JP3917088B2 - 研削装置及びその制御方法 - Google Patents
研削装置及びその制御方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3917088B2 JP3917088B2 JP2003041414A JP2003041414A JP3917088B2 JP 3917088 B2 JP3917088 B2 JP 3917088B2 JP 2003041414 A JP2003041414 A JP 2003041414A JP 2003041414 A JP2003041414 A JP 2003041414A JP 3917088 B2 JP3917088 B2 JP 3917088B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- grinding
- time point
- black skin
- workpiece
- machining
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Constituent Portions Of Griding Lathes, Driving, Sensing And Control (AREA)
- Grinding Of Cylindrical And Plane Surfaces (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、軌道輪などのワークに研削加工を施す研削装置及びその制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば内輪素材に研削加工を行う研削装置には、同素材を回転させるとともに、その素材に形成した貫通孔内に、電動モータによって一定回転速度で回転させた砥石を挿入し上記孔壁面(加工面)と接触させることにより、所望の内周面を有する内輪に仕上げるものがある。このような研削装置では、上記素材は砥石に対して移動可能に支持されており、砥石側への素材加工面の移動量を調整することで当該加工面に対する砥石の研削速度を変更できるようになっている。
また、上記のような研削装置では、鍛造加工後の軸受用鋼等により構成された上記素材に対して、互いに異なる所定の研削速度が予め設定された複数の処理工程、例えば割出、準急、黒皮、粗、及び仕上工程を順次実施するよう構成されており、これらの階段状の工程に要する処理時間(すなわち、1個の内輪に要する研削加工時間)を短縮するのが難しいものであった。とりわけ、上記黒皮工程では、鍛造加工での加工精度が悪い場合を考慮し、当該工程での研削速度を極めて遅く設定することにより加工面が粗い内輪素材との接触に起因する割れなどのダメージが砥石に発生するのを極力防ぐようになっていた。しかも、この黒皮工程では、予め設定された一定時間の処理時間でその加工が行われるようになっており、その処理時間の短縮化を図ることはできなかった。
【0003】
そこで、従来の研削装置には、研削加工時に砥石に加わる研削力を検出し、さらに砥石運動の一周期分での研削力の積分値を算出することにより、素材加工面での加工状態を判断し、この判断した加工状態を基に研削速度を変更することによって上記黒皮工程での処理時間の短縮化を図ろうとしたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
具体的には、この従来装置では、上記研削力の積分値と設定値とを比較する比較回路を設け、この回路により上記積分値が設定値を越えるか否かについて判別させていた。そして、この装置では、積分値が設定値を超えた場合に、素材加工面が黒皮工程で要求される加工状態に加工された判断し、その判断した時点で当該黒皮工程での研削速度から後続の粗工程での研削速度に切り換えて粗工程を開始させていた。
【0004】
【特許文献1】
特許第2917085号公報(第4頁、第4図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の研削装置では、研削加工時に砥石に加わる研削力の積分値を基準に用いていたので、内輪素材の加工面での加工状態を精度よく判断できないことがあった。具体的には、上記加工状態の悪い内輪素材の場合、その加工面の周方向での表面粗さが非常に粗いことがあり、加工面の真円度が極めて悪くなっていることがあった。このように真円度が悪い素材の場合、砥石の加工面との接触状態は一定で安定したものでなく、強く弱く接触したり、ひどい場合には砥石が加工面に対し接離を繰り返したりする。このため、上記研削力が砥石の加工面との接触状態に応じて大きく変動し、その積分値は加工状態の良好な内輪素材のものと同程度になることがあった。この結果、良好な加工状態であると誤って判断して、内輪素材(ワーク)の加工状態を精度よく判断できないことがあった。
