JP3908088B2 - 逆流防止装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、浴槽や洗濯機等の大気に開放されている貯水槽の貯水が上水管へ逆流することを防止する逆流防止装置に関する。ここでいう上水管とは、水道水圧力が作用している水路をいう。給湯機内の加熱用水路にも水道水圧力が作用しているために上水管ということができる。
水道水圧力を利用して貯水槽に水を供給することがある。高い水道水圧力を利用して高い位置に設置されている貯水槽に給水することもよく行なわれている。
貯水槽の貯水が上水管に逆流するようなことがあってはならない。貯水が上水管に逆流しかねない事態には2種類の事態が存在する。第1の事態は水道が断水して水道水圧力が低下する場合であり、上水管内圧力が負圧となれば貯水が逆流しかねない。第2の事態は貯水槽が高い位置に設置されている場合であり、貯水の圧力によって上水管内圧力が低下したときに逆流しかねない。
【0002】
【従来の技術】
上記のいずれの事態が生じても逆流を防止できる装置が特公平7−30954号公報に記載されている。この公報に記載の技術を図14、図15を参照して説明する。この公報に記載の逆流防止装置130は、入水口134に上水管132が接続され、出水口146に給水管148が接続されて用いられる。給水管148は浴槽等の貯水槽152に連通している。貯水槽152は大気に開放されており、貯水槽152に貯められた貯水の水面150よりも低い位置に給水管148が接続されている。貯水槽152は逆流防止装置130の設置階よりも階下に設置されることもあれば(図14)、階上に設置されることもある(図15)。
入水口134と出水口146の間に2個の逆止弁140,144が直列に挿入されている。2個の逆止弁140,144を直列に用いることによって、いずれか一方の逆止弁の作動が不調となって逆止作用が得られなくなっても(逆止弁に異物が噛みこむことによって逆止作用が得られなくなることがある)貯水が上水管132に逆流しないようになっている。
【0003】
この逆流防止装置130では、逆流防止の確実性をさらに高めるために、直列に配置された2個の逆止弁間142を大気に開放する大気開放弁156を付加している。この大気開放弁156は上流側の逆止弁140と機械的に連動し、逆止弁140が水路138を開くのに連動して大気開放弁156が大気連通口154を閉じる。図示しないバネによって、逆止弁140は閉じ位置に付勢され、大気開放弁156は開き位置に付勢されている。なお、図示136は電磁弁である。
【0004】
この構造の場合、2個の逆止弁140,144が双方とも作動不調なときに上水管132に負圧が発生すると、大気開放弁156が開くために上水管132には大気が吸い込まれ(図14の矢印H)、貯水が上水管132に逆流することを防止できる。あるいは2個の逆止弁140,144が双方とも作動不調なときに出水口146に貯水槽152側から正圧がかかると、大気開放弁156が開くために、逆流する貯水は大気連通口154から排出され(図15の矢印I)、貯水が上水管132に逆流することを防止できる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記の逆流防止装置130にはさらなる改善が必要とされる。
問題点1:上水管132に負圧が発生したときに優先的に大気が吸い込まれて貯水が吸い込まれないようにするためには、大気開放弁156を開きやすくする必要がある。貯水槽152に給水している間に水道水圧力が低下することがあり、大気開放弁156を開きやすくすると、水道水圧力の低下時に逆止弁140の上流側圧力と下流側圧力の差が小さくなって図示しないバネによって大気開放弁156が開いてしまうことがある。給水中に大気開放弁156が開いてしまうと、給水に大気が混入してしまう。
大気開放弁156を、逆流の発生を防止できる程度に開きやすくし、給水に大気が混入するのを防止できる程度に開きにくくする必要があり、しばしば、両要求を満足させられないことがある。
