JP3909352B2 - カム駒の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえば内燃機関の排気バルブや吸気バルブの開閉制御などに使用される金属製のカム駒で、特にカム軸用のシャフト挿通孔から一方向外向きに延在部をもった円弧カム形状に打抜き成形されるカム駒の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、たとえば自動二輪車の内燃機関で使用されるカム駒は、一般に、たとえば図5に示す如く、板厚が比較的厚く、シャフト挿通孔1から一方向外向きに延在部2をもった輪郭が円弧カム形状をなし、シャフト挿通孔1にカム軸(図示省略)を圧入して回動自在に支持されるようになっている。
【0003】
このような厚肉なカム駒を製造する場合は、通常、所謂ファインブランキング(精密打抜き)法が使用され、厚板状の金属製被加工材料をパンチとその外周の板押えで加圧する一方、反対側からもダイとその内周の逆押えで受けて加圧することにより、シャフト挿通孔1が設けられた円弧カム形状に打抜いてカム駒を加工していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来、カム駒が厚肉で、シャフト挿通孔1から一方向外向きに延在部2をもった形状の特殊性から、加圧したときに延出部2において、図5中矢示する先端位置2a方向へ肉の片寄りを生じ、その片寄り状態のまません断されると、せん断切口面の中で、特に延在部2の先端位置2a近くのカム面部位イと、シャフト挿通孔1の孔縁位置2b近くの内面部位ロに、形状不良(平面度・平行度)や破断面が発生してしまっていた。その結果、シャフト挿通孔1では、カム軸圧入のための内径精度が低下し、カム面部位では、バルブなど従節との接触位置がずれて作用精度が低下するという課題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上述のような従来の課題を解決し、カム駒の打抜き加工時に打抜き切口での破断面の発生を抑止し、シャフト挿通孔の内径精度の低下を防止するとともに、従節との接触位置のずれをなくして作用精度を向上させることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明は、たとえば以下に図面を用いて説明する実施の形態に示すとおり、厚板状の金属製被加工材料Bをパンチ10とその外周の板押え11で加圧する一方、反対側からダイ12とその内 周の逆押え13で受けて加圧することにより、カム軸20のシャフト挿通孔17を設けるとともに、そのシャフト挿通孔17から一方向外向きに延在部16をもった円弧カム形状にせん断してカム駒15を製造するカム駒製造方法であって、前記パンチ10と前記逆押え13とで前記被加工材料Bを加圧するとき、前記延在部16の一方板面に凸部16aを形成し、その真裏の他方板面に凹部16bを形成することを特徴とする。
【0007】
請求項に記載の発明は、請求項に記載のカム駒製造方法において、たとえば以下に図面を用いて説明する実施の形態に示すとおり、前記凹凸部16a・16bを、カム軸方向に見て、前記シャフト挿通孔17の中心Oと、そこから最も離れた前記延在部16の先端位置16cとを結ぶ中心線Sを基準として、左右にそれぞれ略10度の角度範囲内に形成することを特徴とする。
【0008】
請求項に記載の発明は、請求項に記載のカム駒製造方法において、たとえば以下に図面を用いて説明する実施の形態に示すとおり、前記凹凸部16a・16bを、カム軸方向に見て、前記シャフト挿通孔17の中心Oと、そこから最も離れた前記延在部16の先端位置16cとを結ぶ中心線S上にあって、その先端位置16cに最も近い前記シャフト挿通孔17の孔縁位置17aと前記先端位置16cとの中間に形成することを特徴とする。
【0009】
請求項に記載の発明は、請求項に記載のカム駒製造方法において、たとえば以下に説明する実施の形態に示すとおり、異なる円弧カム形状ごとに、前記凹凸部の前記延在部における設置位置を違えて識別してなることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