【0006】
上記のような従来の問題点に鑑み、本発明は、ワークの加工面での加工状態を高精度に判断することができる研削装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、砥石を回転駆動する電動モータと、ワークの加工面での加工状態に応じて当該加工面に対する前記砥石の研削速度を制御する制御部とを備え、粗工程の前に黒皮工程を行う研削装置であって、
前記制御部には、基準時点となる第1時点から一定時間経過した第2時点が予め設定されており、
前記第2時点は、黒皮工程を継続して実施する必要があるか否かを黒皮工程の途中で判断するために予め設定された時点であり、
前記制御部は、前記電動モータでの研削電力を検出するとともに、前記第1時点と前記第2時点との間での前記研削電力の増加量を前記研削電力の立ち上がり速度として検出し、前記研削電力の立ち上がり速度の緩急に基づいて、ワークの加工面での加工状態を前記第2時点で判断し、ワーク加工面での加工状態が良いと判断したときは、前記第2時点以降の黒皮工程を行わずに黒皮工程を途中で終了させ、粗工程を開始させることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明は、電動モータによって回転駆動した砥石を用いて、ワークの加工面に研削加工を行うとともに、そのワークの加工面での加工状態に応じて当該加工面に対する前記砥石の研削速度を制御する制御部を備えた研削装置の制御方法であって、
前記制御部には、基準時点となる第1時点から一定時間経過した第2時点が予め設定されており、
前記第2時点は、黒皮工程を継続して実施する必要があるか否かを黒皮工程の途中で判断するために予め設定された時点であり、
前記研削装置が実行するステップとして、
前記電動モータでの研削電力を検出して、前記第1時点と前記第2時点との間での前記研削電力の増加量を前記研削電力の立ち上がり速度として求める検出ステップと、
前記ステップで求めた研削電力の立ち上がり速度の緩急に基づいて、ワーク加工面での加工状態を前記第2時点で判断する判断ステップと、
ワーク加工面での加工状態が良いと判断したときは、前記第2時点以降の黒皮工程を行わずに黒皮工程を途中で終了し、粗工程を開始するステップと、
を具備することを特徴とするものである。
【0009】
上記のように構成された研削装置及びその制御方法では、ワークの加工面での加工状態が上記電動モータでの研削電力の立ち上がり速度の緩急に基づき判断されている。つまり、本願の発明者等は、研削加工時における上記研削電力の立ち上がり波形が、上記従来例での研削力の変動波形に比べて、砥石と加工面との接触状態の影響を受け難く、かつ加工状態の良否に応じて確実に変動することに着目した。そして、上記研削電力の立ち上がり速度の緩急を基準に用いることにより、上記従来例に比べて、加工状態の検出精度を向上させることができ、高精度に加工状態を判断できることを見出した。
【0010】
また、上記研削装置において、前記制御部は、前記研削電力の立ち上がり速度の緩急を、前記第1時点から一定時間経過した前記第2時点での研削電力を検出するとともに、その検出した研削電力と、閾値とを比較することによって判断することが好ましい。
上記研削装置の場合、ワークの加工面での加工状態が基準時点から一定時間経過した時点で検出された研削電力と、閾値との比較結果を基に高精度に判断される。
【0011】
また、上記研削装置において、前記制御部は、ワークに対して、加工条件が異なる複数の研削工程を行うよう構成されているとともに、
前記検出した研削電力が閾値よりも小さいときには、前記制御部はワークの加工面での加工状態が悪いと判断して、当該加工面に対する現時点での研削工程を継続させ、また前記検出した研削電力が閾値以上であるときには、前記制御部はワークの加工面での加工状態が良いと判断して、前記現時点での研削工程を終了させることが好ましい。
また、上記研削方法では、ワークに対して、加工条件が異なる複数の研削工程を行う場合において、
前記比較ステップにおいて、前記検出した研削電力が閾値よりも小さいときには、ワークの加工面での加工状態が悪いと判断して、当該加工面に対する現時点での研削工程を継続し、また前記検出した研削電力が閾値以上であるときには、ワークの加工面での加工状態が良いと判断して、前記現時点での研削工程を終了することが好ましい。
