JP3913821B2 - 粒子径が制御された立方体炭酸カルシウムの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、粒子の均一性および分散性が良好で、粉体の白色度および熱安定性性が高く、粒子径制御の可能な立方体炭酸カルシウムの製造方法に関するものである。
本発明で得られる新規な立方体炭酸カルシウムは、光拡散剤、蛍光体材料、光硬化樹脂材料、その他光学用材料、電子材料、センサー用材料、食品用カルシウム強化剤、接着剤、プラスチック・ゴム・塗料・インキ・シーリング材および製紙の充填剤、繊維およびフィルムのブロッキング防止剤等各種の分野に有用である。また、上記各種の用途を複合させることにより、更に新規な用途展開も期待される。
【0002】
【従来の技術】
炭酸カルシウムは、その原料である石灰石が国内で豊富に産出するため、多方面の分野に利用されている。
この炭酸カルシウムは、一般に重質炭酸カルシウムと沈降製炭酸カルシウム(合成炭酸カルシウム)の二種に大別される。
重質炭酸カルシウムは、石灰石を機械的に粉砕し、該粉砕物を分級することにより、各種グレードに類別し、調製される炭酸カルシウムであり、比較的安価に製造できる特徴を有している。
【0003】
一方、合成炭酸カルシウムの工業的製法としては、炭酸ガス法が広く採用されている。この炭酸ガス法とは、天然に産する石灰石を焼成することにより生石灰(酸化カルシウム)を得、この生石灰と水を反応させて石灰乳(水酸化カルシウムの水懸濁液)を得、この石灰乳に石灰石を焼成する際に発生する炭酸ガスを導通し反応させることにより炭酸カルシウムを得る方法である。
ところで、これらはいずれも天然の石灰石を原料としているため、粉体白色度等に悪影響を及ぼすFe等の不純物が多く含有され、このため、各種用途には不適当であるばかりか、サブミクロン〜数ミクロンの粒子を製造しにくいという問題があった。
【0004】
これに対して本発明者らは、既に特開平7−196316号公報で、反応緩衝剤を含有せしめた条件下で、炭酸塩溶液とカルシウム塩溶液を混合し、添加剤を添加することにより、分散性、粒子の均一性に優れ、取り得る粒度範囲が広く、且つ任意にその粒子径を設定できることを主な特徴とする立方体状炭酸カルシウムの製造方法を開示した。この方法で得られる炭酸カルシウムの形状特徴は、頂点の角部分及びエッジ部分が丸みを有しており、シャープなナイフ状のエッジ部分が極めて少ないことである。この炭酸カルシウムは主に粒子の均一性および分散性を重要とするポリエステル、ポリオレフィン等の合成樹脂用ブロッキング防止剤としては優れた効果があるが、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂またはポリカーボネイト樹脂等の光拡散剤用途においては、樹脂の黄変あるいは加水分解を惹き起こすため、このような白色度を要求する用途には、さらに熱安定性や純度を向上させる等の改良の余地がある。
【0005】
一方、サブミクロン〜数ミクロンの粒子の制御方法としては、例えば、特開昭56−17924号公報、特開昭59−217621号公報あるいは特開昭60−90818号公報等で開示されているように、炭酸化の際に、コロイド状炭酸カルシウム(種結晶)に水酸化カルシウムを添加し、炭酸ガスを導入する段数化合あるいは滴下化合が一般的によく知られている。
しかしながら、このような化合法は紡錘状結晶が生成しやすく、立方体状を維持させながら粒子径を大きくするためには、種結晶と水酸化カルシウムと炭酸ガスの設定濃度が極めて複雑で、再現性に乏しく非常に難しい。また、特開昭63−30317号公報では、pH制御下において石灰乳に炭酸ガスを導通し、種結晶を後添加する方法が開示されているが、この方法も種結晶を添加する方法であるため、石灰乳の活性度によってpH制御が難しく、また粒子径及び形状の再現性等が乏しいという問題点がある。
【0006】
また、高純度炭酸カルシウムの製造方法は、これまで特開昭52−10900号公報、特開昭62−36021号公報あるいは特開昭63−156012号公報等で開示されている。
