JP3923526B2 - 壊れやすい材料の分断方法および装置 - Google Patents

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Description

発明の属する技術分野
本発明は、ガラスシートのような壊れやすい材料の分断方法に関し、特にレーーザー罫書き手法を用いてガラスシートのような壊れやすい材料を分断する方法に関するものである。
発明の背景
ガラスシートのような壊れやすい材料を分割するために従来からレーザーが用いられてきた。PCT特許公告番号WO 93/20015号には、レーザーを用いて、いわゆる「ブラインド・クラック」をガラスシートに伝播させて、このシートを2枚のより小さいガラスシートに分断することが記載されている。この特許公報の1つの実施の形態においては、ガラスシートの一方の面に浅い刻み目が付けられ、次いでレーザーを用いてこの刻み目が亀裂(crack)の形態でガラスシートを通って伝播される。次いでシートはレーザー罫書き線に沿った機械的分断によって2枚のより小さいガラスシートに分離される。このような方法を達成するために、レーザーはガラスシートの刻み目の領域に接触しかつレーザーが2枚のより小さいガラスシートを形成するのに望ましい経路を移動するように、レーザーとガラスシートとが相対的に移動せしめられる。レーザーがガラスシートを加熱した後にガラスシートが急速に冷却されるように、冷媒流体がレーザーから直下流の加熱されたガラスシートの表面の一点に向けられるのが好ましい。この方法では、レーザーによるガラスシートの加熱と、水冷媒によるガラスシートの冷却とがガラスに応力を発生させ、レーザーおよび冷媒が移動する方向に亀裂を伝播させる。
四角のガラスシートを作成する場合には、レーザー罫書き工程は、一般に、第1の軸線(第1の罫書き線)に沿ってガラスシートを罫書き、次にこの第1の罫書き工程に続いて、第1の軸線に直角な第2の罫書き線を生じさせる第2の罫書き工程を含む。ガラスシート上に直角な切れ目を形成するこのようなレーザー罫書き装置を用いた場合、罫書き線の交点において、不幸にもガラスのエッジの精度を損ねる結果となる最初の罫書き線の精度を損ねる現象が発生する。この現象は、その発生領域において最初の罫書き線が実際に消される治癒現象であると思われる。第1および第2の罫書き線の交点において、第1の割れ目が完全に、またはほぼ完全に消滅すると、第1の罫書き軸線は上記交点における割れ目を有しないままにされる。その結果、エッジの切断面が十分に直線的でないかつ一様でないという貧弱な寸法性能しか得られなくなる。
したがって、より一様なエッジの切断面が得られる方法の企画が要望されている。
発明の概要
本発明は、ガラスシートのような壊れ易い材料を分断する方法に関するもので、第1のレーザー(および随意的な冷媒)が、このレーザーの経路に沿う第1の方向に第1の開口亀裂を導くために、ガラスシートを横切って所望の経路内を移動せしめられる。次に同一または他のレーザーがシートの他面に同様に接触され、第2の方向に開口亀裂を形成する。この方法は、一般的に1枚のガラスシートを4枚のシートに分断する場合のように、経路が互いに交差する開口亀裂を形成するのに特に適している。
レーザーによって生成される温度勾配は材料の表面層内に引っ張り応力を誘導し、これら応力は材料の引っ張り強度を超えるので、材料には、圧縮力の弱い領域へ向かって材料に浸透する部分的な亀裂が発生する。レーザーがガラスシートを横切って移動するにつれて、上記亀裂はレーザーのあとについて行く。亀裂の深さ、形状および方向は、応力の分布によって決定され、この応力は、ビームスポットのパワー密度、寸法および形状と、ビームスポットと材料の相対変位速度と、加熱域に供給される冷媒の性質および量と、亀裂が形成される材料の厚さのみならず熱物理的および機械的特性とのようないくつかの要素に左右される。本発明においては、レーザーの強度分布がガウシアン分布でないことが好ましい。1つの実施の形態においては、例えば
Figure 0003923526
モードおよびTEM10モードで動作するレーザーのように、上記強度が二重モード特性、すなわち1つ以上のモードレベルを伴った特性を有する。適切な冷媒の流れまたはジェットが前進するビームスポットのあとを追って材料の領域に向けられて、切断線に沿った表面層の急激な限定的冷却をもたらすことが好ましい。
本発明は、交差する開口亀裂がガラスシートの反対側の面に形成されるので、「治癒」現象が観察されず、そお結果、高品質かつより一定の切断エッジが得られる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明によるガラス分断方法を示す。
第2図は、本発明による他のガラス分断方法を示す。
発明の詳細な説明
