JP3911953B2 - 制御装置および温度調節器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、制御対象の温度や圧力などの物理状態を制御する制御装置、制御対象の温度を制御する温度調節器に関し、さらに詳しくは、制御対象の物理状態を制御する状態制御手段を複数備え、各状態制御手段による制御が、他の状態制御手段による制御に影響を与える、いわゆる干渉のある制御対象の制御に好適な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の制御対象、例えば、半導体プロセスの熱処理装置として、図27に示される熱酸化装置があり、この熱酸化装置18は、シリコンのウェハを酸化するものであって、熱処理炉としての反応管19に必要なガスを流しながら酸化膜の生成を行うものである。この熱酸化装置18は、反応管19を外囲する均熱管20の周囲に分割して配置された複数、この例では、3つの第1〜第3のヒータ211〜213とそれに個別的に対応する第1〜第3の温度センサ221〜223とを有し、温度制御は、マイクロコンピュータ23によって、ヒータおよび温度センサの各組に対応する領域(以下「ゾーン」という)毎に個別に行われている。
【0003】
すなわち、第1のヒータ211および第1の温度センサ221が配置された上側の第1のゾーンでは、第1の温度センサ221の検出出力に基づいて、目標温度になるように第1のヒータ211が操作され、第2のヒータ212および第2の温度センサ222が配置された中間の第2のゾーンでは、第2の温度センサ222の検出出力に基づいて、目標温度になるように第2のヒータ212が操作され、第3のヒータ213および第3の温度センサ223が配置された下側の第3のゾーンでは、第3の温度センサ223の検出出力に基づいて、目標温度になるように第3のヒータ213が操作される。
【0004】
しかしながら、各ゾーンは熱的に連続しているので、一つのゾーンのヒータによる熱量は、そのゾーンのみならず、他のゾーンの温度センサにも影響を与える、いわゆる干渉を生じる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような干渉があるために、特に、過渡時や外乱時に温度のバラツキが顕著となって均一な温度制御が困難であり、また、各ゾーンを異なる目標温度に制御するといったことが容易でない。
【0006】
さらに、温度調節器における最適なPID制御のパラメータを決定するためのオートチューニングが正しく実行できないという難点もある。
【0007】
以下、オートチューニングが正しく実行できない理由について、制御のシュミレーションソフト(MATLAB)を使用した例を用いて説明する。
【0008】
先ず、正常にオートチューニングをできる例として、図28に示される干渉のない独立な第1,第2の制御対象241,242を制御する場合について説明する。この例は、独立に二つの制御対象241,242を制御するものであり、第1のPID制御手段251では、オートチューニングを実行し、第2のPID制御手段252では、目標値をグランドとしてPID制御を実行している。なお、261,262は、目標値とフィードバック量との制御偏差を出力する加算器である。
【0009】
図29は、このシステムにおける第1の制御対象241からの第1のフィードバック量PV1(破線)、第1のPID制御手段251からの第1の操作量MV1(実線)、第2の制御対象242からの第2のフィードバック量PV2(二点鎖線)および第2のPID制御手段252からの第2の操作量MV2(一点鎖線)を、スコープに表示した波形を示すものであり、第1の操作量MV1がオンオフするリミットサイクルが生じており、第1のフィードバック量PV1の周期と振幅とを使って第1のPID制御手段251のPID制御のパラメータを決定することができる。
【0010】
なお、フィードバック量PV1,PV2は、例えば温度制御における温度センサで検出された検出温度に相当し、操作量MV1,MV2は、制御対象を加熱するヒータおよびそのヒータの通電をオンオフする電磁開閉器からなる操作手段に与えられる操作量である。
【0011】
次に、図30に示されるように、2入力(MV1,MV2)2出力(PV1,PV2)の干渉のある制御対象27に独立な制御を実行した場合について説明する。
【0012】
この制御対象27は、図31に示されるように、第1のPID制御手段251からの第1の操作量MV1が、第1の加算器28に与えられるとともに、第1の減衰器29で0.9に減衰されて第2の加算器30に与えられる一方、第2のPID制御手段252からの第2の操作量MV2が、第2の加算器30に与えられるとともに、第2の減衰器31で0.9に減衰されて第1の加算器28に与えられ、各加算器28,30の加算出力が、第1,第2の遅れ要素32,33にそれぞれ与えられる構成とされており、この例では、各操作量MV1,MV2が0.9の割合で他方に加えられて互いに干渉を生じるものである。
【0013】
このような干渉のある制御対象27では、第1のPID制御手段251で、オートチューニングを実行し、第2のPID制御手段252では、目標値をグランドとしてPID制御を実行すると、図32に示されるように、第1の操作量MV1(実線)に、オンオフのリミットサイクルが生じない場合があり、かかる場合には、第1のフィードバック量PV1(破線)の振動の振幅および周期を正しく測定できず、PID制御のパラメータも計算することができないことになる。
【0014】
このように第1の操作量MV1がオンオフしない原因は、オートチューニングをしない側の第2のPID制御手段252が干渉してオートチューニング側の第1のフィードバック量PV1の変化が生じないように勝手に動作してしまうからである。これは、第2の操作量MV2(一点鎖線)が、第1のフィードバック量PV1の変化とは逆向きの動きをしていることからも分かる。
【0015】
このように、干渉のある制御対象では、PIDの制御パラメータを設定するためのオートチューニングが実行できず、試行錯誤的な設定にならざるを得ず、このため、設定に時間を要するとともに、所望の制御特性を得るのが困難である。
【0016】
本発明は、上述の点に鑑みて為されたものであって、干渉のある制御対象であっても、その干渉を低減するとともに、制御パラメータの設定を可能とすることを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明では、上述の目的を達成するために、次のように構成している。
【0018】
すなわち、本発明による制御装置は、制御対象の物理状態をそれぞれ検出する複数の検出手段からの情報と前記複数の検出手段に個別的に対応する複数の目標情報との偏差を、前記物理状態の勾配を示す情報の偏差に変換するとともに、物理状態の代表状態を示す情報の偏差に変換する変換手段と、前記変換手段からの前記勾配を示す情報の偏差または前記代表状態を示す情報の偏差を制御偏差として操作信号をそれぞれ出力する複数の状態制御手段と、前記各状態制御手段からの操作信号を、複数の操作手段に、各状態制御手段による制御が、他の状態制御手段による制御に与える影響をなくす又は小さくするように配分する配分手段と、を備えている。
【0019】
ここで、物理状態とは、温度、圧力、流量、速度あるいは液位などの様々な物理量の状態をいう。
【0020】
また、物理状態の勾配とは、温度勾配、圧力勾配、流量勾配、速度勾配などの様々な物理量の勾配をいう。
【0021】
さらに、物理状態の代表状態とは、制御対象の物理状態を代表的に示す状態をいい、例えば、温度であれば、制御対象の平均温度、ある位置(例えば中央位置)における温度などをいう。
【0022】
また、目標情報とは、物理状態の制御目標の情報をいい、例えば、目標温度、目標圧力、目標流量などをいう。
【0023】
