JP3915225B2 - 塩化ビニル系重合体の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、塩化ビニル単量体、又は、塩化ビニル単量体及び塩化ビニル単量体と共重合可能な単量体との混合物(以下、塩化ビニル系単量体という。)の懸濁重合法において、水性媒体および塩化ビニル系単量体の仕込み時間、昇温時間を短縮することにより、塩化ビニル系重合体製造時の重合工程の生産性を向上させ、スケール付着防止をはかり、併せて得られる塩化ビニル系重合体のフィッシュアイの改善、粒度分布をシャープとする塩化ビニル系重合体の製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通常、塩化ビニル系単量体の懸濁重合はバッチ式で行われ、塩化ビニル系重合体の製造の際には、重合反応器に水性媒体、懸濁剤、重合開始剤および添加剤を仕込んだ後、重合系内を脱気して塩化ビニル系単量体等を仕込み、攪拌しながら重合反応器のジャケットに温水循環または水蒸気を通し、重合温度まで昇温して重合反応を開始させる。その後、重合反応熱が出てきた時点から重合反応器のジャケットに冷却水を通して重合温度を一定に保つべく冷却を行い、所定の重合率に到達するまで重合反応を継続する。そして、重合反応終了後、塩化ビニル系単量体等の未反応単量体を回収し、塩化ビニル系重合体を反応器から排出する一連の重合操作を行っている。
【0003】
しかし、このような従来法においては、内容積に対して伝熱面積の小さい大型の重合反応器では昇温に長時間を要し、このことが塩化ビニル系重合体の生産性低下の一因となっている。
【0004】
このような問題を解決するため、種々の方法が提案されている。
【0005】
例えば加温水を用いた昇温時間短縮の方法として、特公昭58−50603号公報には、30℃以下の水、懸濁剤と重合開始剤をオートクレーブに仕込み、その後塩化ビニル系単量体を仕込み、攪拌混合した後加温水を仕込んで重合を開始する方法、特開平4−248804号公報には、常温の水性媒体、懸濁剤を仕込み、攪拌を開始した後塩化ビニル系単量体、重合開始剤及び加温水を仕込んで重合を開始する方法、特開昭60−47007号公報には、塩化ビニル系単量体、重合開始剤、分散安定剤等を40℃以下の温度で均一混合した後、加温水を仕込む方法などが提案されている。
【0006】
さらに、加温水を用いた昇温時間の短縮と、加温水及び塩化ビニル系単量体を同時に仕込む仕込時間の短縮を組み合わせた方法としては、特公昭60−26488号公報には、重合開始剤が全量溶解した塩化ビニル系単量体及び分散安定剤が全量溶解した加温水を50%以上同時に仕込む方法、特公平7−119247号公報には、塩化ビニル系単量体及び加温水を70%以上を同時に仕込み、少なくとも20%の分散安定剤を塩化ビニル系単量体仕込み中に仕込み、重合開始剤を塩化ビニル系単量体全量の30〜100%仕込む間、かつ重合反応器内の塩化ビニル系単量体の水に対する重量比が1.5以下の時点で全量仕込む方法などが提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、30℃以下の水、懸濁剤及び重合開始剤をオートクレーブに仕込み、その後塩化ビニル系単量体を仕込み、攪拌混合した後加熱した水を仕込んで重合を開始する特公昭58−50603号公報に記載の方法や、常温の水性媒体、懸濁剤を仕込み、攪拌を開始した後塩化ビニル系単量体、重合開始剤及び加温水を仕込んで重合を開始する特開平4−248804号公報に記載の方法では、加熱した水を使用することにより、重合温度への昇温時間の短縮は図れるが、低温水と高温水といった2種類の温度の異なる水を使用するため操作が煩雑であると共に、昇温時間短縮のためには1種類の温水を使用する場合に比べて予め低温水が仕込まれている分、必然的に高温の水を使用する必要があり、温水の温度が高いと重合反応が急激に開始されるため重合反応器内壁へのスケールの発生や粗粒の生成といった問題を有している。
