JP3913355B2 - 被吸着物の処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板を静電気力でクランプする技術にかかり、特に、静電吸着を解除する際の残留吸着力に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、スパッタリング装置やエッチング装置等の、真空雰囲気中で基板を処理する真空処理装置には、静電気力によって基板を吸着保持する静電チャックが広く用いられている。
【0003】
しかし、静電チャックへの電圧印加を終了させ、静電吸着を解除しようとしても、静電チャックと基板間の電荷は完全には消滅せず、残留電荷が残ってしまう。このような残留電荷は残留吸着力を発生させるため、静電吸着の解除後、リフトピン等によって基板を静電チャックから離脱させる際に、基板がリフトピン上で振動したり、リフトピン上から脱落する等の不都合がある。
【0004】
この場合、基板の搬送ができなくなったり、後工程での処理に支障をきたすため、結果的に、最終製品の歩留が低下してしまうという問題がある。
【0005】
上記のような不都合を解決するため、従来技術でも、静電吸着を解除する際に逆電圧(静電吸着時の印加電圧とは逆極性の電圧)を静電チャックに印加し、残留電荷を積極的に消滅させる方法がある。
【0006】
逆電圧の印加によって残留電荷を完全に消滅させる場合には、逆電圧の大きさと印加時間を、残留電荷量に応じて設定する必要があるが、従来では、例えば基板を静電チャック上から離脱させる際の音の大小や、リフトピン上で振動する際の振動音の大小や、基板の振動状態(振幅)を目視することにより、残留吸着力の大小を推定し、逆電圧の印加量を決定していた。
【0007】
このように、従来技術では、残留吸着力を観察者の主観によって推定しており、そのため、残留電荷の有無は判断できても、残留電荷量を定量的に評価できなかった。
【0008】
その結果、正確な逆電圧の印加量を求めることができず、逆電圧の印加量が少ないと、残留電荷を消滅させられず、その逆に印加量が過剰であると、残留電荷とは逆極性の電荷を発生させてしまい、いずれの場合でも残留吸着力を消滅させることはできない。
【0009】
そして、多数の基板を連続して処理する場合、静電チャック上に残留電荷が残っている状態で次の基板を静電吸着し、薄膜形成等を行おうとすると、各基板の吸着状態が区々になるため、基板間の処理結果にばらつきが生じるという問題がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するために創作されたもので、その目的は、基板を静電チャックから正常に引き離せたか否かを判断する技術を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、残留電荷を正確に消滅させられる技術を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記従来技術の課題を解決するために創作されたものであり、請求項1記載の発明は、誘電体中に配置された電極を有する静電チャック上に一の被吸着物を載置し、前記電極に吸着電圧を印加して前記一の被吸着物を静電吸着して処理し、前記吸着電圧の印加を解除した後、前記一の被吸着物を前記静電チャック上から離脱させ、後続する他の被吸着物を静電吸着して処理する被吸着物の処理方法であって、前記一の被吸着物を脱離させる際に前記電極に流れる電流を測定し、この電流の値に基づいて上記静電チャックに残留した残留電荷の極性と電荷量を算出し、前記残留電荷を減少させる逆バイアス電圧の電圧値と印加時間を求め、他の被吸着物を前記静電チャック上に配置し、静電吸着して処理した後、離脱させる前に、前記電極に、求めた電圧値と印加時間で前記逆バイアス電圧を印加し、前記残留電荷を低減させる被吸着物の処理方法である。
【0012】
本発明は、上記のように構成されており、基板を静電チャック上から脱離させる際の状態を検出できるようになっている。
【0013】
先ず、静電チャックに吸着された基板を脱離させる場合の電荷の状態を説明する。図1(a)、(b)、図2(c)、(d)を参照し、符号2は静電チャックであり、誘電体で構成された静電チャックプレート3と、該静電チャックプレート3内に配置された2枚の電極21、22を有している。2枚の電極21、22は、それぞれ電流計12、13を介して電源装置11に接続されており、一方の電極21にはグラウンド電圧を印加し、他方の電極22には、所望電圧を印加できるように構成されている。
