JP3923353B2 - アクリルゾル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はアクリルゾルに関し、詳しくは、貯蔵安定性が良好で、かつ耐チッピング性等の塗膜物性に優れた塗膜を形成することのできるアクリルゾルに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、プラスチゾルは、重合体微粒子等を可塑剤中に均質に分散させてなる液状又は糊状の粘稠な組成物である。プラスチゾルを基材へ塗布し、適切な加工温度を加えることにより、強靱な塗膜を形成することができる。このため、プラスチゾルは、鋼板被覆、壁装材、床材、自動車、日用品等の分野で広く用いられている。例えば、自動車の床裏部やホイルハウス部では、自動車走行時にタイヤが跳ね上げる小石や砂利の衝突により塗膜が剥がされる、いわゆるチッピング現象が発生する。このため、塗装工程を終えた自動車の床裏部等の鋼板表面にプラスチゾルを塗工することで、チッピング現象を抑制し車体を保護している。プラスチゾルを構成する重合体微粒子には、塩化ビニル単独重合体や、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体等のポリ塩化ビニル系のものが多く用いられる。ポリ塩化ビニル系プラスチゾルは、焼却時に塩化水素ガスやダイオキシンを発生するため、安全衛生面や環境汚染の観点からは好ましいものではない。このため、最近では、ポリ塩化ビニル系プラスチゾルの代替として、アクリル樹脂系のプラスチゾル、いわゆるアクリルゾルが注目されている。
【0003】
アクリルゾルとしては、例えば、特開2000−281857号公報、特開平7−102147号公報、特開平7−179712号公報に、種々のアクリル樹脂種と、フタル酸エステル、リン酸エステル等の可塑剤とを含むアクリルゾルが開示されている。また、特開2001−59067号公報には、アクリル樹脂とブロックイソシアネートとアミド系発泡剤とを含むアクリルゾルが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記公報に開示されたアクリルゾルは、上述したようなポリ塩化ビニル系プラスチゾルにおける問題を解決してはいるものの、いずれも貯蔵安定性と塗膜物性との両方を満足するものではない。一般に、アクリルゾルは、含まれる可塑剤の量が多いほど塗膜の伸び率が大きくなり成膜性は向上する。一方、上記公報に開示されている可塑剤は、35℃付近の常温においてアクリル樹脂を溶解し易いため貯蔵中にアクリルゾルがゲル化し易い。つまり、可塑剤の量を多くすると、常温で貯蔵した場合にアクリルゾルの粘度上昇が大きく、貯蔵安定性が問題となる。したがって、従来のアクリルゾルは、貯蔵安定性を実用的なものとする観点から、可塑剤の量を多くすることは難しく、塗膜の伸び率が充分ではなかった。また、塗膜の伸び率が小さいため、特に、薄膜を形成した場合における耐チッピング性等の塗膜物性が良好ではなかった。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、焼却時に塩化水素ガスやダイオキシンを発生することがないことに加え、貯蔵安定性に優れ、かつ塗膜の伸び率が大きく、耐チッピング性等の塗膜物性に優れた塗膜を形成することのできるアクリルゾルを提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のアクリルゾルは、アクリル重合体微粒子と、2〜4環の多環芳香族化合物がアルデヒド類により縮合されてなる多環芳香族オリゴマーと、を含むプラスチゾルであることを特徴とする。すなわち、本発明のアクリルゾルは、アクリル重合体微粒子が主構成単位となっているため、焼却時に塩化水素ガスやダイオキシンを発生することがない。また、本発明のアクリルゾルを構成する多環芳香族オリゴマーは、可塑剤としての役割を果たす。しかし、多環芳香族オリゴマーは、常温ではアクリル樹脂を溶解し難い。そして、80℃程度の比較的高温下でアクリル樹脂を溶解してゲル化させる。したがって、多環芳香族オリゴマーを含むアクリルゾルは、常温で貯蔵した場合であっても粘度が上昇し難い。すなわち、本発明のアクリルゾルは、多環芳香族オリゴマーを含むことにより、可塑剤の量が多くてもその貯蔵安定性は良好なものとなる。また、可塑剤の量を多くすることにより、塗膜の伸び率は大きくなり、塗膜を薄膜状に形成した場合であっても耐チッピング性等の塗膜物性は良好なものとなる。
