JP4715363B2 - 被加工物の加工部位異常判定方法及びその判定装置 - Google Patents

被加工物の加工部位異常判定方法及びその判定装置 Download PDF

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Description

本発明は、円筒研削盤によって研削されたワークの研削部分に生じた欠損部や突起部による不良品のうち、真の不良品のみを生産ラインから排除するようにした被加工物の加工部位異常判定方法及びその判定装置に関する。
例えば、回転するワークに対して回転砥石を所定の送り速度で送りながら切り込むことにより、該ワークを所定の直径となるように研削する円筒研削加工において、研削加工中のワーク加工精度を測定し、その測定したデータをフィードバックするシステムとしては、インプロセスゲージによる外径計測装置が一般的である(例えば、特許文献1など参照)。
特許文献1に記載の外径計測装置を備えた加工装置では、加工中に触子とワークとの間に研削屑や砥石の砥屑などが噛み込まれると測定異常が発生することから、測定異常発生時に触子を一旦ワークから離間させ、所定時間経過後に再び触子をワークに接触させ、測定した測定値が測定異常を発生する前の測定値以下であれば、測定異常が解除されたと判断して加工を再開するようにしている。
特開2002−239876号公報(第3頁〜第5頁、第1図および第5図)
しかしながら、触子をワークから離間させて所定時間放置しても噛み込まれた研削屑や砥石の砥屑などが外れるとは限らず、再び測定異常が発生することが考えられる。また、測定異常発生時には、触子を一旦ワークから離間させて所定時間放置させる必要があるため、どうしても計測時間が長くなりワーク生産稼働率が低下する。
そこで、本発明は、研削部分に付着する切り粉や砥石の砥粒などのゴミなどが原因で不良品であると誤検知することを無くし、研削部分を正確に判定して真の不良品のみを生産ラインから排除することができ稼働率の低下を招かない被加工物の加工部位異常判定方法及びその判定装置を提供することを目的とする。
本発明の被加工物の加工部位異常判定方法は、被加工物を回転させ、その被加工物の加工部位に検出部材を接触させ、その検出部材で出力される出力値から加工部位の径寸法を測定し、その出力値が、異常値であると判断したときの閾値を超えた際に、前記検出部材を前記加工部位に接触させた状態を維持したまま1回以上再測定するようにする。
本発明における被加工物の加工部位異常判定方法によれば、回転する被加工物の加工部位に検出部材を接触させ、その検出部材で出力される出力値から加工部位の径寸法を測定し、その出力値が、異常値であると判断したときの閾値を超えた際に、前記検出部材を前記加工部位に接触させた状態を維持したまま1回以上再測定を行うため、研削部分に軽く付着したゴミなどはこの検出部材で移動され或いは取り除かれることになり、2度目以降の測定では大抵閾値を超えることがなくなる。したがって、本発明によれば、研削部分に付着したゴミなどが原因で不良品であるとして誤検知となることを大幅に減らすことができ、真の不良品ワークのみを生産ラインから排除することができる。
また、本発明における被加工物の加工部位異常判定方法によれば、再測定によりそのサイクルについてはサイクルタイムが数秒延びるが、1回目の測定で閾値を超えた出力値が出たものについてのみ実施するので、1日の生産の中で平均サイクルタイムを計算すると殆ど誤差のレベルになり、加工ラインの生産能力を下げることにはならず、稼働率の低下を招かない。
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
[円筒研削盤の構成]
図1は円筒研削盤の全体構成を示す斜視図、図2は円筒研削盤の制御ブロック図、図3はクランクシャフトの一例を示す平面図である。
本実施の形態の円筒研削盤は、図1及び図2に示すように、被加工物であるワーク1をクランプして回転させるワーク回転手段と、進退自在なワーク支持部材であるワークレスト2を当接させて該ワーク1を支持するワーク支持手段と、回転するワーク1に対して回転砥石3を所定の送り速度で送りながら切り込むことにより該ワーク1を所定の直径となるように研削する研削加工送り手段と、ワーク1の加工部位である研削部分に直径検出部材であるスタイラス30を先端に取り付けたインプロセスゲージアーム4を接触させて当該研削部分の直径を計測する計測手段である直径計測手段と、回転砥石3によるワーク1の研削中に生じた欠損部及び/又は突起部を検出する表面状態検出手段と、表面状態検出手段によってワーク1に欠損部及び/又は突起部が検出されたときに、ワークレスト2をワーク1から退避させるようにワーク支持手段に指令する制御手段である制御部5とを備えている。
