JP3905169B2 - 多層シート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定なゴム変性スチレン系樹脂よりなる基材層と、特定なポリエステル樹脂からなる表面層、およびそれら異種樹脂を互いにつなぐ接着層からなる多層シートであり、そのシートは透明で耐油性、耐傷性、ガスバリヤー性を持ちながら、且つ剛性、耐衝撃性、打ち抜き加工性と成形性に優れた、食品、雑貨、化粧板などの包装、収納材に適している有用な成形材を提供する。
【0002】
【従来の技術】
近年、食品を主とする収納、包装するための容器として、コスト、剛性と衝撃性、成形加工性などの点から、ポリスチレン系シートを真空、空成形した熱成形品が多く使用されている。しかしながらポリスチレン製の容器は、耐油性、ガスバリヤー性などの点で使用範囲での制約がある。また化粧板(洗面化粧台、家具の扉など)などの用途においても、耐油性のほか耐傷性などの特性も要求されるが、これらの性能を満足しているとは言い難い。これらを補うべく従来はポリスチレン系樹脂を基材層とするシートに、ポリエチレン、ポリプロピレン、あるいはポリ塩化ビニリデンなどの耐油性、ガスバリヤー性などの優れた樹脂を、積層させる方法が考案されてきた。しかしこれらの多層シートの基材層として使用するポリスチレン系樹脂の多くは、ゴム強化ポリスチレンを使用するため透明性が無く、また透明性を得るべくこの基材層に、ポリスチレンとスチレン・ブタジエンブロック共重合体のブレンド物を使用しても、上記ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデンなどの改質材そのものの透明性が劣ること、あるいは基材層のポリスチレンとスチレン・ブタジエンブロック共重合体ブレンド系樹脂では、剛性と衝撃性を同時に満足させるには不充分であることなどで、市場性に乏しい欠点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐油性、ガスバリヤー性および耐傷性を持ち、且つ剛性と耐衝撃性の両方が優れ、さらには成形加工性、抜き加工性の良さを兼ね備えた透明な多層シートを提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、特定なゴム変性スチレン系樹脂(A)を基材層とし、その基材層の片側あるいは両側に接着樹脂(B)層を介し、ポリエステル系樹脂(C)からなる表面層を積層してなる多層シートに関する。
即ち、本発明は母相がスチレン系単量体30〜70重量%、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体70〜30重量%からなる共重合体100重量%に対し、分散相がスチレン単位20〜50重量%、ブタジエン単位80〜50重量%のスチレン・ブタジエンブロックゴム5〜15重量%を含み、かつ該ゴムが0.3〜1.5μmの粒子径で分散したゴム変性スチレン系樹脂(A)である基材層に、カルボキシル基を有する変性ポリオレフィンである接着樹脂(B)層を介して、二価アルコール成分がエチレングリコール80〜50重量%と1,4−シクロヘキサンジメタノール20〜50重量%、酸成分がテレフタル酸から構成されるポリエステル樹脂(C)を積層してなる多層シートである。
【0005】
本発明の多層シートの基材層であるゴム変性スチレン系樹脂(A)はスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸アルキルエステル系からなる共重合体および該共重合体中に微分散したスチレン・ブタジエンブロックゴムから構成される。
本発明のスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体からなる共重合体に用いられるスチレン系単量体としては、スチレン、αーメチルスチレン、tーブチルスチレン、pーメチルスチレンなどが使用できる。これらの単量体は単独または混合して使用できる。また(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、エチルアクリレートなどが使用できる。これらの(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、単独または混合して使用ができる。
【0006】
本発明のスチレン系単量体は基材層に透明性を与えると言う観点から30〜70重量%が好ましい。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂(A)の分散相となるゴム成分は、スチレン単位20〜50重量%、ブタジエン単位80〜50重量%のスチレン・ブタジエンブロックゴムを上記共重合体100重量%に対し5〜15重量%、好ましくは7〜12重量%配合する。また該ゴムは、衝撃強度および透明性を保持するため上記共重合体中に0.3〜1.5μmの粒径を保つ必要がある。
【0007】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂(A)は、通常のハイインパクトポリスチレンの製造方法を用いることが出来る。即ち該ゴムを重合液に溶解し、この重合液を撹拌機付き反応器に供給し、重合を行う。その際、ゴム粒径の粒径制御は良く知られている一般的な方法、例えば撹拌機の回転数の増減および共重合体の分子量調整との兼ね合いにより成し遂げられる。
