JP3922803B2 - 非焼成色鉛筆芯 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、非焼成色鉛筆芯に関するものであり、さらに詳しくは、高湿度下においても優れた書き味、着色性を得ることができ、かつ保存性に優れた非焼成色鉛筆芯に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の非焼成色鉛筆芯は、結合材、着色材、体質材、滑材及び溶剤などの原料組成物を配合し、混練したものを押し出し成形し、必要に応じて乾燥などを施して製造されている。
【0003】
ここで、結合材としては有機高分子が用いられており、一般にはカルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール、メチルセルロースなどの各種水溶性結合材が使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この種の水溶性結合材を含有した非焼成色鉛筆芯は、高湿度下においては書き味及び着色性が低下し、さらに芯の体積が膨張することによって木軸の割れなどが生じる問題があった。
【0005】
本発明の課題は、高湿度下においても、書き味及び着色性を損なうことがなく、芯の膨張が生じない非焼成色鉛筆芯を提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の問題を解決すべく鋭意検討した結果、結合材としてカルボキシメチルセルロース酸(以下、CMC酸と略記する場合がある。)が含有されている非焼成色鉛筆芯の場合、高湿度下でも、書き味及び着色性の低下を阻止することができ、また芯の膨張を防止することができる知見を得、本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明は、結合材、着色材、体質材及び滑材を原料組成物として含み、必要に応じて油脂及び/又はワックス類を含み、上記結合材としてカルボキシメチルセルロース酸を含有してなる非焼成色鉛筆芯である。
【0008】
結合材としてカルボキシメチルセルロース酸を含有した非焼成色鉛筆芯は、結合材としてカルボキシメチルセルロースナトリウム等の水溶性樹脂を含有する非焼成色鉛筆芯と比較して、高湿度下でも、着色性及び書き味の低下をおさえて優れた着色性及び書き味を保持することができ、また芯の膨張を防止して木軸の割れなどの発生を防止することができる。
【0009】
本発明で結合材として非焼成色鉛筆芯に含まれるCMC酸は、例えば、原料組成物中に配合したカルボキシメチルセルロースアンモニウム(CMCアンモニウム)を加熱することによってCMCアンモニウムのアンモニア分子が離脱し、これによって得られる。CMC酸を原料組成物自体に直接配合させた場合、この物質は水不溶性であることから、非焼成色鉛筆芯における結合材として適切な機能を発揮しない。
【0010】
この点、CMCアンモニウムは水溶性であり、非焼成色鉛筆芯に配合する原料組成物としては優れている。しかも、このCMCアンモニウムは、例えば60〜80℃で加熱することによってアンモニア分子が外れ、水不溶性のCMC酸になるという性質を有する。従って、本発明によれば、かかるCMCアンモニウムを非焼成色鉛筆芯の配合原料として配合した点にも特徴がある。
【0011】
上述の点より、本発明の非焼成色鉛筆芯を製造する方法としては、カルボキシメチルセルロースアンモニウムを含む結合材、着色材、体質材及び滑材を含有する原料組成物を混練し、成型した後、上記カルボキシメチルセルロースアンモニウムのアンモニア分子を離脱させる温度で加熱する製造方法を好適に採用することができる。
【0012】
本発明でいうCMC酸は、次の構造式のXが水素Hである化学構造を示している。一般にCMCというと、次の構造式でいえば、Xの部分がナトリウムNaであるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCナトリウム)のことを意味する場合が多い。
【0013】
【化1】
Figure 0003922803
【0014】
しかし、このCMCナトリウムは、CMCアンモニウムとは異なり、加熱によってそのナトリウム塩が離脱して水不溶性のCMC酸になるという性質を備えていない。従って、CMCナトリウムを結合材として原料組成物中に配合した場合、最終的に得られる非焼成色鉛筆芯の含有成分もあくまでCMCナトリウムとなる。従って、このCMCナトリウムを含有した非焼成色鉛筆芯は、既述した様に、CMCナトリウムが水溶性であるため、高湿度下においては書き味及び着色性が低下し、さらに芯の体積が膨張することによって木軸の割れなどが生じやすい。これに対して、CMC酸を含有した本発明の非焼成色鉛筆芯は、CMCナトリウムとは全く異なって水不溶性であり、高湿度下でも、書き味及び着色性の低下を阻止することができ、また芯の膨張を防止することができる。
