JP3916938B2 - ケナフの増殖方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ケナフを大量に増殖する技術に関し、特に、ケナフの実生の子葉節以高の部位を外植片として、多芽体を誘導し、発根させて植物体を再生することにより、外植片由来のクローンを大量に増殖させる技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
植物組織を培養容器内で栄養繁殖あるいは増殖させて植物体を再生し、大量のクローン苗を生産する組織培養技術は、現在、花卉類や農作物を中心に適用され、品質の均一化や収量の増加というような効果がもたらされている。
【0003】
近年、工業用材料となる木本植物や草本植物においても大量増殖技術の適用が試みられるようになってきている。特に、ケナフ、さとうきび等の草本植物は、生長が早く、その多くは一年性であることから、木本植物資源の代替資源として注目されている。なかでも、ケナフ(ハイビスカス カナビナス、Hybiscus cannabinus)については、生長の早さとその靭皮繊維が各種の工業材料として有用性が高いことから、その大量増殖技術の確立が期待されている。
【0004】
ケナフの組織培養技術に関しては、ケナフのカルス誘導方法として特開平7−3149号公報等、ケナフの再分化方法として特開2000−217457号公報に開示される技術がある。
【0005】
特開平7−313149号公報に開示される技術は、ケナフの種子から直接カルスを誘導する点において、カルスを短期間に誘導することができるものである。また、特開2000−217457号公報に開示される技術は、ケナフのカルスをサイトカイニン系の植物ホルモンを含有するpH調整された合成培地に置床させて根及び茎を誘導して、安定かつ効率的に再分化個体を得ようとするものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、植物体の再生にあたって未分化組織であるカルスを経由して植物体を得る方法では、遺伝的変異を起こす可能性が高い点は否めない。
これに対して、マルチプルシュート法は、増殖させようとする植物体の組織から直接、多芽体を誘導して、これを増殖し、この多芽体から伸長してくるシュートを用いて植物体を再生する。したがって、この方法では、その過程で未分化組織を経由しないため、遺伝的安定性においては最も優れている。
この場合、植物種によっては、多芽体誘導が困難な場合があり、多芽体誘導をいかに効率的に行うかがマルチプルシュート法による大量増殖の鍵となる。
【0007】
本発明では、かかる観点に立脚し、ケナフにおいて、効率よく、また、安定したマルチプルシュートを誘導することにより、遺伝的安定性が高い大量増殖法を確立することを目的としてなされたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ケナフ実生の茎頂部及び子葉を含む部位を外植片とする多芽体誘導を試みたところ、通常、多芽体誘導に用いられる培養系、すなわち、サイトカイニン類を添加したMS培地あるいはその改変培地で培養しても、頂芽優勢傾向が強く頂芽の伸長を抑制して腋芽や側芽の形成が促進されず、多芽体を得ることできなかった。そこで、鋭意検討した結果、ケナフの実生の子葉節以高部位を外植片として用い、特に腋芽に着目して腋芽誘導により多芽体を誘導できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明によれば、以下の手段が提供される。
【0009】
(1)ケナフの増殖方法であって、
(a)ケナフの実生の子葉節以高部位を含み、頂芽及び子葉が除去されたケナフの実生の胚軸片を、サイトカイニン類を含有する培地に置床し培養して腋芽由来シュートを発現させる工程と、
以下の工程:
(b−1)前記胚軸片上のカルス及び前記腋芽由来シュートに形成された葉を除去する工程、
(b−2)切除処理後の腋芽由来シュートの茎を有する胚軸片をサイトカイニン類を含有する培地に置床して培養する工程、
を有する継代培養工程を、マルチプルシュートが発現するまで反復実施する工程、
とを備える、方法。