【0008】
一方、1種類の温水を使用する方法として、塩化ビニル系単量体、重合開始剤、分散安定剤等を40℃以下の温度で均一混合した後、加温水を仕込む特開昭60−47007号公報に記載の方法では、重合開始剤を含んだ塩化ビニル系単量体を加温水より先に仕込むことから塩化ビニル系単量体が直接重合反応器壁面と接触した状態となり、ここに加温水を仕込むことにより重合が開始されるので、塩化ビニル系重合体が重合反応器壁面に付着しスケールとなり、得られる塩化ビニル重合体のフィッシュアイの悪化をもたらす。また、塩化ビニル系単量体の仕込後に加温水を仕込むため、塩化ビニル系単量体中に加温水が分散した状態(塩化ビニル系単量体が連続相)から、加温水中に塩化ビニル系単量体が分散する状態(塩化ビニル単量体が分散相)への相転移が起こるため、粗粒の生成や粒度分布が広くなるといった品質上の問題を有する。さらに、相転移が起こらなければ重合反応器内で塩化ビニル系重合体が塊状となり重合器から排出できないという生産上の大きな問題を引き起こす。
【0009】
また、加温水を用いた昇温時間の短縮と、加温水と塩化ビニル系単量体を同時に仕込む仕込時間の短縮を組み合わせた方法のうち、重合開始剤が全量溶解した塩化ビニル系単量体と、分散安定剤が全量溶解した加温水を50%以上同時に仕込む特公昭60−26488号公報に記載の方法は、重合開始剤を塩化ビニル系単量体に溶解して仕込むため、塩化ビニル系単量体の温度を低温に保持するか、あるいは重合活性の低い重合開始剤を用いる必要があり、塩化ビニル系単量体の温度を低温に保持する場合は昇温時間の短縮が図れず、また重合活性の低い重合開始剤を使用する場合は重合時間の短縮が図れないため、生産性向上の効果が小さい。さらに昇温時間を短縮するためには、塩化ビニル系単量体の温度が低い分、より高温の水を使用する必要があり、重合反応器内壁へのスケールの付着や粗粒の生成が問題となる。また、分散安定剤を加温水に溶解し仕込む場合、加温水の温度が分散安定剤の曇点を超えると分散安定剤が析出するため仕込配管等へ付着し仕込みが困難となるため、曇点の高い分散安定剤を使用するか、あるいは配管内への付着を防止する措置を高じなければならないといった問題を有する。
【0010】
塩化ビニル系単量体と加温水を70%以上同時に仕込み、少なくとも20%の分散安定剤を塩化ビニル系単量体仕込み中に仕込み、重合開始剤を塩化ビニル系単量体全量の30〜100%仕込む間、かつ重合器内の単量体の水に対する重量比が1.5以下の時点で全量仕込む特公平7−119247号公報に記載の方法は、塩化ビニル系単量体仕込中に分散安定剤を少なくとも20%仕込むため分散安定剤の濃度にむらができるため、粒度分布が広くなるという問題があった。さらに、塩化ビニル系単量体と加温水の同時仕込みでは、塩化ビニル系単量体と加温水の仕込比率の制御を行わない場合、塩化ビニル系単量体と水性媒体の相転移が起こる恐れがあり、特に生産性向上のために1バッチ当たりの塩化ビニル系単量体の仕込量を多くした場合、塩化ビニル系単量体に対する加温水の比率が小さくなるため、塩化ビニル系単量体や加温水の仕込タイミングや仕込速度の微妙なコントロールが必要となる。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決した塩化ビニル系重合体の製造時の生産性に優れ、得られる塩化ビニル系重合体の粒度分布がシャープであり、フィッシュアイが改善される塩化ビニル系重合体の製造法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決し重合工程のサイクル時間を短縮すべく鋭意検討を進めた結果、特定の条件にて塩化ビニル系重合体の製造を行うことにより、重合時間の短縮による重合工程のサイクル時間の短縮を達成できるとともに、得られる塩化ビニル系重合体のフィッシュアイ、粒度分布を損なうことなく、また、スケールの付着のないことを見出し本発明を完成させるに至った。
【0013】
