JP3917771B2 - 掘削安定液および掘削工法 - Google Patents

掘削安定液および掘削工法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐セメント汚染性に優れた掘削安定液およびこの掘削安定液を用いる掘削工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
地下鉄建設工事等では、地中連続壁工法や地中杭工法等の掘削工法が広く知られている。地中連続壁工法は、地下にコンクリート構造物を築造する時の一般的な工法である。この工法は、まず、地中の掘削から始められ、このとき、掘削穴壁面の崩れを防止するために、ベントナイト等を含む掘削安定液を掘削穴に満たしながら、掘削が行われる。ここで用いる掘削安定液は、壁面の軟弱化を防止し、その水圧によって、壁面の崩壊を防止するが、これは、掘削安定液が掘削壁面に浸透する際に、ベントナイト等の粘土鉱物が、土の粒子の間に詰まり堆積することにより、マッドケーキと言われる止水層ができるためであると考えられている。地中連続壁工法では、このように、壁面の安定化を行いながら、掘削した後、構内に鉄筋籠等を挿入して、コンクリートを打ち込むことによって、連続したコンクリート構造物を形成することができる。この工法では、コンクリートを打ち込む時に、掘削安定液がコンクリートと置換され、掘削安定液が回収されるが、回収した掘削安定液は、再利用することが望まれている。
【0003】
従来、この掘削工法に使用される掘削安定液は、ベントナイト等の粘土鉱物を水に分散させた液にカルボキシメチルセルロース(以下、CMCという。)を増粘剤として添加したものが用いられている。
しかし、この掘削安定液に含まれるベントナイトは、セメントに汚染されると、セメントのアルカリ成分で部分的に半溶解状態になり、次いで、セメント中のカルシウムイオン等によって金属架橋して、安定液全体がゲル化する。このため、安定液が取り扱えなくなったり、壁面の崩れを防止する性能(濾水性)が極端に低下してしまう。
【0004】
このセメントの汚染を軽減する方法として、ポリカルボン酸系の分散剤を添加することが行われる場合があるが、長時間セメント汚染を防止することは困難であり、その添加量を増やしたり、再利用の度に分散剤を添加しなければならない等の問題があり、通常、安定液として1回または2回程度しか再利用できないのが現状である。また、増粘剤として用いるCMCは腐敗し易いという問題もある。
【0005】
使用後の掘削安定液、いわゆる、廃泥は、保水性が高いので、脱水しにくく、固形化することが困難なため、多量に出る液状物の運搬、処理が困難であるという問題がある。この問題とコスト等の問題から、掘削安定液を何度も再利用することが望まれている。
特開平2−169021号公報には、掘削安定液に用いる分散剤が開示されている。この分散剤は、CMC等の増粘剤の分散性等を高めるために用いられるが、その分子量が低いため、増粘剤として用いることはできない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、耐セメント汚染性に優れ、何度も再利用でき、腐敗しにくい掘削安定液およびこの掘削安定液を用いる掘削工法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために種々の面から検討を行い、掘削安定液の有効成分として、アクリル酸メチルを必須成分とする単量体成分を重合して得られるポリマーに着目し、その物性につき種々実験を重ねて、耐セメント汚染性に優れたポリマーを見い出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明にかかる掘削安定液は、20重量%以上のアクリル酸メチルを必須とする単量体成分を重合してなり重量平均分子量が10万以上であるポリマーと水とを含有するものである。
本発明にかかる掘削工法は、上記掘削安定液を用いて掘削穴内壁面の崩壊を防止しながら地中を掘削する工法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
〔ポリマー〕
本発明にかかる掘削安定液の有効成分であるポリマーは、アクリル酸メチルを必須成分とする単量体成分を重合してなるポリマーであり、耐セメント汚染性が高く、腐敗しにくい。このポリマーが高い耐セメント汚染性を有する理由は次のように推察される。
【0010】
