JP3926625B2 - 電子検出を用いる核酸の配列決定 - Google Patents
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Description
これは、1999年7月26日に出願したU.S.S.N.60/145,695および2000年3月17日に出願した同60/190,259の継続出願である。
【0002】
(技術分野)
本発明は、核酸、特にヌクレオチド置換(ミスマッチ)および単一ヌクレオチド多形(SNP)のような変質を電子的に検出するために、自己集合させた単層を使用する方法および組成物に向けられている。
【0003】
(背景技術)
特異的核酸の検出は診断薬および分子生物学研究のための重要なツールである。遺伝子プローブアッセイは現在、細菌およびウイルスのような感染性生物を同定するのに、正常なおよび突然変異の遺伝子の発現を探求し、がん遺伝子のような突然変異遺伝子を同定するのに、組織移植に先立って組織の適合性を類別するのに、組織もしくは血液の試料を法医学的にマッチングさせるのに、ならびに異なる種からの遺伝子間の相同性を探査するために役割を果たしている。
【0004】
理想的には、遺伝子プローブアッセイは感受性で、特異的でそして容易に自動化し得るものであるべきである(総説については、Nickerson, Current Opinion in Biotechnology 4: 48-51 (1993)を参照)。感受性に対する要件(即ち、低検出限界)はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および他の増幅技術の開発により大幅に軽減されてきていて、それらの技術により研究者は、分析前に特異的な核酸配列を指数関数的に増幅させることが可能である(総説については、Abramson et al., Current Opinion in Biotechnology 4: 41-47 (1993)を参照)。
【0005】
対照的に、特異性は多くの現在利用可能な遺伝子プローブアッセイにおいて問題を残している。プローブと標的の間における分子相補性の程度は相互作用の特異性を規定する。ハイブリダイゼーション培地中のプローブ、標的および塩類の濃度における、反応温度における、ならびにプローブの長さにおける変化は、プローブ/標的相互作用の特異性を変えるか影響を及ぼすであろう。
【0006】
完全な相補性を持つ標的をミスマッチを持つ標的から区別することは幾らかな状況のもとでは可能であろうが、反応条件における小さい変化がハイブリダイゼーションを変えるであろうから、この区別は伝統的な技術を用いては一般的に非常に困難である。標準プローブでミスマッチを検出する新しい実験的技法はDNA連結アッセイを包含するが、そこでは単一点のミスマッチが連結およびプローブの消化アッセイを妨げて、ミスマッチはプローブの切断のための部位を創成する。
【0007】
多形DNAマーカーを使用することによる遺伝子的変化と表現型の間の相互関係の分析が最近の関心事となっている。以前の研究では短い縦列重複(STR)を多形の位置的マーカーとして利用した;しかしながら、最近の関心事は、ヒトのゲノムDNA中でキロベースあたり一回以上の平均頻度で起こる、単一ヌクレオチド多形(SNP)の使用にある。幾らかなSNP、特にコーディング配列の中および周りにあるそれらは、治療に適切な表現型の変異体または/もしくは病気の素因の直接的な原因であるらしい。臨床的に重要な表現型を引き起こす多数の多形が周知である;例えば、apoE2/3/4変異体はアルツハイマー病およびその他の病気の異なる相対危険度と関連している(Cordar et al., Science 261 (1993)を参照)。SNP遺伝子座の多重PCR増幅とそれに続くオリゴヌクレオチドアレイへのハイブリダイゼーションは、少なくとも数百のSNPにおいて同時に遺伝子型を決定する正確で信頼性のある方法であると示されている;Wang et al., Science, 280: 1077 (1998)を参照すること;Schafer et al., Nature Biotechnology 16: 33-39 (1998)もまた参照すること。本発明の組成物は先行技術のアレイと容易に取って代わり得る。
【0008】
種々の特殊な技法があって、突然変異およびSNPを包含する配列を検出するのに用いられる。これらには、OLA(ならびに変異のローリングサークル増幅)、Invader[登録商標]、単一塩基伸長法、アレリックPCRおよび競合的プローブ分析(例えば、ハイブリダイゼーションによる競合的シークエンシング;下記参照)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0009】
オリゴヌクレオチド連結(ライゲーション)増幅(「OLA」、本明細書中では時々連結(ライゲーション)連鎖反応(LCR)という)は、標的配列を鋳型として用いる、二つのより小さいプローブの単一の長いプローブへの連結反応(ライゲーション)を伴う。一般的に参照するものは、米国特許第5,185,243号、第5,679,523号および第5,573,907号;EP 0 320 308 B1;EP 0 336 731 B1;EP 0 439 182 B1;WO 90/01069;WO 89/12696;WO 97/31256およびWO 89/09835であるが、これらは全て出典明示により本明細書の一部とする。
【0010】
遺伝子型を決定するためにまた使用することができるOLAの変法は「ローリングサークル増幅」と呼称される。ローリングサークル増幅は単一のプローブを利用するが、これは、そのプローブの二つの末端の連結反応において円形のプローブが形成されるように標的とハイブリダイズする。プライマー配列が伸長されるようにプライマーおよびポリメラーゼを加える。円形のプローブは末端を持たないので、ポリメラーゼは円形のプローブを繰り返して伸長し、円形のプローブのコンカテマーをもたらす。そのようにして、プローブが増幅される。ローリングサークル増幅が一般的に記述されているのは、Baner et al. (1998) Nuc. Acids Res. 26: 5073-5078; Barany, F. (1991) Proc. Natl. Sci. USA 88: 189-193; Lizardi et al. (1998) Nat. Genet. 19: 225-232; Zhang et al., Gene 211: 277 (1998); and Daubendiek et al., Nature Biotech. 15: 273 (1997)であるが、これらは全て、全体としての出典明示により本明細書の一部とする
【0011】
Invader[登録商標]技術は、核酸を部位−特異的に切断する構造−特異的ヌクレア−ゼに基づく。二つのプローブが用いられる:「インベーダー」プローブおよび「シグナリング」プローブであって、それらは非相補的オーバーラップを持つ標的配列に隣接してハイブリダイズする。この酵素は、「尾部」の認識のためにオーバーラップで切断し、そして標識を持った「尾部」を放出する。それから、これを検出することができる。Invader[登録商標]技術は、米国特許第5,846,717号;第5,614,402号;第5,719,028号;第5,541,311号および第5,843,669号に記載されているが、これらは全て出典明示により本明細書の一部とする。
【0012】
単一塩基伸長法はまた遺伝子型を決定するために用いることができる。単一塩基伸長はポリメラーゼおよび差別して標識化したdNTPを利用する;WO 92/15712、EP 0 371 437 B1、EP 0 317 074 B1;Pastinen et al., Genome Res. 7: 606-614 (1997); Syvaenen, Clinica Chimica Acta 226: 225-236 (1994); and WO 91/13075を参照すること。
【0013】
その他の方法の一つはアレリックPCRである。出典明示により本明細書の一部とする、Newton et al., Nucl. Acid Res. 17: 2503 (1989)に記載されているように、用いられるDNAポリメラーゼは3’−エキソヌクレアーゼプルーフリーディング活性を欠如することを前提にすると、アレリックPCRは、もし末端の3’−ヌクレオチドがミスマッチするとPCR反応が良く進行しないという事実に基づいて、単一塩基の識別を可能にする。
【0014】
全て出典明示により本明細書の一部とする、PCT出願のWO 95/15971、PCT/US96/09769、PCT/US97/09739、PCT/US99/01705、WO 96/40712およびWO 98/20162は、電極を包含する電子伝達部分を含有する核酸を含む新規な組成物を記載するが、これらは核酸ハイブリダイゼーションの新規な検出法を可能にする。
【0015】
従って、電気化学的検出を利用して核酸配列を決定する方法を提供することが本発明の目的である。
【0016】
(発明の要約)
上記の目的に従って、本発明は、第一の酸化還元電位を持つ第一のETMを含む第一の核酸および第二の酸化還元電位を持つ第二のETMを含む第二の核酸を含む組成物を提供する。第一および第二の酸化還元電位は異なっている。核酸の配列は同一もしくは異なり得て、好ましい実施態様においては、それらは唯一つの塩基だけ異なる。組成物はさらに、ユニークな酸化還元電位をまた有する追加的な核酸を含んでもよい。
【0017】
他の一つの態様において、本発明は複数のアレイ部位を持つ基板を含むが、それぞれのアレイ部位は共有的に結合した捕獲プローブおよび複数のコンペティマーを含む。それぞれのコンペティマーは、(1)捕獲プローブ;(2)捕獲伸長(エクステンダー)プローブの第一の部分;もしくは(3)標識プローブの第一の部分のどれかにハイブリダイズする。アレイ部位は電極を含んでもよい。
【0018】
更なる態様において、本発明は試料中における標的配列の存在を検出する方法を提供し、固体支持体に共有的に結合した複数の捕獲プローブを含むアレイを提供することを含む。このアレイは、標的配列、捕獲プローブおよび検出可能な標識を含む少なくとも一つのアッセイ複合体が形成する条件下において試料と接触する。アレイは複数のコンペティマーと接触し、そして検出可能な標識の存在もしくは不在を当該標的配列の存在もしくは不在の指標として検出する。コンペティマーは試料と共にもしくはアッセイ複合体の形成後に加えることができる。
【0019】
他の一つの態様において、本発明は標的配列の存在を検出する方法を提供するが、標的配列および電極に共有的に結合した捕獲プローブを含むアッセイ複合体であって、そのアッセイ複合体は少なくとも一つのETMを含むものを提供すること、ならびに少なくとも二つの異なる温度においてそのETMの存在もしくは不在を検出することを含む。
【0020】
更なる態様において、本発明は標的配列における検出位置でのヌクレオチドの確認を決定する方法を提供するが、標的配列を複数のアレイ部位を含むアレイへ加えることを含み、それぞれのアレイ部位は、標的の検出位置にハイブリダイズするであろう位置において少なくとも一つの単一ヌクレオチドだけ異なる捕獲プローブを含み、それにより当該標的配列、当該捕獲プローブおよび共有的に結合したETMを含む少なくとも一つのアッセイ複合体が形成するようになる。そのETMの存在もしくは不在は少なくとも二つの異なる温度において決定される。
【0021】
他の一つの態様において、本発明は標的配列における検出位置でのヌクレオチドの確認を決定する方法を提供する。この標的配列は、少なくとも検出位置でのヌクレオチドを含むオーバーラップドメインを含む第一の標的ドメインおよび検出位置に近接した第二の標的ドメインを5’から3’に含む。これらの方法は、第一のプローブを第一の標的ドメインにハイブリダイズすることおよび第二のプローブを第二の標的ドメインにハイブリダイズすることを含むが、そこでは第二のプローブは、標的配列とハイブリダイズしない検出配列を含む。もしも第二のプローブが、検出位置に完全に相補的である塩基を含むならば、切断構造が形成される。その切断構造を切断するであろう切断酵素が提供されて、検出配列を放出し、そして検出配列、電極に共有的に結合した捕獲プローブおよび少なくとも一つのETMを含むアッセイ複合体が形成される。そのETMの存在もしくは不在は切断構造の形成の指標として検出される。それから、検出位置における塩基を同定することができる。
【0022】
更なる態様において、この発明の方法は標的配列中で検出位置におけるヌクレオチドの確認を決定することを提供する。この標的配列は、検出位置を含む第一の標的ドメインおよび検出位置に隣接した第二の標的ドメインを含む。これらの方法は、第一の連結プローブを第一の標的ドメインにハイブリダイズすることおよび第二の連結プローブを第二の標的ドメインにハイブリダイズすることを含むが、そこではもしも第二の連結プローブが検出位置に完全に相補的である塩基を含むならば、連結構造が形成される。第一および第二の連結プローブが連結するであろう連結酵素が提供されて、連結したプローブを形成する。連結したプローブ、電極に共有的に結合した捕獲プローブおよび少なくとも一つのETMと共にアッセイ複合体が形成され、そしてそのETMの存在もしくは不在は連結構造の形成の指標として検出される。それから、検出位置における塩基を同定することができる。
【0023】
他の一つの態様において、これらの方法は、標的配列中で検出位置におけるヌクレオチドの確認を決定する方法に向けられている。この標的配列は、検出位置に直接的に5’で隣接した第一の標的ドメインを含む。この方法は、標的配列、電極に共有的に結合した捕獲プローブおよび標的配列の第一の標的ドメインにハイブリダイズした伸長(エクステンダー)プライマーを含むアッセイ複合体を提供することを含む。ポリメラーゼ酵素およびそれぞれがユニークな酸化還元電位を持つ共有的に結合したETMを含む複数のdNTPが提供されるが、もしもdNTPの一つが検出位置において塩基と塩基対を形成するならば、その伸長プライマーは酵素により伸長されて、ETMを含むdNTPを組み込んで、それから検出位置における塩基の同一性を決定するために検出される。
【0024】
更なる態様において、この発明は、少なくとも一つの光切断可能な種を含む自己集合させた単層(SAM)を含む表面を提供する。
【0025】
他の一つの態様において、この発明は、絶縁体を含む第一の種および電気導管形成種(EFS)を含む第二の種を含むSAMを含む表面を提供する。
【0026】
更なる態様において、この発明は試料中の標的アナライトの存在を検出する方法を提供するが、捕獲結合リガンドを含む第一のSAM形成種および少なくとも一つの第二のSAM形成種を含む電極に標的アナライトを加えて、標的アナライトおよび捕獲結合リガンドを含むハイブリダイゼーション複合体を形成することを含む。それから、第三のSAM形成種を加えて第二のSAM形成種を置き換える。この方法は更に、標的アナライト、捕獲結合リガンドおよび少なくとも一つの電子伝達部分(ETM)を含むアッセイ複合体を形成させることおよびそのETMの存在もしくは不在を標的アナライトの存在もしくは不在の指標として検出することを含む。
【0027】
他の一つの態様において、この発明は試料中の標的アナライトの存在を検出する方法を提供するが、共有的に結合した捕獲結合リガンドを含む電極に標的アナライトを結合させることおよび溶液結合リガンドを標的アナライトに結合させることを含み、そこでは溶液結合リガンドは、標的アナライトに結合するであろう第一の部分ならびに少なくとも一つのETMを含む少なくとも一つの導電性オリゴマーを含む第一の部分を含む、直接的にもしくは間接的に結合したリクルートリンカーを含む。そのETMの存在は標的アナライトの存在の指標として当該電極を用いて検出される。
【0028】
更なる態様において、この発明は少なくとも一つのETMを核酸に加える方法を提供するが、第一の官能基を含む核酸を提供すること、第二の官能基を持つ少なくとも一つのETMを提供することならびに第一および第二の官能基を接合して共有結合を形成することを含む。
【0029】
(図面の簡単な説明)
図1A-1Rは、本発明の多くの種々の組成物を示す。その結果は、PCT/US99/01703の実施例1および2に示し、出典明示により本明細書の一部とする。図1Aは、P290としても言及しているIを示す。図1Bは、P291としても言及しているIIを示す。図1CはW31としても言及しているIIIを示す。図1DはN6としても言及しているIVを示す。図1Eは、P292としても言及しているVを示す。図1Fは、C23としても言及しているIIを示す。図1Gは、C15としても言及しているVIIを示す。図1Hは、C95としても言及しているVIIIを示す。図1Iは、Y63を示す。図1Jは、本発明の他の化合物を示す。図1Kは、N11を示す。図1Lは、ホスホラミダイト基およびDMT保護基を有するC131を示す。図1Mは、ホスホラミダイト基およびDMT保護基をも有するW38を示す。図1Nは、伸張オリゴヌクレオチド鎖へそれを組込むと、DMT保護された酸素の両方の位置での付加が生じ、「枝分かれ」を生じさせ得る商業的に利用可能な成分を示す。図1Oは、非核酸リンカーとして役割をするホスホラミダイト基およびDMT保護基をも有するglenを示す。図1Aから1Gおよび1Jは、容易に添加されるホスホラミダイトおよび保護基(すなわち、DMT)なしに示している。
【0030】
図2A、2B、2Cおよび2Dは、温度を用いるミスマッチの検出のための幾つかの好ましい実施態様を図示する。図2は、表面不活性化剤を含む自己集合させた単層15および結合リンカー10を経由して結合した捕獲プローブ20を持つ電極105の使用を図示する。捕獲プローブ20は、標的配列120上で検出位置とのミスマッチを含んでもよい調査位置25を有する。図2AはETM135を含む標的配列120を図示する;図2BはETM135を持つ標識プローブ40の使用を図示する。当業者により認識されるであろうように、増幅プローブ、標識伸長プローブ等もまた使用することができる。図2Cは検出位置25を持つ標識プローブ40を利用する。再度、増幅プローブ、標識伸長プローブ等もまた使用することができる。図2Dは調査位置25を含む捕獲伸長プローブ45を利用する。
【0031】
図3Aおよび3Bは「コンペティマー」発明の二つの実施態様を図示する。図3Aにおいては、完全なマッチングを決定するためのコンペティマーの使用が示されている。二つの電極105を持つ基板1が示されている;第一の電極には標的120の検出位置121とマッチしない調査位置25を含む捕獲プローブが結合する。他の捕獲プローブは、標的の検出位置と完全にマッチする調査位置25を有する。コンペティマーの不在下においては、標的配列:不完全捕獲プローブは存在するために十分安定である。しかしながら、コンペティマー50の存在下においては、標的はコンペティマーの結合を優先して不完全なマッチングから追い払われる。図3Bおいては、検出位置121を含む標的配列120は調査位置25を持つ捕獲伸長プローブ45にハイブリダイズするが、これは検出位置と完全にはマッチしない。捕獲伸長プローブ45は結合リンカー10を経由して結合した捕獲プローブ20にハイブリダイズする。今や調査位置25と完全にはマッチするところの調査位置25を持つコンペティマー50の添加は、結合した標識プローブ145と不完全に結合した標的を追い払う。図3Cは、検出位置が標識プローブの認識配列内にあることを除いて、3Bと同様である。
【0032】
図4は実施例2からのTmカーブの結果を図示する。
図5は実施例4からの幾らかな結果を図示する。混合した(野生タイプおよび突然変異体)オリゴが野生タイプのオリゴ干渉液を配置している後に、ミスマッチしたハイブリダイゼーション(黒塗り円)は完全にマッチしたハイブリダイゼーション(中空円)により置き換えられる。
【0033】
図6は実施例5からの幾らかな結果を図示する。
図7はPCR/APCR反応のためのプライマーの入れ子セットを図示する。
図8A、8Bおよび8Cは幾らかな有用なジスルフィドの実施態様を図示する。図8Aは一般的なクラスを図示し、図8Bは、図8Cに示されたデータを作成するために用いられた二つの実施態様を図示する。
【0034】
図9A、9B、9C、9D、9E、9Fおよび9Gは幾らかなジスルフィドの合成の実施態様を図示する。図9Aは一般的な合成を図示する;R、R’およびR''はC1からC20のアルキルもしくは芳香族の誘導体であり、BはNaOH、KOH、LiOHもしくはMORのようないかなる塩基でもあり、ここでMは金属である。図9BはH−ホスホネートの合成を示し、図9Cおよび9DはCPG誘導体の合成を示し、そして図9Eは絶縁体の合成を示す。9Fおよび9Gは幾らかな環状ジスルフィドの実施態様を図示する。
【0035】
図10は「カフスリンク」配置を図示する。
図11Aおよび11Bは、光切断可能性および化学的切断可能性を包含する切断可能性種を用いる電気導管の形成の概念図を図示する。図11Bは好ましい実施態様を図示する。
【0036】
図12は、核酸に、ETMの場合においては、検出可能な標識の合成後の添加を図示する。
図13Aおよび13Bは、電極への会合もしくは結合のために、ETMおよび導電性オリゴマーを含む標識部分の使用を図示する。これらの実施態様は結合にチオールを利用するが、当業者により認識されるであろうように、この部分は表面に依存する。Rは水素もしくは保護基でもよい。
【0037】
図14は図13の標識部分のための合成式を図示する。
図15Aおよび15Bは、核酸に、このETMの実施態様において、検出可能な標識の結合のためのもう一つの合成後の反応を図示する。
図16は、一つのSAMをもう一つのものと置き換える置換反応を図示する。
【0038】
(発明の詳細な説明)
本発明は標的核酸の特定位置の配列を電極上における電気化学的検出を用いて決定する方法に向けられている。この発明は好ましくは、変異検出用電極アレイを用いた配列の差もしくは変異(例えば、SNP)の検出(および任意に定量)を包含する。
【0039】
技術上周知であるように、標的核酸中の特定部位における塩基の同一性を検出もしくは決定するために使用可能な多数の技術が存在し、これらは温度の使用、標的配列に対する完全および不完全なプローブの拮抗的ハイブリダイゼーション、例えば単一塩基伸長技法(「ミニシーケンシング」とも呼称される)を用いる、合成によるシーケンシング、オリゴヌクレオチドリガーゼ増幅(OLA)反応、ローリングサークル増幅(RCA)、アレリックPCR、拮抗的ハイブリダイゼーションおよびInvader[登録商標]技法を包含するが、これらに限定されるものではない。加えて、本発明は表面上に結合したアレイの新規な性質を利用し、そして非特異的結合を減少させるために「コンペティマー」を使用する新規な発明に向けられている。
【0040】
これらの技法の全ては、標的配列(試料の標的配列もしくはアッセイ中に作成された配列のどちらか)の表面上の捕獲プローブへのハイブリダイゼーションの結果としての、表面、しばしば電極、の上におけるアッセイ複合体の形成に依存している。ここでより詳細に概述するように、これは直接的なもしくは間接的な(例えば、サンドイッチ型システムの使用による)ハイブリダイゼーションのいずれでもよい。アッセイ複合体はさらに、標的に直接的にもしくは間接的に結合した少なくとも一つの電子伝達部分(ETM)を含む。一旦アッセイ複合体が形成されると、ETMの存在もしくは不在は下記記載の方法もしくは米国特許第5,591,578号;第5,824,473号;第5,770,369号;第5,705,348号および第5,780,234号;U.S.S.N 08/911,589;09/135,183;09/306,653;09/134,058;09/295,691;09/238,351;09/245,105および09/338,726;ならびにPCT出願WO 98/20162;WO 00/16089;PCT US99/01705;PCT US99/01703;、PCT US00/10903;PCT US99/10104に記載されているように検出されるが、これらは全て全体としての出典明示により本明細書の一部とする。
【0041】
これらの方法の多くは、ハイブリダイゼーション複合体を形成するために標的配列にハイブリダイズされるプライマー核酸(ETM標識ならびに核酸アナログの使用を包含してもよい)を必要とし、そして何かの様式でプライマーを修飾して修飾したプライマーを形成する酵素が加えられる;一般的に、修飾の発生は特定の配列の存在もしくは不在に依存し、そうして配列の分化を可能にする。例えば、OLAは、標的配列にハイブリダイズされる(隣接して直接的にまたは一つもしくはそれ以上だけ分離してのどちらかで)二つのプライマーおよびリガーゼを必要とする;Invader[登録商標]は二つのプライマーおよび切断酵素を必要とする;等々。かくして、一般的に、必要な増幅成分を含む反応液に標的核酸を加え、そして修飾したプライマーが形成され、それはそれから、変異が存在するもしくはしないかの指標として検出されるか、または興味のある位置における塩基の同一性を決定するために調査される。
【0042】
一般的に、修飾したプライマーは、アッセイ複合体に取り込まれるが、それは酵素により組み込まれるか、元のプライマーに存在するか、もしくは標識プローブにより付加されるかするところの、電子伝達部分(ETM)のような標識を含む。多くの実施態様では必要とされないが、必要により、未反応のプライマーは、当業者により認識されるであろうように、種々の方式で除去することができる。それから、ハイブリダイゼーション複合体を任意に解離させて、ここにおいてもしくは引用した応用例において一般的に記載するように、修飾したプライマーを電極に加える。通常、電極は修飾したプライマーにハイブリダイズするであろう捕獲プローブを含むが、ここに概述するように、サンドイッチアッセイを包含する種々の配置を使用することができる。検出は、標的配列の存在、不在もしくは量の指標としてのETM標識の検出により行う。
【0043】
この発明の方法は、例えば特異的な位置における特定のヌクレオチッドの検出のような、遺伝子型の決定アッセイに特定の使用を見出すが、当業者により認識されるであろうように、増幅および/もしくは定量は遺伝子型の決定をするために必ずしも行う必要はない。
【0044】
したがって、本発明は試料中の標的核酸の配列の存在もしくは不在を検出する組成物および方法を提供する。当業者により認識されるであろうように、試料溶液はいずれの数の物体を含んでもよく、これらは体液(実質的にいずれの生物の血液、尿、血清、リンパ液、唾液、および膣分泌物、汗および精液を非限定的に包含するが、哺乳動物試料が好ましく、ヒト試料が特に好ましい);環境試料(空気、農業、水および土壌の試料を非限定的に包含する);生物学的兵器試料;研究試料(即ち核酸の場合には、試料は、PCR増幅反応のようなPCT/US99/01705に一般的に記載されているように標的およびシグナル両方の増幅を包含する、増幅反応の生成物であってもよい);精製ゲノムDNA、RNA、タンパク質等のような精製試料;未精製試料(細菌、ウイルス、ゲノムDNA等)を包含するが、これらに限定されるものではない;当業者により認識されるであろうように、実質的にいずれの実験操作もこれらの試料に行われていてもよい。
【0045】
本発明は、サンプル中の標的核酸配列の存在の有無を検出するための組成物および方法を提供する。プローブ(プライマーを含む)は核酸を含む。本明細書で「核酸」または「オリゴヌクレオチド」またはそれらと均等内容の語は、一緒に共有結合されている少なくとも2個のヌクレオチドを意味する。本発明の核酸は一般にホスホジエステル結合を含むが、場合によっては、下記で概説されている通り、交互のバックボーンを有し得る核酸類似体が含まれ、例えばホスホルアミド(Beaucageら、Tetrahedoron 49(10):1925(1993)およびそれに記載された参考文献、Letsinger, J. Org. Chem. 35:3800(1970)、Sprinzlら、Eur. J. Biochem. 81:579(1977)、Letsingerら、Nucl. Acids Res. 14:3487(1986)、Sawaiら、Chem. Lett. 805(1984)、Letsingerら、J. Am. Chem. Soc. 110:4470(1988)、およびPauwelsら、Chemica Scripta 26:141 91986))、ホスホロチオエート(Magら、Nucleic Acids Res. 19:1437(1991)、および米国特許第5644048号)、ホスホロジチオエート(Briuら、J. Am. Chem. Soc. 111:2321(1989)、O−メチルホスホルアミダイト連鎖(Eckstein、Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach、オクスフォード・ユニバーシティー・プレス参照)、およびペプチド核酸バックボーンおよび連鎖(Egholm、J. Am. Chem. Soc. 114:1895(1992)、Meierら、Chem. Int. Ed. Engl.、31:1008(1992)、Nielsen、Nature、365:566(1993)、Carissonら、Nature 380:207(1996)参照、これら全てを引用して説明の一部とする)が含まれる。他の類似核酸には、正のバックボーン(Denpcyら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、92:6097(1995))、非イオン性バックボーン(米国特許第5386023,5637684,5602240,5216141および4469863号、Kiedrowshiら、Angew. Chem. Intl. Ed. English、30:423(1991)、Letsingerら、J. Am. Chem. Soc.、110:4470(1988)、Letsingerら、Nucleoside & Nucleotide、13:1597(1994)、2および3章、ASCシンポジウムシリーズ580、“Carbohydrate Modifications in Antisense Research”、Y.S. SanghuiおよびP. Dan Cook編、Mesmaekerら、Bioorganic & Medicinal Chem. Lett.、4:395(1994)、Jeffsら、J. Biomolecular NMR、34:17(1994)、Tetrahedron Lett.37:743(1996))および非リボースバックボーンを伴うもの、例えば米国特許第5235033および5034506号、および6および7章、ASCシンポジウムシリーズ580、“Carbohydrate Modifications in Antisense Research”、Y.S. SanghuiおよびP. Dan Cook編記載のものがある。また、1個またはそれ以上の炭素環状糖類を含む核酸も核酸の定義内に含まれる(Jenkinsら、Chem. Soc. Rev.(1995)169−176頁参照)。幾つかの核酸類似体は、Rawls、C & E News 1997年6月2日号、35頁に報告されている。これらの参考文献は全て特に引用して説明の一部とする。リボース−リン酸バックボーンにこれらの修飾を加えることにより、ETMの付加が簡易化され、または生理学的環境における上記分子の安定性および半減期が増加され得る。さらに、「DNA」および「RNA」の語の使用は、当然核酸類似体を含むものとする。
【0046】
当業界の技術者が認めるように、これらの核酸類似体は全て本発明で使用され得る。さらに、天然に存する核酸および類似体の混合物が製造され得る。例えば、導電性オリゴマーまたはETM結合部位では、類似構造が使用され得る。別法として、異なる核酸類似体の混合物、および天然核酸および類似体の混合物も製造され得る。
【0047】
特に好ましいのは、ペプチド核酸類似体を含むペプチド核酸(PNA)である。天然に存する核酸の高荷電ホスホジエステルバックボーンとは対照的に、これらのバックボーンは中性条件下では実質的に非イオン性である。これによって、2つの利点が得られる。まず、PNAバックボーンは、改善されたハイブリダイゼーション速度論を呈する。PNAは、誤対合対完全適合塩基対において融解温度(Tm)のより大きな変化を有する。DNAおよびRNAは、内部誤対合の場合典型的にはTmの2−4℃降下を呈する。非イオン性PNAバックボーンの場合、降下は7−9℃に近い。これによって、誤対合が検出され易くなる。同様に、それらの非イオン的性質故に、これらのバックボーンに結合された塩基のハイブリダイゼーションは、塩濃度に対して比較的非感受性である。還元塩ハイブリダイゼーション溶液は、生理学的塩溶液よりも(150ミリモルの範囲で)低いファラデー電流を有するため、これは本発明のシステムでは特に有利である。
【0048】
核酸は、明記されている通り1本または2本鎖であるか、または2本鎖または1本鎖の両配列の一部を含み得る。核酸は、DNA、ゲノム性およびcDNAの両方、RNAまたはハイブリッドであり得、その場合核酸はデオキシリボ−およびリボ−ヌクレオチドの任意の組み合わせ、並びにウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、イソシトシン、イソグアニンなどを含む塩基の任意の組み合わせを含む。好ましい実施態様は、米国特許第5681702号で総括的に記載されている通り、非特異的ハイブリダイゼーションを低減化するために、標的配列ではなく、他のプローブと相補的になるように設計された核酸においてイソシトシンおよびイソグアニンを用いる。ここで使用されている、「ヌクレオシド」の語は、ヌクレオチド並びにヌクレオシドおよびヌクレオチド類似体、および修飾ヌクレオシド、例えばアミノ修飾ヌクレオシドを包含する。さらに、「ヌクレオシド」は、非天然的類似構造を包含する。すなわち、例えば各々塩基を含む、ペプチド核酸の個々の単位は、ここではヌクレオシドと称される。
【0049】
本発明の組成物および方法は、標的配列の検出を指向する。ここで「標的配列」または「標的核酸」または文法的にこれと均等内容の語は、核酸の1本鎖における核酸配列を指す。標的配列は、遺伝子の一部、調節配列、ゲノムDNA、cDNA、mRNAおよびrRNAを含むRNAなどであり得る。本明細書に概説したように、標的配列は、サンプルからの標的配列であってもよく、例えばインベーダー(登録商標)反応からの検出配列、OLA反応からの連結(ライゲーション)プローブ、SBE反応からの伸張プローブの反応産物のような2次配列であってもよい。それらはいかなる長さでもあり得るが、配列が長いとより特異的である。当業者は認めるであろうが、相補的標的配列は多くの形態をとり得る。例えば、それはより大きな核酸配列内、すなわち遺伝子またはmRNAの全部または一部、プラスミドまたはゲノムDNAの制限断片などの内に含まれ得る。
以下により詳しく説明するように、プローブは、サンプル中の標的配列の存在まの有無を測定するために、標的配列にハイブリダイズするように調製する。一般的に言って、当業者はこの用語を理解している。標的配列はまた異なる標的ドメインからなっていてもよい;例えば、サンプル標的配列の第一標的ドメインは捕獲プローブまたは捕獲伸長プローブにハイブリダイズし、第二標的ドメインが増幅プローブの一部分、標識プローブ、または異なる捕獲プローブまたは捕獲伸長プローブなどにハイブリダイズすることが可能である。標的ドメインは隣接していてもよく、または離れていてもよい。“第一”および“第二”という用語は、標的配列の5’−3’方向に関して該配列の方向を付与することを意味しない。例えば、相補性標的配列の5'−3’方向を仮定すると、第一標的ドメインは第二ドメインに対し5’に位置するか、あるいは第二ドメインに対し3’に位置する。
【0050】
以下に詳細に概説するように、標的配列は必要とされる配列情報に対する部分を、本明細書では、概して「検出部位」という。好ましい態様において、検出部位は1本鎖のヌクレオチドであるが、ある態様では複数のヌクレオチドが、1以上のヌクレオチドにより各々隣接して、もしくは別々に含んでもよい。本明細書中の「複数」とは、少なくとも2つを意味する。本明細書中で用いるように、ハイブリッドにおいて検出部位の塩基との塩基対をなす塩基は「インテロゲーション部位」を意味する。
【0051】
好ましい実施態様において、本発明の方法は、特に細菌のような病原体の検出するために使用する。この態様において、好ましい標的核酸はrRNAを含み、以下すべてを出典明示により本明細書の一部とする;米国特許番号第4,851,330、5,288,611、5,723,597、6,641,632、5,738,987、5,830,654、5,763,163、5,738,989、5,738,988、5,723,597、5,714,324、5,582,975、5,747,252、5,567,587、5,558,990、5,622,827、5,514,551、5,501,951、5,656,427、5,352,579、5,683,870、5,374,718、5,292,874、5,780,219、5,030,557および5,541,308に概説されているものを含む。
【0052】
必要ならば、標的配列は公知の技法を用いて調製される。例えば、当業者により認識されるであろうように、公知の溶解緩衝液、エレクトロポレーション等を用いて試料を処理して細胞を溶解し、必要に応じて精製および/もしくは増幅を行ってもよい。適切な増幅技法はPCT US99/01705に概説されており、これは出典明示により本明細書の一部とする。加えて、ハイブリダイゼーションの量もしくは速度を増加させる技法を用いることもできる;例えば、WO 99/67425を参照されたく、これは出典明示により本明細書の一部とする。
【0053】
一般的に、現在のSNP検出法はPCRのような第一増幅ステップを利用して患者の核酸を増幅させる。好ましい実施態様では、発明の方法におけるステップは一つの鎖を他の鎖より過剰に産生させるステップを包含する。当業者により認識されるであろうように、種々の方法を用いることができ、これらは非対称的ポリメラーゼ連鎖反応(APCR)、エキソヌクレアーゼ法および非標的鎖の捕獲を包含するが、これらに限定されるものではない。
【0054】
好ましい実施態様では、非対称的ポリメラーゼ連鎖反応(APCR)を用いて、ここに概述するように、検出用の標的配列として使用される単鎖核酸断片の産生を増大させる。伝統的なAPCR技法は、プライマーを5:1の比で用いて単鎖の偏りを産生するが、2:1から100:1までの種々の比率を同様に用いることができる。
【0055】
好ましい実施態様では、新規の入れ子プライマー法を用いて患者の試料を増幅する。この実施態様では、標的産生の増大は二つのステップのプロセスを用いて達成される:1:1の比のプライマーを用いる第一の対称的PCRステップと、これに続く50:1の比(再度、2:1から100:1超の比率が有用である)を用いた第二のAPCRステップの添加(好ましくは、同一の反応に)である。これに代えて、これらの反応を二つのステップで同様に行い得る。これは結果として一つのステップのAPCR反応より3〜6倍の増大をもたらすことが示されている。
【0056】
好ましい実施態様では、非対称的増幅ステップは一つの鎖を選択的に分解することのできるエキソヌクレアーゼを用いて達成される。例えば、ラムダエキソヌクレアーゼは二本鎖DNAのリン酸化された鎖を選択的に消化する5’から3’へのエキソヌクレアーゼである。この鎖はプライマーの一方が5’末端リン酸基を含んでいる場合に増幅中に生成され得る。このリン酸化プライマーをアンプリコンに組み込むことにより、ラムダエキソヌクレアーゼが一つの鎖を特異的に消化し、単鎖核酸を生成物として残すようにすることを可能にする。当業者により認識されるであろうように、増幅反応は5’末端リン酸基を用いるいずれの反応であってもよい;種々のこれらの技法が、出典明示により本明細書の一部とするWO 99/37819に記載されている。好ましい実施態様は反応としてPCRを利用する。
【0057】
好ましい態様では、一方の鎖が除去できるように捕獲タグを持つプライマーを用いてPCRを行う。例えば、PCR(もしくはその他の増幅法)反応においてビオチン標識プライマーを用い、次いで分離ステップ、例えば高い温度で反応混合物にストレプトビジンビーズを加えることにより、単鎖核酸が作成される。技術上公知のように、用いる結合対の数はいくらであっても良く、これらは抗原および抗体を包含する;例えば、出典明示により本明細書の一部とするWO 98/12430中のリストを参照すること。
【0058】
したがって、本発明の組成物および方法は、標的配列内の検出位置における核酸を同定するのに用いられる。
【0059】
好ましい態様では、温度変化を使用して、検出位置におけるヌクレオチドの同一性もしくはミスマッチの存在のどちらかを決定する。前置きとして述べれば、単鎖標的配列およびプローブを含む二本鎖ハイブリッド中でミスマッチの存在もしくは不在を決定するために温度を用いることは周知である。技術上公知のように、完全なマッチおよびミスマッチの間における塩基対形成の関数としての水素結合数の差は、異なるTm(ハイブリッドの50%が変性する温度)の結果として利用することができる。したがって、完全な相補性を含むハイブリッドは、他の全てのパラメータが同一ならば、少なくとも一つのミスマッチを含むものよりも高い温度で融解する。(ここでの考察の目的のためには、他の全てのパラメータ(即ち、ハイブリッドの長さ、バックボーンの本質(即ち、天然物か核酸アナログか)、G−C含量を包含して、アッセイ溶液の組成および塩基の組成は一定とすることに留意されるべきである)。しかしながら、当業者により認識されるであろうように、これらの要素を同様に変化させて、それから考慮にいれてもよい。)
【0060】
この文脈において、「ミスマッチ」とは相対的な用語であり、ここでは「検出位置」と呼称される特定位置における塩基の同一性に二つの配列間に差を示すことを意味する。一般的に、野生型配列と異なる配列はミスマッチといわれる。しかしながら、特にSNPの場合には、複数の対立遺伝子が集団中に比較的高頻度に観察されうるので何をもって「野生型」とするかは決定するのが困難であり、したがってこの文脈における「ミスマッチ」は一つの配列を標準として人為的に採用する必要がある。かくして、この発明の目的のためには、ここでは配列は「完全なマッチ」および「ミスマッチ」といわれる。
【0061】
この発明の方法および組成物は、反復アッセイ(即ち、アッセイ複合体のETMの開始および電気化学的検出)が一つの表面もしくはアレイ上で行えるという点において特別の有用性を有する。即ち、蛍光頻度に依存する検出系は、検出に用いる蛍光体の光退色が問題となってくるために、アッセイ複合体が検出可能である回数が限定される。一般的にアッセイ複合体について単一のみのアッセイが行われる。かくして、温度を用いるミスマッチの検出を行う場合、温度曲線を作成するためには幾つかの異なるアッセイ(即ち、異なるチップ)を行わなければならない。これはチップ間もしくはアッセイ間の変動という不利を有している。加えて、蛍光標識はまた、表面上に結合していないときに、シグナルを発する;かくして洗浄ステップが必要である。しかしながら、本発明の組成物は反復検出を可能とする;事実、以下に概述するように、ACシステムを用いるときには、アッセイ複合体を数百回もしくは数千回アッセイして一つのデータポイントを得ることができる;かくして単一のアッセイ複合体を、複数の温度におけるものも包含して、何回もアッセイすることができる。これによりハイブリダイゼーション反応キネティックス曲線を作成することが可能となり、例えば、一つのアッセイ複合体で温度曲線を作成してミスマッチの検出を行うことを可能にする。加えて、本発明は多数の温度での測定を可能にし、したがって一つのアレイ上での全てのTmが異なることもあり得る。これはアレイ中の全てのTmが良くマッチしていなければならない蛍光標識と対照的である。
【0062】
かくして、好ましい実施態様では、この発明は、試料中の標的配列の存在を検討するアッセイにおいてハイブリダイゼーションのキネティックス曲線を作成する方法を提供する。ここで「ハイブリダイゼーションキネティックス曲線」とは、時間もしくは温度に対して二つの核酸のハイブリダイゼーションの割合をプロットしたものを一般的に意味するが、当業者により認識されるであろうように、他の性質をプロットしてキネティックス曲線を作成することもできる。重要なことは、本発明が一つのアレイから広範な条件下で多数のデータポイントの収集を可能にし、そうして試料についての付加的な情報の作成を可能にすることである。これらの方法は、ここに概説するように、試料を捕獲プローブを有するアレイと接触させることを含む。少なくとも標的と捕獲プローブを含む少なくとも一つのハイブリダイゼーション複合体が生成する。ハイブリダイゼーション複合体はさらにETMのような標識を含む;これはここに概説するように種々の方式で達成することができて、標識プローブの使用、もしくは標的自身への標識の組み込みを包含する。かくしてアッセイ複合体が生成する。標識(即ち標的配列の存在)の検出は何回も行われる;即ち、複数の測定が形成される。好ましい実施態様では、この方法は複合体の一部でない標識の除去をそれぞれの測定の間で行わない。これは種々の異なる実験条件で行うことができる;例えば、測定は異なる温度、異なる試薬もしくは緩衝液の濃度(例えば、緊縮条件を増加させて)等で行うことができる。
【0063】
当業者により認識されるであろうように、温度を用いるミスマッチの検出は種々の方式で実施し得る。
【0064】
好ましい実施態様では、単一のタイプのプローブを用いて温度勾配を行うが、これは以下に記述するように、異なる検出用標識で標識した複数のプローブの使用と対照的である。
【0065】
即ち、図2に示すように、標的配列および検出位置にミスマッチを包含する二次プローブとの間にハイブリッドが形成される。図に概述するように、二次プローブは捕獲プローブ(図2Aおよび2B)、捕獲伸長プローブ(2D)もしくは標識プローブ(2C)であってもよい。一般的に、ミスマッチ(2A、2Bおよび2D)の結果として表面から標的を放出するシステムが、バックグラウンド(例えば、非特異的結合)が減少するので好ましい。