即ち、本発明は、塩化ビニル系単量体を重合開始剤及び分散安定剤の存在下、水性媒体中で懸濁重合を行い塩化ビニル系重合体を製造する方法において、攪拌下にて、分散安定剤の全量及び用いるべき塩化ビニル系単量体に対して30〜50重量%に相当する40℃以上の水性媒体を重合反応器に仕込み、その後、引き続き重合反応器内の塩化ビニル系単量体に対する水性媒体の重量比を0.8以上に維持しながら塩化ビニル系単量体及び40℃以上の水性媒体を仕込み、かつ重合開始剤を塩化ビニル系単量体の仕込量が用いるべき塩化ビニル系単量体の50重量%以上100重量%未満の範囲となった時点で仕込むことを特徴とする塩化ビニル系重合体の製造法に関するものである。
【0014】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
【0015】
本発明において用いられる塩化ビニル系単量体とは、塩化ビニル単量体、又は、塩化ビニル単量体及び塩化ビニル単量体との共重合可能な単量体との混合物であり、塩化ビニル単量体との共重合可能な単量体としては、塩化ビニル単量体との共重合が可能な単量体であればいかなるものも使用することができ、例えばエチレン,プロピレン等のオレフィン類、酢酸ビニル,ステアリン酸ビニル等のビニルエステル類、エチルビニルエーテル,セチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、アクリル酸メチル,アクリル酸エチル,アクリル酸ブチル,アクリル酸プロピル等のアクリル酸エステル類、マレイン酸,フマル酸のエステル類または無水物、スチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル等の従来から塩化ビニルと共重合可能な単量体として知られている単量体が挙げられる。そして、該共重合可能な単量体は、塩化ビニル単量体に対し通常20重量%以下の割合で使用することが好ましい。
【0016】
本発明において用いられる40℃以上の水性媒体とは、重合反応器内への仕込み時に40℃以上の温度を保持している水性媒体であり、予め40℃以上に加温しておいても、仕込中に加温しても差し支えない。そして、該水性媒体は、重合反応器内の温度制御が容易に行え、特に粒度分布、ロールフィッシュアイに優れた塩化ビニル系重合体が得られることから40℃以上90℃以下の水性媒体であることが好ましい。
【0017】
本発明において用いられる40℃以上の水性媒体とは、水又は水を主成分とする媒体であり、本発明の目的を逸脱しない限りにおいていかなるものを含んでも問題ない。
【0018】
本発明において用いられる重合開始剤としては、一般に重合開始剤として知られているものを用いることができ、例えばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーオキシカーボネート化合物;t−ブチルパーオキシネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシビバレート、t−アミルパーオキシネオデカノエート、1,1−ジメチル−3−ヒドロキシブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシジグリコレート、α−クミルパーオキシネオデカネート等のパーオキシエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド等の過酸化物;アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル),アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;過酸化水素等を挙げることができ、これらは一種単独または二種以上の組合わせで使用することも可能である。
【0019】
そして、本発明において重合開始剤は、塩化ビニル系単量体100重量部に対して0.001〜1重量部の範囲で使用することが好ましい。
【0020】
