JP3908152B2 - 複合成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属、硬質樹脂、木材などの硬質体等に、とくに表面処理なしでも、接着剤や両面テープで接着でき、柔軟で、かつ環境負荷の少ない熱可塑性樹脂組成物を用いた複合成形体に関し、特に、パッキンやコーナー保護材の材料として有用なものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車、車両材料、建築材料、電気製品、日用品、その他のあらゆる分野においてプラスチック製品が広く使用されている。中でも、パッキン、コーナー保護材のように、アルミサッシ等の金属や硬質プラスチックに軟質の熱可塑性樹脂等を接着剤や両面テープで接着して使用する場合が見られる。このような複合成形体は、雨水の浸入を防いだり、あるいは手の感触や見た目を良くしたり、更には材料の破損を防止したりする等の目的で、近年使用されてきている。そのような軟質の熱可塑性樹脂組成物としては、例えば、塩化ビニル系樹脂が一般的に使用されていた。しかし、塩化ビニル系樹脂は成形・加工が容易で、かつ安価であるが、廃棄物を焼却処分する際に、塩素を含有しているために有毒なガスを発生する可能性があり、分別や処理に手間と費用がかかるという問題点がある。そこで、環境に優しい炭素原子および水素原子からなるオレフィン系共重合体、スチレン系エラストマーやオレフィン系のエラストマーなどの軟質の熱可塑性樹脂が用いられるが、極性基を有していないため、一般の接着剤や両面テープで接着させることが困難で(非特許文献1)、アルミサッシなどの金属や硬質樹脂、木材等に接着して複合成形体に使用するには、特殊な表面処理が必要であった(非特許文献2)。
【0003】
【非特許文献1】
「接着応用技術」 日経技術図書株式会社 1991年4月3日発行(P291〜P306)
【非特許文献2】
「接着ハンドブック」 日本接着学会編 1996年6月28日発行(P907〜P923)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来技術のかかる状況に鑑み、アルミサッシなどの金属や硬質樹脂、木材などの硬質体等に、とくに表面処理なしでも、接着剤や両面テープで接着でき、柔軟で、かつ環境負荷の少ない熱可塑性樹脂組成物を用いた複合成形体を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、炭素原子および水素原子から構成される熱可塑性樹脂(イ)100重量部に対し、ポリオレフィンと無水マレイン酸とを反応させて得られる変性ポリオレフィンとポリアルキレングリコールとをエステル化させることによって得られるブロックポリマー(ロ)を2〜100重量部含有し、かつJIS K6253のタイプAデュロメータ硬さが90度以下である熱可塑性樹脂組成物(I)の成形体同士、または(I)の成形体と硬質体とを、接着剤または両面テープで接着した複合成形体を提供することによって達成される。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明において使用する炭素原子および水素原子で構成される熱可塑性樹脂(イ)としては、代表的にはオレフィン系共重合体、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー等が挙げられる。
【0007】
オレフィン系共重合体としては、エチレン単位と炭素数が4以上のα−オレフィン単位からなり、両者のモル比がエチレン単位/炭素数が4以上のα−オレフィン単位=55/45〜99/1であるオレフィン系共重合体が好適である。
【0008】
オレフィン系共重合体を構成する炭素数が4以上のα−オレフィン単位としては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセンなどのα−オレフィン単位から誘導される構成単位が挙げられる。これらの中でも、炭素数が4〜10のα−オレフィンから誘導される構成単位がより好ましく、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンから誘導される構造単位が特に好ましい。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0009】
ここで、オレフィン系共重合体の具体例を示せば、例えば、エチレン−ブテンランダム共重合体、エチレン−ヘキセンランダム共重合体、エチレン−オクテンランダム共重合体、エチレン−デセンランダム共重合体、エチレン−4−メチルペンテンランダム共重合体が挙げられる。
これらの中でも、エチレン−ブテンランダム共重合体、エチレン−ヘキセンランダム共重合体、エチレン−オクテンランダム共重合体が好ましい。
