JP3917841B2 - 小型艇 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、艇体の略中央に鞍乗り式のシートを備え、このシートの下方にエンジンを艇体の前後方向に向けて搭載し、このエンジンに設けた複数のシリンダに連通する各々の吸気管をエンジンの側面から延出させた小型艇に関する。
【0002】
【従来の技術】
小型艇として、例えば特開平8−48287号公報「小型滑走艇」が知られている。以下、この公報に示す図1を次図に再掲(但し、符号は振り直す)して小型艇を詳しく説明する。
【0003】
図13は従来の小型艇の断面図である。小型艇100は、デッキ101の略中央に左右の側壁102,103を備え、左右の側壁102,103の上端に鞍乗り式のシート104を備え、このシート104の下方にエンジン105を艇体106の前後方向に向けるとともにシリンダ105a・・・(・・・は複数を示す)を右側に傾斜させ、エンジン105の左側空間107を大きく開けて、この左側空間107に吸気系機器108を設けることで、吸気系機器108が艇体106の中心106aから左側に大きく張出すことを防ぐように構成している。
【0004】
艇体106の中心106aから吸気系機器108が左側に大きく張出すことを防ぐことで、デッキ101の左右の側壁102,103の間隔を小さく抑えることができる。よって、鞍乗り式のシート104に運転者が跨がり、運転者の足をデッキ101の足載せ部101a,101aに載せた際に、運転者は自然な姿勢を保つことが可能になる。
【0005】
ところで、吸気系機器108は、シリンダ105a・・・にエアファンネル108a・・・を介して吸気サイレンサ108bを連通し、この吸気サイレンサ108bに吸気管108cを連通したものである。
この吸気系機器108よれば、吸気管108cの吸込口108dから吸気管108c内に吸込んだ空気を吸気サイレンサ108b内に導き、吸気サイレンサ108b内に導いたエアをエアファンネル108a・・・を介してシリンダ105a・・・内に導入することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、小型艇100に搭載するエンジン105のなかには、シリンダ105a・・・内に空気を効率よく取入れるためにエアファンネル108a・・・をある程度の長さに設定したものがある。
【0007】
この場合、エアファンネル108a・・・が艇体106の中心106aから大きく左側に突出することになり、大きく突出したエアファンネル108a・・・を左側壁102内に収容するためには、左側壁102が艇体106の中心106aから大きく張出してしまう。
このため、鞍乗り式のシート104に運転者が跨がった際に、運転者の脚部が左側壁102に当たって、運転者が自然な姿勢でシート104に跨がることができない。
【0008】
また、小型艇を運転中に艇体内に海水や水が侵入することが考えられる。艇体内に海水や水が侵入すると、エアファンネル108a・・・から海水や水がシリンダ105a・・・内に侵入することが考えられる。
このため、万が一艇体106内に海水や水が侵入した場合でも、シリンダ105a・・・内に海水や水が侵入することを防ぐことができる小型艇100の実用化が望まれていた。
【0009】
そこで、本発明の目的は、艇体の左右の側壁の間隔を小さく抑えた状態でエアファンネルを比較的長く確保することができ、また万が一艇体内に海水や水が侵入した場合でもエンジン内に海水や水が侵入することを防止できる小型艇を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために請求項1は、艇体の略中央に鞍乗り式のシートを備え、このシートの左右下縁からカバー状の側壁を下げ、前記シートの下方にエンジンをそのクランク軸の軸線が艇体の前後方向に向けて搭載し、このエンジンに設けた複数のシリンダを艇体の前後方向に並べ、これらのシリンダに連通する各々の吸気管をエンジンの上部の側面から延出させた小型艇において、前記各々の吸気管を、前記シート下の側壁に沿わせて湾曲させるとともに、前方に向けて延出させ、前記各々の吸気管を、前記エンジンと前記側壁との間に配置されたエアボックスで囲い、このエアボックスに前記各々の吸気管の基端を差し込む差込孔と、差込孔の前方にエアを導入するエア取込口とを設けたことを特徴とする。
