなくてはならない。しかし、このような電源は、一般的には、高価なものとなってしまう。
【0072】
これに対して、本実施形態に係る電磁誘導加熱用制御装置では、例えばCRの充電回路からなる電流平均化回路21を設け、駆動回路12に供給する駆動電流波形を時間的に平均化して供給電源の定電圧性を緩和するようにしたことで、駆動回路12に電力を供給する電源として高価な電源を用いなくて済むため、その分だけ低コスト化を図ることができる。
【0073】
図13に、単電源化した場合における平均化電流のシミュレーション結果を示す。同図において、振幅の小さな電流波形Aは駆動回路12に供給される平均化された駆動電流を、振幅の大きな電流波形Bは駆動回路12の出力電流、即ち電磁誘導コイルL11に流れる電流をそれぞれ示している。
【0074】
このシミュレーション結果から明らかなように、駆動回路12を単電源化した場合でも、直列共振回路11の正側、負側共に低インピーダンスであれば、直列共振のフライホイール効果により、両側極性の電流が流れる。
【0075】
図12において、Ipは平均化前の電流をIaは平均化電流をそれぞれ示している。また、電流平均化回路21において、充電電流は必要電流が20A以上のことが多いため、充電抵抗R21,R22としては低抵抗値のものを用いる。この抵抗値は電流を検知するのに充分な低抵抗値であるため、駆動電流を検知するための素子として利用することができる。そして、その電流検知信号を用いることで、例えば駆動電流をその電流値が常に一定値になるように制御する構成を採ることが可能となる。
【0076】
なお、本実施形態では、VCC側、VEE側共に1個ずつの充電回路によって電流平均化回路21を構成する場合を例に採って説明したが、VCC側、VEE側それぞれについて充電回路を複数化してそれらを適宜切り替えて使用する構成を採ることも可能である。その具体的な構成の一例を図14に示す。ここでは、VCC側のみの回路構成を示し、また充電回路を2個設ける場合を例に採って説明するものとする。
【0077】
図14において、電流平均化回路21を構成する充電回路として、充電抵抗R21Aおよび充電コンデンサC21Aからなる第1の充電回路22Aと、充電抵抗R21Bおよび充電コンデンサC21Bからなる第2の充電回路22Bとが設けられている。充電抵抗R21A,R21Bの各一端は正側電源端子24に共通に接続され、各他端は電源切り替えスイッチSWA,SWBを介して駆動回路12の正側電源供給端にそれぞれ接続されている。
【0078】
これら充電回路22A,22Bの各出力電圧は、スイッチSWA,SWBを介して駆動回路12に供給されるとともに、電圧低下検知回路26によって監視される。電圧低下検知回路26は、充電回路22Aの出力電圧が所定の電圧以下になったとき検知信号Aを、充電回路22Bの出力電圧が所定の電圧以下になったとき検知信号Bをそれぞれ出力する。これら検知信号A,Bは、スイッチ制御回路27に供給される。
【0079】
スイッチ制御回路27は例えばRSフリップフロップによって構成され、検知信号Aをセット入力、検知信号Bをリセット入力としている。そして、検知信号Aが与えられたとき、即ち充電回路22Aの出力電圧が所定の電圧以下になったときに、スイッチSWAをオフ(開)し、スイッチSWBをオン(閉)する。逆に、検知信号Bが与えられたとき、即ち充電回路22Bの出力電圧が所定の電圧以下になったときに、スイッチSWAをオンし、スイッチSWBをオフする。
【0080】
このように、電流平均化回路21を構成する充電回路を複数化し(本例では、2個)、一方の充電回路の充電コンデンサC21A/C21Bの充電電荷に基づいて駆動回路12を動作させている状態において、その充電電荷が不足して駆動電流が減少し、出力電圧が所定の電圧値以下に低下したときにスイッチSWA/SWBによって充電回路22A/22Bを切り替え、この操作を繰り返すことにより、電源(VCC,VEE)から駆動回路12に供給する平均化電流を抑制することができるため、消費電力のさらなる低減が可能となる。
【0081】
[第3実施形態]
図15は、本発明の第3実施形態に係る電磁誘導加熱用制御装置の構成を示すブロック図であり、図中、図1および図11と同等部分には同一符号を付して示している。図15から明らかなように、本実施形態に係る電磁誘導加熱用制御装置は、第1実施形態に係る電磁誘導加熱用制御装置と第2実施形態に係る電磁誘導加熱用制御装置とを組み合わせた構成となっている。
【0082】
すなわち、電磁誘導コイルL11に対して共振コイルC11が直列に接続されてなる直列共振回路11に対して、これを駆動する駆動回路12と、この駆動回路12のFETQ11,Q12の入力容量と共振する並列共振回路を形成する前置駆動回路13と、駆動回路12に供給する駆動電流波形を時間的に平均化して供給電源(VCC,VEE)の定電圧性を緩和する電流平均化回路21とを有する構成となっている。
【0083】
このように、駆動回路12を構成するトランジスタの入力容量と共に並列共振回路を形成する前置駆動回路13を設けたことにより、トランジスタの入力容量が大きくてもその駆動が可能となるため、駆動回路12の入力信号の極性に関係なく、常に低インピーダンスで駆動することができる。したがって、直列共振回路11において、形成されるQファクタを積極的に活用し、低電源電圧で大電流を発生させると同時に、直列共振のフライホイール効果も利用して電磁誘導コイルL11を駆動できるため、コストと消費電力を大幅に低減できる。
【0084】
また、電流平均化回路21を設け、駆動回路12に供給する駆動電流波形を時間的に平均化して供給電源の定電圧性を緩和するようにしたことで、駆動回路12に電力を供給する電源として高価な電源を用いなくて済むため、その分だけさらなる低コスト化を図ることができる
【0085】
なお、前置駆動回路13に代えて、先述した変形例1,2に係る前置駆動回路13A,13Bを用いたり、あるいは電流平均化回路21として、先述した充電回路を複数化した構成のものを用いたりしても良いことは勿論である。
【0086】
[第4実施形態]
図16は、本発明の第4実施形態に係る電磁誘導加熱用制御装置の構成を示すブロック図であり、図中、図15と同等部分には同一符号を付して示している。図16から明らかなように、本実施形態に係る電磁誘導加熱用制御装置は、駆動回路12、前置駆動回路13および電流平均化回路21に加えて、発振周波数が可変な可変周波数発振器31と、この可変周波数発振器31の発振周波数を制御する周波数制御部32を備えた構成となっている。
【0087】
