JP3905168B2 - ディスクブレーキ用キャリパ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、車両等に制動力を付与するのに好適に用いられるディスクブレーキ用キャリパに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ディスクの周方向に離間して該ディスクの外周を跨ぐように軸方向に伸長した一対の腕部を有する取付部材と、該取付部材の各腕部に摺動可能に支持され該各腕部間で前記ディスクの両側を跨ぐようになったキャリパと、該キャリパのシリンダ内に摺動可能に挿嵌されたピストンによって前記ディスクの両面側を押圧するインナ側およびアウタ側の摩擦パッドとからなるディスクブレーキは知られている。
【0003】
この種のディスクブレーキでは、ブレーキ操作時には前記キャリパのインナ側に設けたピストンが外部からの液圧供給によりディスク側に摺動して、キャリパのアウタ側との間で前記各摩擦パッドをディスクの表面に押圧し、該ディスクに制動力を与えるようにしている。
【0004】
また、前記キャリパは、ディスクの外周側を跨ぐブリッジ部の一側にシリンダ穴としてのシリンダボアが形成され、他側には爪部が形成されたキャリパ本体と、前記ディスクの周方向に離間して該キャリパ本体に設けられ、該キャリパ本体を前記取付部材の各腕部に対して摺動可能に取付けるためのピンボルト穴が形成された一対の取付部と、前記キャリパ本体のシリンダボア内に開口し、該シリンダボア内にブレーキ液圧を供給するためブレーキ配管等の外部配管が取付けられる配管口と、前記シリンダボア内のエア抜きを行うため前記キャリパ本体に形成されるブリーダ口とを備えている。
【0005】
ここで、ブレーキによる車両の制動時に、キャリパには摩擦パッドを介したディスクからの制動トルクが曲げモーメントとなって作用してしまう。このため、各摩擦パッドのうち、インナ側の摩擦パッドはディスクに対する面圧がディスクの回転方向入口側で大きくなり、出口側で小さくなる傾向にあり、これによって、インナ側の摩擦パッドは入口側で偏摩耗し易くなる。
【0006】
そこで、このような従来技術にあっては、前記シリンダボアを各取付部間で少なくともディスクの回転方向出口側寄りに偏心させる構成とし、これによって、ディスクに対するインナ側の摩擦パッドの面圧を入口側で小さくし、該摩擦パッドの偏摩耗を抑えるようにしている。
【0007】
また、前記ブリーダ口はシリンダボアの上方位置で開口するようにキャリパ本体に対して配設され、シリンダボア内のブレーキ液がブリーダ口から流出し始めたときにエア抜き作業を良好に完了できるようにしている。さらに、前記配管口はシリンダボアの中心に配設され、該シリンダボアの加工時に配管口のバリ取り等を同時に行えるようにしている。
【0008】
ここで、車両用のディスクブレーキはキャリパを含めて車両の足回り構造等に応じてディスクの前側に配設される場合(以下、前取付という)と、ディスクの後側に配設される場合(以下、後取付という)とがある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術によるディスクブレーキ用キャリパでは、シリンダボアを各取付部間で少なくともディスクの回転方向出口側寄りに偏心させ、これに伴って、シリンダボアの中心に設けた配管口を各取付部間の中央位置に対して偏心させる構成としている。
【0010】
このため、キャリパを前取付用のものに用いた場合には、配管口が各ピンボルト穴間の中央位置よりもディスクの周方向に関して下側となる位置に配設される。これに対しキャリパを後取付用のものに用いた場合には、配管口が各ピンボルト穴間の中央位置よりもディスクの周方向に関して上側となる位置に配設されてしまう。
【0011】
これによって、前取付用のキャリパと後取付用のキャリパとで、外部配管を配管口に向けて同じように引廻すことができず、同一の外部配管を使用することが難しくなり、配管作業に余分か手間がかかるために取付時の作業性が低下するという問題がある。
【0012】