【0007】
以上説明したように、本発明のアクリルゾルは、焼却時に塩化水素ガスやダイオキシンを発生することがないことに加え、貯蔵安定性に優れ、かつ塗膜の伸び率が大きく、耐チッピング性等の塗膜物性に優れた塗膜を形成することのできるアクリルゾルとなる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のアクリルゾルを詳細に説明する。なお、説明する実施形態は一実施形態にすぎず、本発明のアクリルゾルは、下記の実施形態に限定されるものではない。下記実施形態を始めとして、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【0009】
本発明のアクリルゾルは、アクリル重合体微粒子と多環芳香族オリゴマーとを含む。本発明のアクリルゾルを構成するアクリル重合体微粒子としては、通常、アクリルゾルに用いられる重合体を使用することができる。例えば、アクリル酸アルキルエステルや、メタクリル酸アルキルエステル等から選ばれるモノマーの単一重合体や共重合体を使用すればよい。これらのモノマーとして、具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート等が挙げられる。
【0010】
アクリル重合体微粒子は、コア部とそれを被覆するシェル部とから構成されている、いわゆるコア/シェル型微粒子であることが望ましい。コア/シェル型のアクリル重合体微粒子を用いた場合には、アクリルゾルの貯蔵安定性がより向上し、塗布した際の粘度上昇や、加熱硬化後のブリード発生を抑制するという利点がある。また、アクリル重合体微粒子をコア/シェル型とした場合には、コア部を可塑剤親和性ポリマーにて構成し、シェル部を可塑剤非親和性ポリマーで構成することが望ましい。可塑剤と相溶性の乏しいシェル部のポリマーが、相溶性のあるコア部を被覆することにより、貯蔵中のアクリルゾルの粘度上昇が抑制され、貯蔵安定性がより向上する。この場合、シェル部のポリマーは、適当な温度に加熱することによって、可塑剤との相溶性を有するため、加熱硬化後にブリードを発生することはない。
【0011】
アクリル重合体微粒子をコア/シェル型とした場合、コア部を、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート等から選ばれる少なくとも一種のメタクリレート、またはそれらの共重合体を、50重量%以上含有した重合体で構成することが望ましい。コア部を可塑剤と相溶性の高いものにすることで、加熱硬化後におけるブリードの発生を抑制することができる。特に、塗膜に柔軟性を付与するという観点から、メチルメタクリレートとイソブチルメタクリレートとの共重合体を主体としてコア部を構成することが望ましい。
【0012】
シェル部は、メチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、スチレン等から選ばれる少なくとも一種のメタクリレート、またはそれらの共重合体を、50重量%以上含有した重合体で構成することが望ましい。シェル成分を可塑剤と相溶性の低いものとすることで、貯蔵中のアクリルゾルの粘度上昇が抑制され、貯蔵安定性がより向上する。特に、貯蔵安定性をより向上させるという観点から、メチルメタクリレートの重合体を主体としてシェル部を構成することが望ましい。
【0013】
アクリル重合体微粒子をコア/シェル型とした場合、コア部とシェル部とのポリマー比(コア部/シェル部)は、重量比で25/75〜70/30とすることが望ましい。コア部が全体の25重量%未満の場合には、上記望ましい範囲のものと比較して、加熱硬化後にブリードが発生する可能性が高くなる。また、シェル部が全体の30重量%未満の場合には、上記望ましい範囲のものと比較して、コア部に対する被覆が不充分となるおそれがあり、貯蔵安定性に影響するからである。
【0014】
