JP4316221B2 - シクラメン塊茎の生産方法、この方法に使用する液体培地、およびシクラメン苗の生産方法 - Google Patents

シクラメン塊茎の生産方法、この方法に使用する液体培地、およびシクラメン苗の生産方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シクラメン(本明細書において、「シクラメン」とは、シクラメン属植物Cyclamenを意味する。)の組織培養によるシクラメン塊茎の生産方法、この方法に使用する液体培地、よびクラメン苗を生産する方法に関する。
【0002】
【従来技術】
シクラメンは観賞用植物として日本で最も多く生産されている鉢物である。このシクラメンの繁殖は、従来、種子を採取し、播種して発芽させ、育苗することによって行われてきた。しかし、シクラメンは花色や草型等の形質の揃った優良品種を大量に生産することが困難な植物である。形質の固定を目的として自殖交配を繰り返すと草勢が劣化する等のいわゆる自殖弱勢が顕著に起こり、自殖系統間の交雑により一代雑種を育成することが困難である。また、自殖交配および兄姉交配を組み合わせることにより形質をある程度揃えた固定品種を育成することはできるものの、この場合にも近交弱勢により生長が遅く病害に弱い等の問題が生じている。
【0003】
このような問題を解決するために、これまでに組織培養を利用したシクラメンの生産方法が提案されてきた。1つの方法として、シクラメン塊茎等の組織から不定芽を形成させ、この不定芽を増殖・育成することによりシクラメン苗を生産する方法が提案されている(特公平3−53895号公報等)。しかし、これらの方法は小規模な培養器内での固形培地を利用した方法であり、不定芽の培養期間が長く、また培養中に枯死する不定芽の割合も高いため、効率的に不定芽を増殖することができない。
【0004】
他の方法として、シクラメンの組織を培養して得たエンブリオジェニックカルス(「エンブリオジェニックカルス」とは、不定胚形成能を有するカルスを意味する。)から不定胚を分化させ、分化させた不定胚をさらに培養してシクラメン幼苗を生産する方法が提案されている。例えば、大谷らは、テーブルミニライラックローズの展開葉を一定の植物ホルモンを含む固形Lismaier&Skoog(LS)培地で培養してエンブリオジェニックカルスを得、さらにエンブリオジェニックカルスを植物ホルモンを含まない固形LS培地で培養してカルス増殖と不定胚形成を続け、形成された不定胚を固形LS培地で照明下に培養することにより、塊茎様体を経て幼植物体を得る方法を報告している(Plant Tissue Culture Letters,8(2),pp121−123,1991参照)。また、大橋らは、品種ショパンNo.12の根を植物ホルモンを添加した固形Murashige&Skoog(MS)培地に置床してカルスを形成させ、形成したカルスを植物ホルモン無添加の固形MS培地に移植して幼植物体を得る方法を報告している(栃木県農業試験研究報告、第39号、pp57−74、1992参照)。
【0005】
不定胚を利用した生産方法は、上述の不定芽を利用した方法に比較して、多くの苗を低価格で短期間に生産できる点で優れている。しかし、上述の大谷らの方法および大橋らの方法は固形培地を使用しているため、培養のための広い空間や大型の温調設備等が必要となる。また、固形培地により培養して幼植物体を得る方法では、固形培地上で充分に生育させてからポットに鉢上げしなければ苗を得ることができない。そして鉢上げの際には手間のかかる馴化処理を行うことが必須である。
【0006】
これに対し、液体培地による植物組織の培養は、固形培地による培養と比較して培養のための空間や温調設備等の節約が可能であり、かつ単位体積あたりの培養効率が高いことが知られており、液体培養を取り入れたシクラメンの生産方法も提案されている。
【0007】