また、キャリパ本体に設けるブリーダ口はシリンダボア内の上方位置で開口させる必要があるため、キャリパに対するブリーダ口の配設位置を前取付用のキャリパと後取付用のキャリパとで互いに変更せざるを得なくなり、これによって、両者のキャリパをそれぞれ別々の鋳型を用いて成形しなければならず、製作コストがかかり全体の生産性が大幅に低下するという問題がある。
【0013】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明は、前取付用のキャリパと後取付用のキャリパとで鋳型の共通化を図ることができ、全体の製作コストを大幅に削減できる上に、外部配管の配管作業等を容易に行うことができ、作業性を向上できるようにしたディスクブレーキ用キャリパを提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、本発明は、ディスクの外周側を跨ぐブリッジ部の一側にシリンダボアが形成され、他側には爪部が形成されたキャリパ本体と、前記ディスクの周方向に離間して該キャリパ本体に設けられ、該キャリパ本体を車両側の非回転部分に摺動可能に取付けるためのピンボルト穴が形成された一対の取付部と、前記キャリパ本体のシリンダボア内に開口し、該シリンダボア内にブレーキ液圧を供給するため、外部配管が取付けられる配管口と、前記シリンダボア内のエア抜きを行うため前記キャリパ本体に形成されるブリーダ口とを備え、前記シリンダボアの中心を前記各取付部間で少なくとも前記ディスクの回転方向出口側寄りに偏心させたディスクブレーキ用キャリパに適用される。
【0015】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記配管口は前記各ピンボルト穴間の中央位置となるように前記シリンダボアの中心に対し偏心させて前記シリンダボアの底部に開口し、前記キャリパ本体には前記ブリーダ口を形成するためのブリーダボスを前記シリンダボアの中心に対して左右対称となる位置にそれぞれ設けたことにある。
【0016】
上記構成により、外部配管用の配管口をシリンダボアの中心に対し偏心させて前記シリンダボアの底部に開口させ、各取付部のピンボルト穴間でその中央となる位置に配設することができるから、当該キャリパを前取付用に用いた場合でも、後取付用に用いた場合でも、前記配管口をディスクの中心に対して一定間隔をもった位置でほぼ同等の高さ位置に配設することができる。また、この場合には、各ブリーダボスのうち少なくともいずれか一方のブリーダボスを常にシリンダボアの上方位置に配置することができるから、上方となる方のブリーダボスにブリーダ口を設けることにより、シリンダボア内のエア抜き作業を良好に行うことができる。
【0017】
また、請求項2の発明では、前記キャリパ本体には、前記ブリッジ部に対するディスクパス部の加工時に該キャリパ本体を固定台上に固定するための固定面を複数個設け、該各固定面は、前記各ピンボルト穴間の中央位置を基準として左右対称な形状をなす第1の平面部と、前記キャリパ本体の爪部に設けられた切欠部の底部で前記シリンダボアの中心に対してずれた各ピンボルト穴間の中央位置に形成された第2の平面部とにより構成している。
【0018】
これにより、ディスクパス部の加工時にはキャリパ本体を治具等の固定台上で各固定面を介して容易に位置決めでき、ディスクパス部の加工を円滑に行うことができる。そして、例えばシリンダボアを各ピンボルト穴間の中央位置に配設した現行品タイプのキャリパに対しても、共通の固定台(治具)や可動クランプを用いることが可能となり、ディスクパス部の加工を段取り換えの必要なく行うことができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例の形態を添付図面に従って詳細に説明する。
【0020】
ここで、図1ないし図10は本発明の実施例による後取付の左車輪用のディスクブレーキを自動車に適用した場合を示している。
【0021】
図中、1は自動車の車輪と共に図1中の矢示A方向に回転するディスク、2は該ディスク1のインナ側に設けられる取付部材を示し、該取付部材2は図1に示す如く、ディスク1の周方向に離間してこのディスク1の外周を跨ぐように軸方向に伸長した一対の腕部2A,2Aと、該各腕部2Aの基端側を連結する連結部2B等とから一体形成されている。そして、取付部材2は連結部2Bに設けた一対のねじ穴2B1 を介して車両のナックル部(図示せず)等に一体的に取付られ、該ナックル部と共に非回転部分の一部を構成している。