ワーク1には、例えば図3に示すように、自動車エンジンに使用されるクランクシャフトが使用される。本実施の形態の円筒研削盤により加工される研削部分は、ピストンが取り付けられるクランクシャフトのピン部6a、6b、6c、6dと、ジャーナル部1a,1bである。ワーク1は、図1中矢印Dで示す方向にスライド自在とされた可動テーブル16によって、所定量送られるようになっている。
ワーク回転手段は、図1に示すように、ワーク1の両側に設けられた第1のワーク回転駆動部7と第2のワーク回転駆動部8とからなる。第1のワーク回転駆動部7及び第2のワーク回転駆動部8は、何れもワーク1の端部1a、1b(ジャーナル部1a,1b)をそれぞれクランプするワーククランプ(ワークチャック)9、10と、ワーク回転駆動モータ11によって回転する回転駆動軸12とを有している。この回転駆動軸12は、第1のワーク回転駆動部7と第2のワーク回転駆動部8との間に亘って設けられ、それぞれのワーククランプ9、10を同期して回転させることによって前記ワーク1を回転させる。
ワーク支持手段は、図1及び図2に示すように、回転砥石3と相対向する反対側から当該回転砥石3を支えるワークレスト2と、このワークレスト2を該ワーク1に対して進退自在とするワークレスト駆動部(図示は省略する)とを有している。ワークレスト2は、ワーク1を支持する前進位置(図2の実線位置)と、ワーク1から離れた後退(退避)位置(図2の二点鎖線位置)との間を可動自在とされる。
研削加工送り手段は、回転するワーク1に対して回転砥石3を所定の送り速度で送る回転砥石送り機構部13からなる。この回転砥石送り機構部13は、図2に示すように、砥石台18に取り付けられた回転砥石3を、砥石送り用サーボモータ19の駆動によって回転するボールねじ20により、前記ワーク1に対して近接離反する方向(C方向)に移動自在とする。また、この回転砥石送り機構部13による回転砥石3の送り速度は、砥石送り用サーボモータ19によって自由に調整可能とされ、任意の速度とすることができる。
回転砥石3は、図1に示すように、砥石駆動用モータ14の回転をベルトカバー15内に収納したプーリー・ベルト(図示は省略する)に伝達し、このプーリー・ベルトによって同図中矢印Bで示す方向に回転するように構成されている。
直径計測手段は、図2に示すように、研削部分に接触されるスタイラス30と、このスタイラス30を先端に取り付けた一対のインプロセスゲージアーム4とを有したインプロスゲージ17からなる。インプロスゲージ17は、スタイラス30をワーク1の研削部分に挟み込んで接触させることにより、当該研削部分(ピン部6a〜6d、ジャーナル部1a〜1e)との接触でインプロセスゲージアーム4が振動し、そのインプロセスゲージアーム4が振動して出力される出力値(例えば電圧(mV)の変化)を出力する。
表面状態検出手段は、回転砥石3によるワーク1の研削中に生じた研削部分の欠損部(欠円)及び/又は突起部を検出する。この表面状態検出手段は、図2に示すように、インプロセスゲージアーム4の振幅を増幅するインプロセスゲージアンプ21と、その振幅を変換して予め定めた振幅の閾値を検出する閾値検出部22とからなる。閾値は、切削加工時にインプロセスゲージアーム4が振れた振幅のうち、ピン部6a〜6d及びジャーナル部1a〜1eの真円度が製品として満足し得る範囲であるか否かで決められる。つまり、ピン部6a〜6d及びジャーナル部1a〜1eの真円度が満足し得る程度であるときの最大限許されるインプロセスゲージアーム4による振幅値の上下限値を閾値とする。
制御部5は、図2に示すように、閾値検出部22が閾値を超えたことを検出したときに、前記ワークレスト2をワーク1から退避させるように前記ワークレスト駆動部に指令を出す。閾値検出部22が閾値を超えたことを検出した場合は、研削中の研削部分に何らかの原因で欠損部(切り欠き)又は突起部が出来たと判断できる。
[円筒研削加工方法]