ここで、第1実施形態に係る電磁誘導加熱用制御装置の場合において述べたように、前置駆動回路13が広帯域であることにより、駆動周波数を変更してもそれに追随可能である。したがって、周波数制御部32での調整によって可変周波数発振器31の発振周波数、即ち駆動回路12の駆動周波数を制御することにより、当該駆動周波数を直列共振回路11の共振周波数に合わせることが可能となる。また、直列共振回路11の共振周波数が経年変化や素子のばらつき等によって変化しても、その変化した共振周波数に対して駆動周波数を簡単に合わせることができるため、常に最大効率での駆動を実現できることになる。
【0088】
なお、ここでは、電流平均化回路21を備えた場合を前提として説明したが、本実施形態に係る電磁誘導加熱用制御装置は、可変周波数発振器31および周波数制御部32を備えたことを特徴とするものであることから、電流平均化回路21は必須の構成要件ではなく、電流平均化回路21が存在しなくても、上述した作用効果を得ることができる。
【0089】
発振周波数が可変な可変周波数発振器31としては、図17に示すように、周知の電圧制御発振器(VCO)33を用いることができる。この場合には、周波数制御部32として、電圧制御発振器33の発振周波数を決める制御電圧を任意に設定可能な制御電圧発生部34を用いれば良い。
【0090】
また、制御電圧発生部34として、図18に示すように、三角波信号(のこぎり波信号)を発生する三角波発生回路35と、三角波信号の繰り返し周波数を制御する繰り返し周波数制御回路36とからなる構成のものを用いることも可能である。この構成の場合には、電圧制御発振器33に対してその制御電圧として三角波信号が与えることになるため、電圧制御発振器33の発振周波数、即ち駆動回路12の駆動周波数を、直列共振回路11の共振周波数を中心に数パーセント上下方向に変化させることになる。
【0091】
このように、駆動回路12の駆動周波数を、直列共振回路11の共振周波数に対して数パーセント低い周波数から高い周波数へ、またはその逆に直線的に周波数変調し、これを繰り返す操作を積極的に行うことにより、電磁誘導コイルL11から発生する電波のスペクトルが広がり、電波のピークレベルが下がるため、高調波ノイズの発生を抑えることができる。
【0092】
図19は、上述した第1〜第4実施形態に係る電磁誘導加熱用制御装置を用いた電磁誘導加熱装置の構成の一例を示すブロック図であり、図中、図10および図18と同等部分には同一符号を付して示している。
【0093】
図19において、共振コンデンサC11と共に直列共振回路11を構成する電磁誘導コイルL11は、鉄、銅などの金属からなる発熱部材41に磁界をかけ、この交番する磁界によって発生する渦電流によって発熱部材41を発熱させる。この発熱部材41は、近接して配置された被加熱体42をその発熱によって加熱する。直列共振回路11は、駆動回路12によって駆動される。この駆動回路12に対して、前置駆動回路13および電流平均化回路21が設けられている。
【0094】
駆動回路12としては、第1実施形態に係る回路構成のもの、即ち双方向のソースフォロアまたはエミッタフォロワのトランジスタからなる相補対称接続のトランジスタ回路構成のものが用いられる。前置駆動回路13としては、第1実施形態に係る回路構成のもの、あるいは変形例1,2に係る回路構成のものが用いられる。電流平均化回路21としては、第2実施形態に係る回路構成のもの、あるいはその変形例に係る回路構成のものが用いられる。
【0095】
ここで、電流平均化回路21の電源電圧を供給する電源部43としては、商用100V交流電圧を整流した電源であっても良いが、先述した各実施形態に係る電磁誘導加熱用制御装置は消費電力が低いことから、直流電源を用いるのが可能であるため、商用100V交流電圧を整流した電源よりも直流電源を用いる方が好ましい。
【0096】
前置駆動回路13に供給するクロック信号を発生する発振部としては、ここでは、第4実施形態の変形例に係る構成のもの、即ち電圧制御発振器33、三角波発生回路35および繰り返し周波数制御回路36からなる構成のものを用いている。電圧振幅制御部18は、前記駆動回路13から駆動回路12に供給する駆動信号の振幅を制御することで、電磁誘導コイルL11の電磁誘導に起因して発生する渦電流による発熱量を制御する。この電圧振幅制御部18としては、図10に示す回路構成のものが用いられる。
【0097】
なお、上述した電磁誘導加熱装置に用いる電磁誘導加熱用制御装置の構成要素の組み合わせは図19の組み合わせに限られるものではなく、先述した第1〜第4実施形態あるいはそれらの変形例に係る電磁誘導加熱用制御装置の構成の範囲内で自由に組み合わせることが可能である。
【0098】
この電磁誘導加熱装置は、複写機、プリンタなどに代表される電子写真方式の画像形成装置に、未定着トナー像を記録媒体に定着させるための加熱定着装置として搭載される。また、電子写真方式の画像形成装置以外にも、トナージェット方式の画像形成装置や、インク溶融型インクジェット方式の画像形成装置にも搭載可能である。
【0099】
トナージェット方式の画像形成装置は、未定着トナー像を形成する工程が電子写真方式とは異なるが、記録媒体上の未定着トナー像を定着する工程、または中間転写体から未定着トナー像を記録媒体に転写すると同時に定着する工程は同様に必要である。インク溶融型インクジェット方式の画像形成装置は、WAXを主成分とする室温では固体のインクを加熱溶融し、インクジェットヘッドでドロップ状に噴射することで画像を形成するものである。
【0100】
印字方法としては、記録媒体に直接インクを噴射する方式と、中間転写体上に噴射し画像を形成した後記録媒体に転写定着する方式が知られている。直接噴射方式は、インクを記録媒体に着弾させた時点で印字を完了させても良いが、定着性を向上させ、半球状のドットを扁平化して画質を改善するために、熱と圧力を印加する定着工程を設けるのが好ましい。
【0101】
定着工程には、電子写真方式の定着装置と同様の加熱・加圧装置が適用可能である。中間転写体方式は、加熱・加圧下で記録媒体にインクを転写・定着することにより上記定着工程と同様の目的を果たすものである。すなわち、インク溶融型インクジェット方式の画像形成装置においても加熱装置が必要であり、加熱手段としてハロゲンランプ、帯状ヒータ、電磁誘導加熱方式等の従来技術が適用可能である。
【0102】
[適用例1]