【0022】
また、腕部2Aの基端側(インナ側)および先端側(アウタ側)には、略コ字形状をなしたパッドガイド部2A1 と、ディスク1の周方向内側に向けて突出したトルク受部2A2 (いずれもインナ側のみ図示)とが形成され、該各パッドガイド部2A1 には、後述の各パッドスプリング19を介して各摩擦パッド17の耳部18Aが摺動可能に係合されている。
【0023】
そして、各腕部2Aはパッドガイド部2A1 により、各摩擦パッド17をディスク1の軸方向へ摺動可能に案内すると共に、トルク受部2A2 により摩擦パッド17を介したディスク1からのトルクを受承するものである。さらに、各腕部2Aには摺動ピン用の挿嵌穴(図示せず)がディスク1の軸方向に向けて形成されている。
【0024】
3は取付部材2に対して摺動可能に支持されたキャリパを示し、該キャリパ3は、後述するキャリパ本体4と、ディスク1の周方向で離間して該キャリパ本体4に一体に設けられた各取付部5,6等から構成されている。
【0025】
4は各取付部5,6を介して取付部材2に摺動可能に支持されるキャリパ本体4で、該キャリパ本体4は図2ないし図5に示す如く、取付部材2の各腕部2A間でディスク1の外周側を跨ぐように延びたブリッジ部4Aと、ディスク1のインナ側で該ブリッジ部4Aの一側に一体形成されたインナ脚部4Bと、ブリッジ部4Aの他側からディスク1の径方向内向きに延設され、ディスク1のアウタ側に配設されたアウタ脚部4Cとから構成されている。
【0026】
また、前記ブリッジ部4Aの内周側には、図2に示す如くインナ脚部4Bとアウタ脚部4Cとの間に位置して横断面が略コ字形状をなしたディスクパス部4Dが形成されると共に、前記インナ脚部4Bの内周側にはシリンダボア4B1 が形成されている。そして、シリンダボア4B1 の中心Oはインナ脚部4Bの中央を通る中心線O1 −O1 上に配設され、後述するピンボルト穴5A,6A間の中心線O2 −O2 に対して一定の寸法δ分だけ偏心している。
【0027】
また、前記アウタ脚部4Cは図4に示すように二又形状をなした一対の爪部4C1 ,4C2 からなり、該爪部4C1 ,4C2 はその両者間の部位が逆U字状をなした切欠部4C3 となっている。ここで、該爪部4C1 ,4C2 のうち爪部4C1 は、ディスク1の周方向での肉厚が爪部4C2 よりも大きめに形成され、爪部4C1 の剛性を全体的にアップさせる構成となっている。
【0028】
そして、キャリパ本体4にはインナ脚部4Bの左右両側に一対の取付部5,6がディスク1の周方向に向けて突設され、該取付部5,6にはそれぞれの突出端側にピンボルト穴5A,6Aが穿設されている。そして、該ピンボルト穴5A,6Aにはそれぞれピンボルト7,7を介して前記摺動ピンが固着され、これらの各摺動ピンがそれぞれ各腕部2A(取付部材2)の挿嵌穴内に挿嵌されることにより、キャリパ本体4は各腕部2Aに対してディスク1の軸方向に摺動可能に取付けられる。
【0029】
ここで、左,右の取付部5,6のうち左側の取付部5は図3および図4に示すように、インナ脚部4Bからの突出寸法が右側の取付部6よりも一定寸法だけ長く形成されている。従って、シリンダボア4B1 は、その中心Oがピンボルト穴5A,6A間の中央位置となる中心線O2 −O2 に対してディスク1の回転方向(図4中の矢示A方向)出口側寄りに寸法δ分だけ偏心して配設される。
【0030】
8はキャリパ本体4のインナ脚部4B端面に設けられたねじ座を示し、該ねじ座8は外形状が略U字状をなし、その外縁部には一対の突起部8A,8Aが突設されている。そして、該ねじ座8はその中心側に後述するブレーキ配管20用の配管口9が穿設され、各突起部8A間には後述するブレーキ配管20の係合突起20Bが遊嵌状態で取付けられる。
【0031】
また、9はキャリパ本体4のシリンダボア4B1 内に開口するようにインナ脚部4Bに設けられた配管口を示し、該配管口9は図1ないし図5に示す如く、インナ脚部4Bに設けたねじ座8の中心側をシリンダボア4B1 内に向けて貫通したねじ穴として形成されている。そして、配管口9はシリンダボア4B1 の底部側に開口することにより、ブレーキ配管20からのブレーキ液圧を該シリンダボア4B1 内に給排させる構成となっている。