上記研削装置及びその制御方法の場合、ワーク加工面での加工状態が、上記検出した研削電力と閾値との比較結果に従って高精度に判断される。しかも、加工状態が良いと判断された場合に、現時点で実施中の研削工程を直ちに終了して当該研削工程の処理時間を短くさせることができる。
【0012】
以上の研削装置及びその制御方法の場合、高精度に判断されたワーク加工面での加工状態に応じて、上記黒皮工程と後続の粗工程との切り換えを行うことができ、よってこれらの黒皮工程及び粗工程を含んだ階段状の研削加工全体の処理時間を短くすることができるとともに、粗工程の際に割れなどのダメージが砥石に発生するのを確実に防ぐことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の研削装置及びその制御方法を示す好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚、以下の説明では、従来例との対比を容易なものとするために、内輪用の研削装置に適用した場合を例示して説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る研削装置の要部構成例を示す模式図であり、図2は同研削装置の主な機能を示す機能ブロック図である。
図1において、本実施形態の研削装置は、砥石1の回転駆動を行う駆動機構部2と、ワークとしての内輪素材3を支持する支持機構部4と、これらの機構部2、4の各駆動制御を行う制御部としての制御ユニット5とを備えており、上記素材3の材質やその素材3での加工面の状態、形状寸法などに応じて適宜選択された砥石1による研削加工を素材加工面に施せるようになっている。
上記駆動機構部2は、図1の左右方向にスライド移動可能に構成されており、内輪素材3に研削加工を行う場合には、図1に破線の矢印にて示すように移動されて、上記加工面としての素材内周面3aに砥石外周面を接触させることが可能な加工位置に移動する。また、駆動機構部2が図1に示す退避位置に移動することにより、砥石1や内輪素材3の取替作業などを容易に行えるようになっている。
【0014】
また、上記駆動機構部2には、一端側に上記砥石1が着脱可能に装着されるとともに、図示しない軸受手段に回転自在に支持されたホイールヘッド(Wheel Head;以下、“W/H”という。)21と、このW/H 21を回転駆動する駆動用の電動モータ22とが設けられている。この電動モータ22は、インバータ駆動されるACモータなどにより構成されている。また、W/H 21の他端側及び電動モータ22の出力軸には、第1プーリ23及び第2プーリ24がそれぞれ一体回転可能に取り付けられている。これらの第1及び第2プーリ23、24には、ベルト25が架け渡されており、駆動機構部2では、上記制御ユニット5からの動作指令に応じてモータ22が回転したときに、その回転力をW/H 21に伝えて、当該W/H 21及び砥石1を図1のP方向に一定速度で回転駆動する。また、この機構部2では、上記W/H 21により、砥石1の回転動作を安定させ、かつその砥石1による研削加工も安定した状態で行えるようになっている。さらに、第1及び第2プーリ23、24の外径を変更しそれらのプーリ比を調整することにより、同一のモータ22を用いた場合でも砥石1の回転数の変更を行うことが可能となっている。
【0015】
上記支持機構部4は、切込み台41と、この切込み台41にボールねじ式連結機構(図示せず)を介して接続された切込みモータ42とを備えており、上記制御ユニット5から切込みモータ42への速度指令に応じて、同モータ42が回転することによって内輪素材3に対する砥石1の切込み速度(研削速度)を変更できるように構成されている。詳細にいえば、上記切込み台41には、内輪素材3を回転可能な状態で保持するマグネットチャックと、このマグネットチャックによって保持された素材3を図1のQ方向に回転するワーク回転用モータとが設けられている(図示せず)。そして、上記切込みモータ42が図1のR方向に回転したときに、上記ボールねじ式連結機構が動作することによって切込み台41は同図のS方向に移動される。これにより、回転中の内輪素材3も切込み台41の移動とともに上記S方向に押込まれて、その加工面3aと砥石1との接触(研削)位置がS方向に移動される。この結果、加工面3aに対する砥石1の切込み量(研削量)が変更されるとともに、切込みモータ42の回転速度を変えることにより、砥石1の研削速度もまた変更される。
【0016】