図20は、本発明の適用例1に係る画像形成装置を示す概略構成図である。本適用例1では、ベルト状の中間転写体を採用した電子写真方式の画像形成装置に適用した場合を例に採っている。本適用例1に係る画像形成装置は、表面に静電電位の差による潜像が形成される感光ドラム51を備えており、この感光ドラム51にはレーザースキャナ52およびミラー53等からなる露光部により、感光ドラム51に各色信号に応じたレーザー光を照射することによって潜像が形成される。
【0103】
感光ドラム51の周囲には、帯電装置54、回転式の現像装置55、無端ベルト状の中間転写体56、一次転写ローラ57、クリーニング装置58および露光ランプ59などが配置されている。帯電装置54は、感光ドラム51の表面をほぼ一様に帯電する。現像装置55は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色のトナーをそれぞれ収容し、感光ドラム51上の潜像を各色トナーによって可視化する。
【0104】
中間転写体56は、一定の方向に循環移動が可能に支持されている。一次転写ローラ57は、中間転写体56を挟んで感光ドラム51と対向するように配置され、トナー像を中間転写体56に転写する。クリーニング装置58は、転写後の感光ドラム表面を清掃する。露光ランプ59は、感光ドラム51の表面を除電する。
【0105】
本装置内にはさらに、テンションローラ60、駆動ローラ61、加圧ローラ62、給紙ユニット63、給紙ローラ64、レジストローラ65、記録媒体ガイド66および電磁誘導加熱装置67が設けられている。テンションローラ60は、一次転写ローラ57とともに中間転写体56を張架するように配置されている。加圧ローラ62は、中間転写体56を挟むようにテンションローラ60と対向して配置されている。
【0106】
給紙ローラ64およびレジストローラ65は、給紙ユニット63内に収容される記録媒体を1枚ずつ搬送する。記録媒体ガイド66は、テンションローラ60に巻回された中間転写体56と加圧ローラ62との間に記録媒体を供給する。電磁誘導加熱装置67は、中間転写体56の周回方向における加圧ローラ62との対向位置の上流側に配置されており、中間転写体56の背面側からトナー像を加熱する。この電磁誘導加熱装置67として、先述した第1〜第4実施形態に係る電磁誘導加熱用制御装置を用いた電磁誘導加熱装置が搭載される。
【0107】
上記の構成において、感光ドラム51は、円筒状の導電性基材の表面にOPC又はa−Si等からなる感光体層を備えている。この感光ドラム51の導電性基材は電気的に接地されている。現像装置55は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのトナーをそれぞれ収容する4台の現像器55C,55M,55Y,55Kを備えており、各現像器が感光ドラム51と対向するように回転可能に支持されている。
【0108】
現像装置55の各現像器55C,55M,55Y,55K内には、表面にトナー層を形成して感光ドラム51との対向位置に搬送する現像ロールが設けられている。この現像ロールには、p−p値が2kV、周波数が2kHzの矩形波電圧に400Vの直流電圧を重畳した電圧が印加され、電界の作用によりトナーが感光ドラム51上の潜像に転移されるようになっている。また、各現像器55C,55M,55Y,55K内には、トナーホッパー68からそれぞれトナーが補給される。
【0109】
図21は、発熱部材となる定着ベルトである中間転写体56の構造を示す概略断面図である。この中間転写体56は、耐熱性の高いシート状部材からなる基層56Aと、その上に積層された導電層(電磁誘導発熱層)56Bと、最も上層となる表面離型層56Cとの3層構造で構成されている。
【0110】
基層56Aは、厚さ10μm〜100μmの半導電性の部材であることが好ましく、例えばポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルケトン、ポリサルファン、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアミド等に代表される耐熱性の高い樹脂に、カーボンブラック等の導電材を分散したものが好適に用いられる。基層56Aに導電材を分散するのは、一次転写時に電界をかけてトナー像を転写する静電転写性を考慮したものであるが、基層の構成はこれに限られるものではない。
【0111】
導電層56Bは、例えば鉄やコバルトの層、またはメッキ処理によってニッケル・銅・クロム等の金属層を、厚さ1μm〜50μmで形成したものである。なお、導電層56Bの詳細については後述する。
【0112】
表面離型層56Cは、厚さ0.1μm〜30μmの離型性の高いシート又はコート層であることが好ましく、例えばテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン−シリコーン共重合体などが用いられる。この表面離型層56Cにはトナーが当接されるため、その材料は画質に大きな影響を与える。表面離型層の材料が弾性部材の場合は、トナーを包み込むような状態で密着するため、画像の劣化が少なく画像光沢も均一である。
【0113】
しかし、離型材料が樹脂等のように弾性がない部材である場合には、中間転写体56との圧接部でトナーが記録媒体に完全には密着しにくいため、転写定着不良や画像光沢むらが生じやすい。特に、表面粗さの大きい記録媒体の場合は顕著である。したがって、表面離型層56Cの材料は弾性体であることが望ましい。なお、表面離型層の材料に樹脂を用いる場合には、表面離型層56Cと導電層56Bとの間に弾性層を有していることが望ましい。そして、トナーを包み込む効果を発揮するには、いずれの場合も弾性体の厚さを10μm、望ましくは20μm以上とするのが好適である。
【0114】
中間転写体56は、駆動ローラ61により駆動されて周回移動するので、中間転写体56における加圧ローラ62との圧接部分は駆動ローラ61の回転にともない記録媒体と同じ速度で移動する。このとき、記録媒体が加圧ローラ62と中間転写体56とのニップ中に存在している時間が10ms〜50msとなるように、ニップ幅および記録媒体の移動速度が設定されている。
【0115】
このニップ中に存在している時間、つまり溶融したトナーが記録媒体に押し付けられた時から、記録媒体が中間転写体から剥離されるまでの時間が、上記のように50ms以上となっていることによって、トナーが記録媒体に付着するのに充分な温度まで加熱されていても、ニップの出口では、オフセットが生じない程度までトナーの温度が低下されるものである。
【0116】