しかしながら、これらの製造方法は、高純度炭酸カルシウムの製造に留まり、粒子径制御による所望粒子の選択性や、実施例に記載されているように、炭酸カルシウムと同時に副産物として生成される副塩(例えば、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム)の残存量に関して改善の余地が残されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑み、高度な工業用、試薬用あるいは食品用に有用で、粒子の均一性、分散性が良好で、粉体の白色度および熱安定性が高く、粒子径の制御可能な立方体炭酸カルシウムを簡便且つ安価に提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定濃度の炭酸塩溶液とカルシウム塩溶液を、特定温度、特定時間において混合反応させることにより、熟成を必要とせず、熱安定性および純度が高く、粒子径が特定の範囲に制御されたカルサイト型立方体炭酸カルシウムを安価且つ簡便に製造できることを見いだし本発明を完成した。
【0009】
即ち、炭酸イオン濃度が0.1〜3.0mol/L の炭酸塩溶液と、カルシウムイオン濃度が0.1〜3.0mol/L からなるカルシウム塩溶液とを混合し炭酸カルシウムを製造するに際し、炭酸塩溶液をカルシウム塩溶液中に又はカルシウム塩溶液を炭酸塩溶液中に、30〜1800秒の時間で滴下混合せしめ、混合系内温度を3〜30℃に維持して炭酸化を行い、pH10以下の炭酸カルシウム水懸濁液を得、次いでこれを水洗することを特徴とする、粒子径が0.05〜5.0μmの立方体炭酸カルシウムの製造方法を内容とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明に使用する炭酸塩としては、炭酸化により晶折した炭酸カルシウム水懸濁液のpHが10より高い場合、熱安定性あるいは純度に悪影響を及ぼすため、pHが10以下になる炭酸塩であればよく、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウムの炭酸塩が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用される。中でも経済的観点から、アンモニウムを含む炭酸塩が好ましく用いられ、純度を要求する用途には高純度炭酸塩がさらに好ましく、その場合、溶媒においても、純水、イオン交換水、RO水が望ましい。
【0011】
該炭酸塩を水に溶解し炭酸イオン溶液を調製する。炭酸塩濃度は0.1mol/L (リッター、以下同じ)〜化合温度における炭酸塩の飽和濃度以下であればよいが、経済的に化合温度における炭酸塩の飽和濃度より若干少ない程度、即ち3.0mol/L 程度が好ましい。炭酸塩濃度が0.1mol/L 未満の場合は経済的に不利であるばかりでなく、満足な粒子径制御が不可能になる。
【0012】
本発明に使用するカルシウム塩としては、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等が例示でき、これらは単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。99.9%(3N)以上の炭酸カルシウムを目的とする場合は、市販の高純度カルシウム塩が好ましいが、工業用でも濾過すれば別段問題はない。4N以上の炭酸カルシウムを目的とする場合は、生石灰あるいは消石灰から不純物元素の除去操作を行いカルシウム塩溶液を作成することが好ましい。
【0013】
該カルシウム塩を水に溶解もしくは希釈し、カルシウムイオン溶液を調製する。カルシウムイオン溶液の濃度は、0.1mol/L 〜化合温度におけるカルシウム塩の飽和濃度以下であればよいが、経済的に化合温度におけるカルシウム塩の飽和濃度より若干少ない程度、即ち3.0mol/L 程度、もしくは炭酸塩濃度から理論的に炭酸化に必要なカルシウム塩濃度を調整することが好ましい。カルシウム塩濃度が0.1mol/L 未満の場合は、経済的に不利であるばかりでなく、満足な粒子径制御が不可能になる。
【0014】
次に、上記方法により調製される炭酸塩溶液、又はカルシウム塩溶液、あるいはその両者に緩衝剤を添加することにより、粒子径が小さい方にシフトし易くなる。