通常、掘削安定液に含まれるベントナイトは、セメントに汚染されると、セメントのアルカリ成分で部分的に半溶解状態となり、次いで、セメント中のカルシウムイオン等によって金属架橋して、掘削安定液全体がゲル化する。このため、掘削安定液が取扱いできなくなり、濾水性が極端に低下して、掘削穴壁面の崩れ防止性がなくなってしまう。これに対して、本発明で用いられるポリマーは、アクリル酸メチルに由来するメチルエステル基を有し、このエステル基が、セメント混入の際に、セメントのアルカリ成分によって、加水分解し、ベントナイトの溶解を抑制するとともに、加水分解によって生成したカルボキシル基が、セメント中のカルシウムイオンと錯体を形成するトラップ剤として作用するため、金属架橋が抑制されるようになる。このようして、セメントが混入しても、濾水性の低下はなく、掘削安定液は再利用できるようになる。
【0011】
本発明で用いられる上記ポリマーは、アクリル酸メチルの単独重合体であっても良いが、アクリル酸メチル以外の重合性単量体とアクリル酸メチルとを含む単量体成分を重合して得られる共重合体であっても良い。このような重合性単量体としては、特に限定はなく、たとえば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有重合性単量体;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート等のスルホン酸基含有重合性単量体;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−3−クロロプロピルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスフェート等の酸性リン酸エステル基含有重合性単量体;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン系重合性単量体;(メタ)アクリルアミド、N−モノメチル(メタ)アクリルアミド、N−モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系重合性単量体;メタクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸と炭素数1〜18のアルコール(環式アルコールを除く)とのエステルである(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等のシクロヘキシル基含有重合性単量体;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸とポリプロピレングリコールとのモノエステルであるヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体;ポリエチレングリコール(メタ)アクリルエステル等のポリエチレングリコール鎖含有重合性単量体;酢酸ビニル;(メタ)アクリロニトリル;N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の塩基性重合性単量体;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の架橋性(メタ)アクリルアミド系重合性単量体;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、ヒニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリエトキシシラン等のケイ素原子に直結する加水分解性ケイ素基含有重合性単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル、アクリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性単量体;2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニルオキサゾリン等のオキサゾリン基含有重合性単量体;(メタ)アクリル酸−2−アジリジニルエチル、(メタ)アクロイルアジリジン等のアジリジン基含有重合性単量体;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン含有重合性単量体;(メタ)アクリル酸と、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコールとのエステル化物等の分子内に重合性不飽和基を2個以上有する多官能(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体;メチレン(メタ)アクリルアミド等の分子内に重合性不飽和基を2個以上有する多官能(メタ)アクリル酸アミド系重合性単量体;ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルフマレート等の分子内に重合性不飽和基を2個以上有する多官能アリル系重合性単量体;(メタ)アクリル酸アリル、ジビニルベンゼン等を挙げることができ、これらが1種または2種以上使用される。
【0012】
