JP3928078B2 - 芳香族カルボン酸化合物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像及び地肌部の保存性に優れた顕色剤として有用な新規な芳香族カルボン酸化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
感熱記録材料は、一般に支持体上に電子供与性の無色もしくは淡色の染料前駆体と電子受容性の顕色剤とを主成分とする感熱発色層を設けたもので、熱ヘッド、熱ペン、レーザー光等で加熱することにより、染料前駆体と顕色剤とが瞬時反応し、記録画像が得られるものであり、特公昭43−4160号、特公昭45−14039号公報等に開示されている。
このような感熱記録材料は、比較的簡単な装置で記録が得られ、保守が容易であること、騒音の発生が少ないなどの利点があり、近年、電子計算機、ファクシミリ、券売機、ラベルプリンター、レコーダー等の記録材料として広範囲な分野に利用されている。
しかしながら、このような電子供与性染料前駆体と電子受容性顕色剤を用いた感熱記録材料は、外観がよい、感触がよい、発色濃度が高い等の優れた特性を有している反面、記録画像部が、ポリ塩化ビニルなどのプラスチック等と接触し、プラスチック中に含有される可塑剤や添加剤などにより消色したり、あるいは食品や化粧品等に含有される薬品と接触して、容易に記録画像部が消色または地肌部が発色するなど、記録材料としての保存性が劣るという欠点を有していた。
【0003】
記録画像の高保存安定性を実現するための手段として高信頼性顕色剤の利用が従来から提案されている。例えば、特開昭58−82788号、特開昭60−13852号にはフェノールスルホン化合物が、特開昭62−169681号には置換サリチル酸化合物が提案されているが、これらの化合物を顕色剤として用いた場合、画像部の可塑剤、油等に対する堅牢性の点では不十分である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、画像部の高保存性、特に耐可塑剤性、耐油性に優れた画像を与える顕色剤として有用な新規な芳香族カルボン酸化合物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、下記一般式(I)で表される芳香族カルボン酸化合物を含むことを特徴とする顕色剤組成物が提供される。
【化4】
(式中Xは、チオアルキレン基、及び、下記構造式(III)においてA=オキシアルキレン基、R=水素原子又は炭素数1から8のアルキル基、n=4である基から選択される基を示す。)
【化5】
【0009】
【発明の実施の形態】
一般式(I)で表される化合物を用いた感熱記録材料が高耐油性、高耐熱性を有する理由は明らかではないが、概ね次のような要素が寄与しているものと考えられる。
▲1▼電子吸引性基で置換された強い酸である芳香族カルボン酸が顕色能を持つ。
▲2▼芳香族カルボン酸を1分子中に2つ含有することにより分子量が大きくなり、油や可塑剤等の不揮発性溶剤に対する溶解性が低下する。
【0010】
一般式(I)で表される芳香族カルボン酸化合物は全く新規な化合物である。これらの化合物は、例えば下記に示される無水フタル酸とアルコール系化合物とのエステル化反応によって合成することができる。
【化7】
【0011】
一般式(I)中のXの具体例としては、チオアルキレン基、及び、下記構造式(III)においてA=オキシアルキレン基、R=水素原子又は炭素数1から8のアルキル基、n=4である基から選択される基が挙げられる。
【化11】
【0015】
本発明の前記一般式(I)で表される化合物の具体例を列挙すると以下の様な物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】
【表3】
【0019】
【表4】
【0020】
【表5】
【0021】
【表6】
【0022】
【表7】
【0023】
【表8】
【0024】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
また、純度は高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCと略す)又は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、GPCと略す)を用い、融点は示差走査熱量計を用いて測定した。化合物の同定は核磁気共鳴スペクトル(以下、NMRと略す)を測定して行った。
【0025】
実施例1(具体例No.38の化合物の合成)
反応容器にビス〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕スルホン84.5g(0.25mol)、無水フタル酸88.9g(0.60mol)、トリエチルアミン63.6g(0.63mol)をテトラヒドロフラン(THF)150gに懸濁させて仕込み、THF還流下にて3時間反応させた。冷却後、反応混合物に水100mlを滴下し、約30分撹拌させ、希塩酸をpH2以下となるまで滴下した。静置により二層分離させ、有機層を結晶化が起こるまで水洗し、粗結晶を得た。この粗結晶をメタノール/水より再結晶し、白色結晶143.0gを得た(収率90%)。この生成物の純度は98.3%(HPLC)、融点は170℃であり、1H−NMR分析は、目的の化合物であることを示していた。そのNMRスペクトルを以下に示す。
δ(ppm)=13.24(broad s),7.50−8.20(12H,m),7.25(4H,s),4.61(4H,d),4.50(4H,d).
