JP3911536B2 - 亜鉛精鉱の浸出法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は亜鉛精鉱を大気圧下で浸出する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
大気圧下で亜鉛の硫化鉱を直接浸出する従来の技術としては、特許公報第2856933号に開示された方法がある。この湿式亜鉛製錬法は、図2に示すように、亜鉛精鉱を酸化ばい焼し電解工程からの戻り酸で中性浸出して発生する中性浸出残滓をさらに戻り酸で溶解し、鉄沈殿物を硫酸第二鉄溶液にした後、亜鉛精鉱を第二鉄イオンで酸化浸出する方法である。この硫酸第二鉄溶液は、亜鉛精鉱が浸出されると硫酸第一鉄溶液となり、硫酸第一鉄は酸素ガスを吹き込むことによって酸化され、得られた硫酸第一、第二鉄の混合溶液は次の工程である鉄沈殿工程に送られる。ここで再び亜鉛精鉱を添加し硫酸第二鉄溶液を硫酸第一鉄溶液としてから鉄の沈殿除去工程を行う。
【0003】
硫酸第二鉄溶液で亜鉛精鉱を可溶性硫酸塩とする反応は、1)式で表わされる。また還元された硫酸第一鉄を酸素ガスで酸化する反応は、2)式で表わされる。この1)、2)式の反応時の硫酸第二鉄イオン濃度は10g/L以下にしかならない。
1)Fe2(SO4)3+ZnS=ZnSO4+2FeSO4+S
2)2FeSO4+H2SO4+0.5O2=Fe2(SO4)3+H2O
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
特許公報第2856933号に開示された方法は、酸化ばい焼した酸化鉱中に含まれる鉄量に相当する亜鉛分を亜鉛精鉱から可溶性亜鉛として回収でき亜鉛生産量を増加させることができる方法であり、現有設備のばい焼炉および硫酸製造設備の能力を増強しなくても電気亜鉛の生産量を増加できる優れた方法であるが、この方法には、上記反応式で示した理由から第二鉄イオンの濃度が低く、従ってその反応に見合う亜鉛精鉱の添加量が制約され、最大限に亜鉛生産量を増加できないという課題がある。本発明の目的は、上述の課題を根本的に解決し、亜鉛精鉱の添加量を大幅に増加し、従来よりはるかに多量の亜鉛精鉱を浸出することを可能にし、酸化ばい焼炉および硫酸製造設備を増強することなく亜鉛の製造量を拡大し得る方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明者は鋭意検討を重ねた結果、本発明の方法を開発することができた。すなわち、特許公報第2856933号に開示された方法ではどうしても亜鉛精鉱浸出に必要な第二鉄イオンの量が制限されるので、同様に亜鉛精鉱添加量が制限される。そこで本発明者等は亜鉛精鉱浸出工程においてどうしたら無理なく第二鉄量を増大することができるかを検討した結果、第1に、亜鉛精鉱から湿式製錬法により電気亜鉛を製造する方法において、亜鉛精鉱を酸化ばい焼して得られた酸化亜鉛を主成分とする焼鉱を電解採取工程で発生する遊離硫酸を含む電解尾液(戻り酸)で浸出して硫酸亜鉛溶液を得る中性浸出工程と、該中性浸出工程で溶解されずに残るジンクフェライトを含む中性浸出残滓と鉄酸化工程で生成される鉄殿物の少なくとも一部とを電解尾液でリパルプし、これに亜鉛精鉱を添加し、大気圧下、90℃以上沸点以下の温度で亜鉛精鉱中の硫化亜鉛を浸出する亜鉛精鉱浸出工程と、該亜鉛精鉱浸出工程で得られる浸出液に酸化剤を添加して浸出液中の第一鉄イオンを第二鉄イオンに酸化し、さらに中和剤として焼鉱を添加して浸出液中の鉄分を鉄殿物として回収して該鉄殿物の少なくとも一部を前記亜鉛精鉱浸出工程へ戻し、残りの鉄殿物を次の残渣処理工程へ供給し、中和後液を前記中性浸出工程へ繰り返す鉄酸化工程とを含む亜鉛精鉱の浸出方法を見出した。
【0006】