これらのオレフィン系共重合体は、メタロセン触媒を用いて重合して得られたものが最適である。メタロセン触媒(シングルサイト触媒、カミンスキー触媒ともいう)とは、メタロセン系遷移金属錯体と有機アルミニウム化合物とからなる触媒であり、無機物に担持されて使用されることもある。
【0010】
具体的なオレフィン系共重合体として、例えばデュポン ダウ エラストマー社製の「アフィニティー(AFFINITY)」、「エンゲージ(ENGAGE)」(いずれも商品名)、エクソン・ケミカル社製の「イグザクト(EXACT)」(商品名)、住友化学工業社製の「エスプレン(ESPRENE)SPO(商品名)のNシリーズ」などの市販のものを使用することができる。
【0011】
スチレン系エラストマーとしては、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物からなり、これらのブロック、およびランダム共重合体が好適である。
スチレン系エラストマーを構成するビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o,mまたはp−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられる。これらの中でも、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。ビニル芳香族化合物は、単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
また、水素添加前のブロック共重合体を構成する共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルー1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらの中でも、イソプレン、1,3−ブタジエンまたはこれらの混合物が好ましい。共役ジエン化合物は、単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0012】
具体的には、例えば、クラレ社製「セプトン」、「ハイブラー」、JSR社製「ダイナロン」、クレイトンポリマー社製「クレイトン」、旭化成工業社製「タフテック」、「SOE.SS」(いずれも商品名)等の市販品がある。
【0013】
スチレン系エラストマーには、硬度調整、加工性などを目的として、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン樹脂、非芳香族系の鉱物油または非芳香族系の液体もしくは低分子量の合成軟化剤であるゴム用軟化剤のパラフィン系、ナフテン系プロセスオイルが可塑剤として好適に用いられる。このようなスチレン系エラストマー組成物としては、クラレプラスチックス社製「セプトンコンパウンド」、リケンテクノス社製「レオストマー」、三菱化学社製「ラバロン」(いずれも商品名)などが挙げられる。
【0014】
オレフィン系エラストマーとしては、オレフィン系ゴム(a)とプロピレン系重合体(b)とを主成分とする組成物が好適である。
【0015】
オレフィン系エラストマーの主成分であるオレフィン系ゴム(a)としては、エチレン−プロピレン系共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)、エチレン−1−ブテン−非共役ジエン共重合体ゴム、プロピレン−1−ブテン−非共役ジエン共重合体ゴム等のオレフィンを主成分とする弾性共重合体が挙げられる。これらの中ではEPDMが好ましい。
【0016】
オレフィン系エラストマーには、硬度調整などを目的として、非芳香族系の鉱物油または非芳香族系の液体もしくは低分子量の合成軟化剤であるゴム用軟化剤のパラフィン系、ナフテン系プロセスオイルが可塑剤として好適に用いられる。このようなオレフィン系エラストマーとしては、例えば、三菱化学社製「サーモラン」、三井石油化学社製「ミラストマー」、住友化学社製「住友TPE」、AESジャパン社製「サントプレーン」(いずれも商品名)等の市販品がある。
【0017】
これらの炭素原子および水素原子から構成される熱可塑性樹脂(イ)のうち、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマーが好適であり、とくにスチレン系エラストマーが好適である。
【0018】
本発明においては、上記した炭素原子および水素原子を有する熱可塑性樹脂(イ)に、ポリオレフィンと無水マレイン酸とを反応させて得られる変性ポリオレフィンとポリアルキレングリコールとをエステル化させることによって得られるブロックポリマー(ロ){以下、(ロ)をブロックポリマー(ロ)と称する。}を添加することにより、アルミサッシなどの金属、硬質樹脂、木材等の硬質体に接着剤や両面テープにより、強固に接着でき、かつ柔軟な熱可塑性樹脂組成物(I)が得られる。