本発明の制御装置によると、複数の検出手段からの情報と複数の目標情報との偏差を、物理状態の勾配を示す情報の偏差あるいは代表状態を示す情報の偏差、すなわち、干渉のない独立の情報に変換して制御を行うとともに、配分手段によって各状態制御手段による制御が、他の状態制御手段による制御に与える影響をなくす又は小さくするように配分するので、干渉のある制御対象の制御において、その干渉を低減することが可能となる。
【0027】
また、本発明による温度調節器は、制御対象の温度をそれぞれ検出する複数の温度検出手段から得られる検出温度を、複数の検出温度に基づく傾斜温度に変換するとともに、代表的な代表温度に変換する変換手段と、前記変換手段からの傾斜温度または代表温度を制御量として操作信号をそれぞれ出力する複数の温度制御手段と、前記各温度制御手段からの操作信号を、前記制御対象を加熱(または冷却)する複数の加熱(または冷却)手段に、各温度制御手段による制御が、他の温度制御手段による制御に与える影響をなくす又は小さくするように配分する配分手段と、複数の温度検出手段に個別的に対応する目標温度を、目標代表温度および目標傾斜温度に変換する目標温度変換手段とを備え、前記各温度制御手段の操作信号を変化させて前記各温度検出手段の検出温度の変化を計測して前記配分手段による配分比を決定するための伝達係数(伝達関数)を予め求めるものである。
【0028】
本発明によると、複数の温度検出手段から得られる検出温度を、傾斜温度と代表温度、すなわち、干渉のない独立の情報に変換して制御を行うとともに、配分手段によって各温度制御手段による制御が、他の温度制御手段による制御に与える影響をなくす又は小さくするように配分するので、干渉のある制御対象の制御において、その干渉を低減することが可能となる。また、例えば、制御対象を複数のゾーン毎に区分して温度制御を行う場合に、特定のゾーンの検出温度を代表温度としてそのゾーンに着目した制御を行うことができる。
【0029】
さらに、各温度制御手段による制御が、他の温度制御手段による制御に与える影響をなくす又は小さくするように配分するためには、各温度制御手段による制御が、他の温度制御手段による制御にどの程度影響を与えるかを予め把握する必要があるが、各温度制御手段の操作信号を変化させて各検出手段の検出温度の変化を計測して伝達係数(伝達関数)、すなわち、加熱(または冷却)手段の熱量が、複数の温度検出手段にそれぞれ伝わる際の伝達係数(または伝達関数)を求めることでそれを把握できることになる。また、本発明によると、代表温度および傾斜温度を制御量として制御するので、目標代表温度(代表温度の目標値)および目標傾斜温度(傾斜温度の目標値)を設定する必要があるが、複数の温度検出手段に個別的に対応する目標温度を、目標代表温度および目標傾斜温度に変換する目標温度変換手段を備えることにより、ユーザは、目標代表温度および目標傾斜温度という不慣れな目標値を設定する必要がなく、従来と同様に、複数の温度検出手段に個別的に対応する目標温度、すなわち、各ch毎の目標温度を設定すればよい。
【0036】
本発明の温度調節器は、制御対象の温度をそれぞれ検出する複数の温度検出手段から得られる検出温度と前記複数の温度検出手段に個別的に対応する複数の目標温度との温度偏差を、傾斜温度の偏差に変換するとともに、代表的な代表温度の偏差に変換する変換手段と、前記変換手段からの傾斜温度の偏差または代表温度の偏差を制御偏差として操作信号をそれぞれ出力する複数の温度制御手段と、前記各温度制御手段からの操作信号を、前記制御対象を加熱(または冷却)する複数の加熱(または冷却)手段に、各温度制御手段による制御が、他の温度制御手段による制御に与える影響をなくす又は小さくするように配分する配分手段とを備えている。
【0037】
本発明によると、複数の温度検出手段からの検出温度と目標温度との温度偏差を、傾斜温度の偏差と代表温度の偏差、すなわち、干渉のない独立の情報に変換して制御を行うとともに、配分手段によって各温度制御手段による制御が、他の温度制御手段による制御に与える影響をなくす又は小さくするように配分するので、干渉のある制御対象の制御において、その干渉を低減することが可能となる。また、例えば、制御対象を複数のゾーン毎に区分して温度制御を行う場合に、特定のゾーンの検出温度を代表温度としてそのゾーンに着目した制御を行うことができる。
【0038】
しかも、ユーザは、複数の温度検出手段に個別的に対応する目標温度、すなわち、各ch毎の目標温度を設定すればよく、目標代表温度(代表温度の目標値)および目標傾斜温度(傾斜温度の目標値)という不慣れな目標値を設定する必要がない。
【0039】
本発明の温度調節器は、制御対象の温度をそれぞれ検出する複数の温度検出手段から得られる検出温度を、複数の検出温度に基づく傾斜温度に変換するとともに、代表的な代表温度に変換する変換手段と、前記変換手段からの傾斜温度または代表温度を制御量として操作信号をそれぞれ出力する複数の温度制御手段と、前記各温度制御手段からの操作信号を、前記制御対象を加熱(または冷却)する複数の加熱(または冷却)手段に、各温度制御手段による制御が、他の温度制御手段による制御に与える影響をなくす又は小さくするように配分する配分手段と、前記代表温度または前記目標代表温度に基づいて、予め設定された定数を用いた算出式に従って補正値を算出して前記温度制御手段の制御パラメータを補正する補正手段とを備え、前記各温度制御手段の操作信号を変化させて前記各温度検出手段の検出温度の変化を計測して前記配分手段による配分比を決定するための伝達係数(伝達関数)を予め求めるものである。
【0040】
制御する温度が変化すると、加熱手段であるヒータの抵抗値が変化し、あるいは、時定数が変化するので、そのままではハチングやオバーシュートが発生することになるが、本発明よると、平均温度などの代表温度または代表温度の目標値である目標代表温度に基づいて、制御パラメータを補正するので、自動的に温度補償が行われてハンチングやオバーシュートの発生を抑制できることになる。特に、過渡状態を除いて代表温度とほぼ等しい固定の目標代表温度に基づいて補正することにより、時々刻々変化する代表温度に基づいて補正する構成に比べて処理が簡素化される。
【0042】
本発明によると、予め定数を設定することにより、自動的に温度に応じて制御パラメータが補正されることになる。
【0043】
本発明の好ましい実施態様においては、前記算出式が、一次の近似式であり、本発明によると、簡単な直線近似式で温度補償を行えることになる。
【0044】
本発明の他の実施態様においては、前記算出式が、二次以上の近似式であり、本発明によると、より精度の高い温度補償が行えることになる。
【0050】
【発明の実施の形態】
以下、図面によって本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0051】
図1は、本発明の一つの実施の形態に係る温度調節器を用いた温度制御システムの概略構成図である。
【0052】
この実施の形態の温度制御システムは、制御対象3を加熱する複数のヒータ11〜1nと、複数のヒータ11〜1nに個別的に対応して制御対象3の温度を検出する複数の温度センサ21〜2nと、これら温度センサ21〜2nの検出出力に基づいて、各ヒータ11〜1nを図示しない電磁開閉器などを介して操作して制御対象3の温度を制御する本発明に係る温度調節器4とを備えている。
【0053】
制御対象3は、熱的に連続して干渉を生じるものであり、各ヒータ11〜1nと対応する各温度センサ21〜2nとがそれぞれ近接して配置されて複数のゾーンがそれぞれ形成されている。
【0054】
この温度制御システムは、例えば、上述の図27に示される熱酸化装置18に適用できるものであり、制御対象3を、熱処理炉としての反応管19とし、第1〜第3のヒータ11〜13を、反応管19の周囲に分割して配置された第1〜第3のヒータ211〜213とし、第1〜第3の温度センサ21〜23を、各ゾーンの温度を検出する第1〜第3の温度センサ221〜223として適用することができるものである。
【0055】