アクリル重合体微粒子の分子量は、塗膜強度、貯蔵安定性等の観点より、重量平均分子量で10万〜数100万であるものが望ましい。また、アクリル重合体微粒子の平均粒子径は、可塑剤への拡散性や貯蔵安定性の観点より、0.1μm以上100μm以下とすることが望ましい。特に、0.3μm以上50μm以下とすると好適である。
【0015】
本発明のアクリルゾルを構成する多環芳香族オリゴマーは、上述したように、可塑剤としての役割を果たすものである。多環芳香属オリゴマーは、常温でアクリル樹脂を溶解し難いものであり、2〜4環の多環芳香族化合物がアルデヒド類により縮合されたものを用いることができる。また、必要に応じてフェノールやアルキルフェノール等で変性したものでもよい。
【0016】
上記2〜4環の多環芳香族化合物としては、コールタールや石油中に含まれ入手が容易であるという理由から、ナフタレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、アセナフテン、フルオレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレンから選ばれる少なくとも一種以上を含むものであることが望ましい。アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒドを発生させるものとして、パラホルムアルデヒド、ホルマリン等を用いることができる。特に、コスト面や反応の進行し易さ等を考慮した場合には、パラホルムアルデヒドを用いることが望ましい。縮合反応は、通常用いられる方法で行えばよく、例えば、2〜4環の多環芳香族化合物とアルデヒド類とを所定の割合で混合し、硫酸等を滴下し、攪拌しながら所定の温度に保持して反応を進行させればよい。反応後は、エチルベンゼン等により抽出し、必要に応じて蒸留等を行い、目的とするオリゴマーを得ればよい。
【0017】
多環芳香族オリゴマーの分子量は、特に限定されるものではなく、例えば、数平均分子量が300以上1500以下であるものを用いることが望ましい。数平均分子量が300未満のものを用いた場合には、上記好適な範囲のものを用いた場合と比較して、得られるアクリルゾルの貯蔵安定性が低下するからである。また、数平均分子量が1500を超えるものを用いた場合には、上記好適な範囲のものを用いた場合と比較して、得られるアクリルゾルの粘度が高くなり、アクリルゾルを塗布する際の施工作業性が低下するからである。なお、数平均分子量は、通常の分子量測定方法に従って測定すればよく、例えば、GPC(Gel Permeation Chromatography)等により測定することができる。本明細書では、GPCによる測定値を採用するものとする。
【0018】
本発明のアクリルゾルにおいて、上記多環芳香族オリゴマーの配合量は、特に限定されるものではない。例えば、多環芳香族オリゴマーの配合量を、上記アクリル重合体微粒子の100重量部に対して20重量部以上とすることが望ましい。20重量部未満の場合には、多環芳香族オリゴマーの添加効果が充分に発揮されず、上記好適な範囲のものと比較して塗膜物性があまり向上しないからである。特に、40重量部以上とすると好適である。また、多環芳香族オリゴマーの配合量は、上記アクリル重合体微粒子の100重量部に対して200重量部以下とすることが望ましい。200重量部を超える場合には、上記好適な範囲のものと比較して、アクリルゾルを塗布する際の施工作業性が低下するからである。特に、150重量部以下とすると好適である。
【0019】
本発明のアクリルゾルは、上記アクリル重合体微粒子および多環芳香族オリゴマーに加えて、さらにブロック型ウレタン樹脂、硬化剤、可塑剤、および充填剤を含んで構成することが望ましい。ブロック型ウレタン樹脂は、加熱によりブロック剤が解離すると、ウレタン樹脂の分子間架橋による橋かけ反応を生じる。橋かけ反応によりウレタン樹脂が網目構造をとることにより、形成された塗膜は、基材への接着性が良好で、かつ耐チッピング性に優れたものとなる。ブロック型ウレタン樹脂としては、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール等のαポリオールと、ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)、トリレンジイソシアナート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)等のイソシアナートとを反応させて得られるウレタン樹脂を、オキシムやアミン等のブロック剤を用いてブロックしたものを使用することができる。