特開平5−211824号公報は、シクラメンの植物組織または細胞をピクロラムを含む液体培地によって培養することによりシクラメンを増殖させる方法を開示している。この公報には、固形培地で得たカルスを、3%のショ糖、2ppmピクロラムおよび2ppmのゼアチンを含む液体SH培地を使用して通気培養することにより、または同一組成の液体SH培地で培養した不定胚を植物ホルモンを含まない固形MS培地で培養することにより、塊茎様体が得られることが報告されている。
【0008】
特開平5−236834号公報は、シクラメンの外植片を2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)とカイネチンを含む固形培地で培養してカルスを形成させた後、ホルモンを含まない固形培地にて小瘤状の不定胚を誘導し、この不定胚を2,4−Dとカイネチンを含む液体培地にて培養し、得られた培養物から一定範囲の大きさの細胞塊のみを選別しながら継代培養するシクラメンの不定胚誘導方法を開示している。この公報には、ショ糖3%を含む固形MS培地で培養して小瘤状の不定胚を得、この不定胚を1ppmの2,4−D、0.01ppmのカイネチンおよび5%のショ糖を含む液体LS培地で培養する例が記載されている。
【0009】
特公平7−55112号公報は、シクラメンの組織を培養して得たエンブリオジェニックカルスを液体培養する工程、および、得られたカルスをジベレリンを含む培地で培養して不定胚を形成させた後に得られた不定胚から幼植物体を再生成させる工程、からなるシクラメン幼植物体の再生方法を開示している。この公報には、固形培地で得たエンブリオジェニックカルスを、ショ糖20〜120g/lを含む液体培地で培養して増殖させた後、ジベレリンおよびショ糖20〜120g/lを含む固形MS培地で培養して不定胚を形成させ、さらに同一培地上で培養を続けることにより幼植物体を再生する方法が記載されている。
【0010】
特開平6−169662号公報は、シクラメンの幼植物体の一部から形成させたカルスを固形培地上で培養してカルスを増殖させるA工程と、A工程で増殖したカルスを液体培地中で培養して増殖させるB工程と、B工程で増殖させたカルスを培養して不定胚を形成させた後、不定胚から幼植物体を再生させるC工程と、C工程で得られた幼植物体を育成するD工程、からなるシクラメンの幼苗の大量生産方法を開示している。各工程の培地の炭素源としては、好ましくはショ糖を20〜90g/l、さらに好ましくはA工程およびB工程においては50g/l、C工程およびD工程においては30g/lの濃度で使用するのがよいと記載されており、また、C工程およびD工程において使用される培地は固形培地であっても液体培地であってもよいが、C工程は固形培地、D工程は液体培地を使用するのが好ましいと記載されている。
【0011】
また、組織培養によりシクラメンの保存用塊茎を生産する方法も開示されており、特開平7−123881号公報には、シクラメンの不定胚から再分化させた幼植物体を、炭素源として濃度2〜9%のショ糖を含有し、かつ植物ホルモンを含有しない液体培地中で培養することによって幼植物体の塊茎部を育成した後、幼植物体の葉茎部および根部を除去して保存用塊茎を得る方法が開示されている。
【0012】
【特許文献1】
特公平3−53895号公報
【特許文献2】
特開平5−211824号公報
【特許文献3】
特開平5−236834号公報
【特許文献4】
特公平7−55112号公報
【特許文献5】
特開平6−169662号公報
【特許文献6】
特開平7−123881号公報
【非特許文献1】
“Plant Tissue Culture Letters”、(日本)、1991年、8巻、2号、p121−123
【非特許文献2】
“栃木県農業試験研究報告”、(日本)、1992年、39号、p57−74
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
