JP3925262B2 - エンジンの慣らし運転方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用冷凍サイクル装置に接続されて、動力伝達装置が備えられた圧縮機が装着されるエンジンに用いて好適なエンジンの慣らし運転方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の動力伝達装置は、例えば特開2001−173674号公報に示されるように、流体を圧縮する圧縮機等の駆動軸に固定されるハブ(当公報ではボス)にプーリが機械的に接合されて、車両エンジン等の外部動力源からの動力がこのプーリおよびハブを介して駆動軸に伝達され、圧縮機を作動させるようにするものが知られている。
【0003】
更に詳述すると、ハブ内には駆動軸の駆動トルクが所定値を超えた時に、エンジンからの動力を遮断する機構(当公報では、ハブ内で互いに嵌合される第1および第2円管状金属を設け、圧縮機がロック等を起こして駆動トルクが所定値を越えた時に、両円管状金属が相対的にスリップするようにしている。)が設けられ、このハブとプーリの外周側同士が駆動軸方向に当接されて、ボルトによって接合されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、エンジン部品としての圧縮機が単体状態でエンジンに装着され、エンジン自身の慣らし運転等が行なわれる場合に、圧縮機も作動されることになる。この時、圧縮機には内部流体が循環する流路が組付けされていないので、流体自体の循環による冷却効果が得られない。また、圧縮機内の摺動部材は内部に予め封入された潤滑油によって逆に抵抗(撹拌抵抗)を受けることになり、総じて流体循環流路が組付けられて作動する通常時に比べて発熱が大きくなり、焼き付きに至る虞が生ずる。
【0005】
これを防止するために、エンジンの慣らし運転時にはプーリとハブとを接合するボルトを外して、ハブをフリー状態にして圧縮機を作動させないようにすることが考えられるが、プーリおよびハブの加工精度や両者の組付け時のバラツキ等によっては両者間に押圧状態が残り、摩擦力によってハブに動力が伝達されてしまう場合がある。
【0006】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、プーリとハブとを接合する接合部材を取り外した際に、確実に駆動力を遮断して、エンジンの慣らし運転を可能とするエンジンの慣らし運転方法を提供することにある。
【0007】
請求項1に記載の発明では、エンジン(10)からの動力を受けて回転駆動するプーリ(110)と、中心部に駆動軸(130)が固定され、中心側部(120a)および外径側部(120b)間に弾性部材(120c)が介在されたハブ(120)と、プーリ(110)およびハブ(120)の外径側部(120b)を駆動軸(130)方向に互いに機械的に接合する接合部材(140)とを備えエンジン(10)の動力を駆動軸(130)に伝達する動力伝達装置(100)を用いたエンジンの慣らし運転方法であって、接合部材(140)を取り外した時に、プーリ(110)とハブ(120)の外径側部(120b)との間には、弾性部材(120c)の撓み分が戻り、所定の隙間(α)が形成されるようにし、プーリ(110)を、冷凍サイクル装置内の冷媒を圧縮する圧縮機(210)のハウジング(212)に回転可能に支持し、駆動軸(130)を、圧縮機(210)のシャフト(211)に接続し、圧縮機(210)を、エンジン(10)に装着し、エンジン(10)のクランクシャフトに連結されたエンジンプーリ(11)と動力伝達装置(100)とをベルト(12)によって連結し、圧縮機(210)が、冷凍サイクル装置に接続されていない状態の時に、動力伝達装置(100)の接合部材(140)を取り外し、プーリ(110)とハブ(120)の外径側部(120b)との間に所定の隙間(α)を形成し、その後に、エンジン(10)の慣らし運転を行なうことを特徴としている。
【0008】
請求項1に記載の発明では、外部動力源(10)からの動力を受けて回転駆動するプーリ(110)と、中心部に駆動軸(130)が固定され、中心側部(120a)および外径側部(120b)間に弾性部材(120c)が介在されたハブ(120)と、プーリ(110)およびハブ(120)の外径側部(120b)を駆動軸(130)方向に互いに機械的に接合する接合部材(140)とから成り、外部動力源(10)の動力を駆動軸(130)に伝達する動力伝達装置において、接合部材(140)を取り外した時に、プーリ(110)とハブ(120)の外径側部(120b)との間には、弾性部材(120c)の撓み分が戻り、所定の隙間(α)が形成されるようにしたことを特徴としている。
