JP4155612B2 - 水系接着剤組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水系分散液と水分散性ポリイソシアネート組成物からなり、ポットライフが長い2液型の水系接着剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、揮発性有機化合物に関する指針が厳しくなり、アメリカ、ドイツ等ではすでに規制が行われており、日本でも近い将来規制が行われると考えられる。従って、従来、有機溶剤中に溶解したポリマーにイソシアネートを添加して基材への接着性等の性能を得ていた接着剤も水系化が望まれており、開発が進められている。
【0003】
特公昭55−7472号公報は、ポリイソシアネート中にノニオン性の親水基を導入した水分散性ポリイソシアネートを提案し、これをポリエステル、ポリエーテル中に添加することによって、接着剤、結合剤に使用できることを提案している。また、特開昭61−291613号公報、特開昭62−50373号公報は、水性エマルジョンとノニオン性の親水基だけを有した脂肪族系水分散性ポリイソシアネート組成物を組み合わせた接着剤組成物を提案している。
【0004】
しかしながら、上記に示した従来の水分散性ポリイソシアネート組成物は、親水成分として、ノニオン基のみを用いているために、比較的反応性が遅い脂肪族ポリイソシアネートを使用しても、水性接着剤組成物とした場合、イソシアネート基と水との反応性が十分に抑えられず、実用に耐えうるポットライフは達成できないという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポットライフが長い2液型の水系接着剤組成物を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、水溶性樹脂あるいは水分散性樹脂と、ノニオン系の親水基を導入しイオン性界面活性剤を混合した水分散性ポリイソシアネート組成物からなる水性接着剤組成物が、上記課題を解決できることを見いだし、その知見にもとづき本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、(A)成分として水溶性樹脂及び/または水分散性樹脂と、安定化剤、増粘剤、充填剤の少なくとも1種類以上を含む添加剤からなる水系分散液、(B)成分として(1)脂肪族及び/または脂環族ジイソシアネート、またはそれらから得られるポリイソシアネート化合物に、3〜50のエチレンオキサイド繰り返し単位からなるノニオン性の親水基が2〜50重量%導入された親水性ポリイソシアネートと、(2)実質的に水を含有しないイオン性界面活性剤を(1)に対して0.5〜20重量%混合することにより得られる水分散性ポリイソシアネート組成物、
からなる水系接着剤組成物であり、(A)成分の不揮発成分に対して(B)成分の不揮発成分が、0.5〜100重量%の範囲であり、(A)成分及び(B)成分はそれぞれ別々に提供され、使用時に混合されるように構成されていることを特徴とする水系接着剤組成物に関する。
【0008】
以下、本発明につき詳述する。
本発明においては、(A)成分の水系分散液として水溶性樹脂及び/又は水分散性樹脂を使用する。
水溶性樹脂とは、水に可溶な樹脂であって、例えば、(メタ)アクリル酸(炭素数1〜12)アルキルエステルの少なくとも1種を必須成分として、(メタ)アクリル酸、スチレン、アクリルニトリル等の不飽和化合物の中から選ばれる少なくとも1種の不飽和化合物のコポリマーのカルボン酸の一部または全部を水酸化ナトリウムやアンモニア等のアルカリ成分で中和した(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸等及びそれらの無水物等の多塩基酸の中から選ばれる少なくとも1種の多塩基酸と(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリット、ソルビトール等の多価アルコールの中から選ばれる少なくとも1種の多価アルコールをエステル化する過程において、多塩基酸の一部または全部を水酸化ナトリウムやアンモニア等のアルカリ性分で中和したポリエステル系樹脂、芳香族、脂肪族、脂環族ジイソシアネートあるいはそれら由来のイソシアネートオリゴマーと(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリット、ソルビトール等の多価アルコール、あるいはビスヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酢酸等のヒドロキシカルボン酸の中から選ばれた少なくとも1種類以上のアルコール化合物をウレタン化反応し、カルボン酸の一部または全部を水酸化ナトリウムやアンモニア等のアルカリ成分で中和したポリウレタン系樹脂などを挙げることができる。