次に、前記した円筒研削盤を使用してクランクシャフトのピン部を研削する方法について説明する。
図4は本発明方法によりピン部を円筒研削する工程を順次示すフローチャート、図5は砥石切り込み、インプロセスゲージ径データ及びインプロセスゲージ振幅と時間との関係をそれぞれ示す図、図6は研削部分に欠損部が生じたときの図、図7は欠損部が出来ることによって突起部が生じたときの図、図8は突起部によってさらに欠損部が生じたときの図、図9はワークレストを退避させて欠損部及び突起部を修正研削するときの図である。
先ず、砥石駆動用モータ14を駆動させて回転砥石3を回転させることにより図4のフローチャートの処理を開始する。次に、ステップS1の工程において、クランクシャフトであるワーク1を円筒研削盤に投入させる。次いで、ステップS2の工程において、ワーク1の両端をそれぞれのワーククランプ9、10でクランプさせ、当該ワーク1を固定させる。
次に、ステップS3の工程において、ワーク回転駆動モータ11を回転させることによって、前記ワーク1を回転させる。次に、ステップS4の工程において、ワークレスト2をワーク1に対して前進させ、図2に示すように、当該ワークレスト2をピン部6aに接触させる。ワークレスト2は、回転砥石3とは反対側からピン部6aを支えるように当接する。このワークレスト2のワーク1に対する当接により、回転するワーク1の回転ぶれを抑えることができる。
次に、ステップS5の工程において、砥石送り用サーボモータ19を駆動して回転砥石3をワーク1に対して近接する方向に前進させる。そして、この回転砥石3を所定の送り速度(ファーストフィード)で送りながらワーク1のピン部6aを研削する第1送り加工を行う。ファーストフィードでは、図5(a)に示すように、回転砥石3の送り速度を早くしてピン部6aを荒削りする。
次に、ステップS6の工程において、インプロセスゲージ17を駆動しインプロセスゲージアーム4のスタイラス30を、図2に示すように、ピン部6aを挟み込むようにして接触させる。そして、ステップS7の工程において、このインプロセスゲージ17によって、回転砥石3によるピン部6aの研削部分の直径を計測する。次いで、インプロセスゲージ17によって第1送り加工で設定しておいた直径となったことを検知したら、図4のフローチャートをステップS8の工程に進める。
ステップS8の工程では、図5(a)に示すように、回転砥石3の送り速度をファーストフィードよりも遅らせた送り速度(ミディアムフィード)で加工を行う第2送り加工とする。この第2送り加工では、同様にインプロセスゲージ17によって回転砥石3によるピン部6aの研削部分の直径を計測する。そして、同じくインプロセスゲージ17によって第2送り加工で設定しておいた直径となったことを検知したら、図4のフローチャートをステップS9の工程に進める。
ステップS9の工程では、図5(a)に示すように、回転砥石3の送り速度をミディアムフィードよりもさらに遅らせた速度(マイクロフィード)で加工を行う第3送り加工とする。この第3送り加工では、やはりインプロセスゲージ17によって回転砥石3によるピン部6aの研削部分の直径を計測する。
また、次のステップS10の工程では、ピン部6aの研削部分に切り欠きが形成される欠損部又は突起部が形成された否かを検知する表面状態検知モードに入る。この表面状態検知モードは、インプロセスゲージ17による径のデータ(図5(b)参照)に変換する前のインプロセスゲージアーム4が振動する振幅の生データに閾値を設定し(図5(c)参照)、このインプロセスゲージアーム4の振幅をモニターする。
例えば、図6に示すように、ピン部6aに欠損部24が発生したとすると、その欠損部24がインプロセスゲージアーム4のスタイラス30を通過するときに閾値を超えた振幅が、前記した閾値検出部22に検出される。この閾値を超えた振幅が検出された場合、研削部分に欠損部24が形成されたと判断する。なお、欠損部24の深さLは、例えば3〜5μm程度である。また、この欠損部24がワークレスト2を通過すると、図7の二点鎖線で示す状態から実線で示す状態のようにワーク1全体がワークレスト2側に押される。このため、ピン部6aの研削部分には、図7に示すように、突起部23が形成される。