上記重合性単量体のうち、カルボキシル基を含有する重合性単量体が好ましく、得られるポリマーは、そのまま、または、アルカリで中和することにより、水に溶解または膨潤し、少量で高い増粘性および耐セメント汚染性を発揮し、掘削安定液を何度も再利用できるようになる。
アクリル酸メチルの単量体成分全体に占める割合は、好ましくは20重量%以上であり、さらに好ましくは50重量%以上である。アクリル酸メチルの割合が20重量%未満であると、耐セメント汚染性が低下し、何度も再利用することができなくなるおそれがある。
【0013】
単量体成分の重合方法については、特に限定はなく、たとえば、水中油型乳化重合(以下、単に乳化重合ということがある)、油中水型乳化重合、水溶液重合、塊状重合等を挙げることができる。これらの重合方法のうち、乳化重合が好ましく、高分子量のポリマーを高濃度で重合できる上、取扱い粘度も低く、生産コストも安いからである。
【0014】
単量体成分の重合には、通常、重合開始剤が用いられる。この重合開始剤は、熱によって分解し、ラジカル分子を発生させる物質であり、特に乳化重合では、水溶性の開始剤が使用される。重合開始剤としては、たとえば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)等の水溶性アゾ化合物;過酸化水素等の熱分解系開始剤;過酸化水素とアスコルビン酸、t−ブチルヒドロパーオキサイドとロンガリット、過硫酸カリウムと金属塩、過硫酸アンモニウムと亜硫酸水素ナトリウム等のレドックス系重合開始剤等を挙げることができ、これらが1種または2種以上使用される。
【0015】
乳化重合法は一般に、乳化剤を用いて行うのが好ましい。乳化剤としては、特に限定はないが、たとえば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤や、これらの反応性界面活性剤等を挙げることができ、これらを組み合わせて使用してもよく、場合によっては、乳化剤を一切使用することなく重合することもできる。
【0016】
アニオン系界面活性剤としては、たとえば、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート、アンモニウムアルキルサルフェート等のアルキルサルフェート塩;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート;ナトリウムスルホリシノエート;スルホン化パラフィン塩等のアルキルスルホネート;ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルスルホネート;高アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレエート、トリエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;ポリオキシアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンカルボン酸エステル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンフェニルエーテル硫酸エステル塩;コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩等の2重結合を有した反応性アニオン乳化剤等を挙げることができ、これらが1種または2種以上使用される。
【0017】
ノニオン系界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ソルビタン脂肪族エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪族エステル;グリセロールのモノラウレート等の脂肪族モノグリセライド;ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体;エチレンオキサイドと脂肪族アミン、アミドまたは酸との縮合生成物等を挙げることができ、これらが1種または2種以上使用される。
【0018】
高分子界面活性剤としては、たとえば、ポリビニルアルコールおよびその変性物;(メタ)アクリル酸系水溶性高分子;ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸系水溶性高分子;ヒドロキシプロピル(メタ)アクリル酸系水溶性高分子;ポリビニルピロリドン等を挙げることができ、これらが1種または2種以上使用される。
【0019】
乳化重合における重合温度については、特に限定はないが、好ましくは0〜100℃、さらに好ましくは40〜95℃である。重合時間についても、特に限定はないが、好ましくは、3〜15時間である。