【0021】
ブロックポリマー(ロ)の具体例としては、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレンなど)と無水マレイン酸とを反応させて得られる変性ポリオレフィンとポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)とを触媒存在下でエステル化することによって得られるブロックポリマーが好適なものとして挙げられる。このようなブロックポリマー(ロ)としては、三洋化成工業から上市されている商品名「ペレスタット300」などが挙げられる。
【0022】
ブロックポリマー(ロ)の添加量は、熱可塑性樹脂(イ)100重量部に対し、2〜100重量部であることが重要である。2重量部未満では、接着性が発現しない。100重量部を超えると柔軟性がなくなり、好ましくない。3〜20重量部添加するのが好適である。
【0023】
また、熱可塑性樹脂組成物(I)の耐熱性、耐候性の向上あるいは増量などを目的として、炭酸カルシウム、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、シリカ、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム等の無機充填剤を混合することができる。更には、ガラス繊維、カーボン繊維のような無機あるいは有機繊維状物の混合も目的に応じ可能である。この他熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、粘着付与剤、帯電防止剤、発泡剤等の添加も可能である。
【0024】
本発明に用いる熱可塑性樹脂組成物(I)は、硬さが90度以下(JIS K6253 タイプAデュロメータ)であることが重要である。90度を超える場合は柔軟性に欠ける。特に30〜85度の範囲が好適である。このような硬さは、(イ)および(ロ)の配合割合を適宜選択することにより得られる。
【0025】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造する方法としては、従来公知の方法が特に制限なく用いられる。例えば、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、ヘンシェルミキサー、オープンロール、ニーダー等の混練機あるいは混合機を用いて、熱可塑性樹脂(イ)やブロックポリマー(ロ)等の原料を加熱溶融状態で混練することにより得られる。得られた混合物を従来公知の方法、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、カレンダー成形で容易に成形体に加工することができる。
【0026】
本発明の複合成形体は、熱可塑性樹脂組成物(I)の成形体を、市販されている一般的なシアノアクリレート系の瞬間接着剤やウレタン系の1液または2液反応型の接着剤、および両面にアクリル粘着剤を塗布した両面テープ等で硬質体に接着することにより得られる。また、熱可塑性樹脂組成物(I)の成形体同士も同様の方法で接着することができる。
【0027】
硬質体としては、金属、硬質樹脂、木材等が挙げられる。具体的に例を挙げると、金属としては、アルミやステンレス、銅、黄銅、鉄等、硬質樹脂としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂などの熱硬化性樹脂やポリカーボネート、ポリアセタール、ナイロン等のエンジニアリングプラスチックス、およびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂(ABS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の熱可塑性樹脂、木材としては、ラワン材、ヒノキ、スギ、マツ等が挙げられる。ここでの硬質体とは、本発明の複合成形体に使用される熱可塑性樹脂組成物(I)からなる柔軟材よりも高い硬さ、または相対的に高い硬さを有するものをいう。
【0028】
本発明に使用する熱可塑性樹脂組成物(I)は、柔軟で、硬質体と接着できることから、(I)と硬質体の複合成形体は、パッキンやコーナー保護材としてとくに好適に用いられ、さらには、自動車、車両材料、建築材料、電気製品、日用品、その他の幅広い用途に用いることができる。
また、本発明においては、熱可塑性樹脂組成物(I)同士を、市販の接着剤や両面テープで接着して複合成形体とすることもできる。熱可塑性樹脂組成物(I)同士を積層する場合も強固に接着でき、さらに柔軟性の優れた熱可塑性樹脂組成物(I)同士を積層することで所望の形状に成形することが容易となる。また(I)同士を積層したものは、たとえば、靴のソール、風呂蓋部材などとして好適に用いられる。