【0014】
電源装置11による電極22への印加電圧と、その際に電極22に流れた電流(電流計13による測定値)の関係を、図5のタイミングチャートに示す。
【0015】
先ず、静電チャック2上に被吸着物(ウェハ)1を載置した後、時刻tonで電源装置11を起動し、電極22に正電圧を印加する。
【0016】
静電チャックプレート3や被吸着物1により、電極21、22間にはコンデンサが形成されているため、電極21、22間に電圧を印加するとそのコンデンサが充電され、瞬間的に大きな充電電流I0が流れる。
【0017】
図1(a)はその状態を示しており、充電電流I0が矢印の方向(電極22に向かう方向)に流れることにより、正電圧が印加された電極22の表面近傍に位置する静電チャックプレート3内部には負電荷15が誘起され、また、静電チャックプレート3表面近傍の、負電荷15に対向する位置には正電荷17が誘起される。
【0018】
他方、静電チャックプレート3の、グラウンド電圧が印加された電極21の表面近傍には、正電荷14が誘起され、それに対応する表面近傍位置には、負電荷16が誘起される。
【0019】
静電チャックプレート3表面近傍に誘起された正負の電荷17、16は、電荷17、16とは逆極性の電荷19、18を、被吸着物1裏面側の対向する位置に誘起させ、その結果、それらの電荷16〜19間に発生する静電気力や、被吸着物1を流れる微少な電流により、被吸着物1は静電チャック2の表面に静電吸着される。
【0020】
電荷16〜19が誘起された後、充電電流I0は流れなくなり、被吸着物1は、静電チャック2表面に吸着された状態になる。その状態では、電極21、22間に存在する等価的な抵抗成分に僅かなリーク電流だけが流れる。
【0021】
その後、静電吸着を終了するために、図5のグラフの時刻toffにて電源装置11を切り離し、2枚の電極21、22間を短絡させると、蓄積されていた電荷14〜19が放出されることにより、放電電流I1が流れる。
図1(b)はその状態を示しており、放電電流I1が矢印の方向(充電電流I0とは逆方向)に流れることにより、蓄積されていた電荷14〜19は次第に減少する。
【0022】
電荷14〜19の減少に従い、放電電流I1も減少するが、放電電流I1が全く流れない状態になっても、静電吸着時に発生した電荷14〜19は完全には消滅しない。
【0023】
消滅しないばかりでなく、被吸着物1が熱膨張する際の物理現象により、静電チャックプレート3表面近傍と、被吸着物1裏面側には、静電誘導による電荷16〜19とは逆極性の電荷が発生する場合がある。
【0024】
図2(c)の符号6〜8は、その逆極性の残留電荷を示しており、被吸着物1裏面と静電チャックプレート3表面の対向する位置では、残留電荷6〜9は互いに逆極性になっており、互いに引き合うため、残留吸着力が発生し、被吸着物1は静電チャックプレート3に吸着されてしまう(但し、残留電荷6〜9は、静電誘導による電荷16〜19と同極性の場合もある。その場合でも、被吸着物1と静電チャックプレート3の間に残留吸着力が発生し、被吸着物1は静電チャックプレート3に吸着されてしまう)。
【0025】
その状態で、リフトピン10によって被吸着物1を持ち上げる(図5の時刻t1)と、静電チャックプレート3表面近傍の残留電荷6、7と対になっていた被吸着物1裏面側の残留電荷8、9が存在しなくなるため、静電誘導により、静電チャックプレート3内部の電極21、22に、被吸着物1の残留電荷8、9と同極性の電荷6a、7aが誘起される。
【0026】
図2(d)はその状態を示しており、その電荷6a、7aが誘起される際には、矢印で示す方向に離脱電流I3が流れる。この離脱電流I3が流れる方向は、充電電流I0と同じ方向であり、その大きさは、脱離電流が時刻t1から時刻t2の間流れているものとすると、下記(1)式、
【0027】
【数1】
Figure 0003913355
【0028】
であらわされる時間積分値が、静電チャック2の残留電荷6、7の大きに比例している。
【0029】
図6は、電極21、22に流れた離脱電流I3の部分拡大図である。流れる脱離電流I3に対し、電流計12、13が互いに逆向きに挿入されているので、電極21、22に流れる離脱電流I3は互いに逆になっている。