乳化重合する際に、得られる増粘性ポリマーの物性に悪影響を及ぼさない範囲で、親水性溶媒や添加剤等を加えることができる。
【0020】
単量体成分を乳化重合反応系に添加する方法としては、特に限定はなく、一括添加法、単量体成分滴下法、プレエマルション法、パワーフィード法、シード法、多段添加法等を用いることができる。
乳化重合反応後に得られるエマルション中の不揮発分、すなわち、本発明で用いられるポリマーは、60重量%以下であるのが好ましい。不揮発分が60重量%を超えると、エマルションの粘度が高すぎるため、分散安定性が保てず、凝集が起きる恐れがあるからである。
【0021】
上記エマルションの平均粒径については、特に限定はないが、好ましくは40nm〜1μmであり、さらに好ましくは50〜500nmである。エマルションの平均粒径が40nm未満であると、エマルションの粘度が高くなりすぎたり、分散安定性が保てず、凝集するおそれがある。他方、1μmを超えると、エマルションとして安定に存在できず、ポリマーの粒子が沈降するおそれがある。
【0022】
本発明で用いられるポリマーの重量平均分子量は、10万以上であり、好ましくは50万以上である。ポリマーの重量平均分子量が10万未満であると、ポリマーが増粘剤として作用せず、掘削安定液の粘度が低下して、濾水性が低くなるおそれがある。ポリマーの重量平均分子量の上限は、ポリマーが架橋構造をとる場合には、実質的に測定することができない。
【0023】
上記カルボキシル基を有するポリマーとしては、カルボキシル基を有する単量体単位が全繰り返し単位の3〜80重量%を占めるポリマーが好ましく、10〜60重量%を占めるポリマーがさらに好ましい。カルボキシル基を有する単量体単位が全繰り返し単位の3重量%未満であると、アルカリによる増粘性が低く、濾水性が低下する傾向がある。他方、カルボキシル基を有する単量体単位が全繰り返し単位の80重量%超であると、相対的にアクリル酸メチルに由来する単量体単位の量が少なくなり、耐セメント汚染性が低下するおそれがある。
〔粘土鉱物〕
本発明にかかる掘削安定液において、粘土鉱物は掘削安定液に基本的な粘度特性と濾水性とを付与するものである。粘土鉱物としては、たとえば、セピオライト、アタパルジャイト、エントリガイド、ベントナイト、カオリンクレー、モンモリロナイト、エクトライト、サポナイト、バイデライト、ゼオライト、パリゴルスカライト、雲母等を挙げることができ、1種または2種以上使用される。これらのうちでも、セピオライト、アタパルジャイト、エントリガイド、ベントナイトおよびカオリンクレーから選ばれた少なくとも1種は、濾水性が高いため好ましい。
〔掘削安定液〕
本発明にかかる掘削安定液は、基本的には、上記したポリマーおよび水を含有した液であるが、施工直前に至る任意の時点で、上記した粘土鉱物や、必要に応じてアルカリ性物質等をさらに含有した液としてもよい。
【0024】
掘削安定液を構成する上記各成分の相互割合については、特に限定はないが、アクリル酸メチルを必須成分とする単量体成分を重合して得られるポリマーの配合割合は、掘削安定液100重量部中、好ましくは0.01〜20重量部、さらに好ましくは0.05〜10重量部である。ポリマーの配合割合が0.01重量部未満であると、耐セメント汚染性が低下し、何度も再利用できなくなるとともに、粘度が低く、濾水性が低下するおそれがある。他方、ポリマーの配合割合が20重量部超であると、掘削安定液の粘度が高くなりすぎ、取扱いにくくなるおそれがある。
【0025】
粘土鉱物の配合割合は、掘削安定液100重量部中、好ましくは20重量部以下であり、さらに好ましくは0.5〜10重量部である。粘土鉱物の配合割合が20重量部を超えると、粘度が高くなりすぎるおそれがある。
掘削安定液は、上記各成分以外に、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア(水)、アミン類等のアルカリ性物質;シリコーン系消泡剤、プロルニック型消泡剤、鉱物系消泡剤等の消泡剤;ポリアクリル酸系分散剤等の分散剤;CMC、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子等の添加剤を配合したものでもよい。上記添加剤は、掘削安定液の濾水性を大きく落とさない範囲で配合することができる。
【0026】
掘削安定液がアルカリ性物質をさらに含有する場合、そのpHについては、とくに限定はないが、好ましくはpH6以上であり、上限がpH13であることがさらに好ましい。掘削安定液のpHが6未満であると、掘削安定液の粘度が低くなるおそれがある。他方、掘削安定液のpHが13を超えると、掘削安定液がゲル状となるおそれがある。
〔掘削工法〕