本発明は、レーザー罫書き分割手法を用いてガラスシートを所望の分割線に沿って分断するシステムに関するものである。第1図に示されているように、本発明のガラス分断システムにおいては、ガラスシート10は上下の主面11を備えている。ガラスシート10は、最初にこのガラスシートの一方の面が1つのエッジに沿って罫書かれて、このガラスシート10の1つのエッジ上に亀裂始点19を形成する。この亀裂始点19は、所望の分割線の経路内でガラスシート10を横切る第1のレーザー16の移動によって亀裂20を形成するのに用いられる。上記レーザーは、ガラスシートの所望の分割線に沿う限定された領域を効果的に加熱する。限定された加熱領域におけるガラスシートの熱膨脹の結果、レーザーが辿った経路に沿って亀裂を伝播させる応力が発生する。
次にガラスシート10はこのガラスシートの反対側の面の1つのエッジが罫書かれて、ガラスシート10の1つのエッジ上に亀裂始点19aを形成する。この亀裂始点19aは、所望の分割線の経路内でガラスシート10を横切る第2のレーザー16aの移動によって、亀裂20に対して直角でかつ反対側の面上にある亀裂20aを形成するのに用いられる。この方法により、亀裂20,20aが互いに交差するが、これら2つの亀裂はガラスシートの互いに反対側の面上にある。
亀裂20,20aはガラスシート10の厚さの一部のみに延びるのが好ましい。最終的にガラスシートをより小さいシートに分割するには、次に亀裂20,20aの下に曲げモーメントを加えることによって達成される。このような曲げは、従来の機械的表面罫書きを用いる方法においてガラスシートを分断するのに用いられるような通常の曲げ装置(図示せず)および手法を用いて達成することができる。機械的罫書き手法ではなくレーザーによるガラス罫書き手法を用いて亀裂20,20aが形成されるために、機械的な分断工程中のガラス破片の生成が過去の手法に比較して著しく少なくなる。亀裂20,20aがガラスシートの反対側の面に形成されるため、「治癒」現象は観察されず、より高品質で、より一定な切断エッジが得られる。
水冷媒がウォータジェット22,22aを通じて加えられて応力分布が高められ、これによって応力伝播が高められるのが好ましい。機械的罫書きを用いる伝統的な手法ではなくレーザー罫書き手法を用いることによって、機械的罫書きにおける多くのガラス破片の発生が回避される。ガラスシートの反対側で直交する罫書き線によって、上述した治癒現象が完全に回避され、より高いかつより一定のエッジ切断品質が得られる。
ガラス分断作業に用いられるレーザービームは、分断されるべきガラスの表面を加熱することが可能でなければならない。したがって、レーザー輻射線は、ガラスによって吸収可能な波長を有していることが好ましい。これが生じるには、波長9〜11ミクロンのCO2レーザー、波長5〜6ミクロンのCOレーザー、波長2.6〜3.0ミクロンのHFレーザー、また波長約2.9ミクロンのエルビウムYAGレーザーのような波長が2ミクロンを超える赤外線領域の輻射線が好ましい。材料の表面が加熱されるとき、最高温度がその材料の軟化点を超えてはならない。もし材料の軟化点を超えた場合には、ガラスが冷却された後に亀裂を生じる残存熱的応力が設定されてしまう。
亀裂20,20aは、加熱・冷却領域の境界の下方のガラスに、すなわち最大熱勾配において形成される。亀裂の深さ、形状および方向は、熱弾性応力の分布によって決定され、これらは主として下記のいくつかの要素に左右される。すなわち、
*ビームスポットのパワー密度、寸法および形状、
*ビームスポットと材料との相対変位速度、
*加熱帯への冷媒供給の熱物理的特性、品質および条件、
*亀裂が形成される材料の熱物理的・機械的特性、厚さおよび表面状態。
異なる材料の分断サイクルを最も効果的にするためには、主要パラメータと分断工程の変数との間の適切な関係を確立する必要がある。ここで明細書を引用したPCT国際公告番号WO 93/20015号に記載されているように、ビームスポットの寸法およびその冷媒流が当たる領域からの間隔に依存して、ガラス10を横切るビーム16の相対変位速度Vおよび亀裂20の深さは下記の関係を有する。
V=ka(b+l)/d
ここで、
Vはビームスポットと材料との相対変位速度
kは材料の熱物理的特性およびビームパワー密度に依存する比例係数
aはビームスポットの幅
bはビームスポットの長さ
lはビームスポットの後部エッジから冷却帯の前部エッジまでの距離
dはブラインドクラックの深さ
材料を分断するのに用いられるレーザービームの最大パワー密度の決定に際しては、材料の表面層の最大温度がその軟化点を超えてはならない。従って、低い熱的分割速度における低融点等級の厚いガラスについては、約0.3×106W/m2の最小パワー密度が望ましい。高融点結晶ガラス、コランダムおよびその他の高融点かまたは熱伝導性が高いかのいずれかの材料を分断するのには、例えば20×106W/m2のようなより大きいパワー密度の値が使用可能である。