【0030】
上述した図5は、被吸着物1が静電チャックプレート3から引き離される際に、リフトピン10上で振動した場合のグラフであり、被吸着物1が持ち上げられる瞬間に、被吸着物1と静電チャック2との間に形成されるコンデンサの容量が振動するため、その僅かな期間(図5では時刻t1〜t3の期間)は、コンデンサの容量変動により、電極21、22に振動電流が流れる。
【0031】
このような振動電流の大きさと回数は、被吸着物1の物理的な振動の大きさと回数に対応しているので、電流計12、13によってモニターすることにより、被吸着物1のリフトピン10上での挙動を知ることができる。
【0032】
以上説明したように、被吸着物1を静電チャックプレート3上から引き離す際の静電誘導による離脱電流I3や振動電流は、静電チャック2の残留電荷6、7の大きさや、被吸着物1のリフトピン10上での挙動を反映しているので、それらを測定することで、被吸着物の静電チャック上からの移動状態を知ることができる。
【0033】
この場合、放電電流が流れた後に離脱する際の電流値を測定すれば、静電チャックに残留した電荷量を算出できる。また、流れる電流の向きから残留電荷の極性も知ることができる。更に、電流値の測定に加え、振動の周期や大きさを一緒に測定すると、基板の挙動も知ることができる。
【0034】
次に、静電チャックに基板を配置する場合の電荷の状態を説明する。
上述したように、電極21、22への電圧印加を停止し、その間を短絡させても、静電チャックプレート3表面近傍には残留電荷6、7が残っており、それにより、残留吸着力が発生してしまう。従って、被吸着物1を静電チャック2上から持ち上げる前に、図2(c)に示した状態から電源装置11内の電圧源11aの極性を静電吸着時とは逆向きに反転させ、電極21、22に逆バイアスを印加する。
【0035】
図3はその状態を示しており、逆バイアス印加によって電流I4を流すと、電界放射等のある種の物理現象の影響により、静電チャックプレート3表面近傍の残留電荷6、7の大きさは減少し、その結果、残留吸着力は弱まり、または消滅すると考えられる。
【0036】
このように、逆バイアス印加により、残留吸着力を弱めることができるが、残留吸着力がある場合、その大きさは、被吸着物1を静電チャック2上から引き離す際に流れた離脱電流I3の大きさに比例するから、その脱離電流I3の電流値が小さいほど残留吸着力は小さくなっている。
【0037】
離脱電流I3の大きさを目安とし、逆バイアスの大きさ及び印加時間と残留吸着力との関係を図7に示す。
【0038】
図7において、記号◆は印加時間が1秒の場合の離脱電流I3の値を示し、記号●は印加時間3秒の場合の離脱電流I3の値を示している。逆バイアスの電圧を大きくしていくと、離脱電流I3の値は小さくなり、残留吸着力が減少するのが判る。
【0039】
離脱電流I3の値がゼロになると、残留吸着力はゼロになるが、印加時間が短い場合には、大きな逆バイアスを印加することが必要になる。3秒間印加する場合は305Vの逆バイアスでよいが、1秒間印加する場合は630Vの逆バイアスが必要になる。
【0040】
逆バイアスの大きさがそれ以上になると、離脱電流I3の値は、逆バイアスを印加しない場合とは逆向きになり、逆バイアスが大きくなるにつれてその方向に増加していく。これは電極21、22に対する逆バイアスの印加が過剰となり(電圧値と印加時間との相関関係で定まる逆バイアス印加条件が適正値を超えている)、残留電荷6、7を相殺する以上に電荷が注入され、残留電荷6、7と逆符号の電荷が発生してしまったことを意味している。
【0041】
その場合も、過剰に注入された電荷により、残留起電力が発生するので望ましくない。従って、電極21、22に逆バイアスを印加して残留電荷量を相殺する場合には、残留電荷量を正しく測定し、それをゼロとする(あるいは静電チャックと被吸着物とプロセスに合わせて最適化する)ような、適正な印加時間と逆バイアス値を選ぶ必要のあることが判る。
【0042】
具体的には、多数の被吸着物を連続して処理する場合、先ず、被吸着物を引き離す際に離脱電流I3の値を測定しておき、その電流値によって印加する逆バイアスの大きさと時間(印加量)を決定し、実際に被吸着物を処理した後、離脱電流I3を測定すると、逆バイアスの印加量を修正することが可能になり、その結果、残留吸着力を高精度で消滅させることが可能になる。