【0011】
吸気管をシート下の側壁に沿わせて湾曲させることで、シート下の側壁を外側に張出さなくても、吸気管を前方に向けて長く延ばすことができる。これにより、シート下の左右の側壁の間隔を小さく抑えることができるので、運転者は自然な姿勢で鞍乗り式のシートに跨がることができる。
【0013】
請求項2は、各々の吸気管の入口を密に配列するために前記入口を千鳥に配置したことを特徴とする。
【0014】
各々の吸気管の入口を千鳥に配置することで、それぞれの吸気管の入口を艇体の前後方向に対して密に配列することができる。このため、各々の吸気管を囲ったエアボックスをコンパクトにすることができるので、吸気管を前方に向けて長く延ばした場合でも、エアボックスを艇体内の所望位置に配置することが可能になる。
このため、シート下の左右の側壁の間隔を小さく抑えることができるので、運転者は自然な姿勢で鞍乗り式のシートに跨がることができる。
【0015】
請求項3は、各々の吸気管を上り勾配で前方に向けて延ばしたことを特徴とする。
【0016】
各々の吸気管を上り勾配で前方に向けて延ばすことで、各々の吸気管の入口を高い位置に配置することができる。これにより、艇体内に、万が一海水や水が侵入した場合でも、海水や水が各吸気管の入口まで到達し難くすることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る小型艇の側面図である。
小型艇10は、艇体11の前部12に燃料タンク15を取付け、この燃料タンク15の上方に操舵ハンドル16を備え、この操舵ハンドル16の後方に鞍乗り式のシート17を備え、このシート17の下方にエンジン18を設け、このエンジン18後方の艇尾13にジェット推進機室20を設け、このジェット推進機室20にジェット推進機21を備えたジェット推進艇である。
【0018】
ジェット推進機21は、艇底14の入口14aから後方へ延びたハウジング22を有し、このハウジング22内にインペラ23を回転自在に取り付け、インペラ23をエンジン18の駆動軸24に連結したものである。
エンジン18でインペラ23を回転することにより、艇底14の入口14aから水を吸引し、吸引した水をハウジング22を通してジェット水としてステアリングノズル26に導く。ステアリングノズル26に導いたジェット水をステアリングノズル26から噴射することにより、小型艇10を推進させることができる。
【0019】
図2は本発明に係る小型艇の要部を示す背面図である。
小型艇10は、艇体11の略中央に鞍乗り式のシート17を備え、このシート17の左右下縁17a,17bからそれぞれカバー状の左右側壁30,32を下げ、シート17の下方にエンジン18をそのクランク軸の軸線が艇体11の前後方向に向けて搭載し(図1も参照)、このエンジン18に設けた複数のシリンダ18a・・・(図1も参照)を艇体11の前後方向に並べ、これらのシリンダ18a・・・に連通する各々の吸気管(すなわち、エアファンネル)35,36,37,38をエンジン18の側面19から延出させ、これらの吸気管35〜38を収納するエアボックス40をエンジン18と左側壁(側壁)30との間の空間41に備える。
【0020】
エンジン18を艇体11の右側に傾斜させることにより、エンジン18と左側壁30との間の空間41を大きく確保することができる。この空間41に吸気管35〜38やエアボックス40を設けることで、吸気管35〜38やエアボックス40が艇体11の中心10aから左側に大きく張出さないようにできる。
よって、左右の側壁30,32の間隔Sを小さく抑えることができるので、鞍乗り式のシート17に運転者が跨がり、運転者の足をデッキの足載せ部28,28に載せた際に、運転者は自然な運転姿勢を保つことが可能になる。
【0021】
また、エアボックス40を、エンジン18に取付けたボックス本体42と、ボックス本体42に着脱自在に取付けた蓋体43と、ボックス本体42の前部に設けた膨出部44とで構成した。このエアボックス40は、艇体11の左側壁30に対向させて蓋体43を配置した。
膨出部44は、ボックス本体の前部に一体形成した支えフレーム45と、この支えフレーム45に着脱自在に取付けた膨出カバー46とからなる。