また、この突起部23がワークレスト2を通過すると、図8の二点鎖線で示す状態から実線で示すようにワーク1が回転砥石3側に押される。この結果、ピン部6aの研削部分には、図8に示すように、新たな欠損部24が発生する。この突起部23の形成と欠損部24の発生による連鎖は、マイクロフィードが終了するまで起こる。例えば、マイクロフィードによる第3送り加工時には、研削による取りしろが10μm、送りが3μm/秒、ワーク回転数が60〜100rpm/毎分程度の場合、欠損部24が2箇所、突起部23が1箇所できる。
ステップS11の工程では、閾値検出部22によって検出した振幅値が設定した閾値の範囲内にあるか否かを判断する。この判断工程で、検出された振幅値が閾値の範囲内に入っていれば、図4の工程を次のステップS12の工程に進める。ステップS12の工程では、回転砥石3の送りを停止させた状態で回転砥石3によってピン部6aを研削し(マイクロドゥエル)、所定の直径となるまで研削を行う仕上げ加工(最終研削加工工程)である第4送り加工を行う。
この第4送り加工において、ピン部6aが所定の設定径に仕上がったら、ステップS13の工程でワークレスト2を後退させる。次に、ステップS14の工程では、インプロセスゲージアーム4をワーク1から後退させる。これで、ピン部6aの加工が終了する。なお、一番目のピン部6aの研削が終了したら可動テーブル16を移動させてワーク1を送り、次に加工すべきピン部6bを研削加工位置に移動させる。
一方、ステップS11の工程において、閾値検出部22によって検出した振幅値が設定した閾値の範囲を超えていた場合は、図4のフローチャートをステップS15の工程に移行させる。ステップS15の工程では、ワークレスト2をワーク1から離間する方向に後退(退避)させる。この時点では、既にピン部6aには、欠損部24又は突起部23が形成されてしまっているが、新たな欠損部24又は突起部23の発生は抑制できる。
次に、この図4のフローチャートをステップS16の工程に進める。ステップS16の工程では、例えば回転砥石3をマイクロフィードよりもさらに遅くした砥石送り速度(第二マイクロフィード)で加工を行う第5送り加工を行う。第5送り加工では、ワークレスト2がワーク1から退避した位置にあるため、ワークレスト2によってワーク1が回転砥石3側へ押されることも無く、また、ワーク1が回転砥石3によってワークレスト2側に押されることも無い。したがって、発生した欠損部24又は突起部23は、図9の二点鎖線で示すように、回転砥石3によって削られる。
この第二マイクロフィードによる第5送り加工を終了した後、この図4のフローチャートをステップS17の工程に進める。ステップS17の工程では、マイクロドゥエルによる第4送り加工を行う。そして、ピン部6aの直径が所定の値になると、次のステップS18の工程でインプロセスゲージアーム4をワーク1から後退させる。これで、欠損部24又は突起部23が無く真円度の高い高精度なピン部6aを加工することができ、この図4のフローチャートは終了となる。
次に、研削加工が終了したワーク1の研削部位(ピン部6a〜6d及びジャーナル部1a〜1e)が所定の径寸法となったか否かを判定する加工部位異常判定処理を行う。加工部位異常判定処理は、ワーク1を回転させ、そのワーク1の加工部位であるピン部6aにスタイラス30を接触させ、そのスタイラス30で出力される出力値からピン部6aの径寸法を測定し、その出力値が、予め設定した異常値(欠損部又は突起部が形成されることで製品としては不良品である判断される出力値)であると判断したときの閾値を超えた際に、スタイラス30をピン部6aに接触させた状態を維持したまま1回以上再測定する処理である。
前記出力値が前記閾値を超えたか否かは、図10に示す異常判定検知手段である異常判定検知部31で判定し、その出力値が前記閾値を超えた際に、指令手段である司令部32が、前記スタイラス30を研削部位に接触させた状態を維持したまま1回以上再測定するようにインプロセスゲージアーム4に指令する。
前記した加工部位異常判定処理を行うには、先ず、図10に示すように、ワーク1を円筒研削盤にセットしたままの状態で、ピン部6aを研削したときと同じ回転数でワーク1を回転させる。このとき、ワークレスト2は、ワーク1から離れた位置に待避させておく。次に、インプロセスゲージアーム4の先端に設けたスタイラス30を、前記ワーク1のピン部6aに接触させる。このとき、ピン部6aが楕円形状になっていたり、振れのある形状になっていた場合、スタイラス30を先端に有したインプロセスゲージアーム4が振動して得られる振幅波形は、それぞれ図11及び図12に示すような波形になる。