特開平5−211824号公報、特開平5−236834号公報、特公平7−55112号公報、および特開平6−169662号公報に記載された方法は、カルス誘導・増殖工程および不定胚誘導工程のいずれかの工程において生産効率の高い液体培地による培養を採用しているが、全工程を通して液体培地を使用した方法ではない。また、ショ糖濃度の培養に与える影響については、詳細な記載がない。さらに、これらの公報には不定胚形成後幼植物体を得る工程については、詳細な記載が認められないか、または固形培地による培養を記載している。
【0014】
しかし、固形培地により培養して幼植物体を得る方法では、上述のように、鉢上げの際に手間のかかる馴化処理を行うことが必須である。また、シクラメンの幼植物体を生長抑制のために低温下に置くと、葉茎部や根部に障害が生じ、保存中に枯死したりまたは雑菌汚染などにより生育不良となる恐れがあり、シクラメンの幼植物体を保存することが難しく、そのためシクラメン鉢物の出荷時期に合わせて幼植物体を生産する必要がある。また、幼植物体の大量搬送は嵩張り手間を要する。
【0015】
これに対し、特開平7−123881号公報に記載されたシクラメンの保存用塊茎の生産方法によると、塊茎を保存することによりシクラメン鉢物の出荷時期に合わせて塊茎を生産する必要がなくなり、また塊茎の大量搬送が容易となるため好ましい。しかし、この方法では幼植物体の葉茎部および根部を除去しなければならないため、多大な労力が必要とされる。
【0016】
そこで、本発明の課題は、幼植物体の葉茎部および根部を除去するという多大な労力を必要とせず収集・保存することができ、かつ発芽率の高いシクラメン塊茎を提供することである。
【0017】
また、本発明の別の目的は、種子と同様の条件で定植することにより簡便かつ大量にシクラメン苗を生産する方法を提供することである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、シクラメンの組織から誘導したカルスを培養してシクラメン塊茎を誘導する際に、グリセリン又はマンニットで浸透圧を一定の範囲に調整した液体培地を使用すれば、シクラメン塊茎の発芽・発根を抑制して均一に肥大させることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0019】
すなわち、本発明は、まず、シクラメンの組織からカルスを誘導し、該カルスを、グリセリン又はマンニットで220〜750mOsm(ミリオスモル)の範囲の浸透圧に調整した液体培地中で培養することによりシクラメン塊茎を誘導して肥大させることを特徴とするシクラメン塊茎の生産方法である。グリセリン又はマンニットで浸透圧が220〜750mOsmの範囲に調節された液体培地を使用することにより、シクラメン塊茎を均一に肥大させることができ、しかも発芽・発根の程度を顕著に抑えることができる。従って、塊茎を収集し保存するにあたって、幼植物体の葉茎部と根部を切除するという多大な労力を必要としない。また、シクラメン鉢物の出荷時期に合わせて組織培養する必要もない。また、シクラメンの組織からカルスを誘導する際に、220〜750mOsmの範囲の浸透圧に調整した液体培地または固形培地を使用すると、塊茎の獲得率が高まるため好ましい。
【0020】
本発明のシクラメン塊茎の生産方法に使用される液体培地は、無機成分よび炭素源を少なくとも含んでおり、グリセリン又はマンニットからなる浸透圧調整剤を含有しており、浸透圧が220〜750mOsmである液体培地である。尚、本明細書において、「浸透圧調整剤」とは、組織や細胞の生育のための栄養成分として添加されるのではなく、浸透圧を調整する目的で添加される、水溶性の化合物を意味する。
【0021】