本発明で使用する緩衝剤としては、得られる炭酸カルシウムの熱安定性あるいは純度に悪影響を及ぼさないものであればよく、例えば、アンモニウムの水酸化物、硝酸塩、塩化物、尿素等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。経済的な観点からアンモニアが好ましい。4.5〜5μmの立方体炭酸カルシウム粒子を製造する場合は、緩衝剤の添加は特に必要とされないが、4.5μmより小さい立方体炭酸カルシウム粒子を製造する場合は、緩衝剤を添加することにより、さらに粒子径の制御が容易となる。しかしながら、添加量が多過ぎると球状バテライト結晶が生成され易く、カルサイト結晶への転位が抑制されてしまい、満足な立方体炭酸カルシウムが製造できないことがあるため、カルシウム塩に対し、アンモニアとして50重量%以下が好ましい。なお、下限については微量でも効果があり、特に制限されない。
【0015】
緩衝剤の添加方法に関しては、炭酸塩溶液、カルシウム塩溶液のいづれか、もしくは両方に添加して、滴下による炭酸化反応を行うが、その混合方法においても、炭酸塩溶液をカルシウム塩溶液中に滴下混合してもよく、またその逆でもよい。
【0016】
次に、混合時の回転翼による攪拌機構は、懸濁液系全体が均一に攪拌できるものであればよく、プロペラ型攪拌機、高速インペラ攪拌機、タービン型攪拌機、ディゾルバー型攪拌機等が使用される。動力条件に関しては、特に制限はないが、生成する炭酸カルシウムの結晶形態がバテライト型を経由せず直接カルサイト型立方体炭酸カルシウムが生成することが望ましいため、動力(P)=30.5 ×力率(COS φ)×電流(A)×電圧(V)で定義される動力値が0.1〜5.0kw/m3の範囲が好ましい。動力が0.1kw/m3よりも小さい場合は、攪拌力が弱いためバテライトが生成し、熟成させカルサイト転位しても、緩衝剤の添加量あるいは滴下時間を問わず、サブミクロン粒子を作成することが困難となる傾向があり、また、動力が5.0kw/m3よりも大きい場合は、経済的に不利になるばかりか、2次凝集が強いコロイド状粒子が混在しやすい。
【0017】
次に、粒子径制御を目的とする滴下混合時間は、一方の塩溶液を他方の塩溶液に滴下混合開始してから30〜1800秒の混合時間で滴下終了すればよい。滴下時間が遅延するほど炭酸カルシウムの1次粒子径は小さい方にシフトし易いが、例えば、滴下混合時間を1800秒を超えた時間にしても、これ以上粒子径を小さくすることができないため経済的に不利益である。一方、滴下混合時間が30秒未満となると、粒子径制御における緩衝剤の役割が高くなるだけでなく、粒子径制御のバラツキ率が高くなり、製造上支障がある。そのため、30〜1800秒の間に設定するのが好ましいが、より好ましくは120〜1500秒である。
上記炭酸化反応系内の温度は3〜30℃である。3℃未満では水溶媒以外の溶媒(低級アルコール溶媒等)との併用になり装置上煩雑で経済的に不利となり、また30℃を越えると針状アラゴナイトの混在率が高くなる。また球状バテライト型炭酸カルシウムを混在させないためには、5〜20℃に維持されるのが好ましく、7〜15℃がさらに好ましい。
以上の方法により、pH10以下の炭酸カルシウムを含む水懸濁液を得る。該水懸濁液のpHが10を越えると前記した如く、得られた炭酸カルシウムの熱安定性あるいは純度に悪影響が出る。次いで、これを濾過水洗することにより本発明の目的とする、粒子径が0.05〜5.0μmの立方体炭酸カルシウムが得られる。
水洗方法については、特に制限はなく、遠心脱水機、UF膜、MF膜、ロータリーフィルター等を用い、濃縮、水希釈を繰り返せばよい。
【0018】
尚、水洗の際、濾液の電気伝導度は特に制限はないが、通常500μS/cm以下に調整するのがよく、好ましくは300μS/cm以下、さらに好ましくは200μS/cm以下がよい。
上記、電気伝導度の主たる原因は、炭酸カルシウムと同時に産出する副塩であり、炭酸カルシウム濃度が10重量%の純水懸濁液中における電気伝導度が100μS/cm以下になるように調整することが好ましく、試薬用、食品用あるいは高純度を必要とする高度な工業用分野においては、50μS/cm以下がさらに好ましい。
【0019】
本発明の方法により調製される炭酸カルシウムは、粒子の均一性、分散性が良好で、粉体の白色度および熱安定性が高く、粒子径制御可能な炭酸カルシウムであり、従来の炭酸カルシウムが使用されてきた高度な工業用途あるいは食品用途に応用できる。
【0020】