【0066】
一般的に、アッセイ複合体はミスマッチ:標的ハイブリッドのTmより低いTmで生成する。温度を徐々に上昇させて、データポイントは複数の温度(もしくは、ここに概述するように、複数の異なる条件)で取る。ここで用いる「複数」とは少なくとも二つを意味する。この文脈において、好ましい複数は2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10またはそれ以上の異なる温度を包含する。好ましい増加分は5℃でり、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃および60℃の全てが好ましい。或る実施態様では、10℃、15℃および15℃のようなより低い温度もまた使用することができる。好ましい実施態様では、温度は問題とするハイブリッドのTmに跨るが、これは場合によっては必要ではない。かくして、例えば、もしミスマッチが45℃で融解し完全なマッチが55℃で融解するならば、アッセイを40℃もしくは45℃および50℃で行うことによってミスマッチとマッチとを区別することができる。
【0067】
加えて、当業者により認識されるであろうように、ミスマッチのTm以上で単一の実験を行うことも可能である。即ち、以下により詳細に概述するように、アッセイ複合体中のETMの存在もしくは不在によって検出されるような、ミスマッチのTm以上でのアッセイ複合体の形成は、プローブが検出位置で完全な相補性を含むことを示している。好ましい実施態様では、複数のプローブを用いて検出位置における塩基を同定する。この実施態様では、それぞれの異なるプローブは、標的配列の検出位置(ここでは調査位置と呼称する)にハイブリダイズするであろう位置に、異なる検出標識および異なる塩基を含み、差別的ハイブリダイゼーションが起こるようにする。この実施態様では、上に一般的に概述したように、アッセイは等温的にもしくは温度の関数としてのいずれで行ってもよい。即ち、他のパラメータは同一であるから、完全に相補的なプローブはより安定であって、多分ミスマッチを含むプローブよりもどの特定の温度においても解離速度が遅いであろう。したがって、それぞれ調査位置に異なる塩基を持ちそしてそれぞれ異なる標識を持つ、異なるプローブを用いることにより、検出位置における塩基の同定が解明される。これらの差は異なる温度を用いることにより増幅することができる。
【0068】
したがって、当業者により認識されるであろうように、単一のETM標識および4個の異なる電極パッドを用いることにより同一の結果を達成することができる。この実施態様では、それぞれのパッドは調査位置に異なる塩基を持つ捕獲プローブを含む。温度もしくはコンペティマーの変化を用いることにより(以下に記述)、検出位置における塩基の同定を行うことができる。
【0069】
かくして、好ましい態様では、この発明は、それぞれがユニークな酸化還元電位を持つ少なくとも一つのETMを有する複数のプローブを提供する。これは拮抗的ハイブリダイゼーションにおける「二色」もしくは「四色」のアイデアと類似しており、そしてハイブリダイゼーションによるシークエンシングにも類似している。例えば、ハイブリダイゼーションによるシークエンシングは記述されている(特に、Drmanac et al., Genomics 4: 114 (1989); Koster et al., Nature Biotechnology 14: 1123 (1996);米国特許第5,525,464号;第5,202,231号および第5,695,940号であり、これらは全て全体としての出典明示により本明細書の一部とする)。
【0070】
以下により詳細に概述するように、種々のETMがこの発明で使用される。この実施態様では、異なるETMの酸化還元電位は用いるアッセイ条件で互いに識別可能なように選択される。ここで「酸化還元電位」(時々Eoともいわれる)とは、電極近傍の溶液中で酸化型ETMと還元型ETMの比が1になるように、電極に負荷しなければならない(規定の水素電極のような標準基準電極に対して)電圧を意味する。好ましい実施態様では、酸化還元電位は少なくとも100mVだけ離れているが、システムの感度、使用する電気化学的測定技法および使用する異なる標識の数に依存して、これより小さい差もしくはこれより大きな差を用いてもよい。特に好ましい実施態様では、フェロセンの誘導体が用いられる;例えば、環の置換基を有しない、またはアミンもしくはアミド、カルボン酸等を付加したフェロセンを含むETMを使用してもよい。
【0071】
好ましい実施態様では、プローブセットのそれぞれのプローブは調査位置に異なる塩基を有し、そして異なる共有的に結合したETMを有する。かくして、二つのプローブ(例えば、SNPが二つの異なる塩基の一つとして存在し得るとき)、三つのプローブ(対立遺伝子が3種の異なる塩基を含むとき)もしくは四つのプローブ(検出位置における塩基の同一性を決定するために)のセットを使用することができる。プローブのセットを標的配列に加えてどのETMが存在するかを検出することにより、検出位置における塩基の同一性が決定される。
【0072】
好ましい実施態様では、この実施態様で用いられるプローブの他の位置の全ては同一である;即ち、ある実施態様では、全ての他の成分が同等である(例えば、プローブの長さならびに非−調査塩基の両方)プローブを用いるのが良好な識別を可能にするために好ましい。これはSNPの発見のために特に好ましい。他の実施態様では、検出位置の識別を最大にするために他の成分を変化させることが望まれるかもしれない。完全マッチプローブおよびミスマッチプローブの拮抗的ハイブリダイゼーションに依存する技法では、種々のユニークな技法を使用すると、プローブ中に特定の性質を取り込むことによりプローブの識別を最大にすることができる。
【0073】
前置きとして、Tmの差について最も好ましい差を与える鎖を選ぶべきである;例えば、C/AよりもG/T、CT/よりもG/Aミスマッチが選択される。同様に、好ましい実施態様は、プローブ末端近くよりも中央に調査塩基を有するプローブを一般的に使用する。しかしながら、ここに概述するように、ある実施態様ではプローブ中の調査位置の移動を行って識別を最大化する。
【0074】
例えば、好ましい実施態様では、プローブの完全マッチ/ミスマッチの識別はミスマッチ位置およびその近傍における塩基の結合親和性を変えることにより増強し得る。例えば、検出位置に隣接して(もしくは3塩基以内に)G−C対を有する配列は良好なマッチ/ミスマッチの識別を妨害する場合がある。これらの区域で置換を選択することにより、より良好な識別が達成される。例えば、これを行って、検出位置で塩基対を不安定化させたり、もしくは好ましくは、検出位置に隣接する位置で塩基対を不安定化させながら、検出位置における塩基対を安定化させ得る。塩基の置換は、その区域中の二本鎖のスタッキング構造を妨げることなしに塩基対当り僅か二つもしくはそれ以下に水素結合の数を減少させる。不安定化の程度は置換の化学的性質、置換の数および検出位置に相対的な置換基の位置に依存する。局所的な鎖の不安定化はプローブの特異性の消失とバランスを取らなければならない。これらの置換は天然もしくは合成の塩基アナログのいずれでもあり得る。
【0075】
例えば、塩基対形成の強度を増大させる塩基アナログは、Cと対を作るイソデオキシグアノシン(isodG)、およびGと対を作る5−メチルイソデオキシシチジン(5−Me−isodC)を包含する。
【0076】
同様に、塩基対形成を高頻度に不安定化させ得る塩基アナログが知られている。これらは一般的に三つのカテゴリーに分けられる。2’−デオキシイノシンおよび2’−デオキシネブラリンのような縮重塩基は全ての塩基に低い一様でない水素結合を示す。他の縮重塩基は塩基のサブセットのみと塩基対を形成する:6H,8H−3,4−ジヒドロピリミド[4,5−c][1,2]オキサジン‐7−オン(dP)はプリンのみと塩基対を形成し、2−アミノ−6メトキシアミノプリン(dK)はピリミジンとだけ塩基対を形成する。これに代えて、3−ニトロピロールおよび5−ニトロンドールのようないくつかのユニバーサルな塩基があり、全ての塩基に低い同等でない水素結合を示す。加えて、ミスマッチした塩基(天然もしくは合成アナログのいずれでも)も不安定過ぎない限り用いることができる。
【0077】
当業者により認識されるであろうように、これらの塩基アナログはプローブの中に組み込んでも良く、または、標的配列の増幅ステップが利用されるときには、標的および/もしくはプローブの中に組み込んでもよい。
【0078】
好ましい実施態様では、調査塩基は塩基アナログに変更される。ある実施態様では、最も識別が困難なミスマッチはG:TもしくはG:Uミスマッチであり、これはTm低下が最も少ないからである;G:TおよびG:U対はまだ二つの潜在的水素結合を有している。かくして、例えば興味の対象であるSNPがG/Aの差を伴うとき、これらを識別するのは困難な場合がある。G:TもしくはG:Aミスマッチの不安定化を促進するために、代わりの塩基を用いることができる。例えば、2−チオチミジンもしくは2−チオウリジンがTもしくはUによりもAにハイブリダイズすることが報告されているが、これは2−チオ基が水素結合に加わらないからと推定されている。例えば、全て全体としての出典明示により本明細書の一部とする、Connolly et al., Nucleic Acid Res. 17: 4957 (1989); Ishikawa et al., Bioorg. & Med. Chem. Lett. 1: 523 (1991); Kuimelis et al., Nucleic Acid Res. 22: 1429 (1991)を参照のこと。かくして、これらのチオール化塩基の導入によりA:TもしくはA:dUの対を安定化させ、G:TもしくはG:Uのミスマッチを不安定化させることができる。
【0079】
さらに、好ましい実施態様では、調査プローブの識別はプローブの長さを変えることによって変化させることができる。例えば、上述のように、G/Aの差のような特定のミスマッチはG:Tミスペアリングの安定性のために識別が困難である。標準プローブの長さを15〜25塩基対から10〜15塩基対に短縮することにより、増加した識別を行い得る。
【0080】
加えて、良いプローブのデザインはまた検出位置における識別を増大させることを可能にする。例えば、上述のように、G−Tミスマッチは最も評価が困難である;かくして、G−Tミスマッチを評価しなければならない場合にはより短いプローブを用いることができる。
【0081】
同様に、本発明を用いるミスマッチの検出は、標的、捕獲プローブおよび標識プローブを含むアッセイ複合体に依存するサンドイッチアッセイフォーマットで最大化し得る。この実施態様では、捕獲プローブと標識プローブが少なくとも2つもしくはそれ以上の塩基だけ離れたドメインで標的とハイブリダイズするときに、より良好な識別が見られる。識別は、標識プローブのTmが捕獲プローブのTmよりごく僅かに高くなるようにシステムをデザインすることによってさらに最大化させ得る。
【0082】
加えて、システムの追加的な識別はそれぞれのプローブと会合するETMの選択を通して達成することができる。即ち、いかなる与えられたSAMシステムにおいても、ETMの幾らかは他のものよりもSAMとよりよく会合する。したがって、追加的な識別が要求されるときには、それぞれのプローブ上のETMの選択が手助けになる。例えば、絶縁体(M44)および導電性オリゴマー(H6)を含むある単層では、ここで図示するW97分子は単層上でN6よりも若干不安定であり、この事実を利用することができる。
【0083】
同様に、プローブの長さも識別の助けになり得る;一般的に15〜20のプローブが用いられ、室温での遺伝子型決定では17マーが特に好ましい。
【0084】
加えて、多数の潜在的ETMの使用は二つもしくはそれ以上の試料を比較するシステムでの遺伝子発現のモニタリングを可能にする。この実施態様では、二つもしくはそれ以上の別々の材料に由来する、特異的選択の核酸を検出し(好ましくは定量的に)、個々の核酸の量に関して材料間で比較をする。好ましい実施態様では、いかなる数の生物もしくは細胞株由来の核酸(特にmRNA)でも調べることができる;例えば、疾病状態(例えば癌細胞)由来の細胞を正常細胞と比較し得る。同様に、薬物、薬物候補、他の化合物もしくは異なる実験条件の影響を検討することができる:化合物の存在下および不在下もしくは異なる条件下(温度、pH等の変化)における細胞を比較することができる。これに代えて、異なる位置もしくは時間由来の異なる生物学的試料を比較することができる:例えば、水、土壌、空気、組織もしくは法医学的試料を比較することができる。
【0085】
この実施態様では、第一の試料は第一の酸化還元電位を持つETMで標識し、第二の試料は第二の酸化還元電位を持つETMで標識する。ここに記述するように、この標識は幾つかの方式で行い得る。例えば、増幅ステップに用いるプライマーがETMを含んでいてもよい。これに代えて、標識ヌクレオチドを増幅中に用いてもよい。これに代えて、「タグ」を含むプライマーを使用することにより標識プローブにハイブリダイズするであろう;異なる試料には異なるタグ、したがって異なるシグナルプローブを利用する。試料は混合してアレイに加え、技術上公知のように、平行して、もしくはいかなる数のアッセイフォーマットでも分析することができる。
【0086】
好ましい実施態様では、検出位置におけるヌクレオチドの同定は相補性に依存して進む酵素的プロセスを用いて行われる。即ち、Invader(登録商標)技法もしくはOLAのような増幅反応(例えば、出典明示により本明細書の一部とするPCT US99/01705を参照)に用いられる幾つかのプロセスは反応の進行のために完全な相補性に依存する。調査位置において検出位置に完全に相補的であるかもしくはそうでないプローブを用いることより、検出位置における塩基の同一性を決定し得る。
【0087】
好ましい実施態様では、オリゴヌクレオチド連結増幅(OLA)を用いて検出位置における塩基の同一性を決定する。一般的には、全て出典明示により本明細書の一部とする、米国特許第5,185,243号および第5,573,907号;EP 0 320 308 B1;EP 0 336 731 B1;EP 0 439 189 B1;WO 90/01069;WO 89/12696;およびWO 89/09835、ならびにU.S.S.N. 60/078,102および60/073,011を参照のこと。
【0088】
この方法は、もし二つのプローブが標的の鎖にハイブリダイズし、そしてもし一緒に連結される二つの塩基において完全な相補性が存在するならば、特定の連結酵素がこれら二つのプローブを一緒に連結するというという事実に基づく。かくして、この実施態様では、標的配列は検出位置を含む近接の第一標的ドメインおよび検出位置に隣接する第二標的ドメインを含む。即ち、検出位置は第一標的ドメインの残りの部分と第二標的ドメインとの「間」に位置する。第一連結プローブは第一標的ドメインとハイブリダイズし、第二連結プローブは第二標的ドメインにハイブリダイズする。もし第一連結プローブが検出位置の塩基と完全に相補的な塩基を有しており、そして第二プロ‐ブ上の隣接した塩基がその位置に完全に相補性を有していれば、連結構造が形成され、それにより連結酵素が二つのプローブを一緒に連結して連結されたプローブを形成するであろうようになる。もし相補性が存在しなければ、連結構造が形成されず、リガーゼ酵素はそれと判るほどにはプローブを一緒に連結しない。これは熱サイクリングを用いて行われ、それによって連結されたプローブが標的配列から変性して離れることを可能にして、更なる反応の鋳型として役を果たすようになる。
【0089】
それから、連結されたプローブを以下に一般的に概述する方法で検出する。当業者により認識されるであろうように、これは種々の方式で行われる。好ましい実施態様では、プローブの一つは少なくとも一つの共有的に結合したETMを含み、他のプローブは、電極上の捕獲プローブに直接的にもしくは間接的に(即ち、捕獲伸長プローブを用いて)ハイブリダイズするのに用いられる配列を含む。かくして、両方の成分が存在するときにのみシグナルが発生するであろう;これによりシステムから非連結プローブを除去する必要がなくなる。これに代えて、例えば結合ステップ等を用いることにより、非連結プローブを除去もしくは洗い落とすこともできる。例えば、捕獲プローブは第二の連結プローブにハイブリダイズすることも、もしくは捕獲伸長プローブの第一部分にハイブリダイズすることもできる。捕獲伸長プローブは捕獲プローブにハイブリダイズする第一部分および第二の連結プローブとハイブリダイズする第二部分を含む。他の変化は当業者により認識されるであろう。
【0090】
これに代えて、プローブをETMで直接的に標識しているのではなく、サンドイッチシステムが用いられる;例えば、プローブは、標識プローブが結合するであろう配列を含む。以下に概述するように、他の実施様態では増幅プローブ、標識伸長プローブなどを利用する。
【0091】
当業者により認識されるであろうように、連結反応は溶液中で行って複数の連結されたプローブを生成させ得る。それから、ここに概述するように、これらを検出電極に加えてもよい;再度、好ましい実施態様は異なるプローブ上でのETM標識および捕獲配列の分離を利用する。かくして、ETMを含む非連結プローブは表面上で捕獲されない。これに代えて、反応を表面上で行ってもよく、標的配列を捕獲し、それから標識を含むプローブ(もしくは標識プローブが結合するであろうプローブ)を標的配列にリクルートする。一般的に、この実施態様は加温ステップを利用して、非連結プローブを追い払い、より長い連結プローブのみが表面上に留まるであろうようにする。同様に、捕獲プローブ自身を末端に検出位置を含む連結プローブとして用いることもできる。標的配列および第二の連結プローブの添加により、連結構造が形成される。標識プローブ(もしくは他のプローブ)も同様に加えることができる。再度、この実施態様は、連結が起こらないかぎり標的配列が表面上に留まらないことを確実にするために、加温ステップを必要とするであろう。
【0092】
当業者により認識されるであろうように、これらの技法は二本鎖の標的配列の二つの鎖について行い得る。標的配列を変性させ、二組のプローブを加える:標的の一つの鎖に対しては上述したように一組、そして標的の他の鎖に対しては別の一組(即ち第三および第四のプライマープローブ核酸)である。好ましい実施態様では、増幅が起こり得るように、第一および第三のプローブがハイブリダイズし、第二および第四のプローブがハイブリダイズするであろう。即ち、第一および第二のプローブを結合すると、連結したプローブは今度は、第二の標的配列のほかに、第三および第四のプローブの結合のための鋳型として用いられる。同様に、連結した第三および第四のプローブは、第一の標的鎖のほかに、第一および第二のプローブの結合のための鋳型として役を果たすであろう。このようにして、唯の線形よりもむしろ、指数関数的な増幅が起こることができる。
【0093】
再度、上に概述したように、OLA反応の検出は一つもしくは両方のプライマーが少なくとも一つのETMを含む場合には直接的に行うことができ、もしくは付加的なプローブの使用によりサンドイッチアッセイを用いて間接的に行うこともできる;即ち、連結したプローブは標的配列としての役を果たし、そして検出は、増幅プローブ、捕獲プローブ、捕獲伸長プローブ、標識プローブ、および標識伸長プローブ等を利用し得る。
【0094】
好ましい実施態様では、シグナル増幅技術はRCAである。ローリングサークル増幅は、以下すべてを出典明示により本明細書の一部とする;Baner et al. (1998) Nuc. Acids Res. 26:5073-5078; Barany, F. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:189-193; Lizardi et al. (1998) Nat. Genet. 19:225-232; Zhang et al., Gene 211:277 (1998)およびDaubendiek et al., Nature Biotech. 15:273 (1997)に一般的に記載されている。
【0095】
一般的に、RCAは次のように説明される。まず、以下により詳細に概説されるように、1本のRCAプローブが標的配列にハイブリダイズする。プローブのそれぞれの末端が隣接して標的核酸にハイブリダイズし(または、以下に概説するように、ポリメラーゼとdNTPを用いて「埋める」ことができる挿入核酸がある)、上記のOLAアッセイが起こる。即ち、完全な相補性の存在する場合にのみ、ライゲーションが起こる。ライゲーションされると、プローブは、標的核酸とハイブリダイズしたまま環状になる。プライマー、ポリメラーゼおよびdNTPを加えると、環状プローブの伸長が起こる。しかし、プローブには末端が無いので、ポリメラーゼはプローブを繰り返し伸長し続ける。こうして環状プローブの増幅が起こる。この非常に大きいコンカテマーは、下記のようにそのままで検出でき、または本明細書中で概説されるような検出のためにより小さい単位複製配列を形成するように、様々な方法で切断できる。
【0096】
したがって、好ましい実施態様では、1本のオリゴヌクレオチドが、OLAおよびRCAの環状鋳型(本明細書中では「南京錠(padlock)プローブ」または「RCAプローブ」と表わされる)の両者に用いられる。つまり、オリゴヌクレオチドのそれぞれの末端は、標的核酸と相補的な配列を含み、また上記のようにOLAプライマーとして機能する。すなわち、RCAプローブの第1の末端は、実質的に第1標的ドメインと相補的であり、RCAプローブの第2末端は、第1領域と(本明細書中に概説するように、直接または間接に)隣接する第2標的ドメインと実質的に相補鎖を形成する。標的核酸へのプローブのハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーション複合体の形成につながる。「プライマー群」(1本のオリゴヌクレオチドの不連続な末端群、すなわちRCAプローブである)のライゲーションにより、環状プローブを含有する改変されたハイブリダイゼーション複合体の形成、すなわちRCA鋳型複合体が生じる。つまり、オリゴヌクレオチドは、依然として標的配列とハイブリダイズしたままで、環状になる。これは、RCAの環状鋳型として役立つ。プライマー、ポリメラーゼおよび必要なdNTP群をRCA鋳型複合体に加えると、増幅された核酸産物の形成が起こる。RCAに続いて、本明細書で概説するように、増幅された核酸産物が検出される。このことは、様々な方法で達成される。例えば、ポリメラーゼが標識されたヌクレオチドを組み込んでもよく、標識されたプライマーを用いてもよく、または実質的にRCAプローブの一部と相補的な、使用した少なくとも1つの標識を含有する標識プローブを使用する。
【0097】
したがって、本発明はRCAプローブ(時には本明細書中で「ローリングサークルプローブ群(RCPs)」または「南京錠プローブ(PPs)」と表わされる)を提供する。該RCPは、第1および第2ライゲーション配列、切断部位、プライミング部位、捕獲配列、ヌクレオチド類似体、および標識配列を含むいくつの要素を含んでもよい。
【0098】
好ましい実施態様では、該RCPは第1および第2のライゲーション配列を含む。OLAについてすでに概説したように、ライゲーション配列は標的配列に隣接するドメインと実質的に相補的である。これらのドメインは、直接隣接してもよく(すなわち、第1配列の3’末端と第2配列の5’末端との間に挿入塩基がない)、これらの間に1から100またはそれ以上までの塩基をおいて間接的に隣接してもよい。
【0099】
好ましい実施態様では、RCP群は、ローリングサークル増幅後または増幅中にRCPコンカテマーが切断されて単位複製配列になり得るように、切断部位を含む。いくつかの実施態様では、このことは検出を容易にする。なぜなら単位複製配列は一般により小さく、表面上での好適なハイブリダイゼーション反応速度を示すからである。当業者に認知され得るように、切断部位は、プローブ中の制限酵素部位の使用、リボザイム配列の使用、核酸切断成分の使用または組み込みを通じて、を含むがこれらに限定されるものではない、数々の形態を取り得る。
【0100】
好ましい実施態様では、南京錠プローブは制限酵素部位を含む。制限エンドヌクレアーゼ部位は、典型的にRCAの結果である長いコンカテマーを、表面に結合した捕獲プローブに、もっと効率的にまたは速くハイブリダイズする、より小さな個々の単位に切断することを可能にする。このように、RCAに続いて(またはいくつかの場合では、反応中に)、核酸産物を、適切な制限エンドヌクレアーゼに接触させる。このことは、核酸産物のより小さい断片への切断を引き起こす。該断片は次いで固定された捕獲プローブとハイブリダイズし、検出電極上への産物断片の濃縮を生じる。また、本明細書で概説されるように、これらの断片は2方法のうち1つで検出される。すなわち、標識されたヌクレオチドが複製段階中で組み込まれる(例えば、標識された個々のdNTPまたは標識されたプライマーの使用を通じて、のどちらか)か、またはさらなる標識プローブを加えるかのどちらかである。
【0101】
好ましい実施態様では、制限酵素部位は、その相補鎖形成がRCP中で1度しか生じないように選択される、1本鎖制限酵素部位である。
【0102】
好ましい実施態様では、切断部位は、出典明示により本明細書の一部とするDaubendiek et al., Nature Biotech. 15:273 (1997)に一般的に記載されているリボザイム切断部位である。この実施態様では、触媒RNAをコードするRCP群、NTP群およびRNAポリメラーゼを用いることにより、生じるコンカテマーは、自己切断でき、最終的には単量体の単位複製配列を形成する。
【0103】
好ましい実施態様では、切断はDNA切断物質を用いて成される。例えば、当業者に知られるように、例えば光を用いて、切断を実行できる数々の挿入部分がある。
【0104】
好ましい実施態様では、RCP群は切断部位を含まない。代わりに、RCPの大きさを、表面上で多数の捕獲プローブに「滑らかに」ハイブリダイズするようにデザインする。もしくは、非常に長いコンカテマーが形成されないように反応を進める。
【0105】
好ましい実施態様では、RCP群は、DNAポリメラーゼプライマーが結合できるように、プライミング部位を含む。当該分野で知られるように、多くのDNAポリメラーゼは、核酸の合成を可能にするために、2本鎖核酸と遊離末端を要する。しかし、ある場合、例えばRNAポリメラーゼが用いられる場合では、プライマーは要求されなくてもよい(Daubendiek参照、前出)。同様に、標的鎖の大きさと方向によって、標的配列の遊離末端がプライマーとして働くことが可能である(Baner et al.参照、前出)。
【0106】
ゆえに、好適な実施態様では、南京錠プローブは、RCA反応を開始するための開始部位も含有する。つまり、それぞれの南京錠プローブは、プライマー核酸がハイブリダイズしてポリメラーゼの鋳型を作る配列を含む。プライマーは、環状プローブの任意の位置で見出し得る。好ましい実施態様では、プライマーは、プローブ中の分離した部位に配置される。この実施態様では、それぞれの別個の南京錠プローブ中でプライマーの部位は同一であるが、このことは必要ではない。同一配列のプライマー部位を用いる利点には、複数の異なるハイブリダイゼーション複合体を用いるRCAアッセイを開始するために、ただ1種類のプライマーオリゴヌクレオチドを使用する能力が含まれる。つまり、南京錠プローブは、プローブを設計する標的核酸に唯一ハイブリダイズする。1種類のプライマーがすべての独特なハイブリダイゼーション複合体にハイブリダイズして、ポリメラーゼの開始部位を形成する。次いでRCAは、ハイブリダイゼーション複合体のそれぞれの独特な南京錠プローブの中の同一の遺伝子座から進む。
【0107】
別の実施態様では、プライマー部位は、南京錠プローブの上記のいかなる要素を覆っても、囲んでも、その中に属してもよい。つまり、プライマーを、例えば制限酵素部位もしくは同一の配列と重なって、またはそれらの中に見出し得る。この実施態様では、プライマー核酸を、選択されたプライマー部位の塩基対に対して設計することが必要である。
【0108】
好ましい実施態様では、プライマーは、共有結合により付着したETMを含んでもよい。
【0109】
好ましい実施態様では、RCP群は捕獲配列を含む。本明細書で概説するように、捕獲配列は、捕獲プローブと本明細書で概説するように実質的に相補的である。
【0110】
好ましい実施態様では、RCPは標識配列、すなわち、標識プローブと結合するために用いられ得、標識配列と実質的に相補的な配列を含む。ある実施態様では、同一の標識配列および標識プローブをアレイ上のすべての南京錠プローブに用いることが可能である。もしくは、それぞれの南京錠プローブは、異なる標識配列を有することができる。
【0111】
好ましい実施態様では、RCPは核酸類似体を含む。例えば、単位複製配列中の特異的な場所でETMを取り込まれることを望み得るので(例えば、20−30塩基対長中の8−10本のETMの集まりにおいて、検出ハイブリダイゼーション複合体の最適なシグナル発生と配置をもたらすため)、独特の塩基をRCPに組み込んでもよい。当分野で知られるように、イソシトシンは、イソグアニンとのみ塩基対を形成するヌクレオシド類似体である(出典明示により本明細書の一部とする米国特許第5,681,702号に一般的に記載されている)。RCP中でイソCまたはイソGのどちらかを利用することにより、ETMで標識したデオキシ-イソCまたはデオキシ-イソGをヌクレオチドのプール中に加えることができ、その結果ETMは、先に決定された特異的な位置でETMの組み込みが生じる。
【0112】
好ましい実施態様では、RCP/プライマーのセットは、「過分枝」または「カスケード増幅」と呼ばれることもある、さらなるレベルの増幅をもたらすように設計される。前出のZhang et al. で説明されるように、いくつかの開始配列とプライマーを用いることによって、最初のコンカテマーが、さらなるコンカテマーの鋳型として働き得る。この実施態様では、高い置換活性を有するポリメラーゼが、好んで用いられる。この実施態様では、最初の逆行プライマーが用いられ、次に順行プライマーが使用され、多数のコンカテマーおよび、切断が使われるときには単位複製配列が生成する。
【0113】
ゆえに、本明細書に記載のように、本発明は、RCPを用いる検出方法を提供する。一度RCPのライゲーション配列が標的にハイブリダイズして最初のハイブリダイゼーション複合体を形成すると、OLAについて上述したように、RCPの末端が一緒にライゲーションされる。ポリメラーゼおよびdNTP(または必要ならNTP)と一緒に、必要ならRCPプライマーを加える。
【0114】
ポリメラーゼは、本明細書で概説するようにいずれのポリメラーゼでもあり得るが、好ましくは3'エキソヌクレアーゼ活性(3'exo-)を欠くものである。適するポリメラーゼの例には、DNAポリメラーゼIラージ(クレノー)フラグメント、Phi29 DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼなどが含まれるが、それらに限定されるものではない。さらに、いくつかの実施態様では、1本鎖DNAを複製する(すなわち、2本鎖の部分を形成するプライマーなしで)ポリメラーゼを用いることができる。
【0115】
ゆえに、好ましい実施態様では、OLA/RCAは溶液中で行われ、続いてRCA産物の制限エンドヌクレアーゼ切断を行う。切断された産物は本明細書に記載のように、アレイに適用される。エンドヌクレアーゼ部位の組み込みによって、短く、容易にハイブリダイズできる配列の生成ができるようになる。さらに、それぞれのローリングサークル南京錠プローブ配列中の独特の捕獲配列によって、核酸配列の多様なセットをアレイ上で平行して分析できるようになる。なぜなら、それぞれの配列は、ハイブリダイゼーションの特異性に基づいて解明されるからである。
【0116】
また、これらのコピーは、続いて2方法のうち1つで検出される;すなわち、環状の標的と相補的なETMを含む標識プローブとハイブリダイズさせるか、または増幅反応中にETM標識したヌクレオチドを組み込むことを介する。標識は、本明細書に記載のように検出される。
【0117】
好ましい実施態様では、ポリメラーゼは100コピー以上の環状DNAを作り出す。より好ましい実施態様では、ポリメラーゼは1,000コピー以上の環状DNAを作り出す。最も好ましい実施態様では、ポリメラーゼは鋳型の10,000コピー以上または50,000コピー以上を作り出す。
【0118】
増幅された環状DNA配列は、次いで、本明細書に記載のように、当分野で周知の方法で検出される。検出は、標識プローブとのハイブリダイゼーションによって達成される。プローブは、直接的または間接的に標識される。もしくは、標識されたヌクレオチドが、増幅された環状DNA産物に組み込まれる。ヌクレオチドは、本明細書でさらに記載するように、直接的に、または間接的に標識できる。
【0119】
本明細書に記載のように、RCAは、核酸標的配列の高度に特異的かつ高度に敏感な検出を可能にする中で有用である。特に、該方法は、DNAアレイの多重処理能力を改善し、高価なサンプルまたは標的の調合を排するときに有用である。例として、中間的なPCR増幅の段階を採用するよりも、むしろアレイ上でゲノムDNAを直接分析することにより、実質的な費用の節約が認識され得る。該方法は、ゲノムDNAおよびmRNAを含む他のサンプルを調べる場合に有用である。
【0120】
さらに、RCAは、ローリングサークル増幅産物を固相の形式でプローブにハイブリダイゼーションすることにより容易に検出されるようにする場合に有用である。さらなるRCAの有利な点は、多数の配列を平行して分析するように、多重分析能をもたらすことである。
【0121】
好ましい実施態様では、OLAもしくはRCPシステムは、図10に図示するように、ときには「カフスリンク」配置といわれることのある特定の配置を呈するようにデザインされる。この実施態様では、第一の連結プローブは、捕獲プローブの第一部分にハイブリダイズするであろう配列および標的特異的配列を有する;第二の連結プローブは標的特異的配列、「カフスリンク」配列、およびETMを含むリクルートリンカーを有する。一旦連結が起こり、連結した配列がアレイに加えられると、捕獲プローブの第二部分にハイブリダイズする第一部分およびカフスリンク配列にハイブリダイズする部分を含むカフスリンクプローブが加えられる。それから、カフスリンクプローブはリクルートリンカーそうしてETMを電極の近傍に引き寄せ、良好なシグナリングが提供される。
【0122】
好ましい実施態様では、検出位置における塩基の同一性を決定するためにInvader[登録商標]技法が用いられる。一般的に、Invader[登録商標]技法は構造特異的ヌクレアーゼの使用に依存し、そこでは構造はミスマッチの存在もしくは不在の結果として形成されることができる。これらの構造は、標的配列の二つの標的ドメインに検出位置で隣接してハイブリダイズする二つのプローブ(「インベーダープローブ」および「シグナリングプローブ」)により形成される;インベーダープローブは第一のドメインに、シグナリングプローブは第二のドメインにハイブリダイズする。シグナリングプローブは、検出位置で第一ドメインに同様に相補的で、そうしてインベーダープローブとオーバーラップするところの少なくとも一つのヌクレオチドの部分、および第一ドメインに非相補的である部分を含む。このオーバーラップの存在が、ヌクレアーゼが認識して切断し、非相補的シグナル部分を遊離させるであろう構造を形成する。しかしながら、もしオーバーラップがなければ、シグナリングプローブは検出位置との完全なマッチを包含しないため、この構造が形成されず切断は起こらない。かくして、切断は配列特異的でもある。
【0123】
したがって、本発明は、標的配列の検出位置における塩基の同一性を決定する方法を提供する。この実施態様では、標的配列は、5’から3’に、検出位置中の少なくとも一つのヌクレオチドを含むオーバーラップドメインを含む第一の標的ドメイン、および検出位置に近接する第二の標的ドメインを含む。第一のプローブは標的配列の第一標的ドメインにハイブリダイズする。標的配列の第二標的ドメインにハイブリダイズする第一の部分および標的配列にハイブリダイズしない第二の部分を含む第二のプローブは、第二の標的配列ドメインにハイブリダイズする。もし第二のプローブが検出位置と完全に相補的な塩基を含んでいれば、切断構造が形成される。全て出典明示により本明細書の一部とする米国特許第5,846,717号;第5,614,402号;第5,719,029号;第5,541,311号および第5,843,669号に記載されているような切断酵素を添加すれば、シグナリングプローブから検出配列の切断が起こる。それから、これはアッセイ複合体中の標的配列として用いることができる。
【0124】
上のように、当業者により認識されるであろうように、Invader[登録商標]反応は溶液中で行い得て、複数の検出配列を作成する。それから、これらはここに概述するように検出電極に加え得る。
【0125】
当業者により認識されるであろうように、これらの技法は二本鎖の標的配列の二つの鎖について行い得る。標的配列を変性させ、二つのセットのプローブを加える:標的の一つの鎖に対しては上述した一つのセット、そして標的の他の鎖に対しては別の一つのセット(即ち第三および第四のプライマープローブ核酸)である。好ましい実施態様では、増幅が起こり得るように、第一および第三のプローブがハイブリダイズし、第二および第四のプローブがハイブリダイズするであろう。
【0126】
再度、上に概述したように、OLA反応の検出は一つもしくは両方のプライマーが少なくとも一つのETMを含む場合には直接的に、もしくは付加的なプローブの使用によりサンドイッチアッセイを用いて間接的に行うこともできる;即ち、検出配列は標的配列としての役を果たし、そして検出は、増幅プローブ、捕獲プローブ、捕獲伸長プローブ、標識プローブ、および標識伸長プローブ等を利用し得る。
【0127】
好ましい実施態様では、単一塩基伸長(SBE;ときには「ミニシークエンシング」ともいわれる)を用いて、検出位置における塩基の同一性を決定する。略述すれば、SBEは検出位置の直ぐ隣りの標的核酸にハイブリダイズする伸長プライマーを利用する技法である。ポリメラーゼ(一般的にDNAポリメラーゼ)を使用して、ここに記述するように、ETMで標識されたヌクレオチドアナログでプライマーの3’末端を伸長する。ヌクレオチドは、それが標的鎖中の検出位置における塩基に相補的であるならば、伸長する核酸中に単に取り込まれる。このヌクレオチドはそれ以上の伸長が起こり得ないように誘導体化されているので、一つのヌクレオチドだけが追加される。一旦標識ヌクレオチドが追加されれば、ETMの検出はここに概述するように進行する。
【0128】
当業者により認識されるであろうように、検出位置における塩基の決定は幾つかの方式で行うことができる。好ましい実施態様では、ここに一般的に概述するように、反応は四つ全てのヌクレオチドを用いて行われ、それぞれが、例えば異なる酸化還元電位を持つETMのような異なる標識を有する。これに代えて、上に概述したように四つの電極パッド、もしくは順次的反応を用いることにより単一の標識が用いられる;例えば、dATPをアッセイ複合体に加え、シグナルの発生を評価することができる;dATPを除去してdTTPを加えることができる、等等である。
【0129】
反応は、標的配列(即ちアレイ)を含むアッセイ複合体を第一のヌクレオチドアナログを含む溶液に導入することによって開始される。この文脈における「ヌクレオチドアナログ」とは鎖伸長を停止するようにさらに誘導体化されたデオキシヌクレオシド三リン酸(デオキシヌクレオチドもしくはdNTP、即ちdATP、dTTP、dCTPおよびdGTPとも呼ばれる)を意味する。ヌクレオチドはデオキシヌクレオチドのような天然物もしくは非天然物でもよい。好ましい実施態様はジデオキシ−三リン酸ヌクレオチド(ddNTP)を利用する。一般的に、ddATP、ddCTP、ddGTPおよびddTTPを含むヌクレオチドのセットが用いられる。
【0130】
加えて、当業者により認識されるであろうように、本発明の単一塩基伸長反応は修飾した塩基を伸長する核酸の鎖へ的確に取り込むことを可能にする。かくして、いかなる数の修飾したヌクレオチドでもいかなる数の理由のためにも取り込まれ得るが、これらは、構造‐機能相関(例えば、DNA:DNAもしくはDNA:タンパク質相互作用)の探求、核酸の切断、核酸のクロスリンキング、ミスマッチの挿入、等を包含する。
【0131】
第一のヌクレオチドに加えて、溶液はまた伸長酵素、一般的にはDNAポリメラーゼを含む。適切なDNAポリメラーゼとしてはDNAポリメラーゼIのクレノウ断片、SEQUENASE1.0およびSEQUENASE2.0(U.S. Biochemical)、T5 DNAポリメラーゼおよびPhi29 DNAポリメラーゼが挙げられるが、これらに限定されるものではない。もしNTPが伸長プライマーに隣接するところの標的配列の検出位置の塩基と相補的ならば、伸長酵素はそれを調査位置で伸長プライマーに加えるであろう。かくして、伸長プライマーが修飾され即ち伸長されて修飾したプライマーを形成するが、これはここではときどき「新しく合成された鎖」といわれる。所望により、増幅が起こり複数の修飾したプライマーが生成するように反応温度を調整(サイクル)することができる。
【0132】
当業者により認識されるであろうように、SBEシステムの配置は幾つかの形態を取ることができる。LCR反応については、反応を溶液中で行い、それから、塩基特異的ETM標識を持つ新しく合成された鎖を検出することができる。例えば、それらの鎖は伸長プライマーに相補的である捕獲プローブに直接的にハイブリダイズさせ、それから、ここに記述するように「メカニズム-1」もしくは「メカニズム-2」のシステムのいずれかを用いてETMを検出することができる。
【0133】
これに代えて、標的配列を捕獲し、それからSBE反応を行わせることにより反応を表面上で行うこともできる。同様に、捕獲プローブ自身をその末端が検出位置に直接的に隣接した伸長プローブとして用いることもできる。標識配列およびSBE試薬を添加すれば、ETMを含む修飾したプライマーが形成され、それから検出される。
【0134】
好ましい実施態様では、検出位置における塩基の検出に用いる方法はアレリックPCRであり、ここでは「aPCR」といわれる。出典明示により本明細書の一部とするNewton et al., Nucl. Acid Res. 17: 2503 (1989)に記載されているように、用いられるDNAポリメラーゼが3’−エキソヌクレアーゼプルーフリーディング活性を欠如することを前提にすると、アレリックPCRは、もし末端の3’−ヌクレオチドがミスマッチするとPCR反応が良く進行しないという事実に基づいて、単一塩基の識別を可能にする。したがって、塩基の同定はその3’末端に読み出し位置を有するアレリックPCRプライマー(ここではaPCRプライマーともいわれる)を用いて進行する。かくして、標的配列はその5’末端に検出位置を含む第一のドメインを含む。
【0135】
一般的に、aPCRは以下のように略述される。一般的に温度を上昇させることにより、二本鎖の標的核酸を変性させ、それから過剰のaPCRプライマーの存在下に冷却し、それから第一の標的鎖にハイブリダイズする。もしaPCRプライマーの読み出し位置が標的配列の検出位置と正確に塩基対を形成すれば、DNAポリメラーゼ(再度、3‘−エキソヌクレアーゼ活性を欠くもの)がそれから作用して、プライマーをdNTPで伸長させ、その結果ハイブリダイゼーション複合体を形成する新しい鎖が合成される。それから、試料を再び加熱して、ハイブリダイゼーション複合体を解離させ、プロセスを繰り返す。相補的標的鎖に対する第二のPCRプライマーを用いることにより、迅速かつ指数関数的な増幅が起こる。かくして、aPCRのステップは変性、アニーリングおよび伸長である。aPCRの詳細は周知であり、TaqIポリメラーゼのような熱安定性ポリメラーゼの使用および熱サイクリングを包含する。
【0136】
したがって、aPCR反応は少なくとも一つのaPCRプライマー、ポリメラーゼ、およびdNTPのセットを必要とする。ここに概述するように、プライマーは標識を含んでいてもよく、またはdNTPの一つもしくはそれ以上が標識を含んでいてもよい。
【0137】
好ましい実施態様では、この発明は固相支持体上での核酸のアッセイのための新規な方法および組成物を提供する。理論に拘束されることなしに、核酸が表面のプローブにハイブリダイズするときには、表面における相対的に高い陰性電荷が熱の導入と類似の「不安定化環境」を提供し、それは過剰の完全に相補的なプローブの存在下で完全および不完全相補性の識別を可能にするように見える。即ち、第一の捕獲プローブが標的配列に完全にマッチし、第二の捕獲プローブが調査位置に一つの塩基変化を有しているときには、ミスマッチのTm以下の温度で両者ともハイブリッドを形成するであろう。しかしながら、第二の捕獲プローブと調査位置でマッチする過剰のプローブ(ここでは「コンペティマー」と呼称する)を加えると、コンペティマーの結合を優先にしてミスマッチで結合した標的配列が追い払われる。要するに、これは不完全な相補性を有する配列の結合の減少である;これは非特異的結合の減少であると考えることができる。これは溶液に基づくシステムでは起こらないようである;再度、理論に拘束されることなしに、これは不安定化環境の関数としての「解離速度」の差の結果であるように見える。実施例に示されるように、これはミスマッチ核酸の表面への結合を有意に減少させる。
【0138】