(2)前記(a)工程において培地に置床する胚軸片は、腋芽が未分化状態の胚軸片である、(1)記載の方法。
(3)前記実生は、予めサイトカイニン類が付与されている種子を培養して得られる、(1)又は(2)記載の方法。
(4)前記実生は、前記サイトカイニン類が付与された種子を、サイトカイニン類を含有する培地で培養して得られる、(3)記載の方法。
(5)前記サイトカイニン類は、6−ベンジルアミノプリンである、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1には、ケナフからマルチプルシュートを誘導する一連の工程の概略を示している。
(培養材料)
本発明では、ケナフの植物組織を培養材料(外植片)とする。
【0011】
本発明で用いる植物組織は、無菌的に培養された植物体から採取されることが好ましい。より好ましくは、試験管やフラスコ等の容器内で生育させることのできる程度のおおよそ約5cm〜約20cmの小植物体である。最も好ましくは、無菌的に種子から発芽させて得られる実生から採取される。例えば、ケナフの場合には、約5〜約20cmの実生を材料とすることができ、好ましくは、約5cm〜約10cmの実生である。図1(a)および図1(b)には、種子から実生を得る工程が記載されている。
【0012】
無菌的に種子から発芽させて得られる実生を材料とする場合、好ましくは、種子をサイトカイニン類を含有する培地において発芽させ実生とした育苗工程を実施し、この工程によって得られた実生を用いるようにする。発芽〜実生工程において、サイトカイニン類が添加されていることにより、その後のシュート発現及びマルチプルシュート発現の効率を向上させることができる。例えば、ケナフの場合には、おおよそ10日間の育苗により、好ましい実生となる。
なお、本育苗工程で使用する固体培地としては、植物の組織培養に一般に用いられている培地を広く使用することができる。すなわち、無機成分及び炭素源を必須成分として、その他必要に応じて植物成長調節物質、ビタミン、アミノ酸を含有する培地を用いることができる。
【0013】
ここでサイトカイニン類とは、例えば6−ベンジルアミノプリン(6BA)、カイネチン、ゼアチン、6−(r,r−ジメチルアラミノ)プリン(ZiP)、N−(2−クロロ−4−ピリド)−N′−フェニルウレア(CPPU)、1−フェニル−3−(1,2,3−ティアディアゾール−5−YL)ウレア(4ディアズロン:TDZ)等を挙げることができる。本発明における発芽〜実生工程においては、好ましくは6BAを用いる。6BAの培地における濃度は、約0.1mg/l〜約10mg/lであることが好ましく、より好ましくは、約0.5mg/l〜約10mg/lであり、さらに好ましくは、約1mg/l〜約5mg/lである。なお、サイトカイニン類に加えて、ナフタレン酢酸(NAA)等のオーキシン類を加えておくこともできる。NAAの場合、例えば、0.1mg/l〜1mg/lの範囲で加えることができる。
【0014】
また、播種前の種子には予めサイトカイニン類が付与されていることが好ましい。種子に、予めサイトカイニン類が添着されていることにより、実生におけるホルモンバランスが、植物組織から腋芽を誘導し、腋芽由来シュートを発現させやすいように作用するものと考えられる。
種子にサイトカイニン類を付与するには、好ましくは、予め、無菌化した種子を、サイトカイニン類を含む滅菌水に浸漬するか、あるいは、当該滅菌水を噴霧等により供給する等することができる。サイトカイニン類は、好ましくは、種子に含浸されている。
本発明の当該種子の前処理としては好ましくは6BAを用いる。6BAを含む溶液濃度は、約0.0001mg/l〜約1mg/lであることが好ましく、より好ましくは、約0.0005mg/l〜約0.01mg/lであり、さらに好ましくは、約0.001mg/lである。
【0015】
本発明においては、予めサイトカイニン類が付与された種子を、サイトカイニン類を含む培地で発芽させ実生とし、この実生の子葉節以高部位を外植片とすることが最も好ましい。
【0016】
本発明において用いる植物組織は、このような材料の一部から採取される。好ましくは、無菌的に切除されて採取され、調製される。