また本発明の方法により調製される炭酸カルシウムは、分散性、安定性等をさらに高めるため、あるいは目的用途に応じ、有機酸、例えば脂肪酸、樹脂酸、アクリル酸、メタクリル酸、シュウ酸、クエン酸等の有機酸、酒石酸、燐酸、縮合燐酸、フッソ酸等の無機酸、それらのポリマー、それらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカリ土類金属塩、又はそれらエステル類等の表面処理剤、シラン、チタン等のカップリング剤、界面活性剤等の分散剤等で、常法に従い表面処理して使用されるのが好ましい。これらは一般に炭酸カルシウムに対し5重量%以下の量が使用される。なお、下限については微量でも効果があり、特に制限されない。
【0021】
本発明の方法により調製される炭酸カルシウムは、脱水濃縮した後、乾燥粉砕し、粉体にして各種用途に用いることができることはもちろん、用途に応じて水懸濁液の状態、あるいは他の溶媒の懸濁液としても有用である。
また本発明の方法により調製される炭酸カルシウムは、工業用途に用いられる他の粒子、例えばアクリル樹脂分野においては、酸化チタン、タルク、シリカ、硫酸バリウム等の1種又は2種以上と併用しても差し支えない。
【0022】
【実施例】
以下、実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。なお実施例での各特性値の測定は下記の方法で行った。
【0023】
1.平均粒子径
炭酸カルシウム水懸濁液を超音波分散機(日本精機製作所製:US−300T)を用いて60秒間分散せしめて水分散液を調製し、該水分散液をレーザー式粒度分布測定機(日機装株式会社製:マイクロトラックFRA)を用いて、測定した粒度分布における大きな粒子側から起算した重量累計50%の粒子径(μm)を平均粒径とした。
【0024】
2.pHメーター
パーソナルpHメーター(横河電機株式会社製:Model PH81)を使用して測定した。
【0025】
3.電気伝導度
パーソナル電気伝導度メーター(横河電機株式会社製:Model SC82)を使用して測定した。
【0026】
4.不純物金属の定量分析
Fe、Sr、Mgは高周波プラズマ発光分析装置(セイコー電子工業株式会社製:SPS400S)を使用して定量分析し、Al、Na、Kは電子吸光分析装置(日立製作所製:Z−8200)を使用して定量分析した。
【0027】
5.500℃における熱減量率
試料を110℃で3時間乾燥後、熱天秤装置(理学株式会社製:TG 8110)を用いて10℃/分で昇温して500℃に到達したときの重量減量率を測定した。
【0028】
実施例1、4〜7
濃度xmol/L の工業用重炭酸アンモニウム(日産化学工業株式会社製)水溶液と、液体塩化カルシウム(旭硝子株式会社製)を濃度ymol/L に調整した水溶液を各100リッター、及び25%アンモニア水をzリッター(表中の括弧内の数値はカルシウム塩に対するアンモニアの重量%)用意した。
該アンモニア水と重炭酸アンモニウム水溶液を混合し混合溶液を調製し、該混合溶液と塩化カルシウム水溶液の液温を共にt℃に調整した。
次に、該混合溶液に塩化カルシウム水溶液100リッターを滴下し、動力(P)の攪拌条件で混合して炭酸化反応を行い、滴下開始s秒後に滴下混合を終了した。その時のpHはMであった。
以上のようにして調製された炭酸カルシウム水懸濁液を遠心脱水機を用いて濃縮し、濃縮液に水を加えて希釈し攪拌した後、再度希釈液を遠心脱水機を用いて濃縮し、遠心脱水機の濾液の電気伝導度が200μS/cm以下に降下するまで水洗し濃縮した。得られた炭酸カルシウムの10重量%の純水懸濁液の電気伝導度を測定したところδμS/cmであった。
得られた炭酸カルシウムを電子顕微鏡観察したところ、その形状は頂角の角部分及びエッジ部分が角張っている立方体状の炭酸カルシウムであった。
また、X線回折装置により広角強度曲線を測定した結果、得られた炭酸カルシウムの結晶型は、ほぼカルサイトであることが確認された。
本実施例の製造条件および平均粒子径(D)を表1に、純度分析値および500℃熱減量率を表2に示す。
【0029】
実施例2
実施例1で工業用重炭酸アンモニウム(日産化学工業株式会社製)を試薬特級炭酸アンモニウム(キシダ化学工業株式会社製)に変更し、液体塩化カルシウム(旭硝子株式会社製)を(カートリッジ)フィルター(ADVANTEC製TCPD−03A)をパスさせた食品用粒状塩化カルシウム(旭硝子株式会社製)に変更し、混合溶液に塩化カルシウム水溶液100リッターを滴下する代わりに塩化カルシウム水溶液に混合溶液を滴下するように変更することを除き、実施例1と同様の製造方法で炭酸カルシウムを調製した。