本発明の方法において用いられる分散安定剤としては特に限定はなく、一般的に懸濁重合の分散安定剤として使用されているもので良く、例えばメチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体;部分けん化ポリビニルアルコール、アクリル酸重合体、ゼラチン等の水溶性ポリマー;ノニオン界面活性剤;アニオン界面活性剤等が挙げられ、これらは一種単独でまたは二種以上組合わせ使用することも可能である。
【0021】
該分散安定剤は、塩化ビニル系単量体100重量部に対して0.01〜1重量部の範囲で用いることが好ましい。
【0022】
本発明の製造法は、まず、撹拌下にて、分散安定剤の全量及び用いるべき塩化ビニル系単量体に対して30〜50重量%に相当する40℃以上の水性媒体を重合反応器に仕込むことを特徴とするものである。ここで、撹拌していない状態で分散安定剤及び40℃以上の水性媒体を仕込んだ場合、該分散安定剤が水性媒体中に均一に溶解又は分散しないため、得られる塩化ビニル系重合体が粗大粒子となったり、ロールフィッシュアイが悪化したりする。また、最悪の場合には、重合反応器内で塩化ビニル系重合体が塊状となり重合反応器から排出できないという生産上の大きな問題を引き起こす。
【0023】
本発明における分散安定剤全量の仕込方法は、特に制限はなく、例えば用いるべき塩化ビニル系単量体に対して30〜50重量%に相当する40℃以上の水性媒体と分散安定剤全量を同時に重合反応器内に仕込んでも、分散安定剤全量を仕込んだ後用いるべき塩化ビニル系単量体に対して30〜50重量%に相当する40℃以上の水性媒体を仕込んでも、また用いるべき塩化ビニル系単量体に対して30〜50重量%に相当する40℃以上の水性媒体を仕込んだ後分散安定剤全量を仕込んでも良い。ここで、分散安定剤の全量を重合反応器に仕込む前に塩化ビニル系単量体の仕込みを開始した場合、残りの一部の分散安定剤は塩化ビニル系単量体に局部的に吸収され、分散安定剤の濃度むら又は分散むらが発生するために得られる塩化ビニル系重合体は粒度分布が広く、微粉が多いものとなってしまう。
【0024】
また、用いるべき塩化ビニル系単量体に対して30重量%より少ない40℃以上の水性媒体を仕込んだ段階で塩化ビニル系単量体の仕込みを開始した場合、重合反応器内で塩化ビニル系単量体と水性媒体の相転移が発生し、この相転移によりスケールが付着したり、得られる塩化ビニル系重合体のロールフィッシュアイが悪化するという問題を有する。さらに、最悪の場合、重合反応器内で塩化ビニル系重合体が塊状となり重合器から排出できないという生産上の大きな問題を引き起こす恐れがある。一方、塩化ビニル系単量体に対して50重量%より多い40℃以上の水性媒体を仕込んだ段階で塩化ビニル系単量体の仕込みを開始した場合、水性媒体の仕込時間が長くなるため、塩化ビニル系重合体の生産性が低下する。また、高温の水性媒体を使用した場合、全重合資材を仕込んだ後の重合反応器内温度は所定重合温度となるにしても、塩化ビニル系単量体仕込開始時には、重合反応器内圧力が重合温度到達時の圧力より高くなってしまい危険であるため、水性媒体の温度を高めることができす、全資材仕込後所定重合温度までの昇温に時間を要し、生産性が低下してしまう。
【0025】
本発明の製造法は、撹拌下にて分散安定剤全量及び用いるべき塩化ビニル系単量体に対して30〜50重量%に相当する40℃以上の水性媒体を仕込み、その後、重合反応器内の塩化ビニル系単量体に対する水性媒体の重量比を0.8以上に維持しながら塩化ビニル系単量体及び40℃以上の水性媒体を仕込み、かつ重合開始剤を塩化ビニル系単量体の仕込量が用いるべき塩化ビニル系単量体の50重量%以上100重量%未満の範囲となった時点で仕込むものである。ここで、重合反応器内の塩化ビニル系単量体と水性媒体の重量比が0.8より小さい場合、塩化ビニル系単量体と水性媒体の相転移が発生し、この相転移によりスケールが付着したり、得られる塩化ビニル系重合体のロールフィッシュアイが悪化するという問題を有する。また、重合開始剤を塩化ビニル系単量体の仕込量が用いるべき塩化ビニル系単量体の50重量%未満の時点で仕込んだ場合、重合開始剤が塩化ビニル系単量体に均一に溶解しないため、得られる塩化ビニル系重合体のロールフィッシュアイが悪くなる。一方、重合開始剤を塩化ビニル系単量体の仕込量が用いるべき塩化ビニル系単量体の100重量%に達した時点、つまり、塩化ビニル系単量体の仕込みが終了した後、重合開始剤を仕込んだ場合、重合工程中のスケール付着が甚だしくなる。