【0008】
重合するに当たってはその重合原料液にエチルベンゼン、トルエン或いはキシレン等の溶媒を用いることが可能である。また重合効率を高める為に過酸化ベンゾイルに代表されるような有機過酸化物、或いはアゾビスブチロニトリルに代表されるラジカル発生剤を重合初期、あるいは重合途中で加えることも出来る。重合体からは未反応単量体および重合溶媒などを除去しペレット化される。未反応物の除去は一般のポリスチレンに用いられるフラッシュタンクシステム、あるいは押出機に多段ベント付きシステムを搭載したものが用いられ、その際、水、不活性気体を溶融樹脂に注入し、その後脱気する方法を併用するとより効果的である。
【0009】
本発明の接着樹脂(B)は、カルボキシル基を具備する変性ポリオレフィンであり、例えば主鎖または側鎖にカルボニル基を具備する変性ポリオレフィンであり、よく知られているエチレンーアクリル酸共重合体、無水マレイン酸グラフトオレフィン、アクリル酸グラフトオレフィン、エチレンー酢酸ビニル共重合体などから選ばれ一種以上使用する。
【0010】
本発明のポリエステル系樹脂(C)は、二価アルコール成分がエチレングリコール80〜50重量%、1,4−シクロヘキサンジメタノール20〜50重量%からなり、酸成分がテレフタル酸から構成される非晶性のポリエステル樹脂が用いられ、例としてイーストマンコダック社、PETーGコポリエステル6763などが挙げられる。
【0011】
本発明で用いられるテルペン系樹脂は、ゴム変性スチレン系樹脂(A)100重量%に対して15重量%以下で含有することが好ましい。上記テルペン系樹脂は無水状態で不活性雰囲気下で塩化アルミニウムに代表される強ルイス酸を触媒としたフリーデルクラフツ重合により芳香族ビニル系炭化水素とテルペンをカチオン共重合することにより合成される。テルペンとしては柑橘系皮質から得られるd−リモネン、生松脂から得られたαーピネンの異性化で得られるテルペンなどが用いられる。本発明におけるテルペン系樹脂には、テルペン樹脂を水素添加することによって得られる部分水素添加テルペンも含まれる。水素添加量については10モル%以上の芳香族環を残す必要がある。これはテルペン系樹脂の芳香族環が無くなると母相であるスチレン相(マトリックス)と分散相との相溶性、或いは接着性が悪くなり機械的強度の低下を招く。テルペン系樹脂としては例えばヤスハラケミカル(株)製、YSレジン、TO125、TO115、TO105及びTO85が、部分水素添加系としては例えばヤスハラケミカル(株)製、クリアロンM105、M115が用いられる。
【0012】
本発明で用いられるテルペン系樹脂は上記ゴムを溶解した原料液に溶解するか、あるいは重合途中に加熱溶融状態で、または溶媒に溶解して添加するか、あるいは回収系を出た後、加熱溶融状態で添加するか、あるいはゴム変性スチレン系樹脂(A)とテルペン樹脂をブレンドし、押出機で溶融混練りする方法で添加することが出来る。
【0013】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂(A)には、柔軟性を与えるため熱可塑性エラストマーを添加することができる。本発明に言う熱可塑性エラストマーはビニル芳香族炭化水素20〜50重量%、共役ジエンからなるブロック共重合体であり、ビニル芳香族炭化水素としてはスチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、p−メチルスチレン、また共役ジエンとしてはブタジエン、イソプレン等であり、SBR系の熱可塑性ゴムが一般的に用いられる。例えば旭化成工業(株)製タフプレンあるいは日本合成ゴム(株)製TRー2000、TR−2003などが挙げられるが、押出し成形時のゲル状物質発生防止および透明性保持の点からゴム変性スチレン系樹脂(A)100重量%に対し,15重量%以下が好ましく、より好ましくは10重量%以下が添加される。
【0014】
本発明の多層シートは、通常公知である多層シート製造装置により製造することができる。例えば基材層、表面層および接着層を同時に共押出しする方法、あるいは表面層となるポリエステル系樹脂と接着樹脂からなるフイルム状のものを共押出し成形などで予備成形、あるいは表面層となるポリエステルフイルムを予め用意し、接着層をコート、最終的に基材層となるゴム変性スチレン系樹脂のシーティング時に、熱ラミネートを施す方法などが挙げられる。
【0015】
【発明の実施の形態】
実施例で用いた測定方法を記す。
曇価はJISーK6714に準じ、積分球式光線透過率測定装置で測定した。
デュポン式衝撃値は、下記条件により試料が50%破壊するエネルギーを求めた。
【0016】
落錘ミサイル先端径:9.5mmφ
受け台半円径 :6.4mmR
落下高さ :20〜40cm
荷重 :任意に選択
引張弾性率はJISーK7161に準じ、測定し剛性の代用値とした。
【0017】
【実施例1】
撹拌機を備えた反応器2基を直列に連結し、スチレン42.5重量%、ブチルアクリレート9.1重量%、メチルメタアクリレート38.2重量%を混合し、更に、エチルベンゼン2.7重量%を加えた。この混合液にゴム7.5重量%を溶解分散させる。その後入り口温度が100℃、出口での温度が150℃に設定された連続重合槽で重合反応を行った後、未反応単量体を除去するために真空脱揮にかけ、残留揮発分を500ppm以下にした。