図22は、電磁誘導加熱装置67による中間転写体56の加熱原理を示す説明図である。図22に示すように、電磁誘導加熱装置67は、断面が下向きのE型形状を有する鉄心71と、この鉄心71に巻き回された電磁誘導コイル(励磁コイル)72と、この電磁誘導コイル72に交流電流を供給する制御装置(励磁装置)73とで主要部が構成されている。そして、制御装置73として、先述した第1〜第4実施形態に係る電磁誘導加熱用制御装置が用いられる。
【0117】
この電磁誘導加熱装置67において、電磁誘導コイル72に交流電流が供給されると、電磁誘導コイル72の周囲に矢印Hで示される磁束が発生/消滅を繰り返す。この磁束Hが中間転写体56の導電層56Bを横切るように当該加熱装置67が配置されている。変動する磁界が導電層56B中を横切るとき、その磁界の変化を妨げる磁界を生じるように、導電層56B中には矢印Bで示される渦電流が発生する。この渦電流は表皮効果のためにほとんど導電層56Bの電磁誘導コイル72側の面に集中して流れ、導電層56Bの表皮抵抗RSに比例した電力で発熱を生じる。
【0118】
ここで、角周波数をω、透磁率をμ、固有抵抗をρとすると、表皮深さδは次式で示される。
δ=√(2ρ/ωμ)
さらに、表皮抵抗RSは次式で示される。
RS=ρ/δ=√(ωμρ/2)
【0119】
中間転写体56の導電層56Bに発生する電力Pは、中間転写体中を流れる電流をIfとすると、次式で表せる。
P=RS∫|If|2dS
したがって、表皮抵抗RSを大きくするか、あるいは中間転写体中を流れる電流Ifを大きくすれば、電力Pを増すことができ、発熱量を増すことが可能となる。表皮抵抗RSを大きくするには、角周波数ωを高くするか、透磁率μの高い材料又は固有抵抗ρの高いものを用いれば良い。
【0120】
上述した加熱原理からすると、非磁性金属を導電層56Bに用いると、加熱しづらいことが憶測されるが、導電層56Bの厚さtが表皮深さδより薄い場合には、次式のようになるので、加熱が可能となる。
RS≒ρ/t
【0121】
また、電磁誘導コイル72に流す交流電流の周波数は10〜500kHzが好ましい。10kHz以上となると、導電層56Bへの吸収効率が良くなり、500kHzまでは安価な素子を用いて制御装置73を構成することができる。さらに、20kHz以上であれば可聴域を越えるため、通電時に騒音がすることがなく、また200kHz以下では制御装置73で生じるロスも少なく、周辺への放射ノイズも小さい。
【0122】
また、10〜500kHzの交流電流を導電層56Bに流した場合には、表皮深さδは数μmから数百μm程度である。実際に導電層56Bの厚さtを1μmより小さくすると、ほとんどの電磁エネルギーが導電層56Bで吸収し切れないため、エネルギー効率が悪くなる。また、漏れた磁界が他の金属部を加熱するという問題も生じる。
【0123】
一方、導電層56Bの厚さが50μmを超えると、中間転写体の熱容量が大きくなりすぎるとともに、導電層56B中の熱伝導によって熱が伝わり、離型層56Cが暖まりにくくなるという問題が生じる。したがって、導電層56Bの厚さtは1μm〜50μmが好ましい。また、導電層56Bの発熱を増すためには、中間転写体中を流れる電流Ifを大きくすれば良く、そのためには電磁誘導コイル72によって生成される磁束を強くするか、あるいは磁束の変化を大きくすれば良い。
【0124】
この方法としては、電磁誘導コイル72の巻線数を増すか、あるいは電磁誘導コイル72の鉄心71をフェライトやパーマロイといった高透磁率で残留磁束密度の低いもので構成すると良い。また、導電層56Bの抵抗値が小さすぎると、渦電流が発生したときの発熱効率が悪化するため、導電層56Bの固有体積抵抗率は20℃の環境で1.5×10-8ルm以上が好ましい。
【0125】
なお、本適用例1では、導電層56Bをメッキ処理等で形成したが、真空蒸着スパッタリング等で形成しても良い。これにより、メッキ処理できないアルミニウムや金属酸化物合金を導電層56Bに用いることができる。ただし、メッキ処理では、所望の膜厚、即ち1〜50μmの層厚を得やすいため、メッキ処理が好ましい。
【0126】
また、導電層56Bの材料として、例えば高透磁率の鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性体を用いると、電磁誘導コイル72によって生成される電磁エネルギーを吸収し易くなり、効率良く加熱することができる。さらに、機外へ漏れる磁気も少なくなり、周辺装置への影響も低減できるため、これらのもので高抵抗率のものを選ぶのが最も好ましい。
【0127】
さらに、導電層56Bは金属に限定されるものではなく、低熱導電性の基層56Aと表面離型層56Cとを接着するための接着剤中に、導電性で高透磁率の粒子、ウィスカーを分散させて導電層5bとしても良い。例えば、マンガン、チタン、クロム、鉄、銅、コバルト、ニッケル等の粒子や、これらの合金であるフェライトや酸化物の粒子やウィスカーといったもの、あるいはカーボンブラック等の導電性粒子を接着剤中に混合し、分散させて導電層とすることもできる。
【0128】
次に、上記構成の本適用例1に係る画像形成装置の動作について説明する。感光ドラム51は図20中に示す矢印の向きに回転し、帯電装置54によってほぼ一様に帯電された後、レーザースキャナ52から原稿のイエロー画像信号に従ってパルス幅変調されたレーザー光が照射される。これにより、感光ドラム51上にイエロー画像に相当する静電潜像が形成される。このイエロー画像用の静電潜像は、回転式現像装置55により予め現像位置に定置されたイエロー用現像器55Yによって現像され、感光ドラム51上にイエロートナー像が形成される。
【0129】
このイエロートナー像は、感光ドラム51と中間転写体56との当接部である一次転写部Xにおいて、一次転写ローラ57の作用により中間転写体56上に静電的に転写される。この中間転写体56は、感光ドラム51と同期して周回移動しており、表面にイエロートナー像を保持したまま周回移動を継続し、次の色のマゼンタ像の転写に備える。
【0130】
一方、感光ドラム51は、クリーニング装置58によって表面を清掃された後、再び帯電装置54によりほぼ一様に帯電され、次のマゼンタの画像信号に従ってレーザースキャナ52からレーザー光が照射される。回転式現像装置55は、感光ドラム51上にマゼンタ用の静電潜像が形成される間に回転し、マゼンタ用現像器55Mを現像位置に定置してマゼンタトナーによる現像を行う。このようにして形成されたマゼンタトナー像は一次転写部Xで中間転写体56上に静電的に転写される。
【0131】
以降引き続き、上述のプロセスがそれぞれシアンおよびブラックに対して行われ、中間転写体56上へ4色分の転写が終了したとき、もしくは最終色のブラックの転写途中において、給紙ユニット63内に収容される記録媒体(用紙)が給紙ローラ64により給紙され、レジストローラ65および記録媒体ガイド66を経由して中間転写体56の二次転写部Yに搬送される。