【0009】
さらにまた、酢酸ビニルを必須成分とし、(メタ)アクリル酸(炭素数1〜12)アルキルエステル、スチレン等の不飽和化合物の中から選ばれる少なくとも1種の不飽和化合物のコポリマーのカルボン酸の一部または全部を中和した酢酸ビニル系樹脂、エピクロロヒドリンと多価フェノールの縮合物等のエポキシ系樹脂、ポリエチレンオキサイド単独、あるいはポリエチレンオキサイド繰り返し単位の間、あるいは片端、あるいは両端にポリプロピレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリネオペンチルグリコールを付加させたポリアルキレンオキサイドポリオール系樹脂、ポリビニルアルコール、あるいはポリビニルアルコールの水酸基の一部をカルボン酸、スルホン酸化合物でエステル化した化合物等で代表される合成水溶性高分子類、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、可溶性でんぷん等で代表される天然水溶性高分子類などを挙げることができる。
【0010】
水分散性樹脂とは、ラテックス、エマルジョンと表現される全てを含む。
例えば、塩化ビニリデンを必須成分とし、アクリロニトリル、塩化ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜12)エステル等の不飽和化合物から選ばれる少なくとも1種類の不飽和化合物を乳化重合し、コポリマーとし、必要に応じてカルボン酸を中和したポリ塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニルを必須成分とし、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜12)エステル等の不飽和化合物から選ばれる少なくとも1種類の不飽和化合物を乳化重合し、コポリマーとし、必要に応じてカルボン酸を中和したポリ塩化ビニル共重合体、酢酸ビニルをポリビニルアルコール水溶液中で触媒を加えて乳化重合した酢酸ビニル共重合体、芳香族、脂肪族、脂環族ジイソシアネートあるいはそれら由来のイソシアネートオリゴマーと(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリット、ソルビトール等の多価アルコール、あるいはビスヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酢酸等のヒドロキシカルボン酸の中から選ばれた少なくとも1種類以上のアルコール化合物をウレタン化反応し、必要に応じてカルボン酸を中和したウレタンエマルジョン等を挙げることができる。
【0011】
さらにまた、(メタ)アクリル酸(炭素数1〜12)アルキルエステルと、水酸基成分として(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピルエステルの少なくとも1種を必須成分として、(メタ)アクリル酸、スチレン等の不飽和化合物の中から選ばれる少なくとも1種の不飽和化合物のコポリマーのカルボン酸を必要に応じて中和したアクリルエマルジョン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、(メタ)アクリル酸(炭素数1〜12)フルオロアルキルエステル等のフッ素含有不飽和化合物の少なくとも1種を必須成分とし、(メタ)アクリル酸(炭素数1〜12)アルキルエステル、(メタ)アクリル酸、エチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、スチレン等のアクリル化合物の中から選ばれる少なくとも1種の化合物のコポリマーのカルボン酸を必要に応じて中和したフッ素共重合体エマルジョン、スチレン及びブタジエンを必須成分とし(メタ)アクリル酸、アクリロニトリル等の不飽和化合物の中からえらばれる少なくとも1種の不飽和化合物のコポリマーのカルボン酸を必要に応じて中和したスチレンブタジエン共重合体ラテックス、末端に水酸基及びカルボキシル基を有し、必要に応じてカルボキシル基を中和したポリブタジエン共重合体、上記のアクリルエマルジョンとウレタンエマルジョンがコアシェル構造を有するウレタンアクリルエマルジョンや天然ラテックス等を挙げることができる。
【0012】
水分散性樹脂の粒子径は、0.01〜1.0μmが好ましい。0.01μm未満では、水分散性樹脂の粘度が上昇し、低い不揮発分濃度での使用に限定される可能性がある。1.0μmを超えると、水分散性樹脂の水分散の安定性が悪くなる可能性がある。
