JP3919298B2 - 空気入りラジアルタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は空気入りラジアルタイヤにおいて、特にビードフィラーの形状を改良することによりロードノイズ及び転がり抵抗を可及的に悪化させずに操縦安定性と乗り心地ダンピングを改善した空気入りラジアルタイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、タイヤの操縦安定性や乗り心地ダンピングを改良する手法として、ビードフィラーの断面高さを大きくしたり、サイドプライを追加したり、カーカス材の剛性や高さを増大させる等の手段が採られていた。これらの手段は、いずれもタイヤのサイドウォール部に対して剛性を与えることにより、乗り心地ダンピング即ち凹凸路面において腰のある弾力性をタイヤに現出し、タイヤの振動を少なくして、しかも操縦安定性を確保するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしいずれの手段も、タイヤの1次振動の固有値が増大し、また大幅な重量増加を伴うことから、ロードノイズ及びタイヤの転がり抵抗が悪化する問題があった。従って、上記従来の技術では、タイヤの操縦安定性や乗り心地ダンピングと、ロードノイズ及びタイヤの転がり抵抗との両立が困難であった。
【0004】
本発明の課題は、ロードノイズ及びタイヤの転がり抵抗を可及的に悪化させずに、タイヤの操縦安定性や乗り心地ダンピングを向上することができる空気入りラジアルタイヤを提供するところにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ビードフィラーの断面形状を特定の形状とし、かつ一定の位置に配置することにより、上記問題点を解決できる知見を得た。すなわち、本発明は、1対のビードコア間に跨ってトロイド状に延びるカーカスと、上記ビードコアに隣接し、カーカスに沿ってタイヤ最大幅位置を超えて延びるビードフィラーを備えた空気入りラジアルタイヤにおいて、上記ビードフィラーの上部をタイヤ最大幅位置とオーバーラップして配置される断面細幅部で構成し、上記断面細幅部は、その上端部と下端部のそれぞれの断面幅が0.8mm〜1.2mmであって、上記ビードフィラーの下部を構成する断面太幅部に連続し、前記断面細幅部の上端部と下端部の間の断面高さAに対するビードフィラーの断面高さBの比A/Bが0.15〜0.35であり、前記断面細幅部の上端部と下端部の間の高さAが15 mm 以上であることを特徴とする空気入りラジアルタイヤである。
【0006】
従来のビードフィラーの断面形状は、例えば図3に示す様に、ビードフィラー11の上部11aは、下部11bに向かって漸次断面幅が大きくなる形状となっている。従って、ビードフィラー11の高さを増大していけばサイドウォール部12の剛性も増大することから操縦安定性及び乗り心地ダンピングは向上するが、ビードフィラー11の高さの増大は重量増となり、またタイヤの1次振動固有値の増大となってあらわれロードノイズの原因ともなる。なお、図3において、13はタイヤ最大幅位置である。
【0007】
本発明では、ビードフィラーの上部は従来の様に太幅の下部に向かって漸次断面幅が大きくなる断面形状とはせずに、断面幅を0.8 mm 〜1.2 mmとして、この断面幅が0.8 mm 〜1.2 mmであるビードフィラーの上部をタイヤ最大幅位置とオーバーラップして配置することによって、ビードフィラーの高さが増大してもタイヤの重量増と1次振動固有値の増大を押さえている。また、本発明のタイヤは、ビードフィラーの上部の断面幅を0.8 mm 〜1.2 mmにしているが、この0.8 mm 〜1.2 mm である断面幅を有するビードフィラーの上部をタイヤ最大位置にオーバーラップして配置することにより、サイドウォール部の剛性を確保し、操縦安定性及び乗り心地ダンピングの向上を図っている。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係るラジアルタイヤの一実施形態を示す部分断面図である。図2は図1における要部拡大断面図である。
【0009】