【0132】
一方、中間転写体56上に転写された4色分のトナー像は、二次転写部Yの上流側で、電磁誘導加熱装置67と対向する加熱領域Aを通過する。加熱領域Aでは、図22において、制御装置73から電磁誘導コイル72に交流電流が供給されており、中間転写体56の導電層56Bが電磁誘導加熱によって発熱する。これにより、導電層56Bは急激に加熱され、この熱は時間経過とともに表層に伝達され、二次転写部Yに到達するときには中間転写体56上のトナーが溶融した状態となる。
【0133】
中間転写体56上で溶融したトナー像は、二次転写部Yで記録媒体の搬送に合わせて圧接される加圧ローラ62の圧力により、記録媒体と密着される。加熱領域Aでは中間転写体56は局所的に表面近傍だけが加熱されており、溶融したトナーは室温の記録媒体と接触して急激に冷却される。つまり、溶融したトナーは一次転写部Yのニップを通過するときに、トナーが持っている熱エネルギーと圧接力とで瞬時に記録媒体に浸透して転写定着される。
【0134】
そして、転写定着された記録媒体は、トナーおよび表面近傍だけ加熱された中間転写体56の熱を奪いながらニップ出口に向かって搬送される。このとき、ニップ幅および記録媒体の移動速度が適切に設定されていることにより、ニップ出口でのトナーの温度は軟化点温度よりも低くなる。このため、トナーの凝集力が大きくなり、トナー像はオフセットを生じることなく、そのままほぼ完全に記録媒体上に転写定着される。その後、トナー像が転写定着された記録媒体は、排出ローラ69を通って排出用トレイ70上に排紙され、フルカラーの画像形成が終了する。
【0135】
本適用例1に係る画像形成装置では、電磁誘導加熱装置67と対向する加熱領域Aにおいて、電磁波を吸収する中間転写体56の導電層56B(図21参照)の近傍だけが加熱され、転写定着領域Bにおいては、加熱領域Aで加熱溶融したトナーが室温の記録媒体と加圧接触することによって転写と同時に定着される。中間転写体56はごく表面が加熱されているだけなので、中間転写体56の温度は転写定着直後に急激に低下する。このため、装置内での熱の蓄積は極めて少なくなる。
【0136】
以上のことから、本適用例1に係る画像形成装置では、具体的に次に示すような利点がある。電磁誘導加熱装置67により中間転写体56の表面近傍を直接加熱するので、中間転写体56の基層56Aの熱伝導率、熱容量に左右されずに、急速に加熱することができる。また、中間転写体56の厚さに依存しないので、高速化のために中間転写体56の剛性を上げる必要がある場合、中間転写体56の基層(基材)56Aを厚くしてもトナーを迅速に定着温度にまで加熱できる。
【0137】
中間転写体56の基層56Aは低熱伝導性の樹脂のため断熱性が良く、連続プリントを行っても熱のロスが少ない。また、画像の存在しない領域、例えば連続して送られる記録媒体の間の非画像部が加熱領域Aを通過する場合などは、制御装置73を制御することにより、無駄な加熱を停止することも可能であり、これらのことと相俟ってエネルギー効率が非常に高くなる。そして、熱効率が向上した分、装置内の昇温も抑えられて、感光ドラム51の特性変化やクリーニング装置58へのトナーの固着等も防止できる。
【0138】
なお、本適用例1に係る画像形成装置では、4色のトナー像がすべて中間転写体56上に転写された後に電磁誘導加熱装置67によりトナー像を加熱溶融する構成の場合を例に採って示したが、各トナー像が一色ずつ一次転写された後に加熱溶融し、中間転写体56上にトナーの仮定着を行っても良い。このような方式により、一次転写後に、4色の重ね合わされたトナー像が乱れるのを防止できるとともに、画像のレジストや倍率を精度良く合わせることができるといった利点がある。
【0139】
また、本適用例1に係る画像形成装置では、一次転写部Xにおける転写方法として、絶縁性の誘電層を有するバイアス印加ローラを用い、トナー像を静電的に中間転写体56上に転写する静電転写方法を用いたが、弾性を有する耐熱性の中間転写体を用い、当該中間転写体の内側から一次転写ローラ57を感光ドラム51に押圧し、トナー像を中間転写体上に転写する粘着転写等を用いても良い。その際に、転写後の感光ドラム51上に若干トナーが残留するので、除電装置およびクリーニング装置により残留トナーを除電、クリーニングする必要がある。
【0140】
[適用例2]
図23は、本発明の適用例2に係る画像形成装置を示す概略構成図である。本適用例2では、ドラム状の中間転写体を採用した電子写真方式の画像形成装置に適用した場合を例に採っている。本適用例2に係る画像形成装置は、適用例1に係る画像形成装置と同様に、感光ドラム81、帯電装置82、レーザースキャナ83、回転式現像装置84、クリーニング装置85、露光ランプ86、加圧ローラ87、給紙ユニット88、給紙ローラ89、レジストローラ90、記録媒体ガイド91等を有しているが、図20に示すベルト状の中間転写体56に代えて、ロール状の中間転写体92を備えた構成となっている。
【0141】
発熱部材となる定着ローラである中間転写体92は、図24に示すように、多孔質セラミックスからなる断熱性の基材ロール92Aの上に、厚さ5μmのニッケルメッキ層を積層した導電層92Bと、さらにその上に厚さ30μmのシリコーンゴムを被覆した離型層92Cと、最も上層となる厚さ20μmのポリイミド製の耐熱性樹脂層92Dとからなる4層で構成されている。
【0142】
本装置内にはさらに、中間転写体92のトナー像搬送方向における二次転写部Yの上流側に、中間転写体92の外周面と近接対向するように電磁誘導加熱装置93が設けられている。電磁誘導加熱装置93は、図22の原理説明図の場合と同様に、電磁誘導コイルに制御装置から交流電流を流すことで、中間転写体92の導電層92Bを電磁誘導加熱により発熱させるものである。この電磁誘導加熱装置93として、先述した第1〜第4実施形態に係る電磁誘導加熱用制御装置を用いた電磁誘導加熱装置が搭載される。
【0143】
なお、上述した構成以外の構成および動作については、基本的に、図20に示す適用例1に係る画像形成装置と同じである。
【0144】
[適用例3]
図25は、本発明の適用例3に係る画像形成装置の要部を示す概略構成図である。本適用例3では、ドラム状の中間転写体を採用したインク溶融型インクジェット方式の画像形成装置に適用した場合を例に採っている。
【0145】