TEM01
Figure 0003923526
TEM10モードまたはそれらを組み合わせた成分を有するレーザービームがレーザーエネルギをガラス表面に伝達するのに使用されることが好ましい。このようなレーザービームは、ガウシアンパワー分布のみを有するレーザービームよりもレーザーエネルギをより均一に伝達する。その結果、レーザーがガウシアンパワー分布のみしか有しなかった場合よりも低いパワーを用いてより速いレーザー罫書き速度を達成することができる。さらに、より広い範囲のレーザーパワーの使用を可能にするレーザー罫書き工程の窓口が拡大される。
ガラス10の表面温度は、レーザービーム16にさらされる時間に直接左右されるから、円形断面に代えて楕円断面のビームを使用すると、同じ相対変位速度に対する分断線に沿ったガラス10の表面上の各点の加熱時間が長くなる。したがって、レーザービームに設定されたパワー密度と、ガラス10の所要の加熱深さを維持するために必要な同一のレーザービームスポットから冷媒スポットまでの距離とを保った状態で、レーザービームスポットが変位方向に拡大されればされるほど、レーザービームと材料との相対変位の達成可能速度が大きくなる。
第1図には2個のレーザー(16および16a)が示されているが、2個のレーザーの使用は絶対的に必要ではない。例えば、最初のレーザー罫書きがレーザー16を用いてガラスシートの一方の面に施された後、ガラスシート10を裏返せば、再びレーザー16を用いた他方の面への罫書きが可能になる。
第2図に示された他の実施の形態においては、ガラスシート10が舌状物24によって垂直位置に保持され、レーザー16および16aがガラスシート10の反対側に配置されている。この実施の形態の動作は第1図について上述したものと同様である。最終的なガラスの分断は、ガラスが垂直に保持された状態においても、あるいはガラスシートが水平に支持された状態においても達成可能である。いずれの場合でも、ガラスは各罫書き線の下に曲げンモーメントが加えられることによって、より小さい複数のシートに分断される。
本発明の好ましい実施の形態においては、ディジタルコンピュータ(図示せず)のようなシステムコントローラがシステムに動作的に接続されて、レーザーおよび/またはガラスシートの動きをその他の可動部品と同様に制御する。システムコントローラは通常の機械制御技術を用いてシステムの種々の構成要素を制御する。システムコントローラは、そのメモリに格納された種々の生産運用プログラムを用いるのが好ましく、各プログラムは、特定のサイズのガラスシートのためにレーザーまたはガラスシート(および必要であればその他の可動部品)の動きを適切に制御するように設計される。
下記の具体例は、本発明による方法を、制限するのではなく説明的に明らかにするのを意図したものである。
具体例
レーザー16は、ニュージャージー州07850、ランディング、ノース フロンテージ ロード所在のPRCコーポレーションによって生産されたアキシャルフロー二重ビームCO2レーザ(チューブ当たり600ワットのSS/200/2型二重ビームレーザー)であった。ビームは約12mmのスポットサイズ(レーザーが出る位置でのレーザービームの直径)を有し、ガラス表面から約2メートルに位置決めされた。一対の円柱状レンズがレーザーとガラス面との間のレーザー通路に配置されてレーザースポットが整形された。これによってガラス面に当たる位置におけるレーザースポット形状は、その中点において長さ約4〜5cm、幅約0.1〜0.15cmの楕円形に引き伸ばされた。このレーザーのパワー分布は、
Figure 0003923526
モードおよびTEMモードが60対40で混合されたものであり、これはレーザーの正面に半径20mの凹面光カップラを用いることによって達成された。レーザーのパワーは160〜200ワットの間で可変され、ガラスシートを横切って移動するレーザーの速度は約500mm/秒であった。
約幅500mm×長さ500mm、厚さ1.1mmのアルミナシリケートガラスよりなるガラスシート10にはレーザー罫書きが6回施され、3回はシートの一方の面上で第1の方向に、3回はシートの他方の面上で第2の方向に施され、この第2の方向は第1の罫書き線の方向と直角であった。この形式の罫書きは、LCD基板ガラスを作成するための複製生産作業であり、両外側の罫書き線はガラスシートの外縁部分の除去を意図したものであり、シートの各面の中央罫書き線は、ガラスの残りの部分を協同して4枚の使用片に分離するのを意図したものである。ガラスの各面上で3本の罫書き線を使用したことにより、シートの一方の面上の罫書き線の経路がシートの他方の面上の罫書き線の経路に交差する9箇所の交点が生じた。