一般的アイデアを図3に示す。図3Aは二つの捕獲プローブを有する表面を図示するが、これらのプローブはそれぞれ調査位置において単一塩基だけ異なり、その一つは標的配列と比較して「完全」であり、もう一つはミスマッチを包含する。コンペティマーの不在下では、標的は両方の捕獲プローブと結合する。コンペティマーを加えると、コンペティマーはミスマッチを包含する標的を追い払って完全なハイブリッドだけをそのまま残す。当業者により認識されるであろうように、これは種々の方式で配置することができる。図3Bに示すように、捕獲伸長を用いることもできる。これに代えて、図3Cに示すように、検出位置を異なる標識プローブを用いて調査することもできる。当業者により認識されるであろうように、他の配置(例えば増幅プローブ、標識伸長などの使用等)もまた可能である。重要なことは、コンペティマーを検出位置を含む標的配列の領域に指向させることである。
【0139】
したがって、本発明は複数のアレイ部位を持つ基板を含む組成物を提供する。ここでは、「基板」もしくは「固相支持体」または文法的同等語句は核酸の結合もしくは会合に適切な分離した個々のサイトを包含するように修飾され得るところのいずれの物質を意味する。適当な基板としては、金のような金属基板、以下に規定するような電極、ガラスおよび修飾したもしくは機能化したガラス、プラスティック(アクリル、ポリスチレンならびにスチレンおよび他の材料の共重合体、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、テフロン等を包含する)、多糖類、ナイロンもしくはニトロセルローズ、樹脂、シリカもしくはシリコンおよび修飾したシリコンを包含するシリカをベースとする材料、炭素、金属、無機ガラス、ならびに種々の他のポリマー類が挙げられる。
【0140】
基板はアレイ部位を包含する。ここでは、「アレイ部位」もしくは「パッド」もしくは「サイト」とは共有的に結合した核酸プローブを含む基板上の部位を意味する。
【0141】
組成物は更に複数のコンペティマーを含む。ここでは、「コンペティマー」とは特異性がミスマッチより安定であることが望まれている核酸と実質的に相補的な核酸を意味する。ここに概述するように、これは多数の形態を取り得る。コンペティマーはその標的と実質的に相補的でなければならない。ここでは、「実質的に相補的」とはコンペティマーが正常の反応条件下でハイブリダイズするのに十分なだけ相補的であることを意味する。好ましい実施態様では、コンペティマーはその標的に完全に相補的である。しかしながら、異なる標的配列にどれ程近いかに依存して、異なるレベルの相補性を用いてもよい。例えば、SNP分析では、標的配列は検出位置以外は一般的に同一であり、そうしてコンペティマーを使用するためにはそれは完全に相補的でなければならない。しかしながら、関連のない標的の場合には、コンペティマーは置き換えられる核酸より高い二本鎖の安定性を有していることだけが重要である。したがって、この実施態様では、それらの標的に完全な相補性を示さないコンペティマーを利用することが可能である。
【0142】
好ましい実施態様では、図3Aおよび図3Bに図示するように、コンペティマーは捕獲プローブもしくは捕獲伸長プローブの一部分と相補的である。即ち、好ましい実施態様では、標的配列が捕獲プローブに直接的にハイブリダイズするときには、コンペティマーは捕獲プローブに相補的である。しかしながら、もし捕獲伸長プローブをここに概述するように用いるならば、捕獲伸長プローブは標的配列にハイブリダイズする第一部分と捕獲プローブにハイブリダイズする第二部分を含む。この場合には、コンペティマーは捕獲プローブの第一部分とハイブリダイズする。
【0143】
好ましい実施態様では、図3Cに図示するように、コンペティマーは標的配列の標識プローブ結合領域(ここでは、ときどき標識プローブ認識配列といわれる)に相補的である。
【0144】
この発明のコンペティマーはアッセイ中に何時加えてもよい。好ましい実施態様では、コンペティマーはアッセイ複合体の形成後に加えられ、そうして不完全な結合を「追い払う」役目を果たす。これは洗浄のステップがあってもなくても行い得る。これに代えて、コンペティマーはアッセイ複合体の形成以前もしくは形成中に加えることもできる。この実施態様では、アレイおよび検出感度に依存して、コンペティマーも標的と拮抗して結合し、そうして表面に結合する標的の量が減少し得ることに留意することが重要である。
【0145】
上の組成物および方法の全ては、標的核酸内で一つもしくはそれ以上の検出位置における塩基の確認の決定に向けられている。本発明の検出システムは、標的アナライトの結合の結果としてアッセイ複合体中への電子伝達部分(ETM)の取り込みに基づく。
【0146】
一般に、基本的な検出メカニズムは2つある。好適な実施態様において、ETMの検出は、2本鎖核酸の積み重なったπ−軌道を経る電子移動に基づいている。この基本的メカニズムはUS特許番号5,591,578、5,770,369、5,705,348およびPCT/US97/20014に記載されているが、これらのすべてを出典明示により本明細書の一部とし、「メカニズム−1」と称する。簡単に説明すると、以前の研究では、電子の移動は2本鎖核酸の積み重なったπ−軌道を経るときは急速に進むが、一本鎖核酸を経るときは有意にさらにゆっくりと進む。したがって、このことがアッセイの基礎として役割を果たしている。このように、導電性オリゴマーを介して検出電極に付着する核酸にETMを(下記のように、ハイブリダイゼーション指標の使用を介して、鎖の一方には共有結合により、またはハイブリッド形成複合体には非共有結合により)付加することにより、核酸と導電性オリゴマーを介してETMと電極間の電子移動を検出することができる。
【0147】
あるいは、ETMは必ずしも核酸を介する電子移動に限って検出できるものではなく、むしろSAMを含む電極表面で直接検出することができる;即ち、ETM由来の電子は、シグナルを生成するために積み重なったπ軌道によって移動する必要はない。上記のように、この実施態様では、検出電極は、電極をサンプル中のレドックス的に活性な種から隔てるのに役立つ自己集合単層(SAM)を含むのが好ましい。この実施態様では、わずかな「欠損」(本明細書中では時に「微小管路」、「ナノ管路」または「電気管路」と表わされる)を含むように作られたSAM表面上のETMの存在は、直接検出できる。この基本概念を本明細書では「メカニズム−2」と称する。本質的に、電気管路は、特定のETMが表面に近づくのを可能にする。理論によって制限を受けないが、電気管路の配置は、選択されるETMに部分的に依存することに留意すべきである。例えば、比較的疎水性のETMでは、親水性または荷電のあるETMを効果的に排除する疎水性電気管路形成種を使用できる。同様に、より親水性または荷電のある種をSAM中で使用することは、疎水性ETMを排除するのに役立ち得る。
【0148】
これらの欠損は、検出電極とサンプルの構成要素の直接的な接触を可能にする「孔」とは区別されることに留意すべきである。後により詳しく概説するように、電気管路は、いくつかの一般的方法で生成できる。これらの方法には、PC回路板で用いられる金電極のような粗い電極表面を使用すること、または単層中に少なくとも2種の異なる種を含有し(すなわち、「混成単層」の使用)、それらの種の少なくとも1つは電気管路形成種(EFS)であることが含まれるが、これらに限定されるものではない。ゆえに、標的分析物を結合する際に、ETMを含む溶解性の結合リガンドが表面にもたらされ、おそらく電極への「電気管路」を通じて、ETMの検出が進行できる。本質的には、欠損を含むSAMの役割は、溶液の構成物から電極を隔て、電極への非特異的結合の量を減らす利点を提供したまま、ETMを電極の電気的表面に接触させることである。見方を変えれば、結合リガンドの役割は、ETMが直接検出される場である表面へETMを補充するための特異性をもたらすことである。
【0149】
即ち、いずれの態様においても、より詳細に以下に概説するように、アッセイ複合体はETMを含むように形成させ、これは検出電極を用いて検出する。
【0150】
従って、本発明は核酸の検出において有用な方法および組成物を提供する。当業者には承認されるであろうが、本発明の組成物は、広範に多種の形状をとり得る。以下に概説したように、本発明の好ましいシステムは以下のように行い得る。標的核酸配列は、単層を含む電極と結合し(ハイブリダイゼーションによって)、一般的には導電性オリゴマーを包含する。この結合は、表面上の捕獲プローブに直接もしくは捕獲伸長プローブを用いて間接的に結合し得る。一態様において、標的配列はそれ自体ETMを包含する。もしくは、標識プローブを添加し、アッセイ複合体を形成する。標識プローブの結合は、アッセイ複合体を形成する所望の核酸の全てと、直接的(即ち、標的配列にハイブリダイズする増幅プローブとのハイブリダイゼーション)であってもよく、間接的(即ち、標的配列にハイブリダイズする増幅プローブとのハイブリダイゼーション)であってもよい。ETM標識プローブの第一部分の標識プローブの第二部分のハイブリダイゼーションの結果から、ETMを含有する”リクルートリンカー”が電極上のSAM表面に空間的に近接するようになり、そのため、ETMの存在が電気的に検出できる。
【0151】
この系はアレイ方式での特定用途が明らかになっている;すなわち、アドレス参照可能な検出電極のマトリックスがある場合である(本明細書では“パッド”、“アドレス”または“ミクロ領域”と一般的にいう)。本明細書において、“アレイ”とは複数の捕獲リガンドがアレイ方式にあることを意味する;アレイのサイズはアレイの構成物および最終用途に左右される。約2つの異なる捕獲リガンドから数千ものリガンドを含むアレイを作製し得る。一般に、該アレイは電極のサイズ並びにアレイの最終用途によって、2個から100,000以上にも及んで構成される。好適な範囲は約2個から約10,000個であり、好ましくは約5個から約1000個であり、特に好ましいのは約10個ないし約100個である。一部の態様において、本発明の構成物はアレイ方式でない場合もある;すなわち、一部の態様では単一の捕獲リガンドを含んでなる構成物が同様に作製し得る。さらに、一部のアレイにおいて、異なる構成物または同一の構成物を含む複数の基板を用い得る。このように、例えば、大型のアレイは複数の小型基板から構成されてもよい。
【0152】
即ち、好ましい態様において、構成物は電極を含む。
本明細書での「電極」は、電子装置に接続したとき、電流または電位を感知し、それをシグナルに変換し得る構成物を意味する。あるいは、電極を、電位を電子に適用し得る、および/または、溶液中の種へまたは種から電子を移し得る構成物として定義することができる。このように、電極とは本明細書に記載のETMである。好適な電極は技術上既知であり、これらに限定されるものではないが、ある種の金属およびその酸化物、例えば、金、白金、パラジウム、シリコン、アルミニウム;金属酸化物電極、例えば、酸化白金、酸化チタン、酸化スズ、酸化スズインジウム、酸化パラジウム、酸化けい素、酸化アルミニウム、酸化モリブデン(Mo2O6)、酸化タングステン(WO3)および酸化ルテニウム;および炭素(ガラス状電極、黒鉛およびカーボンペースト)などを包含する。好適な電極は金、シリコン、白金、炭素および金属酸化物電極などであり、金が特に好ましい。
【0153】
本明細書に記載の電極は平らな表面として図示しているが、これは電極の可能な一形状であって、図式化を目的とするのみのものである。電極の形状は使用される検出法により変わる。例えば、平面状の電極は光検出法に好適であり、あるいは合成および検出のために処理可能な位置を必要として核酸のアレイを調製する場合に好適である。あるいは、導電性オリゴマーと内部表面に結合した核酸を含むSAMの場合には、単一プローブ分析のために、電極をチューブの形状とすることができる。これは少容量のサンプルに露出すべき核酸の表面積を最大とするのを可能にする。
【0154】
好ましい実施態様において、検出電極は基板上に形成する。さらに、本明細書における検討は一般的に金電極の形成に向けられているが、当業者も認めるように、他の電極も同様に使用し得る。基板は、当業者も認めるように、多様な材料を含むが、プリント回路基板(PCB)材料がとりわけ好ましい。このように、一般的に、適切な基板はこれらに限定されるものではないが、ファイバーグラス、テフロン、セラミック、ガラス、シリコン、雲母、プラスティック(アクリル、ポリスチレン、スチレンと他の物質とのコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、テフロン(商標)、およびその誘導体など)、ゲテック(GETEK)(プロピレンオキシドとファイバーグラスの混合物)などである。
【0155】
一般に、好適な材料はプリント回路基板材料である。プリント回路基板材料は電導層で被覆されている絶縁基板を含む材料であり、リトグラフィー技法、特に露光リトグラフィーにより処理加工して、電極と相互接続体の様式を形成する(場合により技術上、相互接続またはリード線という)。絶縁基板はすべてというわけではないが、一般にポリマーである。技術上知られているように、1層または複数層を使用し、「二次元」基板(例えば、すべての電極および相互接続体が同一平面にある)または「三次元」基板(この場合、電極は1方の表面にあり、相互接続体が基板を貫通して他側へ出てもよい)を作製する。三次元系は多くの場合、穿孔またはエッチングを使用し、次いで、銅などの金属で電気メッキし、「貫通基板」相互接続を作製するようにする。回路基板材料はしばしば基板にすでに付着した銅箔などの箔を備えており、必要により(例えば、相互接続のために)、例えば、電気メッキによりさらに銅が加えられる。銅の表面は、次いで、粘着層の付着を可能とするために、例えば、エッチングによりざらつかせる必要がある。
【0156】
一部の実施態様において、ガラスは基板として好ましくない場合がある。
【0157】
従って、好適な実施態様において、本発明は複数の電極、好ましくは金電極を含む基板を含むバイオチップ(場合により本明細書では「チップ」という)を提供する。電極数はアレイについて概説したとおりとする。各電極は、好ましくは、本明細書に概説したように自己集合した単層を含む。好適な実施態様において、単層形成種の1つは本明細書に概説したように捕獲リガンドを含む。さらに、各電極は相互接続をもち、それが一端で電極に付着し、最終的に電極を制御し得る装置に付着している。すなわち、各電極は独立して行い得る。
【0158】
該基板は、検出電極に一定容量のサンプルを暴露する検出チャンバーを含むより大きな装置の部分であってもよい。一般に、検出チャンバーは約1nLないし1mlの範囲であり、好ましくは約10μLないし500μLである。当業者が認めるように、実験条件およびアッセイによっては、より少量またはより大量で用いてもよい。
【0159】
一部の実施態様において、検出チャンバーと電極は電極構成要素(AC/DC電圧源、電流計、プロセッサ、読み出しディスプレー、温度制御器、光源など)を含む装置内に配設し得るカートリッジの部分である。この実施態様において、各電極からの相互接続は、装置内にカートリッジを挿入することにより、電極と電子組成間の接続が確立するような位置に配置する。
【0160】
回路基板材料(または他の基板)上の検出電極は一般に多様な方法で調製される。一般に、高純度の金を用い、真空蒸着法(スパッタリングおよび蒸発)または溶液析出(電気メッキまたは無電解方法)により被覆してもよい。電気メッキを実施する場合には、基板は先ず電導性物質を含まねばならない;ファイバーグラスの回路基板は多くの場合銅箔を備えている。多くの場合、基板によっては、良好な機械的安定性を保証するために、基板と金の間に粘着層が用いられる。このように、好適な実施態様では、粘着金属、例えば、クロム、チタン、チタン/タングステン、タンタル、ニッケルまたはパラジウムなどの析出層を利用するが、これらの金属は上記金同様に析出させ得る。電気メッキ金属(粘着金属または電極金属)を使用する場合、粒状精製添加物(多くの場合、業界では光沢剤という)を任意に加えて、表面析出性を変化させる。好適な光沢剤は有機物および無機物の混合物であり、コバルトとニッケルが好ましい。
【0161】
一般に、粘着層は約100Åから約25ミクロン(1,000マイクロインチ)の厚さである。もし粘着金属が電気化学的に活性であるならば、電極金属は「染み出し」を防止する厚さで被覆しなければならない;もし粘着金属が電気化学的に不活性であるならば、電極金属は薄くてもよい。一般に、電極金属(好ましくは金)は約500Åから約5ミクロン(200マイクロインチ)の範囲の厚さで、好ましくは約30マイクロインチないし約50マイクロインチの厚さで析出させる。一般には、金を析出させて、直径約5ミクロンないし約5mmの範囲、好ましくは約100ないし250ミクロンのサイズの電極とする。このようにして形成される検出電極は、その後、好ましくは清浄にし、以下に検討するようにSAMを付加する。
【0162】
このように、本発明は複数の金電極を含む基板の作製法を提供する。この方法は先ず基板上に、ニッケルまたはパラジウムなどの粘着金属を(選択肢として光沢剤と共に)被覆することを含む。電気メッキが好ましい。次いで、電極金属、好ましくは金を粘着金属上に(好ましくは再度電気メッキにより)被覆する。次いで、電極とそれに繋がる相互接続を含む装置の型をリトグラフ技法、特に技術上既知の露光リトグラフィー技法、および湿式化学エッチングにより作製する。多くの場合、非電導性化学抵抗性絶縁材料、例えば、蝋マスクまたはプラスティックを露光リトグラフィー技法により敷き、露光した電極とリード線への接続点のみを残す;リード線はそれ自体一般に被覆されている。
【0163】
本方法では、下記のように、SAMの付加が続く。好適な実施態様においては、点滴析出技法を用い、必要な化学物質、すなわち、単層形成種などを付加し、その一つは、好ましくは捕獲リガンド含有種である。点滴析出技法は「スポット」アレイ作製について周知である。これは各電極に異なる構成物を付加するために、すなわち、異なる捕獲リガンドを含む配列を作製するために実施する。あるいは、SAM種は各電極について同一であってもよく、この場合は点滴析出技法またはその溶液に基板全体もしくは基板表面を浸漬する方法により実施してもよい。
【0164】
ゆえに、好適な実施態様では、電極は電気管路形成種(EFS)を有する単層を含む。本明細書に概説するように、検体が電極から少し離れているとき、標的被検体結合(例えば、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション)の有効性は増加し得る。同様に、単層が存在すると、生体分子(標的被検体を含む)の電極への非特定結合は、一般に減少する。このように、単層は電極表面から離れている被検体の維持を容易にする。さらに、単層は荷電種を電極表面から離れているようにするのに役立つ。このように、この層は、溶媒内で各電極と溶媒内で各ETM間または電極と荷電種間の電気的接触を防止するのに役立つ。かかる接触は、直接の「短絡」またはサンプル内に存在し得る可能性のある荷電種を介した間接の短絡となり得る。したがって、この単層は、好ましくは電極表面上の均一層にきっちりと詰込み、「孔」の存在が最少になるようにする。単層はこのように電極への溶媒接近をブロックする物理的障壁として作用する。
【0165】
本明細書での「単層」または「自己集合単層」または「SAM」とは、表面上に自動的に化学吸着した分子の比較的秩序だった集合体を意味し、そこでは分子が互いに略平行に方向づけられており、かつ、表面に対し大まかに垂直に方向づけられている。分子それぞれは官能基を含み、それが表面に接着し、また、一部が単層中の隣接する分子と相互作用し、比較的秩序だった配列を形成する。「まじりあった」単層は不均質の単層からなるが、すなわち、そこでは少なくとも2つの異なる分子が単層を作り上げている。
【0166】
一般に、本発明のSAMは、用いる電極表面とシステムに応じて、多数の方法で生成させることができ、かつ多数の異なる構成要素を含み得る。「メカニズム−1」の実施態様では、好適な実施態様は2つの単層形成種、すなわち1つの単層形成種(絶縁体および導電性オリゴマーを含む)および捕獲結合リガンドを含む1つの導電性オリゴマー種、を利用するが、当業者には了知されるように、別の単層形成種をも同様に含ませ得る。「メカニズム−2」システムでは、SAMの構成は検出電極表面に依存する。一般に、2つの基本的「メカニズム−2」システムを記述する。すなわち、金ボール電極のような「滑らかな」表面を含む検出電極、およびPC回路板についての商業的製法を用いて作成される電極のような「粗い」表面を含む電極である。理論によって制限されないが、一般に、不完全な表面(すなわち、「粗い」表面)上に作成された単層は、EFSの非存在下でも、十分な電気管路を有する単層を自然に形成するように思われる。これは、おそらく粗い表面上での均一な単層の形成は困難だという事実に起因する。しかし、均一な表面は、より均一な単層の形成をもたらすので、「より滑らかな」表面は、電気管路を生成するために、十分な数のEFS含有を要する。さらに、理論によって制限されないが、単層の均一性を乱す種の含有(例えば硬質な分子をより軟質な分子の背景に含ませることによる)は、電気管路の成因となる。ゆえに、「滑らかな」表面は、3つの構成要素を含む単層を含む。すなわち、絶縁体種、EFS、および捕獲リガンドを含む種、である。ただし、ある環境(例えば捕獲リガンドが高濃度で含まれる場合)では、捕獲リガンド種はEFSとして働き得る。この文脈での「滑らかさ」は、物理的には計測されず、むしろEFSが含まれる場合に計測されるシグナルの増加の関数として計測される。つまり、単層形成種に包まれた検出電極からのシグナルが、EFSを含む単層形成種に包まれた検出電極からのシグナルと比較される。増加は、該表面が相対的に滑らかであることを示す。なぜなら、EFSの含有はETMの電極への接近を容易にするのに役立ったからである。ここでの議論は主に金電極およびチオール含有単層形成種に向けられたものであるが、他のタイプの電極および単層形成種を用い得るということにも留意すべきである。
【0167】
メカニズム−2システムの「電気管路」は、サンプルの構成要素が電極の表面と直接触れる結果をもたらさないことに留意すべきである。つまり、電気管路は、電極への物理的接近を可能にする大きい穴または孔ではない。むしろ、理論によって制限されないが、電気管路は、あるタイプのETM群、特に疎水性ETM群が、単層中に十分貫通し、検出されるようになるのを可能にすると思われる。しかし、いくつかの親水性の種を含む他のタイプ群のレドックス的に活性な種は、電気管路が存在しても単層を貫通しない。ゆえに、一般に、サンプル中に存在し得るレドックス的に活性な種は、電気管路による実質的なシグナルをもたらさない。的確なシステムはSAMの構成とETMの選択によって変化するが、一般的に、非特異的結合を減らし、ETM検出のための十分な電気管路も有する適切なSAMの試験は、SAMにフェロセンまたはフェロシアニド;前者はシグナルを発すべきであり、後者は発すべきではない、を加えることである。
【0168】
したがって、メカニズム−1のシステムでは、該単層は、下記に詳しく概説するように、捕獲結合リガンドを含む導電性オリゴマーを含む第1の種、および絶縁体または導電性オリゴマーのどちらかまたは両者を含む単層形成種を含む第2の種を含有する。
【0169】
好適な実施態様では、該単層は、電気管路形成種を含む。本明細書中では、「電気管路形成種」または「EFS」は、表面でのETMの検出を可能にする、単層中に十分な電気管路を生成させる能力のある分子、一般的にはアルキル基のような絶縁体の分子、を意味する。一般に、EFSは以下の特質を1またはそれ以上有する。すなわち、例えばアルキル鎖に匹敵するような、比較的硬質な分子である;他の単層形成種と結晶構造的に異なる形態で電極表面に付着する(例えば、チオール基を有する金表面に付着したアルキル鎖は大体45°の角度で付着すると考えられ、チオールを介して金に付着したフェニル-アセチレン鎖は90°の角度で下がると考えられる);例えばアルキル基のような分岐基の含有、またはポリエチレングリコール単体のような高度に柔軟な種の含有により、きっちりと詰まった単層の形成を立体配置的に妨害するか阻害する構造を有する;または電気管路を形成するように活性化される能力がある(例えば、光活性化によって選択的に表面から除外されて電気管路を残す、光活性化し得る種)。
【0170】
好適なEFSは下記に定義される導電性オリゴマー、およびフェニルアセチレンポリエチレングリコール種、ならびに図9および1999年7月27日に提出されたU.S.S.Nの図面に示したような不斉SAM形成ジスルフィド種を含む。しかし、いくつかの実施態様では、EFSは導電性オリゴマーではない。
【0171】
好適な実施態様において、単層は導電性オリゴマーを含む。本明細書において「導電性オリゴマー」は実質的に導電性オリゴマーを意味し、好ましくは線状であり、そのある実施態様では文献上「分子線」という。本明細書において「実質的に導電性」とは該オリゴマーが100Hzで電子を移動し得ることを意味する。一般に、導電性オリゴマーは、導電性オリゴマーの単量体単位間のように、実質的に重なり合うπ−軌道、すなわち、共役π−軌道を有するが、導電性オリゴマーは1つ以上のシグマ(σ)結合をも含んでいる。さらに、導電性オリゴマーは会合したETMへの電子の注入またはETMからの受容能力によって機能的に定義することもできる。さらに、導電性オリゴマーは本明細書に定義した絶縁体よりもより導電性である。さらに、本発明の導電性オリゴマーは電気活性ポリマーとは区別すべきもので、これはそれ自体で電子を供与または受容できるものである。
【0172】
好適な実施態様において、導電性オリゴマーは約10-6ないし104Ω-1cm-1の導電性Sを有し、好ましくは約10-5ないし103Ω-1cm-1であって、これらのS値は約20Åないし約200Åの範囲の分子から計算される。以下に記載するように、絶縁体は約10-7Ω-1cm-1以下の導電性S、好ましくは10-8Ω-1cm-1より低い値を有する。一般的には、Gardner et al., Sensors and Actuators A51 (1995) 57-66 (参照により本明細書に取込む) を参照されたい。
【0173】
導電性オリゴマーの所望の性質は、高い導電性、本発明の構成物の合成と使用のために有機溶媒および/または水への十分な溶解性、および反応に対する好適な化学的抵抗などであるが、該反応が起こるのは、i)結合リガンド合成の際(すなわち核酸合成であり、本発明の構成物合成に際し、導電性オリゴマーを含むヌクレオシドを核酸シンセサイザーに加えることができる)、ii)導電性オリゴマーが電極に付着する際、またはiii)結合アッセイの際、である。さらに、自己集合単層の形成を促進する導電性オリゴマーが好ましい。
【0174】
本発明のオリゴマーは、本明細書に記載のように、少なくとも2つの単量体サブユニットを含む。下記に詳しく説明するが、オリゴマーには、ホモおよびヘテロオリゴマーがあり、ポリマーも含む。
【0175】
好ましい実施態様では、導電性オリゴマーは、構造1に示した構造を持つ:
構造1
【化1】
当業者には理解されるとおり、ここに示した構造は全て、更なる原子または構造を有し得る。即ち、構造1の導電性オリゴマーは、電極、遷移金属錯体、有機ETM、およびメタロセンなどのETMに、および核酸などの結合リガンドに、またはこれら数種に結合させることができる。特記しない限り、ここに示した導電性オリゴマーは、その左側で電極に結合させる。つまり、構造1に記載のように、左側の「Y」を本明細書に記載の電極につなげる。導電性オリゴマーを結合リガンドに結合させるとき、右側の「Y」は、存在するならば、直接的にまたは本発明に記載のリンカーを用いて、核酸などの結合リガンドに結合させる。
【0176】
本実施態様では、Yは芳香族基であり、nは1から50の整数であり、gは1または0のいずれかであり、eは0から10の整数であり、mは0または1である。gが1のとき、B−Dは隣接した複数結合と共役し得る結合(本明細書中で共役結合とよぶ)を含有する基であり、好ましくは、アセチレン、アルケン、置換アルケン、アミド、アゾ、−C=N−(−N=C−、−CR=N−および−N=CR−を含む)、−Si=Si−および−Si=C−(−C=Si−、−Si=CR−および−CR=Si−を含む)から選択される。gが0のとき、eは好ましくは1であり、Dは好ましくはカルボニルまたはヘテロ原子部であり、このヘテロ原子は、酸素、硫黄、窒素、ケイ素またはリンから選択される。そのため、適切なヘテロ原子部には、−NHおよび−NR、式中、Rは本明細書に定義のとおりである;置換硫黄;スルホニル(−SO2−)スルホキシド(−SO−);酸化ホスフィン(−PO−および−RPO−);およびチオホスフィン(−PS−および−RPS−)があるが、これらに限定されない。しかしながら、下記に概略説明するとおり、導電性オリゴマーを金電極に結合させるような場合、硫黄誘導体は好ましくない。
【0177】
「芳香族基」またはその均等物とは、本書では、一般に5から14の炭素原子を含む芳香族単環式または多環式炭化水素部(より大きい多環式環構造を作ることもできるが)およびそれらの炭素環式ケトンまたはチオケトン誘導体で、その遊離の原子価を持つ炭素原子が芳香族環の一員であるものを意味する。芳香族環には、アリーレン基および2つ以上の原子を除いた芳香族基がある。本願の目的には、芳香族は複素環を含む。「複素環」または「ヘテロアリール」とは、1から5個の指定炭素原子を、窒素、酸素、硫黄、リン、ホウ素およびケイ素から選択されるヘテロ原子で置換した、そしてその遊離の原子価を持つ原子が芳香族環の一員である芳香族基、およびそれらの複素環式ケトンおよびチオケトン誘導体を意味する。従って、複素環には、チエニル、フリル、ピロリル、ピリミジニル、オキサリル、インドリル、プリニル、キノリル、イソキノリル、チアゾリル、イミドジル等がある。
【0178】
重要なのは、導電性オリゴマーのY芳香族基が異なっていてもよいこと、即ち、導電性オリゴマーがヘテロオリゴマーであり得ることである。つまり、導電性オリゴマーは、単一型のY基または複数型のY基のオリゴマーを含むことができる。
【0179】
芳香族基は、本書中で一般にRで表す置換基で置換できる。R基は、必要に応じて加え、導電性オリゴマーのパッキングに影響を及ぼすことができる、即ち、R基を用いて単層におけるオリゴマーの会合を変化させることができる。R基を加えて、1)オリゴマーまたはオリゴマーを含む組成物の溶解度を変える;2)システムの共役または電子化学電位を変える;および3)単層表面の電荷または特性を変えることもできる。
【0180】
好ましい実施態様では、導電性オリゴマーが3つのサブユニットより大きいとき、R基は、溶液合成を行う場合の溶解度を高めるのに好ましい。しかしながら、R基およびその位置は、下記のように、表面上、特に単層内での導電性オリゴマーのパッキングへの影響を最小限にするよう選択される。一般に、単層内では小さいR基のみが使用され、大きいR基は一般に単層表面上にある。そのため、例えば、単層内の導電性オリゴマーの部分にメチル基を付けて溶解度を高めるのが好ましく、例えば、C3からC10のより長いアルコキシ基を単層表面上に付けるのが好ましい。一般に、本明細書に記載のシステムでは、このことは、一般に、立体的に重要なR基は、単層を形成する分子の平均の長さによるが、最初の2つまたは3つのオリゴマーサブユニットのいずれにも結合させないことを意味する。
【0181】
適切なR基には、水素、アルキル、アルコール、芳香族、アミノ、アミド、ニトロ、エーテル、エステル、アルデヒド、スルホニル、ケイ素部、ハロゲン、硫黄含有部、リン含有部、およびエチレングリコールがあるが、これらに限定されない。本明細書に示した構造では、Rは、その位置が置換されていない場合は水素である。ある位置では、2つの置換基、RおよびR'が可能であり、その場合、RおよびR'基は同一であるかまたは異なっているかのいずれかでよい。
【0182】
「アルキル基」またはその均等物とは、直鎖状または分枝状アルキル基を意味し、直鎖アルキル基が好ましい。分枝状ならば、1箇所以上の、特記しなければ任意の位置で枝分かれしている。このアルキル基は、約1から約30の炭素原子(C1−C30)の範囲であり得、好ましい実施態様では、約1から約20の炭素原子(C1−C20)を利用し、約C1から約C12ないしC15が好ましく、C1ないしC5が特に好ましいが、ある実施態様では、アルキル基はもっと大きくてもよい。アルキル基の定義の中に含まれるものには、C5およびC6環などのシクロアルキル基や、窒素、酸素、硫黄、またはリンを持つ複素環式環もある。アルキルはまた、好ましくは硫黄、酸素、窒素およびケイ素のヘテロ原子を持つヘテロアルキルも含む。アルキルは、置換アルキル基も含む。本明細書中での「置換アルキル基」とは、更に上記定義の1以上の置換基部「R」を含むアルキル基を意味する。
【0183】
「アミノ基」またはその均等物とは、−NH2、−NHRおよび−NR2基を意味し、Rは本明細書に定義のとおりである。
【0184】
「ニトロ基」とは、−NO2基を意味する。
【0185】
「硫黄含有部」とは、硫黄原子を含有する化合物を意味し、チア−、チオ−およびスルホ−化合物、チオール(−SHおよび−SR)、スルフィド(−RSR−)があるが、これらに限定されない。本明細書中では「リン含有部」は、リンを含有する化合物を意味し、ホスフィンおよびホスフェートがあるが、これらに限定されない。「ケイ素含有部」とは、ケイ素含有化合物を意味する。
【0186】
「エーテル基」またはその均等物とは、―O−R基を意味しする。好ましいエーテルは、アルコキシ基を含み、−O−(CH2)2CH3および−O−(CH2)4CH3基が好ましい。
【0187】
「エステル基」とは、−COOR基を意味する。
【0188】
「ハロゲン」とは、臭素、ヨウ素、塩素またはフッ素を意味する。好ましい置換アルキルは、部分的にまたは全体的にハロゲン化したアルキル、例えばCF3等である。
【0189】
「アルデヒド」とは、−RCOH基を意味する。
【0190】
「アルコール」とは、−OH基およびアルキルアルコール−ROHを意味する。
【0191】
「アミド」とは、−RCONH−またはRCONR−基を意味する。
【0192】
「エチレングリコール」または「(ポリ)エチレングリコール」とは、−(O−CH2−CH2)n−基を意味するが、エチレン基の各炭素原子は、一重にまたは二重に置換されていてもよく、即ち、−(O−CR2−CR2)n−であってよい。但しRは上記定義のとおりである。酸素の位置に他のヘテロ原子を持つエチレングリコール誘導体(即ち、−(N−CH2−CH2)n−または−(S−CH2−CH2)n−または置換基を持つ)も好ましい。
【0193】
好ましい置換基には、メチル、エチル、プロピル、−O−(CH2)2CH3および−O−(CH2)4CH3などのアルコキシ基およびエチレングリコールおよびそれらの誘導体があるが、これらに限定されない。
【0194】
好ましい芳香族基には、フェニル、ナフチル、ナフタレン、アントラセン、フェナントロリン、ピロール、ピリジン、チオフェン、ポルフィリンおよび縮合環誘導体を含むこれらそれぞれの誘導体があるが、これらに限定されない。
【0195】
本明細書に示した導電性オリゴマーでは、gが1のとき、B−Dは2つの原子または化学部分をつなげる結合である。好ましい実施態様では、B−Dは、重複または共役π軌道を含有する共役結合である。
【0196】
好ましいB−D結合は、アセチレン(−C≡C−、アルキンまたはエチンとも呼ばれる)、アルケン(−CH=CH−、エチレンとも呼ばれる)、置換アルケン(−CR=CR−、−CH=CR−および−CR=CH−)、アミド(−NH−CO−および−NR−CO−または−CO−NH−および−CO−NR−)、アゾ(−N=N−)、エステルおよびチオエステル(−CO−O−、−O−CO−、CS−O−および−O−CS−)および他の共役結合(−CH=N−、−CR=N−、−N=CH−および−N=CR−)、(−SiH=SiH−、−SiR=SiH−、−SiH=SiR−およびSiR=SiR−)、(−SiH=CH−、−SiR=CH−、−SiH=CR−、−SiR=CR−、−CH=SiH−、−CR=SiH−、−CH=SiR−および−CR=SiR−)などから選択される。特に好ましいB−D結合は、アセチレン、アルケン、アミドおよびこれら3種の置換誘導体およびアゾである。とりわけ好ましいB−D結合は、アセチレン、アルケンおよびアミドである。二重結合に結合させたオリゴマー成分は、トランスまたはシス配置、または混合型であってよい。そのため、BまたはDのいずれかは、炭素、窒素またはケイ素を含むことができる。置換基は、上記Rのところで定義したとおりである。
【0197】
構造1導電性オリゴマーでg=0のとき、eは好ましくは1であり、D部分は上記定義のカルボニルまたはヘテロ原子部分であり得る。
【0198】
上記Y環のように、どの単一導電性オリゴマー内でも、B−D結合(またはg=0のときD部分)は、全て同じでもよく、または少なくとも1つが異なっていてもよい。例えば、mが0のとき、末端B−D結合は、アミド結合であることができ、残りのB−D結合はアセチレン結合であることができる。一般に、アミド結合が存在するとき、アミド結合はできるだけ少ない方が好ましいが、ある実施態様では、全てのB−D結合がアミド結合である。よって、上記Y環のところで概略説明したとおり、単層内ではある一つの型のB−D結合が導電性オリゴマー中に下記のように存在でき、そして、単層レベル上に別の型のB−D結合、例えば核酸が導電性オリゴマーを介して結合している場合、核酸ハイブリダイゼーションにより大きな柔軟性を与えるために存在できる。
【0199】
本明細書に示した構造中、nは1から50の整数であるが、より長いオリゴマーもまた使用できる(例えば、Schumm et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1994 33(13): 1360参照)。理論に縛られることなく、表面上での効率のよい核酸ハイブリダイゼーションのためには、ハイブリダイゼーションが表面から少し離れて起こるべきであり、即ち、ハイブリダイゼーション速度は、特に200から300塩基対の長いオリゴヌクレオチドについては、表面からの距離の関数として上昇すると思われる。従って、核酸が導電性オリゴマーを介して結合しているとき、以下でより詳しく記すように、導電性オリゴマーの長さは、その核酸の最も近いヌクレオチドが電極表面から約6Åから約100Å(但し、500Åまでの距離が使用できる)に位置するような長さであり、約15Åから約60Åが好ましく、約25Åから約60Åも好ましい。従って、nは芳香族基のサイズ応じて変わるが、一般に、約1から約20であって、約2から約15が好ましく、約3から約10が特に好ましい。
【0200】
本明細書に示した構造中、mは0または1のいずれかである。つまり、mが0のとき、導電性オリゴマーは、B−D結合またはD部分で終結しており、即ち、D原子が直接的かまたはリンカーを介するかのいずれかで核酸に結合している。ある実施態様では、例えば、導電性オリゴマーを核酸のリボース−ホスフェート主鎖のホスフェートに結合させるとき、導電性オリゴマーと核酸の間に結合させたリンカーなどの別の原子があってもよい。更に、下記に概略説明するとおり、D原子は、アミノ修飾リボースの窒素原子であり得る。あるいは、mが1のとき、導電性オリゴマーの末端にはY、芳香族基があり、即ち、その芳香族基は、核酸またはリンカーに結合している。
【0201】
当業者には明らかなように、多数の導電性オリゴマーが利用できる。これらは、例えば、縮合芳香族環または、−(CF2)n−、−(CHF)n−および−(CFR)n−などのテフロン(登録商標)様オリゴマーを含む化合物などの当分野で知られている他の導電性オリゴマーと同じく、構造1や構造8式の範囲内にある導電性オリゴマーを含む。例えば、Schumm et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33: 1361 (1994); Grosshenny et al., Platinum Metals Rev. 40 (1): 26-35 (1996); Tour, Chem. Rev. 96: 537-553 (1996); Hsung et al., Organometallics 14: 4808-4815 (1995);およびここに引用されている文献参照、これらは全てはっきりと出典明示により本明細書に組込まれている。
【0202】
本実施態様の特に好ましい導電性オリゴマーは、下記である:
構造2
【化2】
構造2は、gが1のときの構造1である。構造2の好ましい実施態様には、eが0であり、Yがピロールまたは置換ピロールであるもの;eが0であり、Yがチオフェンまたは置換チオフェンであるもの;eが0であり、Yがフランまたは置換フランであるもの;eが0であり、Yがフェニルまたは置換フェニルであるもの;eが0であり、Yがピリジンまたは置換ピリジンであるもの;eが1であり、B−Dがアセチレンであり、Yがフェニルまたは置換フェニルであるもの(例えば、下記構造4参照)がある。構造14の好ましい実施態様はまた、下記構造3に示した、eが1である場合のものである:
【0203】
構造3
【化3】
構造3の好ましい実施態様は、Yがフェニルまたは置換フェニルであり、B−Dがアゾであるもの;Yがフェニルまたは置換フェニルであり、B−Dがアセチレンであるもの;Yがフェニルまたは置換フェニルであり、B−Dがアルケンであるもの;Yがピリジンまたは置換ピリジンであり、B−Dがアセチレンであるもの;Yがチオフェンまたは置換チオフェンであり、B−Dがアセチレンであるもの;Yがフランまたは置換フランであり、B−Dがアセチレンであるもの;Yがチオフェンまたはフラン(または置換チオフェンまたはフラン)であり、B−Dがアルケンおよびアセチレン交互の結合であるものである。
【0204】
本明細書に示した構造の殆どが構造3の導電性オリゴマーを利用している。しかしながら、どの構造3オリゴマーも、本明細書中の他の構造、即ち構造1または8オリゴマー、または他の導電性オリゴマーで置換でき、かかる構造3の使用は、本発明の範囲を限定する意味を持たない。
【0205】
構造3の特に好ましい実施態様は、下記の構造4、5、6および7を含む:
構造4
【化4】
【0206】
構造4の特に好ましい実施態様には、nが2であり、mが1であり、Rが水素であるもの;nが3であり、mが0であり、Rが水素であるもの、および溶解度を高めるためのR基の使用がある。
【0207】
構造5
【化5】
構造5のようにB−D結合がアミド結合であるとき、導電性オリゴマーは、擬似ペプチドオリゴマーである。構造5中のアミド結合は、カルボニルを左側にして、即ち、CONH−で示すが、逆、即ち−NHCO−も使用できる。構造5の特に好ましい実施態様には、nが2であり、mが1であり、Rが水素であるもの;nが3であり、mが0であり、Rが水素であるもの(この実施態様では、末端窒素(D原子)はアミノ修飾リボースの窒素であり得る)、および溶解度を高めるためのR基の使用がある。
【0208】
構造6
【化6】
構造6の好ましい実施態様には、第1のnが2であり、第2のnが1であり、mが0であり、全てのR基が水素であるもの、または溶解度を高めるためのR基の使用がある。
【0209】
構造7
【化7】
構造7の好ましい実施態様には、第1のnが3であり、第2のnが1−3であり、mが0または1のいずれかであるもの、および溶解度を高めるためのR基の使用がある。
【0210】
好ましい実施態様では、導電性オリゴマーは、構造8で示した構造を持つ:
構造8
【化8】
【0211】
この実施態様では、Cは炭素原子であり、nは1から50の整数であり、mは0または1であり、Jは酸素、窒素、ケイ素、リン、硫黄、カルボニルまたはスルホキシドからなる群から選択されるヘテロ原子であり、Gはアルカン、アルケンまたはアセチレンから選択される結合であって、2つの炭素原子と一緒になってC−G−C基がアルケン(−CH=CH−)、置換アルケン(−CR=CR−)またはそれらの混合物(−CH=CRまたは−CR=CH−)、アセチレン(−C≡C−)またはアルカン(−CR2−CR2−、Rは水素または本明細書に記載の置換基のいずれかである)であるようにする。各サブユニットのG結合は、他のサブユニットのG結合と同一かまたは異なっていてもよく、つまり、アルケンとアセチレン結合が交互にあるオリゴマーが使用できる。しかしながら、Gがアルカン結合であるとき、オリゴマー中のアルカン結合数は最小に維持すべきであり、導電性オリゴマー当りシグマ結合約6以下が好ましい。アルケン結合が好ましく、本明細書に総括的に示しているが、アルカンおよびアセチレン結合は、当業者には明らかなように、本明細書に記載したどの構造または実施態様でも置換できる。
【0212】
ある実施態様では、例えば、ETMが存在しないとき、m=0ならば少なくとも1つのG結合はアルカン結合である。
【0213】
好ましい実施態様では、構造8のmは0である。特に好ましい実施態様では、構造9に示したように、mは0であり、Gはアルケン結合である:
構造9
【化9】
【0214】
構造9のアルケンオリゴマーおよび本明細書に示した別のものは、一般に、好ましいトランス配置で示しているが、シスまたはトランスとシスの混合したオリゴマーも使用できる。上記のように、R基を加えて、電極上での組成物のパッキング、オリゴマーの親水性または疎水性、およびオリゴマーの柔軟性、即ち、回転、ねじれ、または縦の柔軟性を変えることができる。nは上記定義のとおりである。
【0215】
好ましい実施態様では、Rは水素であるが、Rはアルキル基およびポリエチレングリコールまたは誘導体であってもよい。
【0216】
別の実施態様では、導電性オリゴマーは、異なる型のオリゴマー、例えば、構造1や8の混合物であってもよい。
【0217】
さらに、特にメカニズム−2システムと共に使用するためには、該単層は導電性オリゴマーを含み、少なくともいくつかの導電性オリゴマーの末端は、電気的に露出している。本明細書中で「電気的に露出している」とは、末端にETMを極めて近接して配置し、適切なシグナルで起動すると、ETMの存在に依存するシグナルが検出され得ることを意味する。導電性オリゴマーは末端基を有していても有していなくてもよい。従って、好ましい実施態様では、余分な末端基がなく、導電性オリゴマーはその末端が、構造1から9に示したように、例えばアセチレン結合などのB−D結合のような基の1つで終る構造を示す。あるいは、好ましい実施態様では、本明細書中でしばしば「Q」として示す末端基を加える。末端基はいくつかの理由、例えば、ETMの検出用の導電性オリゴマーの電子的利用可能性を改善するために、またはSAMの表面を例えば非特異的結合を防ぐなどの他の理由によって変えるために、使用することができる。