本発明において用いる植物組織としては、ケナフの茎の節及び当該節以高部位を含有し、茎上部及び前記節に形成される葉が除去されている茎を使用することができる。節を1個あるいは2個を含有するように調製されていることが好ましい。より好ましくは、節を1個のみ含有するように調製されている。外植片のサイズは特に限定しないが、節1個のみを含有する茎の場合には、当該節から上方約0.5mm〜約1mm及び下方約2mm〜約5mmで茎が切断されている状態とすることが好ましい。
葉については、葉のみが切除されていることが好ましく、葉が茎に対して軸を結合されているときには、軸部を残すようにすることが好ましい。
【0017】
好ましい植物組織としては、特に、植物体の茎頂部あるいは分枝した茎頂部の最高位の節以高部位を含み、シュート頂及び節に形成された葉が除去されている茎である。より好ましくは、ケナフの実生の子葉節以高部位を含み、頂芽及び子葉が除去されている胚軸であり、さらに好ましくは、腋芽が未分化状態の胚軸である。なお、ここで腋芽が未分化状態にあるとは、腋芽が肉眼的に観察できない状態にあることをいう。理論的には明らかでなく、また、当該推論に拘束されるものではないが、腋芽未分化状態の子葉節以高部位を使用することで、再現性よく効率的に腋芽誘導可能ひいてはマルチプルシュートを誘導可能であると考えられる。また、未分化状態の場合、腋芽分化予定部位に外来遺伝子を導入することにより、形質転換体を培養、作出することができる。
【0018】
例えば、ケナフについては、約5cm〜約20cmの実生であって、腋芽未分化状態のものを好ましく使用することができる。特に、約5cm〜約10cmの実生にあっては、その後の、シュート発現率も良好である点においてさらに好ましい。なお、ケナフの実生の場合、子葉節から下方約2mm〜約5mm程度で胚軸を切除して外植片とすることが好ましい。
図2には、実生から子葉節以高部位を外植片として使用する工程の一例が記載されている。
【0019】
(腋芽由来シュート発現工程)
植物体から採取した外植片(茎あるいは胚軸)を、人工の固体培地に置床して腋芽を誘導し、腋芽由来シュートを発現させる。図1(c)、(d)及び図3に、腋芽由来シュートの発現工程の一例を示す。
本工程あるいは後で説明する継代培養工程で使用する人工培地としては、植物の組織培養に一般に用いられている培地を広く使用することができる。すなわち、無機成分及び炭素源を必須成分として、その他必要に応じて植物成長調節物質、ビタミン、アミノ酸を含有する培地を用いる。
無機成分としては、窒素、燐、カリウム、ナトリウム、カルシウム、硫黄、鉄、マンガン、亜鉛、沃素、硼素、モリブデン、塩素、コバルト等の元素を含む無機化合物が用いられる。炭素源としては、炭水化物、例えばショ糖又はグルコースが用いられる。好ましくはショ糖である。ショ糖は、好ましくは、3w/v%含有する。植物成長調節物質としては、オーキシン、サイトカイニンが用いられる。オーキシンとしては、例えば、3−インドール酢酸(IAA)、3−インドール酪酸(IBA)、ナフタレン酢酸(NAA)、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)、4−クロロ−2−メチルフェノキシ酢酸、p−クロロフェノキシ酢酸、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸等を挙げることができる。サイトカイニン類は前記したとおりのものを挙げることができる。
ビタミンとしては、例えばチアミン、ピリドキシン、ニコチン酸等を挙げることができる。アミノ酸としては、例えばグリシン、グルタミン酸、リジン等を挙げることができる。
なお、固体培地を調製する場合のゲル化剤としては、寒天、ジェランガム等を使用できる。これらの濃度は、通常寒天0.8w/v%、ジェランガム0.25w/v%で使用される。
【0020】