また、本発明の(A)成分で使用する水溶性樹脂あるいは水分散性樹脂は、実質的に水酸基を含有しない。実質的に水酸基を含有しないとは、架橋を目的とした水酸基がないということで、その目安として水酸基価は1mgKOH/g未満が望ましい。本発明において、(A)成分である水系分散液に、(B)成分である水分散性ポリイソシアネート組成物を添加する目的は、基材への接着力を向上させるためであり、(A)成分の水溶性樹脂あるいは水分散性樹脂間を架橋させるためではないからである。
【0013】
本発明は、(A)成分の水系分散液に、安定化剤、増粘剤、充填剤の少なくとも一種を用いている。安定化剤、増粘剤、又は充填剤を使用することによって接着剤として使い易い粘度等に調整することができる。
安定化剤として、例えば、塩素化パラフィン等のハロゲン化炭化水素類、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類、フタル酸エステル、オレフィン酸エステル、アジピン酸エステル、アゼライン酸エステル、ステアリン酸エステル、安息香酸エステル、リン酸エステル、トリメリット酸エステル、マレイン酸エステル、フマル酸エステル等のエステル類、環式アルキレンカーボネート類、第三級アミン類等の中から選ばれた少なくとも1種類以上の化合物が挙げられる。
【0014】
増粘剤として、例えば、小麦粉、セルロース誘導体、アルギネート、デンプン、デンプン誘導体、ポリアクリル酸等の中から選ばれた少なくとも1種類以上の化合物が挙げられる。
充填剤として、例えば、石英粉末、石英砂、シリカ、バライト、炭酸カルシウム、白亜、ドロマイト、タルク、木粉、クレー、ベントナイト、スターチ等の中から選ばれた少なくとも1種類以上の化合物が挙げられる。
【0015】
本発明において、(A)成分の水系分散液には上記の安定剤、増粘剤、充填剤以外に、レベリング剤、ゲル化防止剤、光安定剤、酸化防止剤、耐熱性向上剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、補助剤等の添加剤を使用することができる。
本発明において、(B)成分で使用する脂肪族及び/または脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアネートシクロヘキサン等が挙げられる。中でもヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネートは、工業的に入手し易く良好である。
【0016】
上記の脂肪族及び/または脂環族ジイソシアネートから得られるポリイソシアネート化合物とは、分子内にビュウレット、イソシアヌレート、ウレタン、ウレトジオン、アロファネート等の構造を有するものである。ポリイソシアネート化合物において、ビュレット構造を有するものは接着性に優れており、イソシアヌレート構造を有するものは耐候性に優れており、長い側鎖を有するアルコール化合物を用いたウレタン構造を有するものは弾性及び伸展性に優れており、ウレトジオン構造あるいはアロファネート構造を有するものは低粘度であるという特徴を有している。
【0017】
本発明における親水性ポリイソシアネートとは、ジイソシアネートまたはポリイソシアネート化合物にエチレンオキサイド繰り返し単位からなるノニオン性の親水基を導入したものをいう。
エチレンオキサイド繰り返し単位からなるノニオン性の親水基とは、ポリアルキレンオキサイドエーテルアルコール中にエチレンオキサイド繰り返し単位を含むものであり、水分散安定性を考慮した場合、特に好ましいのはポリエチレングリコールモノメチルエーテルである。
【0018】
エチレンオキサイド繰り返し単位の数は、3〜50、より好ましくは、5〜40である。エチレンオキサイド繰り返し単位が、50を越えると親水性ポリイソシアネートの結晶性が高くなり、固体になりやすくなるために好ましくない。また、未満では水への分散性が十分でない。
本発明で使用する親水性ポリイソシアネートへの親水基の導入量は、2〜50重量%である。2重量%未満では、界面張力を下げる効果が十分でなく、水分散能を発現することが出来ないため好ましくない。50重量%を越えると、水分散性ポリイソシアネート組成物の親水性が高すぎるために、水分散時のイソシアネート基と水との反応が抑えられず好ましくない。なお、本発明でいう導入とは、ポリイソシアネート化合物中に含まれるイソシアネート基と反応させてポリイソシアネート構造中に組み込むことをいう。導入方法としては、脂肪族あるいは脂環族ジイソシアネート、またはそれらから得られるポリイソシアネート化合物とポリアルキレンオキサイドエーテルアルコールを混合させて、通常のウレタン化反応を行えばよい。
【0019】
本発明で用いる水分散性ポリイソシアネート組成物とは、上記の親水性ポリイソシアネートに、更に実質的に水を含有しないイオン性界面活性剤を0.5〜20重量%混合させたものをいう。なお、ここで、重量%は、前記の親水性ポリイソシアネートに対する割合である。また、本発明でいう実質的に水を含有しないとは、混合したイオン性界面活性剤に含まれる水とイソシアネート基が反応し発泡、白濁及び粘度上昇が起こらない程度であり、その目安をいえばイオン性界面活性剤に対して1%以下である。