これを遂行するために、ガラスシート10には、このガラスシートの各面にエッジに沿った刻み目が手で付けられて、レーザー罫書き線が望まれた位置に3箇所の亀裂始点19が形成された。これによって、長さ約4〜8mm、深さ約0.1mmの短い罫書き線の形態の3箇所の亀裂始点19がガラスの1つのエッジの上面に形成された。この亀裂は4〜8mmもある必要はないが、レーザーが伝播させることができればこの亀裂を亀裂始点として利用するのに十分である。ガラスシート10は、レーザー16が亀裂始点19の1つに接触するように位置決めされ、レーザー16の経路がガラスシートを横切る直線経路となるようにガラスシート10が移動せしめられて、第1図に示すような罫書き線20が形成された。この工程は、ガラスシートの一方の面上の3本の罫書き線のそれぞれについて反復された。
次にガラスシート10は裏返されて、ガラスシート10の反対側の面が露になった。ガラスシート10はそのエッジに沿って刻み目が付けられて、3箇所の他の亀裂始点19aが形成され、ガラスシート10は再びレーザー16の経路がガラスシートを横切る直線経路となるようにガラスシート10が移動せしめられて、3本の罫書き線20aが形成された。シートの他方の面に形成されたこれら3本の罫書き線20aは、ガラスシート10の第1の面に形成された3本の罫書き線20に対し直角で、3本の罫書き線20の各経路に直角に交差した。
次に罫書き線20の下に曲げモーメントが加えられてガラスシート10は2枚のシートに分離された。次いでこれら2枚のシートは裏返され、これらシートの罫書き線20aの領域に曲げモーメントが加えられて、2枚のシートは4枚のシートに分断された。この工程は100枚以上のガラスシートについて反復され、これによって、罫書き線20の経路がガラスシートの反対側の面にある罫書き線20aの経路に交差する箇所が900以上形成された。すべての場合において、交差領域において亀裂が治癒された形跡はなく、切断されたエッジは一貫して極めて高品質であった。
以上、本発明を説明する目的で詳細に記述したが、これらの詳細な記載は単に上記目的のためであって、以下の請求の範囲に規定された精神および範囲から逸脱することなしに種々の変形が可能なことは当業者であれば理解されるであろう。例えば、本発明は主としてガラスの分断の観点から論議されてきたが、本発明は、例えばセラミックまたはガラス・セラミック材料のようなその他の壊れ易い材料の罫書きおよび分断にも適用可能である。

Claims (7)

  1. ガラス、セラミックまたはガラス・セラミックからなる群から選択され、かつ2つの主面を備えた壊れ易い材料のシートを用意し、
    1の開口亀裂が前記シートの一方の面における第1の経路内にあり、第2の開口亀裂が前記シートの他方の面における第2の経路内にある態様で、2本の開口亀裂を形成すべく、前記シートの前記2つの主面を横切って少なくとも1つのレーザーを移動し
    前記シートを前記2本の開口亀裂に沿って分断する
    各工程を含む壊れ易い材料のシートの分断方法であって
    前記移動工程が、前記第1の開口亀裂と前記第2の開口亀裂とが互いに前記シートをはさんで交差するように前記2本の開口亀裂を形成する工程を含むことを特徴とする壊れ易い材料のシートの分断方法。
  2. 前記移動工程が、前記少なくとも1つのレーザーを移動て、前記第1の開口亀裂が前記第2の開口亀裂に直交するように前記2本の開口亀裂を形成する工程を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 前記移動工程が、第1のレーザーを移動て前記第1の開口亀裂を形成し、かつ第2のレーザーを移動て前記第2の開口亀裂を形成することを含むことを特徴とする請求項記載の方法。
  4. 前記移動工程において前記第1および第2のレーザーが前記シートに対して互いに反対側に配置されることを特徴とする請求項記載の方法。
  5. 前記移動工程が、前記シートの厚さの一部分のみに延びる亀裂を前記シートに形成することを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
  6. 前記分断工程が、前記第1および第2の開口亀裂の下に曲げモーメントを加えることを含むことを特徴とする請求項記載の方法。
  7. 1の開口亀裂がシートの一方の面における第1の経路内にあり、第2の開口亀裂が前記シートの他方の面における第2の経路内にある態様で、前記シートに2本の開口亀裂を形成すべく、2つの主面を備えたガラスシートを横切って少なくとも1つのレーザーを移動し
    前記シートを前記2本の開口亀裂に沿って分断する、
    各工程を含むガラスシートの分断方法であって、
    前記移動工程が、前記第1の開口亀裂と前記第2の開口亀裂とが互いに前記シートをはさんで交差するように前記2本の開口亀裂を形成する工程を含むことを特徴とするガラスシートの分断方法。
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