問題点2:逆止弁140が開くのに連動して大気開放弁156が閉じるために、逆止弁140が開き始めたときには大気連通口154が閉じられておらず、大気連通口154から水が漏れる。あるいは、貯水槽152への給水が終わって逆止弁140の上流側圧力と下流側圧力の差が小さくなると、図示しないバネによって大気連通口154が開かれるために、水路138内の水が大気連通口154から漏れ出る。即ち、給水の開始と停止のたびに大気連通口154から水が漏れ出る。
この問題に対処するために、特公平7−30954号公報に記載の技術では、大気連通口154の下流にホッパを設けて大気連通口154から漏れた水を貯める。そのホッパに水抜き口とそれを開閉する電磁弁を設け、別の目的で水を循環させるポンプの駆動時にその電磁弁を開けてホッパ内の水を汲み出す。
大気連通口154から漏れ出た水を貯めるホッパと、ホッパに貯まった水を汲み出す仕掛けが必要とされ、逆流防止装置の製作コストを上げ、配管作業を複雑なものとする。
【0006】
上記問題を解決するために、本出願人は改良された逆流防止装置を創作した。この装置は、特願2002−38943号の明細書と図面に記載されている。ただし、この出願は、まだ公開されていない。
本出願人が先に出願した逆流防止装置230は、図6〜13に示されているように、入水口234に上水管232が接続され、出水口246に給水管248が接続されて用いられる。給水管248は浴槽等の貯水槽252に連通している。貯水槽252は大気に開放されており、貯水槽252に貯められた貯水の水面250よりも低い位置に給水管248が接続されている。貯水槽252は逆流防止装置230の設置階よりも階下に設置されることもあれば(図6〜10)、階上に設置されることもある(図11〜13)。
入水口234と出水口246の間に形成されている水路238に2個の逆止弁240,244が直列に挿入されている。2個の逆止弁240,244を直列に用いることによって、いずれか一方の逆止弁の作動が不調となって逆止作用が得られなくなっても貯水が上水管232に逆流しないようになっている。
【0007】
この逆流防止装置230には、逆流防止の確実性を高めるために、2個の逆止弁240,244の間を大気に開放する大気開放弁256を付加している。大気開放弁256はダイヤフラム258を備えており、ダイヤフラム258によって大気連通口254を開閉する。ダイヤフラム258によって区画される気密室は第1逆止弁240の上流に連通し、大気連通口254を有する室は第1逆止弁240の下流に連通する。大気開放弁256と第1逆止弁240は、入水口234に対して並列に配置されており、独立に動作することができる。なお図示236は電磁弁である。大気連通口254の下流には逆流水を受入れて排水するオーバーフロー管(図示省略)が接続される。
【0008】
この逆流防止装置230は下記のように作動する。
(貯水槽252が逆流防止装置230の設置階よりも階下に設置される場合)
給水時には、図6に示すように、電磁弁236が開けられ、水道水圧力によって第1逆止弁240の上流の圧力が高まる。一方、閉弁状態の第1逆止弁240の下流側の圧力は小さい。ダイヤフラム258は第1逆止弁240の上流と下流との圧力差で大気連通口254を閉じる側に付勢される。大気連通口254が閉じてから第1逆止弁240と第2逆止弁244が開いて給水が開始される。第1逆止弁240と第2逆止弁244が開くのに先だって大気連通口254が閉じられるために、上水は大気連通口254から漏れることはない。
【0009】
給水停止時には、図7に示すように、第1逆止弁240を水が流れないので第1逆止弁240は閉じられるが、第1逆止弁240の上流側には停止直後の残留圧力がかかっている。即ち、第1逆止弁240の上流と下流には圧力差があり、ダイヤフラム258はこの圧力差で大気連通口254を閉じる側に付勢されているため、大気連通口254は閉じられている。したがって、逆流防止装置230内の上水が大気連通口254から漏れることはない。