【0218】
例えば、ハイブリダイゼーションを促進するために、末端で陰性に荷電した基として陰性荷電表面を形成させ、核酸がDNAまたはRNAである場合、核酸が表面上に着地するのに反発するか、妨げるようにし得る。好ましい末端基は、−NH2、−OH、−COOH、−CH3等のアルキル基、および、(ポリ)エチレングリコールのような(ポリ)アルキルオキサイドを含み、−OCH2CH2OH、−(OCH2CH2O)2H、−(OCH2CH2O)3H、および−(OCH2CH2O)4Hが好ましい。
【0219】
一実施態様において、異なるタイプの末端基を有する導電性オリゴマーの混合物を使用することが可能である。従って、例えば、いくつかの末端基は検出を容易にし、いくつかは非特異的結合を防止し得る。
【0220】
単層は異なる導電性オリゴマー種を含み得るが、適度に同一なSAMが形成され得るように、異なる種を選択するのが好ましいことが、理解されるであろう。従って、例えば、核酸などの捕獲結合リガンドを導電性オリゴマーを用いて電極に共有結合させるとき、核酸を付着するのに使われる1つのタイプの導電性オリゴマーと、ETMを検出するために機能する別のタイプを用いることが可能である。同様に、異なる長さの導電性オリゴマーの混合物を単層に有して、非特異的シグナルの減少を促進するのが望ましい。従って、例えば、好ましい実施態様は、単層の残部の表面下、つまり使用されているなら、絶縁層の下で、または他の導電性オリゴマーの特定のフラクション下で終わる導電性オリゴマーを利用する。同様に、異なる導電性オリゴマーを使用して、単層の形成を容易にしたり、別の特性を持つ単層をつくることもできる。
【0221】
好ましい態様において、単層形成種は、「妨害する」導電性オリゴマーであって、これは導電性オリゴマーの中間部にアルキル部分を含有する。
【0222】
好ましい態様において、単層はEFSのような光活性化種を含む。この一般的なスキームは図11に示す。光活性化種は、当分野では既知であって、4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジルエステルを含み、365nm、2時間で光分解し得る。
【0223】
好ましい実施態様において、単層はさらに絶縁部を含み得る。本明細書における「絶縁体」とは、実質的に非導電性オリゴマーを意味し、好ましくは線状である。本明細書において、「実質的に非導電性」とは、絶縁体が100Hzで電子を伝達しないことを意味する。絶縁体を介した電子伝達の比率は、好ましくは本明細書に記載の導電性オリゴマーを介した比率よりも遅い。
【0224】
好ましい実施態様において、絶縁体は、約10-7Ω-1cm-1以下の導電率Sを有し、約10-8Ω-1cm-1より低いのが好ましい。一般にGardner et al.(前掲)を参照。
【0225】
通常、絶縁体はシグマ結合を有する、アルキルまたはヘテロアルキルオリゴマーまたは部分であるが、いずれの具体的な絶縁体分子も芳香族基または1以上の共役結合を含み得る。本明細書において「ヘテロアルキル」とは、少なくとも1つのヘテロ原子、つまり鎖に含まれた窒素、酸素、硫黄、リン、シリコンまたはホウ素を有するアルキル基を意味する。あるいは、絶縁体は、遅らせるかまたは好ましくは電子伝達を実質的に阻害する、1以上のヘテロ原子または結合を添加した導電性オリゴマーと非常に類似であり得る。
【0226】
適切な絶縁体は当業者に既知であり、−(CH2)n−、−(CRH)n−および−(CR2)n−、エチレングリコールまたは酸素の代わりの他のヘテロ原子、つまり窒素または硫黄(電極が金のとき、硫黄誘導体は好ましくない)を用いる誘導体を含むが、これらに限定しない。
【0227】
導電性オリゴマーについて、絶縁体は本明細書に定義のR基で置換され得、電極でのその部分または導電性オリゴマーのパッキング、絶縁体の親水性または疎水性、および絶縁体の柔軟性、すなわち回転の、捩れのまたは縦の柔軟性を変える。例えば、分枝アルキル基を使用し得る。同様に、上記概説のように絶縁体は特に単層の表面に作用する末端基を含み得る。
【0228】
好ましい態様において、絶縁体種は、新規方法を利用するSAMおよび不斉ジスルフィドを含む組成物を包含する。明細書中では、標識プローブから生じるシグナルは、SAMの挙動もしくは特性に依存し得る。出典明示により本明細書の一部とするが1999年7月27日提出のU.S.S.N60/145,912に記載のような“ナノ管路”または“電気管路”を含んで構成されたSAMは、良好なシグナルを与える。即ち、本発明は、ジスルフィドを基にした不対称の絶縁体を提供し、これは、分岐の1つは長いアルキル鎖(もしくは、他のSAM形成種)であり、ナノ管路を創造するためのもの(極性もしくは非極性であり得る)である分岐アルキル基のようなかさばった基を含む別の分岐である。
例示の種は、図31Aおよび31Bに示し、そのデータは図31Cに示す。多様な合成スキームは図32に示す。以下の文献を、出典明示により本明細書の一部とする;参照 Mukaiyama Tetrahedron Lett. 1968, 5907; Boustany Tetrahedron Lett. 1970 3547; Harpp Tetrahedron Lett. 1970 3551; and Oae, J. Chem. Soc. Chem. Commun, 1977, 407。
【0229】
単層をつくる種の長さは必要に応じて変化する。上記に概説のように、ハイブリダイゼーションは、表面から離れてより有効であるように見える。核酸が結合する種(下記に概説のように、これらは絶縁体または導電性オリゴマーのいずれかであり得る)は、基本的に単層を形成する種と同じ長さかそれらより長く、捕獲結合リガンドがハイブリダイゼーションのための溶媒により接近可能となる。いくつかの実施態様において、結合核酸が結合する導電性オリゴマーは単層より短い。
【0230】
当業者には明らかなように、単層をつくる異なる種の実際の組合せと比率は、非常に広範に変化し得、そしてメカニズム−1またはメカニズム−2のどちらが使用されているかに依存する。これらを以下で詳記する。一般に、メカニズム−2システムでは3成分システムが好ましく、第1の種は、種を含有する捕獲プローブ、捕獲プローブという)を含み、絶縁体または導電性オリゴマーのいずれかを介して電極に結合している。第2の種は導電性オリゴマーであり、第3の種は絶縁体である。この実施態様において、第1の種は約90%から約1%を含み得、約20%から約40%が好ましい。核酸については、約30%から約40%が短いオリゴヌクレオチド標的に特に好ましく、約10%から約20%が長い標的に好ましい。第2の種は約1%から約90%を含み得、約20%から約90%が好ましく、約40%から約60%が特に好ましい。第3の種は約1%から約90%を含み得、約20%から約40%が好ましく、約15%から約30%が特に好ましい。これらの至適特性を達成するために、SAM形成溶液では第1:第2:第3の種の好ましい比率は、短い標的については2:2:1、長い標的については1:3:1であり、全チオール濃度(これらの種との結合に使用する場合、以下で詳記)は、500μMから1mMの範囲および833μMが好ましい。
【0231】
あるいは、2成分システムを使用することができる。ある実施態様では、メカニズム−1またはメカニズム−2のシステムのどちらかでの使用のために、2成分は、第1および第2の種である。この実施態様において、第1の種は約1%から約90%を含み得、約1%から約40%が好ましく、約10%から約40%が特に好ましい。第2の種は約1%から約90%を含み得、約10%から約60%が好ましく、約20%から約40%が特に好ましい。あるいは、メカニズム−1システムでは、2成分は第1および第3の種である。この実施態様において、第1の種は約1%から約90%を含み得、約1%から約40%が好ましく、約10%から約40%が特に好ましい。第2の種は約1%から約90%を含み得、約10%から約60%が好ましく、約20%から約40%が特に好ましい。
【0232】
好ましい態様において、SAMの貯蔵は水溶液を用いて行われる。一般的に記載した、Steel et al., Anal. Chem. 70:4670 (1998), Herne et al., J. Am. Chem. Soc. 119:8916 (1997), and Finklea, Electrochemistry of Organized Monolayers of Thiols and Related Molecules on Electrodes, from A.J. Bard, Electroanalytical Chemistry: A Series of Advances, Vol. 20, Dekker N.Y. 1966を出典明示により本明細書の一部とする。
【0233】
導電性オリゴマーと絶縁体の電極への共有結合は、様々な方法で達成され、使用する電極、および絶縁体と導電性オリゴマーの組成に依存する。好ましい態様において、本明細書中に記載の共有結合したヌクレオシドもしくは核酸種との付着リンカーは、電極に共有結合により付着する。従って、付着リンカーの一方の端または末端がヌクレオシドまたは核酸に付着しており、もう一方が電極に付着している。ある実施態様では末端以外の位置で付着する付着リンカーを用いるか、またはさらに、一方の末端で電極に付着し、他の末端で2またはそれ以上のヌクレオシドに付着する分枝付着リンカーを用いることを望み得るが、これは好ましくない。同様に、一般に構造11−25に記載されるように、付着リンカーは2つの部位で電極に付着し得る。一般に構造10でAとして下記に示すように、あるタイプのリンカーが使用される。構造10において、「X」は導電性オリゴマー、「I」は絶縁体であり、斜線の表面は電極である:
【化10】
【0234】
本実施態様において、Aはリンカーまたは原子である。「A」の選択は、電極の特徴に一部依存する。従って、例えば、金電極を使用する場合、Aは硫黄部である。あるいは、酸化金属電極を使用するとき、Aはオキサイドの酸素に付着したシリコン(シラン)部である(例えば、Chen et al., Langmuir 10: 3332-3337 (1994); Lenhard et al., J. Electroanal. Chem. 78: 195-201 (1977)参照、両方とも出典明示により本明細書の一部とする)。炭素ベースの電極を使用するとき、Aはアミノ部である(好ましくは、1級アミン;例えば、Deinhammer et al., Langmuir 10: 1306-1313 (1994)参照)。従って、好ましいA部は、シラン部、硫黄部(アルキル硫黄部を含む)およびアミノ部を含むが、これらに限定されない。好ましい実施態様において、当分野で既知のようなレドックスポリマーとのエポキシドタイプ結合は使用しない。
【0235】
本明細書には一つの部分としてしか記載していないが、絶縁体および導電性オリゴマーは、1個以上の「A」部で電極と付着し得る;「A」部は同一または異なり得る。従って、例えば、電極が金電極であり、「A」が硫黄原子または部分であるとき、一般に下記構造11、12および13に記載のように、複数の硫黄原子が、電極に導電性オリゴマーを付着させるのに使用し得る。当業者に認められるように、このような他の構造が製造できる。構造11、12および13において、A部は硫黄原子だけであるが、置換硫黄部も使用し得る。
【0236】
【化11】
【0237】
【化12】
【0238】
【化13】
【0239】
構造13と同様に、3つの硫黄部が電極に付着している一つの炭素原子で終了する導電性オリゴマーを有することが可能であることも留意すべきである。さらに本明細書に必ずしも記載されていないが、導電性オリゴマーと絶縁体はまた「Q」末端基を含み得る。
【0240】
好ましい実施態様において、電極は金電極であり、付着は当分野で既知のように硫黄結合を介しており、すなわち、A部は硫黄原子または部分である。金−硫黄結合の正確な特徴は知られていないが、この結合は本発明のためには、共有結合と考える。代表的な構造は構造3の導電性オリゴマーを用いて構造14に記載するが、本明細書に記載のすべての構造について、いずれの導電性オリゴマーまたは導電性オリゴマーの組合せも使用し得る。同様にいずれの導電性オリゴマーまたは絶縁体も本明細書に記載の末端基を含み得る。構造14は、「A」リンカーが硫黄原子のみを含むように記載しているが、他の原子も存在し得る(すなわち、硫黄から導電性オリゴマーへのまたは置換基へのリンカー)。さらに、構造14は、Y芳香族基に付着した硫黄原子を表わしているが、当業者に明らかであろうように、B−D基(すなわち、アセチレン)と同様に付着したものであってもよい。
【0241】
【化14】
【0242】
好ましい実施態様において、電極は炭素電極、すなわち、ガラス状炭素電極であり、付着はアミン基の窒素原子を介している。代表的な構造を構造27に示す。また別の原子が存在し得、すなわち、ZタイプリンカーおよびXまたは末端基であり得る。
【化15】
【0243】
【化16】
【0244】
構造16において、酸素原子は金属酸化物電極の酸化物からのものである。Si原子は他の原子を含んでもよく、すなわち、置換基含有のケイ素部分であってもよい。他の電極に対するSAMの他の付着は当業者には既知である;例えば、インジウム酸化スズ電極に対する付着、およびインジウム酸化スズ電極に対するリン酸エステルの化学吸着についてはNapier et al., Langmuir, 1997参照(CHI会議(1998年5月4〜5日)でのH. Holden Thorpeの講演)。
【0245】
本発明のSAMは種々の方法、例えば、有機溶液からの析出および水性溶液からの析出などにより作製し得る。本明細書にて概説した方法では、例として金電極を使用するが、当業者が認めるように、他の金属および方法も同様に使用し得る。好適な一実施態様においては、インジウム−スズ−酸化物(ITO)が電極として用いられる。
【0246】
好適な実施態様において、金表面は先ず洗浄する。様々な洗浄手法が採用可能であり、例えば、これらに限定されるものではないが、化学的洗浄またはエッチング用試薬(ピランハ(Piranha)溶液(過酸化水素/硫酸)または王水(塩酸/硝酸))、電気化学的方法、火炎処理、プラズマ処理またはそれらの併用などである。
【0247】
洗浄に続いて、金基板をSAM種に露呈する。電極がITOである場合、SAM種はリン酸エステル含有種である。この処理も様々な方法で実施し得るものであり、例えば、溶液析出、気相析出、微小接触プリンティング、スプレー析出、ニート成分を用いる析出などであるが、これらに限定されるものではない。好適な実施態様では、溶液中で種々のSAM種、一般にはチオール含有種の混合物を含む析出溶液を利用する。核酸を含む混合単層は通常2工程手法を用い調製する。チオール化核酸は(一般に少なくとも1種の他の単層形成種の存在下)最初の析出工程に際し析出し、混合単層形成はDNAを含まない第2チオール溶液を加える第2工程の間に完結する。第2工程は多くの場合、単層再構成を促進するための緩和な加熱を含む。
【0248】
好適な実施態様において、析出溶液は有機析出溶液である。この実施態様において、清浄金表面は清浄バイアル中に入れる。有機溶媒中の結合リガンド析出溶液は、総チオール濃度がマイクロモルと飽和の間にあるように調製する;好適な範囲は約1μMないし10mMであり、特に好ましくは約400μMないし1.0mMである。好適な実施態様において、析出溶液はチオール修飾DNA(すなわち、付着リンカーに付着した核酸)およびチオール希釈分子(電導性オリゴマーまたは絶縁体であるが、後者が好ましい)を含有する。核酸と希釈剤(もしあるとすれば)との比は通常1000:1と1:1000との間であり、好ましくは約10:1ないし約1:10であり、特に好ましいのは1:1である。好適な溶媒はテトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、エタノール、またはその混合物である;一般に、捕獲リガンドを溶解するのに十分な極性の溶媒であれば、その溶媒が表面と反応するような官能基をもたない限り、使用可能である。十分な核酸析出溶液をバイアルに加えて電極の表面を完全に蔽うようにする。この金基板は外界温度または外界温度より少し高い温度で、数秒ないし数時間、好ましくは5分ないし30分間インキュベートする。最初のインキュベーション後、析出溶液を取出し、希釈分子のみの有機溶媒溶液(約1μMないし10mM、好ましくは約100μMないし約1.0mM)を添加する。金基板は室温または室温以上の温度で所定時間(数秒ないし数日、好ましくは約10分ないし約24時間)インキュベートする。金サンプルを溶液から取出し、清浄な溶媒にすすいで使用する。
【0249】
好適な実施態様においては、水性析出溶液を用いる。上記のように、清浄金表面を清浄バイアル内に入れる。核酸の析出水性溶液は総チオール濃度が約1μMと10mMの間、好ましくは約1μMないし200μMであるように調製する。水性溶液は多くの場合、塩を存在させている(飽和まで、好ましくは約1Mである)が、精製水が使用し得る。析出溶液はチオール修飾核酸およびしばしばチオール希釈分子を含有する。核酸と希釈剤との比は通常1000:1と1:1000との間であり、好ましくは約10:1ないし約1:10であり、特に好ましいのは1:1である。核酸析出溶液は電極の表面を完全に蔽うような容量でバイアルに加える。この金基板を外界温度または外界温度より少し高い温度で1〜30分間インキュベートするが、通常5分で十分である。最初のインキュベーション後、析出溶液を取出し、希釈分子のみ(10μMないし1.0mM)の水性溶液または有機溶媒溶液を添加する。金基板は室温または室温以上の温度で、完全な単層が形成されるまで(10分〜24時間)インキュベートする。金サンプルを溶液から取出し、清浄な溶媒にすすいで使用する。
【0250】
好適な実施態様においては、好ましくはベタインを含む。好適な実施態様においては、ベタインおよびTris-HCl緩衝液を利用する。
【0251】
好適な実施態様においては、本明細書に説明するように、回路基板が金電極用の基板として使用される。金表面上SAMの形成は、先ず基板を、本明細書に記載のように、例えば、10%硫酸溶液中30秒間、界面活性剤溶液、王水、プラズマなどで清浄とすることにより一般に実施する。硫酸処理に続いて、基板は、例えば、2個のミリ−Q水浴にそれぞれ1分間浸漬することにより洗浄する。この基板を次いで、例えば、窒素気流下に乾燥する。基板上に析出溶液をスポットするには、相当数の既知スポット・システムを用い、一般には基板をX−Yテーブル上に置き、調湿チャンバー中で実施する。スポット滴のサイズは基板上の電極サイズと溶液送達に使用する器具により変わる;例えば、250μMサイズの電極では、30ナノリットルの液滴が用いられる。この容量は電極表面を完全に蔽うのに十分でなければならない。液滴は室温で所定時間(秒ないし一夜であるが、5分間が好適)インキュベートし、次いでミリ−Q水浴中ですすぐことにより液滴を除去する。基板は次いで、好ましくは、第2析出溶液、一般に有機溶媒、好ましくはアセトニトリル中に絶縁体を含む溶液により、45℃の浴に浸漬することによって処理する。30分後、基板を取出し、アセトニトリル浴に30秒間浸漬し、次いでミリ−Q水浴中30秒間浸漬する。基板を窒素気流下に乾燥する。
【0252】
好ましい実施態様では、電極は、核酸捕獲プローブをさらに有する導電性オリゴマーを包含する単層を含む。捕獲プローブ核酸は電極に共有結合により付着させる。この付着は導電性オリゴマーを介するか、または絶縁体を介することができる。本明細書中の「捕獲プローブ」または「アンカープローブ」は、本明細書中で定義されるように、検出のために標的配列を電極に付着させることを可能にする、アッセイ複合体の構成要素を意味する。以下に詳しく概説するように、捕獲プローブへの標的配列の付着は直接的(すなわち、標的配列が捕獲プローブにハイブリダイズする)でも間接的(1またはそれ以上の捕獲伸長(エクステンダー)プローブが使用される)でもよい。本明細書中では、「共有結合により付着している」は、2つの部分が、シグマ結合、pi結合および配位結合を含む少なくとも1つの結合により付着していることを意味する。さらに、以下により詳しく概説するように、捕獲プローブは、核酸および非核酸部分の両方を有してもよい。ゆえに、例えば、ポリエチレングリコールリンカーを含む、アルキル基のような柔軟なリンカーが、捕獲プローブの核酸部分を電極表面から離しておくために使われ得る。これは標的核酸が大きいとき、例えばゲノムDNAまたはrRNAが標的のときに、特に有用である。
【0253】
捕獲プローブ核酸は、導電性オリゴマー(メカニズム−1システム)であるか、または絶縁体を介している「付着リンカー」を介して電極に共有結合により付着している。このようにして、付着リンカーの一端を核酸(あるいは他の結合リガンド)に付着させ、他端(当業者が認めるところであるが、いずれの場合にも正確な末端である必要はない)を電極に付着させる。このように、本明細書中に描出した構造のいずれも、さらに末端基として有効な核酸を含み得る。このように、本発明は、下記構造17に一般的に描出したように、電極に共有結合により付着した核酸を含む組成物を提供する。
【0254】
【化17】
【0255】
構造17において、左側の斜線記号は、電極を表す。本明細書に定義するように、Xは導電性オリゴマーであり、Iは絶縁体である。F1は、電極および導電性オリゴマーまたは絶縁体の共有結合をもたらす結合であり、本明細書に記載され、例えば下記に「A」と定義されるように、結合、原子またはリンカーを含む。F2は、核酸に導電性オリゴマーまたは絶縁体を共有結合させる結合であり、本明細書に記載のように結合、原子または結合であり得る。F2は、例えば本明細書で「Z」について定義するように、導電性オリゴマーの一部、絶縁体の一部、核酸の一部であり得、または両方に外来性であり得る。
【0256】
好適な実施態様において、捕獲プローブ核酸は、導電性オリゴマーを介して電極に共有結合により付着している。核酸と導電性オリゴマーの共有結合付着は、幾つかの方法で達成することができる。好適な実施態様において、その付着は下記説明のように、ヌクレオシド塩基への付着によるか、核酸の主鎖(リボース、リン酸エステル、または核酸類似体主鎖の類似基)への付着によるか、または遷移金属リガンドへの付着による。下に概説する技法は一般に天然に存在する核酸について説明しているが、当業者も認めるように、同様の技法は核酸類似体にも使用することができる。
【0257】
好適な実施態様において、導電性オリゴマーは核酸のヌクレオシド塩基に付着させる。これは下記説明のように、オリゴマーの種類に応じて幾つかの方法で実施し得る。一実施態様において、オリゴマーは末端のヌクレオシド、すなわち、核酸の3’または5’ヌクレオシドに付着させる。あるいは、導電性オリゴマーを内部ヌクレオシドに付着させる。
【0258】
塩基への付着点は塩基により異なる。一般に、いずれの位置での付着も可能である。一部の実施態様では、例えば、ETMを含むプローブがハイブリダイゼーションに使用される場合、相補塩基の水素結合に関与しない位置に付着させるのが好ましい。このように、例えば、一般に付着はウリジン、シトシンおよびチミンなどのピリミジン類の5または6位置に対するものである。アデニンおよびグアニンなどのプリン類については、結合は、好ましくは8位置を介する。非標準の塩基に対する付着は、相当する位置で好適になされる。
【0259】
一実施態様において、付着は直接的である;すなわち、導電性オリゴマーと塩基の間に介在する原子はない。この実施態様において、例えば、末端アセチレン結合を有する導電性オリゴマーを塩基に直接付着させる。構造18はこの結合の一例であり、ここでは構造3の導電性オリゴマーと塩基としてウリジンを使用しているが、当業者も認めるように、他の塩基と導電性オリゴマーを使用することもできる。
【化18】
【0260】
本明細書に示したペントース構造には、水素、ヒドロキシ、ホスフェートまたはアミノ基などの他の基が付着していることに留意すべきである。更に、本明細書に示したこのペントースおよびヌクレオシド構造は、通常表現の鏡像として非慣用的に示す。更に、ペントースおよびヌクレオシド構造はまた、任意の位置に、例えば、合成中に必要に応じて、保護基などの新たな基を含有できる。
【0261】
加えて、塩基は、必要に応じて更なる修飾を含むこともあり、即ち、たとえばPCT/US97/20014の図18Aに記載のようにカルボニルまたはアミン基を変更したり、保護することもできる。これは、ヨウ素化した塩基とのカップリングの代わりに導電性オリゴマーの重要な二量化を防止するために必要である。さらに、パラジウム反応の成分を代えることも望ましい。R基は、長い導電性オリゴマーの溶解度を高めるのに好ましい。
【0262】
別の実施態様では、付着は、一般に、塩基としてウリジンおよび構造15のオリゴマーを用いる構造19に示したように、アミドおよびアミン結合を含む、多くの異なるZ−リンカーを介する:
【化19】
【0263】
この実施態様では、Zはリンカーである。好ましくは、Zは約1から約10原子の短いリンカーであり、1から5原子が好ましく、アルケン、アルキニル、アミン、アミド、アゾ、イミンなどの結合を含有してもよく、含有しなくてもよい。リンカーは当分野では知られており、例えば、よく知られているとおり、ホモまたはヘテロ二官能性リンカーである(1994 Pierce Chemical Company catalog, technical section on cross-linker, pages 155-200参照、出典明示により本明細書の一部とする)。好ましいZリンカーには、アルキル基(置換アルキル基およびヘテロ原子部分を含有するアルキル基を含む)があるが、これらに限定されず、好ましいのは、短いアルキル基、エステル、アミド、アミン、エポキシ基およびエチレングリコールおよび誘導体であり、特に好ましいのは、プロピル、アセチレンおよびC2アルケンである。Zはまた、スルホン基であってもよく、下記のようにスルホンアミド結合を形成する。
【0264】
好ましい実施態様では、核酸と導電性オリゴマーの付着は、核酸主鎖への付着を介して行う。これは、リボース−ホスフェート主鎖のリボースへの付着または主鎖のホスフェートへの付着、または類似主鎖の他の基への付着を含む多くの方法で実施できる。
【0265】
予備事項として、下記に十分説明するように、本実施態様における結合部位は、3'または5'末端ヌクレオチド、または内部ヌクレオチドであると理解されるべきである。
【0266】
好ましい実施態様では、導電性オリゴマーをリボース−ホスフェート主鎖のリボースへ付着させる。これは、幾つかの方法で実施できる。当分野では知られているように、リボースの2'または3'位のいずれかにアミノ基、硫黄基、ケイ素基、リン基またはオキソ基で修飾したヌクレオシドを作成できる(Imazawa et al., J. Org. Chem., 44: 2039 (1979); Hobbs et al., J. Org. Chem. 42 (4): 714 (1977); Verheyden et al., J. Org. Chem. 36 (2): 250 (1971); McGee et al., J. Org. Chem. 61: 781-785 (199); Mikhailopulo et al., Liebigs. Ann. Chem. 513-519 (1993); McGee et al., Nucleosides & Nucleotides 14 (6): 1329 (1995)、全て出典明示により本明細書の一部とする)。次いで、導電性オリゴマーを加えるために、これらの修飾ヌクレオシドを用いる。
【0267】
好ましい実施態様は、アミノ修飾ヌクレオシドを利用する。このとき、これらのアミノ修飾リボースを用いて、導電性オリゴマーに対してアミドまたはアミン結合を形成できる。好ましい実施態様では、アミノ基を直接リボースに付着させるが、当業者には明らかであるように、「Z」について記載したような短いリンカーをアミノ基とリボースとの間に与えることができる。
【0268】
好ましい実施態様では、リボースに付着させるためにアミド結合を使用する。好ましくは、構造1−3の導電性オリゴマーを用いるならば、mが0であるので、導電性オリゴマーの末端はアミド結合である。この実施態様では、アミノ修飾リボースのアミノ基の窒素は、導電性オリゴマーの「D」原子である。よって、本実施態様の好ましい付着を、構造20に示す(構造13の導電性オリゴマーを用いる)。
【化20】
当業者には明らかなように、構造20は、アミド結合として固定された末端結合を有する。
【0269】
好ましい実施態様では、ヘテロ原子結合、即ち、オキソ、アミン、硫黄等を用いる。好ましい実施態様はアミン結合を利用する。また、アミド結合について上記で概説したとおり、アミン結合の場合も構造3の導電性オリゴマーを用いると、アミノ修飾リボースの窒素が導電性オリゴマーの「D」原子であり得る。よって、例えば、構造21および22は、それぞれ構造3および9の導電性オリゴマーを持つヌクレオシドを示し、ヘテロ原子として窒素を用いているが、他のヘテロ原子を使用することもできる:
【0270】
【化21】
【0271】
構造21において、好ましくは、mもtも0ではない。ここで好ましいZはメチレン基またはその他の脂肪族アルキルリンカーである。この位置にある1、2または3つの炭素は特に合成の際に有用である;参照、PCT US97/20014。
【化22】
【0272】
構造22において、Zは上記定義のとおりである。適当なリンカーはメチレンおよびエチレンがある。
【0273】
別の実施態様では、導電性オリゴマーを、核酸のリボース−ホスフェート主鎖(または類似体)のホスフェートを介して核酸に共有結合させる。この実施態様では、結合は直接的か、またはリンカーまたはアミド結合を利用する。構造23は、直接結合を示しており、構造24は、アミド結合を介した結合を示している(両方とも、構造3の導電性オリゴマーを利用しているが、構造8の導電性オリゴマーも可能である)。構造23および25は、3'位の導電性オリゴマーを示しているが、5'位も可能である。更に、構造23および24とも、天然のホスホジエステル結合を示しているが、当業者には明らかなように、ホスホジエステル結合の非標準類似体も使用できる。
【0274】
【化23】
構造23中、末端にYが存在する(即ちm=1)場合、Zは存在しない(即ち、t=0)のが好ましい。末端にYが存在しない場合、Zは存在するのが好ましい。
【0275】
構造24は、末端B−D結合がアミド結合であり、末端にYが存在せず、Zが上記定義のリンカーである好ましい実施態様を示す。
【化24】
【0276】
好ましい実施態様では、導電性オリゴマーは、遷移金属リガンドを介して核酸に共有結合する。本実施態様では、導電性オリゴマーを遷移金属に1以上の配位原子を提供するリガンドに共有結合させる。一実施態様では、下記構造25に総括的に示したように、導電性オリゴマーが付着するリガンドには、核酸も付着している。あるいは、下記構造26に総括的に示したように、導電性オリゴマーは1つのリガンドに付着しており、核酸は別のリガンドに付着している。よって、遷移金属の存在下で導電性オリゴマーは核酸に共有結合する。これらの構造はいずれも構造3の導電性オリゴマーを示しているが、その他のオリゴマーを利用することもできる。構造25および26は、核酸用の2つの代表的な構造を示す:
【化25】
【化26】
【0277】
本発明で示す構造において、Mが金属原子であり、遷移金属が好ましい。本明細書中で使用するための適当な遷移金属はカドミウム(Cd)、銅(Cu)、コバルト(Co)、パラジウム(Pd)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、レニウム(Re)、白金(Pt)、スカンジウム(Sc)、チタニウム(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、タングステン(W)、およびイリジウム(Ir)などであるが、これらに限定されるものではない。すなわち、遷移金属の第1シリーズ、白金族(Ru、Rh、Pd、Os、IrおよびPt)並びにFe、Re、W、MoおよびTcが好ましい。特に好ましいのはルテニウム、レニウム、オスミウム、白金、コバルトおよび鉄である。
【0278】
Lは補助リガンドであり、金属イオン結合のための配位原子を提供する。当業者が認識するように、補助リガンドの数と性質は金属イオンの配位数に依存する。単座、二座または多座補助リガンドはどの位置で使用してもよい。従って、例えば、金属が6の配位数を有する場合、導電性オリゴマーの末端からのL、核酸から与えられるL、およびrを6まで加える。従って、金属が六配位数の場合、rは0(全配位原子が他の2つのリガンドによって与えられる場合)から4(全ての補助リガンドが一座配位の場合)の範囲であろう。従って、一般に、金属イオンの配位数および他のリガンドの選択に依存してrは0ないし8であるであろう。
【0279】
ある実施態様において、金属イオンは6の配位数を有し、そして導電性オリゴマーに付着したリガンドおよび核酸に付着したリガンドは、両方共、少なくとも2量体である;すなわち、rは、好ましくは、0、1(すなわち残った補助リガンドは2量体である)または2(2つの一座配位補助リガンドが使用される)である。
【0280】
技術的に認識されるように、補助リガンドは同一であっても異なってもよい。適切なリガンドは2つの範疇に入る:配位原子(一般的には文献上、シグマ(σ)供与体という)として、窒素、酸素、イオウ、炭素またはリン原子を用いるリガンド(金属イオンに依存して)、およびメタロセンリガンドなどの有機金属リガンド(一般的には文献上、パイ(π)供与体といい、本明細書ではLmで図示する)である。適切な窒素供与リガンドは技術上周知であり、以下のものを包含するがこれらに限定されるものではない:NH2;NHR;NRR';ピリジン;ピラジン;イソニコチンアミド;イミダゾール;ビピリジンおよびビピリジンの置換誘導体;テルピリジンおよび置換誘導体;フェナントロリン、特に1,10−フェナントロリン(phenと略記)およびフェナントロリンの置換誘導体、例えば、4,7−ジメチルフェナントロリンおよびジピリド[3,2−a:2',3'−c]フェナジン(dppzと略記);ジピリドフェナジン;1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン(hatと略記);9,10−フェナントレンキノン・ジイミン(phiと略記);1,4,5,8−テトラアザフェナントレン(tapと略記);1,4,8,11−テトラ−アザシクロテトラデカン(cyclamと略記)、EDTA、EGTAおよびイソシアニド。融合した誘導体を包含する置換誘導体も使用することができる。ある態様においては、ポルフィリンおよびポルフィリンファミリーの置換誘導体を使用してもよい。例えば、Comprehensive Coordination Chemistry, Ed. Wilkinson et al., Pergammon Press, 1987, Chapters 13.2 (pp 73-98), 21.1 (pp 813-898) and 21.3 (pp 915-957)参照。この文献の全部を特に参照により本明細書に取込む。
【0281】
炭素、酸素、イオウおよびリンを用いる適切なシグマ供与リガンドは技術上既知である。例えば、適切なシグマ炭素供与体はCotton and Wilkenson, Advanced Organic Chemistry, 5th Edition, John Wiley & Sons, 1988に見出されるが、この文献を参照により本明細書に取込む;例えば、38ページ参照。同様に、適切な酸素リガンドは、クラウンエーテル、水、および技術上既知の他のものを包含する。ホスフィンおよび置換ホスフィンも適切である;Cotton and Wilkensonの38ページ参照。
【0282】
酸素、イオウ、リンおよび窒素−供与リガンドは、ヘテロ原子が配位原子として作動するような様式で付着する。
【0283】
好適な態様においては、有機金属リガンドを用いる。レドックス部分として使用する純有機化合物、およびヘテロ環状またはエキソ環状置換基として供与原子をもつδ−結合有機リガンドとの種々の遷移金属配位複合体に加えて、π−結合有機リガンドをもつ多様な遷移金属有機金属化合物が入手可能である(Advanced Inorganic Chemistry, 5th Ed., Cotton & Wilkinson, John Wiley & Sons, 1988, Chapter 26; Organometallics, A Concise Introduction, Elschenbroich et al., 2nd Ed., 1992, VCH; およびComprehensive Organometallic Chemistry II, A Review of the Literature 1982-1994, Abel et al. Ed., Vol. 7, Chapters 7, 8, 10 & 11, Pergamon Press, 特に出典明示により本明細書の一部とする)。かかる有機金属リガンドは、シクロペンタジエニド・イオン[C5H5(−1)]などの環状芳香族化合物および種々の環置換および環融合誘導体、例えば、インデニリド(−1)イオンなどであって、一群のビス(シクロペンタジエニル)金属化合物(すなわち、メタロセン)を産生する;例えば、Robins et al., J. Am. Chem. Soc., 104: 1882-1893 (1982); およびGassman et al., J. Am. Chem. Soc., 108: 4228-4229 (1986)参照;これらを出典明示により本明細書の一部とする。これらの内、フェロセン[(C5H5)2Fe]およびその誘導体が、多様な化学的(Connelly e al., Chem. Rev. 96: 877-910 (1996), 出典明示により本明細書の一部とする)および電子化学的(Geiger et al., Advances in Organometallic Chemistry 23: 1-93; およびGeiger et al., Advances in Organometallic Chemistry 24: 87, 出典明示により本明細書の一部とする)電子移動または“レドックス”反応に使用されているプロトタイプの例である。様々な第一、第二および第三列遷移金属のメタロセン誘導体は、核酸のリボース環またはヌクレオシド塩基の何れかに共有結合により付着しているレドックス部分としての有力な候補である。他の潜在的に適切な有機金属リガンドは、ベンゼンなどの環状アレンなどを包含し、ビス(アレン)金属化合物とその環置換および環融合誘導体を産生するが、そのビス(ベンゼン)クロミウムはプロトタイプの例である。アリル(−1)イオンなどの他の非環状π−結合リガンドまたはブタジエンは潜在的に適切な有機金属化合物を産生し、かかるリガンドはすべて他のπ−結合およびδ−結合リガンドと連携して、金属−炭素結合をもつ一般クラスの有機金属化合物を構成する。架橋有機リガンドおよびさらなる非架橋リガンドを有し、同様に金属−金属結合を有し、また有さない、かかる化合物の種々のダイマーおよびオリゴマーの電気化学的研究は、核酸分析における有力な候補レドックス部分である。
【0284】
1種以上の補助リガンドが有機金属リガンドである場合、該リガンドは一般に有機金属リガンドの炭素原子の一つを介して付着するが、ただし付着はヘテロ環状リガンドに対し他の原子を介してであってもよい。好適な有機金属リガンドは、置換誘導体およびメタロセンオファンを含むメタロセンリガンドを包含する(上記Cotton and Wilkensonの1174ページ参照)。例えば、メチルシクロペンタジエニルなどのメタロセンリガンドの誘導体、好ましくは複数のメチル基を有する、例えば、ペンタメチルシクロペンタジエニルなどを用い、メタロセンの安定性を増大させることができる。好適な態様において、メタロセンの2つのメタロセンリガンドの1つのみが誘導化される。
【0285】
本明細書に記載のように、リガンドの任意の組み合わせを使用し得る。好ましい組み合わせは:a)全リガンドが窒素供与リガンドである;b)全リガンドが有機金属リガンドである;そしてc)導電性オリゴマーの末端のリガンドがメタロセンリガンドであり、核酸により提供されるリガンドは窒素投与リガンドであることを含み、必要により、他のリガンドと一緒であり、それは窒素供与リガンドまたはメタロセンリガンドまたはその混合物である。これらの組み合わせは、構造3の導電性オリゴマーを使用した代表例に記載され、構造27(フェナンスロリンおよびアミノを代表的リガンドとして使用して)、28(フェロッセンを金属−リガンド組み合わせとして使用して)および28(シクロペンタジエニルおよびアミノを代表的リガンドとして使用して)に記載する。
【化27】
【化28】
【化29】
【0286】
導電性オリゴマーおよび電極の付着に作用することに加え、上記の組成物はETM標識としても使用し得る。すなわち、図19および20に概説するように、導電性オリゴマーに付着した遷移金属(または他のETM)は検出用の核酸に加えることができる。この態様において、理論に囚われなければ、導電性オリゴマー、好ましくはF1結合(表面に対する導電性オリゴマーの付着を可能とする結合)はSAMを貫入させ、ETMと電極間の電子伝達を容易にする。理論に囚われなければ、これは“メカニズム−1”システム同様に、電子の直接経路を提供することにより、急速な電子伝達を可能とすると思われる;本明細書ではこれを場合により“配線化”という。
【0287】
驚くべきことに、実施例3に概括するように、このシステムはF1部分が保護されるか否かで作用すると思われる;すなわち、直接の付着はETMの周波数応答を増大させるためには必要ない。このように、導電性オリゴマーはF1部分、保護基により保護されたF1部分(上記Greene参照)で終結し得るか、あるいはF1部分でまったく終結する必要がない;SAMの表面に使用されるような末端基を使用してもよい。あるいは、導電性オリゴマーのむき出しの末端で十分である。
【0288】
この態様においては、“分枝”当たり複数のETMを使用してもよい。それらは導電性オリゴマーで終結する基として、例えば、メタロセンポリマーとして付着させるか、または導電性オリゴマーから置換基を除かれていてもよい。一般に、好適な態様ではETMと導電性オリゴマー間の電子共役を利用し、電子伝達を容易にする。
【0289】
一般に、この態様における導電性オリゴマーの長さは電極上のSAMの長さと共に変わり、好適な態様では2単位または3単位のオリゴマーを利用する。この態様における好適な導電性オリゴマーは、核酸が電極への付着について上記したと同じであり、フェニル−アセチレン・オリゴマーが最も好適である。
【0290】
この態様においては、付着した導電性オリゴマーをもつETMを一般的に合成し、次いで、1999年7月27日に提出のU.S.S.N60/145,912(出典明示により本明細書の一部とする)の図20に一般的に描出したようにホスファーアミダイト部分を調製する。
【0291】
好適な態様において、本発明に使用するリガンドは、キレート化した金属イオンの酸化還元状態に左右されて変化した蛍光性を示す。以下に説明するように、これは結果としてETMと電極間の電子伝達のさらなる検出モードとして作用する。
【0292】
好適な態様において、以下により詳しく説明するように、核酸に付着したリガンドはリボース−リン酸バックボーンのリボース2’または3’位に付着したアミノ基である。このリガンドは金属イオンに結合するポリデンテート・リガンドを形成するような多様なアミノ基を含んでもよい。他の好適なリガンドはシクロペンタジエンおよびフェナンスロリンを包含する。
【0293】
核酸に連結する金属イオンの使用は、表面上の利用可能な核酸数を評価する際に、システムの内部調整または校正として役立ち得る。しかし、当業者が認めるように、もし金属イオンを用いて核酸が導電性オリゴマーに連結するようにするならば、以下に説明するように、この金属イオンはシステムの残りに使用されるETMとは異なる酸化還元力をもつようにすることが一般に望ましい。これは一般に捕獲プローブの存在と標的配列の存在を識別するようにする上で正しい。これは同定、校正および/または定量にとって有用である。このように、電極上の捕獲プローブの量をハイブリダイズした二本鎖核酸の量に比較し、サンプル中の標的配列の量を定量することができる。これはセンサーまたはシステムの内部調整として作用するためにきわめて意味がある。これは、同様ではあるが異なる制御システムに依存するよりもむしろ、検出に使用する同じ分子に関しては、標的の添加に先立つまたはその後の測定を可能とする。このように、検出に使用する実際の分子は何らかの実験に先立ち定量することが可能である。これが先行方法にまさる有意な利点である。
【0294】
好適な態様において、捕獲プローブ核酸は絶縁体を介して共有結合により電極に付着する。アルキル基などの絶縁体に核酸が付着することは周知であり、これらの部分を含むバックボーンとしてのリボースまたはリン酸エステルを包含する基礎またはバックボーンに対して、または核酸類似体の代替バックボーンに対して実施し得る。
【0295】
好適な態様においては、図中に一般的に描出するように、表面上に1つ以上の異なる捕獲プローブ種が存在してもよい。ある態様では、以下により詳しく説明するように、1つの型の捕獲プローブまたは1つの型の捕獲プローブ伸長が存在してもよい。あるいは、異なる複数の捕獲プローブ、または多様な異なる捕獲伸長プローブと共に一個の捕獲プローブを使用することもできる。同様に、比較的短いプローブ配列を含む補助的補足プローブであって、表面でのETM濃度を上昇せしめるこのシステムの“タックダウン”(張付け)成分、例えば、リクルート・リンカーに対して使用し得るプローブを使用することが望ましい。