【0020】
イオン性界面活性剤は、水性エマルジョンの中和方法によって、アニオン性か、カチオン性か一義的に決まる。すなわち、水性エマルジョンを塩基によって中和した場合は、アニオン性界面活性剤、酸によって中和した場合は、カチオン性界面活性剤を用いる必要がある。水性エマルジョンが中和されていない場合はどちらを用いてもよい。
【0021】
アニオン性界面活性剤としては、カルボキシレート型、サルフェート型、スルホネート型、ホスフェート型が適しており、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム、アルキルジサルフェートナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホネートナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム等が挙げられる。
【0022】
カチオン性の界面活性剤としては、四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩が適しており、例えば、アルキルトリメチルアンモニウムブロマイド、アルキルピリジニウムブロマイド、イミダゾリニウムラウレートが挙げられる。
添加量が、0.5重量%未満では、イオン性界面活性剤を混合することによる水分散安定性の効果が発現されないため適当ではない。20重量%を越えると、分散粒子径が小さくなりすぎるために、ポットライフが短くなるため好ましくない。
【0023】
ノニオン性の親水基とイオン性界面活性剤を併用する点が、本発明のキーである。水分散性ポリイソシアネート組成物が、水溶性樹脂あるいは水分散性樹脂に分散した際に生じる、ポリイソシアネート油滴の表面にノニオン性の親水基とイオン性界面活性剤の保護膜を生成することによって、水分散性ポリイソシアネート組成物の水分散安定性と長いポットライフが達成されるのである。
【0024】
これに対して、従来技術である特公昭55−7472号公報、特開平5−222150号公報、特開平6−17004号公報、特開平7−48429号公報、特開平7−113005号公報などでは、ノニオン性親水基だけを使用している。
ノニオン性親水基をポリイソシアネート化合物中に導入すると、界面張力を低下させるので、水への分散性を向上させるには効果的である。しかし、ノニオン性親水基は、水に対する保護力が低いため、容易にポリイソシアネート中へ水の浸入を許し、水とイソシアネート基の反応が開始し、短時間の間にイソシアネート残存率が低下する。よって、水系分散液に水分散性ポリイソシアネート組成物を添加する効果、即ち基材に対する接着力の向上等が短時間の間に発現しなくなってしまう。
【0025】
また、親水基を導入していないポリイソシアネート化合物にイオン性界面活性剤を混合するだけでは、水への分散性が劣り、本発明で用いる水分散性ポリイソシアネート組成物のような水分散安定性を達成することが出来ない。
本発明の技術的なキーは、ノニオン性親水基を導入したポリイソシアネートにイオン性界面活性剤を併用することによって、ポリイソシアネート油滴表面に強固なイオン性保護膜を生成させる点であり、これによってポリイソシアネート油滴中への水の侵入を防ぎ、ポリイソシアネート油滴内のイソシアネート基を水から守ることができるのである。これはポリイソシアネートに導入されたノニオン性親水基とイオン性界面活性剤との相互作用によって達成できる。
【0026】
ノニオン性親水基だけを導入したポリイソシアネートを、アニオン性界面活性剤を添加した水に分散させた系では、ポリイソシアネート油滴を生成する際にアニオン性界面活性剤が添加された水を油滴内部に抱き込んでしまうために、長いポットライフを達成することが出来ない。
本発明で用いる水分散性ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基含有率は、実質的に固形分100%の状態で3〜25重量%が好ましい。3重量%未満では、イソシアネート基の量が少なすぎるため、水系分散液に水分散性ポリイソシアネート組成物を添加する効果、即ち基材への接着力の向上等が発現しない場合がある。イソシアネート基含有率は、親水基の導入量と分子量から一義的に決定されるため、水分散能を有するために必要な親水基を導入すると、必然的に上限は25重量%以下となる。なお、本発明でいう実質的に固形分100%の状態とは、水分散性ポリイソシアネート組成物中に実質的に溶剤等の揮発成分を含んでいない状態をいい、強いてその目安をいえば水分散性ポリイソシアネート中に揮発成分が1%以下の状態をいう。
【0027】