加えて、蓋体43を取付けるボックス本体42の取付面47を左側壁30と略平行に形成した。
【0022】
図3は本発明に係る小型艇の要部を示す側面図であり、蓋体43に対向する左側壁(すなわち、シート下の側壁)30に開口31を形成し、この開口31にサイドカバー50を着脱自在に備えた状態を示す。
サイドカバー50の周縁に形成した差込孔51・・・にボルト(図示しない)を差込み、差込孔51・・・に差込んだボルトを左側壁30の取付孔33・・・にねじ結合することにより、サイドカバー50を左側壁30に取付けて、開口31を閉じることができる。
一方、ボルトを緩めて取付孔33・・・から外すことにより、サイドカバー50を左側壁30から外して、左側壁30の開口31を開けることができる。
【0023】
また、エアボックス40の蓋体43を左側壁30に対向させて配置し、左側壁30に開口31を形成し、開口31にサイドカバー50を着脱自在に備えたので、左側壁30からサイドカバー50を外して開口31を開けることにより、この開口31を利用して、ボックス本体42から蓋体43を簡単に外すことができる。
【0024】
ここで、小型艇10は鞍乗り式のシート17に運転者が跨がり易くするために、エアボックス40の幅を狭くすることが要求されるが、エアボックス40の側面は比較的大きく確保することができる。蓋体43はエアボックス40の側面に配置しているので、蓋体43の形状を大きく確保することができる。
このように、蓋体43を簡単に外すことができ、さらに蓋体43を外すことによりボックス本体42に大きな開口を開けることができるので、ボックス本体42内の整備・点検を簡単におこなうことができる。
【0025】
図4は本発明に係る小型艇の要部を示す斜視図であり、エンジン18に設けた4個のシリンダ18a・・・を艇体11(図1に示す)の前後方向に並べ、これらのシリンダ18a・・・に連通する各々の吸気管35〜38をエンジン18の側面19から延出させ、これらの吸気管35〜38をエアボックス40のボックス本体42に収納し、ボックス本体42の取付面47から蓋体43を外した状態を示す。
以下、それぞれの吸気管35〜38を、後方から前方に向けて第1〜第4吸気管35,36,37,38として説明する。
【0026】
蓋体43をボックス本体42に取付ける際には、蓋体43をボックス本体42の取付面47に当接し、この状態でボルト48・・・を締め付けることによりボックス本体42に蓋体43を取付けることができる。
このように、ボックス本体42に蓋体43を取付けることで、ボックス本体42に蓋体43で第1〜第4吸気管35,36,37,38を覆うことができるので、第1〜第4吸気管35,36,37,38に海水や水がかかることを防止できる。
【0027】
第1〜第4の吸気管35〜38をそれぞれ基部35a〜38a近傍において湾曲させることにより、各々の吸気管35〜38を上り勾配で前方に向けて延出することができる。これにより、第1〜第4の吸気管35〜38を艇体10の中心10a(図1に示す)から左側に大きく突出させることなく、第1〜第4の吸気管35〜38の長さを大きく確保することができる。
【0028】
図5は本発明に係る小型艇の要部を示す分解斜視図である。
エアボックス40は、エンジン18の側面19に取付け可能で第1〜第4の吸気管35〜38を収納可能なボックス本体42と、このボックス本体42の取付面47に着脱可能な蓋体43と、ボックス本体42の前端部に一体形成した支えフレーム45と、この支えフレーム45に着脱可能な膨出カバー46と、支えフレーム45と膨出カバー46との間に挟持する吸気用トラップ55と、支えフレーム45のブリーザ開口58に取付けたブリーザ60とからなる。
なお、前述したように支えフレーム45と膨出カバー46とで膨出部44を構成する。
【0029】
ボックス本体42は、外周壁64を略矩形状に形成し、この外周壁64のエンジン18側の内側端面を内壁62で塞ぎ、左側壁30(図2に示す)側の外周壁64の外側端面(すなわち、取付面)47を開口状態とし、内壁65に、ボックス本体42の後端42aから前方に向けて第1〜第4の差込孔66a〜66dを4個並べ、第4の差込孔66dの前方に略矩形のエア取込口67を形成したものである。
【0030】