【0296】
このように、本発明は導電性オリゴマーと捕獲プローブを含む単層を含んでなる、核酸の検出システムに有用な電極を提供する。好適な態様において、該組成物はさらに標識プローブを含んでなる。標識プローブは核酸であり、一般に一本鎖であるが、以下により詳しく説明するように、二本鎖部分を含んでいてもよい。標識プローブは下記定義のアッセイ複合体成分にハイブリダイズし得る第一部分と、アッセイ複合体成分にハイブリダイズしない第二成分を含んでなり、少なくとも1つの共有結合により付着したETMを含んでなる。
【0297】
このように、共有結合により付着したETMを有する標識プローブが提供される。本明細書において“電子供与部分”、“電子受容部分”、および“ETM”(ETM)という用語またはその文法的等価物は一定条件下において電子伝達し得る分子をいう。理解すべきことは、電子供与および受容能力は相対的であるということである;すなわち、一定の実験条件下で電子を失い得る分子が異なる実験条件下で電子を受け入れることができるということである。理解すべきことは、可能な電子供与部分および電子受容部分の数が非常に多いということ、また、電子伝達化合物の当業者は本発明において多数の化合物を利用し得るということである。好適なETMは、これらに限定されるものではないが、遷移金属複合体、有機ETM、および電極などである。
【0298】
好適な態様において、ETMは遷移金属複合体である。遷移金属とはその原子が部分的なまたは完全な電子のd殻をもつものである。本発明に適切な遷移金属は上に掲載した。
【0299】
遷移金属は上記定義の様々なリガンドLと複合体を形成し、技術上周知の適切な遷移金属複合体となる。
【0300】
遷移金属複合体に加えて、他の有機電子供与体および受容体が本発明に使用する核酸に共有結合により付着し得る。これらの有機分子は、これらに限定されるものではないが、リボフラビン、キサンテン染料、アジン染料、アクリジンオレンジ、二塩化N,N’−ジメチル−2,7−ジアザピレニウム(DAP2+)、メチルビオロゲン、臭化エチジウム、二塩化N,N’−ジメチルアントラ(2,1,9−def:6,5,10−d’e’f’)ジイソキノリン(ADIQ2+)などのキノン類;ポルフィリン類(四塩化[メゾ−テトラキス(N−メチル−x−ピリジニウム)ポルフィリン])、塩酸バルラミン・ブルーB、ビンドシェドラー・グリーン(Bindschedler's green);2,6−ジクロロインドフェノール、2,6−ジブロモフェノールインドフェノール;ブリリアント・クレスト・ブルー(塩化3−アミノ−9−ジメチル−アミノ−10−メチルフェノキシアジン)、メチレン・ブルー;ナイル・ブルーA(硫酸アミノナフトジエチルアミノフェノキサジン)、インジゴ−5,5’,7,7’−テトラスルホン酸、インジゴ−5,5’,7−トリスルホン酸;フェノサフラニン、インジゴ−5−モノスルホン酸;サフラニンT;塩化ビス(ジメチルグリオキシマト)鉄(II);インズリン・スカーレット、ニュートラル・レッド、アントラセン、コロネン、ピレン、9−フェニレンアントラセン、ルブレン、ビナフチル、DPA、フェノチアジン、フルオランテン、フェナントレン、クリセン、1,8−ジフェニル−1,3,5,7−オクタテトラセン、ナフタレン、アセナフタレン、ペリレン、TMPDおよびその類似体、およびこれら化合物の置換誘導体などである。
【0301】
一態様において、電子供与体および受容体は技術上知られるように酸化還元タンパク質である。しかし、多くの態様において酸化還元タンパク質は好ましくない。
【0302】
特異的ETMの選択は以下に一般的に概説するように、使用される電子伝達検出のタイプにより影響を受ける。好適なETMはメタロセンであり、特にフェロセンが好適である。
【0303】
理論に囚われなければ、“メカニズム−2”のシステムにおいて、電子伝達はETMがある程度単層に貫入する(“寄り付く”)ことができる場合に容易となると思われる。すなわち、一般に、疎水性SAMと共に用いる疎水性ETMは、荷電しているかまたはより親水性であるETMより、より良好な(より大きな)シグナルを生じる。このように、例えば、溶液中のフェロセンは実施例の単層に貫入することが可能であり、電気管路が存在する場合にシグナルを生じる一方、溶液中のフェロシアニドのシグナルは僅かであるか、まったく生じない。このように、一般に、疎水性のETMはメカニズム−2のシステムにおいて好適である;しかし、RuおよびOs複合体などの遷移金属複合体は、荷電を有しはするが、ビピリジンまたはフェナンスロリンなど、1つ以上の疎水性リガンドをもち、好適なシグナルをも生じる。同様に、ETMと電極間の電子伝達は、ETMにある程度の柔軟性を可能とするリンカーまたはスペーサーの使用により容易となり、単層に貫入する;かくして、本発明のN6組成物はETMを核酸に付着させる炭素4個のリンカーを有する。さらに、本明細書に概説するように、ETM/単層の組み合わせについての選択は、遺伝子分類の中で開発され得る。
【0304】
好適な態様においては、複数のETMが使用される。実施例に示すように、複数のETMの使用はシグナル増幅を可能とし、かくして、より高感度の検出限界を可能とする。以下に考察するように、相補性鎖にハイブリダイズする核酸上に複数のETMを使用すると、その数、付着部位および多数のETM間の空間に依存して、ハイブリダイゼーション複合体のTmsに減少を引起すが、一方、これは相補性配列にハイブリダイズしないので、ETMがリクルート・リンカー上にある場合、因子とはならない。従って、複数のETMが好ましく、リクルート・リンカー当たり少なくとも約2個のETMが好ましく、特に少なくとも約10個が好ましく、とりわけ少なくとも約20ないし50個が好ましい。ある場合には、非常に大量のETM(100〜1,000)が使用し得る。
【0305】
当業者が認めるように、ETMを含んでなる標識プローブ(またはある態様においては標的)の部分(本明細書では“リクルート・リンカー”または“シグナル搬送体”という)は核酸であるか、あるいはETMに標識プローブの第一ハイブリッド形成性部分を連結する非核酸リンカーであり得る。すなわち、この標識プローブ部分は容易に合成し得るが、ハイブリダイゼーションを必要としないので、核酸である必要はない。ある態様においては、以下に詳しく説明するように、リクルート・リンカーは二本鎖部分を含んでいてもよい。このようにして、当業者が認めるように、使用し得る様々な形状が存在する。好適な態様において、リクルート・リンカーは核酸(類似体も含む)であり、ETMの付着は以下のものを経由し得る:(1)塩基;(2)バックボーン、例えば、リボース、リン酸エステル、または核酸類似体の相当する構造;(3)下記のヌクレオシド置換;または(4)下記のごときメタロセン・ポリマー。好適な態様においては、リクルート・リンカーは非核酸であり、ETM置換基を含むメタロセン・ポリマーまたはアルキル型ポリマー(以下により詳しく説明するように、ヘテロアルキルを包含する)であり得る。これらの選択を一般的に図に示す。
【0306】
好適な態様において、リクルートリンカーは核酸であり、共有結合により付着したETMを含んでいる。ETMは様々な位置で核酸内のヌクレオシドに付着していてもよい。好適な態様は、(1)ヌクレオシド塩基への付着、(2)塩基置換体としてのETMの付着、(3)リボース−リン酸バックボーンのリボースまたはリン酸部分への、または核酸類似体の類似構造へなどの核酸バックボーンへの付着、および(4)メタロセンポリマーを介しての付着、などであるが、これらに限定されるものではないが、後者が好ましい。
【0307】
さらに、下記のように、リクルートリンカーが核酸である場合、第二のラベルプローブを用いることが望ましく、該プローブは本明細書に定義のように第一ラベルプローブの一部にハイブリッド形成する第一部分とリクルートリンカーを含んでなる第二部分を有する。これは一般的に図16Hに図示される;これはアンプリファイアープローブの使用に似ているが、第一および第二ラベルプローブ両者がETMを含んでなる場合は例外である。
【0308】
好適な態様において、導電性オリゴマーの付着のために、既に一般的に概説されているようにヌクレオシドの塩基に付着する。付着は内部ヌクレオシドまたは末端ヌクレオシドに対してなされる。
【0309】
共有結合による塩基への付着は選定されたETM上の部分に依存するが、一般には上記されているように、導電性オリゴマーが塩基に付着するのに似ている。付着は、一般には、塩基のどの部位になされてもよい。好適な態様において、ETMは遷移金属複合体であり、かくして、適切な金属リガンドの塩基への付着がETMの共有結合による付着に導く。あるいは、当業者が認識するように、同様のタイプの結合を有機ETMの付着に使用してもよい。
【0310】
一態様において、シトシンのC4付着アミノ基、アデニンのC6付着アミノ基、またはグアニンのC2付着アミノ基が遷移金属リガンドとして使用し得る。
【0311】
芳香族基を含むリガンドは技術上既知のようにアセチレン結合を介して付着することができる(Comprehensive Organic Synthesis, Trost et al., Ed., Pergamon Press, Chapter 2.4; Coupling Reactions Between sp2 and sp Carbon Centers, Sonogashira, pp 521-549, and pp 950-953参照; 出典明示により本明細書に組込まれている)。構造30は金属イオンと他の必要なリガンド存在下での代表的な構造を図示する;構造30ではウリジンを図示しているが、本明細書全体について、他の塩基を使用することも可能である。
【0312】
【化30】
Laはリガンドであり、窒素、酸素、イオウまたはリン供与リガンドまたはメタロセンリガンドなどの有機金属リガンドを包含する。適切なリガンドLaはフェナントロリン、イミダゾール、bpyおよびterpyなどであるが、これらに限定されるものではない。LrおよびMは上記定義のとおりである。また、当業者が認識するように、リンカー(“Z”)はヌクレオシドとETMの間に含まれる。
【0313】
同様に、導電性オリゴマーとしては、その結合がリンカーを用いてなされるが、リンカーはアミド結合を利用することができる(一般的に、Telser et al., J. Am. Chem. Soc. 111: 7221-7226 (1989); Telser et al., J. Am. Chem. Soc. 111: 7226-7232 (1989)参照;両文献を特に出典明示により本明細書の一部とする)。これらの構造は下記構造31に一般的に図示する。再度ここではウリジンを塩基として使用しているが、上記同様、他の塩基も使用し得る。
【化31】
【0314】
この態様において、Lは上記定義のリガンドであり、LrおよびMも上記定義のとおりである。好ましくは、Lはアミノ、phen、bypおよびterpyである。
【0315】
好適な態様において、ヌクレオシドに付着したETMはメタロセンである;すなわち、構造31のLおよびLrは両者ともメタロセンリガンドであり、上記のLm 'である。構造32は好適な態様を図示するものであり、この場合メタロセンはフェロセン、塩基はウリジンであるが、他の塩基も使用可能である。
【化32】
【0316】
予備データが示唆するところでは、構造32は環化可能であって、第二アセチレン炭素原子がカルボニル酸素を攻撃し、フラン様構造を形成する。好適なメタロセンはフェロセン、コバルトセンおよびオスミウムオセンなどである。
【0317】
好適な態様において、ETMは核酸のリボース−リン酸バックボーンのいずれかの位置、すなわち、5'または3'末端またはいずれかの内部ヌクレオシドでリボースに付着している。この場合のリボースはリボース類似体を包含する。技術的に知られているように、リボースの2'または3'位置のいずれかで修飾されているヌクレオシドは、窒素、酸素、イオウおよびリン−含有修飾により可能となし得る。アミノ−修飾および酸素−修飾リボースが好ましい。一般的には、PCT公開WO95/15971(出典明示により本明細書の一部とする)を参照されたい。これらの修飾基は遷移金属リガンドとして、または他の遷移金属リガンドおよび有機金属リガンド付着のための化学的に官能性の部分、または当業者認知の有機電子供与体部分として使用することができる。この態様において、本明細書において“Z”として図示したようなリンカーも同様に、またはリボースとETM間の導電性オリゴマーも使用可能である。好適な態様では、リボースの2'または3'位での付着を利用するが、2'位置が好ましい。このように例えば、構造13、14および15に図示された導電性オリゴマーはETMに置換えることができる;あるいは、ETMは導電性オリゴマーの遊離末端に加えてもよい。
【0318】
好適な態様において、メタロセンはETMとして作動し、下記構造33に図示するようにアミド結合を介して付着する。例示ではメタロセンがフェロセンである場合の好適な化合物につきその合成を概説する。
【化33】
【0319】
好適な態様においては、アミンの結合が構造34に一般的に図示するように使用される。
【化34】
Zは本明細書に定義のごときリンカーであり、1〜16原子のものが好ましく、2〜4原子がとりわけ好ましい。tは1または0である。
【0320】
好適な態様においては、オキソ結合が構造35に一般的に図示するように使用される。
【化35】
構造35において、Zは本明細書に定義のとおりのリンカーであり、tは1または0である。好適なZリンカーは、(CH2)nおよび(CH2CH2O)nなどのヘテロアルキル基を含むアルキル基を包含し、nは1ないし10が好ましく、n=1ないし4がとりわけ好ましく、n=4が特に好ましい。
【0321】
他のヘテロ原子を利用する結合も可能である。
【0322】
好適な態様において、ETMは核酸のリボース−リン酸バックボーンのいずれかの位置でリン酸エステルに付着する。これは様々な様式でなされる。一態様において、ホスホジエステル結合類似体、例えば、ホスホラミドまたはホスホルアミダイト結合は核酸中に取込まれていてもよく、その場合、ヘテロ原子(すなわち、窒素)が遷移金属リガンドとして作動する(PCT公開WO95/15971参照;出典明示により本明細書の一部とする)。あるいは、構造23および24に図示されている導電性オリゴマーをETMに置換えてもよい。好適な態様において、組成物は構造36に示した構造を有する。
【化36】
【0323】
構造36において、ETMはリン酸エステル結合を介して、一般にはリンカーZを使用することにより付着する。好適なZリンカーは、(CH2)n、(CH2CH2O)nなどのヘテロアルキル基を含むアルキル基を包含し、nは1ないし10が好ましく、n=1ないし4がとりわけ好ましく、n=4が特に好ましい。
【0324】
ETMがヌクレオシドの塩基またはバックボーンに付着している場合、より詳しく下に概説するように、“樹枝状”構造を介してETMを付着させることが可能である。図に一般的に示すように、アルキルベースのリンカーを用い、各枝の末端に1個またはそれ以上のETMを含む複数の分枝構造を創り出すことができる(内部ETMを同様に使用することもできるが)。一般に、これは多数のヒドロキシ基を含む分枝点を創り出すことにより実施されるが、このヒドロキシ基を用いてさらなる分枝点を加えることができる。末端のヒドロキシ基は次いでホスホルアミダイト反応に用い、一般的にはヌクレオシド置換およびメタロセンポリマー反応のために以下に実施するように、ETMに加えることができる。分枝点は内部にあっても末端にあってもよく、化学的分枝点であってもヌクレオシド分枝点であってもよい。
【0325】
好適な態様において、メタロセンなどのETMは、ETMとして作動するように“ヌクレオシド置換体”として使用する。例えば、フェロセンの2つのシクロペンタジエン環の間の距離は、二本鎖核酸中の2つの塩基間の直交距離に類似している。フェロセンに加え、他のメタロセン、例えば、コバルトまたはルテニウムなどを含むメタロセンなどの空気安定性メタロセンを使用することができる。このように、メタロセン部分は、構造37(リボース−リン酸バックボーンを有する核酸)および構造38(ペプチド核酸バックボーン)に一般的に図示するように、核酸のバックボーンに取込んでもよい。構造37および38ではフェロセンを図示しているが、当業者が認識するように、他のメタロセンも同様に使用し得る。一般に、空気に安定なメタロセンが好ましく、金属としてルテニウムおよびコバルトを利用するメタロセンが包含される。
【0326】
【化37】
構造37において、Zは上記定義のリンカーであり、一般的には短いアルキル基をもち、酸素などのヘテロ原子を含むものが好ましい。一般に、重要なことはリンカーの長さであり、より詳しく以下に説明するように、二本鎖核酸の最少の摂動がもたらされるようにする。このように、メチレン、エチレン、エチレングリコール、プロピレンおよびブチレンがすべて好適であり、エチレンおよびエチレングリコールが特に好ましい。さらに、各Zリンカーは同一であっても、異なってもよい。構造37はリボース−リン酸バックボーンを表示しているが、当業者が認識するように、リボース類似体およびリン酸エステル結合類似体などの核酸類似体を使用してもよい。
【0327】
【化38】
構造38において、好適なZ基は上記掲載のとおりであるが、再度、各Zリンカーは同一または異なってもよい。上述のように、他の核酸類似体も同様に使用し得る。
【0328】
さらに、上記の構造と検討ではメタロセン、特にフェロセンを描出しているが、同じ一般的な着想を用い、下記のように、メタロセンに加えヌクレオシドの置換体として、またはポリマーの態様において、ETMを付加することができる。このように、例えば、1、2または3個(またはそれ以上)のリガンドを含んでなる、メタロセン以外の遷移金属複合体である場合、該リガンドをフェロセンについて表現したように機能化し、ホスホルアミダイト基の付加を可能とすることができる。特に、この態様において好ましいのは、少なくとも2つの環(例えば、アリールおよび置換アリール)リガンドを含んでなる複合体であり、その場合、各リガンドはホスホルアミダイト化学による付着のための官能基を含んでなる。当業者が認識するように、このタイプの反応は、ここで生じるシグナルの増幅を可能とするために、核酸バックボーンの一部としてまたは核酸の“側鎖基”としてETMのポリマーを創出するが、正しい化学基を含むように官能化し得る実質的にいずれのETMによっても実施することができる。
【0329】
このように、フェロセンなどのメタロセン(または他のETM)を核酸のバックボーンに挿入することにより、核酸類似体が調製される;すなわち、本発明は少なくとも1個のメタロセンを含んでなるバックボーンをもつ核酸を提供する。このことはバックボーンに付着した、すなわち、リボース、リン酸エステルなどを介して、メタロセンを有する核酸から識別される。すなわち、伝統的な核酸または類似体から造られた2つの核酸(この場合の核酸は単一のヌクレオシドを包含する)それぞれは、メタロセンを介して互いに共有結合により付着することができる。異なる観点で、メタロセン誘導体または置換メタロセンが提供されるが、その場合は、メタロセンの2つの芳香環それぞれが核酸置換基を有する。
【0330】
さらに、より詳しく以下に説明するように、間にヌクレオチドをもつか、および/または隣接するメタロセンをもつ1個より多いメタロセンをバックボーンに取込ませることが可能である。隣接するメタロセンをバックボーンに付加する場合、これは“メタロセンポリマー”としての下記の工程と同じである;すなわち、バックボーン内にメタロセンポリマーの領域が存在する。
【0331】
核酸置換基に加え、ある場合には、メタロセン(またはETM)の芳香環の一方または双方にさらなる置換基を付加することが望ましい。例えば、これらのヌクレオシド置換体は一般に実質的に相補的な核酸、例えば、標的配列またはもう一つのプローブ配列とハイブリッドを形成すべきプローブ配列の部分なので、置換基をメタロセン環に付加して、反対鎖上の1個または複数個の塩基に水素結合形成するのを容易にすることが可能である。これらはメタロセン環上のどの位置に付加してもよい。適切な置換基は、アミド基、アミン基、カルボン酸、および置換アルコールを含むアルコール類であるが、これらに限定されるものではない。さらに、これらの置換基は同様にリンカーを介して付着させることができるが、一般的には好ましくない。
【0332】
さらに、ETM、特にフェロセンなどのメタロセン上に置換基を付加してETMのレドックス特性を変化させてもよい。このように、例えばある態様では、より詳しく以下に記載するように、異なる様式で(すなわち、塩基またはリボース付着)、異なるプローブ上、または異なる目的で(例えば、校正または内部基準として)付着した異なるETMを有することが望ましい。このように、メタロセン上に置換基を付加することは、2つの異なるETMの識別を可能とする。
【0333】
これらのメタロセン−バックボーン核酸類似体を生成させるために、中間成分も提供される。このように、好適な態様において、本発明は構造39に一般的に表示するように、ホスホルアミダイト・メタロセンを提供する。
【化39】
【0334】
構造39において、PGは保護基であり、一般に核酸の合成に適した基であって、DMT、MMTおよびTMTなどがすべて好適である。芳香環はメタロセンの環であるか、または遷移金属複合体もしくは他の有機ETM用リガンドの芳香環であることができる。芳香環は同一または異なってもよく、また、本明細書に記述のように置換されていてもよい。
【0335】
構造40はフェロセン誘導体を図示する:
【化40】
【0336】
これらのホスホルアミダイト類似体は技術上既知の標準的オリゴヌクレオチド合成に追加することができる。
【0337】
構造41はフェロセンペプチド核酸(PNA)モノマーを図示し、技術上既知であり、各図および各実施例中に示しているようにPNAの合成に追加することができる:
【化41】
構造41において、PG保護基はペプチド核酸合成に使用するのに適しており、MMT、boc、およびFmocなどが好ましい。
【0338】
これら同一の中間化合物を用いてETMまたはメタロセンポリマーを形成することが可能であり、これらは、より詳しく以下に説明するように、バックボーン置換体としてよりもむしろ核酸に付加される。
【0339】
好適な態様において、ETMはポリマーとして、例えば、メタロセンポリマーとして、本明細書およびUS特許番号5,124,246に概説されているように、“分枝したDNA”態様と同様の“分枝した”構成で、修飾した機能化ヌクレオチドを用い付着させる。一般的な着想は以下のとおりである。修飾されたホスホルアミダイトヌクレオチドが生成されるが、それはメタロセンなどのホスホルアミダイトETMの付着に使用し得る遊離のヒドロキシ基を最終的に含むことができる。この遊離のヒドロキシ基は塩基またはリボースもしくはリン酸エステルなどのバックボーン上に存在し得る(当業者も認識するであろうが、他の構造を含む核酸類似体も使用し得る)。修飾されたヌクレオチドを核酸に取込み、ヒドロキシ保護基を除去し、遊離のヒドロキシを生じる。構造39および40において上述したように、メタロセンなどのホスホルアミダイトETMの付加により、メタロセンETMなどのETMを付加する。別のメタロセン類などのホスホルアミダイトETM類の付加により、本明細書中で特にフェロセンについて示したような“メタロセンポリマー群”を含む“ETMポリマー群”を形成することができる。さらに、ある態様においては、図12に一般的に描出したように、“キャッピング”基をポリマー中の末端ETMに、例えば、最終リン酸エステル基をメタロセンに付加することによりポリマーの溶解性を上昇させることが望ましい。他の適切な溶解度上昇性“キャッピング”基は当業者が認識するであろう。留意すべきことは、これらの溶解度上昇性基は、リガンド環、例えば、本明細書で検討したメタロセンの他の位置でポリマーに付加させることができることである。
【0340】
この一般的な着想の好適な態様を図面に概説する。この態様において、ホスホルアミダイトヌクレオチドのリボースの2'位置は、この場合はオキソ結合を介して保護されたヒドロキシ基を含むように先ず官能化するが、リンカーの数については、Zリンカーについて本明細書で一般的に記載するようにいずれの数も使用し得る。保護修飾されたヌクレオチドは、次いで標準的なホスホルアミダイトの化学により伸長する核酸中に取込む。保護基を除去し、遊離のヒドロキシ基を用い、再び標準的なホスホルアミダイトの化学を用い、フェロセンなどのホスホルアミダイトメタロセンを付加させる。同様の反応は核酸の類似体についても可能である。例えば、構造41に示したペプチド核酸とメタロセンモノマーを用い、メタロセンポリマーを含むペプチド核酸構造を生成させることができた。
【0341】
このように、本発明は、一般的に図12おおび13に図示したように、メタロセンポリマーの“分枝”を含む核酸のリクルートリンカーを提供する。好適な態様ではメタロセンの長さが1ないし約50個、好ましくは約5ないし約20個、とりわけ好ましくは約5ないし約10個のメタロセンポリマーを利用する。
【0342】
さらに、リクルート・リンカーが核酸である場合、ETM付着を任意の組合わせをなし得る。
【0343】
好適な態様において、リクルートリンカーは核酸ではなく、代りに如何なる種類のリンカーまたはポリマーであってもよい。当業者が認識するように、ETMを含むように修飾し得る一般的なリンカーまたはポリマーを用いることができる。一般に、ポリマーまたはリンカーは適度に溶解すべきであり、ETM付加のための適切な官能基を含むべきである。
【0344】
本明細書にて用いる場合、“リクルートポリマー”とは少なくとも2または3個のサブユニットを含んでなり、共有結合により付着している。モノマーサブユニットの少なくともある部分はETMの共有結合による付着のための官能基を含む。ある態様において、カップリング部分はサブユニットとETMとを共有結合させるために用いる。付着のための好適な官能基は、アミノ基、カルボキシ基、オキソ基およびチオール基などであって、アミノ基が特に好ましい。当業者が認識するように、多様なリクルートポリマーが可能である。
【0345】
適切なリンカーとしては、アルキルリンカー(ヘテロアルキル((ポリ)エチレングリコール型構造を含む)、置換アルキル、アリールアルキルリンカーを含む)を包含するが、これらに限定されるものではない。ポリマーについては上記のごとく、リンカーはETM付着のための1個以上の官能基を含んでなり、付着は当業者認識のとおりに、例えば、周知のホモ−またはヘテロ−二官能性リンカーを使用することによって実施される(1994年Pierce Chemical Companyのカタログ、架橋剤に関する技術のセクション、155〜200ページ参照。出典明示により本明細書の一部とする)。
【0346】
適切なリクルートポリマーは、機能化したスチレン、例えば、アミノスチレン、機能化したデキストラン、およびポリアミノ酸などを包含するが、これらに限定されるものではない。好適なポリマーは、ポリリジンなどのポリアミノ酸(ポリ−D−アミノ酸およびポリ−L−アミノ酸両方)、およびリジンと特に好適な他のアミノ酸を含むポリマーなどである。他の適切なポリアミノ酸は、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、リジンとグルタミン酸またはアスパラギン酸との共重合体、リジンとアラニン、チロシン、フェニルアラニン、セリン、トリプトファン、および/またはプロリンとの共重合体などである。
【0347】
好適な態様において、リクルートリンカーは上記のようにメタロセンポリマーが含まれる。
【0348】
ラベルプローブ第一部分へのリクルートリンカーの付着は、当業者が認識するように、リクルートリンカーの組成に依存する。リクルートリンカーが核酸である場合、これは、一般に、要求されるETM含有ヌクレオシドの取込みとともに、標識プローブの第一部分の合成の際に形成される。あるいは、ラベルプローブの第一部分とリクルートリンカーが別個に造られ、次いで付着してもよい。例えば、相補性の重なり合う区分があって、例えば、技術的に既知のプソラレンを使用することにより、化学的に架橋し得る二本鎖核酸の区分を形成させてもよい。
【0349】
非核酸リクルートリンカーを使用する場合、リクルートリンカーのリンカー/ポリマー付着は一般に、当業者が認識するような標準的化学技法を用いて実施される。例えば、アルキル−ベースのリンカーを使用する場合、付着は核酸への絶縁体付着と同様である。
【0350】
さらに、核酸と非核酸の混合物であるリクルートリンカーを、線状形態(すなわち、核酸セグメントがアルキルリンカーとともに結合している)または分枝形態(ETMを含み、かつ、さらに分枝していてもよいアルキル“分枝”をもつ核酸)で入手することが可能である。
【0351】
好適な態様において、ETMを担持するのは、標識プローブのリクルートリンカーよりもむしろ標的配列それ自体である。例えば、以下により詳しく説明するように、本発明の各ETMを含むヌクレオチド三リン酸を、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に際し、増殖する核酸に酵素的に加えることが可能である。当業者が認めるように、幾つかの酵素は修飾したヌクレオチドに対し一般的に寛容(tolerate)であることが示されているが、本発明の修飾ヌクレオチドの一部、例えば、“ヌクレオシド置換”の態様および恐らく一部リン酸エステルの付着は、増殖する核酸への取込みを可能とする酵素により認識されることもあり、されないこともある。したがって、この態様での好適な付着はヌクレオチドの塩基またはリボースに対するものである。
【0352】
このように、例えば、当業者周知のように、標的配列のPCR増幅は、その配列に一般にランダムに取込まれたETMを含んでいる標的配列を与えることとなる。本発明のシステムは、図16A、16Bおよび16Dに一般的に描出したように、これらのETMを用いて検出可能となるように構成することができる。
【0353】
別法として、より詳細に以下に説明するように、ETMを含んでなるヌクレオチドを核酸の末端、例えば、標的核酸に酵素的に付加することが可能である。この態様においては、有効な“リクルートリンカー”を標的配列の末端に付加させ、それを検出に使用することができる。このように、本発明は、導電性オリゴマーの単層と捕獲プローブを含んでなる電極を利用する組成物、およびアッセイ複合体の成分にハイブリッド形成することの可能な第一部分と、アッセイ複合体の成分にハイブリッド形成せず、少なくとも1つの共有結合により付着した電子移動部分を含んでなる第二部分とを含んでなる標的配列を提供する。同様に、これらの組成物を利用する方法も提供する。
【0354】
プローブ配列、すなわち、相補性配列にハイブリッド形成するように設計された配列にETMを連接させることも可能である。このように、ETMは非リクルートリンカーにも同様に付加させることができる。例えば、アッセイ複合体の成分にハイブリッド形成するラベルプローブ断片、例えば、第一部分に、または上記に記載の標的配列に付加したETMが存在してもよい。これらのETMは一部の態様において電子移動検出に使用してもよく、あるいはその位置とシステムによっては使用することができない。例えば、ある態様において、例えば、図16Aに図示したように、無作為に取込ませたETMを含有する標的配列が捕獲プローブに直接ハイブリッド形成する場合には、捕獲プローブにハイブリッド形成する部分にETMが存在する。もし捕獲プローブが導電性オリゴマーを用いる電極に付着するならば、これらのETMはすでに説明したように電子移動を検出するのに使用することができる。あるいは、これらのETMは特異的に検出し得ない可能性もある。
【0355】
同様に、ある態様においては、リクルートリンカーが核酸である場合、リクルートリンカーの一部またはすべてが二本鎖であることが望ましい。一態様においては、第二リクルートリンカーが存在し、それが実質的に第一リクルートリンカーに相補的であり、第一リクルートリンカーにハイブリッド形成し得ることがある。好適な態様において、第一リクルートリンカーは共有結合により付着したETMを含んでなる。別の態様において、第二リクルートリンカーはETMを含み、第一リクルートリンカーは含まず、ETMは第二リクルートリンカーが第一に対してハイブリッド形成することによりその表面に集められる。さらにもう一つの態様においては、第一および第二リクルートリンカー双方がETMを含んでなる。留意すべきことは、上記のように、大量数のETMを含んでなる核酸は、同様にはハイブリッド形成しない、すなわち、ETMの付着部位と特性に依存してTmが低下することがある。かくして、一般に、多数のETMが鎖のハイブリッド形成に用いられるとき、一般には約5より小さく、好ましくは約3より小さくする。あるいはETMは、介在するヌクレオチドが充分にハイブリッド形成して良好な反応速度が可能となるように十分な空間距離をとるべきである。
【0356】
一態様において、非共有結合により付着させたETMを使用し得る。一態様において、ETMはハイブリダイゼーションの指標である。ハイブリダイゼーションの指標は、二本鎖核酸と優先的に会合するETMがミランらの方法と同様に、通常とは逆に加えられるときに機能する(Millan et al., Anal. Chem. 65:2317-2323 (1993); Millan et al., Anal. Chem. 662943-2948 (1994);両文献を出典明示により本明細書の一部とする)。この態様においては、表面でETMハイブリダイゼーション指標と二本鎖核酸との会合により、ETMの局部濃度が増大するなら、導電性オリゴマーを含む単層を用い、それをモニターすることができる。ハイブリダイゼーション指標はインターカレーターおよび小溝および/または主溝結合部分を包含する。好適な態様においては、インターカレーターを用いてもよい;インターカレーション(挿入)は一般に二本鎖核酸の存在下にのみ起こるので、二本鎖核酸の存在下においてのみETMは濃縮される。遷移金属複合体ETMのインターカレーションは技術上既知である。同様に、小溝および主溝結合部分、例えばメチレンブルーなどは本態様においても使用し得る。
【0357】
同様に、本発明のシステムは、ナピアーらが一般的に記載しているように、非共有結合により付着させたETMを利用し得る(Napier et al., Bioconj. Chem. 8:906 (1997);出典明示により本明細書の一部とする)。この態様においては、DNA存在の結果としての一定分子の酸化還元状態の変化(すなわち、ルテニウム複合体によるグアニン酸化)が、同様に導電性オリゴマーを含んでなるSAMを用い、検出することができる。
【0358】
このように、本発明は導電性オリゴマーを含む単層を含んでなる電極であって、一般に、捕獲プローブ、および標的配列またはETM含有のリクルート・リンカーを含む標識プローブを包含する電極を提供する。本発明のプローブは標的配列に相補性(下に説明するように、サンプルの標的配列または他のプローブ配列に対し)となるように設計し、標的配列と本発明プローブのハイブリダイゼーションが起こるようにする。下に概説するように、この相補性は完全である必要はない;標的配列と本発明の一本鎖核酸間のハイブリダイゼーションを阻害するような、相当数の塩基対ミスマッチがあってもよい。しかし、もし突然変異の数が多すぎて、最少の緊縮ハイブリダイゼーション条件下でもハイブリダイゼーションが起こらないならば、その配列は相補的標的配列ではない。このように、本明細書において“実質的に相補的”とは、プローブが正常の反応条件下でハイブリダイズするために標的配列に十分に相補的であることを意味する。
【0359】
一般に、本発明の核酸組成物はオリゴヌクレオチドプローブとして有用である。当業者には明らかなように、プローブの長さは、標的配列の長さおよびハイブリダイゼーションと洗浄条件により変わる。一般に、オリゴヌクレオチドプローブは約8ないし約50ヌクレオチドの範囲であり、好ましくは約10ないし約30であり、特に好ましいのは約12ないし約25である。ある場合には、非常に長いプローブ、例えば、50ないし200〜300ヌクレオチドの長さのものを用いてもよい。このように、本明細書に描出した構造において、ヌクレオシドは核酸と置換え得る。
【0360】
多様なハイブリダイゼーション条件が本発明において使用し得るが、高度、中程度および低度の緊縮条件などである;例えば、Maniatis et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, 1989, and Short Protocols in Molecular Biology, ed. Ausubel, et al.(出典明示により本明細書の一部とする)参照。ハイブリダイゼーション条件は技術上知られるように、非イオン性バックボーン、すなわちPNAを用いても変わり得る。さらに、架橋剤が標的結合に続いて二本鎖のハイブリダイゼーション複合体を架橋する、すなわち、共有結合により付着させるために加えられてもよい。
【0361】
当業者には明らかなように、本発明のシステムは、図に一般的に描出したように、多数の異なる形状の上に取り得る。一般に、使用し得るシステムには3つのタイプがある:(1)標的配列それ自体がETMで標識されるシステム(図16A、図16B、および図16D参照);(2)標識プローブが直接標的配列にハイブリダイズするシステム(図16Cおよび図16H参照);および(3)標識プローブが間接的に標的配列に、例えば、増幅プローブの使用を介してハイブリダイズするシステム(図16E、図16Fおよび図16G参照)。
【0362】
これら3つのシステムすべてにおいて、要求されるというわけではないが、電極表面に標的配列を固定するのが好ましい。これは捕獲結合リガンドと所望により1つまたはそれ以上の捕獲伸長プローブを用いて好適に実施される。捕獲プローブのみを利用する場合には、各標的配列に対しユニークな捕獲プローブをもつことが必要である;すなわち、表面はユニークな捕獲プローブを含むように設計しなければならない。あるいは、捕獲伸長プローブを使用することが可能であり、それが“普遍的”表面、すなわち、全ての標的配列を検出するのに使用し得る単一タイプの捕獲プローブを含む表面を可能とする。“捕獲伸長”プローブは一般的に図14などに描出され、捕獲プローブの全部または一部にハイブリダイズする第一部分と、標的配列の一部分にハイブリダイズする第二部分とをもつ。これが次いで設計された可溶性プローブの生成を可能とするが、当業者も認めるように、一般により簡単でコストも掛らない。本明細書(例えば図14C)に示すように、2つの捕獲伸長プローブを使用し得る。これは一般にアッセイ複合体を安定化するためになされる(例えば、標的配列が大きい場合、または大きな増幅プローブ(特に、分枝または樹枝状増幅プローブ)が使用される場合)。
【0363】
好適な態様において、核酸は以下に検討するSAMの形成後に加えられる(上記(4))。これは、当業者が認識するように種々の方法で実施し得る。一態様において、末端官能基を有する導電性オリゴマーは、活性化させたカルボン酸エステルとイソチオシアン酸エステルを利用する好適な態様により調製されるが、それは、図6に一般的に示すように、活性化させたカルボン酸エステルを用いて、核酸に取付けた一級アミンと反応しうる。これら二種類の試薬は水溶液中で安定であるという利点をもち、さらに一級アルキルアミンと反応する。しかし、塩基のうち、一級芳香族アミンおよび二級および三級アミンは反応してはならず、そのようにして、表面への、核酸の部位特異的付加が可能となるようにしなければならない。これがその表面上に既知方法(インクジェット、スポッティングなど)によるプローブ(捕獲プローブまたは検出プローブのいずれか、または両方)のスポッティングを可能とする。
【0364】
さらに、核酸を表面上に固定化するために用い得る多くの非核酸方法がある。例えば、結合パートナー対が利用し得る;すなわち、一方の結合パートナーは導電性オリゴマーの末端に付着させ、他方は核酸の末端に付着させる。これはまた核酸捕獲プローブを使用せずに実施し得る;すなわち、一方の結合パートナーは捕獲プローブとして作用し、他方は標的配列または捕獲伸長プローブのいずれかに付着する。すなわち、標的配列が結合パートナーを含むか、または標的配列にハイブリッド形成する捕獲伸長プローブが結合パートナーを含むかのいずれかである。適切な結合パートナー対は、ビオチン/ストレプトアビジンなどのハプテン対、抗原/抗体、NTA/ヒスチジンタグなどであるが、これらに限定されるものではない。一般に、より小型の結合パートナーが好ましく、そのようにして電子は核酸から導電性オリゴマー中へ移動し、検出を可能とする。
【0365】
好適な態様において、標的配列それ自体が修飾され結合パートナーを含む場合、結合パートナーは標的配列に酵素的に付着し得る修飾ヌクレオチドを介して、例えば、PCR標的増幅工程に際して付着する。あるいは、結合パートナーは標的配列に容易に付着する。
【0366】
あるいは、標的にハイブリッド形成するための核酸部分並びに結合パートナーを有する捕獲伸長プローブを利用してもよい(例えば、捕獲伸長プローブは結合パートナーに付着するのに使用されるアルキルリンカーなどの非核酸部分を含んでいてもよい)。この態様においては、安定のために標的の二本鎖核酸と捕獲伸長プローブとを、例えば、技術上既知のプソラレンを用い架橋することが望ましい。
【0367】
一態様において、該標的は捕獲プローブを用いる電極表面に結合しない。この態様において重要なことは、本明細書のすべてのアッセイについて、過剰のラベルプローブは検出前に除去すべきであり、アッセイ複合体(リクルートリンカー)は表面に接近させるべきことである。当業者が認識するように、これは他の方法で実施するのがよい。例えば、アッセイ複合体は、単層を含んでなる電極に付加されるビーズ上に存在してもよい。ETMを含むリクルートリンカーは、表面上へのビーズの重力沈降、ビーズ成分と表面間の静電気的または磁気的相互作用などの当技術分野で周知の技法を用い、上述の結合パートナー付着を用いて導電性オリゴマー表面に近接して設置することができる。あるいは、過剰のラベルプローブなどの過剰の試薬を除去した後、アッセイ複合体を、例えば、アッセイ複合体を表面に移動させるのに十分な電圧でシステムにパルスを与えて、表面に移着させることが可能である。
【0368】
しかし、好適な態様では、核酸捕獲プローブを介して付着させたアッセイ複合体を利用する。
【0369】
好ましい実施態様として、標的配列自体がETMを含む。上記に検討したように、このことは相当数の位置に取込まれたETMをもつ標的配列により実施し得ることであり、上記概説のとおりである。代表的な例を図16A、図16Bおよび図16Dに示す。この態様においては、このシステムのその他について、プローブと標的の3’−5’配向が、ETM含有構造(すなわち、リクルートリンカーまたは標的配列)が可能な限り単層の表面に接近するように、また、正しい配向となるように選択される。これは図面に一般的に示したように、絶縁体または導電性オリゴマーを介する付着により実施することができる。さらに、当業者が認めるであろうように、複数の捕獲プローブは、捕獲プローブの5’−3’配向が異なる場合である図16Dに描出したような形状で、または複数の捕獲プローブを用いた場合に標的の“ループ”が生成する場所で利用することができる。
【0370】
好ましい実施態様として、図16Cに一般的に描出したように、標識プローブが標的配列に直接ハイブリダイズする。これらの態様において、標的配列は、好ましくは、捕獲伸長プローブを含む捕獲プローブにより表面に固定するが、必ずしも必要ではない。次いで、標識プローブを用い、導電性オリゴマーからなる単層の表面近傍にETMをもってくる。好適な態様においては、複数の標識プローブを用いる;すなわち、標識プローブは標的配列(図中の標識化した141)にハイブリダイズする部分が多数の異なる標識プローブに対して異なり得るように設計し、その結果、シグナルの増幅が起こるが、その理由は複数の標識プローブがそれぞれの標識配列に結合し得るからである。このように、図に描出したように、nは少なくとも1の整数である。所望の感度、標的配列の長さ、標識プローブ当たりのETM数により、nの好適な範囲は1〜50、特に好ましくは約1ないし約20、そしてとりわけ好ましいのは約2ないし約5である。さらに、もし“一般の”標識プローブが望ましいのであれば、増幅プローブの使用について一般的に下に説明したように、標識伸長プローブを用いることができる。
【0371】
上記のように、この態様においては一般に、システムの形状と標識プローブの配置は単層表面に可能な限り近接してETMが集まるように設計する。
【0372】
好適な態様において、標識プローブは間接的に標的配列にハイブリダイズさせる。すなわち、本発明はシグナル増幅技術と電極上での電子伝達検出との新規な組合わせに用途を見出だすが、これは核酸実施態様について図16に一般的に描出したように、サンドイッチハイブリダイゼーションアッセイにとりわけ有用である。これらの態様において、本発明の増幅プローブはサンプル中の標的配列に直接または間接的に結合する。増幅プローブは、好ましくは標識プローブの結合に利用し得る比較的多数の増幅配列を含むので、検出可能なシグナルが有意に増加し、標的の検出限界が有意に改善され得る。これらの標識と増幅プローブ、および本明細書に記載の検出方法は、本質的に既知の核酸ハイブリダイゼーションによるいずれかの方式、例えば、標的を直接固相に結合する方式で、または標的が1つ以上の核酸に結合し、それが次いで固相に結合するサンドイッチハイブリダイゼーションアッセイにて、使用可能である。
【0373】
一般に、これらの態様は、以下のように説明し得る。増幅プローブは標的配列に直接(例えば、図16E)または標識伸長プローブの使用を介して(例えば、図16Fおよび図16G)ハイブリダイズするが、これは“一般的な”増幅プローブの調製を可能とする。標的配列は、好ましくは捕獲プローブを使用して電極上に固定するが、必ずしも必要ではない。好ましくは、増幅プローブは多様な増幅配列を含むが、ある態様においては、下記説明のように、増幅プローブは唯1つの増幅配列を含み得る。増幅プローブは多くの異なる形状をとることができる;例えば、分枝立体配座、樹枝状立体配座、または増幅配列の線状“ひも”などである。これらの増幅配列を使用して標識プローブとのハイブリダイゼーション複合体を形成し、電極を用いてETMを検出することができる。
