JP6981725B2 - 掘削泥水の劣化抑制剤及び劣化抑制方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、安定液の各品質管理項目についての調整を行うために、所定の成分の添加量を特定した上で追加添加する作業は煩雑である。
[1](メタ)アクリルアミドである化合物(A)と、(メタ)アクリル酸及びその塩のうちから選ばれる少なくともいずれか1種の化合物(B)とを構成モノマーとして含む共重合体を含有し、前記化合物(A)と前記化合物(B)の合計に対する前記化合物(B)の割合が10〜90モル%であり、前記共重合体の30℃の水溶液における固有粘度が0.5〜10.0dL/gである、掘削泥水の劣化抑制剤。
[2]掘削工事中の掘削泥水の劣化を抑制する方法であって、上記[1]に記載の劣化抑制剤を、安定液プラント及び安定液循環設備のうちの少なくとも1箇所に添加する、掘削泥水の劣化抑制方法。
[3]前記劣化抑制剤を、掘削泥水中に混入している粘土に対する前記共重合体の添加量が0.1〜1.0質量%となるように、前記掘削泥水に添加する、上記[2]に記載の掘削泥水の劣化抑制方法。
前記劣化抑制剤を用いた本発明の掘削泥水の劣化抑制方法によれば、掘削泥水の再利用頻度を増加させることができ、これに伴い、廃液量が低減するとともに、新たに作製する安定液の使用量を低減させることができる。さらに、掘削泥水の品質の劣化が抑制されることにより、掘削工事の安全性の向上にも寄与し得る。
本発明に係る掘削泥水の劣化抑制剤は、(メタ)アクリルアミドである化合物(A)と、(メタ)アクリル酸及びその塩のうちから選ばれる少なくともいずれか1種の化合物(B)とを構成モノマーとして含む共重合体を含有するものである。そして、前記共重合体中の化合物(A)と化合物(B)の合計に対する化合物(B)の割合が10〜90モル%である。また、前記共重合体は、30℃の水溶液における固有粘度が0.5〜10.0dL/gであることを特徴としている。
このような共重合体によるポリマー剤は、掘削泥水に対して優れた劣化抑制効果を発揮する。
なお、本発明で言う「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリル(メタアクリルとも言う。)であってもよいことを意味する。これらは、いずれか一方であっても、両方を含むものであってもよい。すなわち、化合物(A)は、アクリルアミド及びメタクリルアミドのうちから選ばれる少なくともいずれか1種である。
化合物(B)の含有量が10モル%未満の場合、粘土粒子が凝集し、掘削泥水がゲル化して粘性上昇を引き起こすおそれがある。一方、90モル%を超える場合、掘削泥水中の混入粘土に対する十分な凝集性が得られず、掘削泥水の比重が増加することとなるため好ましくない。
前記共重合体中の化合物(A)及び(B)以外の構成モノマーの含有量は、該共重合体の全構成モノマーの合計に対して、10モル%以下であることが好ましく、より好ましくは5モル%以下である。
このような固有粘度を有する共重合体によるポリマー剤であれば、掘削泥水の粘性上昇を抑制することができると同時に比重の低減も抑制されるため、掘削泥水の劣化を効果的に防止することができる。
前記固有粘度が0.5dL/g未満の場合、掘削泥水中の混入粘土に対する十分な凝集性が得られない。一方、10.0dL/gを超える場合、該劣化抑制剤の少量の添加でも、掘削泥水がゲル化するおそれがある。
なお、固有粘度は、後述する実施例に記載の方法により求めるものとする。
また、前記共重合体としては、市販品を使用してもよく、例えば、市販の(メタ)アクリルアミド・(メタ)アクリル酸ナトリウム共重合体であって、30℃の水溶液における固有粘度が0.5〜10.0dL/gであるものが好適に使用される。
本発明に係る掘削泥水の劣化抑制方法は、掘削工事中の掘削泥水の劣化を抑制する方法である。そして、前記劣化抑制剤を、安定液プラント及び安定液循環設備のうちの少なくとも1箇所に添加するものである。これらのいずれの箇所に添加した場合においても、本発明の劣化抑制剤の添加による掘削泥水の劣化抑制効果が発揮される。
掘削工事においては、上記の所定箇所の掘削泥水に前記劣化抑制剤を添加する以外は、通常の工程からの作業変更を要することなく、工事を進行させることができる。
なお、掘削泥水の新液である安定液の配合組成は、特に限定されるものではなく、掘削工事に一般的に使用される配合組成のものでよい。例えば、水100質量部、ベントナイト1〜10質量部、及びCMC0〜1質量部の混合液が挙げられ、また、これに、分散剤0〜1質量部、イオン封鎖剤である炭酸ナトリウム0〜1質量部が添加されたものも汎用されている。
共重合体の量が0.1質量%未満である場合、比重の低減効果が十分に得られない。一方、1.0質量%を超える場合、掘削泥水の粘性上昇の抑制効果が十分に得られず、粘土粒子の沈降が妨げられ、比重の十分な低減効果も得られなくなる。
なお、掘削泥水中の混入粘土の量は、劣化抑制剤を添加しようとする掘削泥水の比重から推定して求められる。掘削工事の現場では、掘削泥水の評価試験において、通常、管理項目である比重の測定値から、簡易的に混入粘土量を求めることが行われている。
下記実施例及び比較例に示す各種ポリマー剤について、掘削泥水の模擬液を用いて、掘削泥水の劣化抑制の評価試験を行った。
掘削泥水試料液に使用した添加物は、下記のとおりである。
・ベントナイト(「クニゲルV2」、クニミネ工業株式会社製)
・CMC(「DKハイポリマー200」、第一工業製薬株式会社製)