支えフレーム45は、ボックス本体42の前端部42bから前方に向けて張出し、ボックス本体42の近傍にブリーザ60及びブリーザ用トラップ61を取付けるためのブリーザ開口58を備え、外周に沿って膨出カバー46を取付けるための取付孔62・・・を備える。
【0031】
このボックス本体42によれば、内壁65の取付孔65a・・・にボルト(図示しない)を差込んで、ボルトでボックス本体42をエンジン18の側面19に取付け、内壁65の第1〜第4の差込孔66a〜66dに第1〜第4の吸気管35〜38のそれぞれの基端35a〜38aを差込むとともに、それぞれの基端35a〜38aをエンジン18の吸気口18b・・・に差込み、この状態で第1〜第4の吸気管35〜38を固定部材68で内壁65に取付ける。
【0032】
第1〜第4の吸気管35〜38の基端35a〜38aにそれぞれフランジ35b〜38b(図6に示す)を形成した。これらのフランジ35b〜38bを固定部材68で押圧することで、第1〜第4の吸気管35〜38を固定することができる。
このように、第1〜第4の吸気管35〜38と固定部材68とを別部材にすることで、第1〜第4の吸気管35〜38の形状を簡素にすることができる。よって、第1〜第4の吸気管35〜38をブロー成形で簡単に製造することが可能になり、第1〜第4の吸気管35〜38のコストを抑えることが可能になる。
【0033】
一方、通常の吸気管は、一般に固定部材を基端に一体に備えている。よって、吸気管の形状が複雑になり、ブロー成形で製造することは難しい。このため、通常の吸気管のコストを抑えることは難しい。
なお、第1〜第4の吸気管35〜38の成形方法はこれに限らないで、射出成形やその他の成形方法で製造することも可能である。
【0034】
さらに、支えフレーム45に吸気用トラップ55を挟持した状態で膨出カバー46を取付ける(図4参照)。膨出カバー46は、下部71を艇体11(図12に示す)内側に膨出することにより、側面視で略三角形に形成し、下部71に吸込口72を備え、取付面73の開口74に吸気用トラップ55を支えるためのルーバ75を備え、外周に支えフレーム45の取付孔62・・・に対向させて取付孔76・・・を形成したものである。
【0035】
吸気用トラップ55は、一例として2枚のパンチングメタル56a、56b間に金網ネット56c(図6も参照)を挟み込み、これらのパンチンングメタル56a,56b及び金網ネット56cを枠体56dで一体に取付けた矩形状の部材である。
これにより、支えフレーム45と膨出カバー46との間に吸気用トラップ55を挟持した状態で、支えフレーム45の取付孔62・・・と、膨出カバー46の取付孔76・・・とにボルト77・・・(図4に示す)を差込むことにより、支えフレーム45に膨出カバー46を取付けることができる(図6も参照)。
【0036】
ブリーザ用トラップ61は、吸気用トラップ55と同様に、矩形状のパンチングメタル63a(手前側のみを図示する)間に金網ネット(図示しない)を挟み込み、これらのパンチンングメタル63a及び金網ネットを枠体63bで一体に取付けたものである。
【0037】
このブリーザ用トラップ61は、膨出部44の支えフレーム45にブリーザ60を取付けることで、ブリーザ60と支えフレーム45との間に備える。膨出部44の支えフレーム45にブリーザ用トラップ60を介してブリーザ60を備えたので、ブリーザ60のパイプ60aを介して膨出部44内にエンジンからのブリーザパイプを開放できる。
【0038】
図4に戻って、膨出カバー46の下部71に形成した吸込口72からエアを膨出部44内に吸込み、膨出部44内に導入したエアを吸気用トラップ55を介してエア取込口67からボックス本体42内に導入する。ボックス本体42内に導入したエアは、第1〜第4の吸気管35〜38のそれぞれの入口35c〜38cから第1〜第4の吸気管35〜38内に導き、第1〜第4の吸気管35〜38を介してそれぞれのシリンダ18a・・・(図1に示す)内に導入する。
【0039】
この際に、膨出部44内に吸気用トラップ55を備えているので、エアに含まれている塵埃などを吸気用トラップ55で除去することができる。
一方、万が一火の粉が膨出カバー46側に流れ込んだ場合にも吸気用トラップ55やブリーザ用トラップ61(図5に示す)で火の粉を補捉することができる。
【0040】