本発明の生産方法により得られたシクラメン塊茎は、従来の固形培地上で培養する方法により生産された幼植物体よりも高い乾燥耐性を有するため、特別な馴化処理を施さなくても、種子と同様の条件で栽培することにより簡便にシクラメン苗を生産することが可能であり、その結果、均一性の高いシクラメン鉢物を簡便かつ大量に生産することができる。得られたシクラメン塊茎を培養土に定植した後の発芽率は約50%以上になる。従って、本発明はまた、上述の生産方法によって得られる実質的に発芽・発根していないシクラメン塊茎培養土に定植し、塊茎を発芽・発根させて育苗することを特徴とするシクラメン苗の生産方法をも提供する。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に、図1に示したシクラメン塊茎の製造方法の概略図を参照しながら、本発明を詳細に説明する。
【0023】
本発明において使用することができるシクラメンの品種としては、ビクトリア、バーバーグ、ピュアホワイト、ピアス、パステル、ミニシクラメン等が挙げられるが、本発明はこれらの品種に限定されるものではない。また、外植片として培養に供することができるシクラメン組織としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム溶液等で表面を殺菌した後滅菌水で洗浄した開花株の葉身、葉柄、塊茎、葯基部、花柱等の各組織、または、次亜塩素酸ナトリウム溶液等で表面を殺菌した後滅菌水で洗浄した種子を無菌的に固形培地に定植して得られる無菌幼植物の各組織、あるいは、これらの各組織を培養して得られる不定芽の葉身、葉柄等を挙げることができる。
【0024】
上述の不定芽は公知の方法によって得ることができ、例えば、無機成分の濃度を3分の1に希釈したMS培地(1/3MS培地)に0〜2.0mg/l濃度の1−ナフタレン酢酸(NAA)および0.1〜2.0mg/l濃度の6−ベンジルアミノプリン(BA)、20〜60g/l、好ましくは30〜50g/lのショ糖、3g/lのジェランガムを添加して調整した固形MS培地に、無菌幼植物や開花株の各組織を置床することにより誘導することができる。
【0025】
図1に示すように、上述の各組織を培養することによりカルスを誘導する。カルスは公知の方法で誘導することができ、例えば、MS培地に1〜10mg/lのオーキシンおよび0〜0.1mg/lのサイトカイニン、20〜120g/lのショ糖、3g/lのジェランガムを添加して調整した固形MS培地に、葉身などを5〜10mm四方に切断して置床することによって誘導することができる。もしくは、同組成でジェランガムを添加しない液体培地に組織を直接投入してもよい。いずれの場合も25℃、暗所で1〜3ケ月間培養することにより、図2に示すようなカルスが得られる。
【0026】
尚、シクラメン組織を培養することによりカルスを誘導する際には、20〜750mOsmの範囲の浸透圧に調整した液体培地を使用することができ、または、この液体培地にジェランガム、寒天、アガロース等を添加して固化させた固形培地を使用することもできる。浸透圧を220〜750mOsmの範囲に調整すると、塊茎の獲得率が向上するため好ましい。浸透圧の調整はブドウ糖、果糖等の単糖;麦芽糖、ショ糖等の二糖;ガラクトオリゴ糖等のオリゴ糖;カルボキシメチルセルロース等の水溶性多糖;ソルビット、マンニット等の糖アルコール;グリセリン等の水溶性高級アルコール;またはこれらの混合物を用いて行うことができる。
【0027】
本発明では、得られたカルスをグリセリン又はマンニットで220〜750mOsmの範囲の浸透圧に調整した液体培地を使用して培養し、懸濁細胞、不定胚を経て塊茎を得る(図1参照)。尚、本明細書において、「懸濁細胞」とは、液体培地中に懸濁した状態で増殖させた細胞塊(増殖したカルス)を意味する。液体培地の浸透圧をグリセリン又はマンニットで220〜750mOsmの範囲に保つことにより、塊茎の発芽・発根を抑制することができ、塊茎を均一に肥大させることができる。得られた塊茎は、種子と同様の条件で培養土に定植することにより発芽する。シクラメン塊茎の発芽率は約50%を超える。浸透圧が220mOsmより小さいと塊茎が膨潤し、また750mOsmより大きいと塊茎が肥大しにくくなりまたは褐変する傾向があるため、得られた塊茎を培養土に定植した後の発芽率が低下する。