【0009】
これにより、接合部材(140)を取り外すことによって、外部駆動源(10)の作動に対して確実にその駆動力を遮断することができるので、一時的に駆動軸(130)側の作動を停止できる。また、接合部材(140)でプーリ(110)とハブ(120)の外径側部(120b)を接合して本来の駆動力を駆動軸(130)に伝達させる際には、弾性部材(120c)の撓みによって、両者を駆動軸(130)方向に当接させることができるので、確実に接合することができる。
【0010】
上記所定の隙間(α)は、請求項2に記載の発明のように、駆動軸(130)の所定位置から軸方向におけるプーリ(110)までの寸法(L1)とハブ(120)の外径側部(120b)までの寸法(L2)とが所定量異なるように設定することによって形成可能となる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、接合部材(140)は、ボルト(140)としたことを特徴としており、これにより、必要に応じた脱着が容易にできる。
【0012】
また、請求項4に記載の発明では、弾性部材(120c)は、ゴム材(120c)としたことを特徴としおり、これにより、弾性部材(120c)を駆動軸(130)側の作動時に発生するトルク変動を和らげる緩衝材として兼用することができる。
【0013】
更に、請求項5に記載の発明では、ハブ(120)と駆動軸(130)は、ネジ部材(141)により固定されるようにしたことを特徴としており、これにより、ハブ(120)と駆動軸(130)との脱着が可能となり、両者を組付けた後のメンテナンス性を向上できる。
【0015】
尚、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
第1実施形態は、本発明の動力伝達装置100を車両用冷凍サイクル装置内の冷媒を圧縮する圧縮機210に適用したものとしており、図1〜図3を用いてその構成について説明する。
【0017】
図1中、10は外部動力源としての車両用エンジン(以下、エンジン)であり、クランクシャフトに連結されたエンジンプーリ11が設けられている。このエンジン10には、補記部品として圧縮機210が装着される。そして、圧縮機210には、本発明の動力伝達装置100が接続されており、この動力伝達装置100は、ベルト12によってエンジンプーリ11と連結されている。
【0018】
因みに、圧縮機210は、いわゆる斜板式の可変容量型圧縮機であり、エンジン10作動時においては動力伝達装置100によって常に作動状態となる。圧縮機210の内部には斜板が設けられており、この斜板の傾斜角度を制御弁によって調整することによってピストンのストロークを可変し、冷媒の吐出量を可変可能とする(斜板、制御弁、ピストンは共に図示せず)。
【0019】
動力伝達装置100は、図2に示すように、プーリ110とハブ120とから成り、両者はボルト140によって、図3に示すように、機械的に接続されている。
【0020】
プーリ110は、上記ベルト12が連結される円筒状の部材であり、圧縮機210のハウジング212の先端側に固定される軸受け111によって回転可能に支持されている。この時、ハウジング212の段部212aによって軸受け111およびプーリ110は駆動軸130方向の位置決めがなされる。また、後述するハブ120と対向する側の外径側の円周上に、ネジ孔113が形成されたハブ取付け部112が複数設けられている。
【0021】
一方、ハブ120は、中心側部120aと外径側部120bとの間に弾性部材120cが介在されて形成されている。
【0022】
中心側部120aは、ハブ本体部121にトルクリミッタ機構122が設けられたものである。ハブ本体部121の中心部には駆動軸130および軸用ボルト141が挿入される孔が設けられており、ハブ本体部121および駆動軸130は、図2中のB部に形成されたスプラインにより駆動軸130の円周方向に互いに係止されている。
【0023】