【0043】
本発明は、上記知見に基いて創作されたものであり、その残留吸着力低減方法は、誘電体と、該誘電体中に配置された電極を有する静電チャック上に被吸着物を配置し、前記電極に吸着電圧を印加して前記被吸着物を静電吸着し、前記吸着電圧を解除した後、前記電極に、前記吸着電圧とは逆極性の電圧を印加し、前記静電チャックと前記被吸着物との間の残留吸着力を低減させる残留吸着力低減方法であって、前記残留吸着力を低減させた後、前記被吸着物を前記静電チャック上から離脱させる際に流れる電流の状態を測定し、測定結果に基づいて、前記逆電圧の印加状態を設定することを特徴とする。
【0044】
この場合には、被吸着物を静電チャック上から離脱させる際に流れる離脱電流I3の流れ方を測定し、例えばその電流値の時間積分値により、残留吸着力を定量的に求めることができる。また、電流の方向から残留電荷の極性も分かる。
【0045】
従って、被吸着体の振動音の大小や、被吸着体の振動状態(振幅)の大小を目視で判断する等の、主観的な判断が不要になり、残留吸着力を確実に消滅させることが可能になる。
【0046】
上記のように逆バイアスを印加したり、又は逆バイアスを印加しない場合に、処理が終了した被吸着物を静電チャック2上から引き離した後も静電チャックプレート3表面近傍に残留電荷6、7が残っていると、未処理の被吸着物を静電チャックプレート3に載置する(リフトダウン)と、被吸着物裏面側に、静電チャックプレート3の残留電荷とは逆極性の電荷が誘起される。
【0047】
図4は、図2(d)に示した状態の静電チャックプレート3上に無電荷の被吸着物1を載置した後、静電チャックプレート3表面近傍の残留電荷6、7の影響により、被吸着物1裏面側に電荷26、27が誘起された状態を示している。この電荷26、27が誘起される際に電流I5が流れる。
【0048】
図8に、被吸着物1を載置する際(リフトダウン時)に流れる電流I5のグラフを示す。この電流I5は、離脱時の電流とは逆方向である。
【0049】
その電流I5の大きさは、静電チャック2の残留吸着力の大きさに比例しており、被吸着物に逆バイアスを印加する際に、逆バイアスの大きさを、電流I5の大きさによって修正することが可能である。
【0050】
なお、多数の被吸着物を連続して処理する場合には、被吸着物を載置する前の静電チャックの残留電荷が、被吸着物を静電チャックから離脱させる際の残留吸着力に影響を及ぼす。
【0051】
従って、直前に処理を行った被吸着物を載置したときの電流I5、印加した逆バイアスの状態、その被吸着物を引き離したときの脱離電流I3、今回処理すべき被吸着物を載置したときの電流I5とから、正確な逆バイアスの印加量を求めることが可能になる。
【0052】
このように、本発明によれば、残留電荷がない状態で基板であるウェハを吸着保持してプロセスを行うことができるため、連続して成膜等の処理を行う場合に常に一定の吸着力でウェハを保持することができ、その結果、安定した条件で成膜等の処理を行うことが可能になっている。
【0053】
なお、図1〜図4では、一方の電極21を接地させた状態で他方の電極22に正電圧を印加したが、電極21、22間の中点を接地させ、一方の電極に負電圧を印加し、他方の電極22に正電圧を印加して被吸着物1を静電吸着してもよい。
【0054】
その構成の場合、逆バイアスを印加する際には、負電圧を印加していた電極21に正電圧を印加し、正電圧を印加していた電極22に負電圧を印加するようにするとよい。
【0055】
【発明の実施の形態】
(1)第1の実施形態
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図9の符号71は、本発明に係る真空処理装置の一実施形態であり、チャンバー72を有している。チャンバー72は、図示しない真空排気系に接続され、その上部には成膜物質であるターゲット73が配置されている。このターゲット73は、スパッタリング用の直流電源74に接続され、負バイアスを印加できるように構成されている。なお、直流電源74のプラス側はチャンバー72とともにアースされている。
【0056】