また、本発明は第2に、鉄酸化工程から亜鉛精鉱浸出工程に戻す前記鉄殿物の量を、中性浸出工程から亜鉛精鉱浸出工程に供給される残滓のジンクフェライト中の第二鉄と鉄酸化工程から亜鉛精鉱浸出工程に戻される鉄殿物中の第二鉄との合計が亜鉛精鉱浸出工程でのパルプ中鉄濃度において30〜60g/Lとなるように設定することが望ましい。第3に、前記鉄酸化工程において、前記亜鉛精鉱浸出工程で得られる浸出液に酸化剤を加える方法が酸素ガス、または空気の少なくとも一種を吹き込むことである第1または第2の方法を提供する。第4に前記鉄酸化工程における鉄殿物の生成が、pH3〜4および温度80℃以上の条件下で行われることを特徴とする第1〜3のいずれかの方法を提供する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の方法を図1に従って説明する。亜鉛精鉱を従来と同様に酸化ばい焼して酸化亜鉛(焼鉱)とし、これを電解採取工程で発生する遊離硫酸(電解尾液)で中性浸出して硫酸亜鉛溶液を作り、硫酸亜鉛溶液は浄液工程を経て電解採取工程に供給される。
【0008】
中性浸出工程で溶けきれなかったジンクフェライトを含む残滓は、後述する鉄酸化工程で生成した鉄殿物の一部と共に亜鉛精鉱浸出工程に送られ、ここで脱鉄工程からの戻り酸(脱鉄後液)および電解採取工程からの戻り酸(電解尾液)によってリパルプされ、亜鉛精鉱を添加して大気圧下で亜鉛精鉱中の硫化亜鉛を浸出する。添加される亜鉛精鉱の量は、化学量論的量の約1〜1.2倍である。浸出温度は90℃〜沸点、浸出時間は2〜3時間である。この時ジンクフェライト中の鉄と鉄殿物中の鉄は溶解して3価の鉄イオンとなり、3価の鉄イオンはさらに亜鉛精鉱によって還元されて2価の鉄イオンとなる。亜鉛精鉱中の硫化亜鉛の亜鉛分は硫酸亜鉛溶液として溶出し、硫化亜鉛の硫黄分は単体の硫黄となる。この工程で亜鉛精鉱、中性浸出残滓および鉄殿物中の不溶解物である金、銀、銅、硫酸鉛、単体硫黄、未浸出硫化物などは固形物として回収され、浮遊選鉱工程等に送られ、さらに金、銀、硫酸鉛、酸化珪素、硫酸バリウム、単体硫黄および硫化物の回収が行われる。亜鉛精鉱浸出工程の浸出液には多量の亜鉛および鉄が含まれているので、鉄分と亜鉛分を分離するため、鉄酸化工程に送られる。
【0009】
鉄酸化工程では、浸出液に酸素ガスを吹き込み、酸化亜鉛(焼鉱)を中和剤として添加し、pH3〜4、温度80℃以上で鉄イオンを沈殿させ、鉄を鉄殿物として回収する。pHが3未満では酸化速度が遅くなり、逆に4より大きい場合は酸化亜鉛の浸出が進まない。また温度が80℃未満では、酸化速度および酸化亜鉛の浸出速度が遅くなる。この鉄殿物中には焼鉱から持ち込まれた金、銀、鉛等の不溶解物も含まれ、これらも鉄と一緒に沈殿回収される。鉄を加水分解させるために添加した酸化亜鉛によって亜鉛濃度が更に高くなった液は中性浸出工程に送られる。鉄殿物の一部は、前述のように亜鉛精鉱浸出工程へ戻される。
【0010】
亜鉛精鉱浸出工程へ戻される鉄殿物の量は、中性浸出工程から発生するジンクフェライト中の鉄と鉄殿物中の鉄との合計が亜鉛精鉱浸出工程でのパルプ中鉄濃度において30〜60g/Lになるように設定される。鉄濃度が30g/L未満では亜鉛の浸出率が不十分であり、60g/Lを超えてもそれ以上の効果が期待できないからである。
【0011】
残りの鉄殿物は例えばSO2浸出、HAL(Hot Acid Leaching)工程に送られ、ヘマタイト、ジャロサイト、ゲーサイトプロセスにて処理することも可能である。
【0012】
本発明の方法によれば、亜鉛精鉱浸出工程では、硫化亜鉛が1)式の反応により硫酸第二鉄によって可溶性塩として溶解される。
1)Fe2(SO4)3+ZnS=ZnSO4+2FeSO4+S
この時、還元されて生じた硫酸第一鉄は、次の鉄酸化工程で酸素ガス等の酸化剤および焼鉱と反応し、2)式に従って沈殿を生成する。
2)2FeSO4+2ZnO+0.5O2+H2O=2FeOOH+2ZnSO4
沈殿した鉄殿物の一部は亜鉛精鉱浸出工程へ繰り返され、3)式の反応で硫酸に溶解される。
3)2FeOOH+3H2SO4=Fe2(SO4) 3+4H2O
生成した硫酸第二鉄は1)式の反応を繰り返し、亜鉛精鉱をさらに可溶性塩とすることができる。