【0028】
本発明において、培養に使用する液体培地の浸透圧は、培地に添加される全成分、即ち、組織や細胞の生育に必要な無機成分および炭素源、必要に応じて添加される植物ホルモン、ビタミン、アミノ酸等の他、浸透圧を調整するために添加される浸透圧調整剤、の全ての成分によって決定される。
【0029】
液体培地には、組織や細胞の生育に必要な無機成分が必須成分として含まれている。無機成分としては、N、P、K、Na、Ca、Mg、S、Fe、Mn、Zn、B、Mo、Cl、I、Co等の元素を含む無機成分、例えば、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、燐酸二水素カリウム、硫酸第一鉄、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等が挙げられる。これらの無機成分を含有する一般的に用いられる植物培養用培地を特に制限なく使用することができる。例えば、MS培地、White培地、LS培地、GamborgのB5培地、ニッチ−ニッチ培地、N6培地等を使用することができる。特に、MS培地、1/3MS培地を使用するのが好ましい。
【0030】
液体培地にはまた、組織や細胞の生育に必要な炭素源が必須成分として含まれている。炭素源としては、ショ糖、ブドウ糖、果糖等の糖を挙げることができ、好ましくはショ糖を使用する。炭素源としてのショ糖の濃度は、20〜120g/lが好ましい。
【0031】
液体培地にはさらに、必要に応じて、少量の植物ホルモン、ビタミン、アミノ酸その他の慣用的に使用される添加物等が添加されていてもよい。使用される植物ホルモンとしては、例えば、NAA、2,4−D、3−インドール酢酸(IAA)等のオーキシン(濃度:0〜10mg/l)やBA、カイネチン、ゼアチン等のサイトカイニン(濃度:0〜1.0mg/l)が挙げられる。また、ビタミン類としては、ビタミンB1、B2、B6、C等(濃度:0〜150mg/l)を例示することができる。アミノ酸類としては、グリシン、アラニン、システイン、リシン等(濃度:0〜1000mg/l)を例示することができる。
【0032】
使用される液体培地には、さらに、浸透圧を220〜750mOsmに調整するためのグリセリン又はマンニットからなる浸透圧調整剤が含まれる。リセリンは10〜40g/lの濃度で、マンニットは20〜80g/lの濃度で使用する。
【0033】
上述のように、液体培地の浸透圧は、液体培地に添加された成分の全体によって決定される。また液体培地のpHは、4.0〜7.0、好ましくは5.8に調整される。pHが4.0より小さい場合にも7.0より大きい場合にも生育障害が生じやすくなる。
【0034】
本発明では、図1に示すように、カルスから懸濁細胞を誘導する。この際、上述の220〜750mOsmの浸透圧を示すように調整された液体培地、好ましくは20〜120g/lのショ糖、10〜40g/lのグリセリンまたは20〜80g/lのマンニット、1〜10mg/lのオーキシンおよび0〜1.0mg/lのサイトカイニンを含む浸透圧220〜750mOsmの液体MS培地にカルスを導入し、暗所にて培養することにより行う。培養は、10〜30℃、好ましくは20〜25℃の範囲の温度下で行う。温度が10℃より低い場合にも30℃より高い場合にも生育障害が発生しやすくなる。また、液体培養は、回転振盪培養機で1分間に60〜120回、好ましくは1分間に80〜100回の回転培養条件下で行うが、ボトルローラー式培養器、ジャーファーメンター等を使用して行うこともできる。2〜4週間培養すると、図3に示すような懸濁細胞を得ることができる。
【0035】
次に、図1に示すように、上述の220〜750mOsmの浸透圧を示すように調整された液体培地、好ましくは20〜120g/lのショ糖、10〜40g/lのグリセリンまたは20〜80g/lのマンニット、0〜1mg/lのオーキシンおよび0〜1.0mg/lのサイトカイニンを含む浸透圧220〜750mOsmの液体MS培地に懸濁細胞を継代し、暗所、10〜30℃、好ましくは20〜25℃の温度下で、1分間に60〜120回、好ましくは1分間に80〜100回の回転培養条件で4〜8週間培養すると、図4に示すような不定胚が分化する。