駆動軸130は、圧縮機210のシャフト211と接続されており、圧縮機210に対する駆動軸130のスラストガタ分を調整するシム150が駆動軸130の先端部とハブ本体部121との間に介在されている。そして、ハブ本体部121は、ネジ部材としての軸用ボルト141が駆動軸130に螺合されることによって、駆動軸130の先端部で軸方向の位置決めがなされて、駆動軸130に機械的に接合されている。
【0024】
トルクリミッタ機構122は、駆動軸130の駆動トルクが所定値を超えたときにプーリ110からの動力(エンジン10の動力)を遮断するものであり、円形板122a、バネ材122b、ナット122c、動力板122dから成る。
【0025】
円形板122aは、中心側に孔を有する円板状部材であり、外径側の円周上に複数の円形板凸部122a1が設けられている。また、動力板122dは中心側に孔を有する皿状部材であり、底面側(図2中の右側)にはハブ本体部121との位置決めを行なうガイド板122d2が接合されている。そして動力板122dの反ガイド板122d2側には、上記円形板凸部122a1に対応するように動力板凸部122d1が設けられている。
【0026】
動力板122dのガイド板122d2がハブ本体部121の外周部に配置され、更に円形板122aは、動力板凸部122d1に対して円形板凸部122a1が当接するように配置されている。そして、円形板122aおよび動力板122dは、バネ材122bおよびナット122cによってハブ本体部121に所定の軸力を受けて固定されている。
【0027】
因みに、駆動軸130の駆動トルクが所定値を超えた時には、円形板凸部122a1と動力板凸部122d1との当接状態が円周方向に外れ、バネ材122bおよびナット122cによる軸力が低下して、動力板122dのハブ本体部121に対する固定状態が解除されて、動力の伝達を遮断可能とする。
【0028】
上記のように構成される中心側部120aの外周部(動力板122dの外周部)には、弾性部材としてのゴム材120cが溶着されており、更にフランジ部120b1にボルト孔120b2が設けられた外径側部120bが、このゴム材120cの外周部に溶着され、ハブ120として形成される。尚、ゴム材120cとしては、天然ゴム、塩素化ブチル系ゴム、クロロプレン系ゴムを用いるのが好適である。
【0029】
次に、本発明の特徴部を説明する。図2に示すように、プーリ110およびハブ120がそれぞれハウジング212、駆動軸130に取付けられた状態で、プーリ110のハブ取付け部112とハブ120(外径側部120b)のフランジ部120b1との間には、所定の隙間αが形成されるようにしている。
【0030】
即ち、ここでは駆動軸130の先端部を基準位置(所定位置)とした場合に、軸方向におけるハブ取付け部112までの寸法L1とフランジ120b1までの寸法L2とが所定量(ここではαとなる)異なるように予め設定することで、所定の隙間αが形成されるようにしている。
【0031】
そして、図3に示すように、接合部材としてのボルト140によってプーリ110およびハブ120を接合する際には、ゴム材120cの撓みによって隙間αはゼロとなり、ハブ取付け部112とフランジ部120b1とは当接して接合される。
【0032】
このように構成される動力伝達装置100においては、エンジン10からの動力が、エンジンプーリ11、ベルト12、プーリ110、ハブ120を介して駆動軸130に伝達され、圧縮機210を作動させる。この時、ゴム材120cは、圧縮機210の圧縮仕事によって発生するトルク変動を和らげる緩衝材として作用する。
【0033】
一方、圧縮機210が単体状態(冷凍サイクル装置には接続されていない状態)のままで、例えばエンジン10の慣らし運転等が行なわれる場合は、ボルト140を取り外すことによって、ゴム材120cの撓みが戻り、プーリ110とハブ120との間に予め設けた所定の隙間αが形成される状態(図2)にすることができる。そして、エンジン10の作動に対して確実にその駆動力を遮断することができるので、一時的に駆動軸130側の作動を停止できる。
【0034】
ここでは、プーリ110とハブ120との接合部材としてボルト140を用いるようにしているので、必要に応じた脱着が容易にできる。
【0035】
そして、ハブ120内の弾性部材は、ゴム材120cとしているので、圧縮機210(駆動軸130)の作動時に発生するトルク変動を和らげる緩衝材およびボルト140組付け時の隙間αの吸収材として兼用することができる。
【0036】