【0026】
【実施例】
以下、実施例および比較例にもとづき本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
実施例及び比較例により得られた塩化ビニル系重合体の評価は、下記方法により測定した。
【0028】
〜粒度分布〜
得られた塩化ビニル系重合体をJIS Z 8801に準じた45メッシュの篩にかけ、該篩を通過したサンプルをさらにJIS Z 8801に準じた60メッシュ、80メッシュ、100メッシュ、140メッシュ、200メッシュの篩いで篩い、該サンプルの85重量%の塩化ビニル系重合体粒子が通過した篩目の大きさ(A(μm))、15重量%の塩化ビニル系重合体粒子が通過した篩目の大きさ(B(μm))及び50重量%の塩化ビニル系重合体粒子が通過した篩目の大きさ(C(μm))を測定し、その結果を下記式に挿入することにより粒度分布を算出した。
【0029】
粒度分布=(A−B)/C
〜平均粒径〜
得られた塩化ビニル系重合体をJIS Z 8801に準じた45メッシュの篩にかけ、該篩を通過したサンプルを用い、該サンプルの50重量%の塩化ビニル系重合体粒子が通過するふるいの目の大きさ(μm)を平均粒径として表す。
【0030】
〜45メッシュオン〜
得られた塩化ビニル系重合体をJIS Z 8801に準じた45メッシュの篩にかけ、該篩にかけるサンプル全量に対する該篩上に残ったサンプルの重量比率(百分率)を45メッシュオンとして表す。
【0031】
〜かさ比重〜
JIS K 6721に準じた。
【0032】
〜フィッシュアイ〜
得られた塩化ビニル系重合体100重量部、Ca−Zn系粉末複合安定剤1.5重量部、有機燐系安定化助剤0.5重量部、群青3重量部およびDOP(ジオクチルフタレート)50重量部を混合し、150℃のロールで厚さ0.35mmとして5分間混練し、0.35mmのシートを分取し、シート50cm2中の透明粒子の数をもって示す。
【0033】
〜スケール付着状況〜
重合反応器壁についたスケール量を目視で評価した。
【0034】
○良好
×悪い(付着が激しい)
実施例1
1.6m3の逆流コンデンサーを設置した重合反応器を使用し、該重合反応器のジャケットに40℃の温水を循環し、重合反応器内を脱気した後、撹拌下にて40℃に加温した脱イオン水576kg及び分散安定剤としてけん化度80モル%、平均重合度2600の部分ケン化ポリビニルアルコール3.5%溶液7800gの仕込みを同時に開始した。脱イオン水は10分間、分散安定剤は2分間で重合反応器内に仕込んだ。そして、脱イオン水及び分散安定剤の仕込み開始3分後(脱イオン水172.8kg(用いるべき塩化ビニル系単量体に対して31.6重量%に相当)を仕込んだ段階)に、塩化ビニル単量体546kgの仕込みを開始し、塩化ビニル単量体は6分間で仕込んだ。なお、塩化ビニル単量体380kg(用いるべき塩化ビニル単量体の約70重量%)を仕込んだ段階で、予めポットに仕込んでおいた純度70重量%のクミルパーオキシネオデカノエート368g及び純度70%のt−ブチルパーオキシネオデカノエート368gを重合反応器内に仕込んだ。ここで、塩化ビニル単量体に対する脱イオン水の重量比(以下、水モノマー比と略す。)が最も低くなる塩化ビニル単量体仕込み終了時の水モノマー比は0.97であった。脱イオン水仕込み終了後、25分間かけて57.5℃まで昇温し、仕込み開始から重合温度到達までの昇温時間は35分間であった。
【0035】