本適用例3に係る画像形成装置は、少なくともインクジェットヘッド101、ドラム状の中間転写体102、加圧ローラ103、離型剤供給部材104および電磁誘導加熱装置105を具備する構成となっている。電磁誘導加熱装置105は、中間転写体102のインク像搬送方向における加圧ローラ103との対向位置の上流側に、中間転写体102の内周面と近接対向するように設けられ、中間転写体102上のインク像を加熱する。
【0146】
ここで、離型剤供給部材104は必ずしも必須の部材ではなく、中間転写体102の表面離型層が十分な離型性を発揮する場合は不要である。ただし、中間転写体102に離型剤を供給することにより、中間転写体自身には特に離型層を設ける必要がなくなるという効果を奏することから、離型剤供給部材104を設けた方が好ましい。
【0147】
次に、上記構成のインク溶融型インクジェット方式の画像形成装置における画像形成の工程について説明する。
【0148】
図25は、インクジェットヘッド101によるインク噴射に先立って、中間転写体102の表面に離型剤供給部材104が接触して離型剤を供給する工程を示している。離型剤の供給終了後、離型剤供給部材104は中間転写体102から離間する。
【0149】
図26は、インクジェットヘッド101によって中間転写体102上にインク像を形成する工程を示している。インクの融点よりも十分に高い温度に保たれたインクジェットヘッド内でインクは5〜20mPa・s程度の粘度を有する液体インクになっている。
【0150】
図27は、記録媒体の搬送と同期して加圧ローラ103が中間転写体102に押圧接触し、中間転写体102上のインク像を記録媒体に転写定着する工程を示している。この転写定着工程で電磁誘導加熱装置105が稼動し、中間転写体102の発熱部に渦電流を発生させて中間転写体102上のインク像を所定の温度に昇温する。
【0151】
インク溶融型インクジェット方式に用いられるインクは、融点が80〜100度程度であり転写定着の際は、融点よりも低い温度に設定される。これは、WAXを主体とするインクが融点を過ぎると急激に低粘度化するという挙動に起因する。粘度が下がりすぎると、インク−中間転写体間の付着力およびインク−記録媒体間の付着力よりもインクの内部凝集力が小さくなり、中間転写体102から記録媒体ヘインクを100%転写するのが困難になる。
【0152】
融点以下のインクを良好に記録媒体に転写するためには、加圧ローラ103により印加される応力が重要であり、所定の応力下においてはインクが所望の粘弾性を示し、記録媒体への鮮明な転写定着が可能である。現状では、A4サイズの記録媒体に対し、総荷重で80〜400kgf程度印加しており、電子写真方式の画像形成装置に適用される転写定着装置や定着装置よりも高荷重である。
【0153】
[適用例4]
図28は、本発明の適用例4に係る画像形成装置の要部を示す概略構成図である。本適用例4では、ベルト状の中間転写体を採用したインク溶融型インクジェット方式の画像形成装置に適用した場合を例に採っている。
【0154】
本適用例4に係る画像形成装置は、少なくともインクジェットヘッド111、ベルト状の中間転写体112、加圧ローラ113、プラテンローラ114、テンションローラ115、離型剤供給部材116および電磁誘導加熱装置117を具備する構成となっている。電磁誘導加熱装置117は、中間転写体112の周回方向における加圧ローラ113との対向位置の上流側に設けられ、中間転写体112の背面側からインク像を加熱する。
【0155】
上記構成のインク溶融型インクジェット方式の画像形成装置において、インクジェットヘッド111でのインクの噴射は、通常、圧電素子を用いた加圧によって行われるが、静電気力や磁気力を利用した加圧方法も適用可能である。また、インクジェットヘッド111に電極を設けて中間転写体112との間の電界強度を制御することにより、インクに静電吸引力を作用させて噴射することも可能である。画像情報に応じて圧電素子等の噴射手段を制御するいわゆるオンデマンド方式でも良いし、連続的にインクを加圧する手段と飛翔制御手段を組み合わせたいわゆる連続流方式でも良い。
【0156】
中間転写体112については、先述した電子写真方式の画像形成装置で説明したものと同じものを好適に使用できる。さらに、後述する離型剤との組み合わせにより、電子写真方式の実施の形態で説明したもの以外の材料、構成も適用可能である。すなわち、インクの離型機能を離型剤に負わせる場合は、中間転写体112には離型層は必ずしも必要ではない。
【0157】
前述したように、インク溶融型インクジェット方式での転写定着には、電子写真方式よりも高荷重を印加するケースが一般的なので、中間転写体に機械的強度や硬度を付与する構成として表面層を金属層やセラミック層にすることが可能である。特に、離型剤との親和性を確保しやすい材料として、陽極酸化アルミニウムやニッケルが好適である。さらに、中間転写体の構成が簡易になり低価格化、高信頼化が可能になるという長所を有する。
【0158】
加圧ローラ113についても、電子写真方式と同じ材料、構成のものが好適ある。図28において、加圧ローラ113が転写定着工程以外のときに中間転写体112と離間しているのは、中間転写体112上に画像を形成するのに中間転写体112を複数回回転させる場合には必須の構成となる。形成する画像に対してインクジェットヘッド111が備えるインク噴射素子が少ない場合や、カラー印字を行う際に各色の形成を順番に行う場合などに相当する。
【0159】
最後に、離型剤供給部材116については、適用例3の場合と同様に、本適用例4に係る画像形成装置として必須の構成ではないが、離型機能を中間転写体112から分離することにより前述の効果を発揮することになる。通常は、中間転写体112に対して離間配置され、画像形成時にインクジェットヘッド111のインク噴射に先立って中間転写体112に接触して離型剤を供給する。
【0160】
離型剤供給部材116の形状については、ローラ形状で中間転写体112と従動させても良いし、中間転写体112とは独立に回転させても良い。パッド形状あるいはウィック形状で中間転写体112が摺動する構成でも良い。製法については、延伸、圧延、発泡などで作製した樹脂製の多孔体が望ましい。具体例としては、延伸、圧延で作製したフッ素樹脂多孔体やポリオレフィン樹脂多孔体、発泡により連続気泡を有するように作製したポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォームなどのいわゆるフォーム類や発泡ゴム類が挙げられる。
【0161】