図2は、図1の温度調節器4の要部の概略構成を示すブロック図であり、後述する図21〜図23の具体的な実施例1〜3の前提となる主要な構成を説明するためのものである。この温度調節器4は、複数の温度センサ21〜2nの検出温度の平均温度および検出温度に基づく傾斜温度を後述のようにして算出する平均温度・傾斜温度算出手段(以下「モード変換器」ともいう)5と、この算出手段5で算出された平均温度または各傾斜温度がそれぞれ入力される複数の温度制御手段としてのPID制御手段61〜6nと、各PID制御手段61〜6nからの操作信号(操作量)を後述のように所定の配分比で加熱手段を構成する各ヒータ11〜1nに配分する配分手段(以下「前置補償器」ともいう)7とを備えている。平均温度・傾斜温度算出手段5、PID制御手段61〜6nおよび配分手段7は、例えば、マイクロコンピュータによって構成される。
【0056】
従来では、上述の図27に示されるように、各ゾーン毎に温度を検出して対応するヒータを個別に制御していたけれども、この実施の形態では、干渉をなくすために、平均温度・傾斜温度算出手段5で算出される代表温度としての平均温度および複数の各傾斜温度を制御量として温度制御を行うようにしている。
【0057】
変換手段としての平均温度・傾斜温度算出手段5は、複数の温度センサ21〜2nからの情報を、一つの平均温度と複数の傾斜温度との情報に変換するものであり、その理由は、干渉がなく、独立で分かりやすい情報にするためであり、例えば、次のような演算を行うものである。
【0058】
すなわち、第1の温度センサ21の検出出力をS1,第2の温度センサ22の検出出力をS2,…第nの温度センサ2nの検出出力をSnとすると、下記に示される平均温度Tav,第1の傾斜温度Tt1,第2の傾斜温度Tt2,…第n−1の傾斜温度Ttn-1を算出する。
【0059】
Figure 0003911953
ここで、Tavは、複数の温度センサ21〜2nの検出温度の平均温度であり、傾斜温度Tt1は、複数の温度センサ21〜2nを、温度センサ21〜2n-1と温度センサ2nとの二つに区分した場合の温度センサ21〜2n-1の平均検出温度と温度センサ2nの検出温度との差であり、傾斜温度Tt2は、複数の温度センサ21〜2n-1を、温度センサ21〜2n-2と温度センサ2n-1との二つに区分した場合の温度センサ21〜2n-2の平均検出温度と温度センサ2n-1の検出温度との差であり、以下同様にして、傾斜温度Ttn-1は、温度センサ21と温度センサ22との検出温度の差である。
【0060】
以上の式をまとめて、モード変換行列Gmと称する行列を用いて下記のように表すことができる。
【数1】
Figure 0003911953
T=Gm・S
ただし、T=[Tav Tt1 Tt2 ……Ttn-1T
S=[S1 S2 S3 ……SnT
この実施の形態では、これら平均温度Tavと複数の傾斜温度Tt1〜Ttn-1とを制御量として温度制御を行うものである。
【0061】
なお、傾斜温度は、この実施の形態に限られるものではなく、例えば、下記のモード変換行列Gmに示されるように隣り合う温度センサの検出温度の温度差や複数の温度センサを二つのグループに区分して各グループの平均検出温度の温度差などの種々の傾斜温度を用いることができる。
【数2】
Figure 0003911953
また、傾斜温度は、複数の温度センサを大きく二つのグループに区分した各グループの平均検出温度の温度差、各グループをさらに二つに区分した各グループの平均検出温度の温度差、さらに各グループを二つに区分した各グループの平均検出温度の温度差といったように、マクロな傾斜温度からミクロな傾斜温度までを算出して用いるようにしてもよい。
【0062】
要するに、温度の傾斜を意味する情報と平均の情報とに分離して制御できるようにすればよい。
【0063】
第1のPID制御手段61は、平均温度・傾斜温度算出手段5からの平均温度と目標平均温度の制御偏差に基づいて、平均温度が目標平均温度になるように操作信号を配分手段7に出力し、第2のPID制御手段62は、平均温度・傾斜温度算出手段5からの第1の傾斜温度と第1の目標傾斜温度との制御偏差に基づいて、第1の傾斜温度が第1の目標傾斜温度になるように操作信号を配分手段7に出力し、第3のPID制御手段63は、平均温度・傾斜温度算出手段5からの第2の傾斜温度と第2の目標傾斜温度との制御偏差に基づいて、第2の傾斜温度が第2の目標傾斜温度になるように操作信号を配分手段7に出力し、以下同様にして、第nのPID制御手段6nは、平均温度・傾斜温度算出手段5からの第n−1の傾斜温度と第n−1の目標傾斜温度との制御偏差に基づいて、第n−1の傾斜温度が第n−1の目標傾斜温度になるように操作信号を配分手段7に出力する。
【0064】
すなわち、第1のPID制御手段61は、平均温度を制御し、第2〜第nの各PID制御手段62〜6nは、第1〜第n−1の傾斜温度をそれぞれ制御するものである。
【0065】
次に配分手段7について説明する。
【0066】
この配分手段7は、各PID制御手段61〜6nからの操作信号(操作量)を、各ヒータ11〜1nに配分するのであるが、その際に、各PID制御手段61〜6nそれぞれによる平均温度または各傾斜温度の制御が、他のPID制御手段61〜6nそれぞれによる平均温度または傾斜温度の制御に与える干渉をなくすように配分するものである。
【0067】
例えば、第1のPID制御手段61の操作信号によって平均温度を変化させる場合に、その操作信号によって傾斜温度が変化せず、また、第2のPID制御手段62の操作信号によって第1の傾斜温度を変化させる場合に、その操作信号によって平均温度および他の傾斜温度が変化せず、同様に、各PID制御手段の操作信号によって他のPID制御手段による制御が影響されないように配分するのである。
【0068】
この配分手段7による配分について、さらに詳細に説明する。
【0069】
ここで、分かり易くするために、n=2、すなわち、ゾーンが2つであって、第1,第2のヒータ11,12、第1、第2の温度センサ21,22、平均温度を制御する第1のPID制御手段61および両温度センサ21,22の検出温度の差である傾斜温度を制御する第2のPID制御手段62を備える場合に適用して図3に基づいて説明する。
【0070】
この図3は、上述の図30,図31の従来例で説明した2入力2出力の干渉のある制御対象27に適用した例であり、図2に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0071】
平均温度・傾斜温度検出手段5は、第1,第2の温度センサ21,22の検出出力に相当する制御対象3からのフィードバック量PV1,PV2を、図4に示されるように加算器8で加算して減衰器9で1/2に減衰して平均温度Tavを出力する一方、両温度センサ21,22の検出出力に相当するフィードバック量PV1,PV2を減算器10で減算して傾斜温度Ttを出力するものである。
【0072】
第1のPID制御手段61は、平均温度・傾斜温度算出手段5からの平均温度Tavと目標平均温度の制御偏差に基づいて、平均温度が目標平均温度になるように操作信号(操作量)Havを配分手段7に出力し、第2のPID制御手段62は、平均温度・傾斜温度算出手段5からの傾斜温度Ttと目標傾斜温度との制御偏差に基づいて、傾斜温度が目標傾斜温度になるように操作信号(操作量)Htを配分手段7に出力する。
【0073】
配分手段7は、各PID制御手段61,62の操作信号(操作量)Hav,Htを以下のような配分比で各ヒータ11,12に配分する。
【0074】
すなわち、図5は、図3のシステムの制御系のブロック線図である。平均温度を制御する第1のPID制御手段61から与えられる操作量Havを、配分手段7で干渉をなくす、すなわち、非干渉化するための係数である非干渉化係数(配分比)k1,k2で第1,第2のヒータ11,12にそれぞれ配分するとともに、第2のPID制御手段62から与えられる操作量Htを、非干渉化係数(配分比)k3,k4で第1,第2のヒータ11,12にそれぞれ配分し、これによって、各ヒータ11,12に熱量H1,H2がそれぞれ与えられるとする。