そして、重合反応器内圧力が57.5℃における飽和蒸気圧より0.2MPa低下した段階で重合を終了し、未反応塩化ビニル単量体を回収し、得られたスラリーを脱水乾燥し、塩化ビニル重合体を得た。
【0036】
得られた塩化ビニル重合体を上記の評価方法により評価測定した。その結果を表1に示す。
【0037】
得られた塩化ビニル重合体の粉体特性及びフィッシュアイは良好なものであり、塩化ビニル重合体の製造時のスケールの付着も認められなかった。
【0038】
実施例2
重合反応器のジャケットに50℃の温水を循環し、撹拌下にて50℃の脱イオン水と分散安定剤の仕込みを同時に開始した。脱イオン水は10分間、分散安定剤は2分間で重合反応器内に仕込んだ。そして、脱イオン水及び分散安定剤の仕込み開始3分後(脱イオン水172.8kg(用いるべき塩化ビニル系単量体に対して31.6重量%に相当)を仕込んだ段階)に、塩化ビニル単量体の仕込みを開始し、塩化ビニル単量体を5分間で仕込み、脱イオン水仕込終了後に10分間で重合温度に昇温した。仕込み開始から重合温度に到達するまでの昇温時間は20分間を要し、水モノマー比が最も低くなる塩化ビニル単量体仕込み終了時の水モノマー比は0.85であった。
【0039】
これら以外のことは、実施例1と同様の方法により、塩化ビニル重合体の重合を行った。
【0040】
得られた塩化ビニル重合体を上記の評価方法により評価測定した。その結果を表1に示す。
【0041】
得られた塩化ビニル重合体の粉体特性及びフィッシュアイは良好なものであり、塩化ビニル重合体の製造時のスケールの付着も認められなかった。
【0042】
実施例3
重合反応器のジャケットに60℃の温水を循環し、撹拌下にて60℃の脱イオン水と分散安定剤の仕込みを同時に開始した。脱イオン水は10分間、分散安定剤は2分間で重合反応器内に仕込んだ。そして、脱イオン水及び分散安定剤の仕込み開始3分後(脱イオン水172.8kg(用いるべき塩化ビニル系単量体に対して31.6重量%に相当)を仕込んだ段階)に、塩化ビニル単量体の仕込みを開始し、塩化ビニル単量体を6分間で仕込み、脱イオン水仕込終了後に5分間で重合温度に昇温した。仕込み開始から重合温度に到達するまでの昇温時間は15分間を要し、水モノマー比が最も低くなる塩化ビニル単量体仕込み終了時の水モノマー比は0.97であった。
【0043】
これら以外のことは、実施例1と同様の方法により、塩化ビニル重合体の重合を行った。
【0044】
得られた塩化ビニル重合体を上記の評価方法により評価測定した。その結果を表1に示す。
【0045】
得られた塩化ビニル重合体の粉体特性及びフィッシュアイは良好なものであり、塩化ビニル重合体の製造時のスケールの付着も認められなかった。
【0046】
実施例4
重合反応器のジャケットに60℃の温水を循環し、撹拌下にて60℃の脱イオン水と分散安定剤の仕込みを同時に開始した。脱イオン水は10分間、分散安定剤は2分間で重合反応器内に仕込んだ。そして、脱イオン水及び分散安定剤の仕込み開始5分後(脱イオン水270kg(用いるべき塩化ビニル系単量体に対して49重量%に相当)を仕込んだ段階)に、塩化ビニル単量体の仕込みを開始し、塩化ビニル単量体を4分間で仕込み、脱イオン水仕込終了後に5分間で重合温度に昇温した。仕込み開始から重合温度に到達するまでの昇温時間は15分間を要し、水モノマー比が最も低くなる塩化ビニル単量体仕込み終了時の水モノマー比は0.97であった。
【0047】
これら以外のことは、実施例1と同様の方法により、塩化ビニル重合体の重合を行った。
【0048】
得られた塩化ビニル重合体を上記の評価方法により評価測定した。その結果を表1に示す。
【0049】
得られた塩化ビニル重合体の粉体特性及びフィッシュアイは良好なものであり、塩化ビニル重合体の製造時のスケールの付着も認められなかった。
【0050】
比較例1