上記制御ユニット5は、CPUなどにより構成され、所定の演算を行う演算部51と、不揮発性メモリ等により構成され、演算部51で実行される研削加工用のプログラムなどのデータを記憶する記憶部52とを備えており(図2参照)、上記プログラムに従って、上記研削速度などが互いに異なる階段状の複数の研削加工、例えば割出、準急、黒皮、粗、仕上、及び仕上SP(スパークアウト)工程を内輪素材3に順次行うようになっている。また、この制御ユニット5では、後に詳述するように、加工面3aでの加工状態を判断しその判断結果に応じて、黒皮工程を適宜終了させ粗工程にスキップさせるようになっている。尚、上記プログラムは、内輪素材3の素材鋼の種類(例えば軸受用鋼)やその素材3の前加工(例えば鍛造加工)の内容などを含む実施予定の研削加工に対応して予め作成され、記憶部52内に格納されたものである。
【0017】
また、制御ユニット5では、研削装置や製造ライン等に設けられた検出手段、例えば上記電動モータ22での消費電力を検出するために同モータ22への供給電流を測る電流計や上記研削位置に供給される冷却媒体の供給状態を示すセンサからの検出信号が入力されるようになっており、演算部51はそれらの検出データを記憶部52に適宜記憶させて研削加工を適切に行うようになっている。また、この制御ユニット5では、タッチパネルなどの表示機能をもつデータ送受信手段が設けられており、演算部51に対するオペレータからの入力指示や記憶部52に格納される新たなプログラムデータなどの受信及び上記検出手段の検出データを含む研削加工の状況を示すデータなどの送信を実施可能に構成されているとともに、上記パネルなどに必要な情報を表示させてオペレータがモニタリングできるようになっている。
【0018】
上記演算部51には、上記電動モータ22での研削電力の立ち上がり度合を検出する研削電力検出手段51aと、この検出手段51aによって検出された研削電力の立ち上がり度合の緩急を用いて内輪素材3の加工面3aでの加工状態を判断する加工状態判断手段51bと、この判断手段51bの判断結果を基に切込みモータ42の速度制御を行う速度制御手段51cとが設けられている。上記研削電力検出手段51aは、上記電流計の検出電流値から得られる電動モータ22の消費電力のうち、無負荷電力を除いた上記研削電力(すなわち、砥石1での研削負荷に応じて変動する負荷電力)を取得する。また、この検出手段51aは、基準時点、例えば上記黒皮工程の開始時点から所定時間経過した時点での上記研削電力を検出し、その検出した研削電力を加工状態判断手段51bに通知する。また、加工状態判断手段51bは、検出手段51aから通知された研削電力と閾値とを比較することにより、加工面3aでの加工状態について黒皮工程を継続する必要があるか否かについて判断する。また、速度制御手段51cは、上記判断手段51bの判断結果により、黒皮工程用に設定された黒皮速度またはこの黒皮速度よりも速い速度であって粗工程用に設定された粗速度にて研削加工が実施されるように速度指令を生成し、切込みモータ42に出力する。
【0019】
上記のように構成された研削装置の動作について、図1〜図3を参照して、具体的に説明する。尚、以下の説明では、上記黒皮工程における制御ユニット5での判断動作について主に説明する。
図3に示すように、制御ユニット5では、演算部51が研削電力検出手段51aで検出した研削電力に従って、黒皮工程を実施可能か否かについて判断する(ステップS1)。詳細には、研削加工の開始時には、砥石1は加工面3aと離れた状態で当該加工面3aに対向するよう配置されており、割出及び準急工程を行うことにより、切込み台41が図1のS方向に移動され砥石1の外周面が加工面3aに接近して接触する。そして、砥石外周面と加工面3aとが完全に接触すると、電動モータ22での研削電力が安定した状態で上昇することから、演算部51はその研削電力が安定した状態である程度上昇したことを検出した時点で黒皮工程を実施可能と判断する。
【0020】
上記ステップS1において、黒皮工程を実施可能と判断すると、演算部51は記憶部52に記憶されている当該黒皮工程用に設定された黒皮(処理)時間Tc及び黒皮速度Vcを参照し(ステップS2)、速度制御手段51cは黒皮速度Vcに応じた速度指令を切込みモータ42に出力し、当該速度Vcによる黒皮加工を開始させる。さらに、演算部51は、ステップS1で黒皮工程を開始した時点からの研削電力の立ち上がりを監視する計測時間Tsを記憶部52から読み出して研削電力検出手段51aに設定し(ステップS3)、その研削電力の閾値Psを記憶部52から読み出して加工状態判断手段51bに設定する(ステップS4)。