図1において、1は1対のビードコア2、2間に跨ってトロイド状に延びるカーカスであり、3は上記ビードコア2に隣接し、カーカス1に沿ってタイヤ最大幅位置4を超えて延びるビードフィラーである。
【0010】
図1及び図2に示す様に、ビードフィラー3の上部は、断面細幅部5で構成されており、当該断面細幅部5においてタイヤ最大幅位置4とオーバーラップして配置されている。また、ビードフィラー3の断面細幅部5は、その上端部6と下端部7のそれぞれの断面幅W1、断面幅W2は0.8 mm 〜1.2 mmであって、ビードフィラー4の下部を構成する断面太幅部8に連続して構成されている。なお、図1において、9はベルトであり、10はベルト補強層である。
【0011】
図1及び図2において、断面細幅部5の上端部6と下端部7の間の高さAに対するビードフィラーの断面高さBの比A/Bは、0.15〜0.35が好ましい範囲である。上記のA/Bの比が0.15未満の場合はたとえ断面細幅部5がタイヤ最大幅位置4とオーバーラップして配置されていても断面細幅部5の高さがないため、断面太幅部8の影響が相対的に増大するため重量増の原因となってタイヤの転がり抵抗が増大し、またロードノイズも悪化する傾向にある。一方、上記のA/Bの比が0.35を超える場合は、断面細幅部5の高さがありすぎるため、サイドウォール部の剛性が低下し、操縦安定性と乗り心地ダンピングの向上が得難い傾向にある。なお、本発明において、上記の断面細幅部の上端部と下端部の間の高さA並びにビードフィラーの断面高さBは、いずれも、測定タイヤをJATMA規定の標準リムに装着し、空気圧30kPa時のタイヤ形状にタイヤ解体形状を合わせて測定した値をもって示している。
【0012】
また、断面細幅部5の上端部6と下端部7のそれぞれの具体的な断面幅W1、断面幅W2も、タイヤサイズに応じて変動するが、乗用車用タイヤを基準にすれば、0.8mm〜1.2mmに設計することが好ましい。
【0014】
また、断面細幅部5の上端部6と下端部7間の高さAもタイヤサイズに応じて変動するが、乗用車用タイヤではロードノイズの低減化を図り、タイヤの転がり抵抗の悪化を防止するために15mm以上(例えば、15mm〜20mm)であることが好ましい。更に詳細にいえば、断面細幅部の上端部と下端部の間の高さAに対するビードフィラーの断面高さBの比A/Bが0.15〜0.35であることを条件として、上記の高さAは15mm以上であることが好ましい。
【0015】
ビードフィラーの断面高さBは、通常タイヤに使用されているものであれば採用できる。具体的には、例えば30〜60mmの断面高さBを有するビードフィラーが使用できる。
【0016】
【実施例】
図1に示す構造を備え、表1に示すビードフィラーを有するタイヤサイズ185/65R14のラジアルタイヤを試作し、転がり抵抗、ロードノイズ、操縦安定性及び乗り心地ダンピングについてそれぞれ評価した。
【0017】
表1中、タイヤ横剛性及びタイヤ前後剛性は、タイヤに350kgの荷重を付加し、それぞれ横方向、前後方向にたわませた時の単位長さ当たりの力を、比較例1をコントロール100として換算した値である。値が大きいほど剛性が高いことを示す。
【0018】
転がり抵抗は、標準リム(14×6JJ)に組み付け、ホット状態で200kPaの空気圧を充填し、ドラム式転がり抵抗試験機で測定し(周囲温度は24±1°C)、比較例1を100として指数表示した。値が大きい程転がり抵抗が低いことを示す。
【0019】
ロードノイズは、2000ccの国産車両にタイヤを装着し、空気圧200kPa、2名乗車にて粗面路(ロードノイズ評価路)を走行し、前席中央部のマイク位置で評価した。試験車の速度は60km/hである。表1のロードノイズは、比較例1タイヤを基準として評価しており、比較例1と同等であれば基準並であり、比較例1との間に差がある場合はロードノイズ差で示している。ロードノイズ差のプラス値が大きくなればなるほどロードノイズが大きくなっていることを示す。
【0020】
操縦安定性は、2名のパネラーによるアスファルト舗装路面走行時における運転時の操作性を5点満点の感応評価により行って評価した。値が大きいほど操縦安定性に優れていることを示す。
【0021】