【0026】
実施例2(具体例No.39の化合物の合成)
反応容器に2,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ジフェニルスルホン84.5g(0.25mol)、無水フタル酸88.9g(0.60mol)、トリエチルアミン63.6g(0.63mol)をテトラヒドロフラン150gに懸濁させて仕込み、THF還流下にて3時間反応させた。冷却後、反応混合物に水100mlを滴下し、約30分撹拌させ、希塩酸をpH2以下となるまで滴下した。静置により二層分離させ、有機層を結晶化が起こるまで水洗し、粗結晶を得た。この粗結晶をメタノール/水より再結晶し、白色結晶127.4gを得た(収率80%)。この生成物の純度は96.4%(HPLC)、融点は90℃であり、1H−NMR分析は、目的の化合物であることを示していた。そのNMRスペクトルを以下に示す。
δ(ppm)=13.25(broad s),7.45−8.00(12H,m),7.22(2H,m),6.85(2H,d),4.51(4H,d),4.25(4H,dd).
【0027】
実施例3(具体例No.40の化合物の合成)
反応容器にビス〔3−メチル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕スルホン91.5g(0.25mol)、無水フタル酸88.9g(0.60mol)、トリエチルアミン63.6g(0.63mol)をテトラヒドロフラン(THF)150gに懸濁させて仕込み、THF還流下にて3時間反応させた。冷却後、反応混合物に水100mlを滴下し、約30分撹拌させ、希塩酸をpH2以下となるまで滴下した。静置により二層分離させ、有機層を結晶化が起こるまで水洗し、粗結晶を得た。この粗結晶をメタノール/水より再結晶し、白色結晶128.0gを得た(収率77%)。この生成物の純度は96.7%(HPLC)、融点は170℃であり、1H−NMR分析は、目的の化合物であることを示していた。そのNMRスペクトルを以下に示す。
δ(ppm)=7.48−7.85(12H,m),7.13(2H,d),4.57(4H,t),4.35(4H,t),2.07(6H,s).
【0028】
実施例4(具体例No.41の化合物の合成)
反応容器にビス〔3,5−ジメチル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕スルホン98.5g(0.25mol)、無水フタル酸88.9g(0.60mol)、トリエチルアミン63.6g(0.63mol)をテトラヒドロフラン(THF)150gに懸濁させて仕込み、THF還流下にて3時間反応させた。冷却後、反応混合物に水100mlを滴下し、約30分撹拌させ、希塩酸をpH2以下となるまで滴下した。静置により二層分離させ、有機層を結晶化が起こるまで水洗し、粗結晶を得た。この粗結晶をメタノール/水より再結晶し、白色結晶147.2gを得た(収率85%)。この生成物の純度は95.6%(HPLC)、融点は175℃であり、1H−NMR分析は、目的の化合物であることを示していた。そのNMRスペクトルを以下に示す。
δ(ppm)=7.62−7.89(12H,m),4.67(4H,broad s),4.20(4H,broad s),2.30(12H,s).