チャンバー72内には、被吸着物であるウェハ75を吸着保持するための静電チャック機構76が設けられている。静電チャック機構76は誘電体から成る静電チャックプレート77と、該静電チャックプレート77内に配置された電極78、79によって構成されている。そして、これらの電極78、79には、チャンバー72の外側に設けた静電チャック電源(電源)80が、電流導入端子81、82を介して接続されており、電極78、79間に所望の電圧を印加できるように構成されている。
【0057】
また、本実施の形態においては、各電流導入端子81、82と静電チャック電源80との間に、1μA以下の微小な電流を測定可能な電流計(電流測定手段)83、84が挿入されている。
【0058】
一方、チャンバー72の底部には、ウェハ75を静電チャックプレート77上に載せ、又は静電チャックプレート77から離脱させるための昇降機構85が設けられている。
【0059】
また、真空処理槽72の外部には、装置全体を制御するためのコンピュータ86が設けられており、このコンピュータ86は、上記昇降機構85を上下移動させる駆動部87と、電流計83、84と、静電チャック電源80と、スパッタリング用の直流電源74とに接続されている。なお、このコンピュータ86はA/D変換ボード等のデータ収集手段を備えており、また、例えばペンレコーダ等の測定電流を記録するための手段(図示せず)を備えている。
【0060】
図9に示すスパッタリング装置71を用い、ウェハ75にスパッタリング成膜処理を行う場合には、予め、ウェハ75が静電チャックプレート77から正常に離脱したときの、電極78、79に流れる電流を測定しておき、それにより、ウェハ75が正常に離脱したと判断できる電流範囲をコンピュータ86に記憶させておく。
【0061】
ここでは、その電流範囲が±100μAであるものとし、その範囲を越えた電流が検出されたときには、直ちに搬送を停止するようなシーケンスをコンピュータ86に組み込んでおく。
【0062】
そして、チャンバー72内を真空雰囲気にし、図示しないウェハ搬送系により、真空雰囲気を維持したままウェハ75をチャンバー72内に搬入し、装置全体を制御するコンピュータ86によって昇降機構85を上昇させ、ウェハ75をウェハ搬送系からその上に乗せ替える。
【0063】
次いで、ウェハ搬送系をチャンバー72外に搬出した後、昇降機構85を下降させると、ウェハ75は静電チャックプレート77上に載置される(リフトダウン)。コンピュータ86によって静電チャック電源80を制御し、所定の電圧を出力させると、ウェハ75は静電チャック表面に吸着される。
【0064】
その状態でチャンバー72内にスパッタリングガスを導入し、ターゲット73に負電圧を印加してスパッタリングを行い、ウェハ75表面に薄膜を形成する。
薄膜が所定膜厚に形成されたところで、スパッタリングガスの導入とターゲット73への電圧印加を終了する。
【0065】
そして、コンピュータ86により、昇降機構85を上昇させ、ウェハ75を静電チャック76から離脱させる(リフトアップ)。その際、電流計83、84によって電極78、79に流れる電流を測定する。コンピュータ86はその電流ピーク値をリアルタイムで検出し、この電流値と、基準電流範囲の±100μAとを比較することで、ウェハ75の上昇状態が正常であるか否かを判断する。
【0066】
例えば、電流ピーク値が100μA以上になってしまった場合には、コンピュータ86は搬送異常と判断し、リフトアップを中断させる命令を駆動部87に出力し、駆動部87が昇降機構85等の動作を停止させる。その後、真空処理装置71のメンテナンスを行い、正常状態に復帰させた後に一連の動作を再開する。
【0067】
以上述べたように、本実施形態においては、ウェハ75の搬送中に異常があった場合には、直ちに搬送を停止して適正に対処することができるので、搬送ズレ等により、次の処理室での処理に支障があったり、不良品が発生する等の問題が生じなくなる。
従って、最終製品の歩留りが低下してしまうという問題を解消することが可能になる。
【0068】
なお、本実施形態ではスパッタリングプロセスに入る前に予め振動が発生し始める基準電流を求めておき、これと実際に測定される電流とを比較して振動状態を判断しているが、本発明はこれに限らず、予め基準電流を求めることなく最初の1枚のウェハの処理を開始してしまい、プロセス中に搬送エラーが生じたときの電流を記憶して基準電流とすることも可能である。
【0069】
また、上述の実施の形態においては、スパッタリング装置を例にとって説明したが、本発明はこれに限られず、静電チャック機構を具備する全ての装置に適用することができるものである。この場合においては、エッチング装置、CVD装置などの真空処理装置に適用することができる。