また、ハブ120と駆動軸130とを軸用ボルト141で固定するようにしているので、ハブ120と駆動軸130との脱着が可能となり、両者を組付けた後のメンテナンス性の向上も図れるようになる。
【0037】
(その他の実施形態)
上記第1実施形態では、ハブ120と駆動軸130とを軸用ボルト141で固定するようにしたが、駆動軸130の先端部に雄ネジを形成し、ハブ本体部121の中心部の孔に挿入した後、ネジ部材としてのナットで固定するようにしても良い。更には、メンテナンスの必要性に応じて軸用ボルト141やナットによるネジ固定に代えて、圧入等によって両者を固定するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の動力伝達装置を圧縮機に適用し、この圧縮機がエンジンに装着された状態を示す模式図である。
【図2】図1のA部における動力伝達装置であり、プーリとハブとが組付けされる前の状態を示す拡大断面図である。
【図3】図2に対してプーリとハブとがボルトによって組付けされた状態を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
10 車両用エンジン(外部動力源)
100 動力伝達装置
110 プーリ
120 ハブ
120a 中心側部
120b 外径側部
120c ゴム材(弾性部材)
130 駆動軸
140 ボルト(接合部材)
141 軸用ボルト(ネジ部材)
210 圧縮機
211 シャフト

Claims (5)

  1. エンジン(10)からの動力を受けて回転駆動するプーリ(110)と、
    中心部に駆動軸(130)が固定され、中心側部(120a)および外径側部(120b)間に弾性部材(120c)が介在されたハブ(120)と、
    前記プーリ(110)および前記ハブ(120)の前記外径側部(120b)を前記駆動軸(130)方向に互いに機械的に接合する接合部材(140)とを備え、前記エンジン(10)の動力を前記駆動軸(130)に伝達する動力伝達装置(100)を用いたエンジンの慣らし運転方法であって、
    前記接合部材(140)を取り外した時に、前記プーリ(110)と前記ハブ(120)の前記外径側部(120b)との間には、前記弾性部材(120c)の撓み分が戻り、所定の隙間(α)が形成されるようにし、
    前記プーリ(110)を、冷凍サイクル装置内の冷媒を圧縮する圧縮機(210)のハウジング(212)に回転可能に支持し、
    前記駆動軸(130)を、前記圧縮機(210)のシャフト(211)に接続し、
    前記圧縮機(210)を、前記エンジン(10)に装着し、
    前記エンジン(10)のクランクシャフトに連結されたエンジンプーリ(11)と前記動力伝達装置(100)とをベルト(12)によって連結し、
    前記圧縮機(210)が、前記冷凍サイクル装置に接続されていない状態の時に、前記動力伝達装置(100)の前記接合部材(140)を取り外し、
    前記プーリ(110)と前記ハブ(120)の前記外径側部(120b)との間に前記所定の隙間(α)を形成し、
    その後に、前記エンジン(10)の慣らし運転を行なうことを特徴とするエンジンの慣らし運転方法。
  2. 前記所定の隙間(α)は、前記駆動軸(130)の所定位置から軸方向における前記プーリ(110)までの寸法(L1)と前記ハブ(120)の前記外径側部(120b)までの寸法(L2)とが所定量異なるように設定することによって形成されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの慣らし運転方法。
  3. 前記接合部材(140)は、ボルト(140)としたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のエンジンの慣らし運転方法。
  4. 前記弾性部材(120c)は、ゴム材(120c)としたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のエンジンの慣らし運転方法。
  5. 前記ハブ(120)と前記駆動軸(130)は、ネジ部材(141)により固定されるようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のエンジンの慣らし運転方法。
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