【0029】
【実施例】
本発明をより具体的かつ詳細に説明するために以下に実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
尚、本発明により得られる樹脂組成物の性能評価は以下に示す方法によって、硬さ、接着剤による接着性、両面テープによる接着性の評価を行った。結果を表1に示した。
【0031】
二軸押出機(口径46mm、L/D=46)を使用して、表1に示す配合に従って、各構成成分を200℃で溶融混練し、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0032】
また、表1の実施例1〜3および比較例1〜5では、熱可塑性樹脂(イ)、ブロックポリマー(ロ)としてそれぞれ以下のものを使用した。
熱可塑性樹脂(イ)
「エンゲージ8200」(商品名、デュポン ダウ エラストマー社製)オレフィン系共重合体
「セプトンコンパウンドCE002」(商品名、(株)クラレプラスチックス社製)スチレン系エラストマー
「サントプレーン101−55」(商品名、AESジャパン社製)オレフィン系エラストマー
ブロックポリマー(ロ)
「ペレスタット300」 (商品名、三洋化成工業社製) ポリプロピレンを主体としたポリオレフィンと無水マレイン酸とを反応させて得られる変性ポリオレフィンとポリエチレングリコールを主体としたポリアルキレングリコールとを触媒存在下でエステル化することによって得られるブロックポリマー
【0033】
a)柔軟性
表1に示す熱可塑性樹脂組成物を、プレス成形(温度230℃)で、縦250mm×横150mm×厚み2mmのシートを作製した。得られたシートを用いて、 JIS K6253準拠の方法によるタイプAデェロメータ硬度の値を柔軟性の指標とし、評価を行った。結果を表1に示した。
【0034】
b)接着剤による接着性
表1に示す熱可塑性組成物を、プレス成形(温度230℃)で、縦250mm×横150mm×厚み2mmのシートを作製した。得られたシートを幅25mm×120mmのテープに切断し、瞬間接着剤(高圧ガス工業社製「シアノンSR」シアノアクリレート系接着剤)でアルミサッシ板、ABS板、ラワン材に接着し、乾燥後、引張試験機により、それぞれ180度の反対方向に引張り、その剥離強度を測定した。
【0035】
c)両面テープによる接着性
表1に示す熱可塑性樹脂組成物を、プレス成形(温度230℃)で、縦250mm×横150mm×厚み2mmのシートを作製した。得られたシート同士を両面テープ(積水化学工業社製「W782X32」 幅15mm) を使用して積層し、引張試験機により両面テープと樹脂を180度の反対方向に引張り、その剥離強度を測定した。
【0036】
【表1】
【0037】
実施例1、2、3
表1に示す配合で、小型二軸押出機により溶融混練を行いペレットコンパウンドを作製した。得られたペレットコンパウンドを用い、上記評価方法a)、b)、c)のごとくにして試験片の作製、評価を行った。柔軟性を有し、接着性も良好であった。
【0038】
比較例1、2、3
表1に示す配合で、実施例1と同様にして、各種物性評価を行った。接着剤での接着は、剥離強度が不足しており、両面テープにも簡単に剥がれてしまった。
【0039】
比較例4、5
表1に示す配合で、実施例1と同様にして、各種物性評価を行った。接着剤での接着、両面テープの接着性は良好であったが、柔軟性が不足していた。
【0040】
【発明の効果】
柔軟で、かつ環境負荷の少ない熱可塑性樹脂組成物(I)を、アルミサッシなどの金属、硬質樹脂または木材等の硬質体に、とくに表面処理なしでも、接着剤や両面テープにより、強固に積層でき、また得られる複合成形体は、とくにパッキンやコーナー保護材として有用である。また、熱可塑性樹脂組成物(I)同士を、接着剤や両面テープにより積層した場合も強固に接着でき、さらに柔軟性に優れた熱可塑性樹脂組成物(I)同士を積層するで、所望の形状に成形することが容易となり、また(I)同士を積層して得た複合成形体は、たとえば、靴のソール、風呂蓋部材などとして有用である。
Claims (1)
- 炭素原子および水素原子から構成される熱可塑性樹脂(イ)100重量部に対し、ポリオレフィンと無水マレイン酸とを反応させて得られる変性ポリオレフィンとポリアルキレングリコールとをエステル化させることによって得られるブロックポリマー(ロ)を2〜100重量部含有し、かつJIS K6253のタイプAデュロメータ硬さが90度以下である熱可塑性樹脂組成物(I)の成形体同士、または(I)の成形体と硬質体とを、接着剤または両面テープで接着した複合成形体。
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