図1には、本発明の製造方法を用いてカム駒を打抜き加工する場合に使用する金型の一例を示す。図2には、本発明の製造方法により加工されるカム駒を示す。なお、このカム駒として、たとえば自動二輪車用内燃機関の排気弁や吸気弁の開閉制御に使われるカムを例に説明する。
【0012】
図2中符号15で示すカム駒は、後記の金属製カム軸20を圧入するシャフト挿通孔17を有するとともに、シャフト挿通孔17から一方向外向きに延在部16をもった輪郭が円弧カム形状に成形される金属製カム駒である。特に、このカム駒15には、延在部16における一方板面に凸部16aを設ける一方、その真裏の他方板面に凹部16bを設けて成形されてなる。
【0013】
さて、このカム駒15を打抜き加工する金型は、図1に示す如く、基本的に、たとえばファインブランキング(精密打抜き)法によって精密せん断加工する場合に使用されるもので、上型として、パンチ10およびその外周に付設した板押え11を備え、下型として、ダイ12およびダイ穴の内周に付設した逆押え13などを備えて構成される。板押え11には、その下側の加圧面に環状突起11aが設けられている。
【0014】
この金型において、特にパンチ10は、カム駒15の輪郭曲線に対応した下側の加圧面に、凸部16aの成形用に円柱状の凹み10aを設けた形状をなす。一方、パンチ10と対向する逆押え13は、パンチ10の凹み10aと対応する位置に、凹部16bの成形用に円柱状の突起13aを設けるとともに、シャフト挿通孔17抜き用に円柱状の突起13bを設けた形状につくられている。
【0015】
さて、本発明のカム駒製造方法により上記金型を用いてカム駒15を製造する場合は、図外のプレッシャ装置でパンチ10を板押え11とともに下降し、環状突起11aをせん断輪郭近くで食い込ませて、厚板状の金属製被加工材料(ブランク)Bを加圧する一方、ダイ12と逆押え13で受けて加圧することにより、図2でも示すように輪郭を円弧カム形状にせん断してカム駒15が加工される。
【0016】
このせん断加工時、パンチ10と逆押え13とで被加工材料Bを加圧するときに、延在部16の一方板面に、パンチ10の凹み10aに応じて円柱状凸部16aが形成される一方、他方板面を逆押え13の突起13bで打抜いてシャフト挿通孔17が設けられると同時に、突起13aで凸部16aの真裏に凹部16bが形成される。このせん断時に、延在部16において、板厚方向に凹凸部16a・16bが形成されるため、延在部16の先端位置16c方向への肉の片寄りが阻止される。その結果、打抜き切口のほとんどがせん断面となり、延在部16の先端位置16c近くのカム面部位イと、シャフト挿通孔17の孔縁位置17a近くの内面部位ロにも、破断面が発生することが抑止される。
【0017】
次いで、打抜き工程を経て後、カム駒15は、図外の位置決め治具を用いて位置決め支持し、シャフト挿通孔17に、図3に示すように貫挿してカム軸20を圧入する。図示例では、カム駒15を2つ、所定角度だけ位相をずらせて位置決めて、カム軸20に組み付け、同様にギヤ21を組み付けてカム組立体Cを組み立てる。そして、内燃機関で使用されるときは、ギヤ21に、図示省略するが、機関サイクルと同期して回転するクランク軸上のタイミングギヤが噛み合ってカム軸20を回転し、そのカム軸20の回転に応じて、カム駒15をそれぞれ回動して排気弁または吸気弁の開閉制御を行う。
【0018】
ところで、上述したようにカム駒15の凹凸部16a・16bは、延在部16に形成するが、図2に示すように、シャフト挿通孔17の中心Oと、そこから最も離れた延在部16の先端位置16cとを結ぶ中心線S上にあって、その先端位置16cに最も近いシャフト挿通孔17の孔縁位置17aと、先端位置16cとの中間に形成するとよい。
【0019】
また、凹凸部16a・16bを延在部16に設ける場合に、たとえば図4に示すように、上記中心線Sを基準として左右にそれぞれ略10度の角度範囲内に設けるようにするとよい。
【0020】
さらに、上述した凹凸部16a・16bは、円柱状であったが、角柱状など他の適宜形状であってもよい。