【0075】
また、第1のヒータ11に与えられた熱量H1は、伝達係数(干渉係数)l1で第1の温度センサ21に伝わる一方、伝達係数(干渉係数)l2で第2の温度センサ22に伝わり、同様に、第2のヒータ12に与えられた熱量H2は、伝達係数(干渉係数)l3で第1の温度センサ21に伝わる一方、伝達係数(干渉係数)l4で第2の温度センサ22に伝わるとする。
【0076】
そして、第1の温度センサ21で検出された検出温度T1と第2の温度センサ22で検出された検出温度T2とから平均温度Tavおよび傾斜温度Ttが算出されて各PID制御手段61,62に入力されるという制御ループが構成されている。
【0077】
以上のことから平均温度Tavは、次のように示される。
【0078】
Figure 0003911953
ここで、平均温度Tavは、平均温度の操作量Havのみの関数で、傾斜温度の操作量Htの影響をなくすように、すなわち、非干渉化を図るために、Htの項を0とする。
【0079】
すなわち、(l1+l2)・k3+(l3+l4)・k4=0
したがって、k4=−{(l1+l2)/(l3+l4)}k3
となる。
【0080】
同様に、傾斜温度Ttは、次のように示される。
【0081】
Figure 0003911953
ここで、傾斜温度Ttは、傾斜温度の操作量Htのみの関数で、平均温度の操作量Havの影響をなくすように、すなわち、非干渉化を図るために、Havの項を0とする。
【0082】
すなわち、(l1−l2)k1+(l3−l4)k2=0
したがって、k2=−{(l1−l2)/(l3−l4)}k1
となる。
【0083】
以上のことから傾斜温度に影響を与えずに平均温度を制御し、また、平均温度に影響を与えずに傾斜温度を制御する、すなわち、平均温度と傾斜温度との干渉をなくした非干渉制御を行うためには、非干渉化係数(配分比)k1〜k4で配分すればよく、この非干渉化係数(配分比)k1〜k4を算出するためには、第1のヒータ11の熱量が第1,第2の温度センサ21,22に伝わる伝達係数(干渉係数)l1,l2および第2のヒータ12の熱量が第1,第2の温度センサ21,22に伝わる伝達係数(干渉係数)l3,l4を知る必要がある。
【0084】
なお、非干渉化係数(配分比)k1〜k4は、k1とk2、k3とk4との比率がそれぞれ分かれば、PID制御のゲインによって対応できるので、絶対値は必ずしも必要でない。
【0085】
伝達係数(干渉係数)l1〜l4は、次のようにして求めることができる。すなわち、ヒータを一つだけ変動させて他のヒータは、一定値に固定、例えば、オンのままあるいはオフのままとし、ヒータの変化量に対する各温度センサの変化量の比率を伝達係数とするのである。
【0086】
例えば、第2のヒータ22をオフのままの状態で、第1のヒータ11を、ある温度振幅で変動させたときに、第1,第2の温度センサ21,22の検出温度にどの程度の温度振幅の変動が生じるかによって伝達係数l1,l2を計測することができ、例えば、ヒータを温度振幅1で変動させたきに、温度センサの温度振幅が10であれば、伝達係数は、10(=10/1)となる。
【0087】
ここで、図3の配分手段7における非干渉化係数(配分比)を用いた配分についてさらに具体的に説明する。制御対象27の特性は、上述の図31に示されており、この特性から伝達係数は、l1=1,l2=0.9,l3=0.9,l4=1である。
【0088】
したがって、上述の非干渉化係数の式に代入すると、
Figure 0003911953
となる。
【0089】
そこで、仮に各ヒータに配分される熱量の合計が、Havと等しくなるように、すなわち、k1+k2=1となるように設計し、分かり易さのために、k3=1という条件を加える。
【0090】
これによって、
2=k1=1/2
また、k4=−k3=−1
となり、配分比(非干渉化係数)が決定される。
【0091】
つまり、図5に示されるように、平均温度の操作量Havは、1/2ずつ各ヒータ11,12に配分し、傾斜温度の操作量Htは、第1のヒータ11には、そのまま、第2のヒータ12には、符号を変えて配分すればよい。
【0092】
ここで、配分比(非干渉化係数)は、次のようにして求めることもできる。
【0093】
すなわち、上述のモード変換行列Gmと上述の伝達係数(干渉係数)の行列Pとから配分比(非干渉化係数)の行列(以下「前置補償行列」ともいう)Gcは、以下のように逆行列として求めることもできる。
【0094】
Gc=(Gm・P)-1
この実施の形態に適用すると、制御対象のある時間の特性である伝達係数(干渉係数)の行列Pを、
【数3】
Figure 0003911953
とすると、配分比(非干渉化係数)の行列である前置補償行列Gcは、
【数4】
Figure 0003911953
確かめとして、Gm・P・Gc=1となるかどうかを計算する。
【数5】
Figure 0003911953
なお、この実施の形態では、配分比(非干渉化係数)を、伝達係数を用いて算出したけれども、本発明の他の実施の形態として、伝達係数に代えて、周波数特性も表す伝達関数を用いて算出するようにしてもよい。
【0095】
図3のシステムでは、配分手段7は、図6に示されるように、平均温度の操作信号(操作量)Havは、各減衰器11,12でそれぞれ1/2に減衰して加算器13および減算器14にそれぞれ配分され、傾斜温度の操作信号(操作量)Htは、加算器13および減算器14にそれぞれ配分され、加算器13の出力H1が第1のヒータ11に、減算器14の出力H2が第2のヒータ12に与えられる。
【0096】
この配分手段7によれば、平均温度の操作量Havによって平均温度を変化させる場合には、各ヒータ11,12に操作量が等しく配分されるので、傾斜温度に影響を与えることなく、すなわち、干渉することなく、平均温度のみを変化させることができる。また、傾斜温度の操作量Htによって傾斜温度を変化させる場合には、一方のヒータ11には、その操作量が1倍で与えられる一方、他方のヒータ12には、−1倍で与えられるので、両ヒータに与える総熱量を変化させることなく、すなわち、平均温度に影響を与えることなく、傾斜温度のみを変化させることができる。
【0097】
図7は、図3のシステムにおいて、第1のPID制御手段61でオートチューニングを行った場合の平均温度・傾斜温度算出手段5からの平均温度Tav(破線)、第1のPID制御手段61からの平均温度の操作量Hav(実線)、平均温度・傾斜温度算出手段5からの傾斜温度Tt(二点鎖線)、第2のPID制御手段62からの傾斜温度の操作量Ht(一点鎖線)をスコープに表示した波形を示しており、平均温度の操作量Havがオンオフするリミットサイクルが生じており、平均温度Tavの周期と振幅とを使ってPID制御のパラメータを決定することができる。なお、平均温度Tav、傾斜温度Tt、平均温度の操作量Hav、傾斜温度の操作量Htが、上述の図29,図32の従来例のPV1、PV2、MV1、MV2にそれぞれ対応する。
【0098】
なお、第1のPID制御手段61のPID制御のパラメータが決定された後には、そのパラメータを設定し、次は、傾斜温度を制御する第2のPID制御手段62のオートチューニングを行ってPID制御のパラメータを決定する。
【0099】
このように、平均温度と傾斜温度とを制御量として制御することにより、干渉のない制御が可能となり、PID制御のパラメータを決定するためのオートチューニングが可能となり、最適な制御パラメータを設定して所望の制御特性を得ることができる。
【0100】
このようにしてPID制御のパラメータが設定された後の通常の制御では、平均温度が目標平均温度になるように、傾斜温度が目標傾斜温度になるように制御が行われる。
【0101】
次に、この実施の形態と従来例とのシミュレーションの結果を以下に説明する。このシミュレーションでは、以下のような制御対象のモデリングを行った。すなわち、熱干渉系の最も簡単な例として、図8に示すように2組のヒータ11,12と温度センサ21,22と、その間を熱伝導体50でつないだ熱処理装置を考える。制御目的は、2点の温度を任意の設定温度で均一化することである。図9に制御対象の電気的な等価回路を示す。R1,R2は、温度センサから周囲の空気への熱抵抗、C1,C2は、温度センサ近傍の熱容量である。