上記のように、入水口234の圧力が出水口246の圧力よりも高い正常時には、給水の開始時にも給水の停止時にも上水が大気連通口254から漏れることはなく、漏れ出る水に対策しておく必要はない。
【0010】
断水時には、図8に示すように、入水口234に負圧が加わっても、2個の逆止弁240,244によって二重に逆流が防止されている。なお、給水停止時と同様に、第1逆止弁240の上流側には停止直後の残留圧力がかかっているため、第1逆止弁240の上流と下流との圧力差によって大気連通口254は閉じられている。
【0011】
2個の逆止弁240,244の双方とも作動不良になって閉じないような事態が発生したとする。このようなときに断水して入水口234に負圧が加わると、図9に示すように、第1逆止弁240の上流の負圧力と下流の圧力との差によってダイヤフラム258は変形して大気連通口254が開く。この場合、第1逆止弁240は閉じていないために、第1逆止弁240の下流にも負圧がかかる。このとき、優先的に大気連通口254から大気が吸引されて(矢印E)、第1逆止弁240の下流の負圧が解消されるため、出水口246から水を吸引することはない。
このように、2個の逆止弁240,244の双方とも作動不良になり、入水口234に負圧が作用しても、水が出水口246から入水口234に逆流することはない。
【0012】
しかしながら、本出願人がこの逆流防止装置230を試験したところ、次の場合に不具合が生じる場合があることがわかった。給水停止時にウォーターハンマー現象等により、第1逆止弁240の上流側で水圧の変化による振動が起こると、大気開放弁256が一瞬開いて吸気してしまうことがある。このときに大気連通口254から空気が吸引され、給水管248内の水が置換されて貯水槽252に排出されてしまうことがある(図10の矢印F)。この場合、給水管248に図示しない水位センサが設けられているものにおいては、貯水槽252の水位の検出ができなくなる不具合が生じる。
給水停止時には電磁弁236が閉じており、大気連通口254が開いてもサイホン効果によって逆流防止装置230内の水は漏れ出ないはずである。満水状態で倒立したビンの先を開けても水は漏れ出ない。しかしながら、大気連通口254が下方を向いているため、壁を伝って水が漏れることがある。また、何かの拍子に空気と水が入れ替わって水が漏れることがある。
【0013】
(貯水槽252が逆流防止装置230の設置階よりも階上に設置される場合)
出水口246が貯水槽252に接続されており、貯水槽252側の給水管の開口が水面よりも下方にあると、出水口246には正圧がかかる。水道水圧力が正常にあれば、入水口234の正圧の方が高いために、逆流することはない。断水しないまでも上水の圧力が低下すると、入水口234の圧力が出水口246の圧力よりも低下することがある。
正常時の給水時には、出水口246の正圧よりも入水口234の正圧の方が高い。このため、図11に示すように、電磁弁236が開くと水道水圧力によって第1逆止弁240の上流の圧力が高まる。この結果、大気開放弁256によって大気連通口254が閉じられる。その後に第1逆止弁240と第2逆止弁244が開いて給水が開始される。上水は大気連通口254から漏れることはない。
正常時の給水停止時には、図12に示すように、第2逆止弁244の下流が大気に開放されることはない。第1逆止弁240は閉じられるが、第1逆止弁240の上流側には停止直後の残留圧力がかかっている。即ち、第1逆止弁240の上流と下流には圧力差があり、ダイヤフラム258はこの圧力差で大気連通口254を閉じる側に付勢されているため、大気連通口254は閉じられている。したがって、上水は大気連通口254から漏れることはない。
【0014】
2個の逆止弁240,244の双方とも作動不良になって閉じないような事態が発生したとする。このようなときに断水して出水口246に正圧が加わると、図13に示すように、出水口246の高い正圧がダイヤフラム258を変形させて大気連通口254を開ける。このために、出水口246からの逆流水は大気連通口254から排出され(矢印G)、出水口246から入水口234に逆流することはない。