実際に培養する際に用いられる培地としては、植物組織培養に用いられる培地、例えばMS培地(Murashige, T.(1962), Physiol. Plant. 15: 473 - 497) 、B5培地(Gamborg, O.L. (1968), Exp. Cell. Res. 50: 151 - 158)、N6培地(Chu (1975))、WP培地(Lloyd, G. (1981), Int. Plant Prop. Soc. 30: 421 - 427) 、BTM培地(Chalupa, V. (1984) Biologia Plnt. (praha) 26: 374 - 377)等を挙げることができる。特に、MS培地及びその改変培地(全培地成分を半分量〜1/3にしたMS培地)が好ましく、より好ましくは、1/3MS培地である。
【0021】
本発明における腋芽由来シュート発現工程では、植物成長調節物質として、サイトカイニン類を含有するようにする。サイトカイニン類としては、上記した各種サイトカイニン類を使用できるが、好ましくは,6BA、カイネチンであり、より好ましくは6BAである。6BAを培地中に添加する場合、サイトカイニン類の培地における濃度は、6BAの場合には、約0.01mg/l〜約10mg/lであることが好ましく、より好ましくは、約0.5mg/l〜約10mg/lであり、さらに好ましくは、約1mg/l〜約5mg/lである。
また、好ましくはサイトカイニン類のみを培地に添加するが、サイトカイニン類に加えてオーキシン類を加えることもできる。例えば、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸等を利用できる。この場合、サイトカイニン類が優勢に作用する範囲でオーキシン類を加えるようにする。例えば、サイトカイニン類1mg/lに対して、オーキシン類を0.1mg/l程度とする。
【0022】
その他の培養条件としては、温度は、25〜30℃、照度2000〜2500lx(24時間)が、腋芽由来シュートの効率的な形成及びその後のマルチプルシュート発現のために好ましい。
【0023】
外植片をこのような条件下で培地にその下部を挿し付けて培養することにより、おおよそ2週間程度で、分化していた腋芽を伸長させ、あるいは腋芽分化予定部位から腋芽を誘導発現させてその腋芽を伸長させて、腋芽由来シュートを発現させることができる。腋芽未分化の、すなわち、腋芽が観察されていない外植片においては、高い確率で腋芽を誘導でき、腋芽由来シュートを発現させることができる。
なお、本工程においては、腋芽が約1mm以上になった場合において、腋芽由来シュートが発現したものとする。腋芽由来シュートは少なくとも1本以上確認できればよい。特に、子葉節以高部位を用いた場合には、子葉節から2本の腋芽由来シュートが発現していることが好ましい。
本発明では、このような腋芽由来シュートの発現を確認できた時点で、この外植片を継代工程に移行させる。
ケナフの実生の子葉節以高部位を外植片(腋芽未分化のもの)として用いた場合には、本工程は2週間程度である。
【0024】
(継代培養工程)
継代培養工程では、腋芽由来シュートを有する外植片のトリミングとサイトカイニン類含有培地における培養を反復実施する。図1(d)〜(h)に継代培養工程の一例の概略を示し、また、図4に、トリミングの一例を示し、図5に、マルチプルシュート発現前の継代培養工程、図6に、マルチプルシュートを発現した継代培養工程の例を示す。
腋芽由来シュートが発現した外植片は、その茎部等において発生したカルスを切除する。カルスは、茎の切断面付近に発生することが多く、この場合、外植片下部を切断することになる。また、腋芽由来シュートに形成された葉も切除する。なお、腋芽由来シュートが発現した段階で、当初外植片において子葉ないし葉を切除した際の痕跡(例えば、子葉が軸を介して胚軸に結合されていた場合の軸)は、自然に落下していることが多い。そうでない場合には、切除する。
このようにして腋芽由来シュートを有する外植片を、腋芽由来シュートの茎以外の部位、すなわち、腋芽由来シュート上の葉やカルスを切除してトリミングして再調整することにより、当該外植片における頂芽優勢が阻害されることが期待される。本発明においては、このようなトリミングも、マルチプルシュートの発現に寄与するものと考えられる。
【0025】
次いで、この再調整した外植片をサイトカイニン含有培地に挿し付けて培養する。