【0102】
制御対象の入力は、2つのヒータ熱量であり、ヒータ11の熱量p1の一部は熱伝導体50を伝わって、熱抵抗R3で温度センサ22の温度θ2に干渉し、ヒータ12の熱量p2の一部は、同様に熱抵抗R3で温度センサ21の温度θ1に干渉する。また、熱量p2の一部の熱エネルギーは、熱抵抗R4で熱処理装置が固定されている機械装置本体に熱伝導する。ただし、機械装置本体の熱容量は、非常に大きいので、周囲温度と一致すると近似した。
【0103】
制御対象の等価回路のパラメータは、R1=R2=10[℃/W]、R3=1[℃/W]、R4=0.2[℃/W]、C1=C2=10[J/℃]とした。外乱は、100Wのステップ状とし、従来例とこの実施の形態と同じ条件で印加した。
【0104】
下記の表1のパラメータによる従来のPID制御の応答波形を図10に、下記の表2のパラメータによるこの実施の形態の応答波形を、図11に示す。
【表1】
Figure 0003911953
【表2】
Figure 0003911953
図10,図11を比較すると、従来の制御方式で2°Cの温度差が発生していたものが、この実施の形態では、2つのセンサ間の温度差を0.8°Cまで改善していることが分かる。
【0105】
このような特性の差を生み出せる理由は、この実施の形態では、傾斜温度と平均温度で独立にPIDパラメータを設定できる点にある。この例では、表2に示すように比例ゲインKpに差をつけ平均温度よりも傾斜温度の収束を優先するように、傾斜温度制御の比例ゲインKpを平均温度制御の比例ゲインKpよりも大きな値に設定した。その結果、簡単なPID制御のパラメータの設定であるにも関わらず、高精度な温度均一化を期待できるものである。
【0106】
さらに、この実施の形態と従来例との目標値応答および外乱応答の比較結果を、図12〜図15に示す。なお、ここでは、CHR(Chien, Hrones and Reswick)の調整則の目標値応答オーバーシュート無しを平均温度制御に、外乱応答オーバーシュート20%を傾斜温度制御に使用した。
【0107】
図12および図13が、この実施の形態の目標値応答および外乱応答の波形であり、図14および図15が、従来例の目標値応答および外乱応答の波形を示している。
【0108】
図14の従来例の目標値応答では、整定時間も29秒と長く、オーバーシュートも認められたけれども、この実施の形態の目標値応答では、図12に示されるように整定時間も9秒と短く、オーバーシュートも認められなかった。
【0109】
また、図15の従来例の外乱応答では、整定時間も32秒と長く、オーバーシュートもやや認められたのに対して、この実施の形態の外乱応答では、図13に示されるように、整定時間も6秒と短く、オーバーシュートも認められなかった。
【0110】
すなわち、この実施の形態では、平均温度制御は、弱くて遅い制御を、傾斜温度制御は、強くて速い制御を行ったので、目標値応答および外乱応答のいずれの場合も、オーバーシュートがなく整定時間も短く満足できるものとなった。
【0111】
上述の例では、簡単にするために、n=2の場合について説明したけれども、ゾーンが3つの場合、すなわち、ヒータ、温度センサおよびPID制御手段が3つのn=3の場合にも同様に適用できるものである。
【0112】
すなわち、上述の図5に対応する図16のブロック線図に示されるように、第1〜第3のヒータ11〜13と、各ヒータ11〜13に個別的に対応する第1〜第3の温度センサ21〜23とが、第1〜第3の各ゾーンにそれぞれ配置されており、第1のゾーンと第2のゾーンとが隣接し、第2のゾーンと第3のゾーンとが隣接しているとし、簡単化のために、隣接するゾーン間でのみ干渉があるとし、第1のヒータ11から第2の温度センサ22への伝達係数(干渉係数)をl1、第2のヒータ12から第1,第3の温度センサ21,23への伝達係数(干渉係数)をl2,l3、第3のヒータ13から第2の温度センサ22への伝達係数(干渉係数)をl4とし、第1のヒータ11から第1の温度センサ21といった相対する伝達係数(干渉係数)は、1.0とする。
【0113】
また、干渉をなくすための非干渉化係数(配分比)について、平均温度を制御する第1のPID制御手段61の操作量Havを第2,第3のヒータ12,13に配分するための非干渉化係数(配分比)をk1,k2、第1の傾斜温度Tt1を制御する第2のPID制御手段62の操作量Ht1を第1,第3のヒータ11,13に配分するための非干渉化係数(配分比)をk3,k4、第2の傾斜温度Tt2を制御する第3のPID制御手段63の操作量Ht2を第1,第2のヒータ11,12に配分するための非干渉化係数(配分比)をk5,k6とし、第1のPID制御手段61から第1のヒータ11といった相対する非干渉化係数は1.0とする。なお、この例では、第1の傾斜温度Tt1は、第2,第3の温度センサ22,23の検出温度T2,T3の平均の検出温度と第1の温度センサ21の検出温度T1との差としており、また、第2の傾斜温度Tt2は、第2の温度センサ22の検出温度T2と第3の温度センサ23の検出温度T3との差としている。
【0114】
このとき、平均温度Tavは、次のように示される。
【0115】
Figure 0003911953
ここで、平均温度Tavは、平均温度の操作量Havのみの関数で、傾斜温度の操作量Ht1,Ht2の操作量の影響をなくすように、すなわち、非干渉化を図るために、Ht1,Ht2の項を0とする。
【0116】
すなわち、(1+l1)k3+(1+l2+l3)+(1+l4)k4=0
(1+l1)k5+(1+l2+l3)k6+(1+l4)=0
となる。
これを以下のように簡略化する。
【0117】
la+lb・k3+lc・k4=0 ……▲1▼
ld+le・k5+lf・k6=0 ……▲2▼
第1の傾斜温度Tt1についても同様にして、第1の傾斜温度の操作量Ht1のみの関数で、平均温度の操作量Havおよび第2の傾斜温度の操作量Ht2の影響を受けないという条件を適用して、以下のような同様の方程式が得られる。
【0118】
lg+lh・k1+li・k2=0 ……▲3▼
lj+lk・k5+ll・k6=0 ……▲4▼
また、第2の傾斜温度Tt2についても同様に、以下の方程式が得られる。
【0119】
lm+ln・k1+lo・k2=0 ……▲5▼
lp+lq・k3+lr・k4=0 ……▲6▼
伝達係数l1〜l4、したがって、la〜lrは、n=2の場合と同様にして求められるので、非干渉化係数k1〜k6を未知数とする上記▲1▼〜▲6▼の6つ方程式が得られることになり、これら方程式を解くことにより、配分手段で配分するための非干渉化係数(配分比)k1〜k6が求まることになる。
【0120】
例えば、行列式で求めるとすれば、以下のようになる。
【数6】
Figure 0003911953
【数7】
Figure 0003911953
以上のようにして、本発明は、n=3以上の制御系にも同様に適用することができるものである。
【0121】
なお、配分比(非干渉化係数)の行列である前置補償行列Gcは、上述のように、モード変換行列Gmと伝達係数(干渉係数)の行列Pとから求めることもでき、第1のPID制御手段61から第1のヒータ11といった相対する非干渉化係数も含めて求めることができる。ここで、制御対象のある時間の特性である伝達係数(干渉係数)の行列Pを、
【数8】
Figure 0003911953
仮に、l1=l2=l3=l4=0.9とすると、
【数9】
Figure 0003911953
前置補償行列Gcは、
【数10】
Figure 0003911953
確かめとして、Gm・P・Gc=1となるかどうかを計算する。
【数11】
Figure 0003911953