その後、研削電力検出手段51aが所定のサンプリング周期で研削電力の検出値Prを検出し(ステップS5)、さらに上記ステップS3で設定された計測時間Tsを経過したか否かについて調べる(ステップS6)。このように、研削電力検出手段51aが上記のステップS5及びS6を実行することにより、研削電力の立ち上がり度合として、黒皮工程開始時点(基準時点)から所定時間経過した時点での研削電力を検出する検出ステップが行われる。また、上記計測時間Tsは、黒皮工程での前半部分に設定されるものであり、当該黒皮工程での処理時間Tcの半分以下の数値が選択されている。
【0021】
次に、上記ステップS6において、研削電力検出手段51aが黒皮工程開始時点から計測時間Tsを経過していることを検知すると、加工状態判断手段51bが検出手段51aからの現時点での研削電力の検出値Prと、上記ステップS4で設定された閾値Psと比較する(ステップS7)。そして、加工状態判断手段51bが閾値Psよりも検出値Prが小さいことを検知すると、この判断手段51bは加工面3aでの加工状態が黒皮工程で要求される所望状態に加工されていない(加工状態が悪い)と判断し、当該黒皮工程を上記ステップS2で参照された黒皮時間Tcの間、継続して実施する必要があると判断する。
一方、検出値Prが閾値Ps以上であることを検知すると、加工状態判断手段51bは加工面3aでの加工状態が黒皮工程で要求される所望状態に加工されている(加工状態が良い)と判断し、黒皮工程を直ちに終了できると判断する。
【0022】
以上のように、加工状態判断手段51bが上記のステップS7を実行することにより、基準時点から所定時間経過した時点での研削電力と、閾値との比較を行う比較ステップを含む、研削電力の立ち上がり度合の緩急に基づいて内輪素材3の加工面3aでの加工状態を判断する判断ステップが行われる。また、このように研削電力の立ち上がり度合の緩急に基づき加工状態を判断しているので、研削加工時に砥石1に加わる研削力を判断基準に用いた上記従来品に比べて、加工面3aの加工状態の検出精度を向上させることができ、当該加工状態を高精度に検出することができる。
【0023】
ここで、本願の発明者等が実施した試験の結果例を示す図4及び図5を参照して、本実施形態品が従来品に比べて内輪素材(ワーク)3の加工面3aでの加工状態を高精度に検出できることを具体的に説明する。
図4(a)及び(b)は、研削加工前において加工状態の良いワークにおける研削電力の変動及び研削力の変動の一例をそれぞれ示すグラフである。図5(a)及び(b)は、研削加工前において加工状態の悪いワークにおける研削電力の変動及び研削力の変動の一例をそれぞれ示すグラフである。尚、図4(b)及び図5(b)に示す研削力は、砥石外周面とワーク加工面との接触点における法線方向の研削力成分であり、公知の歪み計などを上記駆動機構部2に設けて測定した。
【0024】
図4に示すように、内輪素材3の軸方向で加工面3aの内径がほぼ均一なワーク、いわゆる肩なしワークでは、加工面3aの真円度が良く、砥石1の加工面3aとの接触が比較的安定した状態で行われた。このため、研削電力及び研削力の検出値は、同図(a)及び(b)に示すように、比較的変動することなく、ともに加工状態に応じて確実に上昇した。また、研削電力は、比較的速い速度で立ち上がることから、黒皮工程の開始時点T1から計測時間Ts経過後の時点T2では閾値Psを超えていた。また、この時点T2でワークを研削装置から取り外してその加工面3aの状態を検査したところ、黒皮工程で要求された加工状態になっていることが確認された。
これに対して、図5に示すように、内輪素材3の軸方向で加工面3aの内径が不均一なワーク、いわゆる肩ありワークでは、加工面3aの真円度が悪く、砥石1の加工面3aとの接触が不安定な状態で行われた。このため、研削電力及び研削力の検出値は、同図(a)及び(b)に示すように、激しく変動した。また、研削電力の立ち上がり速度が遅くなって、上記時点T2では研削電力の検出値は閾値Psを超えていなかった。
【0025】
また、図4及び図5より明らかなように、加工面3aの加工状態に対して、研削電力は研削力に比べて応答性が悪く、研削力の変動に比べて研削電力は敏感に変動しないことが実証された。すなわち、研削加工時における上記研削電力の立ち上がり波形は、上記従来品での研削力の変動波形に比べて、砥石1と加工面3aとの接触状態の影響を受け難く、かつ加工状態の良否に応じて確実に変動することが実証された。この結果、本実施形態品では、上記従来品と異なり、加工面3aの周方向での表面粗さが非常に粗く、真円度が極めて悪いワークに対しても、そのワークの加工状態の検出精度を向上させて当該加工状態を高精度に検出することができることが確認された。