【0374】
したがって、本発明は少なくとも1つの増幅プローブからなるアッセイ複合体を提供する。本明細書において“増幅プローブ”または“核酸多量体”または“増幅多量体”または文法上の等価物とはシグナル増幅を容易にするために用いる核酸プローブを意味する。増幅プローブは以下に定義するように、少なくとも1つの一本鎖核酸プローブ配列、および少なくとも1つの一本鎖核酸増幅配列、好ましくは多様な増幅配列を含んでいる。
【0375】
増幅プローブは標識配列にハイブリダイズするために、直接または間接に使用する第一プローブ配列を含む。すなわち、増幅プローブ自体が標的配列に実質的に相補的である第一プローブ配列をもち得るか(例えば、図16E)、またはそれが追加のプローブの一部に実質的に相補的である第一プローブ配列をもち、その追加のプローブはこの場合標識伸長プローブと呼ばれるものであって、標的配列に実質的に相補的である第一部分を有する(例えば、図16F)。好適な態様において、増幅プローブの第一プローブ配列は標的配列に実質的に相補的であり、それを図16Eに一般的に描出してある。
【0376】
一般に、本明細書のプローブすべてについて、第一プローブ配列は特異性と安定性を与えるに十分な長さのものである。このように一般に、もう一つの核酸にハイブリダイズするように設計された本発明のプローブ配列(すなわち、プローブ配列、増幅配列、より大きなプローブの部分またはドメイン)は少なくとも約5個のヌクレオシドの長さであり、好ましくは少なくとも約10個であり、そして特に好ましくは少なくとも約15個である。
【0377】
好適な態様において、図14に示すように、増幅プローブまたは本発明の他のプローブのいずれかは、それら標的の不存在下でヘアピン基部−ループ構造を形成することがある。基部二本鎖配列の長さは、ヘアピン構造が標的の存在下で有利とならないように選択する。本発明のシステムにおいて、またはいずれかの核酸検出システムにおいて、これらの型のプローブを使用すると非特異結合が有意に減少し、結果としてシグナルとノイズ比が増大するに至る。
【0378】
一般に、これらのヘアピン構造は4つの成分を含む。その第一成分は標的結合配列、すなわち、標的に相補的領域(サンプル標的配列であるか、または結合が要望どおりである他のプローブ配列であってもよい)であって、約10個のヌクレオチドの長さがあり、好ましくは約15個である。第二成分はループ配列であり、核酸ループの形成を容易にし得るものである。この観点で特に好ましいのはGTCの反復であり、脆弱X症候群において屈曲部を形成するものとして同定されている(PNA類似体を使用する場合、屈曲部はプロリン残基を含むものが好ましい)。一般に、3ないし5つの反復が用いられるが、4ないし5が好ましい。第三の成分は自己相補性領域であり、これは標的配列領域の一部に相補的な第一部分と標識プローブ結合配列の第一部分を含む第二部分を有する。第四の成分は標識プローブ(または場合によっては他のプローブ)に実質的に相補的である。第四の成分はさらに“付着末端”、すなわち、プローブの他の部分にハイブリダイズしない部分を含み、好ましくは、すべてではないが、ETMの殆どを含む。図14に一般構造を示す。当業者が認めるであろうように、本明細書に記載したプローブのいずれかまたはすべてが、増幅、捕獲、捕獲伸長、標識、および標識伸長プローブを含め、それらの標的不存在下でヘアピンを形成するように配列することができる。
【0379】
好適な態様においては、数種の異なる増殖プローブを用いるが、そのそれぞれが標的配列の異なる部分にハイブリダイズする第一プローブ配列をもつ。すなわち、1以上の増幅レベルがある;増幅プローブは多数の標識事象によりシグナルを増幅し、また、それぞれ多様な標識をもつ数種の異なる増幅プローブが各標的配列に対して使用される。このように、好適な態様では少なくとも2種類の異なる増幅プローブのプールを利用するが、それぞれのプールは標的配列の異なる部分に対しハイブリダイズするための異なるプローブ配列をもつ;異なる増幅プローブの数に関して唯一実際の制限は、当初標的配列の長さであろう。さらに、一般に好ましいことではないが、異なる増幅プローブが異なる増幅配列を含むことも可能である。
【0380】
好適な態様において、増幅プローブはサンプルの標的配列と直接ハイブリダイズしないが、代りに、図16Fに一般的に描出したように、標識伸長プローブの第一部分にハイブリダイズする。これは“一般的な”増幅プローブ、すなわち、様々な異なる標的と共に使用し得る増幅プローブの使用を可能とするためにとりわけ有用である。これは増幅プローブの幾つかが特別の合成技術を必要とするという理由で望ましいことである。このように、標識伸長プローブとして比較的短いプローブを加えることが好ましい。このように、増幅プローブの第一プローブ配列は、第一標識伸長一本鎖核酸プローブの第一部分またはドメインに実質的に相補性である。標識伸長プローブはまた、標識配列の一部に実質的に相補性である第二部分またはドメインをも含む。これらの部分双方が、好ましくは少なくとも約10ないし約50ヌクレオシドの長さであり、好ましくは約15ないし約30の範囲である。“第一”および“第二”という用語は標的またはプローブ配列の5’−3’配向に関して、配列の配向を付与することを意味するものではない。例えば、相補標的配列の5’−3’配向を仮定すると、第一部分は第二部分に対して5’に位置してもよく、あるいは第二部分に対して3’に位置してもよい。本明細書では便宜上、プローブ配列の順序を一般に左から右に示すこととする。
【0381】
好適な態様において、1つ以上の標識伸長プローブ増幅プローブ対が使用される、すなわち、nは1以上である。すなわち、複数の標識伸長プローブを用い、その各々が標的配列の異なる部分に実質的に相補性である部分をもつ;これはもう一つの増幅レベルとして役立ち得る。このように、好適な態様では少なくとも2つの標識伸長プローブのプールを利用するが、その上限は標的配列の長さにより決まる。
【0382】
好適な態様においては、図16Gに描出し、またUSP5,681,697(出典明示により本明細書の一部とする)に一般的に概説されているように、1つ以上の標識伸長プローブを単一の増幅プローブと共に用い、非特異結合を減少させる。この態様において、第一標識伸長プローブの第一部分は標的配列の第一部分にハイブリダイズし、第一標識伸長プローブの第二部分は増幅プローブの第一プローブ配列にハイブリダイズする。第二標識伸長プローブの第一部分は標的配列の第二部分にハイブリダイズし、第二標識伸長プローブの第二部分は増幅プローブの第二プローブ配列にハイブリダイズする。これらの形状構造は、ある場合に“十字型”構造または形状といい、一般に、大型の分枝または樹枝状増幅プローブを用いる場合には、安定性を付与するために実施される。
【0383】
さらに、当業者が認めるように、標識伸長プローブは下記のように、直接増幅プローブと相互作用するというよりもむしろプレ増幅プローブと相互作用する可能性がある。
【0384】
同様に、上記に概説したように、好適な態様では数種の異なる増幅プローブを利用するが、それぞれが標識伸長プローブの異なる部分にハイブリダイズする第一プローブ配列をもつ。さらに、上に概説したように、これは一般に好ましいことではないが、異なる増幅プローブが異なる増幅配列を含むことも可能である。
【0385】
第一プローブ配列に加えて、増幅プローブはまた、少なくとも1つの増幅配列を含んでいる。本明細書において“増幅配列”または“増幅セグメント”または文法上の等価物とは、下記により詳しく説明するように、標識プローブの第一部分に結合させるために、直接または間接に使用する配列を意味する。好ましくは、増幅プローブは多様な増幅配列を含んでおり、好ましくは約3ないし約1000からなり、特に好ましくは約10ないし約100からなり、そしてとりわけ好ましいのは約50である。ある場合には、例えば、線状の増幅プローブを使用する場合、1ないし約20が好ましく、特に、約5ないし約10が好ましい。
【0386】
増幅配列は当業者が認めるであろうように、様々な様式で互いに結合することができる。これらは互いに共有結合により直接結合するか、またはリン酸ジエステル結合、PNA結合などの核酸結合を介して、またはアミノ酸、炭水化物またはポリオールブリッジなどの挿入結合剤を介して、または他の架橋剤または結合パートナーを介して、介在配列もしくは化学的部分に結合してもよい。結合部位はセグメントの末端であっても、および/または1つ以上の鎖内の内部ヌクレオチドであってもよい。好適な態様において、増幅配列は核酸結合を介して付着する。
【0387】
好適な態様においては、USP5,124,246(出典明示により本明細書の一部とする)に一般的に説明されているように、分枝状の増幅配列を使用する。分枝状の増幅配列は“フォーク様”または“櫛様”の立体配座を採ることが可能である。“フォーク様”分枝状増幅配列は一般に分枝状構造を形成する起点から発生する3つ以上のオリゴヌクレオチドセグメントをもつ。起点とは、少なくとも3つのセグメントが共有結合によりまたは堅固に結合し得るもう一つのヌクレオチドセグメントまたは多機能分子である。“櫛様”分枝状増幅配列とは、線状の背骨をもち、その背骨から多数の側鎖オリゴヌクレオチドが伸び出しているものである。いずれの立体配座においても、張り出したセグメントは、通常、修飾したヌクレオチドに、またはオリゴヌクレオチド付着用の適切な官能基をもつ他の有機部分に左右される。さらに、いずれの立体配座においても、多数の増幅配列が、検出プローブに直接もしくは間接に結合させるために利用し得る。一般に、これらの構造は修飾した多機能ヌクレオチドを用い、とりわけUSP5,635,352および5,124,246に記載されているように、技術上既知として調製される。
【0388】
好適な態様において、樹枝状増幅プローブは、USP5,175,270(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されているように使用する。樹枝状増幅プローブはハイブリダイゼーションを介して付着する増幅配列をもち、その結果、それらの構造の成分として二本鎖核酸の部分をもつ。樹枝状増幅プローブの外表面は多様な増幅配列をもつ。
【0389】
好適な態様においては、線状の増幅プローブを用いるが、これは個々の増幅配列が末端−末端で直接結合するか、または短い介在配列と結合してポリマーを形成する配列をもつ。他の増幅形状でのように、増幅配列間に追加の配列または部分があってもよい。さらに、本明細書に概説するように、線状の増幅プローブは図14に描出したように、ヘアピン基部−ループ構造を形成してもよい。
【0390】
一態様において、線状の増幅プローブは単一の増幅配列をもつ。これは、ハイブリダイゼーション/解離のサイクルが起こって増幅プローブのプールを形成し、それが標的にハイブリダイズして、次いで除去されてさらにプローブが結合するのを可能とする場合、または大量のETMを各プローブに対し使用する場合に有用である。しかし、好適な態様においては、線状の増幅プローブは多様な増幅配列を含む。
【0391】
さらに、増幅プローブは全体が線状であるか、全体が分枝であるか、全体が樹枝状であるか、またはその組合わせであってもよい。
【0392】
増幅プローブの増幅配列を直接または間接に用い、検出を可能とする標識プローブに結合させる。好適な態様において、増幅プローブの増幅配列は実質的に標識プローブの第一部分に相補的である。あるいは、増幅伸長プローブを用いるが、これは増幅配列に結合する第一部分と、標識プローブの第一部分に結合する第二部分をもつ。
【0393】
さらに、本発明の組成物は“プレ増幅”分子を含んでもよいが、これは標識伸長分子と増幅プローブ間の架橋部分としての役割をもつ。この方法で、さらに多くの増幅因子と、したがって、さらに多くのETMが最終的に検出プローブに結合される。プレ増幅分子は線状であっても分枝状であってもよく、典型的には約30〜3000個の範囲でヌクレオチドを含む。
【0394】
以下に概括する反応は、当業者が認めるであろうように様々な方法で実施することができる。反応成分は同時に加えてもよいし、何らかの順序で順番に加えてもよいが、好適な態様は以下に概括するとおりである。さらに、この反応はアッセイに含まれてもよい種々の他の試薬を含んでもよい。これらは塩、バッファー、中性タンパク質、例えば、アルブミン、洗剤などの試薬類を含み、最適なハイブリダイゼーションと検出を容易にし、および/または非特異もしくはバックグランド相互作用を減少させるために使用することができる。他の条件でアッセイ効率を改善する試薬として、例えば、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗微生物剤などを、サンプル調製方法および標的の純度に応じて使用してもよい。
【0395】
本方法を以下に概説する。好適な態様においては、最初に、標的を電極に固定化または付着させる。一態様において、これは捕獲プローブと標的配列の一部との間にハイブリダイゼーション複合体を形成させることにより実施する。好適な態様では、捕獲伸長プローブを利用する;この態様においては、ハイブリダイゼーション複合体を標的配列の一部と捕獲伸長プローブの第一部分との間に形成させ、さらなるハイブリダイゼーション複合体を捕獲伸長プローブの第二部分と捕獲プローブの一部との間に形成させる。別の好適な態様では、別の捕獲プローブを利用し、標的配列の一部と第二捕獲伸長プローブの第一部分との間にハイブリダイゼーション複合体を形成させ、第二捕獲伸長プローブの第二部分と捕獲プローブの第二部分との間に別のハイブリダイゼーション複合体を形成させる。
【0396】
別法として、電極に対する標的配列の付着は他の反応と同時に実施する。
【0397】
この方法は、もし利用するのであれば、増幅プローブの導入で始める。好適な態様においては、増幅プローブは標的配列の一部分に実質的に相補的な第一プローブ配列と、少なくとも1つの増幅配列を含む。
【0398】
一態様において、増幅プローブの第一プローブ配列は標的配列にハイブリダイズし、ハイブリッド未形成の増幅プローブは除かれる。これは技術上既知のとおりに実施されるが、アッセイのタイプに依存する。標的配列が電極などの表面に固定化されると、過剰の試薬の除去は一般に、当業者が認めるであろうように、1回以上の洗浄工程により実施される。この態様において、標的は固形支持体上に固定される可能性がある。標的配列が表面に固定されない場合、本発明プローブなど、過剰の試薬の除去は、該プローブに相補的な配列を含むビーズ(すなわち、固形の支持体粒子)を添加することにより実施することができるが、その場合、過剰のプローブはビーズに結合する。次いで、ビーズは、例えば、遠心分離、濾過、磁場または静電場の適用などにより除去し得る。
【0399】
次いで、反応混合物は、増幅プローブが標的配列から解離する条件(温度、高濃度塩、pH変化など)に付し、増幅プローブを取得する。次いで、増幅プローブは増幅プローブ用の捕獲プローブからなる電極に加え、標識プローブを添加し、次いで検出を実施する。
【0400】
好適な態様においては、標的配列にさらに増幅プローブを添加することにより、より大きなプローブ・プールが生成し、ハイブリダイゼーション/解離反応が繰返され、増幅プローブのより大きなプールを生成する。この増幅プローブのプールは、次いで、増幅捕獲プローブからなる電極に添加し、標識プローブを添加し、次いで検出を始める。
【0401】
この態様においては、本明細書に記載の方法を用い、電極を含む固形支持体上に標的配列を固定化するのが好ましい;当業者が認めるところであるが、代りの固形支持体付着技術、例えば、ガラス、ポリマーなどへの付着技術を用いてもよい。1つの固形支持体上で反応を行い、次いでプールした増幅プローブを検出用の電極に加えることも可能である。
【0402】
好適な態様において、増幅プローブは多様な増幅配列を含む。
一態様において、増幅プローブの第一プローブ配列は標的配列にハイブリダイズし、ハイブリッド非形成増幅プローブを除去する。再度、好適な態様では固定化した標的配列を利用するが、ここでは電極に付着した捕獲プローブとのハイブリダイゼーションにより固定化するか、または捕獲伸長プローブにハイブリッド形成し、それを次いで本明細書に記載のように固定化した捕獲プローブとハイブリダイズさせることにより固定化する。一般に、これらの態様においては、捕獲プローブと検出プローブを電極上、一般には同一の“アドレス”に固定する。
【0403】
好適な態様において、増幅プローブの第一プローブ配列は少なくとも一つの標識伸長プローブの第一部分にハイブリダイズし、標識伸長プローブの第二部分は標的配列の一部分にハイブリダイズする。他の好適な態様では、1を超える標識伸長プローブを利用する。
【0404】
好適な態様において、増幅プローブの増幅配列は、少なくとも1つの標識プローブ配列にハイブリダイズさせることにより、直接検出に使用する。
【0405】
本発明はこのように、標的配列と標識プローブとを最小限に含んでいるアッセイ複合体を提供する。本明細書で“アッセイ複合体”とは、核酸を含むハイブリダイゼーション複合体の集合体を意味し、少なくとも1つのETMを含み、それ故に検出を可能とするプローブおよび標的を含む。アッセイ複合体の組成物は本明細書に概説した異なるプローブ成分の用途に依存するものである。このように、図16A、16Bおよび16Cに描示したように、アッセイ複合体は捕獲プローブと標的配列を含む。アッセイ複合体はまた、標識プローブ、捕獲伸長プローブ、標識伸長プローブ、および増幅プローブを包含するが、本明細書に概説するように、使用する形状に依る。
【0406】
このアッセイは、標的の存在下にのみ標識プローブハイブリダイゼーション複合体の形成を可能とするストリンジェンシー条件下に一般に実施する。ストリンジェンシーは熱力学的変動である工程パラメーターを変えることにより制御し得る。パラメーターは温度、ホルムアミド濃度、塩濃度、カオトロピック塩濃度pH、有機溶媒濃度などであるが、これらに限定されるものではない。
【0407】
これらのパラメーターは、USP5,681,697に一般的に概説されているように、核酸における非特異結合を制御するためにも使用することができる。このように、一定の工程は高い緊縮条件で実施するのが望ましい;例えば、最初のハイブリダイゼーション工程が標的配列と標識伸長と捕獲伸長プローブの間で実施される場合である。特定の結合を優先させる条件でこの工程を実施すると、非特異結合の減少が可能となる。
【0408】
好適な態様において、本明細書に概括した成分のすべてを使用する場合、好適な方法は以下のとおりである。一本鎖標的配列はハイブリダイゼーション条件下で捕獲伸長プローブおよび標識伸長プローブとインキュベートする。好適な態様ではこの反応を電極の存在下に固定化捕獲プローブとで行うが、この反応は最初のインキュベーションと引続く電極への付加による2工程で実施してもよい。過剰の試薬は洗浄除去し、次いで増幅プローブを添加する。もしプレ増幅プローブを用いるならば、それらは増幅プローブの前に、または増幅プローブと同時に加えるとよい。過剰の試薬は洗浄除去し、次いで標識プローブを添加する。過剰の試薬は洗浄除去し、下に概説するように検出を始める。
【0409】
一態様においては、標的配列の異なる部分にそれぞれ実質的に相補性である多くの捕獲プローブ(または捕獲プローブと捕獲伸長プローブ)が使用される。
再度、本明細書に概説するように、増幅プローブを用いる場合、このシステムは、一般に、標識プローブ結合に際し、ETMを含んでいるリクルートリンカーが、単層表面の近接位に配置される。このように、本明細書に概説するように、ETMが“樹枝状”型構造を介して付着する場合、核酸の付着点からETMまでのリンカーの長さは、特に、捕獲伸長プローブを用いる場合に捕獲プローブの長さと共に変わり得る。すなわち、より長い捕獲プローブは、捕獲伸長をもち、より短い捕獲プローブにおいてよりも、表面からさらに離れて“保持”された標的配列となる。プローブ核酸とETMの間に余分の連結配列を加えると、ETMが表面に空間的に近接することとなり、より良好な結果を与える。
【0410】
さらに、所望により、本発明に利用される核酸は検出に先立ち、もし適用可能であれば、リガーゼ使用などの標準的分子生物学技法を用いることにより結合させることもできる。同様に、安定性を望むのであれば、架橋剤を加え、構造を安定させることが可能である。
【0411】
本発明の組成物は、一般に、下記のように、一般に当分野で既知の方法を使用して合成する。当業者に認められるように、下記に概説の多くの方法は、リボース−ホスフェート主鎖を含む核酸に関する。しかしながら、上記に概説のように、多くの別の核酸類似体を使用し得、そのいくつかは主鎖にリボースまたはホスフェートを含まない。これらの実施態様において、塩基以外の位置での結合に関して、結合は、主鎖に依存して、当業者に認められるように行う。従って、例えば、結合はPNA主鎖の炭素原子で、下記に記載のように、またはPNAのいずれかの末端で行うことができる。
【0412】
本組成物はいくつかの方法で製造し得る。好ましい方法は最初にヌクレオシドに結合した導電性オリゴマーを、更にヌクレオシドを添加して捕獲プローブを形成し、続いて電極へ結合させて、合成する。あるいは、全捕獲プローブを製造し、次いで、完全な導電性オリゴマーを添加し、続いて電極に結合する。あるいは、導電性オリゴマーの単層(そのいくつかは、捕獲プローブの結合のための官能基を有する)を最初に電極に結合し、続いて捕獲プローブを結合する。後者の二つの方法は、使用する導電性オリゴマーが、溶媒中でおよび従来の核酸合成の条件下で安定でないとき、好ましいことがある。
【0413】
好ましい実施態様において、本発明の組成物は、最初に、ヌクレオシドに共有結合した導電性オリゴマーを形成し、続いて、さらにヌクレオシドを添加して捕獲プローブ核酸を形成し、導電性オリゴマーを電極へ添加することを含む最後の工程により製造される。
【0414】
導電性オリゴマーのヌクレオシドへの結合はいくつかの方法で行い得る。好ましい実施態様において、全てまたは一部の導電性オリゴマーを、最初に合成し(一般に、電極への結合のために官能基を末端に有する)、これを次いでヌクレオシドに結合させる。次いで、さらにヌクレオシドを必要に応じて添加し、最後の工程で一般に電極へ結合させる。あるいは、オリゴマー単位を一度にヌクレオシドに添加し、さらにヌクレオシドを添加し電極へ結合させる。多くの代表的な合成をPCT US97/20014の図面に示し、出典明示により本明細書の一部とする。
【0415】
次いで、導電性オリゴマーを、本明細書に記載のように結合した、1個(またはそれ以上の)オリゴマー単位を含み得るヌクレオシドに結合させる。
【0416】
好ましい実施態様において、結合はリボース−ホスフェート主鎖のリボースに対してである。従って、アミドおよびアミン結合を介した付着が可能である(PCT US97/20014の図1および図2を参照)。好ましい実施態様において、リボースに結合した窒素と導電性オリゴマーの芳香族環の間に、少なくとも一つのメチレン基または他の短い脂肪族アルキル基(Z基として)が存在する。代表的な合成がPCT US97/20014の図16に示されている。
【0417】
あるいは、結合はリボース−ホスフェート主鎖のホスフェートを介している。2種の合成スキームの例がPCT US97/20014の図4および図5に示されている。両図はリボースの3'位での結合を示しているが、2'位を介して結合することもできる。図5、Zでは、エチレンリンカーであるが、当業者に分かるように、他のリンカーを同様に使用して得る。
【0418】
好ましい実施態様において、結合は塩基を介している。一般的なスキームはPCT US97/20014の図3に示されており、ヌクレオシドとしてウリジンを使用し、フェニレン-アセチレン導電性オリゴマーを使用している。当業者に認められ得るように、当業者に一般的に知られている技術を使用してアミド結合も可能である。好ましい実施態様において、保護基を、PCT US97/20014の図10および図11に一般的に概説されているように、導電性オリゴマーの付加の前に塩基に添加してもよい。加えて、パラジウム交差結合反応を変えて、二量体化問題;すなわち、二つの導電性オリゴマーが塩基に結合せずむしろ二量体化するのを防止することもできる。
【0419】
あるいは、塩基への結合を、一単位のオリゴマーを有するヌクレオシドを製造し、続いて他を添加することによりなし得る。
【0420】
修飾ヌクレオシドを製造し、保護して活性化したら、電極への結合の前に、標準合成法(Gait, Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press, Oxford, UK 1984; Eckstein)により、成長しているオリゴヌクレオチドに、幾通りかの方法でそれらを包含させ得る。
【0421】
好ましい実施態様において、1またはそれ以上の修飾ヌクレオシドを三ホスフェート形態に変形させ、成長しているオリゴヌクレオチド鎖に、酵素DNAポリメラーゼI、T4DNAポリメラーゼ、T7DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼ、逆転写酵素およびRNAポリメラーゼを用いるなど、標準分子生物学手法を用いて包含させる。3'修飾ヌクレオシドの核酸への包含には、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼを使用し得る。(Ratliff, Terminal deoxynucleotidyltransferase.In The Enzymes, Vol. 14A. P. D. Boyer ed. pp 105-118. Academic Press, San Diego, CA 1981)。従って、本発明は、共有結合したETMを含むデオキシリボヌクレオシド三ホスフェートを提供する。好ましい実施態様は、一般に下記構造42および43に示すように、リボース(好ましくは2'位で)などの塩基または主鎖へのETM結合を利用する。
【0422】
【化42】
【0423】
【化43】
【0424】
従って、いくつかの実施態様において、ETMを含む核酸をその場で産生させることができる。例えば、標的配列の末端をさらす、すなわち非ハイブリダイズするように、標的配列は捕獲プローブ(例えば、表面上の)にハイブリダイズし得る。酵素とETMで標識した三ホスフェートヌクレオチドの添加により、その場での標識の製造が可能となる。同様に、ポリメラーゼにより認識される標識ヌクレオチドを用いると、PCRと検出とを同時に行い得る;つまりその場で標的配列が生成する。
【0425】
好ましい実施態様において、修飾ヌクレオシドをホスホルアミデイトまたはH−ホスホネート形に変換し、これを次いでオリゴヌクレオチド合成の固相または溶液合成に使用する。この方法で、リボースでの(すなわち、アミノ−またはチオール−修飾ヌクレオシド)または塩基での結合用の、修飾ヌクレオチドをオリゴヌクレオチドに内部位置または5'末端で包含させる。これは、一般に、二つの方法の一つで行う。第一に、リボースの5'位を4',4−ジメトキシトリチル(DMT)で保護し、続いて2−シアノエトキシ−ビス−ジイソプロピルアミノホスフィンとジイソプロピルアンモニウムテトラゾリド存在下で反応させるか、または2'−シアノエトキシホスフィンクロロジイソプロピルアミノと反応させ、当分野で既知のようにホスホルアミデイトを得る;しかしながら、他の方法を当業者に認められるように使用し得る。Gait 前掲; Caruthers, Science 230: 281 (1985)参照、両方とも出典明示により本明細書の一部とする。
【0426】
基の3'末端への結合のために、好ましい方法は制御孔ガラス(CPG)または他のオリゴマー支持体への修飾ヌクレオシド(またはヌクレオシド代替物)の結合を使用する。この実施態様において、修飾ヌクレオシドを5'末端でDMTで保護し、次いで、無水コハク酸と活性化しながら反応させる。得られるスクシニル化合物をCPGまたは当分野で既知の他のオリゴマー支持体に結合させる。更に、修飾しているか、またはしていないホスホルアミデイトヌクレオシドを、脱保護後に5'末端に結合させる。従って、本発明はCPGのような固体オリゴマー支持体に結合したヌクレオシドに共有結合した導電性オリゴマーまたは絶縁体、および本発明のヌクレオシドのホスホルアミデイト誘導体を提供する。
【0427】
本発明はさらにETMを含むリクルートリンカーを有する標識プローブの製造方法を提供する。当業者には明らかなように、これらの合成反応はリクルートリンカーの特徴とETMの結合方法に依存する。核酸リクルートリンカーについて、標識プローブは、本明細書で概説したように、1以上の位置でETMを包含させて一般につくられる。遷移金属錯体をETMとして使用する場合、合成はいくつかの方法で行われる。好ましい実施態様において、リガンド、続いて遷移金属イオンをヌクレオシドに添加し、次いで、遷移金属錯体が結合しているヌクレオシドをオリゴヌクレオチドに添加する、つまり、核酸合成機に添加する。あるいは、リガンドを結合させ、続いて成長しているオリゴヌクレオチド鎖に包含させ、金属イオンを添加する。
【0428】
好ましい実施態様において、ETMをリボース−ホスフェート主鎖のリボースに結合させる。これは、導電性オリゴマーについて本明細書に概説したように通常行われ、本明細書およびPCT公開WO95/15971に記載のように、アミノ−修飾またはオキソ−修飾ヌクレオシドを使用して、リボースの2'または3'位に行う。次いで、リガンドとして、例えば金属イオンの結合のための遷移金属リガンドとして、または、例えばアミド結合を介した、他のリガンドまたは有機ETMの結合に使用できる化学的官能基として、当分野で認められるように、アミノ基を使用し得る。例えば、例として、リボースを介して結合した種々のETMを有するヌクレオシドの合成を記載する。
【0429】
好ましい実施態様において、ETMはリボース−ホスフェート主鎖のホスフェートに結合する。本明細書に概説のように、これは、ホスホルアミデイト結合のようなホスホジエステル類似体を使用して行われてもよく、一般に、PCT公開WO95/15971参照、またはPCT US97/20014の図4および図5に記載のものと同様の方法を使用し、但し、実施例の概説と同様に、導電性オリゴマーを遷移金属リガンドまたは錯体または有機ETMと置きかえて行なうこともできる。
【0430】
別の主鎖、例えば、ペプチド核酸または別のホスフェート結合への結合は、当業者に認められるように行う。
【0431】
好ましい実施態様において、ETMはヌクレオシドの塩基に結合する。これは、種々の方法でなし得る。一実施態様において、天然に存在するか、または本明細書に記載ように添加した(例えば、図参照)塩基のアミノ基を、遷移金属錯体のリガンドとして、または例えば、アミド結合を介して他のリガンドをまたは有機ETMを添加するのに使用できる化学的官能基として使用する。これは、当業者に認められるように行う。あるいは、ヘテロ環式環に結合したハロゲン原子を含むヌクレオシドは商品として入手可能である。アセチレン結合リガンドは、一般的に既知のように、ハロゲン化塩基を使用して添加し得る;例えば、Tzalis et al., Tetrahedron Lett. 36(34): 6017-6020 (1995); Tzalis et al., Tetrahedron Lett. 36(2): 3489-3490 (1995); およびTzalis et al., Chem. Communications (投稿中) 1996参照、全て出典明示により本明細書の一部とする。また、塩基へのアセチレン結合を介して結合したメタロセン(この場合では、フェロセン)の合成を記載した図面および実施例も参照。
【0432】
一実施態様において、ヌクレオシドを、核酸に包含させた遷移金属リガンドを有して製造し、次いで、遷移金属イオンおよび残りの必要なリガンドを当分野で既知のように添加する。別の実施態様において、遷移金属イオンおよび付加的リガンドを、核酸への包含前に添加する。
【0433】
本発明の核酸を、共有結合した結合リンカー(つまり、絶縁体または導電性オリゴマーのいずれか)を有して製造し、結合リンカーを電極に結合させる。本方法は、使用する電極のタイプによって変化する。本明細書に記載のように、結合リンカーは一般に末端“A”リンカーを有して製造され、電極への結合を促進する。本適用の目的のために、硫黄−金結合は共有結合とみなす。
【0434】
好ましい実施態様において、導電性オリゴマー、絶縁体および結合リンカーは硫黄結合を介して電極に共有結合する。しかしながら、驚くべきことに、分子の金電極への結合に使用する慣用的保護基は、一般に、本明細書に記載の組成物の合成およびオリゴヌクレオチド合成反応への包含の両方への使用に理想的でない。従って、本発明は、図に記載のようなエチルピリジンおよびトリメチルシリルエチルを含む、普通でない保護保護基を使用した、導電性オリゴマーの金電極への結合の新規方法を提供する。しかしながら、当業者が理解するように、導電性オリゴマーが核酸を含まないとき、アセチル基などの慣用的保護基を使用し得る。参照、Greene et al.、前掲。
【0435】
これは、いくつかの方法でなし得る。好ましい実施態様において、電極への結合のために硫黄原子を含む導電性オリゴマーのサブユニットをエチル−ピリジンまたはトリメチルシリルエチル基で保護する。前者に関して、これは一般に硫黄原子(好ましくはスルフヒドリルの形で)を含むサブユニットをビニルピリジン基またはビニルトリメチルシリルエチル基と、エチルピリジン基またはトリメチルシリルエチル基が硫黄原子に添加されるような条件下で接触させることにより行う。
【0436】
このサブユニットはまた、一般に、付加的サブユニットの結合のために官能部を含み、従って、付加的サブユニットが結合して導電性オリゴマーを形成する。次いで、導電性オリゴマーをヌクレオシドに結合させ、付加的ヌクレオシドが結合する。保護基を次いで除去し、硫黄−金共有結合を行う。あるいは、導電性オリゴマーの全てまたは一部を製造し、次いで、保護硫黄原子を含むサブユニットを添加するか、硫黄原子を添加して、保護する。導電性オリゴマーを次いでヌクレオシドに結合させ、付加的ヌクレオチドを結合させる。あるいは、核酸に結合した導電性オリゴマーを製造し、次いで保護硫黄原子を含むサブユニットを添加するか、硫黄原子を添加して、保護する。あるいは、エチルピリジン保護基を上記のように使用してもよいが、1以上の工程の後に除去し、ジスルフィドのような標準的な保護基に置き換える。このように、エチルピリジンまたはトリメチルシリルエチル基は、合成反応のいくつかで保護基として作用し得、次いで、除去して慣用的保護基に置き換えられる。
【0437】
本明細書の導電性ポリマーの“サブユニット”は、硫黄原子が結合する導電性オリゴマーの少なくとも一部を意味するが、導電性オリゴマーの付加的成分の添加を可能にする官能基、または導電性オリゴマーの付加的成分を含む付加的原子も存在し得る。従って、例えば、構造1のオリゴマーを使用するとき、サブユニットは少なくとも第一Y基を含む。
【0438】
好ましい方法は、1)一般に、ビニルピリジンまたはトリメチルシリルエチル基をスルフヒドリルに添加して行う、導電性オリゴマーの第一サブユニットに結合した硫黄原子への、エチルピリジンまたはトリメチルシリルエチル保護基の添加;2)導電性オリゴマーの形成のための付加的サブユニットの添加;3)少なくとも第一ヌクレオシドの導電性オリゴマーへの添加;4)核酸を形成するための付加的ヌクレオシドの第一ヌクレオシドへの添加;4)導電性オリゴマーの金電極への結合を含む。これはまた実施例に記載のように、ヌクレオシドの不存在下でも行い得る。
【0439】
上記の方法は、金電極への絶縁分子の結合にも使用し得る。
【0440】
好ましい実施態様において、導電性オリゴマー(および所望により絶縁体)を含む単層を電極に添加する。一般に、添加の化学は、導電性オリゴマーの電極への添加と類似か同じであり、即ち、金電極への結合に硫黄原子を使用するなどである。核酸に共有結合した導電性オリゴマーに加えて、単層を含む組成物を、少なくとも5つの方法の一つでなし得る:(1)単層の添加、続く結合リンカー−核酸錯体の連続的添加;(2)結合リンカー−核酸錯体の添加、続く単層の添加;(3)単層と結合リンカー−核酸錯体の同時添加;(4)完全な核酸の結合に適した官能部で終了している結合リンカーを含む単層の形成(1,2または3のいずれかを使用した);または(5)核酸合成に適した官能部で終了している結合リンカーを含む単層の形成、即ち、核酸を当分野で既知のように単層表面で合成する。このような適当な官能部は、ホスホルアミデイト添加のためのヌクレオシド、アミノ基、カルボキシル基、保護硫黄部、またはヒドロキシル基を含むが、これらに限定されない。例としては、好ましい方法(1)を用いた金電極上の単層の形成を記載する。
【0441】
好ましい実施態様において、核酸はペプチド核酸または類似体である。この実施態様において、本発明は、少なくとも一つの共有結合したETMまたは結合リンカーを有するペプチド核酸を提供する。好ましい実施態様において、これらの部分はPNAの単量体サブユニットに共有結合する。本明細書の“PNAの単量体サブユニット”は、−NH−CH2CH2−N(COCH2−塩基)−CH2−CO−単量体またはPNAの誘導体(ここでは“ヌクレオシド”の定義内に含まれる)を意味する。例えば、PNA主鎖の炭素原子の数を変え得る;一般に、PNA誘導体の数を記載したNielsen et al., Chem. Soc. Rev. 1997, 73頁参照、出典明示により本明細書の一部とする。同様に、塩基を主鎖に結合させるアミド結合を変え得る;ホスホロアミドおよびスルファーアミド結合を使用し得る。あるいは部分を内部単量体サブユニットに結合する。本明細書で“内部”は、単量体サブユニットがN−末端単量体サブユニットまたはC−末端単量体サブユニットでないことを意味する。本実施態様において、部分を単量体サブユニットの塩基または主鎖に結合できる。塩基の結合は、本明細書に概説のように、または文献から既知のように行う。一般に、部分を塩基に添加し、これを次いで本明細書に概説のようにPNAに包含させる。塩基は、化学置換基の添加前またはその後に、PNA合成反応に加入させるために必要となるように保護されているか、加入が可能となるように誘導体化されていることができる。塩基の保護および誘導体化をPCT US97/20014の図24〜図27に示す。PCT US97/20014の図28に示すように、塩基を次いで単量体サブユニットに加入させ得る。PCT US97/20014の図29および図30は、2種の異なる化学的置換基、1種の塩基と結合した1種のETMおよび1種の導電性オリゴマー、を示している。図29は、ウラシル塩基に結合したフェロセンを有する、PNA単量体サブユニットの代表的な合成を示す。図30は、ウラシル塩基と結合した3ユニットの導電性オリゴマーの合成を示す。
【0442】
好ましい実施態様において、部分はPNA単量体の主鎖に共有結合する。結合は、一般に、単量体サブユニットの非置換炭素原子の一つ、好ましくは図31および図32に示すように主鎖のα−炭素に行われるが、1または2位の炭素、または塩基を主鎖に結合させるアミド結合のα−炭素での結合もなし得る。PNA類似体の場合、他の炭素または原子も同様に置換し得る。好ましい実施態様において、部分を、α−炭素原子に末端単量体サブユニットまたは内部の末端単量体サブユニットへ添加する。
【0443】
この実施態様において、修飾単量体サブユニットを、ETM、結合リンカーまたはその結合のための官能基で合成し、次いで塩基を添加し、修飾単量体を成長しているPNA鎖に加入させ得る。PCT US97/20014の図31は、PNA単量体サブユニットの骨格と共有結合する導電性オリゴマーの合成を示しており、PCT US97/20014の図32は、単量体サブユニットの骨格と結合するフェロセンの合成を示している。
【0444】
製造した共有結合部分を有する単量体サブユニットを、Will et al., Tetrahedron 51(44): 12069-12082 (1995)およびVanderlaan et al., Tett. Let. 38: 2249-2252 (1997)(両方ともその全体を出典明示により本明細書の一部とする)に概説のような方法を使用して、PNAに包含させる。これらの方法は、ペプチド核酸への化学置換基の添加を、化学置換基を破壊させることなく可能にする。
【0445】
当業者に認められるように、電極は、核酸、導電性オリゴマーおよび絶縁体の任意の組み合わせを有するように製造し得る。
【0446】
本発明の組成物は、更に、一個以上の標識を任意の位置で含み得る。本明細書での“標識”は、化合物の検出を可能にするために結合した元素(例えば、アイソトープ)または化学化合物を意味する。好ましい標識は放射活性同位体標識、着色または蛍光色素である。標識は、任意の位置で化合物に包含し得る。加えて、本発明の組成物は、架橋剤のような他の部分も含み得、標的−プローブ錯体の架橋を促進する。例えば、Lukhtanov et al., Nucl. Acids. Res. 24(4): 683 (1996)およびTabone et al., Biochem. 33: 375 (1994)参照、両方とも出典明示により本明細書の一部とする。
【0447】
一旦製造されると、組成物は本明細書に記載のように、多くに適用されて使用される。特に、本発明の組成物は、ハイブリダイゼーションアッセイで使用される。当業者には明らかなように、電極は、核酸の単一の種(すなわち、単一核酸)を有するようにつくられ得る。
【0448】
さらに、本明細書に概説のように、電極のような固体支持体の使用は、配列形成においてこれらの遺伝子プローブの使用を可能にする。オリゴヌクレオチド配列の使用は、当分野で既知である。加えて、電極内に位置を「アドレッシング」するため、および電極の表面修飾のための方法は既知である。従って、好ましい実施態様において、異なる核酸の配列は、電極の下に置かれ、その各々は導電性リンカーを介して電極に共有結合する。この実施態様において、多くの異なるプローブの種は、1から数千に広く変化し得、好ましくは約4から約100,000、および特に好ましくは約10から約10,000である。
【0449】
標的配列と標識プローブを最小限で含む本発明のアッセイ複合体が形成されると、検出が電子的イニシエーションにより進行する。メカニズムまたは理論に制限されなければ、検出は、ETMから電極への電子伝達に基づいている。
【0450】
電子伝達の検出、すなわち、ETMの存在は一般に好適な電圧により電子的に開始される。電位はアッセイ複合体に適用する。加えられる電位の正確な制御と変化はポテンショスタットおよび3つの電極システム(1つは参照用、1つはサンプル用(または作業用)、1つは対向電極用)または2つの電極システム(1つはサンプル用、1つは対向電極用)による。これは、ETMの選択に部分的に左右されるシステム、また使用した導電性オリゴマー、単層の組成と整合性、およびどのタイプの対照電極を使用したかに部分的に左右されるシステムのピーク電位に、印加した電位がマッチすることを可能とする。
【0451】
好ましい態様においては、共還元体または共酸化体(統合して、共酸化還元体)を追加の電子源またはシンクとして用いる。一般的には、Sato et al., Bull. Chem. Soc. Jpn 66: 1032 (1993); Uosaki et al., Electrochimica Acta 36: 1799 (1991);and Alleman et al., J. Phys. Chem. 100: 17050 (1996)(これらすべてを出典明示により本明細書の一部とする)参照。
【0452】
好ましい実施態様において、溶液中の入力電子源が電子伝達の開始に用いられる。好ましくは、直流電流を用いてまたは拡散が制限されない交流周波数で開始および検出がなされるときである。一般に、当業者はよくわかるように、好ましい実施態様で「孔」含有の単層を用いると、システムの短絡が回避できる。これはいくつかの一般的な方法で行うことができる。好ましい実施態様において、入力電子源は、標識プローブのETMよりも低いか同じレドックス電位を有する。このように、入力電子源のレドックス電位以上の電圧において、ETMおよび入力電子源の両方が酸化されて電子を与え得る;ETMは電極に電子を与え、入力源がETMに与える。例えば、実施例中に記載した本発明の組成物に結合したETMとして、フェロセンは、水溶液中で約200mVのレドックス電位を有する(フェロセンが結合したもの、結合の方法およびなんらかの置換基の存在によって非常に変化する)。電子源のフェロシアニドは、同様に約200mVのレドックス電位を有する。従って、約200mVまたはそれ以上の電圧において、フェロセンはフェリセニウムの変わり、電子を電極に伝達する。フェリシアニドを酸化して電子をETMに伝達することができる。この方法において、電子源(または同時還元剤)はシステムに生じたシグナルを増幅するために働き、電子源分子が核酸に結合したETMに電子を迅速に、かつ繰り返して伝達する。電子の供与もしくは受容の速度は、同時還元剤の拡散の速度すなわち同時還元剤とETMとの間の電子伝達に制限される。電子伝達は濃度および大きさなどの影響を受ける。
【0453】
もしくは、ETMよりも低いレドックス電位を有する入力電子源が用いられる。ETMのレドックス電位よりも低いが、電子源のレドックスよりも高い電圧において、フェロシアニドなどの入力源は酸化され得ず、ETMに電子を与え得ない。すなわち電子伝達が起きない。フェロセンが酸化されると、電子の伝達経路ができる。
【0454】