離型剤としては、下記有機溶媒やオイル類が好適に使用できる。オクタン、ノナン、テトラデカン、ドデカン、オレイン酸リノール酸、n−デカノール、ジメチルブタノール、フタル酸ジブチル、マレイン酸ジブチル、植物油、鉱物油、シリコーンオイル、フッ素オイルなどである。これらは単独で用いても、あるいは均一に混合し得るものであれば、複数種を混合して用いても良い。また、複数の材料を混合して粘度や表面張力を好ましい範囲に調整して使用しても良い。中でも、上記各項目の特性に優れるシリコーンオイルを主成分とする離型剤が好ましい。
【0162】
中間転写体112の表面に薄く液膜を形成するために表面張力が小さいことが望ましく、具体的には30mN/m以下であることが望ましい。中間転写体112に過剰供給するのを防止するために、離型剤供給部材116よりも下流側で中間転写体112に接触させて、過剰な離型剤を回収する規制部材を設けるようにしても良い。
【0163】
なお、上述した適用例1〜適用例2では、いずれも画像形成装置に適用した場合を例に採ったが、画像形成装置への適用に限らず、電子炊飯器や電磁調理器など、電磁誘導加熱装置を搭載する装置全般に適用可能である。
【0164】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る発明によれば、直列共振回路を駆動する駆動回路として、互いに導電型が異なる一対のトランジスタを接続し、該一対のトランジスタの入力を共通とした相補対称型のトランジスタ電流増幅回路を含む回路を用いたことにより、当該駆動回路が直列共振回路をスイッチング動作ではなく、電流増幅動作で直列共振回路の駆動を行うことになり、一対のトランジスタが共に低インピーダンスを示し、直列共振回路からの還流電流を利用できるため、効率の良い駆動を実現できる。さらに、駆動回路の入力容量と共に並列共振回路を形成する前置駆動回路を設けたことにより、駆動回路の入力の容量が大きくてもその駆動が可能となり、駆動回路がその入力信号の極性に関係なく常に直列共振回路を低インピーダンスで駆動することによって高効率での駆動を実現できるため、コストおよび消費電力を大幅に低減できる。しかも、直列共振回路方式を採っているため、電磁誘導コイルの巻数や形状を自由に設計できるメリットもある。
【0166】
請求項に係る発明によれば、駆動回路を正もしくは負の単電源で動作させるようにしたことにより、入力された正弦波の入力波形が駆動回路内で半波整流されて半波の波形となり、この片側だけの極性の信号であっても、直列共振回路の正側、負側共に低インピーダンスであれば、直列共振のフライホイール効果により、両側極性の電流が流れるため、両側極性の入力信号を正負の電源で駆動する場合の1/2の投入電力で発熱量を同じにすることができる。したがって、さらなる低消費電力化が可能となる。
【0167】
請求項に係る発明によれば、駆動回路を正弦波の信号で駆動するようにしたことにより、駆動回路ではスイッチング動作ではなく、電流増幅動作が行われるため、高調波ノイズの発生を抑えることができる。
【0168】
請求項に係る発明によれば、前置駆動回路によって駆動系の帯域の広帯域化を図るようにしたことにより、駆動周波数を変更してもそれに追随可能となり、直列共振回路の共振周波数が変化したとしても、その変化した共振周波数に対して駆動周波数を広い範囲で合わせることが可能となるため、常に、最大効率の値に対して共振コンデンサの容量値を調整することなく利用できるようにすることが可能となる。
【0169】
請求項に係る発明によれば、駆動回路に対して正弦波の信号を間歇的に供給するようにしたことにより、直列共振回路の残留電流振動を利用できるため、直列共振回路に対して正弦波の信号を連続的に供給した場合とほぼ同様の駆動を実現できるとともに、駆動回路が間歇的に動作を停止する分だけ消費電力のさらなる低減が可能となる。
【0170】
請求項に係る発明によれば、駆動回路に供給する正弦波の信号の振幅を制御するようにしたことにより、駆動回路の出力電力、ひいては発熱量を制御できるため、発熱量を任意に設定することが可能になる。
【0171】
請求項に係る発明によれば、前置駆動回路に供給する信号の周波数を任意に設定可能な構成としたことにより、直列共振回路の共振周波数が経年変化や素子のばらつき等によって変化しても、その変化した共振周波数に対して駆動周波数を簡単に合わせることができるため、常に最大効率での駆動を実現できる。
【0172】
請求項に係る発明によれば、電圧制御発振器に対してその制御電圧として三角波信号を与え、電圧制御発振器の発振周波数、即ち駆動回路の駆動周波数を、直列共振回路の共振周波数に対して数パーセント低い周波数から高い周波数へ、またはその逆に直線的に周波数変調し、これを繰り返す操作を行うようにしたことにより、電磁誘導コイルから発生する電波のスペクトルが広がり、電波のピークレベルが下がるため、高調波ノイズの発生を抑えることができる。
【0173】
請求項に係る発明によれば、電源からの駆動電流波形を時間的に平均化して駆動回路に供給する電流平均化回路をさらに備える構成としたことにより、供給電源の低電圧性を緩和できることから、供給電源として高価な電源を用いなくて済むため、装置のさらなる低コスト化が可能となる。
【0174】
請求項10に係る発明によれば、直列共振回路を駆動する駆動回路として、相補対称型のトランジスタ電流増幅回路を含む回路を用いるとともに、電源からの駆動電流波形を時間的に平均化して駆動回路に供給する電流平均化回路を設けたことにより、高効率での駆動を実現できるため、コストおよび消費電力を大幅に低減できるとともに、供給電源として高価な電源を用いなくて済むため、装置のさらなる低コスト化が可能となる。
【0175】
請求項11に係る発明によれば、電流平均化回路を構成する充電回路を複数化し、それらの出力電圧に基づいていずれか一つの出力電圧を選択する操作を繰り返すようにしたことにより、電源から駆動回路に供給する平均化電流を抑制できるため、装置のさらなる低消費電力化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態に係る電磁誘導加熱用制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】 駆動回路および前置駆動回路の具体的な回路構成の一例を示す回路図である。
【図3】 駆動回路に入力される正弦波の信号を示す波形図である。
【図4】 バイポーラトランジスタを用いた場合の駆動回路の構成を示す回路図である。
【図5】 単電源の場合の駆動回路の構成を示す回路図である。
【図6】 単電源の場合の駆動回路の出力波形(半波)Aと直列共振回路に流れる信号波形Bを示す波形図である。