ここで、図2戻って、膨出カバー46を艇体11の内側に膨出させ、その下部71に吸込口72を形成したので、吸込口72を艇体11の内側に配置することができる。このため、吸込口72をエンジン18側に向けることができ、吸込口72を外側に突出しないようにできる。
このため、万が一小型艇10が反転した際に、小型艇10を反転状態から正常な状態に起こす場合に、吸込口72が海水の中で移動する際の抵抗を小さくすることができる。よって、小型艇10を反転状態から正常な状態に簡単に起こすことができる。
【0041】
図6は本発明に係る小型艇の要部を示す断面図であり、第1〜第4の吸気管35〜38を基端35a〜38aで湾曲させてシート17下の左側壁30に沿わせて上り勾配で上方に延ばし、蓋体43を左側壁30に対向させて配置し、この蓋体43に対向する左側壁30に開口31を形成し、この開口31にサイドカバー50を着脱自在に取付け、蓋体43を取付けるボックス本体42の取付面47を、左側壁30と略平行に形成し、ボックス本体42(すなわち、第4吸気管38)の前方部位に支えフレーム45を一体形成し、この支えフレーム45に取付けた膨出カバー46を艇体11の幅方向内側へ膨出し、この膨出カバー46の下部71にエアの吸込口72を開口した状態を示す。
【0042】
第1〜第4の吸気管35〜38を基端35a〜38aで湾曲させてシート17下の左側壁30に沿わせて上り勾配で上方に延ばすことで、第1〜第4の吸気管35〜38の入口35c〜38cを基端35a〜38aより高い位置に配置することができる。
【0043】
これにより、艇体11内に、万が一海水や水が侵入した場合でも、海水や水が第1〜第4の吸気管35〜38の入口35c〜38cまで到達し難くすることができる。このため、第1〜第4の吸気管35〜38の入口35c〜38cから海水や水が第1〜第4の吸気管35〜38内に侵入することをことを防ぐことができる。
【0044】
サイドカバー50は、図3に示すように上端52を除いた周縁にシール材53を取付け、このシール材53を左側壁30に重ね合せるとともに、上端52の折曲部52aの前端を左側壁30の段部30aに載せ、この状態でボルト・ナット54a・・・,54b・・・で左側壁30に固定する部材である。
左側壁30からサイドカバー50を外して開口31を開けることにより、この開口31を利用して、ボックス本体42から蓋体43を簡単に外すことができる。
【0045】
第1〜第4の吸気管35〜38の基端35a〜38aにそれぞれフランジ35b〜38b(図7も参照)を形成することにより、これらのフランジ35b〜38bを固定部材68で押圧することで、第1〜第4の吸気管35〜38を固定することができる。
【0046】
図7は本発明に係る小型艇の要部を示す側面図であり、ボックス本体42から蓋体43を外した状態を示す。
エアボックス40は、ボックス本体42の下面42c及び蓋体43の下面43aをエア取込口67に向けて傾斜角θ1の下り勾配に構成したものである。
ボックス本体42の下面42c及び蓋体43の下面43aをエア取込口67に向けて傾斜角θ1の下り勾配にすることで、万が一エアボックス40内に海水や水が侵入した場合にも、エアボックス40内に侵入した海水や水をボックス本体42の下面42c及び蓋体43の下面43aに沿ってエア取込口67まで効率よく導いて、エア取込口67から膨張部44内に流出することができる。
【0047】
ここで、膨出部44の下部71に吸込口72を備えているので、膨出部44に流入した海水や水を吸込口72から膨出部44の外部に確実に排出することができる。このため、エアボックス40内や膨出部44内に海水や水が溜まることを防止できる。
【0048】
加えて、ボックス本体42及び蓋体43の下面42c,43aを、図6に示すように艇体内側、すなわちエア取込口67に向けて傾斜角θ2の下り勾配にすることで、エアボックス40内の海水や水をエア取込口67まで効率よく導いて、膨出部44に流入した海水や水を吸込口72から膨出部44の外部により一層確実に排出することができる。
【0049】
第1〜第4の吸気管35〜38を、図6で説明したようにシート17下の左側壁30に沿わせて基端35a〜38aで湾曲させることで、シート17下の左側壁30(図6に示す)を外側に張出さなくても、第1〜第4の吸気管35〜38を上方に長く延ばすことができる。