【0020】
ウレタン樹脂としては、汎用であるという理由から、ポリプロピレングリコール(PPG)とトリレンジイソシアナート(TDI)から合成されたウレタン樹脂を用いることが望ましい。ブロック剤は、ウレタン樹脂のイソシアナート基と結合し、常温では安定で、ある温度以上に加熱されると解離する活性水素化合物であり、例えば、フェノール類、ラクタム類、オキシム類、アミン類等の化合物を用いることができる。これらブロック剤の解離温度はそれぞれ異なっているため、調製されたアクリルゾルを塗布し加熱硬化する際の温度、すなわち加工温度を考慮して、ブロック剤を選択することが望ましい。特に、その加工温度を高い温度とすることができない場合、また、機械部品等の内側や自動車の床裏部等、加熱装置に対する位置により高い温度にまで加熱されにくい部分に塗布する場合等には、その加熱可能な温度でブロック剤が解離し、後に説明する硬化剤との反応を促進させることが必要となる。この場合には、解離温度が低いという観点から、オキシム類やアミン類の化合物をブロック剤とすることが望ましい。なかでも、より低温で解離するという理由から、3,5−ジメチルピラゾールを用いると好適である。
【0021】
本発明のアクリルゾルにおけるブロック型ウレタン樹脂の配合量は、特に限定されるものではない。例えば、ブロック型ウレタン樹脂の配合量を、上記アクリル重合体微粒子の100重量部に対して10重量部以上とすることが望ましい。10重量部未満の場合には、ブロック型ウレタン樹脂の添加効果が充分に発揮されないからである。また、ブロック型ウレタン樹脂の配合量は、上記アクリル重合体微粒子の100重量部に対して500重量部以下とすることが望ましい。500重量部を超える場合には、上記好適な範囲のものと比較して、アクリルゾルの粘度が高くなり、塗布する際の施工作業性に影響を与えるからである。
【0022】
硬化剤は、加熱により上記ブロック型ウレタン樹脂に結合しているブロック剤の解離を促進し、ウレタン樹脂と反応する。硬化剤としては、固形の脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ヒドラジド化合物等や、液状の脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン等を使用することができる。なかでも、比較的低温で硬化し、かつ貯蔵安定性が極めて良好であるという観点から、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)、セバシン酸ジヒドラジド(SDH)等の固形のヒドラジド化合物を用いることが望ましい。特に、汎用であることから、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)を用いることが望ましい。硬化剤は、ウレタン樹脂を硬化させるために必要な量を添加すればよい。例えば、ヒドラジド化合物を用いた場合には、その活性水素当量がウレタン樹脂のイソシアナート当量と同量となる量を添加すればよい。
【0023】
可塑剤としては、上記多環芳香族オリゴマーの他、従来から用いられている可塑剤を用いることが望ましい。例えば、ジイソノニルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸系可塑剤、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート、ジ−n−デシルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジブチルセバケート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケート等の脂肪酸エステル系可塑剤、トリブチルホスフェート、トリ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート等のリン酸エステル系可塑剤、エポキシ化大豆油等のエポキシ系可塑剤、その他ポリエステル系可塑剤、安息香酸系可塑剤等を使用することができる。これらの可塑剤は、そのいずれか一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、安価で入手しやすいという観点から、ジイソノニルフタレートを用いることが望ましい。可塑剤の配合量は、塗膜強度、施工作業性等の観点から、アクリル重合体微粒子の100重量部に対して、50重量部以上500重量部以下とすることが望ましい。