図11は、ピン部6a(他のピン部6b〜6d又はジャーナル部1a,1bも同様)が楕円形状のときの振幅波形、図12は、ピン部6a(他のピン部6b〜6d又はジャーナル部1a〜1eも同様)に振れがある場合の振幅波形を示す。このような場合、異常値であると判断したときの閾値は、楕円や振れ成分の絶対値よりも大きめに設定しなくてはならないため、例えばピン部6aに欠損(欠円)が生じたときに出力される波形(以下、この波形を欠円波形という)が、図13に示すように楕円成分や振れ成分に埋もれてしまい、この欠円波形を正しく判定することができない。
そこで、この問題を解決するために、測定波形にハイパスフィルター(微分回路)を掛け、楕円や振れの周波数成分を排除するようにする。ハイパスフィルターは、ピン部6a自身の楕円形状や振れによるワーク1の1回転に1回か2回の低い周波数のみをカットするために、ワーク1の回転数の2倍強以下(2倍+α以下)の周波数をカットするカットオフ周波数を設定する。ワーク1が楕円形状をしていると、ワーク回転数の2倍の周波数のsin波が発生するので、それをカットするには2倍強のカットオフ周波数を設定する必要がある。
ハイパスフィルターを掛けた場合、図14に示すように、欠円波形の直後に、反対側にオーバーシュートした波形が現れる。このオーバーシュートした波形は、ハイパスフィルターを掛けたことにより、その特性上現れるものである。このように、高い周波数までカットすると、欠円そのものの信号まで小さくなって欠円発生ワークを良品として後工程に流すことになるが、本例のようにワーク回転数の2倍+α程度のカットオフ周波数に設定することでそれを防ぐことができる。
欠円波形(欠円信号)は、マイナス側(グラフの下側)に出るので、反対側のオーバーシュートの発生は、欠円が発生した場合の誤検知には繋がらないが、測定面(ピン部6a〜6dやジャーナル部1a〜1e)に、加工中に発生した切り粉や砥石の砥粒やその他のゴミが付着していることが希にあり、それをスタイラス30が拾った場合には、図15に示すような波形になるため、ゴミの跳ね返り波形(ハイパスフィルターによる跳ね返り波形)が閾値に掛かってしまい、誤検知となる。つまり、ゴミの付着が原因で誤検知となることで、本来製品としては良品であるのに、欠円があるとして不良品と判断されてしまう。
研削加工では、加工中において研削部分にクーラント液を掛けながらでないと加工熱による焼き戻しや熱膨張による精度不良が発生するため、クーラント液の供給を無くすことはできない。また、完璧な濾過フィルターを付けたとしても加工時に発生する切り粉や脱落した砥粒が加工後のピン部6a〜6dやジャーナル部1a〜1eに付着することは避けられない。また、誤検知に影響するゴミの大きさは、数μm〜10数μm程度のものが多く、エアブロー等で吹き飛ばそうとしても対象物(ゴミ)が小さく、クーラント液の表面張力でくっついているので取り除くのは困難である。
そこで本発明では、欠円であると誤検知されたものの相当数がゴミの付着による図15に示すような波形であり、ピン部6a〜6dやジャーナル部1a〜1eに軽く付着したものが多いため、1回目の測定で出力値である欠円信号が閾値を超えたものについては、スタイラス30を研削部分に接触させた状態のままで1回以上再度測定を行う。ワーク1やクーラント液の洗浄度などの違いで、ゴミの付着強度も変わるので、欠円信号が閾値を超えたものについては、再測定を2度、3度或いはそれ以上繰り返して行うようにする。
このようにすることで、軽く付着したゴミは、スタイラス30の接触程度でも付着位置が当該スタイラス30で検出される検出位置から移動することが多く、2度目の測定では大抵スタイラス30が再びゴミを拾うことが無く、波形として現れないため、誤検知を大幅に減らすことができる。再測定すると、そのサイクルについてはサイクルタイムが数秒延びるが、1回目の測定で欠円信号が出たものについてのみ実施するので、1日の生産の中で平均サイクルタイムを計算すると、殆ど誤差のレベルになり、加工ラインの生産能力を下げることになはならない。
再測定してもゴミの移動が無い場合や細かいキズによる盛り上がり(製品品質上は問題がなく不良品とならない程度のキズ)は、何回測定しても結果が変わらないため、再測定時にワーク1を回転させる回転速度を落とす。すなわち、ピン部6a〜6d又はジャーナル部1a〜1eを研削する研削速度と同じ回転速度で最初の欠円測定を行った状態からその回転速度よりも遅い回転速度に落とす。例えば、研削時のワーク回転速度の1/5程度に回転速度を落とす。