【0032】
ここで、配管口9は図3および図4に示す如くピンボルト穴5A,6A間の中心線O2 −O2 線上に配設され、この中心線O2 −O2 に対しピンボルト穴5A,6Aは同一の寸法Lをもって左右対称位置に配設されている。そして、配管口9は、前記シリンダボア4B1 の中心線01 −O1 に対し寸法δ分だけディスク1の回転方向入口側寄りに偏心している。また、ねじ座8は各突起部8Aおよび配管口9を含めた全体形状が、中心線O2 −O2 に対して左右対称形状をなすように形成されている。
【0033】
10,11はキャリパ本体4のインナ脚部4B周壁面に突設された一対のブリーダボス、12はブリーダボス10,11のうち右側のブリーダボス10に形成されたブリーダ口を示し、該ブリーダ口12は前記配管口9と共にシリンダボア4B1 の上方位置で開口することにより該シリンダボア4B1 内のエア抜きを行うものである。
【0034】
ここで、ブリーダボス10,11は図3ないし図5に示す如く、シリンダボア4B1 の中心線O1 −O1 に対して左右対称となる位置にそれぞれ離間して配設される構成となっている。
【0035】
13,13は後述の平面部14と共に第1の平面部を構成する一対の平面部で、該各平面部13は、インナ脚部4B側で左右に離間してキャリパ本体4のブリッジ部4Aに設けられ、後述の固定面を構成するものである。ここで、該各平面部13は図5に示す如く、外形が略正方形状をなした平坦面として形成されている。そして、該各平面部13は図5に示すように、各ピンボルト穴5A,6Aの中心線O2 −O2 に対して左右対称となる位置に配設されている。
【0036】
14は前述した一対の平面部13,13と共に第1の平面部を構成する他の平面部で、該平面部14はアウタ脚部4C側に位置してキャリパ本体4のブリッジ部4Aに設けられ、その外形は略長方形状をなした平坦面として形成されている。ここで、該平面部14は、図5に示すように中心線O2 −O2 に対して左右対称な形状に形成されている。
【0037】
15はキャリパ本体4のアウタ脚部4Cに設けられた第2の平面部で、該平面部15は爪部4C1 ,4C2 間に位置する切欠部4C3 の底部に平坦面として形成され、ディスク1の軸方向に対して一定の幅寸法を有している。ここで、該平面部15は前記平面部14と同様に中心線O2 −O2 に対して左右対称な形状となっている。
【0038】
そして、これらの平面部13,14,15は、後述するようにシリンダボア4B1 の加工時にキャリパ本体4を固定台32上に固定するための平坦な固定面を構成するものである。
【0039】
16はキャリパ3のシリンダボア4B1 内に摺動可能に挿嵌されたピストンを示し、該ピストン16は図2に示す如く有蓋筒状に形成され、前記シリンダボア4B1 内に供給されるブレーキ配管20からのブレーキ液圧により該シリンダボア4B1 内を軸方向に摺動変位し、アウタ脚部4Cとの間で後述の各摩擦パッド17をディスク1の両面側に押圧するものである。
【0040】
17,17はディスク1の両側に配置されたインナ側およびアウタ側の摩擦パッドを示し、該各摩擦パッド17は図1および図2に示す如く平板状をなし、その裏面側には裏金18,18が重なり合うように固着されている。また、各摩擦パッド17には裏金18の長さ方向両端側に各耳部18A,18A(1個にみ図示)が突設され、各耳部18Aは略凸状に折曲げられたパッドスプリング19を介して取付部材2の各パッドガイド部2A1 に挿嵌されている。
【0041】
そして、各摩擦パッド17は各耳部18Aを介して各パッドガイド部2A1 に摺動可能に支持され、ディスク1に制動力を付与すべく、キャリパ3によってディスク1の両面に押圧されるものである。
【0042】
20はキャリパ3のシリンダボア4B1 内にブレーキ液圧を供給するために配管口9に接続された外部配管としてのブレーキ配管を示し、該ブレーキ配管20は図1および図2に示す如く、その一端側に設けた取付口20Aが配管口9に締着され、他端側は車両に設けたブレーキベダル側のマスタシリンダ(図示せず)等に接続される。また、ブレーキ配管20の取付口20Aには係合突起20Bが突設され、該係合突起20Bは各突起部8A,8A間に遊嵌状態で挿入されている。そして、ブレーキ配管20は係合突起20Bが各突起部8Aに係合することにより、ブレーキ配管20と一体となった取付口20Aが配管口9に対し不用意に回動するのが規制される。