得られた炭酸カルシウムを電子顕微鏡観察したところ、頂点の角部分及びエッジ部分が角張っている立方体状の炭酸カルシウムであった。
また、X線回折装置による広角強度曲線を測定した結果、得られた炭酸カルシウムの結晶型は、ほぼカルサイトであることが確認された。
本実施例の製造条件および平均粒子径(D)を表1に、純度分析値および500℃熱減量率を表2に示す。
【0030】
実施例3
実施例1で工業用重炭酸アンモニウム(日産化学工業株式会社製)を試薬特級炭酸アンモニウム(キシダ化学工業株式会社製)水(イオン変換水)溶液に、液体塩化カルシウム(旭硝子株式会社製)を下記の方法で作成した高純度液体塩化カルシウムに変更することを除き、実施例1と同様の製造方法で炭酸カルシウムを調製した。
得られた炭酸カルシウムを電子顕微鏡観察したところ、図1に示す如く、頂点の角部分及びエッジ部分が角張っている立方体状の炭酸カルシウムであった。
また、X線回折装置による広角強度曲線を測定した結果、得られた炭酸カルシウムの結晶型は、ほぼカルサイトであることが確認された。
本実施例の製造条件および平均粒子径(D)を表1に、純度分析値および500℃熱減量率を表2に示す。
<高純度液体塩化カルシウムの作成>
高純度塩化カルシウム水溶液を100リッター調製するために、まずCaと同族の元素(アルカリ土類金属)を除去するため、比重1.059の石灰乳を70℃に昇温濾過し、比重1.24の石灰乳を得、次いで1.6mol/L の塩化アンモニウムの水溶液を100リッター用意した。該塩化アンモニウム水溶液100リッターと比重1.24の石灰乳17Kgを混合し、塩化カルシウム水溶液を得た。次いで、不純物金属を析出させるため、該水溶液をpH=12以上になるよう液温を10℃に調整した。
該混合水溶液を(カートリッジ)フィルター(ADVANTEC製TCPD−03A)をパスさせ不純物元素を除去し、高純度混合水溶液100リッターを調製した。
【0031】
比較例1〜4
製造条件および平均粒子径(D)を表3に記載のように変更することを除き、実施例1と同様の製造方法で炭酸カルシウムを調製し、電子顕微鏡観察およびX線回折による測定結果を下記に示す。また、純度分析値および500℃熱減量率を表4に、比較例2で得られた炭酸カルシウムの粒子構造を示す電子顕微鏡写真を図2に示す。
【0032】
比較例1は、重炭酸アンモニウムが幾分残存しており、微粒立方状カルサイト型炭酸カルシウムが多数凝集した2次粒子が存在していた。
比較例2は、化合直後、球状バテライト型炭酸カルシウムが生成し、熟成後も大きな立方状カルサイト型炭酸カルシウムが1次粒子として存在していた(図2)。
比較例3は、球状バテライト型炭酸カルシウムが生成し、熟成後も大きめの立方状カルサイト型炭酸カルシウムが生成していた。
比較例4は、球状バテライト型と針状アラゴナイト型炭酸カルシウムが生成し、熟成後も針状アラゴナイト型炭酸カルシウムが存在していた。
【0033】
比較例5
濃度0.5mol/L の工業用炭酸ナトリウム(旭硝子株式会社製)水溶液と、液体塩化カルシウム(旭硝子株式会社製)を濃度0.5mol/L に調整した水溶液を各100リッタ−、及び24%水酸化ナトリウム水溶液を0.25リッタ−用意した。
該水酸化ナトリウム水溶液と炭酸ナトリウム水溶液を混合し混合溶液を調製し、該混合溶液と塩化カルシウム水溶液の液温を共に17℃に調整した。
次に該混合溶液に塩化カルシウム水溶液100リッターを滴下し、動力0.5の攪拌条件で混合し炭酸化反応を行い、滴下開始250秒後に滴下供給を終了した。その時のpHは11.7であった。滴下終了180秒後、反応系内に存在する炭酸カルシウム理論生成量の0.4重量%相当量のヘキサメタ燐酸ナトリウム20gを添加し、さらに5分間攪拌した。
以上のようにして調製された炭酸カルシウム水懸濁液を遠心脱水機を用いて濃縮し、濃縮液に水を加えて希釈し攪拌後、再度希釈液を遠心脱水機を用いて濃縮し、遠心脱水機の濾液の 電気伝導度が200μS/cm以下に降下するまで水洗し濃縮した。得られた炭酸カルシウムの10重量%の純水懸濁液の電気伝導度を測定したところ243μS/cmであった。