【0018】
上記操作にて得られたゴム変性スチレン系重合体100重量%に対し、テルペン樹脂5.0重量%を単軸押出し機で溶融混練り、造粒して表1に示すゴム変性スチレン系樹脂(組成物1とする)を得た。
この組成物1を基材層、非晶性ポリエステル系樹脂を表面層、変性オレフィン系樹脂を接着層として、共押出し多層シート設備にて3層の多層シートを得た。多層シートの全体厚さを0.3mm、表面層厚さが約50μm、接着層厚さが20μmになるように調整し、ほぼ目標通りのものが得られた。共押出しの樹脂溶融温度は200〜240℃であった。
得られた多層シートのデユポン衝撃強度、剛性(引張弾性率)、及び透明性(曇価)の測定結果も表1に示す。
【0019】
Figure 0003905169
【0020】
【実施例2】
テルペン樹脂を添加しない以外は実施例1と同様に操作し、表1に示したゴム強化スチレン系樹脂(組成物2)を得て、さらに実施例1と同様にして3層の多層シートを得た。
【0021】
【実施例3】
実施例2より得られた組成物100重量%に対し熱可塑性エラストマー(旭化成タフプレン126)5重量%を加え、これを実施例1と同様に溶融混練りしゴム強化スチレン系樹脂(組成物3)を得た。さらにその組成物3を使用し実施例1と同様にして3層の多層シートを得た。
【0022】
【比較例1】
重合時の撹拌機回転速度を速めた以外は実施例1と同様に操作し、表1に示したゴム強化スチレン系樹脂(組成物4)を得た。その組成物4を使用し実施例1と同様に3層の多層シートを得た。
【0023】
【比較例2】
ブチルアクリレート、およびメチルメタアクリレートを使用しない以外は、実施例1と同様に操作し、表1に示したゴム変性スチレン系樹脂(以下組成物5)を得た。その組成物5を使用し実施例1と同様に行い、3層の多層シートを得た。
【0024】
【比較例3】
スチレン21.6重量%、ブチルアクリレート10.2重量%、メチルメタアクリレート54.2重量%、エチルベンゼン10.3重量%、ゴム3.7重量%とした以外は、実施例1と同様に操作し、表1に示したゴム強化スチレン系樹脂(組成物6)を得た。その組成物6を使用し実施例1と同様に3層の多層シートを得た。
【0025】
【比較例4】
比較のために従来技術の透明性のスチレン系樹脂として代表される、ポリスチレン45重量%とスチレン・ブタジエンブロック共重合体55重量%を単軸押出機で溶融混練し、実施例1と同様に3層の多層シートを得た。
Figure 0003905169
【0026】
【比較例5】
エチレングリコールとテレフタル酸から構成されるポリエステル樹脂を表面層に使用し、実施例1と同様に多層シートを得ようとしたが、良好な3層の多層シートが得ることが出来なかった。
【0027】
【表1】
Figure 0003905169
【0028】
【発明の効果】
本発明の多層シートは、耐油性、耐傷性、ガスバリヤーに優れ、且つスチレン系樹脂の良成形性と打ち抜き加工性を合わせ持った透明なシートが得られる。このシートから得られる成形体は、食品、雑貨などの収納、包装用素材として有用なものとして利用できる。

Claims (5)

  1. ゴム変性スチレン系樹脂(A)を基材層にして、その片側もしくは両側に接着樹脂(B)層を介し、ポリエステル系樹脂(C)からなる表面層を積層してなる多層シートにおいて、
    (1)母相がスチレン系単量体30〜70重量%、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体70〜30重量%からなる共重合体100重量%に対し、分散相がスチレン単位20〜50重量%、ブタジエン単位80〜50重量%のスチレン・ブタジエンブロックゴム5〜15重量%を含み、かつ該ゴムが0.3〜1.5μmの粒子径で分散したゴム変性スチレン系樹脂(A)
    (2)カルボキシル基を有する変性ポリオレフィンである接着樹脂(B)
    )二価アルコール成分がエチレングリコール80〜50重量%と1,4−シクロヘキサンジメタノール20〜50重量%からなり、酸成分がテレフタル酸から成されるポリエステル系樹脂(C)
    であることを特徴とする多層シート。
  2. ゴム変性スチレン系樹脂(A)100重量%あたり、テルペン系樹脂を15重量%以下の割合で含有することを特徴とする請求項記載の多層シート。
  3. ゴム変性スチレン系樹脂(A)100重量%あたり、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体で、ビニル芳香族炭化水素含有量が20〜50重量%である熱可塑性エラストマーを15重量%以下の割合で含有することを特徴とする請求項1または2記載の多層シート。
  4. 多層シートの厚さ方向断面の表面層の厚さが、該多層シート全体厚さの30%以下であることを特徴とする請求項1、2または3記載の多層シート。
  5. 多層シートの透明性が、曇価10%以下(JIS−K6714)であることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の多層シート。
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