重合反応器のジャケットに40℃の温水を循環し、撹拌下にて40℃の脱イオン水、分散安定剤および塩化ビニル単量体の仕込みを同時に開始した。脱イオン水は10分間、分散安定剤は2分間、塩化ビニル単量体は6分間で重合反応器内に仕込んだ。そして、脱イオン水仕込終了後に25分間で重合温度に昇温した。仕込み開始から重合温度に到達するまでの昇温時間は35分間を要し、水モノマー比が最も低くなる塩化ビニル単量体仕込み終了時の水モノマー比は0.64であった。
【0051】
これら以外のことは、実施例1と同様の方法により、塩化ビニル重合体の重合を行った。
【0052】
得られた塩化ビニル重合体を上記の評価方法により評価測定した。その結果を表2に示す。
【0053】
得られた塩化ビニル重合体は、粗粒化し、ロールフィッシュアイが大きく悪化し、スケールの付着も激しいものであった。
【0054】
比較例2
重合反応器のジャケットに60℃の温水を循環し、撹拌下にて60℃の脱イオン水と分散安定剤の仕込みを同時に開始し、脱イオン水は10分間、分散安定剤は2分間で重合反応器内に仕込んだ。そして、脱イオン水及び分散安定剤の仕込み開始3分後(脱イオン水172.8kg(用いるべき塩化ビニル系単量体に対して31.6重量%に相当)を仕込んだ段階)に、塩化ビニル単量体の仕込みを開始し、塩化ビニル単量体を4分間で仕込み、脱イオン水仕込終了後に5分間で重合温度に昇温した。仕込み開始から重合温度に到達するまでの昇温時間は15分間を要し、水モノマー比が最も低くなる塩化ビニル単量体仕込み終了時の水モノマー比は0.75であった。
【0055】
これら以外のことは、実施例1と同様の方法により、塩化ビニル重合体の重合を行った。
【0056】
得られた塩化ビニル重合体を上記の評価方法により評価測定した。その結果を表2に示す。
【0057】
得られた塩化ビニル重合体は、粗粒化し、ロールフィッシュアイが大きく悪化し、スケールの付着も激しいものであった。
【0058】
比較例3
重合反応器のジャケットに60℃の温水を循環し、撹拌下にて60℃の脱イオン水、分散安定剤および塩化ビニル単量体の仕込みを同時に開始し、脱イオン水は10分間、分散安定剤は2分間、塩化ビニル単量体は10分間で重合反応器内に仕込んだ。そして、脱イオン水仕込終了後に5分間で重合温度に昇温した。仕込み開始から重合温度に到達するまでの昇温時間は15分間を要し、水モノマー比が最も低くなる塩化ビニル単量体仕込み終了時の水モノマー比は1.07であった。
【0059】
これら以外のことは、実施例1と同様の方法により、塩化ビニル重合体の重合を行った。
【0060】
得られた塩化ビニル重合体を上記の評価方法により評価測定した。その結果を表2に示す。
【0061】
得られた塩化ビニル重合体は、粗粒化し、ロールフィッシュアイが大きく悪化し、スケールの付着も激しいものであった。
【0062】
比較例4
重合反応器のジャケットに60℃の温水を循環し、撹拌下60℃の脱イオン水の仕込を開始し、脱イオン水は10分間で重合反応器内に仕込んだ。そして、脱イオン水の仕込み開始3分後(脱イオン水172.8kg(用いるべき塩化ビニル系単量体に対して31.6重量%に相当)を仕込んだ段階)に、塩化ビニル単量体及び分散安定剤の仕込みを開始し、塩化ビニル単量体は6分間、分散安定剤は2分間で仕込み、脱イオン水仕込終了後に5分間で重合温度に昇温した。仕込み開始から重合温度に到達するまでの昇温時間は15分間を要し、水モノマー比が最も低くなる塩化ビニル単量体仕込み終了時の水モノマー比は0.97であった。
【0063】
これら以外のことは、実施例1と同様の方法により、塩化ビニル重合体の重合を行った。
【0064】
得られた塩化ビニル重合体を上記の評価方法により評価測定した。その結果を表2に示す。
【0065】
得られた塩化ビニル重合体は、粗粒化し、ロールフィッシュアイが大きく悪化し、スケールの付着も激しいものであった。
【0066】
比較例5