【0024】
充填剤は、アクリルゾルを塗布する際の施工作業性や塗膜物性を向上させるとともに、アクリルゾルの低コスト化や着色等の役割を果たすものである。充填剤は、充填剤として既に公知のものを使用すればよい。例えば、炭酸カルシウム、マイカ、タルク、カオリンクレー、シリカ、硫酸バリウム等の他、ガラス繊維、ワラストナイト、アルミナ繊維、セラミック繊維、各種ホイスカー等の繊維状充填剤を使用することができる。特に、安価であるという理由から炭酸カルシウムを用いることが望ましい。充填剤の配合量は、塗膜強度、コスト等の観点から、アクリル重合体微粒子の100重量部に対して、50重量部以上800重量部以下とすることが望ましい。
【0025】
本発明のアクリルゾルには、従来より公知の他の添加剤、例えば、着色剤、酸化防止剤、吸湿剤、発泡剤、希釈剤、紫外線吸収剤等を配合することができる。着色剤としては、例えば二酸化チタン、カーボンブラック等の無機顔料、アゾ系、フタロシアニン系等の有機顔料等を使用することができる。酸化防止剤としては、例えばフェノール系やアミン系等の酸化防止剤を使用することができる。吸湿剤としては、酸化カルシウム等を使用することができる。発泡剤としては、加熱によりガスを発生するタイプの発泡剤を使用することができ、例えば、アゾジカルボンアミド、アゾビスホルムアミド等のアゾ系発泡剤が使用できる。希釈剤としては、例えば、キシレン、ミネラルターペン等の溶剤等を、紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系等を使用することができる。
【0026】
本発明のアクリルゾルの調製方法は、特に制限されるものではなく、従来のプラスチゾルの調製方法に従えばよい。例えば、アクリル重合体微粒子、多環芳香族オリゴマー、ブロック型ウレタン樹脂、硬化剤、可塑剤、充填剤等を、公知の混合機を用いて充分に混合撹拌することにより、本発明のアクリルゾルを調製すればよい。混合機としては、プラネタリーミキサー、ニーダー、グレンミル、ロール等が使用できる。また、本発明のアクリルゾルは、従来公知の塗装方法、すなわち、刷毛塗り、ローラー塗装、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装等により、塗布することが可能である。そして、アクリルゾルを塗布した後、所定の温度に加熱し塗膜を形成する。加熱方法も通常の方法に従えばよく、例えば熱風循環乾燥炉等を用いて行うことができる。
【0027】
【実施例】
上記実施の形態に基づいて、本発明のアクリルゾルを種々調製し、その貯蔵安定性および塗膜物性を評価した。また、比較例として多環芳香族オリゴマーを含まないアクリルゾルを種々調製し、同様に評価した。以下、アクリルゾルの調製、その貯蔵安定性および塗膜物性の評価について順に説明する。
【0028】
〈アクリルゾルの調製〉
まず、多環芳香族オリゴマーを合成した。粗製ナフタレン(純度96%)の250重量部と、パラホルムアルデヒド(純度88%)の53重量部とをフラスコに収容した。そのフラスコ内に、硫酸(純度70%)を60重量部滴下し、攪拌しながら120℃にて3時間反応させた。反応後、エチルベンゼンを75重量部加えてよく混合した後、80℃にて1時間静置した。下層に分離した水分を分別し、上層の有機層にアルカリを加えて残存する酸を中和した。その後、その有機層を再度フラスコに収容し、常圧で蒸留を行った。蒸留は、最終的に約6.7kPaの減圧下で250℃まで昇温し、水、ホルムアルデヒド、エチルベンゼン等の低沸点物質と未反応原料とを留出させ、目的とするオリゴマーを得た。
【0029】
次に、以下に示す各成分を、後に示す割合でそれぞれ配合し、ニーダーにより脱泡しながら混合分散して、各実施例および比較例のアクリルゾルを調製した。アクリル重合体微粒子:コア部はメチルメタクリレートとイソブチルメタクリレートの共重合体を主体とし、シェル部はメチルメタクリレート重合体を主体とする、コア/シェル型アクリル樹脂粉末