得られた炭酸カルシウムを電子顕微鏡観察したところ、図3に示す如く、その形状は頂点の角部分及びエッジ部分が丸みを有している立方体状の炭酸カルシウムであった。 また、X線回折装置による広角強度曲線を測定した結果、得られた炭酸カルシウムの結晶型は、ほぼカルサイトであることが確認された。
本比較例の製造条件および平均粒子径(D)を表3に、純度分析値および500℃熱減量率を表4に示す。表4から明かな如く、得られた炭酸カルシウムは熱安定性に劣っている。
【0034】
比較例6
比較例5で24%水酸化ナトリウム0.25リッタ−を25%アンモニア水4.5リッタ−に変更することを除き、比較例5と同様の製造方法で炭酸カルシウムを製造した。その時の滴下終了時のpHは10.8、得られた炭酸カルシウムの10重量%の純水懸濁液の電気伝導度は162μS/cmであった。
得られた炭酸カルシウムを電子顕微鏡観察したところ、その形状は頂点の角部分及びエッジ部分が丸みを有しているカルサイト型立方体と、頂点の角部分及びエッジ部分が角張っているカルサイト型立方体との中間体であった。また、X線回折装置による広角強度曲線を測定した結果、得られた炭酸カルシウムの結晶型は、ほぼカルサイトであることが確認された。
本比較例の製造条件および平均粒子径(D)を表3に、純度分析値および500℃熱減量率を表4に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
【発明の効果】
叙上のとおり、本願発明によれば、粒子の均一性及び分散性が良好で、白色度及び熱安定性の高い立方体炭酸カルシウムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例3で得られた炭酸カルシウムの粒子構造を示す電子顕微鏡写真である。
【図2】比較例2で得られた炭酸カルシウムの粒子構造を示す電子顕微鏡写真である。
【図3】比較例5で得られた炭酸カルシウムの粒子構造を示す電子顕微鏡写真である。
Claims (8)
- 炭酸イオン濃度が0.1〜3.0mol/L の炭酸塩溶液と、カルシウムイオン濃度が0.1〜3.0mol/L からなるカルシウム塩溶液とを混合し炭酸カルシウムを製造するに際し、炭酸塩溶液をカルシウム塩溶液中に又はカルシウム塩溶液を炭酸塩溶液中に、30〜1800秒の時間で滴下混合せしめ、混合系内温度を3〜30℃に維持して炭酸化を行い、pH10以下の炭酸カルシウム水懸濁液を得、次いでこれを水洗することを特徴とする、粒子径が0.05〜5.0μmの立方体炭酸カルシウムの製造方法。
- 炭酸塩溶液とカルシウム塩溶液の滴下混合時間が120〜1500秒である請求項1記載の製造方法。
- 炭酸塩がアンモニウムを含む炭酸塩である請求項1記載の製造方法。
- 炭酸塩溶液又はカルシウム塩溶液の何れか一方又はその両方に、緩衝剤をカルシウム塩に対して50重量%以下添加する請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 緩衝剤がアンモニウムの水酸化物、硝酸塩、硫酸塩および塩化物からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項4記載の製造方法。
- 混合系内温度を5〜20℃に維持して炭酸化反応を行う請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
- 滴下混合時の攪拌条件が、動力(P)=30.5 ×力率(COS φ)×電流(A)×電圧(V)で定義される動力値が0.1〜5.0kw/m3である請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
- 得られる炭酸カルシウムの粒子径が、0.1〜3.0μmである請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
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1996
- 1996-10-25 JP JP30114396A patent/JP3913821B2/ja not_active Expired - Lifetime
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