これに対して、研削力は、周方向の表面粗さの影響を受けて大きく変動しており、図5(b)に示す計測時間Tsでの研削力の積分値を算出したところ、図4(b)に示すものの値以上の結果となり、加工状態を正確に判断できないことが分かった。
【0026】
図3に戻って、上記ステップS7において、加工状態判断手段51bが黒皮工程を継続させる必要があると判断したときは、演算部51は黒皮時間Tcから計測時間Tsを減算することにより、黒皮工程の残り時間Tnを求め(ステップS8)、この残り時間Tnが経過するまで当該黒皮工程を加工面3aに施させる(ステップS9)。
一方、加工状態判断手段51bが黒皮工程を終了できると判断したときは、演算部51は粗工程を実行するためのプログラムルーチンにジャンプして、粗工程を開始させる。これにより、速度制御手段51cは黒皮速度Vcよりも速い速度である上記粗速度に研削速度を変更するように速度指令を生成し、切込みモータ42に出力する。この結果、砥石1の研削速度が切り換えられ、黒皮工程を終了し粗工程を開始するステップが実行されて、粗速度による粗工程が加工面3aに対して行われる。
【0027】
以上のように、本実施形態の研削装置及びその制御方法では、黒皮工程の開始時点から上記計測時間Ts経過後の研削電力の検出値Prと、その経過時点で適用される所定の閾値Psとの比較結果に基づいて、内輪素材(ワーク)3の加工面3aでの加工状態を判断することにより、この加工面3aでの加工状態を高精度に判断しているので、当該黒皮工程を終了できる時点を正確に決定することができる。さらに、予定された上記黒皮時間Tcよりも短い計測時間Ts経過後に加工状態を判断することから、ワークの黒皮工程を終了できると判断したときには、そのワークでの予定時間Tcよりも(Tc−Ts)秒短縮することが可能となり、当該ワークに対する黒皮工程での処理時間、ひいては研削加工全体での処理時間を短くすることができる。しかも、加工面3aでの加工状態が黒皮工程で要求される所望状態に加工されているか否かについて高精度に判断しているので、上記黒皮速度から粗速度に研削速度を切り換えたときに、より高速の研削速度で砥石1が比較的悪い(粗い)加工面と接触するのを防いで割れなどのダメージが砥石1に生じるのを防止することができるとともに、当該加工面3aの加工状態に応じて砥石1の研削速度を最適に制御することができる。
【0028】
尚、上記の説明では、内輪用の研削装置に適用した場合について説明したが、本発明は砥石回転駆動用の電動モータでの研削電力における立ち上がり速度の緩急に基づいて、ワークの加工状態の良否を判断するものであれば何等限定されるものではなく、外輪外周面などの他の加工面に研削加工を施す各種工作機械に適用することができる。
また、上記の説明では、例えば図4に示したように、黒皮工程の開始時点T1から計測時間Tsを経過した後の時点T2での研削電力の検出値Prに対して、電力値で規定された閾値Psを用いた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば演算部51が上記検出値Prを計測時間Tsで除算することにより、時点T1とT2との間での研削電力の平均立ち上がり速度を求め、この平均速度に対応した閾値で加工状態を判断してもよい。また、図4のT0で示す研削加工(割出工程)を開始した時点からの研削電力の増加量を基準にしてもよく、また上記時点T2での研削電力の加速度を求めて判断してもよい。さらに、研削電力の微分を行う微分回路を設けて、その電力波形をアナログ的に処理する構成でもよい。
【0029】
【発明の効果】
本発明の研削装置及びその制御方法によれば、上記研削電力の立ち上がり速度の緩急に基づきワークの加工状態を判断しているので、例えば真円度が悪いワークに対してもその加工状態を高精度に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係る研削装置の要部構成例を示す模式図である。
【図2】 上記研削装置の主な機能を示す機能ブロック図である。
【図3】 上記研削装置の具体的な動作例を示すフローチャートである。
【図4】 (a)及び(b)は、研削加工前において加工状態の良いワークにおける研削電力の変動及び研削力の変動の一例をそれぞれ示すグラフである。
【図5】 (a)及び(b)は、研削加工前において加工状態の悪いワークにおける研削電力の変動及び研削力の変動の一例をそれぞれ示すグラフである。
【符号の説明】
1 砥石
3 内輪素材(ワーク)
3a 加工面
5 制御ユニット(制御部)
22 電動モータ
Claims (3)
- 砥石を回転駆動する電動モータと、ワークの加工面での加工状態に応じて当該加工面に対する前記砥石の研削速度を制御する制御部とを備え、粗工程の前に黒皮工程を行う研削装置であって、