【0036】
さらに、図1に示すように、上述の220〜750mOsmの浸透圧を示すように調整された液体培地、好ましくは20〜120g/lのショ糖、10〜40g/lのグリセリンまたは20〜80g/lのマンニット、0〜1mg/lのオーキシンおよび0〜1.0mg/lのサイトカイニンを含む浸透圧220〜750mOsmの液体1/3MS培地に不定胚を継代し、暗所、10〜30℃、好ましくは20〜25℃の温度下で、1分間に60〜120回、好ましくは1分間に80〜100回の回転培養条件で4〜12週間培養すると、図5に示すような小塊茎が誘導される。
【0037】
本発明によると、図5に示すような発芽・発根が抑制されている肥大したシクラメン塊茎が得られる。特に、実質的に発芽・発根しておらずかつ直径が4〜8mmの球形に肥大したシクラメン塊茎は、培養土に定植した後の発芽率が高く、発芽後に良好な苗へと導く。
【0038】
得られた塊茎は滅菌済みの容器を用いて密閉して保存することができる。また、図1に示すように、種子と同様の条件で定植することにより発芽させることができる。即ち、水で湿潤したシクラメン発芽用の培養土、例えばバーミキュライト、ピートモス、パーライト等を充填したポットまたはプラグトレー等に塊茎を植付け、温度を10〜25℃、好ましくは20℃に維持すると発芽し、簡便かつ大量に図6に示すようなシクラメン苗を生産することができる。固形培地上で培養して得た幼植物体を使用する場合のような、鉢上げの際の手間のかかる馴化処理は行う必要がない。
【0039】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0040】
実施例1:浸透圧調整剤としてのグリセリンを添加した液体培地を使用したシクラメン塊茎の誘導
▲1▼カルスの誘導
シクラメン(品種ビクトリア)の開花株の展開葉を70%エタノール溶液に10秒間浸漬した後に、有効塩素濃度1%の次亜塩素酸ナトリウム溶液に15分間浸漬して殺菌処理を行った。次いで、この葉を滅菌水で3回洗浄して表面の次亜塩素酸ナトリウムを除去した。洗浄後の葉を約5mm四方に切断し、MS培地に10mg/lのNAA、0.1mg/lのカイネチン、30g/lのショ糖を添加してpH5.8とし、さらに3g/lのジェランガムを添加してオートクレーブで滅菌処理した固形MS培地に置床した。これを、25℃、暗所にて2ケ月間培養してカルスを得た。
【0041】
▲2▼懸濁細胞の誘導
MS培地にNAAを10mg/l、カイネチンを0.1mg/l添加し、これにショ糖を30g/lとグリセリンをそれぞれ10、20、30、40g/1加え、pH5.8とし、オートクレーブで滅菌処理して液体培地を調整した。カルスをこの液体培地に懸濁して、25℃、暗所にて、1分間に80〜100回の回転培養条件で2〜4週間培養することにより、懸濁細胞を誘導した。
【0042】
▲3▼不定胚の誘導
MS培地にNAAを0.1mg/l、カイネチンを0.1mg/1添加し、これにショ糖を30g/1とグリセリンをそれぞれ10、20、30、40g/l加え、pH5.8とし、オートクレーブで滅菌処理して液体培地を調整した。細胞を1000Gで遠心分離し、この液体培地に再懸濁した。2週間毎に新鮮培地に継代し、6週間振盪培養することにより不定胚を誘導した。
【0043】
▲4▼塊茎の誘導
1/3MS培地にNAAを0.1mg/l、カイネチンを0.1mg/l添加し、これにショ糖を30g/1とグリセリンをそれぞれ10、20、30、40g/l加え、pH5.8とし、オートクレーブで滅菌処理して液体培地を調整した。不定胚を集めてこの液体培地に再懸濁した。2週間毎に新鮮培地に継代し、12週間振盪培養して塊茎を誘導した。
【0044】
▲5▼塊茎の発芽