多環芳香族オリゴマー:上記合成で得られたナフタレンのオリゴマー
ブロック型ウレタン樹脂:トリレンジイソシアナート(TDI)とポリプロピレングリコール(PPG)とを反応させて得られたウレタン樹脂を、3,5−ジメチルピラゾールでブロックしたブロック型ウレタン樹脂
硬化剤:アジピン酸ジヒドラジド
可塑剤:ジイソノニルフタレート
充填剤:炭酸カルシウム
吸湿剤:酸化カルシウム
希釈剤:高沸点脂肪族溶剤
(1)実施例1のアクリルゾル
アクリル重合体微粒子を100重量部、多環芳香族オリゴマーを40重量部、ブロック型ウレタン樹脂を50重量部、硬化剤を6重量部、可塑剤を120重量部、充填剤を150重量部、吸湿剤を15重量部、希釈剤を45重量部配合してアクリルゾルを得た。本アクリルゾルを実施例1のアクリルゾルとした。
【0030】
(2)実施例2のアクリルゾル
多環芳香族オリゴマーの配合量を90重量部、希釈剤の配合量を45重量部とした以外は、上記実施例1のアクリルゾルと同様にして、アクリルゾルを得た。本アクリルゾルを実施例2のアクリルゾルとした。
【0031】
(3)実施例3のアクリルゾル
多環芳香族オリゴマーの配合量を140重量部、希釈剤の配合量を55重量部とした以外は、上記実施例1のアクリルゾルと同様にして、アクリルゾルを得た。本アクリルゾルを実施例3のアクリルゾルとした。
【0032】
(4)比較例1のアクリルゾル
多環芳香族オリゴマーを配合せずにアクリルゾルを調製した。多環芳香族オリゴマーを配合しなかった以外は、上記実施例1のアクリルゾルと同様にして、アクリルゾルを得た。本アクリルゾルを比較例1のアクリルゾルとした。
【0033】
(5)比較例2のアクリルゾル
多環芳香族オリゴマーを配合せずにアクリルゾルを調製した。多環芳香族オリゴマーを配合せず、可塑剤としてさらにトリクレジルホスフェート(TCP)を90重量部加え、希釈剤の配合量を50重量部とした以外は、上記実施例1のアクリルゾルと同様にして、アクリルゾルを得た。本アクリルゾルを比較例2のアクリルゾルとした。
【0034】
(6)比較例3のアクリルゾル
多環芳香族オリゴマーを配合せずにアクリルゾルを調製した。多環芳香族オリゴマーを配合せず、可塑剤としてさらにブチルベンジルフタレート(BBP)を90重量部加え、希釈剤の配合量を50重量部とした以外は、上記実施例1のアクリルゾルと同様にして、アクリルゾルを得た。本アクリルゾルを比較例3のアクリルゾルとした。
【0035】
〈貯蔵安定性および塗膜物性の評価〉
上記実施例1〜3、比較例1〜3の各アクリルゾルについて、貯蔵安定性、施工作業性、基材への接着性、伸び率、および耐チッピング性を、それぞれ以下の方法で評価した。また、評価結果を各アクリルゾルの成分とともに表1に示す。
【0036】
(1)貯蔵安定性
各アクリルゾルの初期粘度を、B型回転粘度計を用い、温度20℃にて測定した。その後、各アクリルゾルを密封容器に入れ、温度35℃の下で10日間保持した。そして、20℃に冷却して上記同様に粘度を測定し、初期からの粘度変化率を求めた。粘度変化率から、以下の基準で貯蔵安定性を評価した。
○:粘度変化率30%未満
△:粘度変化率30%以上50%未満
×:粘度変化率50%以上
(2)施工作業性
日本グレイ社製エアレスポンプ(キングタイプ)を使用し、圧力9MPa、ノズルチップ#643にてアクリルゾルを塗布した場合のパターン幅から、以下の基準で施工作業性を評価した。
○:パターン幅150mm以上
△:パターン幅100mm以上150mm未満
×:パターン幅100mm未満
(3)接着性
電着塗装を施した100×25×1.0mmの鋼板の表面に、アクリルゾルをウエット膜厚が0.5mmとなるように塗布し、130℃で20分間焼き付けを行った。形成された塗膜を爪で端部から剥離し、その破壊状態から以下の基準で接着性を評価した。
○:凝集破壊
×:界面破壊
(4)伸び率
アクリルゾルを離型可能な板の上に2mmの厚さに均一に塗布し、130℃で20分間焼き付けた後、ダンベル2号型で打ち抜いた。このダンベルを20℃にて引っ張り速度50mm/minで引っ張り、破断時の伸び率(%)を測定した。