これにより、シート17下の左右の側壁30,32の間隔S(図2に示す)を小さく抑えることができるので、運転者は自然な姿勢で鞍乗り式のシート17に跨がることができる。
【0050】
図8は本発明に係る小型艇の要部を示す平面図であり、ボックス本体42から蓋体43を外した状態を示す。
第1〜第4の吸気管35〜38は、をそれぞれの入口35c〜38cが千鳥になるように湾曲に形成したものである。すなわち、第1、第3の吸気管35,37は、基端35a,37aで緩やかな湾曲に曲げた同一形状のチューブであり、第2、第4の吸気管36,38は、基端36a,38aで比較的急激な湾曲に曲げた同一形状のチューブである。
【0051】
第1、第3の吸気管35,37を穏やかな湾曲に曲げ、第2、第4の吸気管36,38を比較的急激な湾曲に曲げることで、第1、第3の吸気管35,37のそれぞれの入口35c,37cを小型艇10の中心10a(図2参照)から離れた位置に配置し、第2、第4の吸気管36,38の入口36c,38cを小型艇10の中心10aに近づけた位置、すなわち入口35c,37cから距離S1だけ艇体11の内側に配置することができる。
【0052】
これにより、第1〜第4の吸気管35〜38のそれぞれの入口35c〜38cを千鳥に配置することができ、それぞれの入口35c〜38cを密に配列することができる。
よって、第1〜第4の吸気管35〜38を収容するボックス本体42をコンパクト、すなわち長さLを小さく抑えることができる。よって、第1〜第4の吸気管35〜38を長く確保して上方に長く延ばしても、エアボックス40を艇体11の中央に寄せて配置することが可能になる。
このため、シート17下の左右の側壁30,32の間隔S(図2に示す)を小さく抑えることができるので、運転者は自然な姿勢でシート17に跨がることができる。
【0053】
これに対して、第1〜第4の吸気管35〜38のそれぞれの入口35c〜38cを直線状に配置すると、ボックス本体の長さLが大きくなってしまい。例えばボックス本体を艇体の中央に寄せようとすると、艇体の中央側に比較的大きな空間を確保する必要がある。しかし、艇体の中央側に比較的大きな空間を確保することは難しく、ボックス本体を艇体の外側に配置することになる。
このため、シート17下の左右の側壁の間隔を小さく抑えることができなくなり、運転者は自然な姿勢でシート17に跨がることができない。
【0054】
加えて、エアボックス40は、第4の吸気管38の前方部位に艇体11(図2に示す)の幅方向内側へ膨出した膨出カバー46を備える。よって、膨出カバー46をエンジン18の前方の空間79に配置することができるので、艇体11の幅方向内側、すなわちエンジン18側へ膨出しても、膨出カバー46はエンジン18と干渉しない。
【0055】
このため、膨出カバー46を小型艇10の中心10a(図2に示す)側に近づけることができるので、シート17下から下方に延びる左右の側壁30,32間の間隔Sを小さく抑えることができる。これにより、運転者は自然な姿勢でシート17に跨がることができる。
【0056】
エアボックス40の内壁近傍にスロットルバルブ88(図9に示す)を備え、このスロットルバルブ88にスロットルケーブル80の先端80aを連結し、スロットルケーブル80の基端を操舵ハンドル16のスロットルレバー81(図9に示す)に連結する。
【0057】
図9は本発明に係る小型艇のスロットルケーブルを示す断面図である。
スロットルケーブル80は、アウタケース82の先端82aに調整ナット83を介して連結部84を連結し、この調整ナット83をロックナット85でロックし、ロックナット85及び調整ナット83をブーツ86で覆い、これらアウタケース82、調整ナット83及び連結部84にインナケーブル87を摺動自在に取付け、インナケーブル87の基端87aを操舵ハンドル16のスロットルレバー81に連結し、先端87bをスロットルバルブ88のレバー(図示しない)に連結する。
【0058】
ロックナット85を緩めて調整ナット83を回転することにより連結部84の連結部位84aをスロットルバルブ88の取付け位置88aに調整することができる。この調整ナット83を、図8に示すようにエンジン18の上方に配置することにより、調整ナット83をエンジン18の上側から簡単に操作することができる。