水分散性ポリイソシアネート組成物の粘度は、実質的に固形分100%の状態で50〜20000mPa・s(25℃)が好ましい。20000mPa・sを越えると水への分散が困難となる場合がある。水への分散を考えると粘度は低いほど望ましいが、50mPa・m未満では、ヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネート等の脂肪族及び/または脂環族ジイソシアネートの単量体を大量に含んでしまい、取り扱いの際、保護具等が必要となる場合がある。
【0028】
また、本発明において、水分散性ポリイソシアネート組成物の重量平均分子量は、350〜10000が好ましい。水分散能を発現するために必要な親水基を導入すると重量平均分子量は必然的に350以上となる。10000を超えると水分散性ポリイソシアネート組成物の粘度が高くなり、水への分散が困難となる場合がある。
【0029】
本発明で用いる水分散性ポリイソシアネート組成物は、水分散時のイソシアネート基の残存率が20℃6時間で50%以上であることが望ましい。50%未満では、水性接着剤組成物とした時、基材への接着力等が短時間の内に十分には発現しなくなる、即ちポットライフが短くなる傾向がある。水とイソシアネート基の反応の抑制は、導入した親水基成分と混合したイオン性界面活性剤成分の相互効果によって達成される。
【0030】
なお、本発明でいう水分散とは、水分散性ポリイソシアネート組成物がO/W型になるよう水に分散された状態をいい、水に水分散性ポリイソシアネート組成物を添加し、棒やハンドミキサー等を用いて機械的に攪拌して作成される。
本発明に用いる水分散性ポリイソシアネート組成物は水分散安定性が良好である。本発明でいう水分散安定性とは、上記の方法で水分散した水分散性ポリイソシアネート組成物の油滴の水中における安定性のことである。本発明に用いる水分散性ポリイソシアネート組成物は、水分散した状態で、20℃8時間放置しても全く沈殿がみられない。これもまた、導入した親水基成分と混合したイオン性界面活性剤の相互効果によって達成される。
【0031】
本発明において、水分散性ポリイソシアネート組成物は、有機溶剤を添加して使用することもできる。有機溶剤を混合した水分散性ポリイソシアネート組成物は、粘度が低くなるため、水分散性が向上し、さらに水分散時のイソシアネート基の残存率が高くなり、ポットライフが長くなるという効果がある。この場合、有機溶剤はイソシアネート基と反応する官能基を有していないことが望ましい。また、有機溶剤は、水分散性ポリイソシアネート組成物と相溶することが望ましい。
【0032】
このような有機溶剤として、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、メトキシプロピルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、2−エチルブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸ブチル、酪酸ブチル、アジピン酸ジオクチル、グルタル酸ジイソプロピル等のエステル化合物やジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、ジエトキシエタン等のエーテル化合物や、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン2−ヘプタノン,4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン化合物やベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ブチルベンゼン、p−シメン等の芳香族化合物や、ジエチレングリコールジメチルエーテルやジエチレングリコールジエチルエーテルやトリエチレングリコールジメチルエーテル等のポリエチレングリコールジアルキルエーテル系の化合物やジエチレングリコールジアセテート等のポリエチレングリコールジカルボキシレート系の化合物などが挙げられる。
【0033】
本発明において、水分散性ポリイソシアネート組成物に添加する有機溶剤の添加量は5〜50重量%が好ましい。5重量%未満では有機溶剤を混合するメリット、すなわち水分散性の向上やポットライフの延長効果がみられない場合がある。50重量%を超えると本発明の水系接着剤組成物の中に占める揮発性有機化合物の量が多くなりすぎる。
【0034】
本発明の水系接着剤組成物は、(A)成分の不揮発成分に対して、(B)成分の不揮発成分が、0.5〜100重量%である。0.5重量%未満では、水分散性ポリイソシアネート組成物を添加する効果、即ち、基材への接着力等の向上が発現しない場合があり好ましくない。100重量%を超えると、(B)成分が、W/O型に分散し、ポットライフが著しく短くなる場合があり好ましくない。