本発明にかかる掘削工法は、ドリル、BW掘削機、バケット式ハイドロフレーズ、エレクトロミル等の掘削機を用いて地中にトンネル等の掘削穴を形成しながら、本発明の掘削安定液(粘土鉱物を含むことがある)をこの掘削穴に満たすと、掘削穴内壁面に掘削安定液が浸透する際に、ベントナイト等の粘土鉱物が、土の粒子の隙間に詰まり、堆積することによって、マッドケーキと呼ばれる水を通しにくい泥壁層が形成されるようになる。この泥壁層は止水性が高く、掘削壁面を補強し、掘削安定液の水圧によって掘削穴内壁面の崩壊が防止されるようになる。
【0027】
上記のように、壁面の安定化を行いながら掘削した後、構内に鉄筋籠等を挿入して、コンクリートを打ち込むことによって、連続したコンクリート構造物が形成されるようになる。ここで、コンクリートを打ち込む時に、掘削安定液がコンクリートと置換され、掘削安定液が回収される。この回収した掘削安定液は、セメントを含むが、セメントにより汚染されていないので、繰り返し再利用することができる。
【0028】
この掘削工法は、掘削安定液を使用するあらゆる工法に広く使用できるが、シールド工法等の安定液をコンクリートと置換しない工法よりも、地中連続壁工法や地中杭工法等の掘削安定液をコンクリート等と置換する掘削工法で最大の効果を発揮する。
【0029】
【実施例】
以下に、本発明の実施例と比較例とを示すが、本発明は下記実施例に限定されない。以下では、「%」は「重量%」、「部」は「重量部」のことである。
実施例および比較例に用いられるエマルション(1)〜(3)を、製造例1〜3にしたがって製造した。
【0030】
−製造例1−
滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計および冷却器を備えたフラスコに、イオン交換水666部およびハイテノールN−08(第一工業製薬(株)製)9部を仕込み、72℃で攪拌しながらハイテノールN−08を完全に溶解させた。ハイテノールN−08を含む水溶液を72℃に保ちながら、フラスコ内を窒素置換した後、滴下ロートより、メタクリル酸60部、アクリル酸メチル180部およびアクリル酸ヒドロキシエチル60部からなるモノマー混合物のうちの30部を滴下し、5分間攪拌した。ついで、5%過硫酸カリウム水溶液25部を投入し、72℃に保ちながら10分間攪拌を続け、初期重合を行った。上記モノマー混合物の残り270部をフラスコ内の反応混合物に2時間かけて滴下した。滴下終了後、72℃に保ちながら1時間攪拌を続け、反応混合物を冷却して、重合を終了し、ポリマー(1)を含有した不揮発分濃度30.9%のエマルション(1)を得た。固形分で0.5%となるようにテトラヒドロフランを用いてエマルション(1)を溶解させ、ゲルパーミネーションクロマトグラフ(GPC)でポリマー(1)の分子量を測定した。GPCの検量線はスチレンを用いて作成し、ポリマー(1)の重量平均分子量は約470万であった。
【0031】
−製造例2−
滴下ロート2基、攪拌機、窒素導入管、温度計および冷却器を備えたフラスコに、イオン交換水327部およびハイテノールN−08(第一工業製薬(株)製)4部を仕込み、72℃で攪拌しながらハイテノールN−08を完全に溶解させた。ハイテノールN−08を含む水溶液を72℃に保ちながら、フラスコ内を窒素置換した後、滴下ロートより、メタアクリル酸105部、アクリル酸メチル195部および1.6%ハイテノールN−08水溶液300部を強攪拌して得たプレエマルションのうちの30部を滴下し、5分間攪拌した。ついで、5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液1部および1%過硫酸アンモニウム水溶液4部を投入し、72℃に保ちながら20分間攪拌を続け、初期重合を行った。上記プレエマルションの残り570部と1%過硫酸アンモニウム水溶液64部とをフラスコ内の反応混合物に2時間かけて滴下した。滴下終了後、反応温度を80℃に上げ、1時間攪拌を続け、反応混合物を冷却して、重合を終了し、ポリマー(2)を含有した不揮発分濃度30.8%のエマルション(2)を得た。製造例1と同様の方法でポリマー(2)の重量平均分子量を測定し、約790万であった。
【0032】
−製造例3−
製造例1において、メタアクリル酸105部およびアクリル酸エチル195部からなるモノマー混合物用いる以外は、製造例1と同様にして、ポリマー(3)を含有した不揮発分濃度31.0%のエマルション(3)を得た。製造例1と同様の方法でポリマー(3)の重量平均分子量を測定し、約620万であった。
【0033】
−実施例1−
上記製造例1で得たエマルション(1)を計量し、掘削安定液の最終総量600mlに対しポリマー(1)0.2重量%となるようにステンレスカップに入れ、これらに、中和に使用する0.1N水酸化ナトリウム水溶液との総量で600mlとなる分量の水道水を加え、さらにシリコーン系消泡剤であるノプコ8034L(サンノプコ(株)製)を総量の0.1%加えた。
【0034】