前記制御部には、基準時点となる第1時点から一定時間経過した第2時点が予め設定されており、
前記第2時点は、黒皮工程を継続して実施する必要があるか否かを黒皮工程の途中で判断するために予め設定された時点であり、
前記制御部は、前記電動モータでの研削電力を検出するとともに、前記第1時点と前記第2時点との間での前記研削電力の増加量を前記研削電力の立ち上がり速度として検出し、前記研削電力の立ち上がり速度の緩急に基づいて、ワークの加工面での加工状態を前記第2時点で判断し、ワーク加工面での加工状態が良いと判断したときは、前記第2時点以降の黒皮工程を行わずに黒皮工程を途中で終了させ、粗工程を開始させることを特徴とする研削装置。 - 前記制御部は、前記研削電力の立ち上がり速度の緩急を、前記第1時点から一定時間経過した前記第2時点での研削電力を検出するとともに、その検出した研削電力と、閾値とを比較することによって判断することを特徴とする請求項1記載の研削装置。
- 電動モータによって回転駆動した砥石を用いて、ワークの加工面に研削加工を行うとともに、そのワークの加工面での加工状態に応じて当該加工面に対する前記砥石の研削速度を制御する制御部を備えた研削装置の制御方法であって、
前記制御部には、基準時点となる第1時点から一定時間経過した第2時点が予め設定されており、
前記第2時点は、黒皮工程を継続して実施する必要があるか否かを黒皮工程の途中で判断するために予め設定された時点であり、
前記研削装置が実行するステップとして、
前記電動モータでの研削電力を検出して、前記第1時点と前記第2時点との間での前記研削電力の増加量を前記研削電力の立ち上がり速度として求める検出ステップと、
前記ステップで求めた研削電力の立ち上がり速度の緩急に基づいて、ワーク加工面での加工状態を前記第2時点で判断する判断ステップと、
ワーク加工面での加工状態が良いと判断したときは、前記第2時点以降の黒皮工程を行わずに黒皮工程を途中で終了し、粗工程を開始するステップと、
を具備することを特徴とする研削装置の制御方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003041414A JP3917088B2 (ja) | 2003-02-19 | 2003-02-19 | 研削装置及びその制御方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003041414A JP3917088B2 (ja) | 2003-02-19 | 2003-02-19 | 研削装置及びその制御方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004249390A JP2004249390A (ja) | 2004-09-09 |
JP3917088B2 true JP3917088B2 (ja) | 2007-05-23 |
Family
ID=33025001
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003041414A Expired - Fee Related JP3917088B2 (ja) | 2003-02-19 | 2003-02-19 | 研削装置及びその制御方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3917088B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN103506915A (zh) * | 2012-06-15 | 2014-01-15 | 日本精工株式会社 | 磨削加工装置 |
Family Cites Families (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH0649272B2 (ja) * | 1985-04-30 | 1994-06-29 | マツダ株式会社 | 研削制御装置 |
JP2917085B2 (ja) * | 1993-06-30 | 1999-07-12 | セイコー精機株式会社 | 研削盤の制御装置 |
JP2002292560A (ja) * | 2001-03-29 | 2002-10-08 | Toyo Advanced Technologies Co Ltd | 研削加工方法及び装置 |
-
2003
- 2003-02-19 JP JP2003041414A patent/JP3917088B2/ja not_active Expired - Fee Related