【0015】
本出願人が先に出願した逆流防止装置230は、通常の場合には問題がない。しかしながら、貯水槽252を逆流防止装置230の設置階よりも階下に設置した場合において、給水停止時にウォーターハンマー現象等によって第1逆止弁240の上流側または下流側で水圧の変化による振動が起こると、大気開放弁256が一瞬開いて吸気してしまうことがある。このとき、給水管248内の水が貯水槽252に抜けてしまうことがある。また、大気連通口254が下方を向いているため、壁を伝って装置230内の水が漏れてしまう可能性がある。また、何かの原因によって空気と水が置換されて水が漏れてしまうことがある。
【0016】
本発明は、貯水槽を逆流防止装置の設置階よりも階下に設置し、給水停止時にウォーターハンマー現象等による第1逆止弁の上流側または下流側の水圧の変化による振動によって一瞬大気開放弁が開いてしまっても、給水管の水が貯水槽に抜けず、逆流防止装置内の水が大気開放弁から漏れないようにすることを目的としている。
【0017】
【課題を解決するための手段と作用と効果】
本発明の逆流防止装置は、上水管と、貯水槽に連通する給水管の間に設置されて用いられ、給水管から上水管に逆流することを防止する。この逆流防止装置は、上水管に接続される入水口と、給水管に接続される出水口と、入水口と出水口とを連通する水路と、その水路に設置されて出水口から入水口に逆流することを禁止する逆止弁と、上向きに設けられた大気連通口をダイヤフラムで開閉するとともに、ダイヤフラムで区画される気密室が逆止弁の上流に連通し、大気連通口を有する室が逆止弁の下流に連通している大気開放弁を備えており、大気連通口を取囲む大気開放弁の壁によって、大気連通口の周囲にエアー溜まりが形成されている
【0018】
前記したように、ウォーターハンマー現象等による逆止弁の上流側の水圧の変化による振動によって瞬間的な負圧が発生したとき、大気開放弁が一瞬開いてしまい、空気を吸引することがある。従来の逆流防止装置では、吸引された空気が給水管に吸込まれてしまい、水が貯水槽へ抜けてしまうことがあった。また、大気連通口が下方を向いているため、壁を伝って水が漏れたり、何かの拍子に水と空気の置換が起こって水が漏れたりしてしまうことがあった。
本発明の逆流防止装置によると、大気連通口が上方を向いているため、瞬間的に大気開放弁が開いて空気を吸引しても、この空気は大気連通口の出口近傍に留まり、給水管に吸込まれにくい。また、大気連通口が上方を向いているため、壁を伝って水が漏れることはなく、何かの拍子に水と空気の置換が起こって水が漏れることもない。
【0019】
流防止装置の大気連通口を取囲む大気開放弁の壁によって、大気連通口の周囲にエアー溜まりが形成されていると、ウォーターハンマー現象等によって逆止弁の上流側で水圧の変化による振動が生じて大気開放弁が一瞬開いてしまっても、このときに吸引される空気はエアー溜まりに留まり、給水管に吸込まれることはない。よって、給水管の水が貯水槽へ抜けてしまうことがない。
ウォーターハンマー現象等によって逆止弁の上流側で水圧の変化による振動が起こると、大気開放弁256は開く側へ引かれる。このとき、従来の逆流防止措置では、大気開放弁256のシール部分に水(実際には温水)が付く。この水が乾燥すると(温水であると乾燥しやすい)炭酸カルシウム等が析出することがある。シール部分が濡れたり乾いたりを繰返すと、この析出物は水あかとしてシール部分に徐々に固着してシール圧を弱めてしまう恐れがある。
本発明の逆流防止装置では、大気連通口の周囲にエアー溜まりが形成されている。大気開放弁が開いてもシール部分はエアー溜まりから逸脱しないために濡れない。シール部分は基本的にドライに保たれているために水あかが付着することはなく、このような瞬間的な大気開放弁の開閉によってシール性が低下することはない。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。