他の好ましい実施態様において、入力電子源は、標識プローブのETMよりも高いレドックス電位を有するものを使用する。例えば、電子源のルミノールは約720mVのレドックス電位を有する。ETMのレドックス電位よりも高い電圧で、電子源のレドックス電位よりも低い電圧、すなわち200−720mVにおいては、フェロセンは酸化され、導電性オリゴマーを介して電極に1つの電子を移す。しかし、電圧がルミノールのレドックス電位よりも低いので、ETMはルミノール電子源から電子を受けることができない。しかし、ルミノールのレドックス電位またはそれ以上で、ルミノールはETMに電子を伝達し、迅速かつ反復の電子伝達を可能とする。この方法において、電子源(または同時還元剤)はシステムで生じたシグナルを増幅するのに働き、電子源分子は標識プローブのETMに迅速にかつ反復して電子を供与する。
【0455】
ルミノールは酸化に際して化学的発光種になるという別の利点もあり(参照Jirka et al.,Analytica Chemica Acta 284:345(1993))、ETMから電極への電子伝達の光学的検出が可能となる。ルミノールが電極に直接接触しない限り、すなわち電極への効率的な電子伝達経路がないようなETMの存在において、標識プローブ上のETMに電子を伝達することのみによりルミノールは酸化される。ETMが存在していない(即ち、標的配列が本発明の組成物をハイブリダイズしない場合)と、ルミノールは顕著に酸化されないで、ルミノールからの低い光子放出および低い(もしあれば)シグナル放出をもたらす。標的の存在で非常に大きいシグナルが生じる。このように光子放出によるルミノール酸化の測定は、電極に電子を与えるETMの能力についての間接的な測定となる。さらに、光子検出は一般的に電子検出よりも感度がよいので、システムの感度が増大する。最初の結果から、発光が過酸化水素濃度、pHおよびルミノール濃度(これは直線的ではない)に依存していることが示唆される。
【0456】
適切な電子源分子は周知であり、フェリシアニドやルミノールが含まれるが、これらに限定されない。
【0457】
あるいは、出力電子受容体もしくはシンクを用いることができる。すなわち上記反応を逆に行う。電極から電子を受けるメタロセンなどのETMを用いる。電子を迅速に繰り返し受ける出力電子受容体でメタロセンをメタリセニウムに変える。この実施態様で、コバルトイセニウムが好ましいETMである。
【0458】
単層の表面のETMの存在は、種々の方法によって検出することができる。光学的検出には、これらに限定されるものではないが、例えばフルオレッセンス、ホスホレッセンス、ルミニセンス、ケミルミニセンス、エレクトロルミニセンスおよび屈折率がある。電子的検出には、これらに限定されるものではないが、アンペロメトリー、ボルタメトリー、キャパシタンス、インピーダンスがある。これらの方法には、交流または直流の電流に基づく時間・周波数依存法、パルス法、ロックイン法、フィルター法(高パス、低パス、バンドパス)および時間分解フルオレセンスなどの時間分解法がある。
【0459】
1つの実施態様において、ETMから電極への電子の効率的な伝達は、ETMのレドックス状態での定型的変化をもたらす。ビピリジン、ピリジンおよびイミダゾール環含有のルテニウム複合体を含む多くのETMでもって、レドックス状態におけるこれらの変化はスペクトルの変化に関連している。吸収の顕著な相違がこれらの分子について還元状態と酸化状態の間にみられる。例えば、参照、Fabbrizzi et al.,Chem.Soc.Rev.1995 pp192-202。これらの相違は、分子光度計あるいは光電子増倍管を用いて監視することができる。
【0460】
この実施態様において、電子供与体および受容体には、光学活性化すなわち開始について上記したすべての誘導体が含まれる。好ましい電子供与体および受容体は電子伝達を高感度で監視し得る酸化および還元について大きいスペクトルの変化を特徴としている。好ましい例に、Ru(NH3)4pyおよびRu(bpy)2imがある。吸収によって監視される供与体または受容体のみが理想のスペクトル特性を有していることが理解されるべきである。
【0461】
好ましい実施態様において、電子伝達は蛍光定量で検出される。ルテニウムなどの遷移金属複合体の多くが明白な蛍光性を有する。従って、核酸に結合した電子供与体と受容体とのレドックス状態の電荷は、Ru(4,7−ビフェニル2−フェナントロリン)3 2+などによる蛍光を用いて、感度よく監視することができる。この化合物の生成は、標準的蛍光検出法によって容易に測定することができる。例えば、レーザー誘発蛍光は、標準的細胞蛍光定量、「オンライン」蛍光定量でのフロー(例えばクロマトグラフィーに結合したもの)あるいは96ウエル・イムノアッセイについて市販されているものに類似のマルチサンプル「プレートリーダー」で記録することができる。
【0462】
他方、蛍光は、溶液中の核酸プローブをもつ、または光学繊維に結合した光学結合センサーを用いて測定することができる。蛍光は光学繊維に結合した光学増倍管または他の光検出器を用いて追跡することができる。このシステムについての有利な点は、検出に用いられるサンプル量が極めて少量でよいことである。
【0463】
さらに、Molecular Dynamicから販売されているFluorlmagerなどの走査蛍光検出器が固体表面に並んだ修飾核酸分子の蛍光を監視するのに非常に適している。このシステムの利点は、多数の別個の核酸プローブでカバーされたチップを使用して、一度に多数の電子伝達プローブを走査できることである。
【0464】
多くの遷移金属複合体は大きなStokesシフトでもって蛍光を示す。適当な例として、ルテニウムなどの遷移金属のビス−およびトリスフェナントロリン複合体、およびビス−およびトリスビピリジン複合体がある(参照、Juris, A., Balzani, V., et al. Coord. Chem. Rev., V.84, p.85-277, 1988)。好ましい例では、効率的な蛍光(合理的に高い量子収量)および低い再構築エネルギーを示す。これらには、Ru(4,7−ビフェニル2−フェナントロリン)3 2+、Ru(4,4’−ジフェニル2,2’−ビピリジン)3 2+および白金複合体がある(参照、Cummings et al., J. Am. Chem. Soc. 118:1949-1960(1996)、出典明示により本明細書の一部とする)。他方、ハイブリダイゼーションに関連する蛍光の低下は、これらのシステムを用いて測定できる。
【0465】
別の実施態様において、電子化学発光が電子伝達検出の基礎として用いられる。Ru2+(bpy)3などのETMのいくつかで直接発光に励起状態の低下がおきる。この性質の変化は、核酸ハイブリダイゼーションに関連しており、簡単な光学増倍管で測定することができる(参照、Blackburn, G.F. Clin. Chem. 37:1534-1539(1991);および Juris et al., 上記)。
【0466】
好ましい実施態様において、電子検出に、アンペロメトリー、ボルタメトリー、キャパシタンスおよびインピーダンスなどが用いられる。好ましい技法として、これらに限定されるものでないが、電解重量分析、クーロメトリー(制御電位クーロメトリーおよび一定カレント・クーロメトリーを含む)、ボルタメトリー(サイクルボルタメトリー、パルスボルタメトリー(正常パルスボルタメトリー、スクエア波ボルタメトリー、示差パルスボルタメトリー、オステリオウング・スクエア波ボルタメトリー、静電量パルス法)、ストリッピング分析(アニオンストリッピング、カチオンストリッピング、スクエア波ストリッピングボルタメトリー)、伝導分析(電子的伝導、直接分析)、時間依存電子化学分析(クロノアンペロメトリー、クロノポテンショメトリー、サイクルクロノアンペロメトリー、サイクルクロノポテンショメトリー、交流ポログラフィー、クロノガルバメトリー、クロノクロメトリー)、交流インピーダンス法、キャパシタンス法、交流ボランタメトリー、光学電子化学法がある。
【0467】
好ましい実施態様において、電子伝達の監視はアンペロメトリー検出で行われる。この検出法において、望む標的遺伝子を含有するサンプル中で、核酸結合電極と対照(逆)電極との間の電位(単離された対照電極と比較して)が利用される。異なる効率の電子伝達が標的核酸の存在または不存在によって生じる。すなわち標的核酸の存在また不存在、およびそのような標識プローブが異なる電流に帰着し得る。
【0468】
アンペロメトリーで電子伝達を測定する装置は、感度のよい電流検出器からなり、電圧電位を調節する手段、通常はポテンシオスタットを含む。この電圧は標識プローブ上の電子供与複合体の電位を参照することにより最適化される。電子供与複合体には、鉄、オスミウム、白金、コバルト、レニウム、レテニウムの複合体について上記のものが含まれ、鉄複合体が最も好ましい。
【0469】
好ましい実施態様において、他の電子検出法が用いられる。例えばポテンシオメトリー(すなわちボルタメトリー)には、非ファラデー法(正味の電流のない)が含まれ、pHや他のイオン検出器において通常用いられる。同様のセンサーがETMと電極との間の電子伝達を監視するために用いられる。さらに、絶縁体(抵抗など)および導電体(導電、インピーダンス、キャピシタンス)などの他の性質を使用し、ETMと電極との間の電子伝達を監視することが可能である。また、電流を生じるいかなるシステム(電子伝達など)も小さい磁場を生じ、ある実施態様で監視され得る。
【0470】
本発明の組成物で見られる電子伝達の速い速度がもたらす一つの利点は、時間分解が吸収、蛍光あるいは電子流などによるモニターのシグナル対ノイズ結果を一般的に高め得ることである。本発明の電子伝達の速い速度は、高度のシグナルと電子伝達開始・完了間の定型的遅延とをもたらす。特定の遅延シグナルを増幅することにより、電子伝達のパルス開始および「ロックイン」増幅検出およびフェーリエ変換がなされる。
【0471】
好ましい実施態様において、電子伝達は交流電流(AC)法を用いて始められる。理論に拘束されることなく、電極に連結したETMは、つながっている抵抗とコンデンサーを流れる交流電圧に同様に反応する。基本的に、これらの抵抗とコンデンサーとして働く複合体の性質を測定し得る方法は、検出の基本とすることができる。驚くべきことに、従来からの電気化学理論、例えば、Laviron et al., J. Electroanal. Chem. 97:135(1979) および Laviron et al., J. Electroanal. Chem. 105:35(1979)(出典明示により本明細書の一部とする)は、非常に小さいEAC(10mV以下)および比較的多数の分子を除き、本明細書に記載のシステムのモデルとはならない。すなわち、交流電流(I)は、Lavironの式に正確には記載されていない。このことは、この理論が電子の限界のない源とシンクを想定していることに部分的には由来するものであり、これは本発明のシステムには当てはまらない。
【0472】
これらのシステムのよいモデルとなるAC電圧理論は、O' Connor et al., J. Electroanal. Chem. 466(2):197-202 (1999)(出典明示により本明細書の一部とする)に概略説明されている。これらのシステムを予測する式を、式1として下に示す:
式1
【数1】
式1中で、nはレドックス分子毎の酸化または還元電子数、fは適用周波数、Fはファラデー定数、N全はレドックス分子の総数、E0はレドックス分子の形式的電位、Rはガス定数、TはKelvin度数での温度、そしてEDCは電極電位である。このモデルは実験データと非常によく適合している。ある場合に、電流が予測より小さくなるが、これは、フェロセンの減少によるものであり、多くの方法で回復させ得る。
【0473】
加えて、ファラデー電流も、式2に示すとおり、時間の関数として表わすことができる:
式2
【数2】
IFはファラデー電流であり、qeは電気素量である。
【0474】
しかし、電子伝達速度の影響も機器による因子も、式1に組み入れられてない。電子伝達速度は、適用周波数に近いか、それより低い場合に重要である。このように真のiACは下記の式3に示すような3因子の関数である。
式3
iAC=f(Nernst因子)f(kET)f(機器因子)
【0475】
これらの式は、交流素子および直流素子を含む入力シグナルを使用するシステムにおける期待交流電流をモデル化し、予測できる。上記したように、驚くべきことに従来の理論は、非常に低電圧の場合以外は、これらのシステムをまったくモデル化しない。
【0476】
一般に、非特異的結合標識プローブ/ETMは、ETMを含む標識プローブが正確な方向に特異的に結合したときよりも、インピーダンスに相違を示す(すなわち、高いインピーダンス)。好ましい実施態様において、非特異的結合物質を洗い落とすと、無限大の効果的なインピーダンスをもたらす。このように、一般的に下記に示すように交流検出はいくつかの利点があり、それには、感受性の増加およびバックグラウンドのノイズを拙除する能力が含まれる。特に、インピーダンスの変化(例えばバルクインピーダンスを含む)を、ETM含有プローブの非特異的結合と標的特異的アッセイ複合体形成の差として監視できる。
【0477】
従って、AC開始および検出方法を用いると、システムの周波数応答がETM存在の結果として変化する。「周波数応答」は、電極とETMとの間の電子伝達の結果としてのシグナル修飾を意味する。この修飾はシグナル周波数に従って相違する。周波数応答には、1以上の周波数での交流電流、位相シフト、直流オフセット電圧、ファラデーインピーダンス等が含まれる。
【0478】
標的配列および標識プローブを含むアッセイ複合体がつくられると、第1入力電子シグナルはシステムに用いられ、好ましくは少なくともサンプル電極(本発明の複合体を含む)および逆電極を介してシステムに用いられ、電極とETMとの電子伝達が開始される。3つの電極システムも対照および実施電極に適用される電圧で用いられる。第1入力シグナルは少なくとも1つの交流素子を含む。交流素子は変化し得る振幅と周波数である。一般的に、本発明の方法での使用に関して、交流振幅は約1mV−1.1Vであり、約10mV−800mVが好ましく、特に約10−500mVが好ましい。交流周波数は約0.01Hz−100KHzであり、約10Hz−10MHzが好ましく、約100Hz−20MHzが特に好ましい。
【0479】
交流と直流シグナルとの併用は、驚くべき感受性とシグナル最大化を含む種々の利点がある。
【0480】
好ましい実施態様において、第1入力シグナルは交流素子および直流素子を含む。すなわち、サンプルと逆電極直流オフセット電圧は、ETM(例えば、フェロセンを用いると、掃引は一般に0から500mV)(あるいは、作動電極をグラウンドすると、対照電極は0から−500mVで掃引される)の電子化学的電位を介して掃引される。この掃引はシステムの最大応答が見られる直流電圧を同定するのに用いられる。これは一般にETMの電子化学的電位かその周辺である。この電圧が測定されると、掃引または1以上の一定の直流オフセット電圧が用いられる。直流オフセット電圧は約−1Vから+1.1Vであり、約−500mVから+800mVが望ましく、約−300から500mVが特に望ましい。好ましい実施態様において直流オフセット電圧はゼロではない。直流オフセット電圧のトップで、変化し得る振幅および周波数のシグナル交流素子が適用される。もしETMが存在して交流摂動に応答し得ると、電極とETMとの間の電子伝達によって、交流電流が生じる。
【0481】
確立したシステムにおいて、ETM(即ち標的配列の存在する)核酸の有無を識別するのに、単一の入力シグナルを用いて十分である。他方、複数の入力シグナルも適応される。これには、多くの種類があり、多重周波数、多重交流振幅あるいはこれらの組合せが用いられる。
【0482】
このように好ましい実施態様において、上記に示すが、多重直流オフセット電圧を用いると、直流電圧掃引が好ましい。これは単一の周波数または2以上の周波数で行われる。
【0483】
好ましい実施態様において、交流振幅は様々である。理論にとらわれることなく、振幅を上げると推進力が増すようである。高い振幅は高い過電位をもたらし、電子伝達に速い速度を与える。即ち、一般的に同じシステムがその周波数での高い過電位の使用を介して任意の単一の周波数での応答を改善する(すなわち、より早い出力シグナル)。振幅が高周波数で増すと、システムを通しての電子伝達の速度が増し、感受性が大きくなる。さらに、例えば、これは、適当な空間のある配置を有さないような遅いシステムでの応答を惹起するのに用いられる。
【0484】
好ましい実施態様において、システムの測定は、少なくとも2つの単離した振幅または過電位でなされる。複数の振幅での測定が好ましい。上記したように、振幅変化の結果としての応答の変化は、システムの同定、校正および定量の基礎を形成する。さらに1以上の交流周波数が同様に用いることができる。
【0485】
好ましい実施態様において、交流周波数は様々である。相違する周波数において、異なる分子が異なる方法で応答する。当業者は分かるように、周波数が増すと出力電流は一般に増加する。しかし、電極とETMに電子が行き来する速度よりも周波数が大きいときは、高い周波数は出力シグナルの喪失または低下をもたらす。ある時点で周波数がETMと電極との間の電子伝達の速度よりも大きくなり、出力シグナルも低下する。
【0486】
ある実施態様において、検出に単一周波数における出力シグナルの単一測定を用いる。すなわち、標的配列の不存在、即ちETMを含む標識プローブの不存在下でのシステムの周波数応答はあらかじめ測定でき、特定の高周波数で非常に低い。この情報を用いると、特定の周波数応答での全てのアッセイ複合体の存在を示す。すなわち、特定の周波数でのすべての応答はアッセイ複合体を特徴付ける。単一入力高周波数を用いることのみが必要であり、すべての周波数応答のなんらかの変化は、ETMが存在すること、標的配列が存在することを示す。
【0487】
さらに交流技法を用いると、ETM以外の物質によるすべての単一周波数でのバックグラウンドシグナルの顕著な低下をもたらす。すなわち、望まないシグナルの「ロッキング・アウト」または「濾去」である。溶液中の電荷キャリヤーすなわちレドックス活性分子の周波数応答が、その拡散係数および電荷伝達係数によって制限される。従って、高周波数では、電荷キャリヤーはその電荷を電極に伝達するのに十分速く拡散し得ず、および/または電荷伝達速度が十分に速くない。このことは、適切な単層を用いない場合あるいは部分的または不完全な単層を用いる場合、すなわち溶媒が電極に到達し得ない場合に著しい。すでに概記したように、直流技法において、溶媒が電極に到達し得る「孔」の存在は、システムの「短絡」溶媒電荷キャリヤーをもたらすことがある。すなわち、電極への到達およびバックグラウンドシグナルの生成である。しかし、現在の交流技法を利用すると、1以上の周波数が選択でき、単層の存在・不存在にかかわらず溶液中の1以上の電荷キャリアーの周波数応答を防ぐことができる。このことは血液などの多くの生物体液が、アンペロメトリー検出方法を妨害し得るレドックス活性分子を顕著な量で含有しているので、特に意味がある。
【0488】
好ましい実施態様において、システムの測定は少なくとも2つの別々の周波数で行われ、複数の周波数の測定が好ましい。複数の周波数には走査を含む。例えば交流電流は、1−20Hzなどの低い入力周波数で、10−100kHzなどの高い周波数での出力シグナルに対する応答と比較すると、ETMの存在の有無による周波数応答の相違を示す。好ましい実施態様において、周波数は少なくとも2、好ましくは約5、さらに好ましくは少なくとも約10周波数で測定される。
【0489】
電子伝達を開始するために入力シグナルを伝達した後に、出力シグナルが受けとられ、すなわち検出される。出力シグナルの存在および増大は多くの因子に依存する。すなわち、入力シグナルの過電位/振幅;入力交流シグナルの周波数;介在媒体の組成物;直流オフセット;システムの環境;ETMの性質;溶媒;塩の種類と濃度である。1つの与えられた入力シグナルにおいて、出力シグナルの存在および増大は、一般的にETMの存在の有無、単層表面からのETMの位置と距離および入力シグナルの性質に依存する。いくつかの実施態様において、標識プローブの非特異的結合と標識プローブを含む標的特異的アッセイ複合体の形成との相違をインピーダンスに基づき識別することは、可能である。
【0490】
好ましい実施態様において、出力シグナルは交流電流を含む。上記したように、出力電流の大きさはパラメーターの数に依存する。これらのパラメーターを変えると、多くのやり方でシステムが最適化される。
【0491】
本発明で生じる交流電流は一般的に、約1femptoamp−約1milliampにあり、約50femptoamp−約100microampが好ましく、約1picoamp−約1microampが特に好ましい。
【0492】
好ましい実施態様において、出力シグナルは入力シグナルに比較すると交流素子でシフトする位相である。理論にとらわれないで、本発明のシステムを充分に一定にすると、位相シフトの検出が可能となるようである。すなわち、本発明の電子伝達が起きるバイオ複合体は、均質に交流入力と反応し、これは標準の電子素子と同じであり、位相シフトが測定できる。このことは、ETMの存在の有無の検出の基礎として、および/または標識プローブを含む標的特異的アッセイ複合体の存在とシステム成分に対する物質の非特異的結合との差異として働く。
【0493】
出力シグナルはETMの存在を特徴とする。すなわち、出力シグナルは、標識プローブとETMを含む標的特異的アッセイ複合体の存在を特徴とする。好ましい実施態様において、検出の基礎は、アッセイ複合体の形成の結果としてのシステムのファラデーインピーダンスの相違にある。ファラデーインピーダンスは、電極とETMの系のインピーダンスである。ファラデーインピーダンスはバルクもしくは2電子インピーダンスとまったく異なり、バルクインピーダンスは電極間のバルク溶液のインピーダンスである。多くの因子がバルクインピーダンスに作用しないファラデーインピーダンスを変えることができ、その逆も可能である。このように核酸を含む本系のアッセイ複合体は一定のファラデーインピーダンスを有し、これはETMと電極の距離、その電子的性質、介在媒体の組成物などに依存している。本発明の方法で重要なことは、ETMと電極との間のファラデーインピーダンスが、ETMを含む標識プローブが電極に特異的または非特異的に結合するかどうかにより著しく異なることである。
【0494】
従って、本発明はさらに、交流検出方法を用いて核酸を検出するための装置を提供する。この装置は、少なくとも1つの第1測定すなわちサンプル電極および第2測定すなわち逆電極を有する試験室を含む。3つの電極系も有用である。第1および第2測定電極は試験サンプル受け領域に接触し、液体試験サンプルの存在下で、2つの電気泳動電極は電子的に接触していてもよい。
【0495】
好ましい実施態様において、第1測定電極は、付着リンカー、および上述の導電性オリゴマーを含む単層を介して共有結合した一本鎖核酸捕獲プローブを含む。
【0496】
装置は、試験室すなわち測定電極に電気的に連結した交流電圧源を含む。好ましくは、交流電圧源は直流オフセット電圧も同様に伝達し得る。
【0497】
好ましい実施態様において、装置はさらに、入力シグナルと出力シグナルとを比較し得るプロセッサーを含む。プロセッサーは電極に結合しており、出力シグナルを受けるように配置され、そのようにして標的核酸の存在を検出する。
【0498】
従って、本発明の組成物は、種々の研究、臨床、品質管理、野外試験などに用いられる。
【0499】
好ましい実施態様において、これらのプローブは遺伝子診断に使用される。例えば、本明細書中に開示した技術を使用して、プローブを、例えば、非茸腫結腸癌遺伝子、BRCA1胸部癌遺伝子、各種の癌関連遺伝子であるP53、アルツハイマー病の最大リスク指標であるアポE4遺伝子、などの標的配列を検出するために調製し、患者の前駆症状スクリーニング、全身性繊維症遺伝子変異、あるいはその他の当技術分野で周知のすべてを容易になし得る。
【0500】
別の実施態様では、ウイルスおよびバクテリアの検出は、本発明の複合体を使用して実施できる。この実施態様では、プローブは、各種バクテリアおよびウイルスから標的配列を検出するためにデザインされる。例えば、現今の血液スクリーニング技術は坑HIV抗体の検出に依存している。本明細書中に開示した方法は、臨床サンプルのHIV核酸配列、殊に保存性の高いHIV配列を検出する直接スクリーニングを可能とする。さらにこれは、抗ウイルス治療の効果を評価する改良方法として、患者の体内を循環しているウイルスを直接モニターすることを可能とする。同様に、白血病関連ウイルス、HLTV−IやHLTV−IIをこの方法で検出することができる。結核、クリミディアおよび他の性的伝染症などのバクテリア感染症も、例えば標的配列としてリボゾームRNA(rRNA)を用いて、検出できる。
【0501】
好ましい実施態様では、本発明の各核酸は、水あるいは食品サンプルのスクリーニングにおいて毒性バクテリア用プローブとしても使用される。例えば、各サンプルは、バクテリアを溶解処理してその核酸(特にrRNA)を遊離させ、次いでバクテリア株を認識するようにプローブをデザインする。但し、該バクテリアは、Salmonella, Campylobacter, Vibrio cholerae, Leishmania, 腸毒性のE. Coli株、およびレジオネア病バクテリア、などの病原性株を含むが、それらに限定はされない。同様にして、本発明の組成物を使用して生体治癒戦術を評価できる。
【0502】
さらなる実施態様では、犠牲者や容疑者から採取したサンプルについて、犯罪−現場を照合させる法医学的「DNA指紋鑑定」に使用される。
【0503】
さらなる実施態様では、あるアレイ配列のプローブは、ハイブリダイゼーションによる配列決定に使用される。
【0504】
このように、本発明は、ある実施態様においては、ハイブリダイズしていないプローブを除去することなく標的配列を検出し得る、極めて特異的かつ感受性の高いプローブを提供するものである。これは、自動化遺伝子プローブアッセイの形成に有用である。
【0505】
あるいは、本発明の組成物は、PCRにおける成功した遺伝子増幅を検出するのに有用であり、かくして成功したPCR反応を標的配列の存在または不存在の指標とすることができる。PCRはこのような手法で数種の方法に使用される。例えば、ある実施態様では、このPCR反応は当技術分野で知られているようにして実施され、次いで、標的核酸とETMとを含む本発明の組成物に加え、導電性オリゴマーを介して電極に共有結合させ、続いて標的配列を検出する。あるいは、ETMで標識化したヌクレオチドを用い、電極の存在下にまたは続いて電極を加えるかのいずれかで、導電性オリゴマー及び標的核酸とともにPCRを実施する。ETMを含有するPCR生成物の電極組成物との結合は、電子移動により検出される。最終的に、導電性ポリマーを介して電極に結合した核酸は、ETMで標識化した第2プライマーの添加により、PCRプライマーの1種となるだろう。伸長させると、ETMおよび共有結合した電極を有する2本鎖核酸を生じる。このような方法で、本発明は各標的配列のPCR検出に使用される。
【0506】
好ましい実施態様では、これらの配列はmRNA検出に使用される。好ましい実施態様は、これらのmRNAの3’ポリアデニル化末端近くにハイブリダイズする捕獲プローブまたは捕獲伸長プローブのいずれかを利用するものである。これにより、標的結合プローブの1種、即ち、mRNA標的のポリ−A末端と結合するポリ−T部分を含有するプローブ、を標的に使用することが可能となる。一般的に、このプローブは、好ましくは非ポリ−Tであり、検出プローブ(または他のプローブ)と結合する第2部分、を含有する。これにより、1種標的結合プローブの調製し、かくして異種プローブ合成実施量の減少が可能となる。
【0507】
好ましい実施態様では、制限酵素およびライゲーション手法を使用することにより、「ユニバーサル」アレイ配列の生成が可能となる。この実施態様では、PCT US97/2014の図7に一般的に示し、制限エンドヌクレアーゼ末端を含む捕獲プローブを含む単層である。核酸の相補的部分を利用することにより、「粘着性末端」を残しつつ、制限エンドヌクレアーゼ部位のすべてを含むアレイ配列が調製される。これらの制限エンドヌクレアーゼの1種またはそれ以上で標的サンプルを処理することにより、それらの標的をアレイ配列に結合させることが可能となる。これは、標的の配列を知らなくても実施できる。それらの標的配列は、所望により、標準的手法、例えばリガーゼを用いてライゲートでき、そして標準的標識または本発明方法のいずれかを使用して標的配列を検出できる。
【0508】
本発明は、核酸類を感受性よく検出し得る方法を提供するものである。好ましい実施態様では、約10×106以下、好ましくは約10×105以下、より好ましくは約10×104以下、特に好ましくは約10×103以下、最も好ましくは約10×102以下の分子が検出される。これは標的配列とレポーター分子との1:1の相関を推認するものであり、もし各標的配列に対して1以上のレポーター分子(即ち、電子伝達部分)を使用すれば、感受性がより高くなるはずであることは、当業者には明かであろう。
【0509】
現今、検出限界は刊行物発表されたDNAを介しての電子伝達率に基づいて評価されており、それは大まかに言って、8塩基対の分離につき1×106電子/秒/デュープレックスであり(Meade et al., Angw. Chem. Eng. Ed., 34:352 (1995)参照) 、高い推進力、約100kHzのAC周波数を可能とするものである。予試験結果が示しているように、これらのシステムを介しての電子伝達は、極めて効率的であり、ほぼ100×103電子/秒に達し、非常に僅かの分子に対しても有力でフェムトアンプな感受性をもたらす。
【0510】
以下の実施例は、本発明を用いる方法をより完全に説明するのに役立ち、さらに本発明の多様な態様を実施するための最良のモデルを示すものである。これら実施例は、本発明の範囲を制限するものではなく、むしろ説明の目的で示されていると解されるべきである。本明細書中で引用したすべての刊行物は、出典明示により本明細書の一部とする。
【0511】
実施例
実施例1
基板および単層の一般的調製方法
基板上のSAM形成−一般手法
自己集合性単層を清浄化した金表面に形成させた。金表面は様々な異なる方法で調製することが可能であり、溶融または研磨した金線、ガラスまたは雲母またはシリコンウェーファまたはある種他の基板上にスパッタまたは蒸着した金、回路基板材料またはガラスまたはシリコンまたはある種他の基板上に電気メッキまたは無電解メッキした金などである。真空析出金サンプル(蒸着およびスパッタ)および溶液析出金サンプル(無電解メッキおよび電気メッキ)両者では、しばしば、良好な機械的安定性を確実にするために、基板と金の間に接着層を使用する必要がある。クロム、チタン、チタン/タングステンまたはタンタルが多くの場合スパッタと蒸着金で使用される。電気メッキニッケルは通常電気メッキと無電解メッキで使用されるが、他の接着材料も使用することができる。
【0512】
金基板は単層形成に先立って清浄とする。様々な異なる方法が採用されている。化学溶液での清浄化が最も一般的に行われている方法である。ピランハ(Piranha)溶液(過酸化水素/硫酸)または王水(塩酸/硝酸)での清浄化が最も一般的であるが、電気化学的方法、火炎処理およびプラズマ法もまた採用されている。
【0513】
清浄化処理後、金基板は析出溶液中でインキュベートする。析出溶液は溶媒中種々のチオール類の混合物から構成される。エタノールなどの有機溶媒中アルカンチオール類の混合物は最も一般的に行われる手法であるが、多数の変法が開発されている。代わり得る手法としては、アルカンチオールの気相析出、ミクロコンタクト印刷、正味チオールによる析出、水性溶媒からの析出などであり、2工程手法が開発されている。析出溶液中のアルカンチオール濃度はモルから半微量マイクロモルの範囲であり、0.5〜2.0ミリモルが最も一般的である。金基板は、その手法によるが、1秒未満ないし数日間析出溶液とインキュベートするか、接触下に置く。最も一般的な時間は一夜インキュベーションである。インキュベーションは通常室温で実施するが、50℃までの温度が一般的である。
【0514】
DNAを含む混合単層は通常2工程手法を用いて調製する。チオール化DNAは最初の析出工程で析出し、混合単層の形成はDNA不含の第二チオール溶液を添加する第二工程で完結する。第二工程では多くの場合緩和に加熱して単層の再構成を促進する。
【0515】
SAM形成の一般手法−有機溶液からの析出
清浄な金表面を清浄なバイアルに容れた。有機溶媒中DNA析出溶液を総チオール濃度が400μMないし1.0mMとなるように調製した。該析出溶液はチオール修飾DNAとチオール希釈剤分子を含んでいた。DNAと希釈剤の比は通常10:1ないし1:10、好ましくは1:1とした。好適な溶媒はテトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)またはその混合物である。十分なDNA析出溶液をバイアルに加え、電極表面を完全に被覆するようにした。該金基板を外界温度または外界より僅かに高い温度で5〜30分間インキュベートする。最初のインキュベーションの後、析出溶液を除去し、有機溶媒中希釈剤分子のみの溶液(100μM〜1.0mM)を添加する。金基板を室温または室温より高い温度で完全な単層が形成されるまで(10分〜24時間)インキュベートする。金サンプルを溶液から取出し、清浄な溶媒で洗浄し、使用する。
【0516】
SAM形成の一般手法−水溶液からの析出
清浄な金表面を清浄なバイアルに容れた。水中DNA析出溶液を総チオール濃度が1μMないし200μMとなるように調製した。水溶液には多くの場合塩が存在する(約1M)が、純水を用いることができる。析出溶液はチオール修飾DNAと多くの場合チオール希釈剤分子を含む。DNAと希釈剤の比は通常10:1ないし1:10、好ましくは1:1である。DNA析出溶液をバイアルに加え電極表面を完全に蔽う容量とする。金基板は外界温度または外界より僅かに高い温度で1〜30分間、通常は5分で十分であるが、インキュベートする。最初のインキュベーションの後、析出溶液を除去し、水または有機溶媒のいずれか中の希釈剤分子のみの溶液(10μM〜1.0mM)を添加する。金基板を室温または室温より高い温度で完全な単層が形成されるまで(10分〜24時間)インキュベートする。金サンプルを溶液から取出し、清浄な溶媒で洗浄し、使用する。
【0517】
Au球電極上の単層
Au球電極の創製:剃刀の刃を用い、金線(直径127μm、純度99.99%;例えば、アルドリッチ(Aldrich)から)を長さ10cmに切断する。16ゲージの針を用い、#4天然ゴムの隔壁(1/2mLのPCRエッペンドルフ・チューブ)に通す。(これは金線を支える働きをし、析出に際しチューブを密封する。下記参照)。清浄な火炎(メタンまたはプロパン)を用い、金線1センチメートルを融解し、金線末端に付着した球体を形成する。金線の長さを調節し、PCRチューブに密封したときに、金球が底部近くに位置して、20μLの液体に沈むようにする。使用する日に、電極を王水(H2O:HCl:HNO3=4:3:1)に20秒間浸け、次いで、水で十分に洗浄する。
【0518】
誘導体化:析出溶液(2:2:1のDNA/H6/M44、DMF中総量833μM)20μL量をPCRチューブ中PCRブロック上50℃に5分間加熱する。次いで、各電極を析出溶液のチューブに入れ(金球が丁度沈む程度に;金線の軸はできるだけ少なくする)、室温に移す。PCRチューブに電極を移動する前に、DMF中200μLの400μM−M44と15分間インキュベートする(金線軸の多くを同様に沈める)。M44中に室温で5分間入れておき、次いでPCRブロック上に置き、HCLONGを行う。電極をM44溶液から取出し、6xSSCに浸け、20μLのハイブリダイゼーション溶液の入ったPCRチューブに入れる。ACV測定に先立ち電極を6xSCCに浸ける。
HCLONG:65℃2'、−0.3℃/sで40℃へ、40℃2'、+0.3℃/sで55℃へ、55℃2'、−0.3℃/sで30℃へ、30℃2'、+0.3℃/sで35℃へ、35℃2'、−0.3℃/sで22℃へ。
【0519】
回路基板の作製
両面に半オンスの銅箔を有するFR−4のパネル(ゼネラル・エレクトリック(General Electric))(18”×24”×0.047”)に説明書(ゲルバー(Gerber)ファイル)に従い穿孔した。FR−4パネルは無電解メッキ銅によりメッキして(500マイクロインチ)特定の穿孔を実施し、次いでパネルをさらに500マイクロインチの電気メッキ銅でメッキする。銅メッキに続いて、パネルは説明書に従い塩化第二銅のエッチング(酸エッチング)によりエッチングする。エッチングしたパネルは次いで400マイクロインチの電気メッキニッケルで光沢メッキし、続いて50マイクロインチの軟金(純度99.99%)でメッキする。金パネルを液体光画像化接合物マスク(プロバイマー(Probimer)52、チバ−ガイギー(Ciba-Geigy)社)により両面被覆する。画像化は説明書に従い実施する。直径250ミクロンの14個のセンサー電極と2個の大型電極(直径500ミクロン)を絶縁した鉛で創製し、基板の端の金メッキした接続部に繋ぐ。次いで接合物でマスクしたパネルを説明書に従い刻み目を入れ、1”×1”の個々のウェファーを創製する。銀/塩化銀のペーストを2個の大型電極(エルコン(ERCON)R−414)の一方に塗布する。次いでパネルをアルゴン/酸素プラズマ混合物でプラズマ清浄化する。清浄化処理に続いて、パネルは箔内張りバッグに使用時まで保存する。
【0520】
回路基板上の単層析出
回路基板を箔内張りバッグから取出し、10%硫酸溶液に30秒間浸漬する。硫酸処理に続き、基板を2個のミリ−Q水浴にそれぞれ1分間浸漬する。次いで基板を窒素気流下に乾燥する。基板を湿潤チャンバー内のX−Yテーブル上に置き、DNA析出溶液30ナノリットルの一滴ずつを14個の電極上に置く。DNA析出溶液は33μMのチオール化DNA、33μMの2単位フェニルアセチレン線(H6)、および6xSSC(900mM塩化ナトリウム、90mMクエン酸ナトリウム、pH7)w/1%トリエチルアミン中16μMのM44から構成される。この点滴を室温で5分間インキュベートし、次いで、ミリ−Q水浴中で洗浄することにより除去する。基板をアセトニトリル中M44の45℃浴に浸漬する。30分後、基板を取出し、30秒間アセトニトリル浴に浸漬し、次いでミリ−Q水浴中に30秒間浸漬する。窒素気流下に基板を乾燥する。
【0521】
実施例2
標的配列の検出
回路基板上の単層析出
上記のように、回路基板を箔内張りバッグから取出し、10%硫酸溶液に30秒間浸漬した。硫酸処理に続き、基板を2個のミリ−Q水浴にそれぞれ1分間浸漬した。次いで基板を窒素気流下に乾燥した。基板を湿潤チャンバー内のX−Yテーブル上に置き、DNA析出溶液30ナノリットルの一滴ずつを14個の電極上に置いた。DNA析出溶液は33μMのチオール化DNA、33μMの2単位フェニルアセチレン線(H6)、および6xSSC(900mM塩化ナトリウム、90mMクエン酸ナトリウム、pH7)w/1%トリエチルアミン中16μMの1−ウンデセン−11−イルトリ(エチレングリコール)(HS−CH2)11−(OCH2CH2)3−OH)から構成されていた。3個の電極にDNA1(5'−ACCATGGACAGAGAT(CH2)16SH−3')含有溶液をスポットした。4個の電極にDNA2(5'−TCATTGATGGTCTCTTTTAACA(CH2)16SH−3')含有溶液をスポットした。4個の電極にDNA3(5'−CACAGTGGGGGGACATCAAGCAGCCATGCAAA(CH2)16SH−3')をスポットした。3個の電極にDNA4(5'−TGTGCAGTTGACGTGGAT(CH2)16SH−3')をスポットした。析出溶液を室温で5分間インキュベートし、次いで、点滴をミリ−Q水浴中で洗浄することにより除去した。アセトニトリル中M44の45℃浴に該基板を浸漬した。30分後に基板を取出し、アセトニトリル浴に30秒間浸漬し、次いで、ミリ−Q水浴中に30秒間浸漬した。基板を窒素気流下に乾燥し、窒素流入箔内張りバッグに使用時まで保存した。
ハイブリダイゼーションおよび測定
修飾した基板を箔内張りバッグから取出し、注入成形サンプルチャンバー(カートリッジ)を取付けた。チャンバーは両面粘着テープにより接着したが、その総容量は250μlであった。ハイブリダイゼーション溶液を調製した。該溶液は10nMのDNA標的(5'−TGTGCAGTTGACGTGGATTGTTAAAAGAGACCATCAATGAGGAAGCTGCAGAATGGGATAGAGTCATCCAGT−3'(D−998)、30nMの信号伝達プローブ(D−1055)および10nmの5'−TCTACAG(N6)ATCTGTGTCCATGGT−3'(N6はPCTUS99/01705の図1Dに示されている;ヌクレオシドのリボースの2'酸素に、4個の炭素鎖により連結したフェロセンを含んでなる)を含んでいる。
信号伝達プローブは以下のとおりである。
【表1】
【0522】
N87は環状構造を含んでなる分枝点である。C23はPCTUS99/01705の図1Fに示されている。25%キアゲン(Qiagen)溶解緩衝液AL、455mMのNaClO4、195mMのNaCl、1.0mMのメルカプトヘキサノールおよび10%ウシ胎児血清を含む溶液において、250μlのハイブリッド溶液をカートリッジに注入し、12時間ハイブリダイズさせた。12時間後、ハイブリダイズしたチップを、切り換え回路を備える自家製の相互コンダクタンス増幅器に挿し込んだ。該相互コンダクタンス増幅器は、コンピューターDAQカードからのDCランプとロックイン増幅器からのAC正弦波とを結合する加算回路を備えていた(SR830スタンフォード・インストルーメント(Stanford instruments))。各電極を連続的に走査し、データをセーブし、ラブビュー(Labview)(ナショナル・インストルーメント(National instruments))を用いて設計した自家製プログラムにより処理した。チップを−100mVないし500mV(疑似Ag/Ag/Cl参照電極)DCで、25mV(ピーク間50mV)、1000Hzの重ね合わせ正弦波により走査した。出力電流をロックイン増幅器に給電し、1000Hzの信号を記録した(ACV技法)。パッド各セットのデータを集め、平均した。
【0523】
【表2】
結果はU.S.S.N.09/338,726の図14に示されている。
【0524】
実施例2
配列決定のための温度と競合体の使用
単一ヌクレオチド多型現象(SNP)を識別する能力は重要なゴールである。我々は遺伝性ヘモクロマトーシス遺伝子(HFE)における単一ヌクレオチド突然変異を識別する能力について試験したが、その遺伝子では異常タンパク質産物が鉄の過剰負荷を生じる。我々は先ず標的の表面プローブ結合ドメインにおいて誤対合検出用のサンドイッチアッセイを確立した。HIVに対する76量体のオリゴヌクレオチドモデル配列は最初の標的として作用し、引続いてモデルオリゴ体疑似HFEアンプリコンが使用された。最後に、我々はHH(遺伝性ヘモクロマトーシス)患者からの不斉PCR(A−PCR)産物について試験し、2つの極一般的な突然変異に関し、遺伝子型決定患者サンプルに対し整列配置したサンドイッチアッセイの有用性を確認した。また、我々は単一バックボーン結合切断を検出する我々の能力を明らかにするモデルOLAアッセイ法を開発した。
【0525】
サンドイッチアッセイによる表面プローブ結合ドメイン内のHIVまたはHFE76bpモデルオリゴ体における点誤対合の識別
序論:76量体HIVモデルオリゴ体(D765)とその対応する22量体表面プローブ(D761)並びに単一ヌクレオチド置換をもつ修飾標的および相補性置換をもつ修飾捕獲プローブをHIVサンドイッチアッセイに用いた(材料と方法参照)。当初の未修飾標的オリゴ体は野生型(D765)標的と命名し、一方、1個のヌクレオチド修飾標的オリゴ体は突然変異体(D941)標的と命名した。D761より1塩基短い21量体の表面プローブ(D1182)は野生型と命名し、1ヌクレオチド修飾した表面プローブは突然変異体(D1181)と命名した。
【0526】
76量体HFEオリゴ体(D1117)は、CYS282Y位置づけのための野生型モデル標的、並びにその対応する21量体表面プローブ(D1183)とそれらの信号オリゴ体(D1138)として作用するように調製した。オリゴ体D1118は突然変異モデル標的として作用し、その対応する21量体表面プローブはD1184である。信号伝達オリゴ体D1138は野生型C282および突然変異Y282標的配列の両方と合致している。
【0527】
HHと関連する第二の最も共通の突然変異は63位に位置づけられる(H63D突然変異、CからGへの塩基転換)。D1121はH63に対する野生型モデル標的であり、D1122はD63に対する突然変異モデル標的である(Beutler et al. 遺伝性ヘモクロマトーシスにおける突然変異分析。Blood Cells, Molecules, and Diseases 22: 187-194, 1996)(Bulaj et al. ヘモクロマトーシスに対しヘテロ接合体である人々の臨床的生物化学的異常性。N. Engl. J. Med. 335: 1799-1805, 1996)(Feder et al. 遺伝性ヘモクロマトーシスの患者において新規MHCクラスI様遺伝子は突然変異している。Nature Genetica 13: 399-408, 1996)(Witte et al. 遺伝性ヘモクロマトーシス。アメリカ病理学者の大学における業務指針動向分科会。Clin. Chem. Acta 245: 139-2000, 1996)。H63Dモデル標的に対する対応する捕獲信号伝達プローブは、材料と方法に示すように、D1185(野生型捕獲)、D1186(突然変異体捕獲)およびD1139(共通信号伝達)と命名する。
【0528】
熱力学的考察により我々は、野生型および突然変異体標的が、ハイブリダイゼーションと引続く温度上昇処理後に、完全に対合した標的プローブおよび誤対合した標的プローブとを区別して会合すると想定した。融点Tmは、溶液中の姉妹鎖の50%が二重ラセン状態にあり、50%が一本鎖である温度と定義する。誤対合対(突然変異体プローブとハイブリダイズした野生型標的または野生型プローブとハイブリダイズした突然変異体標的)のTmは完全に対合した対(野生型プローブとの野生型標的または突然変異体プローブとの突然変異体標的)のTmよりも低い。