本発明では、通常CMCと称されるCMCナトリウムではなく、構造上及び性質上からも区別されるCMCアンモニウムが原料組成物として配合され、最終的な非焼成色鉛筆芯にはこのCMCアンモニウムのアンモニア分子が離脱したCMC酸が結合材として含有している。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明は、結合材、着色材、体質材及び滑材を原料組成物として含み、必要に応じて油脂及び/又はワックス類を含み、上記結合材としてカルボキシメチルセルロース酸を含有してなる非焼成色鉛筆芯である。従って、本発明の非焼成色鉛筆芯は、原料組成物として、例えば結合材、着色材、体質材、滑材等が配合される。
【0016】
本発明の非焼成色鉛筆芯の原料組成物として配合される結合材は、少なくともCMCアンモニウムを含んでいることが必要である。好適に使用できるCMCアンモニウムとしてはダイセル化学工業社製商品名「DN−100L」を例示できる。CMCアンモニウムは単独で配合してもよく、また他の結合材と併用してもよい。
【0017】
他の結合材としては、一般に非焼成色鉛筆芯の結合材として使用している公知のものを使用できるが、できれば強度、剛性のある結合材が好ましい。好適な他の結合材としては、CMCナトリウム、ニトロセルロース、メチルセルロース、硝酸セルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、アラビアガム及びこれらの誘導体等を例示することができる。これらは、合成のものであっても天然のものであってもよく、これらを単独で、又は任意に組み合わせて使用することができる。
【0018】
なお、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール、メチルセルロースなどの各種水溶性原料を結合材として配合した場合、これらの原料が水溶性であることから、高湿度下においては書き味及び着色性が低下し、さらに芯の体積が膨張する点で好ましくないことは既述の通りである。しかし、これらをCMC酸と併存させれば、非焼成色鉛筆芯における結合材全体としての耐水性能は増大することから、高湿度下における書き味及び着色性、さらには芯の体積膨張防止の改善効果が認められる。
【0019】
本発明のCMCアンモニウムは、原料組成物全量(固形分)に対して3〜15重量%配合することが好ましい。CMCアンモニウムの配合量が少ない場合は芯状への成形性が低下する一方、過剰に配合した場合は書き味が低下する点で好ましくない。なお、上記の範囲の中でも特に5〜10重量%が最適である。また、CMCアンモニウムは結合材全量に対して60重量%以上含まれていることが好ましい。この範囲より少ない場合は高湿度下における書き味及び着色性の向上の点で好ましくない。
【0020】
滑材は、書き味の滑らかさを与えるために配合されるものであり、潤滑性、白色度に優れたものであることが好ましい。具体的には合成雲母、窒化ホウ素、フッ化黒鉛等が好適に使用でき、特に合成雲母、窒化ホウ素が最適である。
【0021】
特に、合成雲母は、劈開性に優れており、これを非焼成色鉛筆芯の滑材として使用した場合、芯に適度な硬さを与えながら、筆記時においては芯の先端部が筆記面との摩擦により劈開し、書き味が向上する点で好ましい。特に、合成雲母の中でも水による膨潤性を持つ合成雲母が好ましい。また、たとえ水による膨潤性を持つ合成雲母を用いたとしても、本発明は、CMCナトリウムと比較して耐水性の高いCMC酸を結合剤として含有しているため、この点においても、湿度に対して安定した色鉛筆芯とすることができる。
【0022】
ここでいう合成雲母とは、人工的に合成したフッ素雲母系鉱物を意味し、その構造は例えば天然雲母の結晶中の結晶水をフッ素で置き換えたものとしてとらえられる層状化合物であり、その層間で剥離しやすい劈開性を有する。具体的にはフッ素金雲母、フッ素4ケイ素雲母、デニオライトが例示される。また、合成雲母には非膨潤性のものと膨潤性のものとが存在するが、膨潤性のものがより好適に使用できる。なお、膨潤性の合成雲母とは結晶層間に水分子を引き入れて膨れ上がる性質を有するものである。なお、本発明で好適に使用される合成雲母としては例えばトピー工業社製商品名「DMA−350」が挙げられる。
【0023】