以下、実施例について本発明をさらに詳しく説明する。
【0013】
【実施例1】
温度90℃〜沸点、鉄濃度30g/L以上の硫酸第二鉄溶液中で、亜鉛精鉱を大気圧下で2〜3時間浸出すると、95%以上の亜鉛浸出率が得られる。
反応温度95℃、初期第二鉄イオン濃度60g/L、攪拌速度1000rpmの条件下で行った浸出試験の結果を表1に示す。
【0014】
【表1】
Figure 0003911536
【0015】
【比較例1】
初期第二鉄イオン濃度を6g/Lとした以外は実施例1と同じ条件で行った浸出試験の結果を表2に示す。
【0016】
【表2】
Figure 0003911536
亜鉛精鉱は、鉄イオン量に依存し硫酸塩として溶ける。亜鉛精鉱を多量に且つ、短時間で浸出させるためには、出来るだけ濃度の濃い硫酸第二鉄溶液を必要とする。本発明の方法によれば、この鉄イオンは、繰り返し使用することで補われる。
【0017】
【実施例2】
亜鉛精鉱で還元された鉄イオンは、硫酸第一鉄溶液となる。この溶液を温度80℃に加熱して酸素ガスを吹き込みながら焼鉱(酸化亜鉛)を添加してpHを3〜4にコントロールすることで鉄イオンは、鉄殿物として沈殿回収される。反応温度80℃、初期鉄濃度60g/Lの条件下で硫酸第一鉄溶液に酸素ガスを吹き込みながら焼鉱を添加し、pH3〜4に制御しながら鉄殿物を生成する実験を行った。その結果を表3に示す。
【0018】
【表3】
Figure 0003911536
【0019】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、強制的に鉄イオンを繰り返すことにより従来法に比べて亜鉛精鉱浸出工程の鉄(III)イオン濃度を高くすることができるので、亜鉛精鉱の浸出速度を速めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を示すフローシートである。
【図2】従来の方法を示すフローシートである。

Claims (4)

  1. 亜鉛精鉱から湿式製錬法により電気亜鉛を製造する方法において、亜鉛精鉱の一部を酸化ばい焼して得られた酸化亜鉛を主成分とする焼鉱を電解採取工程で発生する遊離硫酸を含む電解尾液で浸出して硫酸亜鉛溶液を得る中性浸出工程と、該中性浸出工程で浸出されずに残るジンクフェライトを含む中性浸出残滓と鉄酸化工程で生成される鉄殿物の少なくとも一部とを電解尾液でリパルプし、これに亜鉛精鉱を添加し、大気圧下、90℃以上沸点以下の温度で亜鉛精鉱中の硫化亜鉛を浸出する亜鉛精鉱浸出工程と、該亜鉛精鉱浸出工程で得られる浸出液に酸化剤を添加して浸出液中の第一鉄イオンを第二鉄イオンに酸化し、さらに中和剤として焼鉱を添加して浸出液中の鉄分を鉄殿物として回収して該鉄殿物の少なくとも一部を前記亜鉛精鉱浸出工程へ戻し、残りの鉄殿物を次の残渣処理工程へ供給し、中和後液を前記中性浸出工程へ繰り返す鉄酸化工程とを含む亜鉛精鉱の浸出方法。
  2. 鉄酸化工程から亜鉛精鉱浸出工程に戻す前記鉄殿物の量を、中性浸出工程から亜鉛精鉱浸出工程に供給される残滓のジンクフェライト中の第二鉄と鉄酸化工程から亜鉛精鉱浸出工程に戻される鉄殿物中の第二鉄との合計が亜鉛精鉱浸出工程でのパルプ中鉄濃度において30〜60g/Lとなるようにしたことを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 前記鉄酸化工程において、前記亜鉛精鉱浸出工程で得られる浸出液に酸化剤を加える方法が酸素ガス、または空気の少なくとも一種を吹き込むことであることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
  4. 前記鉄酸化工程における鉄殿物の生成が、pH3〜4および温度80℃以上の条件下で行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
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