このように、ワーク1の回転速度を遅くすると、ハイパスフィルターは微分回路であるから、ゴミ成分の出力をxとした場合、その信号によって発生する跳ね返り成分はdx/dtであり、回転数を遅くして分母の時間成分を大きくすることで、跳ね返り成分を小さくすることができる。図16は、ワーク1の回転数を落としたときのゴミ検知波形を示す。図16では、ワーク1の回転数を遅くしたことで、スタイラス30が再びゴミを拾ったことで生じたハイパスフィルターによる跳ね返り波形が小さくなっていることが判る。
このようにすれば、ゴミ信号の跳ね返り成分を小さくできるので、本当の欠円信号に対して小さくでき、移動しないゴミの付着やキズにおいても欠円波形の閾値に引っ掛からなくなり、誤検知を飛躍的に小さくすることができる。また、測定時の回転数を遅くすることにより、スタイラスが跳ね上がる分が減ることでゴミ信号自体のレベルを下げることもでき、それに伴って跳ね返り成分をさらに小さくすることができる。
1回目の測定時にワーク1の回転数を遅くすると、生産ラインのサイクルタイムを延ばすことになるが、本発明では、再測定時のみにワーク回転数を遅くすることで、トータルの生産量を殆ど犠牲にすることなく実施することができる。
また、前記ピン部6a〜6d又はジャーナル部1a〜1eの研削加工途中で研削部位の径寸法を測定していることに加え、研削終了後にも本発明の加工部位異常判定処理を行っているので、真の良品ワークのみを効率良く製造することが可能となる。
図17は、誤検知対策を施した加工部位異常判定処理のフローチャートを示す。先ず、ステップS31の処理でワーク1の回転速度を円筒研削盤でピン部6a〜6d又はジャーナル部1a〜1eを研削したときと同じ回転速度で回転させて1回目の異常判定検知を行う。
そして、次のステップS32で、前記した異常判定検知部31が閾値を超える信号が有ったか否かを判断し、閾値を超える信号がなかった場合(NO)は、この加工部位異常判定処理をステップS33に進める。ステップS33では、良品ワーク(OKワーク)であると判断し、ワーク1を後工程(ピン部6a〜6d及びジャーナル部1a,1bをラップフィルムで研磨するラップ処理)に流す処理を行う。閾値を超える信号が有った場合は、この加工部位異常判定処理をステップS34に進め、ワーク1の回転速度を落とす処理を行う。すなわち、最初の測定(1回目の測定)で、例えば欠円信号を拾った場合は、スタイラス30がゴミを拾ったことによってハイパスフィルターによる跳ね返り波形を誤検知した可能性があるので、測定中のワーク1の回転速度を落とす。
そして、次のステップS35の処理で、前記した指令部32がインプロセスゲージアーム4を駆動してスタイラス30を研削部位に接触させ、加工部位異常判定処理を再度行うようにする。この2度目の加工部位異常判定処理で閾値を超える信号が無かった場合は、この加工部位異常判定処理をステップS37に進め、良品ワークであると判断し、ワーク1を後工程(ラップ処理)に流す処理を行う。閾値を超える信号が有った場合は、この加工部位異常判定処理をステップS38に進め、不良品ワーク1として判断する。
なお、前記した加工部位異常判定処理で、ステップS32の処理で閾値を超える信号が有った場合に次のステップS34の処理を行うのではなく、ステップS31の処理を2度、3度或いはそれ以上何度か繰り返して行うようにしてもよい。
[その他の実施形態]
以上、本発明を適用した具体的な実施の形態について説明したが、本発明は、上述の実施の形態に制限されることなく種々の変更が可能である。
例えば、図18に示すように、前記した閾値を上側と下側にそれぞれ定め、ある決められた範囲内で、前記閾値を超える出力値が最初に上側に出た後、次に下側に出た場合を突起部(ゴミがスタイラス30で移動しなかったときの突起も含む)と判定し、前記閾値を超える出力値が最初に下側に出た後、次に上側に出た場合を、欠損部(欠円)と判定するようにしてもよい。なお、ここで言う突起部は、ピン部及びジャーナル部自体の突起はあり得ないのでゴミのことを指している。