【0043】
本実施例によるディスクブレーキは、上述の如き構成を有するもので、車両のブレーキ操作時には、キャリパ3のインナ脚部4B内に設けたピストン16が外部から供給されるブレーキ液圧によりディスク1側に押圧され、これに伴って取付部材2の各腕部2A間に設けた各摩擦パッド17が各パッドスプリング19を介してディスク1側に向け押付けられることにより、前記ピストン16とアウタ脚部4Cとの間で各摩擦パッド17によりディスク1を強く挟持し、該ディスク1は制動力が与えられる。
【0044】
ここで、車両のブレーキ操作時にキャリパ3には各摩擦パッド17を介したディスク1からの制動トルクが曲げモーメントとなって図5中の矢示M方向に作用してしまう。このため、各摩擦パッド17のうち、インナ側の摩擦パッド17はディスクに対する面圧がディスクの回転方向(矢示A方向)入口側で大きくなり、出口側で小さくなる傾向にあり、アウタ側の摩擦パッド17はディスク1の回転方向入口側で小さくなり、出口側で大きくなる傾向にある。
【0045】
しかし、ピストン16はキャリパ3のシリンダボア4B1 と共にディスク1の回転方向出口側寄りに偏心した状態で配設されているから、ディスク1に対するインナ側の摩擦パッド17の面圧をディスク1の回転方向入口側で小さくすることができ、これによって該摩擦パッド17の偏摩耗を防止できる。
【0046】
また、キャリパ3の爪部4C1 ,4C2 のうち爪部4C1 の肉厚を爪部4C2 よりもディスク1の周方向で大きめに形成し、爪部4C1 は剛性が高くなっているから、ディスク1に対するアウタ側の摩擦パッド17の面圧をディスク1の回転方向出口側で小さくすることができ、これによりアウタ側でも摩擦パッド17の偏摩耗を防止することができる。
【0047】
次に、キャリパ3の製造工程について説明するに、まず、キャリパ3の成形工程では、キャリパ3を鋳造等の手段を用いて図6ないし図8に示す如く鋳物31として成形する。
【0048】
次に、穴あけ工程では、取付部5′,6′にドリル等を用いてそれぞれピンボルト穴5A,6Aを加工する。また、これと同様にしてねじ座8の中心側には配管口9を加工し、ブリーダボス10にはブリーダ口12を形成する。また、ねじ座8には各突起部8Aを切削加工等で形成する。
【0049】
次に、ディスクパス加工工程では後述のディスクパスカッター34等を用いて鋳物31にディスクパス部4Dを下記のように加工する。
【0050】
即ち、図10に示すようにキャリパ本体4(鋳物31)を固定するための治具となる固定台32と可動クランプ33とを予め用意しておく。そして、該固定台32はキャリパ本体4の平面部13,14と対応した位置にそれぞれ各支持部32A,32B(2個のみ図示)等を備えている。また、可動クランプ33は平面部15と対向した位置に押圧部33A等を備え、全体が上下に昇降可能に駆動される。そして、鋳物31をブリッジ部4A側を下向きにして平面部13,14を各支持部32A,32B上に載置することにより、キャリパ31を固定台32上で支持する。
【0051】
次に、可動クランプ33を下向きに下降させ、押圧部33Aで平面部15を下向きに押圧することにより、鋳物31を前記各支持部32A,32Bと押圧部33Aとの間で保持した状態で固定台32上に位置決め固定する。そして、この状態でブリッジ部4Aの内周側に円盤状のディスクパスカッター34等を送り込むことにより、該ブリッジ部4Aにディスクパス部4Dを形成する。
【0052】
次に、シリンダ加工工程では、キャリパ本体4のインナ脚部4B内周側に旋盤等を用いてシリンダボア4B1 を形成する。
【0053】
ところで、当該ディスクブレーキを車両に取付けるときには図9に示す如く、一般にキャリパ3をディスク1の後側に配置する場合(以下、後取付という)と、キャリパ3′を前側に配置する場合(以下、前取付という)とがある。
【0054】