【0070】
さらに、図9に示す実施の形態においては、2枚の電極78、79を設けた双極方式の静電チャック76を示したが、本発明は単極方式の静電チャックにも適用できる。
【0071】
また、上述の実施の形態の場合は、電極と逆バイアス電圧印加用の電源との間に電流計を設けるようにしたが、本発明はこれに限られず、双極方式、単極方式ともに、逆バイアス電圧印加用の電源とグラウンドとの間に電流計を配設することもできる。
【0072】
(2)第2の実施形態
以下で、本発明の第2の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。第2の実施形態も、第1の実施形態で説明した図9の真空処理装置71を用いて説明する。
【0073】
図9に示すスパッタリング装置71において、外部よりウェハ搬送系(図示せず)に載置されたウェハ75がチャンバー72に搬入された場合には、装置全体を制御するコンピュータ86からの命令によって昇降機構85を上方に移動させてウェハ75を受け取る。その後、昇降機構85を下降させてウェハ75を静電チャック76の上に載置する(リフトダウン)。その際、各電極78、79と静電チャック電源80との間を流れる電流値を電流計83、84によって測定する。これらの電極78、79間に電流が流れたということは静電チャックプレート77に電荷が滞留していることを意味するので、ウェハ75を離脱させる前に、コンピュータ86はその電流値(正確には時間積分値)に基づき電極78、79に印加する適正な逆バイアス電圧値と印加時間を求めておく。
【0074】
これらの電圧値と印加時間は一応の基準となるが、あくまで暫定的なもので、後に修正されることもある値である。その後、コンピュータ86から静電チャック電源80に命令を出してここから所定の電圧を出力させ、ウェハ75をクランプして所定のスパッタリングプロセスを行う。
【0075】
このプロセスの終了後、コンピュータ86は静電チャック80を制御し、先に決めておいた条件で、電極78、79に静電吸着時とは逆極性の逆バイアス電圧を印加させ、これにより静電チャックプレート77の残留電荷量を低減させる。
【0076】
その後、昇降機構85を上昇させてウェハ75を静電チャック76から離脱させる(リフトアップ)。その際、電流計83、84によって電極78、79に流れる電流を測定し、コンピュータ86によって加えた逆バイアスの値が適正であったどうかを判定し、必要に応じて先に求めた逆バイアスの電圧値と印加時間を修正する。
【0077】
このように、新たなウェハが搬送されてリフトダウンされるごとに逆バイアス電圧値と印加時間を求め、リフトアップ時にこれらの値を修正するという動作を繰り返して行うことにより、ウェハの処理枚数が増すごとに逆バイアス電圧値と印加時間の値が適正な値に近づくので、静電チャックプレート77に滞留する電荷を適正に除去することができる。
【0078】
以上述べたように本実施の形態によれば、残留電荷を低減させた状態でウェハ75を吸着保持してスパッタリングを行うことができるため、連続してスパッタリングを行う場合に一定の吸着力でウェハ75を保持することができる。その結果、安定した条件で成膜を行うことができるので、半導体デバイスの製造工程における歩留まりを向上させることができる。
【0079】
なお、本発明は上述の実施の形態に限られることなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、上述の実施の形態においては、スパッタリング装置を例にとって説明したが、本発明はこれに限られず、静電チャック機構を具備する全ての装置に適用することができるものである。この場合においては、エッチング装置、CVD装置などの真空処理装置に適用するとより効果的である。
【0080】
また、図9に示す実施の形態においては、双極方式の静電チャックを示したが、本発明は単極方式の静電チャックにも適用しうるものである。
さらに、上述の実施の形態の場合は、電極と逆バイアス電圧印加用の電源との間に電流計を設けるようにしたが、本発明はこれに限られず、双極方式、単極方式ともに、逆バイアス電圧印加用の電源とグラウンドとの間に電流計を配設することもできる。
【0081】