本工程においても、サイトカイニン類を含有する人工培地で外植片を培養する。サイトカイニン類としては、好ましくは,6BA、カイネチンであり、より好ましくは、6BAである。6BAを培地中に添加する場合、サイトカイニン類の培地における濃度は、約0.01mg/l〜約10mg/lであることが好ましく、より好ましくは、約0.5mg/l〜約10mg/lであり、さらに好ましくは、約1mg/l〜約5mg/lである。もっとも好ましくは、約3mg/l〜約5mg/lである。特に、Everglades41及びTainung2においては、約3mg/l〜約5mg/lであることが好ましい。
また、サイトカイニン類に加えてオーキシン類を加えることもできるが、好ましくは、サイトカイニン類のみとする。
【0026】
その他の培養条件としては、温度は、25〜30℃、照度2000〜2500lxの範囲が、マルチプルシュートの効率的な発現のために好ましい。
【0027】
継代培養工程における培養期間は、おおよそ2〜4週間程度とする。好ましくは約3週間とする。当該培養期間を経過したら、再度、上記した切除処理を行い、外植片を再調整して、培養工程を実施する。
このようにして外植片を継代することにより、サイトカイニン類含有培地からのホルモン刺激が繰り返し付与されること及びトリミングが繰り返されることにより、頂芽優勢傾向の強い例えばケナフにおいても、サイトカイニン類が初めて効果的に作用する状態が準備されていくものと考えられる。
【0028】
継代培養工程を反復実施することにより、外植片には、マルチプルシュートが発現する。新たなシュートは、子葉節あるいは胚軸に形成される。
例えば、ケナフにおいては、継代培養工程(培養期間は好ましくは各3週間とする)を少なくとも2回実施することにより、マルチプルシュートを発現させることができる。好ましくは3回以上実施する。
【0029】
(増殖工程)
このようにしてマルチプルシュートを発現した外植片は、必要あれば分割して、増殖用培地で培養することにより、さらに増殖させることができる。増殖用培地は、具体的には、前記した無機成分の他、ショ糖等の炭水化物、ビタミン等を含有し、6BAを0.5mg/l〜10mg/l、好ましくは、1mg/l〜10mg/l含有する増殖用の人工培地は、MS培地あるいはその改変培地(好ましくは1/3MS培地)を使用することが好ましい。
【0030】
(シュート伸長工程)
次いで、増殖したマルチプルシュートをシュート伸長培地に移植することにより、効率よくシュートを伸長させることができる。シュート伸長培地としては、前記の無機成分及び炭素源、ビタミン等を含有する。
【0031】
(発根工程)
次いで、伸長したシュートを分割、あるいは分割せずに発根培地に移植することにより、シュートを更に伸長させ、かつ発根させることができる。発根培地としては、前記の無機成分及び炭素源、ビタミン等を含有する。その後、水分を含ませたバーミキュライトなどの土壌資材に植え込む。
【0032】
以上の工程から得られた発根したシュートを、馴化を経て鉢挙げ種苗を得ることができる。
【0033】
以上説明したように、本発明のケナフの腋芽由来シュート発現方法は、ケナフの大量増殖において有用な培養材料を提供することができる。さらに、当該培養材料からのマルチプルシュートを効率よく得ることができる。特に、従来、マルチプルシュートを誘導しがたいケナフにおいて、効率よくマルチプルシュートを発現させることができる。
また、外植片を得るための実生を、予めサイトカイニン類を付与した種子を培養して取得する場合には、さらに効率よく腋芽由来シュートを得ることができ、その後の、マルチプルシュートを効率よく得る事ができる点において有用である。
【0034】
さらに、この方法によって得られた腋芽由来シュートを有する外植片を継代培養するマルチプルシュート発現方法を、マルチプルシュートを得られ難いケナフに適用することにより、効率よく大量増殖用材料を得ることができる。
【0035】
さらに、種子のサイトカイニン類前処理工程を含む、ケナフの腋芽由来シュート発現方法及びマルチプルシュート発現方法によれば、当該前処理工程により腋芽由来シュートやマルチプルシュートを効率よく誘導できる外植片を提供することができる。