ここで、後取付のキャリパ3は図9に示す如く、取付部5が下側に取付部6が上側に配置されるため、シリンダボア4B1 の中心Oがピンボルト穴5A,6A間の中心線O2 −O2 よりもディスク1の周方向に関して上側となる位置に配設される。また、前取付のキャリパ3′については取付部5が上側に取付部6が下側に配置されるため、シリンダボア4B1 の中心Oが中心線O2 −O2 よりもディスク1の周方向に関して下側となる位置に配設される。
【0055】
然るに本実施例では、配管口9をシリンダボア4B1 の中心Oに対して寸法δ分だけディスク1の回転方向入口側寄りに偏心させることにより、この配管口9をピンボルト穴5A,6A間の中心線O2 −O2 上に配置する構成としたから、後側のキャリパ3についても前側のキャリパ3′についても、各配管口9をそれぞれディスク1の中心O3 から一定の間隔をもった位置でほぼ同等の高さ位置に配設することができる。しかも、各突起部8Aを含めたねじ座8の全体形状を前記中心線O2 −O2 に対して左右対称形状をなすように形成したから、各ねじ座8をディスク1の径方向に配向することができる。
【0056】
この結果、図9に示すようにキャリパ3,3′に対してはブレーキ配管20,20′をそれぞれ各配管口9に向けて同じように引廻すことができ、これによって、取付口20A,20A′に対して同一のブレーキ配管20を用いることができ、配管作業を容易に行うことができ、作業者の負担を大幅に軽減して全体の作業性を大幅に向上することができる。
【0057】
また、ブリーダボス10,11をシリンダボア4B1 (キャリパ本体4)の中心線O1 −O1 に対して左右対称となる位置に配設する構成としたから、図9に示すように後取付のキャリパ3については、ブリーダボス10,11のうち上方に位置したブリーダボス10にブリーダ口12を形成することにより、該ブリーダ口12をシリンダボア4B1 内の上方位置で開口させることができる。
【0058】
また、キャリパ3′については、上方に位置したブリーダボス11にブリーダ口12を形成することにより、該ブリーダ口12をシリンダボア4B1 の上方位置で開口させることができる。これによって、前記各シリンダボア4B1 内のエア抜きを作業を良好に行うことができる。
【0059】
従って、本実施例によれば、後取付用としてのキャリパ3と前取付用としてのキャリパ3′とをそれぞれ共通の鋳物31によって容易に製作することができ、該キャリパ3,3′についての鋳型の共通化を図ることができ、製作コスト等を大幅に削減することができ、生産性を確実に向上することができる。
【0060】
また、キャリパ本体4には平面部13,14,15を各ピンボルト穴6A間の中心線O2 −O2 に対して実質的に左右対称な形状をなすように形成したから、例えばシリンダボア4B1 を中心線O2 −O2 上に配設した現行品タイプのキャリパに対しても、共通の固定台32および共通の可動クランプ33を用いることができ、ピンボルト穴5A,6A等の加工を現行品と同一の製造ライン上で固定台32等の段取り換え等を行うことなく実施できる。
【0061】
さらに、ディスクパス部4Dの加工時にも前取付のキャリパ3′と後取付のキャリパ3とに対して固定台32等の段取り換えを行うことなく、それぞれのディスクパス部4Dを、ディスク1の中心O3 (図9参照)の回りで円弧形状をなすように形成でき、これによっても製造時の作業性を向上できる。
【0062】
さらにまた、本実施例では、左車輪用のキャリパ3について述べたが、右車輪用のキャリパについても同様にして成形加工することができる。そして、この場合にもディスクパス部4Dの加工時に固定台32等の段取り換えを行うことなく、左車輪用と右車輪用のキャリパに対しても同一の製造ライン上でディスクパス部4Dの加工を容易に行うことができ、全体の生産効率等を確実に向上することができる。
【0063】
なお、前記実施例では、当該ディスクブレーキを自動車等の車両に適用するものとして述べたが、本発明はこれに限らず、例えば、車両以外のブレーキ装置に適用するようにしてもよい。
【0064】
【発明の効果】