【0059】
スロットルケーブル80でスロットルレバー81をスロットルバルブ88のレバーに連結することにより、スロットルレバー81でインナケーブル87を操作してスロットルバルブ88のレバーを制御し、それぞれのシリンダに供給するエアと燃料との混合気体の量を調整することができる。
【0060】
次に、小型艇の作用を図10〜図12に基づいて説明する。
図10は本発明に係る小型艇の作用を示す第1作用説明図であり、エアを吸気する状態を示す。
膨出カバー46の下部71に形成した吸込口72からエアを矢印▲1▼の如く膨出部44内に吸込む。膨出部44内に吸込んだエアを吸気用トラップ55を通してエア取入 67まで導き、エア取入 67まで導いたエアをエア取入 67を通して矢印▲2▼の如くボックス本体42内に導入する。
【0061】
膨出部44内に導入したエアが吸気用トラップ55を通ることで、エアに含まれていた塵埃などを吸気用トラップ55で除去することができる。よって、エアを濾化した状態でクリーンなエアをボックス本体42内に導入することができる。
ボックス本体42内に導入したエアを、第1〜第4の吸気管35〜38のそれぞれの入口35c〜38cから矢印▲3▼の如く第1〜第4の吸気管35〜38内に導き、第1〜第4の吸気管35〜38を介してシリンダ18a・・・(図1に示す)内に導入する。
【0062】
この際に、膨出部44の支えフレーム45にブリーザ用トラップ61(図5に示す)を介してブリーザ60を備えたので、ブリーザ60のパイプ60aを介して膨出部44内にエンジンからのブリーザパイプを開放できる。
【0063】
図11は本発明に係る小型艇の作用を示す第2作用説明図であり、エアボックス40内に侵入した海水や水を除去する状態を示す。
ここで、図1に示す小型艇10の運転中に、小型艇10が反転することが考えられるが、万が一小型艇10が反転するとエアボックス40内に海水や水が侵入する虞れがある。この状態で、小型艇10を正常の位置に戻すと、ボックス本体42の下面42c及び蓋体43の下面43a(図7に示す)に海水が溜まった状態になる。
【0064】
ここで、ボックス本体42の下面42c及び蓋体43の下面43aをエア取込口67に向けて傾斜角θ1の下り勾配にすることで、エアボックス40内の海水や水を下面42c,43aに沿って矢印▲4▼の如くエア取込口67まで効率よく導いて、エア取込口67から矢印▲5▼の如く膨出部44内に確実に流出することができる。膨出部44内に流出した海水や水を吸込口72から確実に排出することができる。
このため、エアボックス40内や膨出部44内に海水や水が溜まることを防止できる。
【0065】
加えて、ボックス本体42の下面42c及び蓋体43の下面43aを、図6に示すように艇体11の内側に向けて傾斜角θ2の下り勾配にすることで、エアボックス40内の海水や水をエア取込口67まで効率よく導いて、エア取込口67から膨出部44内に流出した海水や水を吸込口72から一層確実に排出することができる。
【0066】
図12は本発明に係る小型艇の作用を示す第3作用説明図であり、例えばエアボックス40内の第1〜第4の吸気管35〜38の整備・点検をおこなう状態を示す。
蓋体43に対向する左側壁30に開口31を形成し、この開口31にサイドカバー50を着脱自在に取付けることで、例えば、第1〜第4の吸気管35〜38の整備・点検をおこなう際に、左側壁30からサイドカバー50を外して開口31を開けることにより、この開口31を利用して、ボックス本体42から蓋体43を簡単に外すことができる。
【0067】
蓋体43はエアボックス40の側面に配置しているので、蓋体43の形状を大きく確保することができる。このように、蓋体43を簡単に外すことができ、さらに蓋体43を外すことによりボックス本体42に大きな開口を開けることができるので、エアボックス40内の第1〜第4の吸気管35〜38の整備・点検を簡単におこなうことができる。
【0068】
加えて、蓋体43を外した際に、ボックス本体42の取付面47が左側壁30の開口31に臨んでいるので、エアボックス40内の第1〜第4の吸気管35〜38の整備・点検をより一層簡単におこなうことができる。
【0069】