乗り心地ダンピングは、操縦安定性と同じく、2名のパネラーによるアスファルト舗装路面走行時における運転時の乗り心地のダンピング性能を5点満点の感応評価により行って評価した。値が大きいほど優れていることを示す。
【0022】
【表1】
【0023】
表1より、実施例タイヤは、比較例タイヤと比較して、ロードノイズ及び転がり抵抗の悪化を可及的に阻止しつつ、操縦安定性と乗り心地ダンピングが向上している。特に、断面細幅部の上端部と下端部の間の高さAに対するビードフィラーの断面高さBの比A/Bは、0.15〜0.35が好ましい範囲である。同範囲のタイヤは、比較例1タイヤに比してロードノイズ及び転がり抵抗の悪化がなく、しかも操縦安定性と乗り心地
ダンピングが向上している。上記のA/Bの比が0.15未満の場合は、断面細幅部がタイヤ最大幅位置とオーバーラップして配置されていても断面細幅部の高さがないため、断面太幅部の影響が相対的に増大することから重量増の原因となってタイヤの転がり抵抗が増大し、またロードノイズも悪化する傾向が認められる。一方、上記のA/Bの比が0.35を超える場合は、断面細幅部の高さがありすぎるため、サイドウォール部の剛性が低下し、操縦安定性と乗り心地ダンピングの向上が得難い傾向が生じる。また、断面細幅部の上端部と下端部の間の高さAが15mm未満のタイヤでは、タイヤの転がり抵抗が増大し、またロードノイズも悪化する傾向が認められる。また、断面細幅部の上端部と下端部のそれぞれの断面幅が0.8mm未満のタイヤ(参考例2)では、操縦安定性と乗り心地ダンピングの向上がさほど得られない。断面細幅部の上端部と下端部のそれぞれの断面幅が1.2mmを超えるタイヤ(参考例1)では、縦安定性と乗り心地ダンピングは向上しているが、タイヤの転がり抵抗が増大し、ロードノイズも悪化する傾向が認められる。
【0024】
【発明の効果】
以上の通り、本発明は、1対のビードコア間に跨ってトロイド状に延びるカーカスと、上記ビードコアに隣接し、カーカスに沿ってタイヤ最大幅位置を超えて延びるビードフィラーを備えた空気入りラジアルタイヤにおいて、上記ビードフィラーの上部をタイヤ最大幅位置とオーバーラップして配置される断面細幅部で構成し、上記断面細幅部は、その上端部と下端部のそれぞれの断面幅が0.8mm〜1.2mmであって、上記ビードフィラーの下部を構成する断面太幅部に連続し、前記断面細幅部の上端部と下端部の間の断面高さAに対するビードフィラーの断面高さBの比A/Bが0.15〜0.35であり、前記断面細幅部の上端部と下端部の間の高さAが15 mm 以上である空気入りラジアルタイヤであるので、ロードノイズ及び転がり抵抗を可及的に悪化させずに操縦安定性と乗り心地ダンピングを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るラジアルタイヤの一実施形態を示す部分断面図である。
【図2】図1における要部拡大断面図である。
【図3】従来のビードフィラーが配置されたラジアルタイヤの一例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
1 カーカス
2 ビードコア
3 ビードフィラー
4 タイヤ最大幅位置
5 断面細幅部
6 上端部
7 下端部
8 断面太幅部
A 断面細幅部の上端部と下端部の間の高さ
B ビードフィラーの断面高さ
Claims (1)
- 1対のビードコア間に跨ってトロイド状に延びるカーカスと、上記ビードコアに隣接し、カーカスに沿ってタイヤ最大幅位置を超えて延びるビードフィラーを備えた空気入りラジアルタイヤにおいて、上記ビードフィラーの上部をタイヤ最大幅位置とオーバーラップして配置される断面細幅部で構成し、上記断面細幅部は、その上端部と下端部のそれぞれの断面幅が0.8mm〜1.2mmであって、上記ビードフィラーの下部を構成する断面太幅部に連続し、前記断面細幅部の上端部と下端部の間の断面高さAに対するビードフィラーの断面高さBの比A/Bが0.15〜0.35であり、前記断面細幅部の上端部と下端部の間の高さAが15 mm 以上であることを特徴とする空気入りラジアルタイヤ。
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