【0029】
実施例5(具体例No.30の化合物の合成)
反応容器に4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル68.5g(0.25mol)、無水フタル酸88.9g(0.60mol)、トリエチルアミン63.6g(0.63mol)をテトラヒドロフラン(THF)150gに懸濁させて仕込み、THF還流下にて3時間反応させた。冷却後、反応混合物に水100mlを滴下し、約30分撹拌させ、希塩酸をpH2以下となるまで滴下した。静置により二層分離させ、有機層を結晶化が起こるまで水洗し、粗結晶を得た。この粗結晶をメタノール/水より再結晶し、白色結晶121.7gを得た(収率85%)。この生成物の純度は99.9%(GPC)、融点は177℃であり、1H−NMR分析は、目的の化合物であることを示していた。そのNMRスペクトルを以下に示す。
δ(ppm)=13.22(broad s),7.20−8.00(12H,m),7.03(4H,d),4.56(4H,t),4.33(4H,t).
【0030】
実施例6(具体例No.53の化合物の合成)
反応容器に1,4−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン34.5g(0.25mol)、無水フタル酸88.9g(0.60mol)、トリエチルアミン63.6g(0.63mol)をテトラヒドロフラン(THF)150gに懸濁させて仕込み、THF還流下にて3時間反応させた。冷却後、反応混合物に水100mlを滴下し、約30分撹拌させ、希塩酸をpH2以下となるまで滴下した。静置により二層分離させ、有機層を結晶化が起こるまで水洗し、粗結晶を得た。この粗結晶をアセトン/水より再結晶し、白色結晶86.8gを得た(収率80%)。この生成物の純度は99.9%(HPLC)、融点は166℃であり、1H−NMR分析は、目的の化合物であることを示していた。そのNMRスペクトルを以下に示す。
δ(ppm)=8.98(2H,m),7.57(10H,s),5.39(4H,s).
【0031】
実施例7(具体例No.56の化合物の合成)
反応容器に1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン49.6g(0.25mol)、無水フタル酸88.9g(0.60mol)、トリエチルアミン63.6g(0.63mol)をテトラヒドロフラン(THF)150gに懸濁させて仕込み、THF還流下にて3時間反応させた。冷却後、反応混合物に水100mlを滴下し、約30分撹拌させ、希塩酸をpH2以下となるまで滴下した。静置により二層分離させ、有機層を結晶化が起こるまで水洗し、粗結晶を得た。この粗結晶をアセトン/水より再結晶し、白色結晶111.1gを得た(収率90%)。この生成物の純度は97.7%(HPLC)、融点は186℃であり、1H−NMR分析は、目的の化合物であることを示していた。そのNMRスペクトルを以下に示す。
δ(ppm)=13.18(broad s),7.49−7.91(8H,m),6.90(4H,s),4.50(4H,t),4.21(4H,t).
【0032】
実施例8(具体例No.16の化合物の合成)
反応容器にビス(2−ヒドロキシエチル)スルフィド30.5g(0.25mol)、無水フタル酸88.9g(0.60mol)、トリエチルアミン63.6g(0.63mol)をテトラヒドロフラン(THF)150gに懸濁させて仕込み、THF還流下にて3時間反応させた。冷却後、反応混合物に水100mlを滴下し、約30分撹拌させ、希塩酸をpH2以下となるまで滴下した。静置により二層分離させ、有機層を結晶化が起こるまで水洗し、粗結晶を得た。この粗結晶をメタノール/水より再結晶し、淡黄褐色結晶75.2gを得た(収率72%)。この生成物の純度は93.8%(HPLC)、融点は95℃であり、1H−NMR分析は、目的の化合物であることを示していた。そのNMRスペクトルを以下に示す。
δ(ppm)=7.65(8H,broad s),4.38(4H,t),2.91(4H,t).