滑材、特に合成雲母の配合量は限定されないが、原料組成物全量(固形分)に対して1〜15重量%配合することが好ましい。これらの範囲より過剰に含有してもこれらの範囲より少なすぎても書き味の低下を招くため好ましくない。
【0024】
着色材は、従来から公知のものが使用できる。また、有機顔料及び無機顔料を問わずこれらを単独で或いは任意に組み合わせて使用することができる。また、金属粉顔料やパール色の顔料、蛍光顔料も特に問題なく使用することができる。
【0025】
着色材は、原料組成物全量(固形分)に対して5〜25重量%配合することが好ましい。この範囲より配合量が少ない場合は発色が十分でなく、この範囲より過剰に含有した場合は書き味の低下を招くため好ましくない。この範囲の中でも特に15〜20重量%が最適である。
【0026】
体質材としては公知のものを用いることができる。例えば、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナシリケート、カオリン、ベントナイトを用いることができる。中でも、タルクを使用することが好ましい。また、これらは単独でも任意の組み合わせでも用いることができる。
【0027】
体質材は、原料組成物全量(固形分)に対して60〜80重量%配合することが好ましい。この範囲より多い場合は芯状への成形性が低下する一方、少なく配合した場合は書き味が低下するため好ましくない。
【0028】
含浸油は、着色性を向上させるために配合するものであり、公知の油脂類及び/又はワックス類が使用できる。具体的には、流動パラフィン、シリコーンオイル、α−オレフィンオリゴマー、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ケトンワックス、ワセリン、蜜ロウ、牛脂硬化油、木ロウ、カルナウバワックス、ステアリン酸など合成、天然、石油系等を問わずに使用することができる。また、これらのうち単独でも任意の組み合わせにより用いてもよい。特に、流動パラフィン、シリコーンオイル、ワセリンが最適である。また、これらをエマルジョンにして使用することもできる。
【0029】
含浸油は他の材料との関係により必要に応じて配合すればよい。含浸油は芯成形後含浸させる。なお、含浸油を少なく配合した場合は書き味が低下する点で好ましくない。
【0030】
本出願の非焼成色鉛筆芯には、その他の添加材として、混練、成形を可能にするため、例えば原料とほぼ同量の溶剤を添加することができる。溶剤としては水や各種公知の有機溶剤を使用することができる。溶剤は原料とともに配合し混練、成形した後乾燥して除去する。また、香料等各種の添加剤を配合してもよい。
【0031】
本発明の非焼成色鉛筆芯は、例えば次のような工程により製造することができる。まず、各種原料を混練する。このとき必要に応じて溶剤を添加することもできる。混練した原料組成物をプランジャー型、又はスクリュー型押し出し機で鉛筆芯に押し出し成形する。溶剤を用いている場合は、その後その溶剤を乾燥(約40℃、24時間)除去し、60〜80℃で12時間加熱後、必要に応じて油脂類及び/又はワックス類を含浸させる。
なお、上記製造方法において乾燥工程を特に設けず、例えば成形後徐々に昇温させて乾燥と共にアンモニア分子を離脱させる等、一工程で処理してもよい。
【0032】
【実施例】
次の表1に示す配合により下記の実施例及び比較例の非焼成色鉛筆芯を製造した。表1はいずれも溶剤(水)を除く原料組成物の配合量(重量%)を示している。
【0033】
各実施例及び各比較例の非焼成色鉛筆芯の具体的な製造方法は次の通りである。まず、表1に示す原料組成物を溶剤(水)とともに混練し、その後、水分約20%でプランジャー型押し出し成形機で3mmφの芯に成形した後、溶剤を乾燥、除去し、70℃で12時間加熱後、流動パラフィンを含浸させて非焼成色鉛筆芯を得た。
【0034】
なお、各実施例及び比較例で使用した原料は次の通りである。
Na-CMC・・・・カルボキシメチルセルロースナトリウム:ダイセル化学工業社製、商品名「ダイセルCMC1130」
NH4-CMC・・・・カルボキシメチルセルロースアンモニウム:ダイセル化学工業社製、商品名「DN−100L」
タルク・・・・タルク:日本タルク社製、商品名「MICROACE P−4」
窒化ホウ素・・・・窒化ホウ素:昭和電工社製、商品名「UHP−S1」
合成雲母・・・・合成雲母:トピー工業社製、商品名「DMA−350」
ウォッチングレッドSr・・・・顔料ウォッチングレッドSr(C.I.PR48:3)
フタロシアニンブルー・・・・顔料フタロシアニンブルー(C.I.PB15)
ハンザエロー10G・・・・顔料ハンザエロー10G(C.I.PY3)
【0035】
【表1】
Figure 0003922803
【0036】
(着色量試験)
温度20℃、湿度65%及び85%の条件下に1時間放置した上記実施例1〜8及び比較例1〜3を用いて筆記試験機により温度23℃、荷重300g、筆記角度70°で250m筆記したときの筆記前後でのサンプルの重量を測定し、その差を着色量(mg)とした。結果は表2に示した。
【0037】
(芯直径測定)
上記実施例1〜4及び比較例1〜3を、温度20℃、湿度65%及び85%の条件下に1時間放置した後、各サンプルの直径をダイヤルゲージを用いて測定した。結果を表2に示した。数値はmmである。
【0038】
(書き味評価)
上記各実施例及び比較例の非焼成色鉛筆芯を用いて鉛筆を製造し、その書き味の評価の試験を実施例、比較例の番号をふせて行った。評価方法は、各実施例及び比較例の非焼成色鉛筆芯を用いた色鉛筆を製造し、温度20℃、湿度65%と85%の両条件下において10名のモニターにより画用紙に筆記した際の書き味をモニターのフィーリングにより行った。結果は10名中8名以上が書き味がよいと判断したものを○、5名以上7名以下のものがよいと判断したものを△、4名以下のものがよいと判断したものを×として表2に示した。
【0039】
【表2】
Figure 0003922803
【0040】
表2から明らかなように結合材としてCMCアンモニウムを配合した実施例については、色鉛筆芯としてはCMC酸の形で含有していることから、着色量及び芯直径とも湿度による変化はみられなかった。一方、結合材にCMCナトリウムを用いた比較例においては、高湿度である85%のときには着色量が減少し、湿度によって着色性の悪化が認められた。また、比較例の色鉛筆芯では高湿度条件下では芯の直径が増大しており、芯が膨張していることが認められた。
【0041】
一方、CMCアンモニウムの配合量が原料組成物全量(固形分)に対して3重量%より少ない場合は、色鉛筆芯としては実用上使用可能ではあるものの、芯状への成形性の低下が認められた。また、CMCアンモニウムの配合量が原料組成物全量(固形分)に対して15重量%を越えて配合した場合も、色鉛筆芯としては実用上使用可能ではあるものの、書き味が低下する傾向が認められた。
【0042】
また、滑材として合成雲母を用いた実施例4は、滑材に窒化ホウ素を使用した実施例1〜3と比較して書き味の評価は良好であった。また実施例4は、着色量及び芯の直径の変化もなく、他の実施例と同様に湿度による性能の悪化はみられなかった。
【0043】
【発明の効果】
本発明は、結合材、着色材、体質材及び滑材を原料組成物として含み、必要に応じて油脂及び/又はワックス類を含み、上記結合材としてCMC酸を含有している非焼成色鉛筆芯であるので、高湿度条件下においても着色性及び書き味を損なうことがなく、かつ芯の膨張をひきおこすことがない。

Claims (8)

  1. 結合材、着色材、体質材及び滑材を原料組成物として含み、上記結合材としてカルボキシメチルセルロース酸を含有してなる非焼成色鉛筆芯。
  2. 請求項1のカルボキシメチルセルロース酸は、カルボキシメチルセルロースアンモニウムを配合原料として用い、芯成形後加熱してカルボキシメチルセルロースアンモニウムのアンモニア分子を離脱させることによって得られたカルボキシメチルセルロース酸である請求項1記載の非焼成色鉛筆芯。
  3. カルボキシメチルセルロースアンモニウムが、原料組成物全量(固形分)に対して3〜15重量%配合されている請求項2記載の非焼成色鉛筆芯。
  4. 結合材、着色材、体質材及び滑材を原料組成物として含み、さらに油脂及び/又はワックス類を含み、上記結合材としてカルボキシメチルセルロース酸を含有してなる非焼成色鉛筆芯。
  5. カルボキシメチルセルロースアンモニウムを含む結合材、着色材及び体質材を含有する原料組成物を混練し、成型した後、上記カルボキシメチルセルロースアンモニウムのアンモニア分子を離脱させる温度で加熱する非焼成色鉛筆芯の製造方法。
  6. カルボキシメチルセルロースアンモニウムのアンモニウム分子を離脱させる温度が60〜80℃である請求項5記載の非焼成色鉛筆芯の製造方法。
  7. カルボキシメチルセルロースアンモニウムを含む結合材、着色材及び体質材を含有する原料組成物を混練し、成型した後、上記カルボキシメチルセルロースアンモニウムのアンモニア分子を離脱させる温度で加熱し、その後油脂及び/又はワックス類を含浸させる非焼成色鉛筆芯の製造方法。
  8. 原料組成物を混練、成型した後、さらに乾燥工程を経て、加熱する請求項5乃至7のいずれかに記載の非焼成色鉛筆芯の製造方法。
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