上述のように、配分比(非干渉化係数)の行例である前置補償行列Gcは、モード変換行列Gmと伝達係数(干渉係数)の行列Pとから以下のように逆行列として求めることができる。
【0122】
Gc=(Gm・P)-1
したがって、前置補償行列Gcを求めるには、上述のように伝達係数(干渉係数)の行列Pを知る必要がある。
【0123】
なお、上述のように伝達係数に代えて、周波数特性も表す伝達関数を用いてもよいので、以下においては、伝達関数(干渉係数)として、その行列Pの計測方法の具体例を説明する。
【0124】
図17は、本発明の一つの実施の形態に係るステップ応答法を利用した干渉係数の行列Pの計測方法を説明するための操作量MVおよびフィードバック量PVの変化を示す図である。
【0125】
例えば、図18に示される温度制御システム、すなわち、制御対象3を加熱する第0から第nの複数のヒータ10〜1nと、各ヒータ10〜1nに個別的に対応して制御対象3の温度を検出する第0から第nの複数の温度センサ20〜2nと、これら温度センサ20〜2nの検出出力に基づいて、各ヒータ10〜1nを図示しない電磁開閉器などを介して操作して制御対象3の温度を制御する本発明に係る温度調節器4とを備えているシステムにおいて、図17(a)〜(d)に示されるように各ヒータ10〜1nに順番にステップ状の操作量MV0,MV1…MVnを与え、図17(e)〜(h)に示される各温度センサ20〜2nからのフィードバック量である検出温度PV0,PV1…PVnに基づいて、一定時間tm後の上昇直前の温度に対する温度上昇値ΔPVを単位時間Lで割った値ΔPV/Lを、下記に示される干渉係数(伝達関数)の行列Pのa00〜annとして設定するものである。なお、本発明の他の実施の形態として、単位時間Lで割らなくてもよい。
【数12】
Figure 0003911953
例えば、第0のヒータ10に図17(a)に示されるステップ状の操作量MV0を与えたときの図17(e)に示される第0の温度センサ20の検出温度PV0に基づく上述の単位時間当たりの温度上昇値ΔPV/Lをa00とし、図17(f)に示される第1の温度センサ21の検出温度PV1に基づく単位時間当たりの温度上昇値ΔPV/Lをa10とし、図17(g)に示される第2の温度センサ22の検出温度PV2に基づく単位時間当たりの温度上昇値ΔPV/Lをa20とし、同様に、図17(h)に示される第nの温度センサ2nの検出温度PVnに基づく単位時間当たりの温度上昇値ΔPV/Lをan0とする。また、第1のヒータ11に図17(b)に示されるステップ状の操作量MV1を与えたときの図17(e)に示される第0の温度センサ20の検出温度PV0に基づく単位時間当たりの温度上昇値ΔPV/Lをa01とし、図17(f)に示される第1の温度センサ21の検出温度PV1に基づく単位時間当たりの温度上昇値ΔPV/Lをa11とし、図17(g)に示される第2の温度センサ22の検出温度PV2に基づく単位時間当たりの温度上昇値ΔPV/Lをa21とし、同様に、図17(h)に示される第nの温度センサ2nの検出温度PVnに基づく単位時間当たりの温度上昇値ΔPV/Lをan1とする。
【0126】
以下同様にして、第nのヒータに図17(d)に示されるステップ状の操作量MVnを与えたときの図17(e)に示される第0の温度センサ20の検出温度PV0に基づく単位時間当たりの温度上昇値ΔPV/Lをa0nとし、図17(f)に示される第1の温度センサ21の検出温度PV1に基づく単位時間当たりの温度上昇値ΔPV/Lをa1nとし、図17(g)に示される第2の温度センサ22の検出温度PV2に基づく単位時間当たりの温度上昇値ΔPV/Lをa2nとし、同様に、図17(h)に示される第nの温度センサ2nの検出温度PVnに基づく単位時間当たりの温度上昇値ΔPV/Lをannとするものである。なお、図17においては、tcは、操作量MVの変化に対して検出温度PVの変化が安定するまでの一定時間である。
【0127】
このように、あるヒータにステップ状の操作量を与えたときに、各温度センサの検出温度がどれだけの影響を受けるかを順次に計測して干渉係数(伝達関数)の行列Pを求めるものであり、この干渉係数(伝達関数)の行列Pの計測は、温度制御システムの立ち上げ時に自動的に行われ、この干渉係数(伝達関数)の行列Pおよび予め設定されているモード変換行列Gmから上述のように配分比(非干渉化係数)の行例である前置補償行列Gcが求められ、この前置補償行列Gcに基づいて、操作量が配分されて上述した干渉のない制御が行われることになる。 さらに、この実施の形態では、干渉係数(伝達関数)の行列Pを求める際には、温度調節器4を構成する各PID制御手段60〜6nは、ステップ状の操作量を順番に出力するだけであって、上述の図32の従来例のように、PID制御は行っていないので、干渉係数の行列Pを求めると同時に、各PID制御手段60〜6nのPID制御のパラメータも併せて求めることができる。
【0128】
この実施の形態では、ステップ状の操作量MVを与えるので、温度が上昇することになるので、かかる温度の上昇をなくして、例えば室温で干渉係数を計測できるよう図19(a)〜(d)に示されるように、一定の幅を有するパルス状の操作量MV0〜MVnを順番に与えるようにしてもよい。その他の構成は、図17の実施の形態と同様である。
【0129】
なお、干渉の程度が弱いところ同士では、同時に計測を行っても構わない。例えば、第0のヒータ10と第nのヒータ1nとが、遠く離れていてほとんど干渉しない場合には、第0のヒータ10と第nのヒータ1nとに同時に操作量MV0,MVnを与え、そのときのMV0に対するPVnは0、MVnに対するPV0は0とするものであり、このように干渉の弱いところでは、同時に計測を行うことによって計測時間を短縮できる。
【0130】
図20は、本発明の他の実施の形態に係るリミットサイクル法を利用して干渉係数(伝達関数)の行列Pの計測方法を説明するための上述の図17に対応する図である。
【0131】
一旦、例えば室温の状態に制御しておき、各ヒータ10〜1nに与える操作量MV0〜MVnを順番にプラス側とマイナス側とに変動させてそのときの検出温度PV0〜PVnの最大振幅ΔPVを単位時間で割った値ΔPV/Lを計測し、上述の干渉係数(伝達関数)の行列Pのa00〜an0とするものである。その他の構成は、上述のステップ応答法と同様である。
【0132】
このリミットサイクル法を利用した場合には、操作量MVをプラス側とマイナス側とに変化させるので、例えば、実動作温度に維持した状態で干渉係数(伝達関数)の行列Pを計測できることになり、より高い精度で干渉係数を求めることができる。
【0133】
上述の各実施の形態では、各PID制御手段は、平均温度が目標平均温度になるように、あるいは、傾斜温度が目標傾斜温度になるようにそれぞれ制御するものであり、目標平均温度および目標傾斜温度は、ユーザが設定するのであるが、従来では、各ch毎に目標温度を設定していたユーザにとっては、目標平均温度や目標傾斜温度の設定は理解しにくいものである。
【0134】
そこで、図21に示されるように、本発明の具体的な実施例1では、各ch毎の目標温度SPから目標平均温度および目標傾斜温度を演算するモード変換器5’を設けている。なお、この図21において、上述の図3に対応する部分には、同一の参照符号を付している。このモード変換器5’は、制御対象27からのフィードバック量である各chの温度センサの検出温度から平均温度と傾斜温度とを算出するモード変換器5と同じ構成である。
【0135】
このようにモード変換器5’を追加することによって、ユーザは、平均温度や傾斜温度を考慮することなく、従来と同様に各ch毎に目標温度SPを設定すればよい。
【0136】
さらに、本発明の具体的な実施例2として、図22に示されるように、制御対象27からのフィードバック量である各chの温度センサの検出温度と目標温度SPとの温度偏差を求め、この各ch毎の温度偏差から制御偏差である平均温度偏差および傾斜温度偏差を演算するモード変換器5’’を設けてもよい。この構成によれば、ユーザは、平均温度や傾斜温度を考慮することなく、従来と同様に各chの目標温度を設定できる一方、モード変換器5’’を一つにすることができ、メモリ容量の削減と処理の簡素化を図ることができる。