(形態1) 逆止弁の下流に配設された調圧弁は、給水中に給水圧力(水道水圧力)によって逆止弁が開弁して逆止弁下流圧力が所定圧より高くなると開く。この所定圧は調圧弁のばねの付勢力によって決定される。
【0021】
【実施例】
本発明の逆流防止装置を具現化した1つの実施例を図1〜図4を用いて説明する。図1、図2は本実施例の逆流防止装置の縦断面図である。図3〜図4は同逆流防止装置の動作を説明する図である。図1の入水口34は上水管32に接続され、出水口46は貯水槽52に連通する給水管48に接続される。本実施例の場合では、上水管32は給湯器内の出湯水配管であり、水道水圧力が作用している。貯水槽52は浴槽であり、大気に開放されている。給水管48の貯水槽52側の開口は貯水槽52に貯められた水面50よりも低い位置にある。貯水槽52は逆流防止装置30の設置階よりも階上に設置されることもあれば階下に設置されることもある。
入水口34と出水口46の間には2個の逆止弁40,44が直列に挿入される。2個の逆止弁40,44を直列に用いることによって何れか一方の逆止弁の作動が不調となって逆止作用が得られなくなっても(異物が噛み込むことによって逆止作用が得られなくなることがある)上水管32に逆流しないようになっている。図1において、上流側の第1逆止弁40は中心線の右側では開放位置を示し、左側では閉止位置を示している。下流側の第2逆止弁44は中心線の上側では開放位置を示し、下側では閉止位置を示している。
【0022】
この逆流防止装置30には、逆流防止の確実性を高めるために、直列に配置された2個の逆止弁40,44の間を大気に開放する大気開放弁56を付加している。大気開放弁56は第1ダイヤフラム58を備え、ダイヤフラム58が変形することで大気連通口54が開閉される。大気連通口54は上向きに設置される。第1ダイヤフラム58によって区画される一方の室(気密室)A1は通路59によって第1逆止弁40の上流Aに連通し、他方の室(大気連通口54を有する室)B1は通路61によって第1逆止弁40の下流Bに連通する。大気開放弁56と第1逆止弁40は入水口34に対して並列に配置されており、独立に動作することができる。大気連通口54の下流には後記する逆流水を受入れて排水するオーバーフロー66が設けられている。このオーバーフロー66は大気開放弁56によって開閉され、大気開放弁56の出口近傍部分と本体内壁との間にはエアー溜まり68が設けられている。図1において、大気開放弁56は中心線の右側では開放位置を示し、左側では閉塞位置を示している。
【0023】
さらにこの逆流防止装置30には、大気開放弁56の動作の確実性を高めるために、2個の逆止弁40,44の間、即ち第1逆止弁40の下流Bと第2逆止弁44の上流Cの間に調圧弁60を付加している。この調圧弁60は第2ダイヤフラム62に取付けられている。第2ダイヤフラム62によって区画される一方の室(気密室)は第1逆止弁40の下流Bと第2逆止弁44の上流Cに連通し、他方の室(大気連通口64を有する室)は大気連通口64から図2に示すチューブ70によってオーバーフロー66に連通し、大気に開放されている。第2ダイヤフラム62はばね67によって閉弁方向へ付勢されている。このばね67の付勢力によって調圧弁60が開閉する所定圧(大気圧+ばね付勢力)が決定されている。図1において、調圧弁60は中心線の上側では開放位置を示し、下側では閉止位置を示している。なお、図示36は電磁弁であり、74は流量センサである。
【0024】
本実施例の逆流防止装置は下記のように作動する。
(貯水槽52が逆流防止装置30の設置階よりも階下に設置される場合)
給水時には電磁弁36が開くために、第1逆止弁40の上流Aの圧力が高まる。これによって第1逆止弁40の上流Aと下流Bに圧力差が生じ、大気開放弁56が大気連通口54に押付けられて閉弁する。なお、第1逆止弁40の下流Bと第2逆止弁44の上流Cの間に設けられている調圧弁60はこのとき給水圧力によって開弁する。次いで、第1逆止弁40と第2逆止弁44が開いて給水が開始される。2個の逆止弁40,44が開くのに先立って大気連通口54は大気開放弁56によって閉じられているために、上水が大気連通口54から漏れ出ることはない。