・粘土A(粒径2μm未満:41質量%、粒径2μm以上5μm未満:9質量%、粒径5μm以上:50%)
・粘土B(粒径2μm未満:20質量%、粒径2μm以上5μm未満:10質量%、粒径5μm以上:70%)
なお、粘土A及びBの粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した値である。
(1)純水1Lを入れたポリビーカーに、ベントナイト20gを添加し、10分間撹拌した後、CMC2gを加え、10分間撹拌した。
(2)純水1Lを入れた別のポリビーカーに、下記実施例及び比較例に示す各種ポリマー剤を所定量(0.1〜2.0g)添加し、30分間撹拌した。
(3)(1)及び(2)で調製した各液を2Lポリビーカーに移して混合し、5分間撹拌した後、24時間静置し、CMCを完全に溶解させた。
(4)これに、粘土A及びBを各200g添加し、300rpmで90分間撹拌した後、目開き150μmの篩に通し、通過した液について、下記に示す方法により、比重及び粘性の評価測定を行った。なお、ポリマー剤を添加しない場合についても、比較対照のため、比重の評価測定を行った。
(5)測定後の溶液を2Lポリビーカーに戻し、上記(4)の操作を2回繰り返した。
粘土分(粘土A及びB)に対するポリマー剤の添加量を0.02〜1.0質量%の範囲で変化させて、各添加量ごとに、比重及び粘性の評価測定を行った。
<比重>
ファンネル粘度計の容器(容量500mL)に純水を満たし、純水の重量を秤量した。同様にして、前記容器に測定試料液を満たし、該測定試料液の重量を秤量した。この重量を前記純水の重量で除して、比重を算出した。
比較対照(ポリマー剤未添加)よりも比重が低くなった場合に、比重の低減効果が得られたものと判定した。
<粘性(ファンネル粘度)>
ファンネル粘度計の底穴を指で塞ぎ、測定試料液500mLを注いだ。ファンネル粘度計の下に容器をセットし、底穴から指を離した時点から、ファンネル粘度計の容器内の測定試料液が流下し終わるまでの時間を測定した。この時間をファンネル粘度とした。
掘削工事現場における管理基準に鑑みて、ファンネル粘度が35秒以下である場合を、粘性上昇の抑制効果が得られたものと判定した。
ポリマー剤として、下記表1に示すような固有粘度及び重量平均分子量を有するアクリルアミド・アクリル酸ナトリウム共重合体を準備した。これらの各ポリマー剤の固有粘度及び重量平均分子量は、以下のようにして求めた。
各ポリマー剤の0.02〜0.08%(質量/体積)の5段階のポリマー濃度の試料液を調製した。
30℃の恒温槽中にセットしたウベローデ粘度計に、試料液10mlをホールピペットで注入した。試料液の液面を測定球の上標線より5〜10mm上まで上昇させた後、自然流下させ、液面が測定球の上標線と下標線との間を通過するのに要する時間を測定した。この操作を各ポリマー濃度について3回繰り返し、各測定値の平均値tを求めた。1N塩化ナトリウム水溶液についても、同様の測定を行い、ブランク値t0とした。
相対粘度ηrel=t/t0
比粘度ηsp=(t−t0)/t0=ηrel−1
還元粘度ηred=ηsp/c=(t−t0)/(t0・c)
(ここで、cはポリマー濃度である。)
重量平均分子量Mwは、上記で求めた固有粘度[η]の値を用いて、ポリアクリルアミド系高分子の粘度式:[η]=3.73×10-4Mw0.66から算出した(「ラジカル重合ハンドブック」、株式会社エヌ・ティー・エス、p.558(1999)参照)。
比較例1については、添加量が0.1質量%未満であっても、測定試料液がゲル化した。比較例2については、添加量が0.2質量%では、測定試料液の粘度が高くなり、添加量が0.4質量%の場合に、測定試料液がゲル化した。比較例3も、比較例1及び2と同様に、固有粘度が高く、添加量が0.2質量%以上になると、粘性が急上昇する傾向が見られた。このため、比較例1〜3については、いずれも、添加量の適性範囲を設定することが困難であり、実用性に欠ける。
比較例4のポリマー剤は分散剤として機能するものであり、粘性の上昇は認められなかったが、添加量の増量に伴い、粘土分の分散性が高まり、比重が増加する傾向が見られた。
Claims (4)
- アクリルアミドである化合物(A)と、アクリル酸ナトリウムである化合物(B)との共重合体を含有し、前記共重合体の30℃の水溶液における固有粘度が0.5〜10.0dL/gであり、(i)前記共重合体の重量平均分子量が140,000〜410,000で、前記化合物(A)と前記化合物(B)の合計に対する前記化合物(B)の割合が11〜60モル%であるか、又は、(ii)前記共重合体の重量平均分子量が2,790,000〜3,110,000で、前記化合物(A)と前記化合物(B)の合計に対する前記化合物(B)の割合が60〜80モル%である、掘削泥水の劣化抑制剤。
- 掘削工事中の掘削泥水の劣化を抑制する方法であって、請求項1に記載の劣化抑制剤を、安定液プラント及び安定液循環設備のうちの少なくとも1箇所に添加する、掘削泥水の劣化抑制方法。
- 前記劣化抑制剤を、掘削泥水中に混入している粘土に対する前記共重合体の添加量が0.1〜1.0質量%となるように、前記掘削泥水に添加する、請求項2に記載の掘削泥水の劣化抑制方法。
- 前記劣化抑制剤の添加箇所が、安定液作製ミキサー、良液槽、回収槽、及びデカンター入口部のうちのいずれかである、請求項2又は3に記載の掘削泥水の劣化抑制方法。
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