このようにして得られた発芽・発根していないシクラメン塊茎を、シクラメン発芽用の培養土を充填したポットに定植し、適度な水分を与え、20℃、暗所にて発芽させた。発芽した塊茎の割合を調べた。以下の表1に、各液体培地の浸透圧および発芽した塊茎の割合(発芽率)を示す。
【0045】
実施例2:浸透圧調整剤としてのマンニットを添加した液体培地を使用したシクラメン塊茎の誘導
使用する培地のショ糖濃度が30g/1であり、浸透圧調整剤としてマンニットをそれぞれ20、40、60、80g/1添加した以外は、上記実施例1と同様に培養して塊茎を得た。これを実施例1と同様にシクラメン発芽用の培養土に定植して発芽させ、発芽した塊茎の割合を算出した。以下の表1に、各液体培地の浸透圧および発芽した塊茎の割合(発芽率)を示す。
【0046】
比較例1:
使用する培地のショ糖濃度が30g/lであり、ショ糖以外の浸透圧調整剤を培地に添加しない以外は、上記実施例1と同様に培養して塊茎を得た。これを実施例1と同様にシクラメン発芽用の培養土に定植して発芽させ、発芽した塊茎の割合を算出した。以下の表1に、各液体培地の浸透圧および発芽した塊茎の割合(発芽率)を示す。
【0047】
【表1】
Figure 0004316221
1)発芽率=茎葉が展開した数÷定植した数×100
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、シクラメンの組織からカルスを誘導し、そのカルスをグリセリン又はマンニットで220〜750mOsmの範囲の浸透圧に調整した液体培地中で培養して、懸濁細胞、不定胚を経てシクラメン塊茎を誘導することにより、発芽・発根を抑制して塊茎を均一に肥大させることができ、塊茎を収集し保存するにあたって、幼植物体の葉茎部と根部を切除するという多大な労力を必要としない。また、得られたシクラメン塊茎は従来の方法で生産された幼植物体よりも高い乾燥耐性を有するため、特別な馴化処理を施さなくても、種子と同様の条件で栽培することにより簡便にシクラメン苗を生産することが可能であり、その結果、均一性の高いシクラメン鉢物を大量に生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシクラメン塊茎の生産方法の概略を示した図である。
【図2】塊茎誘導に使用するカルスの生物の形態の写真である。
【図3】塊茎誘導の過程で得られる懸濁細胞の生物の形態の写真である。
【図4】塊茎誘導の過程で得られる不定胚の生物の形態の写真である。
【図5】本発明において得られるシクラメン塊茎の生物の形態の写真である。
【図6】シクラメン塊茎を定植して得られる苗の様子を示した生物の形態の写真である。

Claims (4)

  1. シクラメンの組織からカルスを誘導し、
    該カルスを、グリセリン又はマンニットで220〜750mOsmの範囲の浸透圧に調整した液体培地中で培養することによりシクラメン塊茎を誘導して肥大させる、
    ことを特徴とするシクラメン塊茎の生産方法。
  2. シクラメン組織からのカルスの誘導を220〜750mOsmの範囲の浸透圧を示す液体培地または固形培地で行うことを特徴とする、請求項1に記載のシクラメン塊茎の生産方法。
  3. 請求項1または2に記載のシクラメン塊茎の生産方法において使用する液体培地であって、
    無機成分および炭素源を少なくとも含んでおり、
    グリセリン又はマンニットからなる浸透圧調整剤を含有しており、
    浸透圧が220〜750mOsmの範囲である、
    ことを特徴とする液体培地。
  4. 請求項1または2に記載の生産方法によって得られる、実質的に発芽・発根していないシクラメン塊茎を種子と同様の条件で培養土に定植し、
    塊茎を発芽・発根させて育苗する、
    ことを特徴とするシクラメン苗の生産方法。
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