【0033】
次に、前記化合物を感熱記録材料として用いた応用例を示す。ここでの部は重量基準である。
【0034】
応用例1
下記組成よりなる混合物を磁性ボールミルで分散し〔A液〕〜〔E液〕を調製する。
〔A液〕
3−N,N−ジブチルアミノ−6−メチル−7−
アニリノフルオラン 10部
10%ポリビニルアルコール水溶液 10部
水 30部
〔B液〕
具体例No.38の化合物 10部
10%ポリビニルアルコール水溶液 10部
水 30部
〔C液〕
P527(水沢化学製シリカゲル) 10部
10%ポリビニルアルコール水溶液 10部
水 30部
〔D液〕
ステアリン酸亜鉛 10部
10%ポリビニルアルコール水溶液 10部
水 30部
次に、下記組成の混合物をディスパーにで撹拌分散してE液を調製した。
〔E液〕
非発泡性プラスチック微小中空粒子
(固形分24%、平均粒径3μm、中空度90%) 40部
スチレン/ブタジエン共重合体ラテックス 10部
水 50部
次に、〔A液〕〜〔E液〕を用いて感熱発色層塗布液とアンダーコート塗布液を下記の混合比で調製した。
(感熱発色層塗布液)
〔A液〕:〔B液〕:〔C液〕:〔D液〕=1:4:4:0.5
(アンダーコート塗布液)
〔E液〕:〔C液〕=2:1
〈各層の塗工〉
市販の上質紙(坪量60g/m2)の表面に(アンダーコート塗布液)を乾燥重量が3g/m2となるように塗布乾燥して中間コート紙(アンダーコート層塗布済紙)を得た。このアンダーコート層上に感熱発色層塗布液をロイコ塗料の乾燥重量が0.5g/m2となるように塗布乾燥して感熱発色層を設けた。その後、10kg/cm2の圧力でキャレンダー処理して本発明の感熱記録材料を得た。
【0035】
応用例2
応用例1の〔B液〕において、化合物No.38の化合物の代わりに具体例No.39の化合物を用いた以外は、応用例1と同様にして調製し感熱記録材料を得た。
【0036】
応用例3
応用例1の〔B液〕において、化合物No.38の代わりに具体例No.40の化合物を用いた以外は、応用例1と同様にして調製し感熱記録材料を得た。
【0037】
応用例4
応用例1の〔B液〕において、化合物No.38の代わりに具体例No.16の化合物を用いた以外は、応用例1と同様にして調製し感熱記録材料を得た。
【0038】
比較例1
応用例1の〔B液〕において、化合物No.38の代わりに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)を用いた以外は応用例1と同様にして調製し感熱記録材料を得た。
【0039】
以上のように作成した感熱記録材料について、次に示す試験を行った。その結果を表13に示す。
松下部品(株)製薄膜ヘッドを有するシュミレータ印字実験装置にて、ヘッド電力0.68W/dot、1ライン記録時間10ms/ライン、走査線密度8×3.85dot/mmの条件でパルス幅0.9msで印字を行い、得られた印字画像部に綿実油を塗布した後、40℃、15時間放置後の画像濃度をマクベス濃度計で測定し耐油性を評価した。更に、同様の試験片を80℃及び、100℃の環境下に15時間放置後の地肌濃度をマクベス濃度計で測定し、耐熱性を評価した。
【0040】
【表9】
表9の結果より、本発明の化合物を顕色剤として用いた感熱記録材料は画像の耐油性、地肌部の耐熱性に優れていることが明らかである。
【0041】
【発明の効果】
本発明に係る新規な芳香族カルボン酸化合物は新規物質であり、このものは感熱記録材料の顕色剤として有利であり、このものを顕色剤として用いた感熱記録材料は耐油性、耐熱性に優れた画像を与える。

Claims (1)

  1. 下記一般式(I)で表される芳香族カルボン酸化合物を含むことを特徴とする顕色剤組成物。
    (式中Xは、チオアルキレン基、及び、下記構造式(III)においてA=オキシアルキレン基、R=水素原子又は炭素数1から8のアルキル基、n=4である基から選択される基を示す。)
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