例えば、図18のピン部の位相が0°〜180°の範囲内で、最初に上側の閾値を超える波形が出力され、次に下側の閾値を超える波形が出力された場合、これを突起部であると判定し、ピン部の位相が180°〜360°の範囲内で、最初に下側の閾値を超える波形が出力され、次に上側の閾値を超える波形が出力された場合、これを欠損部であると判定する。この判定は、高速に処理できるシーケンサを使用することで実現できる。
円筒研削盤の全体構成を示す斜視図である。 円筒研削盤の制御ブロック図である。 クランクシャフトの一例を示す平面図である。 ピン部を円筒研削する工程を順次示すフローチャートである。 砥石切り込み、インプロセスゲージ径データ及びインプロセスゲージ振幅と時間との関係をそれぞれ示す図である。 研削部分に欠損部が生じたときの図である。 欠損部が出来ることによって突起部が生じたときの図である。 突起部によってさらに欠損部が生じたときの図である。 ワークレストを退避させて欠損部及び突起部を修正研削するときの図である。 加工部位異常判定装置の制御ブロック図である。 ピン部又はジャーナル部が楕円形状のときの振幅波形を示す。 ピン部又はジャーナル部に振れがある場合の振幅波形を示す。 欠円波形が楕円成分や振れ成分に埋もれてしまった場合の振幅波形を示す。 ハイパスフィルターを掛けた場合に欠円波形の直後にハイパスフィルターによる跳ね返り波形が現れた場合の振幅波形を示す。 スタイラスがゴミを拾った場合に、ゴミの跳ね返り波形が閾値に掛かって誤検知となった場合の振幅波形を示す。 クランクシャフトの回転数を落としたときのゴミ検知波形を示す振幅波形を示す。 誤検知対策を施した加工部位異常判定処理のフローチャートである。 閾値を上側と下側にそれぞれ設けて欠円及びゴミの有無を判断可能としたときの振幅波形を示す。
符号の説明
1…ワーク(クランクシャフト)
1a〜1e…ジャーナル部
2…ワークレスト
3…回転砥石
4…インプロセスゲージアーム
5…制御部
6a〜6d…ピン部
7…第1のワーク回転駆動部
8…第2のワーク回転駆動部
13…回転砥石送り機構部
21…インプロセスゲージアンプ
22…閾値検出部
23…突起部
24…欠損部
30…スタイラス
31…異常判定検知部(異常判定検知手段)
32…指令部(指令手段)

Claims (5)

  1. 被加工物を回転させ、その被加工物の加工部位に検出部材を接触させ、その検出部材で出力される出力値から加工部位の径寸法を測定し、その出力値が、異常値であると判断したときの閾値を超えた際に、
    前記検出部材を前記加工部位に接触させた状態を維持したまま1回以上再測定する
    ことを特徴とする被加工物の加工部位異常判定方法。
  2. 請求項1に記載の被加工物の加工部位異常判定方法であって、
    前記閾値を超える出力値が出力された際には、前記被加工物を回転させていた回転速度よりも遅い回転速度に落とした後に再測定を行う
    ことを特徴とする被加工物の加工部位異常判定方法。
  3. 請求項2に記載の被加工物の加工部位異常判定方法であって、
    前記検出部材で出力される出力値にハイパスフィルターを掛け、そのハイパスフィルターには、前記被加工物の回転速度の2倍強以下の周波数をカットするカットオフ周波数を設定する
    ことを特徴とする被加工物の加工部位異常判定方法。
  4. 請求項1から請求項3の何れか一つに記載の被加工物の加工部位異常判定方法であって、
    前記閾値を上側と下側にそれぞれ定め、ある決められた範囲内で、前記閾値を超える出力値が最初に上側に出た後、次に下側に出た場合を、突起部と判定し、前記閾値を超える出力値が最初に下側に出た後、次に上側に出た場合を、欠損部と判定する
    ことを特徴とする被加工物の加工部位異常判定方法。
  5. 被加工物をクランプして回転させる回転手段と、
    前記被加工物の加工部位に検出部材を接触させ、その検出部材で出力される出力値から加工部位の径寸法を計測する計測手段と、
    前記出力値が、異常値であると判断したときの閾値を超えたか否かを検知する異常判定検知手段と、
    前記出力値が前記閾値を超えた際に、前記検出部材を前記加工部位に接触させた状態を維持したまま1回以上再測定するように指令する司令手段とを備えた
    ことを特徴とする被加工物の加工部位異常判定装置。
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