【0035】
本発明の水系接着剤組成物は、例えば、(A)成分の水系分散液に、(B)成分の水分散性ポリイソシアネート組成物を直接添加、あるいは予めO/W型になるよう水分散した(B)成分を添加し、棒やハンドミキサー等で攪拌することによって得ることができる。
(A)成分と(B)成分の配合された水系接着剤組成物は、ポットライフが20℃で6時間以上であることが望ましい。ポットライフとは、水系分散液に水分散性ポリイソシアネート組成物を添加してから、接着剤として使用した際に、基材への接着強度等に明らかな低下が認められない時間、あえて目安をいえば水分散性ポリイソシアネート組成物を添加直後の接着力の70%未満になるまでの時間をいう。6時間未満では必ずしも十分に実用に耐えることが出来るとはいえない。この長いポットライフは、導入したノニオン性親水基と混合したイオン性界面活性剤の相互作用によって達成できる。
【0036】
本発明において、水分散性ポリイソシアネート組成物、及び水系接着剤組成物には、必要に応じて、顔料、分散安定剤、粘度調整剤、レベリング剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、可塑剤、潤滑剤、硬化促進触媒等を添加することが出来る。
本発明はポリイソシアネート組成物を用いた水系接着剤組成物である。従って、特開昭51−42751号公報あるいは特開昭57−170972号公報等に記載の如く、接着強度、耐水性、熱安定性に優れた性能を発揮することができる。
【0037】
本発明で用いる水分散性ポリイソシアネート組成物は、水分散状態でのイソシアネート基と水の反応が抑えられているため、本発明の水系接着剤組成物は、長いポットライフを達成することが出来る。したがって、同じ、又は異なるタイプの基材、特に、木材、紙、プラスチック、金属、布、皮、無機材料(セラミック、アスベスト、陶器、セメント等)を接着するために適している。さらに、基材に塗料を塗布する際のプライマーとしても優れた性能を発揮する。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに説明する。
なお、測定方法、調製法等は下記の通りである。
イソシアネート基含有率は、イソシアネート基を過剰のアミンで中和した後、塩酸による逆滴定によって求めた。
【0039】
粘度は、デジタル粘度計(東京計器株式会社DVM−B型)により25℃、60rpmで測定した。
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて求めた。
なお、GPCは数平均分子量2000未満の場合は(カラム:東ソー(株)G1000HXL、G2000HXL、G3000HXL、キャリアー:THF、検出方法:視差屈折計、データ処理器:東ソー(株)CP−8000)で、数平均分子量2000以上の場合は(カラム:東ソーG2000HXL、G4000HXL、G5000HXL、キャリアー:THF、検測方法:視差屈折計、データ処理器:東ソー(株)Chromatocoder21)にて測定した。
【0040】
水系接着剤組成物は、水系分散液に水分散性ポリイソシアネート組成物を所定量添加し、600rpmで10分間攪拌して作成した。
接着強度は、木材(ブナの木)に水系接着剤を乾燥膜厚で30μmとなるように塗布し、塗布後10分間放置した後、3kg/cm2 の圧力を5秒間かけて、20℃65%RHに7日放置したときの引張せん断強さを測定した。
【0041】
評価は、○:100〜75kg/cm2 以上、△:50〜75kg/cm2 、×:50kg/cm2 以下とした。
【0042】
【合成例1】
(水分散性ポリイソシアネート組成物の合成)
メトキシポリエチレングリコール(MPG−081、エチレンオキサイド繰り返し単位=15.2個、日本乳化剤株式会社製)とジアルキルスルホコハク酸ナトリウム(ニューコール290M、固形分70%、日本乳化剤株式会社製)を固形分重量比で2:1になるように混合し、減圧蒸留によって水及び溶剤を除いた。ビュレットタイプポリイソシアネート(デュラネート24A−100、旭化成工業株式会社製)1000gと上記より得られたメトキシポリエチレングリコールとジアルキルスルホコハク酸ナトリウムの混合物300gを混ぜ、100℃で4時間ウレタン化反応を行った。
【0043】
得られた水分散性ポリイソシアネート組成物は、淡黄色液体であり、イソシアネート基含有率は16.6%、重量平均分子量は1100、粘度は4100mPa・sであった。また、水分散液を20℃6時間放置したときのイソシアネート基含有率の残存率は、93%であった。
【0044】
【合成例2】
(水分散性ポリイソシアネート組成物の合成)