以上詳述した通り本発明によれば、請求項1に記載の如く、キャリパ本体のシリンダボア中心を各取付部のピンボルト穴間で少なくともディスクの回転方向出口側寄りに偏心させ、配管口を前記シリンダボアの底部で各ピンボルト穴間の中央位置に配設すると共に、ブリーダボスをシリンダボアの中心に対して左右対称となる位置にそれぞれ設ける構成としたから、当該キャリパをディスクに対して前取付で取付ける場合でも、後取付で取付ける場合でも、それぞれの配管口に対して共通のブレーキ配管を同じように引廻して取付けることができる上に、それぞれのキャリパに対して各ブリーダボスのうち上方となる方のブリーダボスにブリーダ口を形成することにより、シリンダボア内のエア抜き作業を容易に行うことができる。
【0065】
従って、前取付用のキャリパと後取付用のキャリパとで鋳物を兼用することができ、両者間で鋳型の共通化を図ることができ、製作コスト等を大幅に削減することができる。
【0066】
また、請求項2の発明では、ディスクパス部の加工時にキャリパ本体を固定台上に固定するための固定面を、各ピンボルト穴間の中央位置を基準として左右対称な形状をなす第1の平面部と、前記キャリパ本体の爪部に設けられた切欠部の底部で前記シリンダボアの中心に対してずれた各ピンボルト穴間の中央位置に形成された第2の平面部とにより構成したから、当該キャリパを現行品のキャリパと共通の固定台や可動クランプを用いてディスクパス部の加工を行うことができ、製造工程における作業性や品質管理上の信頼性等を確実に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例によるディスクブレーキを示す正面図である。
【図2】図1中の矢示II−II方向からみた拡大断面図である。
【図3】図1中のキャリパを単体で示す正面図である。
【図4】図3に示すキャリパの背面図である。
【図5】図3に示すキャリパの平面図である。
【図6】図3中のキャリパを加工前の鋳物の状態で示す正面図である。
【図7】図6に示すキャリパの背面図である。
【図8】図6に示すキャリパの平面図である。
【図9】図1中のディスクブレーキをディスクに対して前側位置で取付けた状態と後側位置で取付けた状態とを示す説明図である。
【図10】キャリパにディスクパス部を形成する状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 ディスク
2 取付部材(非回転部分)
3 キャリパ
4 キャリパ本体
4A ブリッジ部
4B1 シリンダボア
4C1 ,4C2 爪部
4D ディスクパス部
5,6 取付部
5A,6A ピンボルト穴
9 配管口
10,11 ブリーダボス
12 ブリーダ口
13,14 第1の平面部(固定面)
15 第2の平面部(固定面)
20 ブレーキ配管(外部配管)
32 固定台
Claims (2)
- ディスクの外周側を跨ぐブリッジ部の一側にシリンダボアが形成され、他側には爪部が形成されたキャリパ本体と、前記ディスクの周方向に離間して該キャリパ本体に設けられ、該キャリパ本体を車両側の非回転部分に摺動可能に取付けるためのピンボルト穴が形成された一対の取付部と、前記キャリパ本体のシリンダボア内に開口し、該シリンダボア内にブレーキ液圧を供給するため、外部配管が取付けられる配管口と、前記シリンダボア内のエア抜きを行うため前記キャリパ本体に形成されるブリーダ口とを備え、前記シリンダボアの中心を前記各取付部間で少なくとも前記ディスクの回転方向出口側寄りに偏心させたディスクブレーキ用キャリパにおいて、
前記配管口は前記各ピンボルト穴間の中央位置となるように前記シリンダボアの中心に対し偏心させて前記シリンダボアの底部に開口し、前記キャリパ本体には前記ブリーダ口を形成するためのブリーダボスを前記シリンダボアの中心に対して左右対称となる位置にそれぞれ設けたことを特徴とするディスクブレーキ用キャリパ。 - 前記キャリパ本体には、前記ブリッジ部に対するディスクパス部の加工時に該キャリパ本体を固定台上に固定するための固定面を複数個設け、該各固定面は、前記各ピンボルト穴間の中央位置を基準として左右対称な形状をなす第1の平面部と、前記キャリパ本体の爪部に設けられた切欠部の底部で前記シリンダボアの中心に対してずれた各ピンボルト穴間の中央位置に形成された第2の平面部とにより構成してなる請求項1に記載のディスクブレーキ用キャリパ。
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