重合反応器のジャケットに60℃の温水を循環し、60℃の脱イオン水及び分散安定剤の仕込みを開始し、脱イオン水は10分間、分散安定剤は2分間で重合反応器内に仕込んだ。そして、脱イオン水の仕込み開始3分後(脱イオン水172.8kg(用いるべき塩化ビニル系単量体に対して31.6重量%に相当)を仕込んだ段階)に、攪拌を開始するとともに塩化ビニル単量体の仕込みを開始し、塩化ビニル単量体は6分間で仕込み、脱イオン水仕込終了後に5分間で重合温度に昇温した。仕込み開始から重合温度に到達するまでの昇温時間は15分間を要し、水モノマー比が最も低くなる塩化ビニル単量体仕込み終了時の水モノマー比は0.97であった。
【0067】
これら以外のことは、実施例1と同様の方法により、塩化ビニル重合体の重合を行った。
【0068】
得られた塩化ビニル重合体を上記の評価方法により評価測定した。その結果を表3に示す。
【0069】
得られた塩化ビニル重合体は、粗粒化し、ロールフィッシュアイが大きく悪化し、スケールの付着も激しいものであった。
【0070】
比較例6
重合反応器のジャケットに60℃の温水を循環し、撹拌下にて60℃の脱イオン水及び分散安定剤の仕込を同時に開始し、分散安定剤は2分間、脱イオン水は10分間で重合反応器内に仕込んだ。そして、脱イオン水の仕込み開始3分後 (脱イオン水172.8kg(用いるべき塩化ビニル系単量体に対して31.6重量%に相当)を仕込んだ段階)に、塩化ビニル単量体の仕込みを開始し、塩化ビニル単量体は6分間で仕込み、その後、続いて重合開始剤を仕込んだ。脱イオン水仕込終了後に5分間で重合温度に昇温した。仕込み開始から重合温度に到達するまでの昇温時間は15分間を要し、水モノマー比が最も低くなる塩化ビニル単量体仕込み終了時の水モノマー比は0.97であった。
【0071】
これら以外のことは、実施例1と同様の方法により、塩化ビニル重合体の重合を行った。
【0072】
得られた塩化ビニル重合体を上記の評価方法により評価測定した。その結果を表3に示す。
【0073】
得られた塩化ビニル重合体は、粗粒化し、ロールフィッシュアイが大きく悪化し、スケールの付着も激しいものであった。
【0074】
比較例7
重合反応器のジャケットに30℃の温水を循環し、30℃の脱イオン及び分散安定剤の仕込を同時に開始し、脱イオン水は10分間、分散安定剤は2分間で重合反応器内に仕込み脱気した。脱気後、塩化ビニル単量体を6分間で仕込み、塩化ビニル単量体仕込開始と共に撹拌を開始した。また、塩化ビニル単量体を400kg仕込んだ段階で重合開始剤を仕込み、塩化ビニル単量体仕込み終了後に40分間で重合温度に昇温した。仕込み開始から重合温度に到達するまでの昇温時間は56分間を要し、水モノマー比が最も低くなる塩化ビニル単量体仕込み終了時の水モノマー比は1.07であった。
【0075】
得られた塩化ビニル重合体を上記の評価方法により評価測定した。その結果を表3に示す。
【0076】
仕込み昇温に時間を要するため、生産性の低いものであった。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
【発明の効果】
本発明の製造法によると、粗粒化やロールフィッシュアイの悪化、嵩比重の低下、スケール付着を伴うことなく、仕込み昇温時間が大幅に短縮でき、塩化ビニル系重合体の生産性を大幅に高めることができ、その工業的価値は極めて高いものである。
Claims (1)
- 塩化ビニル系単量体を重合開始剤及び分散安定剤の存在下、水性媒体中で懸濁重合を行い塩化ビニル系重合体を製造する方法において、攪拌下にて、分散安定剤の全量及び用いるべき塩化ビニル系単量体に対して30〜50重量%に相当する40℃以上の水性媒体を重合反応器に仕込み、その後、引き続き重合反応器内の塩化ビニル系単量体に対する水性媒体の重量比を0.8以上に維持しながら、塩化ビニル系単量体及び40℃以上の水性媒体を仕込み、かつ重合開始剤を塩化ビニル系単量体の仕込量が用いるべき塩化ビニル系単量体の50重量%以上100重量%未満の範囲となった時点で仕込むことを特徴とする塩化ビニル系重合体の製造法。
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