メトキシポリエチレングリコール(エチレンオキサイド繰り返し単位=5.0個)とジアルキルスルホコハク酸ナトリウム(ニューコール290M、固形分70%、日本乳化剤株式会社製)を固形分重量比で3:1になるように混合し、減圧蒸留によって水及び溶剤を除いた。ビュレットタイプポリイソシアネート(デュラネート24A−100、旭化成工業株式会社製)1000gと上記より得られたメトキシポリエチレングリコールとジアルキルスルホコハク酸ナトリウムの混合物300gを混ぜ、100℃で4時間ウレタン化反応を行った。
【0045】
得られた水分散性ポリイソシアネート組成物は、淡黄色液体であり、イソシアネート基含有率は13.4%、重量平均分子量は1000、粘度は5200mPa・sであった。また、水分散液を20℃6時間放置したときのイソシアネート基含有率の残存率は、91%であった。
【0046】
【合成例3】
(水分散性ポリイソシアネート組成物の合成:比較例に使用)ビュレットタイプポリイソシアネート(デュラネート24A−100、旭化成工業株式会社製)1000gとメトキシポリエチレングリコール(MPG081、日本乳化剤製)を混ぜ、100℃で4時間ウレタン化反応を行った。
【0047】
得られた水分散性ポリイソシアネート組成物は、淡黄色液体であり、イソシアネート基含有率は18.6%、重量平均分子量は1000、粘度は2800mPa・sであった。また、水分散液を20℃で放置すると3時間後に発泡し、6時間後のイソシアネート基含有率の残存率は、0%であった。
【0048】
【実施例1】
アクリルラテックス(スチレン/メタクリル酸メチル/アクリル酸−n−ブチル/メタアクリル酸共重合体、アンモニアでpH6に調整、固形分36重量%、酸価6mgKOH/g、Tg28℃)100gと、合成例1で合成した水分散性ポリイソシアネート組成物10gを混合し、水系接着剤組成物を得た。得られた水系接着剤組成物の混合直後の接着強度と混合8時間後の接着強度を表1に示す。
【0049】
【実施例2】
固形分42%のアクリル酸系樹脂(スチレン/メタクリル酸メチル/アクリル酸−n−ブチル共重合体、アンモニアでpH6に調整、固形分30重量%、酸価10mgKOH/g)水溶液100gと、合成例1で合成した水分散性ポリイソシアネート組成物5gを混合し、水系接着剤組成物を得た。得られた水系接着剤組成物の混合直後の接着強度と混合8時間後の接着強度を表1に示す。
【0050】
【実施例3】
アクリルラテックス(スチレン/メタクリル酸メチル/アクリル酸−n−ブチル/メタアクリル酸共重合体、アンモニアでpH6に調整、固形分36重量%、酸価6mgKOH/g、Tg28℃)100gと、合成例2で合成した水分散性ポリイソシアネート組成物10gを混合し、水系接着剤組成物を得た。得られた水系接着剤組成物の混合直後の接着強度と混合8時間後の接着強度を表1に示す。
【0051】
【比較例1】
アクリルラテックス(スチレン/メタクリル酸メチル/アクリル酸−n−ブチル/メタアクリル酸共重合体、アンモニアでpH6に調整、固形分36重量%、酸価6mgKOH/g、Tg28℃)100gと、合成例3で得た水分散性ポリイソシアネート組成物10gを混合し、水系接着剤組成物を得た。得られた水系接着剤組成物の混合直後の接着強度と混合8時間後の接着強度を表1に示す。
【0052】
【表1】
Figure 0004155612
【0053】
【発明の効果】
本発明で用いる水分散性ポリイソシアネート組成物は、水分散状態でのイソシアネート基と水の反応が抑えられているため、本発明の水系接着剤組成物は、長いポットライフを達成することが出来る。したがって、同じ、又は異なるタイプの基材、特に木材、紙、プラスチック、金属、布、皮、無機材料(セラミック、アスベスト、陶器、セメント等)を接着するために適している。さらに、基材に塗料を塗布する際のプライマーとしても優れた性能を発揮する。

Claims (1)

  1. (A)成分として水溶性樹脂及び/または水分散性樹脂と、安定化剤、増粘剤、充填剤の少なくとも1種類以上を含む添加剤からなる水系分散液、(B)成分として(1)脂肪族及び/または脂環族ジイソシアネート、またはそれらから得られるポリイソシアネート化合物に、3〜50のエチレンオキサイド繰り返し単位からなるノニオン性の親水基が2〜50重量%導入された親水性ポリイソシアネートと、(2)実質的に水を含有しないイオン性界面活性剤を(1)に対して0.5〜20重量%混合することにより得られる水分散性ポリイソシアネート組成物、
    からなる水系接着剤組成物であり、(A)成分の不揮発成分に対して(B)成分の不揮発成分が、0.5〜100重量%の範囲であり、(A)成分及び(B)成分はそれぞれ別々に提供され、使用時に混合されるように構成されていることを特徴とする水系接着剤組成物。
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