【0021】
そして、図示省略するが、本発明では、カム駒の異なる円弧カム形状ごとに、延在部16における凹凸部16a・16bの設置位置を違えて識別する構成にすることもできる。これによって、カム駒の組付作業時に、目視で簡単にカム駒の機種の違いを判別して誤組の発生を防止する。
【0022】
以上には、自動二輪車用内燃機関で使用されるカム駒およびそれを製造する例を示したが、本発明は、内燃機関以外に用いられる円弧カム形状のカム駒およびそれを製造する場合にも広く適用することができる。
【0023】
【発明の効果】
上述のように構成した本発明によれば、次のような効果が得られる。
【0024】
請求項1に記載の発明によれば、打抜き加工時、パンチと逆押えとで被加工材料を加圧するときに、延在部の一方板面に凸部を形成し、その真裏の他方板面に凹部を形成するため、その板厚方向の凹凸により延在部の先端位置方向への肉の片寄りが阻止され、その結果、打抜き切口のほとんどがせん断面となり、延在部の先端位置近くのカム面部位と、シャフト挿通孔の孔縁位置近くの内面部位にも、破断面が発生することが抑止され、これにより、シャフト挿通孔の内径精度の低下を防止することがでるとともに、従節との接触位置のずれをなくして作用精度を向上させることができる。
【0025】
請求項に記載の発明によれば、凹凸部を、打抜き加工時に肉の片寄りが主に発生する箇所に設けることにより、延在部の先端位置方向への肉の片寄りを効果的に阻止し、それだけ打抜き切口に発生する破断面を少なくすることができる。
【0026】
請求項に記載の発明によれば、カム駒の凹凸部が延在部で最もバランスのとれた位置に設けることになり、延在部の先端位置方向への肉の片寄りをより効果的に阻止し、打抜き切口に発生する破断面をより一層少なくしたり、内径を高精度に仕上げることができる。
【0027】
請求項に記載の発明によれば、異なる円弧カム形状ごとに、凹凸部の延在部における設置位置を違えて識別する構成であるため、カム駒の組付作業時に、目視で簡単にカム機種の違いを判別して誤組の発生を容易且つ確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のカム駒製造方法によりカム駒を打抜き加工するための金型構成を示す構成説明図である。
【図2】 (イ)は打抜き加工後のカム駒の正面図、(ロ)は側断面図である。
【図3】 カム駒を組み付けた内燃機関に使用するカム組立体の斜視図である。
【図4】 カム駒の変形例を示す正面図である。
【図5】 従来のカム駒を示す斜視図である。
【符号の説明】
10 パンチ
11 板押え
12 ダイ
13 逆押え
15 カム駒
16 延在部
16a 凸部
16b 凹部
17 シャフト挿通孔
B 被加工材料

Claims (4)

  1. 厚板状の金属製被加工材料をパンチとその外周の板押えで加圧する一方、反対側からダイとその内周の逆押えで受けて加圧することにより、カム軸のシャフト挿通孔を設けるとともに、そのシャフト挿通孔から一方向外向きに延在部をもった円弧カム形状にせん断してカム駒を製造するカム駒製造方法であって、
    前記パンチと前記逆押えとで前記被加工材料を加圧するとき、前記延在部の一方板面に凸部を形成し、その真裏の他方板面に凹部を形成することを特徴とするカム駒製造方法
  2. 前記凹凸部を、カム軸方向に見て、前記シャフト挿通孔の中心と、そこから最も離れた前記延在部の先端位置とを結ぶ中心線を基準として、左右にそれぞれ略10度の角度範囲内に形成することを特徴とする請求項1に記載のカム駒製造方法
  3. 前記凹凸部を、カム軸方向に見て、前記シャフト挿通孔の中心と、そこから最も離れた前記延在部の先端位置とを結ぶ中心線上にあって、その先端位置に最も近い前記シャフト挿通孔の孔縁位置と前記先端位置との中間に形成することを特徴とする請求項2に記載のカム駒製造方法
  4. 異なる円弧カム形状ごとに、前記凹凸部の前記延在部における設置位置を違えて識別してなることを特徴とする請求項3に記載のカム駒製造方法
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