また、種子のサイトカイニン類前処理工程、外植片調製工程、腋芽由来シュート発現工程と、腋芽由来シュートを有する外植片を継代する継代培養工程を有する、ケナフの増殖方法によれば、効率的にあるいは短期間でケナフの増殖が可能となっている。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
(外植片を得るための実生の調製)
ケナフとして、Everglade41、Tainung2、SF459、HC-G4及び青皮3号を選択し、その種子を用いた。
【0038】
(種子の殺菌及び前処理)
各ケナフ種子を滅菌水で2〜3回洗浄し、次いで70w/v%エタノールで種皮の色素が抽出されるくらいまでガラス棒ですすいだ。種子を取り出した後、次亜塩素酸ナトリウム溶液(濃度5%)に浸漬した。この状態で、5分間超音波処理を行った。
【0039】
超音波処理後、次亜塩素酸ナトリウム溶液内の種子を、滅菌されたスパーテルで攪拌して種皮表面に付着した気泡を除去し、クリーンベンチ内で10分間静置した。クリーンベンチ内で次亜塩素酸ナトリウム溶液のみを捨て、次亜塩素酸ナトリウム臭がなくなるまで種子を滅菌水で5回以上洗浄した。このとき、洗浄水中で沈降する種子を選択し、6BAを0.001mg/l含有する滅菌水中に1時間浸漬して、播種用種子とした。
【0040】
(育苗工程)
滅菌後の各種類の播種用種子から、それぞれ100粒を滅菌したピンセットで採取し、種子ができるだけ重ならないように固形培地に播種した。種子は、植物培養試験管あたり3〜4粒とした。
なお、固形培地は、ハイポネックス液5-10-5(窒素:リン酸:カリウム5:10:5)を水で1000倍希釈し、INA Agar培地用寒天・BA−30を最終濃度が2w/v%となるように添加して調製したものを滅菌して用いた。6BAの濃度は、1mg/lとした。この培地を植物培養用試験管あたり20ml注入して固化したのち、培地として用いた。なお、ハイポネックス液5-10-5は、窒素全量5.00%(アンモニア性窒素1.95%、硝酸性窒素0.90%)、水溶性リン酸10.0%、水溶性カリウム5.0%、水溶性マグネシウム0.05%、水溶性マンガン0.001%、水溶性ホウ素0.005%の濃度で各成分を含有する、商業的に入手可能な液体肥料である。
培養は、28℃、2500lxの連続照明下、静置して行った。おおよそ10日間育苗すると、各種の種子から15cm程度の実生が得られた。この段階の実生においては、いずれも、子葉の葉腋において、腋芽は肉眼的観察によって観察されていない状態であり、腋芽未分化状態にあった。
【0041】
(実施例2)
(腋芽由来シュート発現工程)
実施例1で得られた250本(Everglade41、Tainung2、SF459、HC-G4及び青皮3号について各50本)の実生の子葉節から下部5mmの部位から上部を無菌的に採取した。この子葉節以高部位から、さらに、上部1mmの部位から上部を無菌的に切除し、さらに、子葉を根元から切除した胚軸を得、これを外植片とした。
【0042】
このように調製された腋芽未分化状態の外植片を、腋芽誘導用培地に、正立状態で、その下部を挿し付けて置床し、25〜28℃、2500lx連続照明下で、14日間培養した。
腋芽誘導用培地は、MS基本培地中に、ショ糖が3w/v%、6BAが3ないし5mg/lの濃度で含有されるように調製した寒天培地とし、植物培養用ガラス試験管にこの培地を注入したものに、外植片1個を適用した。
【0043】
培養開始後、約7日経過後には、腋芽が肉眼で観察されるようになり、10〜14日経過後には、胚軸から長さが1mm以上の腋芽由来シュートが確認できるようになっているのも観察されるようになった。腋芽由来シュートは、子葉節から発生しており、ほとんどの場合、胚軸の両側から2本の腋芽由来シュートを確認できた。
腋芽由来シュートが確認できた外植片では、子葉の基部は枯れて自然に欠落しているか、あるいは軽くふれれば欠落するような状態であった。また、胚軸の下部にはカルスが形成されている外植片もあった。
【0044】
(実施例3)
(マルチプルシュート発現)
(継代培養工程1)