次に、ベントナイトであるクニゲルVI(クニミネ工業(株)製)を、それぞれに総量の3%加え、速やかにハミルトンビーチミキサーを用いて回転速度1200rpmで攪拌し、攪拌開始直後に0.1N水酸化ナトリウム水溶液を所定量(表2に示した。)加え10分間攪拌した。次に固形分で0.1%となるようにアクリル酸ナトリウム系分散剤であるKSフロー((株)テルナイト製)を添加して5分間攪拌し、さらにセメント2部に水1部を加えたセメントペーストを固形分で、それぞれ、0%、1%および3%となるように加え、さらに、5分間攪拌した。これらを24時間放置し、再度、ハミルトンビーチミキサーを用いて15分間攪拌して、それぞれ、掘削安定液(1a)、セメント混合物(1b)およびセメント混合物(1c)を得た。そのファンネル粘度および濾水量を以下に示すAmerican Petroleum Institute(API)の試験方法に準じた方法で測定した。結果を表1に示す。
ファンネル粘度
漏斗型のファンネル粘度計に上記の掘削安定液を500ml採り、その全量が流出するまでの時間を測定する。
濾水量
濾水量測定装置のシリンダー内に安定液を290ml入れ、直径9cmの東洋濾紙No.4を置き、ドレン付きの蓋をセットする。シリンダーを所定位置に固定し、メスシリンダーをセットした後に窒素ボンベを用いてシリンダー内に圧力(3kg/cm2)をかけ、30分間に流出する水の量(ml)をメスシリンダーで測定した。
【0035】
−実施例2−
実施例1で、エマルション(1)の代わりにエマルション(2)を用いる以外は、実施例1と同様にして、掘削安定液(2a)、セメント混合物(2b)およびセメント混合物(2c)を得て、ファンネル粘度および濾水量を測定した。結果を表1に示す。
【0036】
−比較例1−
実施例1で、エマルション(1)0.2重量%の代わりにエマルション(3)0.3重量%を用いる以外は、実施例1と同様にして、比較掘削安定液(1a)、比較セメント混合物(1b)および比較セメント混合物(1c)を得て、ファンネル粘度および濾水量を測定した。結果を表2に示す。
【0037】
−比較例2−
水道水600mlと、ベントナイトであるクニゲルVI(クニミネ工業(株)製)18gと、掘削安定液の最終総量600mlに対し固形分で、0.15重量%となるように計量したテルセルローズDS−P((株)テルナイト製)とをステンレスカップに加え、速やかにハミルトンビーチミキサーを用いて回転速度1200rpmで15分間攪拌し、次に固形分で0.1%となるようにアクリル酸ナトリウム系分散剤であるKSフロー((株)テルナイト製)を添加して5分間攪拌し、さらにセメント2部に水1部を加えたセメントペーストを固形分で、それぞれ、0%、1%および3%となるように加え、さらに、5分間攪拌した。これらを24時間放置し、再度、ハミルトンビーチミキサーを用いて15分間攪拌して、それぞれ、比較掘削安定液(2a)、比較セメント混合物(2b)および比較セメント混合物(2c)を得た。そのファンネル粘度および濾水量を測定し、結果を表2に示す。
【0038】
−比較例3−
比較例1でテルセルローズDS−Pの代わりに、テルポリマー30((株)テルナイト製)を用いる以外は、比較例1と同様にして、比較掘削安定液(3a)、比較セメント混合物(3b)および比較セメント混合物(3c)を得て、ファンネル粘度および濾水量を測定した。結果を表3に示す。
【0039】
−比較例4−
比較例1でテルセルローズDS−Pを用いない以外は、比較例1と同様にして、比較掘削安定液(4a)、比較セメント混合物(4b)および比較セメント混合物(4c)を得て、ファンネル粘度および濾水量を測定した。結果を表3に示す。
【0040】
【表1】
Figure 0003917771
【0041】
【表2】
Figure 0003917771
【0042】
【表3】
Figure 0003917771
【0043】
【発明の効果】
本発明にかかる掘削安定液は、腐敗しにくく、耐セメント汚染性に優れ、何度も再利用することができる。
本発明にかかる掘削工法は、上記掘削安定液を用いているため、掘削穴内壁面の崩壊を確実に防止することができるとともに、掘削安定液を何度も再利用でき、廃泥処理が軽減され、経済的に有利である。

Claims (4)

  1. 20重量%以上のアクリル酸メチルを必須とする単量体成分を重合してなり重量平均分子量が10万以上であるポリマーと水とを含有する、掘削安定液。
  2. 前記ポリマーがカルボキシル基を有するポリマーである、請求項1に記載の掘削安定液。
  3. 粘土鉱物をさらに含有してなる、請求項1または2に記載の掘削安定液。
  4. 請求項1からまでのいずれかに記載の掘削安定液を用いて掘削穴内壁面の崩壊を防止しながら地中を掘削する、掘削工法。
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