【0137】
すなわち、上述の実施例1では、モード変換器5は、複数の温度センサからの検出温度を、平均温度および傾斜温度に変換する一方、モード変換器5’は、各chの目標温度を、目標平均温度および目標傾斜温度に変換するものであったのに対して、この実施の形態のモード変換器5’’は、複数の温度センサからの検出温度と目標温度との温度偏差を、検出された平均温度と目標平均温度との偏差である平均温度偏差に変換するとともに、検出された傾斜温度と目標傾斜温度との偏差である傾斜温度偏差に変換するものである。
【0138】
つまり、上述の実施例1では、検出温度を、平均温度および傾斜温度に変換した後に制御偏差を求めるのに対して、この実施例2では、検出温度と目標温度との温度偏差を求め、その温度偏差を、制御偏差である平均温度偏差および傾斜温度偏差に変換するものである。
【0139】
図23は、本発明の具体的な実施例3の構成図であり、上述の各実施に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0140】
一般に温度が上昇すると、ヒータの抵抗値が大きくなって流れる電流が低下して制御ループのゲインが低下し、また、時定数も低下することになり、そのままでは、ハンチングやオーバーシュートを生じることになる。そこで、従来では、制御する温度に応じて、制御パラメータを変更設定しているが、かかる変更設定操作は、面倒である。
【0141】
そこで、この実施例3では、制御対象27からのフィードバック量PVである複数の温度センサの検出温度に基づく平均温度に応じて各PID制御手段61〜6nのPIDパラメータを補正するものである。
【0142】
図24は、図23のPID制御手段61の内部のブロック線図である。
【0143】
この実施例3では、モード変換器5からの平均温度に基づいて、比例要素80の比例ゲインKpを補正手段81で補正して温度変化によるヒータの抵抗値の変化に起因するゲインの変化を補償する一方、積分要素82の積分時間Tiおよび微分要素83の微分時間Tdを補正手段84で補正して温度変化による時定数の変化を補償するようにしている。
【0144】
各補正手段81,84による補正についてさらに詳細に説明する。先ず、ヒータは、図25の実線Aで示されるように温度によってその抵抗値が変化するために、制御ループのゲインが変化するのであるが、この実線Aで示される実際の変化に対して、例えば、破線Bで示される下記の近似直線式を考える。
【0145】
R/R0=ηp(T−T0)+1.0
ここで、R0は、基準温度T0、例えば室温における抵抗値、ηpは温度係数である。
【0146】
ヒータに印加する電圧Vは、一定であるので、ヒータに流れる電流は、ヒータの抵抗値の変化に応じて変化することになり、同じパルス幅で駆動したとしても電力Pは、温度によって次のように変化することになる。
【0147】
Figure 0003911953
つまり、制御ループのゲインGは、温度によって下記のように変化する。
【0148】
Figure 0003911953
なお、P0,G0は、基準温度T0における電力およびゲインである。
【0149】
前記式から明らかなように温度が上昇してヒータの抵抗値Rが増加すると、ゲインが低下することになる。
【0150】
そこで、この実施例3では、平均温度と予め設定される前記温度係数ηpとに基づいて、下記の一次近似式に従って比例ゲインKpの補正値を算出して比例要素80の比例ゲインを補正手段81で補正するのである。
【0151】
Kp={ηp(PV−PV0)+1}Kp0
ここで、PV0は室温などの基準温度、Kp0は基準温度における比例ゲインである。
【0152】
また、時定数τは、図26の実線で示されるように、温度によって変化するのであるが、この実線Aで示される実際の変化に対して、例えば、破線Bで示される下記の近似直線式を考えることができる。
【0153】
τ/τ0=−kτ(T−T0)+1.0
ここで、τ0は、基準温度T0、例えば室温における時定数、−kτは近似式の傾きである。
【0154】
このように温度変化に対する時定数τの変化を直線近似するのと同様に、時定数τに対応するPIDパラメータの積分時間Tiおよび微分時間Tdも下記のように直線近似することができる。
【0155】
Ti={ηi(PV−PV0)+1}Ti0
Td={ηd(PV−PV0)+1}Td0
ここで、Ti0,Td0は基準温度T0における積分時間および微分時間であり、ηi,ηdは、温度係数である。
【0156】
この温度係数ηi,ηdは、例えば、予めステップ応答法によって無駄時間を計測することによって算出することができる。
【0157】
そこで、この実施例3では、図24に示されるように、温度センサからの検出温度に基づく平均温度と予め設定される前記温度係数ηi,ηdとに基づいて、補正手段によって上記一次近似式に従って積分時間Tiおよび微分時間Tdの補正値を算出して積分要素82および微分要素83の積分時間Tiおよび微分時間Tdを補正するのである。
【0158】
このように検出温度に基づく平均温度に応じて比例ゲインKp、積分時間Tiおよび微分時間Tdを補正してPID制御を行うので、ゲインの温度による変化が補償されるとともに、時定数τの温度による変化が補償されることになり、従来例のように、制御する温度に応じてPIDパラメータを変更設定しなくても、ハンチングやオーバーシュートの発生を抑制できることになる。
【0159】
この実施例3では、検出温度に基づく平均温度を用いて比例ゲインKp、積分時間Tiおよび微分時間Tdを補正したけれども、他の例として、目標平均温度を用いて補正してもよい。
【0160】
目標平均温度は、過渡的な状態を除いてほとんど検出温度に基づく平均温度と等しいので、時々刻々変化する平均温度を用いる場合に比べて、固定値である目標平均温度を用いることで処理の負担を大幅に低減することができる。
【0161】
また、この実施例3では、比例ゲインKp、積分時間Tiおよび微分時間Tdのすべてを補正したけれども、他の例として、比例ゲインKp、積分時間Tiおよび微分時間Tdの少なくとも一つを補正してもよい。
【0162】
図24では、平均温度を制御するPID制御手段61について説明したが、傾斜温度を制御する各PID制御手段62〜6nも、同様にモード変換器5からの平均温度に基づいて、比例ゲインKp、積分時間Tiおよび微分時間Tdを補正するものである。
【0163】
上述の実施例3では、一次の直線近似を行ったけれども、本発明は、二次以上の近似式を用いてもよい。例えば、時定数τについての二次の近似式の例を示す。
【0164】
τ/τ0=ka(T−T02+kb(T−T0)+kc
3つのパラメータ(ka,kb,kc)は、次のようにして求める。近似する元の制御対象の特性曲線のデータ3点の温度の値(T1,T2,T3)に対するτ/τ0を、(τ1/τ0,τ2/τ0,τ3/τ0)とすると、以下の3つの方程式ができる。
【0165】
τ1/τ0=ka(T1−T02+kb(T1−T0)+kc
τ2/τ0=ka(T2−T02+kb(T2−T0)+kc
τ3/τ0=ka(T3−T02+kb(T3−T0)+kc
この3つの式から3つの変数は、数学的に求まるので、3つのパラメータ(ka,kb,kc)は、求まる。
【0166】
n次の近似式も同様にn+1点の温度に対する時定数の変化τ/τ0データで求めることができる。
【0167】
このように複数の次数で求めると、制御対象の変化曲線に一致した近似式が作れるので、より精度の高い補正が実現できるという効果が有る。
【0168】
本発明の他の実施の形態として、平均温度に代えて、例えば、中央のゾーンの温度の温度などを代表温度とし、代表温度と傾斜温度とを制御量として制御を行ってもよい。
【0169】
上述の実施の形態では、平均温度は、全体の平均温度一つだけを用いたけれども、本発明の他の実施の形態として、例えば、複数に区分した各グループの各平均温度、すなわち、複数の平均温度を用いるようにしてもよい。