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN103506915A (zh) * | 2012-06-15 | 2014-01-15 | 日本精工株式会社 | 磨削加工装置 |
CN103506915B (zh) * | 2012-06-15 | 2016-05-25 | 日本精工株式会社 | 磨削加工装置 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2004249390A (ja) | 2004-09-09 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2516382B2 (ja) | 磁気軸受を主軸にもつ加工装置 | |
JP5821613B2 (ja) | 研削異常監視方法および研削異常監視装置 | |
JP5821615B2 (ja) | 研削異常監視方法および研削異常監視装置 | |
JP3917088B2 (ja) | 研削装置及びその制御方法 | |
JP2008093788A (ja) | 研削盤 | |
JP4345322B2 (ja) | 研削装置及びその制御方法 | |
JP6334775B2 (ja) | 加工装置、その制御方法、及びプログラム | |
JP4148166B2 (ja) | 接触検出装置 | |
JP5821616B2 (ja) | 研削異常監視方法および研削異常監視装置 | |
JP2008119803A (ja) | かつぎ量計測装置 | |
JP4098035B2 (ja) | センタレス研削盤における砥石車のドレス方法及びドレス装置 | |
JP3510083B2 (ja) | 研削装置 | |
JP2005059141A (ja) | 研削方法および研削盤の制御装置 | |
JP5326608B2 (ja) | 研削装置 | |
JP2004042174A (ja) | 平面研削方法 | |
JP4715363B2 (ja) | 被加工物の加工部位異常判定方法及びその判定装置 | |
JPH04354673A (ja) | 平面研削盤の制御方法 | |
JP3714162B2 (ja) | 工作機械の制御システムおよび記録媒体 | |
JP2009028890A (ja) | 研削装置 | |
JP5821617B2 (ja) | 研削状態判定方法および研削状態判定装置 | |
JP2619363B2 (ja) | 研削方法及び端面研削装置 | |
JP2004268234A (ja) | 研削装置及びその制御方法 | |
JP2002224954A (ja) | 工作機械の制御システムおよび記録媒体 | |
JP2024076232A (ja) | 研削焼け発生推定装置及び研削焼け発生条件推定装置 | |
JP5287011B2 (ja) | ねじ研削盤およびねじ研削方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20060213 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20060221 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20060418 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20060627 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20060720 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20061017 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20061212 |
|
A911 | Transfer of reconsideration by examiner before appeal (zenchi) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911 Effective date: 20061226 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20070123 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20070207 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |