JP3919668B2 - 車両用液圧マスタシリンダ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車や自動二・三輪車等のブレーキやクラッチを液圧で作動させる車両用液圧マスタシリンダに係り、詳しくは、両端が開口したシリンダ本体の一端開口部を、蓋部材で閉塞してシリンダ孔を形成する液圧マスタシリンダの構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両用液圧マスタシリンダには、両端が開口したシリンダ本体の一端開口部に、蓋部材を装着してシリンダ孔を形成したものがある。例えば、プランジャ型の液圧マスタシリンダでは、シリンダ本体の一端開口部に蓋部材が取り付けられるとともに、シリンダ本体内部にはピストンガイドが装着され、これらの内部にシリンダ孔が形成される。該シリンダ孔には、プライマリピストンとセカンダリピストンとが挿入され、これら2つのピストンの間に第1液圧室が、セカンダリピストンと蓋部材との間に第2液圧室がそれぞれ画成されている。
【0003】
蓋部材は、シリンダ本体内に挿入される筒状部とシリンダ本体の一端部を覆うフランジ部とを一体に形成したもので、筒状部の外周先端側とシリンダ本体の内周にはそれぞれねじ部が設けられ、該ねじ部の後方に、シリンダ本体の吐出ポートに連通する出力ポートが形成されている。筒状部の先端とフランジ部近傍とにはシールリングが嵌着され、筒状部の先端側をシリンダ本体にねじ込むことにより、蓋部材がシリンダ本体に装着される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
実公平8−2002号公報(第1−2頁 第1図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述のものでは、蓋部材をシリンダ本体に装着する際に、シールリングも蓋部材とともに回転しながらシリンダ本体にねじ込まれるため、シールリングが捩れて耐久性が低下する虞があった。
【0006】
また、第2液圧室に液圧が発生したときに、シリンダ孔と螺合していない蓋部材のフランジ部側と、シリンダ孔との隙間に滲み出た作動液によって、フランジ部近傍に設けられたシールリングが液圧を受ける。このため、筒状部の先端側のシリンダ孔へのねじ込み量を充分に取り、蓋部材がシリンダ孔より脱落しないようにする必要があった。
【0007】
さらに、蓋部材シリンダ孔に着脱させる際に、工具を入れる工具孔が蓋部材の底壁に形成されるが、この工具孔に埃や泥が詰まり、メンテナンスの際に工具が工具孔に挿入できないことがあった。
【0008】
そこで本発明は、蓋部材をシリンダ本体に装着する際に、シールリングが捩れることを防止し、シールリングの耐久性を向上させるとともに、蓋部材を確実にシリンダ本体に装着させながらも、蓋部材のシリンダ本体へのねじ込み量を短くしてシリンダ本体を短く形成することができ、さらに、蓋部材が緩むことがあっても、シリンダ本体から脱落すること及び、蓋部材に泥や埃が溜まることを防止できる車両用液圧マスタシリンダを提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため本発明は、両端が開口したシリンダ本体の一端開口部に、シールリングを介して蓋部材を装着して有底のシリンダ孔を形成し、該シリンダ孔にピストンを内挿し、該ピストンと蓋部材との間に液圧室を画成した車両用液圧マスタシリンダにおいて、前記蓋部材を、前記シリンダ本体に内挿される有底円筒状のスリーブと、外周にねじ部を備えたプラグとで構成し、前記スリーブに、シリンダ本体に設けた吐出ポートに連通する作動液の出力ポートを設け、該出力ポートの周囲を液密にシールする複数のシールリングを、前記シリンダ孔の周壁と前記スリーブとの間に前記出力ポートを挟んで配設し、前記スリーブを、開口側をシリンダ本体内部に向けてシリンダ本体に内挿するとともに、前記プラグを前記一端開口部に螺着して、前記スリーブを抜け止めしたことを特徴としている。
【0010】
また、前記複数のシールリングは同径のOリングを用いることができ、さらに、前記シリンダ本体の一端部に、前記プラグを覆うカバー部材を取り付けてもよく、この場合、前記カバー部材を、シリンダ本体に取り付けられた作動液を貯留するリザーバと一体に形成してもよい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一形態例を図面に基づいて説明する。図1はプランジャ型の車両用液圧マスタシリンダを示す断面図で、マスタシリンダ1のシリンダ本体2は、両端が開口した円筒状に形成され、前方に形成される先端小径部2aと、該先端小径部2aよりやや大径の小径孔2bと、シリンダ本体後方に形成される中径孔2cと大径孔2dとを備えている。先端小径部2aには、係合溝に第1カップシール3が嵌着され、小径孔2bにはシール支持体4に支持される第2カップシール5と、第1ピストンガイド6とが装着される。小径孔2bと中径孔2cとの間にはシール支持部材7が装着され、該シール支持部材7の両側に、第3カップシール8と第4カップシール9とが支持され、中径孔2cと大径孔2dとには、スリーブ10とプラグ11とで構成される蓋部材12が装着される。スリーブ10の内部には第2ピストンガイド13が装着され、前記先端小径部2a,シール支持体4,第1ピストンガイド6,シール支持部材7,第2ピストンガイド13及びスリーブ10の底壁10aとによって、シリンダ孔14が形成される。
【0012】
シリンダ孔14の内部には、プライマリピストン15とセカンダリピストン16とが挿入され、これらピストン15,16の間に第1液圧室17が、また、セカンダリピストン16とスリーブ10との間に第2液圧室18がそれぞれ画成される。
【0013】
スリーブ10は周壁10bと底壁10aとを有した有底円筒状に形成され、周壁10bの開口側と底壁側とに、周溝10c,10cが形成され、この周溝10c,10cに同径のOリング19,19(本発明のシールリング)が嵌着されている。また、周溝10c,10c間の周壁10bには、シリンダ本体2の中径孔2cに穿設された吐出ポートPに連通する出力ポート10dが穿設され、該出力ポート10dを介して吐出ポートPより、図示しない車輪のブレーキ装置へ作動液が供給される。
【0014】
プラグ11は外周に雄ねじ部11aを有した円筒体で、中央部には、工具を挿入する六角孔11bが穿設されている。スリーブ10に内挿される第2ピストンガイド13は、円筒状に形成され、第4カップシール9のリップ内に突出するカップ抑えと、第2液圧室18と出力ポート10dを繋ぐ液通路を形成するための溝部13aとを備えている。
【0015】
スリーブ10は開口側をシリンダ本体内部に向けて、シリンダ本体2の大径孔2d(本発明の一端開口部)より中径孔2cに向けて挿入され、Oリング19,19によって中径孔2cとスリーブ10とが液密にシールされる。前記大径孔2dにはめねじが形成されており、スリーブ10をシリンダ本体2に挿入後、プラグ11の雄ねじ部11aを大径孔2dのめねじに、プラグ11の端面がスリーブ10の底壁10aに当接するまでねじ込むことによって、スリーブ10がプラグ11によって抜け止めされる。
【0016】
シリンダ孔14の先端側には、前記プライマリピストン15が、後端側には前記セカンダリピストン16がそれぞれ配設される。プライマリピストン15は、先端側にプッシュロッド20の収容孔15aが、また、後端側に大径凹部15bが形成され、シリンダ本体2の先端部に取り付けたブーツ21及び第1カップシール3,第2カップシール5によって、シリンダ孔14内に液密に収容される。また、大径凹部15bを内部に備えたプライマリピストン15の後端側周壁には、複数の通孔15cが穿設され、大径凹部15bの内部には、プライマリピストン15とセカンダリピストン16とを繋ぐガイドピン22のリテーナ23が収容される。リテーナ23はガイドピン22を収容できる長さを有したコップ状に形成され、その周壁には、リテーナ内外を連通させる複数の通孔23aが穿設されている。
【0017】
セカンダリピストン16は、後端側に大径凹部16a,先端側に中径凹部16bがそれぞれ形成され、第3カップシール8及び第4カップシール9を介して、シリンダ孔14に液密に収容され、大径凹部16aには、前記ガイドピン22の先端頭部を固定したリテーナ24が取り付けられる。プライマリピストン15の大径凹部15bとセカンダリピストン16の大径凹部16aとの間には前記第1液圧室17が画成され、前記リテーナ23,24間に、第1リターンスプリング25が縮設されている。中径凹部16bを内部に備えたセカンダリピストン16の後端側周壁には複数の通孔16cが穿設され、中径凹部16bと前記スリーブ10の底壁10aとの間には前記第2液圧室が画成され、中径凹部16bと前記スリーブ10の底壁10a間に、第2リターンスプリング26が縮設される。
【0018】
シリンダ本体2の上部には一対のボス部2e,2fが突設され、該ボス部2e,2fにはグロメットシール27,27を介してリザーバ28が設けられる。シリンダ本体2の前部側周壁には、シリンダ本体前部側に形成されたボス部2eの底壁と連通する液通孔2gが穿設され、前記シール支持体4には、液通孔2gとシリンダ孔14内とに連通する連通孔4aが穿設され、第1液圧室17は、プライマリピストン15に形成した通孔15cと、前記連通孔4a及び前記液通孔2gとを介して、リザーバ28と連通している。また、シリンダ本体2の後部側周壁には、シリンダ本体後部側に形成されたボス部2fの底壁と連通する液通孔2hが穿設され、前記シール支持部材7には、液通孔2hとシリンダ孔14内とに連通する連通孔7aが穿設され、第2液圧室18は、セカンダリピストン16に形成した通孔16cと、前記連通孔7a及び前記液通孔2hとを介してリザーバ28と連通している。
【0019】
リザーバ28は、樹脂で形成されるもので、作動液の貯液室を内部に備えたリザーバ本体28aと、該リザーバ本体28aの上部開口を覆うキャップ28bとを備えている。リザーバ本体28aには、シリンダ本体2の前記プラグ11を螺着した後端側に着脱可能に被着されるカバー部材28cと、該カバー部材28cとシリンダ本体2とを繋ぐ連結部28dとが一体に形成されている。
【0020】
プライマリピストン15とセカンダリピストン16とは、非作動時には、リターンスプリング25,26の弾発力によって、図1に示される位置に配設され、第1液圧室17及び第2液圧室18は、リザーバ28とそれぞれ連通している。作動時にプッシュロッドがプライマリピストン15を押動すると、プライマリピストン15が第1液圧室17内の第1リターンスプリング25を圧縮しながらシリンダ孔14を底部方向へ前進し、これと同時にセカンダリピストン16が第2リターンスプリング26を圧縮しながらシリンダ孔底部方向への前進を開始する。セカンダリピストン16の通孔16cが第4カップシール9に塞がれると、第2液圧室18とリザーバ28との連通が遮断されることにより、第2液圧室18に液圧を発生させる。昇圧された作動液は、スリーブ10の底部10a側より、液通孔20を通り、スリーブ10の出力ポート10d及びシリンダ本体2の吐出ポートPを介して、他方のブレーキ系統に供給される。
【0021】
この前進に伴って、リターンスプリング26のセット荷重と第2液圧室18の圧力が、リターンスプリング25をうわまわると、第1液圧室17が圧縮されて第1液圧室17に液圧を発生させ、この発生液圧が一方のブレーキ系統に供給される。また、制動を解除すると、プライマリピストン15とセカンダリピストン16とは各リターンスプリング25,26により初期の位置に復帰する。
【0022】
本形態例のマスタシリンダ1では、スリーブ10とプラグ11とで蓋部材12を形成し、Oリング19,19を備えたスリーブ10をシリンダ本体2に挿入し、その後プラグ11をシリンダ本体2に螺着するので、蓋部材装着時に、Oリング19,19が捩れて損傷することを防止できる。
【0023】
また、第2液圧室18に液圧が発生した際に、スリーブ10に穿設された出力ポート10dより滲み出た作動液によって、スリーブ10の先端側と底部側とに配設された同径のOリング19,19に、略等しく液圧が係るため、スリーブ10の底壁方向に係る力を小さくすることができる。このため、プラグ11の雄ねじ部11aの長さを短くすることができ、シリンダ本体2の全長を短く抑えることができる。
【0024】
さらに、プラグ11の外側を前記カバー部材28cが覆っていることにより、プラグ11が緩むことがあってもシリンダ本体2から脱落する虞がない。また、カバー部材28cによって、プラグ11外壁に形成した六角孔11bに泥や埃が溜まることを防止でき、メンテナンスの際には、カバー部材28cをシリンダ本体2から外し、工具を六角孔11bに挿入してプラグ11を簡単に着脱することができる。さらに、カバー部材28cはリザーバ本体28aと一体に形成されているので、部品点数を増やすことなく安価に提供できるとともに、メンテナンスの際に紛失する虞がない。
【0025】
尚、本発明は、上述の形態例のように、タンデムタイプのプランジャ型マスタシリンダに適用されるものに限らず、シングルタイプのプランジャ型マスタシリンダにも適用でき、さらに、プランジャ型以外のどのようなタイプのマスタシリンダにも適用できる。
【0026】
また、本発明のシールリングは上述の形態例のようにOリングに限るものではなく、他の形態のシールリングでも差し支えなく、さらに、シールリングを嵌着する周溝は、スリーブに形成するものに限らず、シリンダ孔周壁に設けても良い。また、プラグを覆うカバー部材は、リザーバ本体と別体に形成するものでも良い。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、蓋部材をシリンダ本体に装着する際に、シールリングが捩れることを防止し、シールリングの耐久性を向上させることができる。また、蓋部材を確実にシリンダ本体に装着させながらも、シリンダ本体へのねじ込み量を短くし、シリンダ本体を短く形成することができる。さらに、蓋部材が緩むことがあっても、シリンダ本体から脱落するすることを防止するとともに、蓋部材に泥や埃が溜まることを防止し、メンテナンスの際に効率よく蓋部材を着脱できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一形態例を示すプランジャ型のマスタシリンダの断面図
【図2】 本発明の一形態例を示す要部拡大断面図
【図3】 図2のIII−III断面図
【符号の説明】
1…マスタシリンダ、2…シリンダ本体、2a…先端小径部、2b…小径孔、2c…中径孔、2d…大径孔、10…スリーブ、10a…底壁、10c…周壁、10d…出力ポート、11…プラグ、11a…雄ねじ部、12…蓋部材、14…シリンダ孔、15…プライマリピストン、16…セカンダリピストン、17…第1液圧室、18…第2液圧室、19…Oリング、25…第1リターンスプリング、26…第2リターンスプリング、28…リザーバ、28c…カバー部材、P…吐出ポート
Claims (4)
- 両端が開口したシリンダ本体の一端開口部に、シールリングを介して蓋部材を装着して有底のシリンダ孔を形成し、該シリンダ孔にピストンを内挿し、該ピストンと蓋部材との間に液圧室を画成した車両用液圧マスタシリンダにおいて、前記蓋部材を、前記シリンダ本体に内挿される有底円筒状のスリーブと、外周にねじ部を備えたプラグとで構成し、前記スリーブに、シリンダ本体に設けた吐出ポートに連通する作動液の出力ポートを設け、該出力ポートの周囲を液密にシールする複数のシールリングを、前記シリンダ孔の周壁と前記スリーブとの間に前記出力ポートを挟んで配設し、前記スリーブを、開口側をシリンダ本体内部に向けてシリンダ本体に内挿するとともに、前記プラグを前記一端開口部に螺着して、前記スリーブを抜け止めしたことを特徴とする車両用液圧マスタシリンダ。
- 前記複数のシールリングが同径のOリングであることを特徴とする請求項1記載の車両用液圧マスタシリンダ。
- 前記シリンダ本体の一端部に、前記プラグを覆うカバー部材を取り付けたことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用液圧マスタシリンダ。
- 前記カバー部材は、シリンダ本体に取り付けられた作動液を貯留するリザーバと一体に形成したことを特徴とする請求項3記載の車両用液圧マスタシリンダ。
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