【0037】
(5)耐チッピング性
電着塗装を施した70×150×0.8mmの鋼板の表面に、アクリルゾルをウエット膜厚が0.5mmとなるように塗布し、130℃で20分間焼き付けた。その後、鋼板を20℃に冷却し、塗膜の形成面を上にして水平から60°の角度に固定した。内径20mm、長さ2mの塩化ビニル製パイプを垂直に立て、その下端を鋼板の塗膜形成面に当てた。M−4真鍮ナットを、パイプの上端からパイプを通して落下させ、素地が露出するまでの、落下させたナットの総重量を測定した。ナットの総重量から以下の基準で耐チッピング性を評価した。
○:40kg以上
×:40kg未満
【0038】
【表1】
Figure 0003923353
【0039】
表1から明らかなように、本発明の実施例1〜3のアクリルゾルは、貯蔵時の粘度上昇も見られず、塗膜の基材への接着性も良好であった。また、塗膜の伸び率は350〜470%と大きく、膜厚0.5mmの薄膜で測定したにも関わらず耐チッピング性は良好であった。なお、多環芳香族オリゴマーの配合量が140重量部と多い実施例3のアクリルゾルは、やや施工作業性が低下したが、それ以外のものでは施工作業性も良好であった。このように、本発明のアクリルゾルは貯蔵安定性と塗膜物性との両方を満足するものであり、総合的に優れた評価となった。
【0040】
これに対して、多環芳香族オリゴマーを含まない比較例1〜3のアクリルゾルは、貯蔵安定性と塗膜物性とを同時に満足するものではなく、いずれも総合評価において実用に適さない結果となった。すなわち、比較例1のアクリルゾルは、貯蔵安定性は良好であるものの、塗膜の伸び率が260%と小さく、塗膜の耐チッピング性も低かった。これは、多環芳香族オリゴマーが含まれず、全体として可塑剤の量が少ないため、塗膜の伸び率が低下したためと考えられる。一方、TCPやBBPを配合し、可塑剤の量を増加した比較例2、3のアクリルゾルでは、塗膜の伸び率や耐チッピンング性は向上したものの、貯蔵中に増粘してしまい貯蔵安定性が悪くなった。また、TCP等と同量の多環芳香族オリゴマーを含む実施例2のアクリルゾルから形成した塗膜は、比較例2、3のアクリルゾルから形成した塗膜と比較して、伸び率が大きく、耐チッピング性が大幅に向上した。
【0041】
以上より、多環芳香族オリゴマーを含む本発明のアクリルゾルは、貯蔵安定性が良好であり、かつ、耐チッピング性等の塗膜物性に優れる塗膜を形成することができることが確認できた。
【0042】
【発明の効果】
本発明のアクリルゾルは、アクリル重合体微粒子と多環芳香族オリゴマーとを含むものである。多環芳香族オリゴマーを含むことにより、常温で貯蔵した場合であっても粘度が上昇し難く、貯蔵安定性の良好なアクリルゾルとなる。また、可塑剤の量を多くすることができるため、本発明のアクリルゾルから形成された塗膜は、伸び率が大きく、耐チッピング性等の塗膜物性が良好なものとなる。したがって、シーリング材、コーティング材等の幅広い分野で使用することができ、特に、自動車の床裏部等の防音アンダーコートとして有用なアクリルゾルとなる。

Claims (5)

  1. アクリル重合体微粒子と、2〜4環の多環芳香族化合物がアルデヒド類により縮合されてなる多環芳香族オリゴマーと、を含むプラスチゾルであることを特徴とするアクリルゾル。
  2. 前記多環芳香族オリゴマーは、数平均分子量が300以上1500以下である請求項1に記載のアクリルゾル。
  3. 前記2〜4環の多環芳香族化合物は、ナフタレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、アセナフテン、フルオレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレンから選ばれる少なくとも一種以上を含むものである請求項1に記載のアクリルゾル。
  4. 前記多環芳香族オリゴマーは、前記アクリル重合体微粒子の100重量部に対して10重量部以上200重量部以下含まれる請求項1に記載のアクリルゾル。
  5. さらにブロック型ウレタン樹脂、硬化剤、可塑剤、および充填剤を含む請求項1に記載のアクリルゾル。
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