給水停止時には、水が流れないので、第1ダイヤフラム58で区画される第1逆止弁40は閉じられるが、第1逆止弁40の上流Aには停止直後の残留圧力がかかっている。即ち、第1逆止弁40の上流Aと下流Bには圧力差があり、第1ダイヤフラム58はこの圧力差で大気連通口54を閉じる側に付勢されているため、大気連通口54は閉じられている。閉じられていれば空気は吸引されず、上水が大気連通口54から漏れることはない。なお、このとき調圧弁60は第1逆止弁40の下流Bの圧力が所定圧よりも低下するために閉じる。
【0025】
正常時には入水口34の圧力が出水口46の圧力よりも高いため、給水の開始時にも停止時にも大気開放弁56は閉弁保持されており、空気は吸引されない。したがって水が大気連通口54から漏れることはなく、漏れ出る水に対策しておく必要はない。なお、調圧弁60は給水により第1逆止弁40下流Bの圧力が所定圧より高くなると開くので、給水を妨げない。調圧弁60が開いているため、先述の本出願人の先願の逆流防止装置(図6,図7参照)と同様に作動しているといえる。
【0026】
貯水槽52が逆流防止装置30の設置階よりも階下に設置されている場合、給水の停止時にウォーターハンマー現象が生じると、第1逆止弁40の上流Aの圧力が瞬間的に低下することがある。調圧弁60を持たない従来の逆流防止装置では、このとき第1逆止弁40の上流Aと下流Bとの圧力差がなくなり、大気開放弁56が開いてしまって大気連通口54から空気が吸引され、装置内を満たしていた水が空気に置換されて大気連通口54から漏れ出ることがある。また給水管48の水が貯水槽52へ抜けてしまうことがある。このような事態が発生すると、給水管48に設けられた水位センサによって貯水槽52の水位50の検出ができなくなる等、各種の不具合が生じる。
図3に示す本実施例の逆流防止装置30では、第1逆止弁40の下流Bの圧力低下に反応して調圧弁60が閉じるため、瞬間的に大気開放弁56が開いてしまっても給水管48から水が抜けることはない。また、サイホンの原理が作用するために逆流防止装置30内の水が大気連通口54から漏れ出ることがない。特に、大気連通口54が上方を向いているため、壁を伝って水が漏れたり、何かの拍子に空気と水が入れ替わって水が漏れたりすることがない。
【0027】
断水して入水口34の圧力が負圧になると、図3に示すように、2個の逆止弁40,44が閉じることによって二重に逆流が防止される。
【0028】
2個の逆止弁40,44の双方とも作動不良になって閉じないような事態が発生したとする。このようなときに断水して入水口34に負圧が加わると、図4に示すように、第1逆止弁40の上流Aが負圧になり、第1逆止弁40が閉じないために第1逆止弁40の下流Bの圧力が低下する。第1逆止弁40の下流Bの圧力が所定の正圧まで低下すると第2ダイヤフラム62が変形して第1逆止弁40の下流Bと第2逆止弁44の上流Cの間を閉じる。これによって第2逆止弁44の上流Cより下流に負圧が伝わることを防止し、貯水槽52から水を吸引しない(逆流しない)。第1逆止弁40の上流Aが負圧になると、第1ダイヤフラム58が変形して大気開放弁56が開く。この場合、空気が吸引され、この空気は第1逆止弁40の下流Bから第1逆止弁40の上流Aへと移動する。大気連通口54から吸引された空気は、調圧弁60が閉じているために第2逆止弁44の上流Cより下流へは移動せず、給水管48から水が抜けることはない。
このように、2個の逆止弁40,44の双方とも作動不良になり、入水口34に負圧が作用したとしても、貯水槽52の貯水が出水口46から入水口34に逆流することはない。
【0029】
(貯水槽52が逆流防止装置30の設置階よりも階上に設置される場合)