【図7】 変形例1に係る前置駆動回路の構成を示す回路図である。
【図8】 間歇的に入力する全波波形を示す波形図である。
【図9】 間歇的に入力する半波波形を示す波形図である。
【図10】 変形例2に係る前置駆動回路の構成を示す回路図である。
【図11】 本発明の第2実施形態に係る電磁誘導加熱用制御装置の構成を示すブロック図である。
【図12】 電流平均化回路の具体的な構成の一例を示す回路図である。
【図13】 単電源化した場合における平均化電流のシミュレーション結果を示す波形図である。
【図14】 充電回路を複数化した場合の電流平均化回路の構成の一例を示す回路図である。
【図15】 本発明の第3実施形態に係る電磁誘導加熱用制御装置の構成を示すブロック図である。
【図16】 本発明の第4実施形態に係る電磁誘導加熱用制御装置の構成を示すブロック図である。
【図17】 可変周波数発振器として電圧制御発振器を用いた場合の構成を示すブロック図である。
【図18】 制御電圧発生部の構成の一例を示すブロック図である。
【図19】 本発明の第1〜第4実施形態に係る電磁誘導加熱用制御装置を用いた電磁誘導加熱装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図20】 本発明の適用例1に係る電子写真方式の画像形成装置を示す概略構成図である。
【図21】 適用例1に係る画像形成装置における中間転写体の構造を示す概略断面図である。
【図22】 電磁誘導加熱装置による中間転写体の加熱原理を示す説明図である。
【図23】 本発明の適用例2に係る電子写真方式の画像形成装置を示す概略構成図である。
【図24】 適用例2に係る画像形成装置における中間転写体の構造を示す概略断面図である。
【図25】 本発明の適用例3に係るインク溶融型インクジェット方式の画像形成装置の要部を示す概略構成図である。
【図26】 適用例3に係る画像形成装置における画像形成工程を示す図である。
【図27】 適用例3に係る画像形成装置における転写定着工程を示す図である。
【図28】 本発明の適用例4に係るインク溶融型インクジェット方式の画像形成装置の要部を示す概略構成図である。
【符号の説明】
11…直列共振回路、12…駆動回路、13,13A,13B…前置駆動回路、15…並列共振回路、16…発振制御部、18…電圧振幅制御部、21…電流平均化回路、22,22A,22B,23…充電回路、31…可変周波数発振器、32…周波数制御部、33…電圧制御発振器、34…制御電圧発生部、35…三角波発生回路、36…繰り返し周波数制御回路、41…被加熱体、56,92,102,112…中間転写体、67,93,105,117…電磁誘導加熱装置、72,L11…電磁誘導コイル(励磁コイル)

Claims (16)

  1. 電磁誘導コイルおよび共振コンデンサからなる直列共振回路と、
    互いに導電型が異なる一対のトランジスタを接続し、該一対のトランジスタの入力を共通とした相補対称型のトランジスタ電流増幅回路を含み、前記直列共振回路を駆動する駆動回路と
    前記駆動回路の入力の容量と共に並列共振回路を形成し、前記駆動回路を駆動する前置駆動回路と
    を備えることを特徴とする電磁誘導加熱用制御装置。
  2. 前記駆動回路は、正もしくは負の単電源で動作を行う
    ことを特徴とする請求項1記載の電磁誘導加熱用制御装置。
  3. 前記前置駆動回路は、前記駆動回路を正弦波の信号で駆動する
    ことを特徴とする請求項記載の電磁誘導加熱用制御装置。
  4. 前記前置駆動回路は、互いに並列に接続された抵抗、コイルおよびコンデンサからなる並列共振回路を有し、前記抵抗の抵抗値の選定によって広帯域化を図る
    ことを特徴とする請求項記載の電磁誘導加熱用制御装置。
  5. 前記前置駆動回路は、前記駆動回路に対して正弦波の信号を間歇的に供給する手段を有する
    ことを特徴とする請求項記載の電磁誘導加熱用制御装置。
  6. 前記前置駆動回路は、前記駆動回路に供給する正弦波の信号の振幅を制御する手段を有する
    ことを特徴とする請求項記載の電磁誘導加熱用制御装置。
  7. 任意の周波数の信号を発生して前記前置駆動回路に供給する周波数信号供給手段を有する
    ことを特徴とする請求項記載の電磁誘導加熱用制御装置。
  8. 前記周波数信号供給手段は、前記前置駆動回路に発振周波数の信号を供給する電圧制御発振器と、三角波の信号を発生して前記電圧制御発振器にその制御電圧として与える三角波発生回路と、前記三角波発生回路の繰り返し周波数を制御する制御回路とを有する
    ことを特徴とする請求項記載の電磁誘導加熱用制御装置。
  9. 電源からの駆動電流波形を時間的に平均化して前記駆動回路に供給する電流平均化回路を有する
    ことを特徴とする請求項記載の電磁誘導加熱用制御装置。
  10. 電磁誘導コイルおよび共振コンデンサからなる直列共振回路と、
    互いに導電型が異なる一対のトランジスタを接続し、該一対のトランジスタの入力を共通とした相補対称型のトランジスタ電流増幅回路を含み、前記直列共振回路を駆動する駆動回路と、
    電源からの駆動電流波形を時間的に平均化して前記駆動回路に供給する電流平均化回路と
    を備えることを特徴とする電磁誘導加熱用制御装置。
  11. 前記電流平均化回路は、電源からの駆動電流波形を時間的に平均化する複数の充放電回路と、これら複数の充放電回路の各出力電圧に基づいていずれか一つの出力電圧を選択して前記駆動回路に供給する切り替え手段とを有する
    ことを特徴とする請求項または10記載の電磁誘導加熱用制御装置。
  12. 発熱することによって被加熱体を加熱する発熱部材と、
    電磁誘導によって前記発熱部材を発熱させる請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の電磁誘導加熱用制御装置と
    を具備することを特徴とする電磁誘導加熱装置。
  13. 請求項12記載の電磁誘導加熱装置を搭載した
    ことを特徴とする画像形成装置。
  14. 前記電磁誘導加熱装置の発熱部材は定着ローラである
    ことを特徴とする請求項13記載の画像形成装置。
  15. 前記電磁誘導加熱装置の発熱部材は定着ベルトである
    ことを特徴とする請求項13記載の画像形成装置。
  16. 前記電磁誘導加熱装置の発熱部材は固体インクの支持部材である
    ことを特徴とする請求項13記載の画像形成装置。
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