【0170】
上述の実施の形態では、PID制御に適用して説明したけれども、本発明は、PID制御に限らず、オンオフ制御、比例制御、積分制御などの他の制御方式にも適用できるものである。
【0171】
また、本発明の熱処理装置は、熱酸化装置に限らず、拡散炉やCVD装置、例えば、図33に示されるように、枚葉式のCVD装置における熱処理盤の温度制御にも適用できるものである。なお、図33において、ウェーハ60が載置される熱処理盤61は、同心状に外円部62、中間部63、中心部64に3分割されており、各部に個別的に対応するヒータ65〜67が設けられて各ゾーン毎に温度制御するものである。また、本発明の熱処理装置は、射出成形機のシリンダ部の温度制御あるいは包装機のヒータ台の温度制御などにも適用できるものである。
【0172】
上述の実施の形態では、ヒータなどの加熱手段を用いた温度制御に適用した説明したけれとも、ペルチェ素子や冷却器などを用いた温度制御に適用してもよいのは勿論であり、さらに、加熱手段と冷却手段とを併用する温度制御に適用してもよい。
【0173】
また、本発明は、温度制御に限らず、圧力、流量、速度あるいは液位などの他の物理状態の制御に適用することもできる。
【0174】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、干渉のある制御対象の制御において、その干渉を低減することが可能となるとともに、最適な制御パラメータの設定も可能となる。
【0175】
しかも、配分手段の配分比を決定するための伝達係数(伝達関数)を、各状態制御手段の操作信号を変化させて各検出手段の情報の変化を計測することで容易に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一つの実施の形態に係る温度制御システムの概略構成図である。
【図2】 図1の温度調節器のブロック図である。
【図3】 温度センサ、ヒータおよびPID制御手段が2つの場合の構成図である。
【図4】 図3の平均温度・傾斜温度算出手段5のブロック図である。
【図5】 図3の制御系のブロック線図である。
【図6】 図3の配分手段のブロック図である。
【図7】 図3のシステムのオートチューニングの際の波形図である。
【図8】 制御対象のモデルを示す図である。
【図9】 制御対象の等価回路図である。
【図10】 従来例の応答波形を示す図である。
【図11】 実施の形態の応答波形を示す図である。
【図12】 実施の形態の目標値応答波形を示す図である。
【図13】 実施の形態の外乱応答波形を示す図である。
【図14】 従来例の目標値応答波形を示す図である。
【図15】 従来例の外乱応答波形を示す図である。
【図16】 ゾーンが3つの場合の制御系のブロック線図である。
【図17】 ステップ応答法を利用した干渉係数の行列Pの計測方法を説明するための図である。
【図18】 図17に対応する温度制御システムの概略構成図である。
【図19】 本発明の他の実施形態の図17に対応する図である。
【図20】 リミットサイクル法を利用した干渉係数の行列Pの計測方法を説明するための図である。
【図21】 本発明の実施例1のブロック図である。
【図22】 本発明の実施例2のブロック図である。
【図23】 本発明の実施例3のブロック図である。
【図24】 図23のPID制御手段のブロック線図である。
【図25】 温度とヒータ抵抗値との関係を示す特性図である。
【図26】 温度と時定数との関係を示す特性図である。
【図27】 熱酸化装置の構成を示す図である。
【図28】 干渉のない二つの制御対象を制御するシステムの構成図である。
【図29】 図28のシステムのオートチューニングの際の波形図である。
【図30】 干渉のある制御対象を制御するシステムの構成図である。
【図31】 図30の制御対象の構成を示す図である。
【図32】 図30のシステムのオートチューニングの際の波形図である。
【図33】 他の熱処理装置を示す図である。
【符号の説明】
10〜1n ヒータ
20〜2n 温度センサ
3 制御対象
4 温度調節器
5 平均温度・傾斜温度算出手段
61〜6n PID制御手段
7 配分手段
15 ヒータプレート
18 熱酸化装置

Claims (6)

  1. 制御対象の物理状態をそれぞれ検出する複数の検出手段からの情報と前記複数の検出手段に個別的に対応する複数の目標情報との偏差を、前記物理状態の勾配を示す情報の偏差に変換するとともに、物理状態の代表状態を示す情報の偏差に変換する変換手段と、
    前記変換手段からの前記勾配を示す情報の偏差または前記代表状態を示す情報の偏差を制御偏差として操作信号をそれぞれ出力する複数の状態制御手段と、
    前記各状態制御手段からの操作信号を、複数の操作手段に、各状態制御手段による制御が、他の状態制御手段による制御に与える影響をなくす又は小さくするように配分する配分手段と、
    を備えることを特徴とする制御装置。
  2. 制御対象の温度をそれぞれ検出する複数の温度検出手段から得られる検出温度を、複数の検出温度に基づく傾斜温度に変換するとともに、代表的な代表温度に変換する変換手段と、
    前記変換手段からの傾斜温度または代表温度を制御量として操作信号をそれぞれ出力する複数の温度制御手段と、
    前記各温度制御手段からの操作信号を、前記制御対象を加熱(または冷却)する複数の加熱(または冷却)手段に、各温度制御手段による制御が、他の温度制御手段による制御に与える影響をなくす又は小さくするように配分する配分手段と
    複数の温度検出手段に個別的に対応する目標温度を、目標代表温度および目標傾斜温度に変換する目標温度変換手段とを備え、
    前記各温度制御手段の操作信号を変化させて前記各温度検出手段の検出温度の変化を計測して前記配分手段による配分比を決定するための伝達係数(伝達関数)を予め求めることを特徴とする温度調節器。
  3. 制御対象の温度をそれぞれ検出する複数の温度検出手段から得られる検出温度と前記複数の温度検出手段に個別的に対応する複数の目標温度との温度偏差を、傾斜温度の偏差に変換するとともに、代表的な代表温度の偏差に変換する変換手段と、
    前記変換手段からの傾斜温度の偏差または代表温度の偏差を制御偏差として操作信号をそれぞれ出力する複数の温度制御手段と、
    前記各温度制御手段からの操作信号を、前記制御対象を加熱(または冷却)する複数の加熱(または冷却)手段に、各温度制御手段による制御が、他の温度制御手段による制御に与える影響をなくす又は小さくするように配分する配分手段と、
    を備えることを特徴とする温度調節器。
  4. 制御対象の温度をそれぞれ検出する複数の温度検出手段から得られる検出温度を、複数の検出温度に基づく傾斜温度に変換するとともに、代表的な代表温度に変換する変換手段と、
    前記変換手段からの傾斜温度または代表温度を制御量として操作信号をそれぞれ出力する複数の温度制御手段と、
    前記各温度制御手段からの操作信号を、前記制御対象を加熱(または冷却)する複数の加熱(または冷却)手段に、各温度制御手段による制御が、他の温度制御手段による制御に与える影響をなくす又は小さくするように配分する配分手段と
    前記代表温度または前記目標代表温度に基づいて、予め設定された定数を用いた算出式に従って補正値を算出して前記温度制御手段の制御パラメータを補正する補正手段とを備え、
    前記各温度制御手段の操作信号を変化させて前記各温度検出手段の検出温度の変化を計測して前記配分手段による配分比を決定するための伝達係数(伝達関数)を予め求めることを特徴とする温度調節器。
  5. 前記算出式が、一次の近似式である請求項記載の温度調節器。
  6. 前記算出式が、二次以上の近似式である請求項記載の温度調節器。
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