出水口46が貯水槽52に接続されており、貯水槽52側の給水管48の開口が水面50よりも下方にあると、出水口46には正圧がかかる。水道水圧力が正常にあれば、入水口34の正圧の方が高いために逆流することはない。断水しないまでも上水の圧力が低下すると、入水口34の圧力が出水口46の圧力よりも低下することがある。
正常時の給水時には、出水口46の正圧よりも入水口34の正圧の方が高い。このため、電磁弁36が開くと水道水圧力によって第1逆止弁40の上流Aの圧力が高まる。この結果、大気開放弁56によって大気連通口54が閉じられる。第1逆止弁40と第2逆止弁44が開いて給水が開始される。上水は大気連通口54から漏れることはない。
正常時の給水停止時には、第2逆止弁44の下流Dの水圧が負圧とならないため、大気連通口56からの空気の吸引はない。第1逆止弁40を水が流れないので第1逆止弁は閉じられるが、第1逆止弁40の上流Aには停止直後の残留圧力がかかっている。即ち、第1逆止弁40の上流Aと下流Bには圧力差があり、第1ダイヤフラム58はこの圧力差で大気連通口254を閉じる側に付勢されているため、大気連通口54は閉じられている。したがって、上水は大気連通口54から漏れることはない。
【0030】
2個の逆止弁40,44の双方とも作動不良になって閉じないような事態が発生したとする。このようなときに断水して出水口46に正圧が加わると、出水口246の高い正圧が第1ダイヤフラム58を変形させて大気連通口54を開ける。このために、出水口46からの逆流水は大気連通口54から排出され、出水口46から入水口34へ逆流することはない。
大気連通口54から排出された水は、図1,2に示すオーバーフロー66からオーバーフローする。このオーバーフローは装置30の故障時にのみ生じる異常現象であり、オーバーフローを想定して配水管を接続しておく必要はない。装置の故障時に水が溢れ出すことはやむを得ないからである。逆流防止装置30は戸外またはパイプハウスに設置されており、装置故障時に水が溢れることがあっても最悪な事態にはならないように配慮されている。
また、調圧弁60が形成されている第2ダイヤフラム62は薄膜であり、破れてしまう場合がある。しかし、大気圧取り入れ口64がチューブ70によってオーバーフロー66と接続されており、たとえ第2ダイヤフラム62が破れるような事態が起こっても上記と同様に最悪の事態は回避することができる。
【0031】
本発明の逆流防止装置は逆止弁と独立して作動する大気開放弁によって水漏れと逆流を防止しており、さらに逆止弁の下流には調圧弁が配置され、調圧弁は調圧弁の下流の圧力(第1逆止弁40の下流の圧力、又は第2逆止弁44の上流の圧力)が負圧にならないよう制御している。本出願者の先願の逆流防止装置では、貯水槽を逆流防止装置の設置階よりも階下に設置し、且つ、給水を停止した瞬間にウォーターハンマー現象等によって大気開放弁が一瞬開いてしまったときに、大気開放弁から空気を吸引して給水管内の水が貯水槽に抜けることがある。あるいは、逆流防止装置内の水が大気連通口から漏れ出る可能性がある。本発明の逆流防止装置によれば、ウォーターハンマー現象等によって大気開放弁が一瞬開いてしまったときには、逆止弁の下流の圧力低下に反応して調圧弁が閉じる。このため、大気連通口から空気を吸引することを防止して給水管内の水が貯水槽に抜けてしまわないようにすることができる。大気開放弁が一瞬開いても、サイホンの原理によって、大気連通口から第1逆止弁と第2逆止弁との間の水が漏れることはない。
大気連通口が上向きに設けられているために、壁を伝って水が漏れ出る事もない。また、大気連通口54はエアー溜まり68の上部にあって常時は大気開放弁56で閉じている。通常は、エアー溜まり68にエアーが溜まった状態で、大気開放弁56が大気連通口54を閉塞しており、ドライな状態に保たれる。給水停止時に大気連通口54が開放されるときに大気連通口54から空気が吸い込まれ、それがエアー溜まり68にためられる。前記したように、大気連通口54が開放されて大気連通口54から空気が吸い込まれる場合には、調圧弁60が閉じるために吸引された空気が調圧弁60よりも下流に吸い込まれることがない。