なお、前記実施形態では、吸気管を第1〜第4の吸気管35〜38として4本備えた例について説明したが、任意の本数の吸気管に適用することができる。
また、前記実施形態では、エアボックス40の膨出部44をボックス本体42の前端部42bに設けたが、これに限らないで、ボックス本体42の後端部42aに設けてもよい。
さらに、前記実施形態では、小型艇10としてジェット推進機で推進するジェット推進艇を例に説明したが、小型艇の推進手段はこれに限定するものではない。
【0070】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、吸気管をシート下の側壁に沿わせて湾曲させることで、シート下の側壁を外側に張出さなくても、吸気管を前方に向けて長く延ばすことができる。これにより、シート下の左右の側壁の間隔を小さく抑えることができるので、鞍乗り式のシートに運転者が跨がり、運転者の足をデッキの足載せ部に載せた際に、運転者は自然な姿勢を保つことができる。
【0072】
請求項2は、複数の吸気管の入口を千鳥に配置することで、それぞれの吸気管の入口を艇体の前後方向に対して密に配列することができる。このため、各々の吸気管を囲ったエアボックスをコンパクトにすることができるので、吸気管を前方に向けて長く延ばした場合でも、エアボックスを艇体内の所望位置に配置することが可能になる。
このため、シート下の左右の側壁の間隔を小さく抑えることができるので、鞍乗り式のシートに運転者が跨がり、運転者の足をデッキの足載せ部に載せた際に、運転者は自然な姿勢を保つことができる。
【0073】
請求項3は、各々の吸気管を上り勾配で前方に向けて延ばすことで、各々の吸気管の入口を高い位置に配置することができる。これにより、艇体内に、万が一海水や水が侵入した場合でも、海水や水が各吸気管の入口まで到達し難くすることができる。従って、各吸気管の入口から海水や水が侵入することをことを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る小型艇の側面図
【図2】本発明に係る小型艇の要部を示す背面図
【図3】本発明に係る小型艇の要部を示す側面図
【図4】本発明に係る小型艇の要部を示す斜視図
【図5】本発明に係る小型艇の要部を示す分解斜視図
【図6】本発明に係る小型艇の要部を示す断面図
【図7】本発明に係る小型艇の要部を示す側面図
【図8】本発明に係る小型艇の要部を示す平面図
【図9】本発明に係る小型艇のスロットルケーブルを示す断面図
【図10】本発明に係る小型艇の作用を示す第1作用説明図
【図11】本発明に係る小型艇の作用を示す第2作用説明図
【図12】本発明に係る小型艇の作用を示す第3作用説明図
【図13】従来の小型艇の断面図
【符号の説明】
10…小型艇、10a…小型艇の中心、11…艇体、17…鞍乗り式のシート(シート)、17a,17b…シートの左右下縁、18…エンジン、18a…シリンダ、19…エンジンの側面、30…左側壁(側壁)、32…右側壁、35〜38…第1〜第4の吸気管(吸気管)、35a〜38a…第1〜第4の吸気管の基端、35c〜38c…第1〜第4の吸気管のそれぞれの入口、40…エアボックス、66a〜66d…第1〜第4の差込孔、67…エア取込口。
Claims (3)
- 艇体の略中央に鞍乗り式のシートを備え、このシートの左右下縁からカバー状の側壁を下げ、前記シートの下方にエンジンをそのクランク軸の軸線が艇体の前後方向に向けて搭載し、このエンジンに設けた複数のシリンダを艇体の前後方向に並べ、これらのシリンダに連通する各々の吸気管をエンジンの上部の側面から延出させた小型艇において、
前記各々の吸気管を、前記シート下の側壁に沿わせて湾曲させるとともに、前方に向けて延出させ、
前記各々の吸気管を、前記エンジンと前記側壁との間に配置されたエアボックスで囲い、
このエアボックスに前記各々の吸気管の基端を差し込む差込孔と、差込孔の前方にエアを導入するエア取込口とを設けたことを特徴とする小型艇。 - 前記各々の吸気管の入口を密に配列するために前記入口を千鳥に配置したことを特徴とする請求項1記載の小型艇。
- 前記各々の吸気管を上り勾配で前方に向けて延ばしたことを特徴とする請求項1記載の小型艇。
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