さらにまた、上述の実施の形態では両極の電極とチャック電源間の電流を測定するようにしたが、どちらか一方の電極とチャック電源間に流れる電流を測定するように構成することも可能である。
【0082】
加えて、半導体デバイスの生産ラインにおいて、成膜条件(静電チャックプレートの温度、チャック電圧、その他のプロセス条件)が設定されている場合には、その条件での逆バイアスの電圧値と印加時間をあらかじめ実験的に定めておくこともできる。これによれば、毎回コンピュータで残留電荷量の大小と逆バイアス条件を吟味することなく残留電荷量を低減した状態でウェハを連続的に搬送して処理を行うことができ、処理時間の短縮化ひいては生産効率の向上を達成することができる。
【0083】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、静電チャックから被吸着物を離脱させて上昇させるときに、上昇状態の異常を検出することができるので、上昇中に異常が発生したときには直ちに上昇を停止させ、正常状態に復帰させることができる。
【0084】
従って、この振動によって搬送ズレが生じ、これを放置したまま次の処理室に搬送してしまい、成膜が不完全に行われてしまうという問題や、振動がひどすぎて搬送中に基板がリフトピンから脱落してしまうというような問題を極力抑止することができ、最終製品である半導体デバイスの歩留りが低下してしまうという問題を解消することが可能になる。
【0085】
また、静電チャックに残留した電荷量を正確に定量的に評価することができるため、静電チャックに滞留する電荷を適正に除去することができる。
【0086】
また、本発明によれば、常に安定した条件で成膜等の処理を行うことができるので、半導体デバイスの製造工程における歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a):被吸着物を静電吸着するために、電極に電圧を印加したときの電荷分布を示す図
(b):その後、放電電流が流れているときの電荷分布を示す図
【図2】(c):放電電流が流れなくなった後の電荷分布を示す図
(d):被吸着物を静電チャック上から離脱させるときの電荷分布を示す図
【図3】電極に逆バイアスを印加したときの電荷分布を示す図
【図4】残留電荷が残っている静電チャック上に被吸着物を載置したときの電荷分布を示す図
【図5】静電チャックプレートの電極間に印加される電圧と、電極間に流れる電流Iの時間変化を示す図
【図6】ウェハをリフトアップしたときに電極間に流れる電流パルスの測定例を示すグラフ
【図7】チャック終了後静電チャックプレートに印加する逆バイアス電圧と印加時間をパラメーターとした場合において、リフトアップ時の静電誘導により電極に流れる電流値を示すグラフ
【図8】ウェハのリフトアップ時の電流変化とリフトダウン時の電流変化の様子を示すグラフ
【図9】本発明に係る真空処理装置の一実施の形態であるスパッタリング装置の概略構成図
【符号の説明】
1…ウェハ(被吸着物) 2…静電チャック 3…静電チャックプレート 6、7…残留電荷 6a、7a…電荷 10…リフトピン 11…静電チャック電源(電源) 12、13…電流計 21、22…電極(吸着電極) 71…スパッタリング装置 72…真空処理槽 75…ウェハ(基板) 76…静電チャック 77…静電チャックプレート 78、79…電極(吸着電極) 80…静電チャック電源 83、84…電流計 85…昇降機構 86…コンピュータ

Claims (1)

  1. 誘電体中に配置された電極を有する静電チャック上に一の被吸着物を載置し、前記電極に吸着電圧を印加して前記一の被吸着物を静電吸着して処理し、前記吸着電圧の印加を解除した後、前記一の被吸着物を前記静電チャック上から離脱させ、後続する他の被吸着物を静電吸着して処理する被吸着物の処理方法であって、
    前記一の被吸着物を脱離させる際に前記電極に流れる電流を測定し、
    この電流の値に基づいて上記静電チャックに残留した残留電荷の極性と電荷量を算出し、前記残留電荷を減少させる逆バイアス電圧の電圧値と印加時間を求め、
    他の被吸着物を前記静電チャック上に配置し、静電吸着して処理した後、離脱させる前に、前記電極に、求めた電圧値と印加時間で前記逆バイアス電圧を印加し、前記残留電荷を低減させる被吸着物の処理方法。
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