【0529】
我々は、完全対合標的と誤対合標的は、センサー上の温度上昇に対する安定性に溶液で見られるような類似の不均衡を示すことを予測した。具体的には、我々は誤対合対が会合し、電気化学的信号伝達が低下する一方で、対合対はアニールしたままで、電気化学的信号を発生し続けると予測した。しかし、我々は表面上の差異を観察するための最良の温度が溶液中でのTmとは異なると考えた。
【0530】
材料と方法
1:調製したDNAオリゴ体
(D765):WT(野生型)標的
5'GACATCAAGCAGCCATGCAAATGTTAAAAGAGACCATCAATGAGGAAGCTGCAGAATGGGATAGAGTGCAGT-3'
(D941):D765 mut(突然変異体)標的
5'GACATCAAGCqGCtATGCAAATGTAAAGAGACCATCAATGAGGAAGCTGCAGAATGGGATAGAGTGCATCCAGT-3'
(D772):WT(野生型)信号
[N6]C[N6]G[N6]C[N6]GCTTA[N6]C[N6]G[N6]C[N6]G[C131]TTTGCATGGCTGCTTGATGTC-3'
(D761):WT(野生型)表面
5'-TCATTGATGGTCTCTTTTAACA(P282)-3'
(D1181):mut(突然変異体)D761
5'-CATTGATGGTGTCTTTTAACA(P282)-3’
(D1182):WT(野生型)D761
5'-CATTGATGGTCTCTTTTAACA(P282)-3'
(D1183):HEF表面 WT(野生型)1C
5'-AGATATACGTGCCAGGTGGAGp(282)-3’
(D1184):HFE表面 mut(突然変異体)1C
5'-AGATATACGTACCAGGTGGAGp(282)-3’
(D1138):HFE信号1C
5'-(N6)C(N6)G(N6)C(N6)GCTTA(N6)C(N6)G(N6)C(N6)G(C131)CACCCAGGCCTGGATCAGC-3'
(D1117):HFE標的 WT(野生型)1C
5'-GCTGATCCAGGCCTGGGTGCTCCACCTGGCACGTATATCTCTGCTCTTCCCCAGGGGGTACAGCCAAGGTTATCCA−3’
(D1118):HFE標的 mut(突然変異体)1C
5'-GCTGATCCAGGCCTGGGTGCTCCACCTGGTACGTATATCTCTGCTCTTCCCCAGGGGGTACAGCCAAGGTTATCCA−3’
(D1185):HFE表面 WT(野生型)2H
5'-GTTCTATGATCATGAGAGTCGp(282)-3’
(D1186):HFE表面 mut(突然変異体)2H
5'-GTTCTATGATGATGAGAGTCGp(282)-3’
(D1139):HFE信号H
5'-(N6)C(N6)G(N6)C(N6)GCTTA(N6)C(N6)G(N6)C(N6)G(C131)CCGTGTGGAGCCCCGAACT-3'
(D1121):HFE標的 WT(野生型)2H
5'-AGTTCGGGGCTCCACACGGCGACTCTCATGATCATAGAACACGAACAGCTGGTCATCCACGTAGCCCAAAGCTTCA-3'
(D1122):HFE標的 mut(突然変異体)2H
5'-AGTTCGGGGCTCCACACGGCGACTCTCATCATCATAGAACACGAACAGCTGGTCATCCACGTAGCCCAAAGCTTCA-3'
PCR HFEプライマーF1C
5'-TGGCAAGGGTAAACAGATCC-3'
PCR HFEプライマーR1C
5'-CTCAGGCACTCCTCTCAACC-3'
PCR HFEプライマーF2H
5'-ACATGGTTAAGGCCTGTTGC-3'
PCR HFEプライマーR2H
5'-GCCACATCTGGCTTGAAATT−3’
【0531】
2:調製したチップ
析出溶液を上記のように表面プローブと混合した。該DNAプローブを上記のように以下のとおりチップ上に析出させた:D1183(HFE−C、WT)、D1184(HFE−Cmut)、D1185(HFE_H、WT)、D1186(HFE_H、mut)、D761/D1182(HIV、WT)、およびD1181(HIV、mut)をチップ上に析出し、次いで上記のようにチップをM44/アセトニトリル/加熱の後処理に付す。チップをカートリッジに装着した。
【0532】
3:標的および信号伝達オリゴ体とのハイブリダイゼーション緩衝液の調製
ヒト全血を等容量のAL(キアゲン(Qiagen)から)溶解緩衝液と血液容量の1/8のプロティナーゼK(20mg/ml)と併合し、次いで70℃で10分間インキュベートした。標的および信号伝達オリゴ体をそれぞれ0.5μMおよび1.25μM濃度で2M−NaClO4(容量で1/1)と共に溶解血液に添加し、室温で20分間ハイブリダイゼーションを実施した。電極アレイをサーマルサイクラーに入れ、グリセロールを満たし、温度計プローブを容れた別のアレイをモニターしながら所望の温度とした。各電極パッドについてDAQ−o−マチックシステムにより電気化学信号を(異なる温度で)測定した。
【0533】
結果と考察:野生型(D765)または突然変異HIV標的(D1095)およびD772信号伝達オリゴ体を用い、対合および誤対合に対する温度の関数として電気化学応答を検討した。分析は野生型電極アレイと25℃20分間でハイブリダイズする0.5μMの標的および1.25μMの信号伝達オリゴ体により実施した。次いで、チップをサーマルサイクラーに移動し、2分間で所望の温度に到達させて、その電気化学信号を測定した(図19)。図19のグラフによると、完全対合の野生型標的/野生型表面オリゴ体対は約54℃のTmを示し、誤対合した突然変異標的/野生型表面オリゴ体対は約38℃のTmを示した。45℃では、完全対合および誤対合複合体が出発点に関して電気化学信号に有意な差異を示す(25℃での開始出力を100%ととして定義)。
【0534】
図19に提示した結果は、野生型および突然変異HIVオリゴ体の遺伝子型決定が均一および不均一サンプルについて25℃および45℃での信号出力を比較することにより達成し得ることを示唆した。ハイブリダイゼーション溶液が野生型または突然変異HIV標的のみを含む場合、完全対合対からの電気化学信号は、緊縮温度条件下で誤対合対よりも2〜20倍高い信号を示す(図20、各条件について示された3個のチップ)。留意すべきは、突然変異プローブ上野生型標的の最大の差別化が45℃で達成される一方、野生型プローブ上突然変異標的の最大差別化は、分析を55℃で行うことを必要としたことである。後者の観察は恐らく誤対合塩基対の特性の結果であるが、その理由は誤対合がその不安定化の影響において多様であることが知られているからである。
【0535】
均一な標的、野生型または突然変異体でアレイをチャレンジした場合、誤対合二重ラセンを識別する我々の能力は、我々がアレイによって遺伝子型を識別し得ることを示唆している。具体的に我々が仮定したことは、等量の野生型および突然変異体標的とハイブリダイズしたアレイは、野生型および突然変異体捕獲プローブ含有の電極上に上昇温度で同様の出力を生じるであろうとしたことである。図21は野生型および突然変異HIVオリゴ体のかかる混合物をチャレンジした3個の独立したアレイからの結果(Mix−1ないし3)を図式により示す。電気化学信号は、均一な標的で得られる結果同様、25℃で最大である。しかし、均一な標的で見られる結果と対照的に、野生型または突然変異体捕獲プローブ含有のパッドからの電気化学信号は45℃と55℃で互いの2倍内にある(図21)。これらの知見についての我々の解釈は、各電極が最初に完全対合および誤対合標的両方とハイブリダイズし、各電極が完全対合標的を保持し、さらに上昇温度で同じ強度の信号を発し続けることを示していることである。
【0536】
我々の気付いたことは、アレイが45℃から55℃に加熱されるにつれ、完全対合からの信号出力が一般に減少することである。しかし、我々の理由付けとして、もし完全対合を取込んでいる電極上に十分な信号が残っているなら、個々の温度が遺伝子型決定を容易にし得ることである。我々の仮説を試験するために、緊縮ハイブリダイゼーション条件(52℃)を用い、野生型、突然変異体、または野生型および突然変異オリゴ体の混合物を含むサンプルの識別を試みた。図22はかかる分析から得られた結果を示す。この結果は明らかに該サンプルについて52℃3分後にその遺伝子型を決定し得ることを示す。具体的には、均一な標的含有サンプルは上昇温度で電極のタイプ間に10倍以上の差異を一般に示す一方、不均一な標的含有サンプル負荷では、電極タイプ間の差異が2倍未満の信号を生成する。絶対信号は左側に記録され、標準の出力は右側に記録されることに留意。
【0537】
HIVサンプルの遺伝子型決定に我々が成功したとして、我々はHFEモデル標的オリゴ体の分析を進めた。各オリゴ体のTmを理論的に決定し、上昇温度は研究中の2種の異なる標的(C2828YおよびH63D)について誤対合の識別を容易に予測するように選択した。図5はその結果を図式により示す。C282Y捕獲プローブのG+C比率は、H63Dの比率(43%)よりも高い(52%)。このように、モデルC282Yについて野生型から突然変異体を識別するのに使用する温度は52℃であり、モデルH63Dに使用する温度は46℃である。電気化学信号は、誤対合の場合、上昇温度で4〜20倍減少するが、標的および捕獲プローブ対はそれによって考慮される。それに対し、等モル濃度の両標的を含むサンプルは上昇温度で電極タイプ間における差が2倍未満となる。このように、該センサーのアレイは遺伝子における2つの最も共通する突然変異を示すモデルHFEオリゴ体の遺伝子型決定に使用することができる。
【0538】
実施例3
非対称PCR(A−PCR)産物における単一ヌクレオチド誤対合を検出することによる遺伝性ヘモクロマトーシスの遺伝子型決定
目的:HFEモデル標的の誤対合検出のために開発されたサンドイッチアッセイ法がA−PCR産物における同じ突然変異を検出するために使用し得ることを確認すること
【0539】
序論:遺伝性ヘモクロマトーシスは最も一般的に同定されている遺伝性疾患である。HHはしばしば診断されずに進行し、多くの場合、多くの代謝障害の根本原因である。
【0540】
HHにおける最も共通の突然変異は282位でのシステインからチロシンへの変異であり(C282Y突然変異)、これはグアニンからアデニンへの転位の結果である。材料と方法に掲載したプライマーF1_CおよびプライマーR1_Cは、当初、282位でのHH突然変異のPCR診断用に設計された。当初の方法ではこのプライマー対を用いて388bpのフラグメントをPCRにより増幅し、遺伝子型を引続くRsaI制限消化とアガロースゲル電気泳動により決定する。変異したPCR産物は余分のRsaI部位をもち、RsaI処理後に111bpの余分のフラグメントを生成することになろう。
【0541】
HHと関連する第二の最も共通する突然変異は63位に生じる(H63D突然変異、GからCへの変異)。材料と方法に掲載したプライマーF1_HおよびプライマーR1_Hは、当初、63位でのHH突然変異のPCR診断用に設計された。当初の方法ではこのプライマー対を用いて209bpのフラグメントをPCRにより増幅し、その遺伝子型をDpnII消化後に決定する。野生型PCR産物は1個のDpnII部位を有し、DpnII処理後139bpと70bpのフラグメントを生じるが、突然変異体PCR産物はDpnII部位を欠き、DpnII処理後にそのままの209bpフラグメントを保持する。
【0542】
我々の実験で、我々はプライマーの対を非対称性比(プライマー_Rからプライマー_Fへは5対1)で用い、一本鎖DNAを含むPCR産物を産生させた。PCR産物が正しく同定されたことを制限消化により確認した後、我々はA−PCR産物と信号伝達オリゴ体(D1138またはD1139)を材料と方法に記載したようにハイブリダイゼーション緩衝液中で混合した。次いで、A−PCR産物をHFEサンドイッチアッセイにより検出した。
【0543】
材料と方法
1:調製したDNAオリゴ体
PCR HFEプライマーF1C
5'−TGGCAAGGGTAAACAGATCC−3’
PCR HFEプライマーR1C
5'−CTCAGGCACTCCTCTCAACC−3’
PCR HFEプライマーF2H
5'−ACATGGTTAAGGCCTGTTGC−3’
PCR HFEプライマーR2H
5'−GCCACATCTGGCTTGAAATT−3’
【0544】
2:HFEモデルサンドイッチアッセイに使用される場合のチップ(上記)
PCR条件は以下のとおりである:50μlのPCR反応においてゲノムDNA50〜100ng;1mM−dNTP、2mM−MgCl2、1XPCR緩衝液、600nMのプライマー_R、120nMのプライマー_F;95℃で変性、53℃でアニーリング、および72℃で延長、42サイクルの各ステップ50秒。
【0545】
10μlのPCR産物を制限消化し、個々のサンプルの遺伝子型を確認する。RsaI(C_フラグメント)またはDpnII(H_フラグメント)をPCR産物と37℃で1時間インキュベートし、サンプルフラグメントを2%アガロースゲル上電気泳動に付し、引続いて臭化エチジウムにより染色した。
【0546】
20μlのPCR産物を125nM信号伝達オリゴ体(C_フラグメントに対しD1138、H_フラグメントに対しD1139)と混合し、100℃に1分間加熱し、氷上3分間冷却し、次いでハイブリダイゼーション緩衝液(過塩素酸ナトリウムにより溶解した血液)と混合した。A−PCR産物を含むハイブリッド形成緩衝液を室温でHFEチップに注入し、4時間ハイブリダイズさせた。
【0547】
DAQ−o−マチック中25、45および50℃での電気化学信号の測定
4時間のハイブリダイゼーション後に検出された信号が10nA未満であった場合、我々はPCR産物をキアゲン(Qiagen)PCR精製キットにより精製し、次いでこの精製した産物の1/10をDNA鋳型として用い、単一のプライマーのみで第二A−PCR産物を産生させた。次いで、第二A−PCRの産物をHH遺伝子型チップ上で分析した。
【0548】
結 果
C_フラグメント(388bp)またはH_フラグメント(209bp)のA−PCR産物を別個にHFEモデルサンドイッチアッセイ用の表面プローブ含有電極上でハイブリダイズさせた。モデル標的オリゴ体についての場合のように、差異を示した温度は2つの標的間で異なっており、H_フラグメントでは45℃、C_フラグメントでは50℃であった。我々は25℃で、次いで上昇温度で電子化学信号を分析した。その結果を図24に図式により示す。信号出力は上昇温度ですべてのパッド上減衰するが、誤対合複合体からの信号出力はさらに大きな減衰を示す。具体的には、完全対合サンドイッチ複合体からの信号出力は、上昇温度で誤対合パッドからの出力よりも3倍ないし30倍高い(例えば、50WT−Cと45mut−D)。モデルオリゴ体で観察されたように、不均一な標的を含むサンプルは、上昇温度で信号出力を生じるが、2タイプの電極間での差異は2倍未満である(50mix−CYと45mix−HD)。
【0549】
2つのHFEアンプリコンの遺伝子型決定に我々が成功したことは、それぞれに単一のチップでC282YとH63Dに関し完全な遺伝子型決定のために、多数のPCR反応を試み、続いてそのA−PCR産物について単一アレイ分析をする勇気を我々に与えた。以前に評価した患者のサンプルを上記のように2回のA−PCRに付した。A−PCR産物を2個の電極アレイ上4時間ハイブリダイズし、次いで電気化学信号伝達を25℃と43℃で測定した(2分間の加熱後)。結果を図25に図式として示す。43℃で282Y突然変異に完全対合している電極は、野生型対立遺伝子で完全対合している電極の1/3未満の信号出力を示す。この観察は該ゲノムが282位置でホモ接合野生型であることを示唆している。それに対して、上昇温度では、H63D電極が互いに2倍以内にある信号出力を示す。後者の観察は、分析したゲノムが63位でヘテロ接合体であることを示唆する。我々の遺伝子決定の結果はこの患者サンプルについての以前の評価と一致する。
【0550】
実施例4
単一塩基誤対合によるオリゴヌクレオチドの電極へのアドレス化
目的:単一ヌクレオチドの変更による特定電極へのオリゴヌクレオチドの選択的局在化についてプロトコールを確立すること
序論:図1に描出した2つの異なるフェロセン分子N6およびW97を用いて野生型または突然変異HIVオリゴヌクレオチドをそれぞれ標識した。“ツー・カラー(two colors)”、すなわち、2つの異なる酸化還元電位が、電気化学信号伝達の分析に際して、2種類のオリゴ体を識別する手段を提供する。標識した分子が予め析出させた捕獲プローブとハイブリダイズすることにより表面に捕獲された場合、N6−野生型HIVは約160mVで信号を生じ、W97突然変異体HIVは約350mVで信号を生じる。160または350mVで信号伝達するフェロセンから生じるピークの高さに基き、我々は、我々が完全対合対と誤対合対とからハイブリダイゼーションの比を決定し得ると予測した。我々は、ハイブリダイゼーション条件がより緊縮条件となるに従い、誤対合オリゴ対が完全対合オリゴ体に優先して変性されると予測した。さらに、我々は、オリゴ体が完全に対合している場合、繰り返し温度を変動させることによりオリゴ体を専ら電極に向かって駆動させ得ると想定した。
【0551】
材料と方法
1:調製したDNAオリゴ体
2(N6)直接捕獲体、D761に結合:
D1102(HIV野生型)
5'−TCTACAG(N6)C(N6)TGTTAAAAGAGACCATCAATGAGGAAGCTGCAGAATGGGATA−3'
2(W97)直接捕獲体、mutD761に結合(D1181):
D1250:D1102mut:(HIV突然変異体)
5'−TCTACAG(W97)C(W97)TGTTAAAAGACACCATCAATGAGGAAGCTGCAGAATGGGATA−3'
【0552】
2:チップの調製:2種類の析出溶液を混合し、プローブを以下のように析出させた:500nmのチップ上、パッド4、6、9についてはD1181;パッド8、10、14(HIV)についてはD1182;パッド3、5、7についてはD365;11、13、12、15、16についてはD660。チップの後処理はM44/アセトニトリル/加熱による。チップを小型カートリッジと装着。
【0553】
3:標的と信号オリゴ体により調製したハイブリダイゼーション緩衝液
ヒト全血を等容量のAL(キアゲンから)溶解緩衝液および血液の1/8容量のプロティナーゼK(20mg/ml)で処理し、70℃で10分間インキュベートした。0.25μMのD1102またはD1250をNaClO4による血液溶解物中、表面プローブオリゴ体で室温20分間ハイブリダイズさせる。電気化学信号を測定する。
【0554】
結果と考察
我々は差別的に標識したオリゴ体を単独または組合わせて導入し、完全対合捕獲プローブを含む電極および誤対合捕獲プローブを含む電極について、その分布を分析した。
【0555】
オリゴ体を単独導入した場合、オリゴ体は完全対合した電極と誤対合した電極で結合し、信号を発した。それに対して、オリゴ体を組合わせて導入した場合、オリゴ体は温度を微妙に操作しなくてもその完全対合した捕獲プローブに分離した。
【0556】
これらの結果はオリゴ体類を同時に導入した場合、捕獲プローブに対し競合してハイブリダイズすることを示す。理論に捕らわれずに我々が想定したことは、離脱速度が飽和した電極上で有意に高いということである。
【0557】
我々はアレイに結果として起こる付加の状況下で標的間の潜在的な競合について試験した;結果を図26に示す。0.25MのD1102を先ず野生型および突然変異表面プローブのアレイにハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーションの20分後に、D1250とD1102の0.25Mでの混合物を、最初の容量を除去した後のカートリッジに注入した。不均一な標的を含む溶液の添加後に、電気化学信号を種々の時点で記録した。交換後10分以内に、160mVでの電気化学信号(野生型オリゴ体上の標識)が降下し、一方375mVでの信号(突然変異オリゴ体上の標識)が現われる。データは完全対合標的をもつ捕獲プローブ上での誤対合オリゴ体置換と矛盾がない。2時間後、突然変異捕獲プローブ含有の電極上信号出力の3/4が突然変異オリゴ体から由来する。同一のアレイにおいて、野生型捕獲プローブを含む電極からの信号出力は殆ど変化せず、2時間を通して野生型オリゴ体の排他的存在と相関する。我々の知見は、オリゴ体が少なくとも高濃度で競合し、電極に固相化した捕獲プローブに結合することを示唆する。その結果は、単一のヌクレオチドの差異をハイブリダイゼーションに基づく識別により特定の電極にオリゴ体をアドレス化することが、センサーアレイ上で達成し得ることを示唆する。
【0558】
実施例5
オリゴヌクレオチド結合反応アッセイ(OLA)産物の検出用モデル研究
目的:センサー上基板とOLA反応産物の識別方法を開発すること
【0559】
序論:2種類のN6標識DNAオリゴ体系を設計し、基板とOLA反応産物を真似た。HIVゲノムの一部に相当する50量体のオリゴ体であるD1102を用い、OLA産物の対応物とした。2つのさらなるオリゴ体を調製し、50量体産物の基板対応物とした。D1274(D1102_短鎖a)は基板のN6−標識半分に相当し、一方、D1275(D1102_短鎖b)は未標識の半分に相当する。D1102(産物)はD1182(HIVの野生型表面プローブ)の全長に沿ってハイブリダイズし、一方、D1274とD1275(基板)はそれぞれの捕獲プローブの半分とハイブリダイズする。我々の誤対合識別法に基き、我々は、全長産物はハイブリダイズしたままで信号を発生させるが、基板の半分は解離して信号を発生しないと予測した。
【0560】
材料と方法
1:調製したDNAオリゴ体
2(N6)直接捕獲体、D761およびD1182に結合:
D1102(HIV野生型):
5'−TCTACAG(N6)C(N6)TGTTAAAAGAGACCATCAATGAGGAAGCTGCAGAATGGGATA−3’
(D1274):D1102 短鎖a:
5'−TCTACAG(N6)C(N6)TGTTAAAAGAG
(D1275):D1102 短鎖b:
5'−ACCATCAATGAGGAAGCTGCAGAATGGGATA−3’
(D1182):WT D761
5'−CATTGATGGTCTCTTTTAACA(P282)−3’
2:上記のように調製したチップ
【0561】
結果と考察
全結合断片D1102、またはD1274+D1275、未結合(基板)オリゴ体を、溶解血液と過塩素酸ナトリウムと室温20分間、HIV捕獲プローブ含有電極アレイ上ハイブリダイズさせた。電気化学信号を2つのチップにおいて、各チップごとに3個のD1182パッドの温度関数として25、15、または10および40℃で測定した。測定値の平均を図27に示す。留意点:40℃で基板について報告される値は予測されるので、測定しなかった。しかし、秒単位で25℃に加熱した後、基質に対する値は“0”であった。
【0562】
実施例6
様々なサンプルの遺伝子型決定
同一反応における複数系の遺伝子型決定
一つの系で複数の遺伝子型決定アッセイを行うために実験を行った:PlC1、Hfe−H63D、およびHfe−C282Y。ハイブリダイゼーションは図33Aに従い、DC237SNP最適化アレイ上で実施した。
【0563】
Hfe−C282Yの遺伝子型決定を試行する際に、2つの異なる信号プローブ/標的模擬体併合物を使用した(長鎖および短鎖)。当初の系は19塩基対信号プローブ(“短鎖”)、およびWTとmutとの両方に対する76塩基対の標的模擬体から構成され、mutは両者の間に1塩基誤対合を含んでいた。該“長鎖”型は28塩基対の信号プローブ、およびWTとmut両者についての対応する69塩基対の標的疑似体(9塩基5'末端側にシフトしている)を言い、mutは両者の間に1塩基誤対合を含んでいる。捕獲プローブは異なる系の間で融解温度が異なるために、チップは2つの異なる温度に加熱し、対立遺伝子A/G(PlC1)間およびWT/mut(Hfe−H63D、Hfe−C282Y)間に最大の差異を達成した。測定と加熱は以下の方式で行った:
1.パッドはすべて25℃で測定した。
2. Hfe−H63Dパッド(6、8、9、14)は48℃で測定した。
3. PlC1(3、4、7、11)およびHfe−C282Yパッド(10、12、13、15)は56℃で測定した。
【0564】
結果は測定に先立ち2時間ハイブリダイズさせたチップからのデータを表し、図33B、33Cおよび33Dに示す。4個のチップは標的疑似体PlC1Aとハイブリダイズさせ、3個のチップはPlC1Gとハイブリダイズさせ、また3個のチップはヘテロ接合体(PlC1A/PlC1G)とハイブリダイズさせた。これらの遺伝子型は明らかに互いに識別可能であり、チップがPlC1系標的とのみハイブリダイズする場合に見られる比の値に匹敵する比の値を与える。Hfe−H63D系において、WT、ヘテロ接合、およびmut遺伝子型はそれらが特徴とし得る位置に分離する。
【0565】
遺伝子型Hfe−C282Yに対する試みは上記の系におけるよりもより困難であった。短鎖型と長鎖型の両信号伝達プローブおよび対応する標的についての多様な結果を以下に開示する。短鎖と長鎖プローブ両者においては、WT遺伝子型がヘテロ接合とmut遺伝子型から分離してくるが、標準偏差の大きな1つのチップは例外である。しかし、短鎖信号伝達プローブと対応する標的はヘテロ接合体とmutとの間でより大きな乖離を示すが、大きな標準偏差が最終的な遺伝子型決定を妨げる。何らかの他の標的または信号伝達分子の存在なしにHfe−C282Yの遺伝子型を決定すると、上記のグラフに見られるものと同じ結果を得る。
【0566】
結論:1個のチップに数種の異なるSNPを多重化しても個々のSNPの遺伝子型決定に影響はない。PlC1とHfe−H63Dの遺伝子型決定は比較的容易であるが、Hfe−C282Yについては遺伝子型決定をすることができない。Hfe−C282Y_mutパッドに関して、誤対合はG−Tハイブリダイゼーションに相当する。この結合はまるで完全対合のように強力であり、mut遺伝子型をヘテロ接合体から識別するのを非常に困難にする。しかし、Hfe−C282Yの遺伝子型決定において、その難しさは他のSNPとの多重化によって増大するものではなかった。
【0567】
二電位系を使用すること
二電位SNP検出系を用い、HIV、HFE C282Y、HFE H63D、およびPlC1遺伝子フラグメントを正確に遺伝子型決定した。H6、M44、およびN152−標識捕獲体からなる標準的単層をプローブ競合用の特別の環境とした。さらに、フェロセン含有モチーフと信号伝達プローブ(SP)のオリゴモチーフの両方が競合において役割を演じる。本アッセイに使用するN6とW97は、信号伝達効率、周波数応答、および親水性において異なっている。これらの相違に従ってその活性の釣り合いを取るために調整がなされた。二電位系に対し最適化したプローブは以下の2つの特徴を有する:1.プローブの一つは4N6モチーフで標識し、他の一つは8W97モチーフで標識した。2.それらは該配列の中間に位置するSNP同定塩基をもつ17量体である。アッセイは室温での簡単なハイブリダイゼーションにより、温度上昇または洗浄などの如何なる緊縮条件をも適用せずに、実施することができる。さらに、アッセイノイズはゼロに近い。アッセイは僅かに上昇した温度(35℃)でも実施可能であり、その場合のアッセイの速度は促進され、アッセイノイズはさらに減少する。
【0568】
I.HIV、HFE、およびPlC DNA標的疑似体の遺伝子型決定は二電位系を使用することにより達成された
1. HIV標的疑似体の遺伝子型決定
二電位アッセイのために、標的とSPの比を常に1対5に維持した。HIVの遺伝子型決定において、野生型(WT)4−N6−標識SP(D1864)と突然変異体(mut)8−W97−標識SP(D1835)のカクテルを、C6緩衝液中、WT D765(50nM)、mut D999(50nM)、およびD765+D999標的(それぞれ25nM)のそれぞれにハイブリダイズさせた。室温で20分間ハイブリダイゼーションした後、これらHIV標的の遺伝子型決定が正確に達成された(図1)。ホモ接合WT HIVサンプルの mut信号比に対するWTのlog2は、ホモ接合 mutについては0.96、−0.65であり、ヘテロ接合HIVサンプルについては0.24であった。これらの比は2時間に渡るインキュベーションによりそれぞれ1.36、−2.43、および−0.06に改善された。さらなる研究を標的とSP濃度を低下させて実施した。1nMの標的と各SP5nMについての正確な遺伝子型決定は7時間代(470分)のインキュベーション後に実施した(図2)。ホモ接合WT標的の mut信号比に対するWTのlog2は2.11であり、ホモ接合 mutでは−1.15であり、ヘテロ接合標的では1.15であった。インキュベーションを延長(24時間まで)してプローブ競合を長時間進行させ、遺伝子型のさらに良好な差別化を達成し得た。
【0569】
SP濃度をさらに高くして1nMのHIV標的について、遺伝子型決定のより高い信号レベルを得ようとの試みは不成功であったが、より早く遺伝子型を決定し得た。1nMの標的と20nMの各SPを用い、5時間代のハイブリダイゼーションで我々は遺伝子型を決定し得た(図3)。mut信号比に対するWTのlog2はホモ接合体について2.01、ホモ接合 mutについては−0.87、またヘテロ接合標的については0.032であった。しかし、ピークの高さと信号比については、標的対SP比1:20は上に記載した1:5の比よりも有利であるとは思われなかった。そこで我々は差し当たり二電位アッセイでは標的対SP比を1:5に維持するように計画した。
【0570】
2.HFE C282Y突然変異体発生の検出
二電位系により我々はWT標的の大きな母集団の中から存在量のより少ない(10%) mutHFE C282Y母集団を検出することができる。WT8−W97−標識SPD1954と mut4−N6−標識SP D1955のカクテルを、WT(D1749)と mutHFE(D1750)を含むサンプルに、50nMの組合わせ総濃度でハイブリダイズさせた。これらのサンプルはWT濃度に比較して10%増加した濃度で mutHFEを含有していた。そこで我々の標的は100%ホモ接合WTから50%/50%ヘテロ接合体へ、そして100%ホモ接合体へと変動する。mut発生の増大に応じて、mutN6が増大し、WT W97信号が減少する(図4)。このように、mut対WTの信号比に増大がある。mut種が10%と低くても二電位系により検出することができる;また、0、10、および20%の mutHFE種間での差別化が可能であった。
【0571】
この検討は5nMの総標的および25nMの各SP(LC087)について繰返した。この比は同様に mut母集団の変化の程度を識別させるものではなかった。50%WTと50% mut標的が存在する場合、1:1のN6/W97比とならずに、約60〜70% mut標的が存在する場合に1:1の比となった;しかし、予測した mut対WT比の増加傾向は観察された。また、多くのチップ対チップおよびパッド対パッドの変動があった。N6/W97比の多くが予測した傾向にあるのに対し、チップ間での実際の信号の高さは変動した。また、mut標的が100%存在する場合、2〜3のパッドは4時間後にWT W97信号の増大を示した。銀の分解はW97信号におけるこの増大が原因である可能性がある。我々がこのチップ変動の問題を解決したことで、我々はこの二電位系により定量方式で突然変異体の発生を検出することができた。
【0572】
3.HFE H63Dの遺伝子型決定
HIVとHFE C282Y標的疑似体の遺伝子型決定を二電位系により達成した後、我々はHFE H63DとPlC1標的を有する系の試験を進めた(セクション4に記載)。WT8−W97−標識D2004と mut4−N6−標識D2005のSPカクテル溶液を、それぞれHFE H63D WT D1121(50nM)、mutD1122(50nM)、およびD1121+D1122標的(それぞれ25nM)含有するC6ハイブリダイゼーション緩衝液に添加した。これらをハイブリダイズさせ、次いで35℃でインキュベートした。最初のACV行程はハイブリダイゼーションの2.5時間目に起こり、ホモ接合 mutに対するホモ接合WTと195の対合/誤対合比は209となった。ヘテロ対合標的でのN6/W97比は2.32であった。3種の異なるサンプルを差別化することは間違いなく達成された(図5)。
【0573】
4. PlC1の遺伝子型決定
WT8−W97−標識D1875と mut4−N6−標識D2006のSPカクテルを、それぞれ50nMのPlC1A(D1775)、50nMのPlC1G(D1776)、およびヘテロ接合D1775+D1776標的(それぞれ5nM)とハイブリダイエーション緩衝液中で併合した。最初のACVは2.5時間目に取った。HFE−Hとは違って、我々は3種の異なる標的を差別化することができなかった。3条件すべてにおいて、PlC1GN6の信号のみが表れ、PlC1Aの信号については全く何らの兆候もなかった(図6)。PlC1G標的の存在しない場合においてさえ、我々はPlC1G信号を見るだけである。標的と緩衝液を最初にチップに加えた同様の実験では、2時間で捕獲プローブにハイブリダイズさせることが可能であり、次いでSPを加えても結果は同じであった(LC096)。
【0574】
PlC1の遺伝子型決定が不成功であったのは、PlC1G SPのSNP同定塩基のグアニン(G)が、PlC1A標的に結合したPlC1A SP(A、T対形成)同様に良好な親和性をもつPlC1A標的のチミン(T)に結合したことによる可能性がある。さらに、N6は単層上でSPを安定化させる上でW97よりも有利であると思われたが、これはPlC1の遺伝子型決定が何故失敗したかの説明でもある。プローブ競合の結果に影響するファクターをすべて調和させるために、PlC1Gに完全対合するプローブ(17量体)はN6で標識すべきであり、一方、PlC1Aプローブ(17量体)はW97で標識すべきである。
【0575】
これらの新規なプローブを得る前に、我々は我々の望みどおりに全く同じフェロセンモチーフが結合したブルース(Bruce)のPlC1プローブ(D1890およびD1876、19量体)を使用した。PlC1A4−N6−標識体(D1890)およびPlC18−W97−標識体(D1876)のSPカクテルを、それぞれホモ接合PlC1AとPlC1G、およびヘテロ接合標的に添加した。SP5'末端の最初の塩基が標的にハイブリダイズする際に捕獲プローブの3'末端塩基と競合するという意とせざる欠陥があったが、遺伝子型決定は70分以内で達成された。その理由はlog2 WT対 mut比がホモ接合WTでは1.64であり、ホモ接合 mutでは−1.11、またヘテロ接合標識では0.74であったことによる(図7)。この実験は標的に対する捕獲プローブと信号伝達プローブの競合なしに、17量体信号伝達プローブで繰返す予定である。
【0576】
II. アッセイの最適化
1. ハイブリダイゼーション方法
HIVとHFE標的オリゴ疑似体の遺伝子型決定に続く次の段階は、患者サンプルのA−PCRアンプリコンの遺伝子型を決定することである。遺伝子型を正確に決定するために、どのハイブリダイゼーション法が最良に働き、また最善の信号を与えるかを我々は試験する必要がある。3つの方法を比較した。最初の2つの方法については、APCRヘテロ接合HFE C282Y標的の対照を、WT8−W97−標識SP(D1954)と mut4−N6−標識SP(D1955)のカクテルにハイブリダイズさせ、次いで100℃に3分間加熱した。その一つを10分間氷上に置き、他は実験台上に10分間放冷した。次いでサンプルをC6緩衝液と混合し、さらにハイブリダイゼーションするためにチップに塗布した。第三方法では、標的、SPカクテル、および緩衝液を併合し、100℃に加熱し、次いで実験台上で冷却した。信号に基くと(LC091)、成分を実験台上で冷却した2つの方法が依り良好に働いた。第三の方法では、標的、SP、および緩衝液を加熱工程前に併合した場合に最も確かであり、この先の実験で使用することとした。この実験では銀の問題に遭遇した。3つの方法すべてにおいて2〜3のパッドでは、N6の信号は60分でハイブリダイゼーションしたW97の信号に類似していた;しかし、ある時間、N6の信号は同じままであり(または僅かに増加する)、一方、W97の信号は増加した。さらなる実験ではこの電位の関係に注意を払う。
【0577】
2. 上昇したインキュベーション温度でのハイブリダイゼーション反応速度の促進
HFE C282Y突然変異体のA−PCR産物をWT8−W97−標識SP(D1954)と mut4−N6−標識SP(D1955)のカクテルにハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーションは3つの異なる温度、25℃、30℃、および35℃で実施した。走査はインキュベーションの2時間後に実施した。図8に示したように、35℃のインキュベーションで最も高い信号を示し(17nA)、次が30℃(11nA)および25℃(5.5nA)であり、より高いハイブリダイゼーション温度が反応速度を促進したことを示す。
3. A−PCRプライマー比
遺伝子型を正確に決定するために、我々は最良のA−PCR法を見出す必要があり、それによって我々は最大量の一本鎖標的を誘導することができる。異なる濃度の重なり合うプライマーから生じたアンチセンスHFE C282Yアンプリコンそれぞれの11種の溶液を、C6ハイブリダイゼーション緩衝液および、WT8−W97−標識D2007と mut4−N4−標識D2008のカクテル(各SP=250nM)とそれぞれ併合した。これらをハイブリダイズさせ、35℃で走査した。9種はWT HFE Cと遺伝子型決定した(図9)。信号を示さなかった2種の内の一方(#5)は、二本鎖ゲノムDNAの溶液であり、他方(#11)はA−PCR産物のブランク対照であった。WT標的として遺伝子型決定された9種の内の1種は、ゲノムDNAから二本鎖DNAを作る各前進および逆進プライマー24pmolを使用し、次いで精製した二本鎖DNA上、2pmolの前進プライマーおよび100pmolの逆進で重なり合うプライマーで増幅したもの(#4)、また他の1種は、ゲノムDNAから二本鎖DNAを作る48pmolの各プライマーを用い、次いで2pmolの前進プライマーおよび100pmolの逆進で重なり合うプライマーで増幅したもの(#10)であり、これらは最良であったものの信号を与えた。これら2種(#4および#10)は30分で非常に高い信号(−18nA)を示し、3時間で飽和に達した。他のA−PCR標的の多くは(#1、2、7)30分で非常に低い信号(5nA)未満で始まり、13時間以上のハイブリダイゼーション後まで飽和に達しなかった。これらは開始時明らかに低濃度の一本鎖標的を示し、パッドを飽和させるには相当に長い時間を要するが、一方、#4と#10は高濃度の一本鎖をもち(殆ど50nMの高濃度でWT標的疑似対照#12は30分内に22nA)、さらに早期に飽和に達した。A−PCR手法#10は、#6で使用されるA−PCR工程前の精製工程を必要としないので、今後の実験で使用されることになろう。
【0578】
材料と方法
これらの実験に使用されたオリゴ体を以下の表に掲載する。
【表3】
チップ:DC213、DC225、DC236、DC273
ハイブリダイゼーション:WTおよびmut信号伝達プローブのカクテル溶液を標的とC6ハイブリダイゼーション緩衝液に加え、(特に断りのない限り)室温でハイブリダイズさせた。これらの実験には小型のカートリッジを用いた。結果を図34に示す。
【0579】
追加の実験は検出可能な比を滴定することにより実施した。
【表4】
* 突然変異標的不在下の突然変異特異信号は0.1nAであった。
【0580】
実施例7
信号伝達を増大させる第一SAMと第二SAMの置換え
理論に捕らわれなければ、ETMから電極表面への電子移動は電気導管を通すことで容易となると思われる。理論的には、電極表面を利用する程、信号伝達はより良くなる。この仮説に基き、方法を創生し、表面を信号伝達のためにさらに利用し得るようにするが、その場合に短鎖ヒドロキシ末端アルキルチオール(C2ないしC6)を用い、短鎖芳香族末端(4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル基など)アルキルチオールを置換える。後者はフェリシアン化(III)カリウムの漏出をブロックする。一例はW150であり、これを合成して、標準的技法によりSAMの作製に使用する。これはフェリシアン化(III)カリウムに非浸透性の単層となる;しかし、短時間にメルカプトエタノールを添加すると、フェリシアン化(III)カリウムからの電気化学信号を生じる。
【0581】
従って、モデル系を試験した。M44(標準的アルキル絶縁体)またはW150のいずれかを含んでなるSAMを用い、陽性捕獲プローブまたは2種の異なる陰性捕獲プローブ(すなわち、これらのプローブは標的配列に相補的ではない)と結合させて、以下の結果を得た。予備的問題として、M44に比較して、W150は常により高いプラスの信号とより低いマイナスの信号を与えた;例えば、20個のフェロセンを含んでなる標的配列を使用すると、AC周波数10,000で、M44を含んでなる単層は67.2nAのIpを与えたが、一方、W150の単層は1700nAのIpを与えた。プラス信号は、6XSSC緩衝液中の1mMメルカプトエタノールにチップを浸漬した後、高周波数(1000Hz以上)でさらに増強することができた;浸漬する前は、10,000でのIpが1700nAであったが、浸漬後は8740nAであった。しかし、低周波数では、浸漬は信号伝達に何ら影響を与えなかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1A-1Rは、本発明の多くの種々の組成物を示す。
【図2】 図2A、2B、2Cおよび2Dは、温度を用いるミスマッチの検出のための幾つかの好ましい実施態様を図示する。
【図3】 図3Aおよび3Bは「コンペティマー」発明の二つの実施態様を図示する。
【図4】 図4は実施例2からのTmカーブの結果を図示する。
【図5】 図5は実施例4からの幾らかな結果を図示する。混合した(野生タイプおよび突然変異体)オリゴが野生タイプのオリゴ干渉液を配置している後に、ミスマッチしたハイブリダイゼーション(黒塗り円)は完全にマッチしたハイブリダイゼーション(中空円)により置き換えられる。
【図6】 図6は実施例5からの幾らかな結果を図示する。
【図7】 図7はPCR/APCR反応のためのプライマーの入れ子セットを図示する。
【図8】 図8A、8Bおよび8Cは幾らかな有用なジスルフィドの実施態様を図示する。図8Aは一般的なクラスを図示し、図8Bは一般的なクラスを図示し、図8Cは、図8Cに示されたデータを作成するために用いられた二つの実施態様を図示する。
【図9】 図9A、9B、9C、9D、9E、9Fおよび9Gは幾らかなジスルフィドの合成の実施態様を図示する。
【図10】 図10は「カフスリンク」配置を図示する。
【図11】 図11Aおよび11Bは、光切断可能性および化学的切断可能性を包含する切断可能性種を用いる電気導管の形成の概念図を図示する。図11Bは好ましい実施態様を図示する。
【図12】 図12は、核酸に、ETMの場合においては、検出可能な標識の合成後の添加を図示する。
【図13】 図13Aおよび13Bは、電極への会合もしくは結合のために、ETMおよび導電性オリゴマーを含む標識部分の使用を図示する。
【図14】 図14は図13の標識部分のための合成式を図示する。
【図15】 図15Aおよび15Bは、核酸に、このETMの実施態様において、検出可能な標識の結合のためのもう一つの合成後の反応を図示する。
【図16】 図16は、一つのSAMをもう一つのものと置き換える置換反応を図示する。
Claims (11)
- 標的配列中の検出位置においてヌクレオチドの同一性を決定する方法であって、
a)それぞれのアレイ部位が捕獲プローブに共有的に結合した電極を含む、複数のアレイ部位を持つ基板を提供すること;
b)それぞれの当該アレイ部位を
i)当該捕獲プローブとハイブリダイゼーション複合体を形成する標的配列;
ii)それぞれの検出プローブが調査位置にユニークなヌクレオチドおよびユニークな酸化還元電位を持つ電子伝達部分(ETM)を含む、複数の検出プローブ;
と接触させること;および、
c)検出位置を含む標的配列の一部にハイブリダイズする検出プローブに対応する少なくとも一つの当該ETMからのシグナルを検出して、当該検出位置におけるヌクレオチドを同定すること、
を含む方法。 - それぞれのアレイ部位が、自己集合させた単層(SAM)をさらに含み当該SAMが少なくとも一つの光切断可能な種を含む、請求項1記載の方法。
- 当該電極が金である、請求項2記載の方法。
- SAMが、
a)絶縁体を含む第一の種;および
b)電気導管形成種(EFS)を含む第二の種
を含む、請求項2記載の方法。 - 当該複数の検出プローブが4個の検出プローブを含む、請求項1記載の方法。
- それぞれの当該アレイ部位を標的配列と接触させることが、それぞれの当該アレイ部位を複数の検出プローブと接触させることと同時に起こる、請求項1記載の方法。
- それぞれの当該アレイ部位を標的配列と接触させることが、それぞれの当該アレイ部位を複数の検出プローブと接触させることより前に起こる、請求項1記載の方法。
- それぞれの当該アレイ部位を複数の検出プローブと接触させることが、それぞれの当該アレイ部位を標的配列と接触させることより前に起こる、請求項1記載の方法。
- 当該ETMが遷移金属錯体である、請求項1記載の方法。
- 当該遷移金属錯体がメタロセンを含む、請求項9記載の方法。
- 当該メタロセンがフェロセン誘導体を含む、請求項10記載の方法。
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