本実施例では、ダイヤフラム58と62によって、下記の作用を得ている。
(1)給水停止時にはダイヤフラム62が変形し、調圧弁60が閉じて給水管48から水が抜けるのを禁止する。
(2)給水停止時にダイヤフラム58が大気連通口54を開けても、そのときに吸引される空気はエアー溜まり68に留まり、給水管48に吸い込まれるのを禁止する。
(3)大気連通口54が開いてもダイヤフラム62が閉じるために大気連通口54に連通する室のみが大気に連通し、残部は閉じられている。このために、水を入れたビンの蓋を外して倒立させても水が漏れないのと同様にして水が漏れることがない。
(4)大気連通口54が下方を向いていると、壁を伝って水が漏れる可能性がある。また、何かの拍子に空気と水が入れ替わって水が漏れることがある。この実施例では大気連通口54が上方を向いているために、かかる問題が生じない。
(5)大気連通口54は基本的にドライに保たれる。このために大気開放弁56に水あかが付着することがない。大気開放弁56がウエットとドライに繰返し変化すると大気開放弁56に水あかが付着することがあり、シール性が低下することがある。本実施例ではその問題がない。
【0032】
先願の逆流防止装置弁のように調圧弁がなくてもよい。ウォーターハンマー現象等によって一瞬大気連通口54が開いてしまっても、このとき吸引された空気はエア溜まり68に留め置かれるため、給水管48に吸込まれることはない(図5)。しかしながら、本実施例の逆流防止装置30では逆止弁40の下流に調圧弁60が配設されており、大気連通口54が開いても調圧弁60が閉じるために、より確実に大気連通口54から水が漏れ出るのを防いでいる。
【0033】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施例の逆流防止装置の縦断面図。
【図2】 同逆流防止装置の縦断面図。
【図3】 同逆流防止装置の動作を説明する図。
【図4】 同逆流防止装置の動作を説明する図。
【図5】 逆流防止装置の別例を示す図。
【図6】 本発明に先立って出願された逆流防止装置の動作を説明する図。
【図7】 同逆流防止装置の動作を説明する図。
【図8】 同逆流防止装置の動作を説明する図。
【図9】 同逆流防止装置の動作を説明する図。
【図10】 同逆流防止装置の動作を説明する図。
【図11】 同逆流防止装置の動作を説明する図。
【図12】 同逆流防止装置の動作を説明する図。
【図13】 同逆流防止装置の動作を説明する図。
【図14】 従来の逆流防止装置の動作を説明する図。
【図15】 同逆流防止装置の動作を説明する図。
【符号の説明】
30:逆流防止装置
32:上水管
34:入水口
36:電磁弁
40:第1逆止弁
44:第2逆止弁
46:出水口
48:給水管
50:水面
52:貯水槽
54:大気連通口
56:大気開放弁
58:第1ダイヤフラム
60:調圧弁
62:第2ダイヤフラム
64:大気圧取入れ口
66:オーバーフロー
67:ばね
68:エアー溜まり
70:チューブ
74:流量センサ

Claims (1)

  1. 上水管と、貯水槽に連通する給水管の間に設置されて用いられ、給水管から上水管に逆流することを防止する装置であり、
    上水管に接続される入水口と、給水管に接続される出水口と、入水口と出水口とを連通する水路と、
    その水路に設置されて出水口から入水口に逆流することを禁止する逆止弁と、
    上向きに設けられた大気連通口をダイヤフラムで開閉するとともに、ダイヤフラムで区画される気密室が逆止弁の上流に連通し、大気連通口を有する室が逆止弁の下流に連通している大気開放弁を備えており、
    前記大気連通口を取囲む大気開放弁の壁によって、大気連通口の周囲にエアー溜まりが形成されることを特徴とする逆流防止装置。
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