実施例2で2本の腋芽由来シュートの発現が観察された外植片234個(内訳;Everglades 41=50個、Tainung 2=49個、青皮3号=44個、SF459=41個、HC-G4=50個)について、葉やカルスおよび枯死部位を無菌的に切除して外植片をトリミングした。この外植片をシュート発現用培地と同組成の固体培地に挿し付けて、培養した。培養は21日間とした。
培養期間経過後(外植片調製から35日間経過後)において、外植片を観察したところ、腋芽由来シュート以外のシュートを有する外植片は見出されなかった。腋芽由来シュートには、葉が形成され、外植片の一部には、胚軸下部にカルスが形成されていた。
【0045】
(継代培養工程2)
21日経過後の外植片(外植片調製から35日経過後)につき、腋芽由来シュートの葉の他、カルス、枯死部位を無菌的に切除して外植片を再調製した。この外植片を腋芽誘導用培地と同組成の固体培地に挿し付けて、再度培養した。培養は同じく21日間とした。
培養期間経過後(外植片調製から56日経過後)において、外植片を観察したところ、腋芽由来シュート以外のシュートを有する外植片を見出すことができた。腋芽由来シュートの発現部位である子葉節あるいは胚軸基部から1mm以上のマルチプルシュートが発現した。
【0046】
(継代培養工程3)
21日経過後の外植片(外植片調製から56日経過後)につき、腋芽由来シュートの葉、カルス、枯死部位を無菌的に切除した外植片を再調製した。この外植片をシュート発現用培地と同組成の固体培地に挿し付けて、再度培養した。培養は同じく21日間とした。
培養期間経過後において、外植片を観察したところ、多くの外植片について腋芽由来シュート以外のシュートを有する外植片を見出すことができた。また、すでに新たなシュートを発現していた外植片においては、シュートがさらに増殖し、伸長していた。腋芽由来シュートの発現部位である子葉節あるいは胚軸基部から多くのシュートを発現していた。外植片調製から、約56日経過するあたりからマルチプルシュートが形成された。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、ケナフにおいて、効率よく、また、安定したマルチプルシュートを誘導することにより、遺伝的安定性が高い大量増殖法を確立することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ケナフの種子の播種からマルチプルシュートの発現までの工程の概略を示す図(a)〜(h)である。
【図2】 ケナフの実生から外植片を調製し、培地に挿し付ける操作を示す図である。
【図3】 外植片から腋芽由来シュートが発現する経緯を示す図である。
【図4】 腋芽由来シュートを発現した外植片をトリミングして再調整して、培地に挿し付ける操作を示す図である。
【図5】 マルチプルシュート発現前の継代培養工程の経緯を示す図である。
【図6】 マルチプルシュートが発現した継代培養工程の経緯を示す図である。

Claims (5)

  1. ケナフの増殖方法であって、
    (a)ケナフの実生の子葉節以高部位を含み、頂芽及び子葉が除去されたケナフの実生の胚軸片を、サイトカイニン類を含有する培地に置床し培養して腋芽由来シュートを発現させる工程と、
    以下の工程:
    (b−1)前記胚軸片上のカルス及び前記腋芽由来シュートに形成された葉を除去する工程、
    (b−2)切除処理後の腋芽由来シュートの茎を有する胚軸片をサイトカイニン類を含有する培地に置床して培養する工程、
    を有する継代培養工程を、マルチプルシュートが発現するまで反復実施する工程、
    とを備える、方法。
  2. 前記(a)工程において培地に置床する胚軸片は腋芽未分化状態の胚軸片である、請求項1記載の方法。
  3. 前記実生は、予めサイトカイニン類が付与されている種子を培養して得られる、請求項1又は2記載の方法。
  4. 前記実生は、前記サイトカイニン類が付与された種子を、サイトカイニン類を含有する培地で培養して得られる、請求項3記載の方法。
  5. 前記サイトカイニン類は、6−ベンジルアミノプリンである、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
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