JP3984123B2 - ピンスライド型車両用ディスクブレーキ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車や自動二輪車等の各種走行車両に用いられるピンスライド型ディスクブレーキであって、詳しくは、車体側のキャリパブラケットにスライドピンを介してディスク軸方向へスライド可能に支持されるキャリパボディのトルク受け構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の車両に用いられるピンスライド型のディスクブレーキは、ディスクロータの一側部で車体に固設されるキャリパブラケットをディスクロータの外周を跨いで配設し、該キャリパブラケットのディスク回入側と回出側とに一対のガイド孔をディスク軸方向に貫通形成し、各ガイド孔に挿通したガイドスリーブの両端と、該ガイドスリーブにスライド可能に挿通したスライドピンの両端を、それぞれディスクロータの両側部に位置するキャリパボディの作用部と反作用部とに固定することにより、キャリパボディを前記キャリパブラケットに一対のスライドピンを介してディスク軸方向へスライド可能に支持している。
【0003】
キャリパボディの作用部と反作用部との間には、ディスクロータを挟んで一対の摩擦パッドが配設され、作用部側の摩擦パッドは、キャリパブラケットのパッド収容溝にディスク軸方向へスライド可能に収容され、また、反作用部側の摩擦パッドは、反作用部のパッド取付凹部に一体に組み込まれている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開昭52−97079号公報(第2−4頁、第1図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような構成にあっては、制動時の摩擦パッドそれぞれにディスクロータとの摺接による制動トルクが発生し、作用部側の摩擦パッドの制動トルクは、パッド収容溝のディスク回出側面からキャリパブラケットへ伝達されるが、反作用部側の摩擦パッドの制動トルクは、反作用部のパッド取付凹部のディスク回出側に伝達されるため、キャリパボディには、ディスク回入側を反作用部方向へ、またディスク回出側を作用部方向へ挙動させようとする曲げモーメントを生じ、キャリパボディをディスク軸に対して傾かせて、キャリパボディのスライドを阻害したり、摩擦パッドのライニングの偏摩耗やブレーキ鳴きの原因となる。
【0006】
また、ガイドスリーブとスライドピンは、トルク受け部であるパッド収容溝やパッド取付凹部のディスク回転方向後ろ側に配設されているために、制動トルクの影響を受けやすく、ガイドスリーブやスライドピンがこの制動トルクによって変形し、キャリパボディのスライド性を損なう虞がある。
【0007】
そこで本発明は、制動トルクを起因とするキャリパボディの傾動を極力抑制して、摩擦パッドのライニングの偏摩耗やブレーキ鳴きの発生を有効に防止し、また制動トルクによるガイドスリーブやスライドピンの変形を極力防止して、キャリパボディのスライド性を確保することのできるピンスライド型車両用ディスクブレーキを提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、キャリパボディに、ディスクロータの一側部に配設される作用部及び他側部に配設される反作用部並びにこれらを前記ディスクロータの外周を跨いで連結するブリッジ部とを備え、前記ディスクロータの一側部で車体に固設されるキャリパブラケットのディスク回入側及び回出側に、前記ブリッジ部を挟んで、前記ディスクロータの外周をディスク軸方向へ跨ぐ一対のキャリパ支持腕を形成し、該キャリパ支持腕にガイド孔をディスク軸方向に貫通形成し、該ガイド孔にガイドスリーブをディスク軸方向へスライド可能に挿通すると共に、ディスクロータの外周を跨いで配設されるキャリパボディの作用部と反作用部のディスク回入側及び回出側にそれぞれ突設した取り付け腕に、軸部を前記ガイドスリーブに挿通させたスライドピンをそれぞれ取り付け、該スライドピンを介して前記キャリパブラケットに前記キャリパボディをディスク軸方向にスライド可能に取り付け、前記作用部と反作用部との間にディスクロータを挟んで対向配置される一対の摩擦パッドを備えたピンスライド型車両用ディスクブレーキにおいて、前記キャリパブラケットのディスク回入側と回出側とに、前記一対の摩擦パッドからの制動トルクを支承するトルク受け部をそれぞれ形成し、前記一対のキャリパ支持腕の先端を前記ディスクロータの他側部でディスク内方へ折り曲げて形成し、該折り曲げて形成した一部を、ディスクロータの外側で、作用部及び反作用部のディスク回入側にそれぞれ突設した前記取り付け腕の間並びに作用部及び反作用部のディスク回出側にそれぞれ突設した前記取り付け腕の間にそれぞれ突出させ、前記ガイドスリーブの長さを、前記作用部の取り付け腕と反作用部の取り付け腕との間隔と同一長さで形成して、前記ガイド孔にスライド可能に挿通された前記ガイドスリーブの両端を作用部と反作用部との前記取り付け腕にて挟持し、前記作用部のピン挿通孔から前記ガイドスリーブに挿通した前記スライドピンの先端のおねじを前記反作用部のめねじ孔に螺着して、前記キャリパボディに前記スライドピンを前記ピンガイドスリーブと一体に組み付け、前記スライドピンを、前記トルク受け部よりもディスク外周側で且つキャリパ中心側に設けたことを特徴としている。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一形態例を図面に基づいて説明する。
ディスクブレーキ1は、自動車用のピンスライド型ディスクブレーキで、キャリパボディ2は、矢印A方向に回転するディスクロータ3の一側部で車体に固設されるキャリパブラケット4に、一対のスライドピン5,5を介してディスク軸方向へスライド可能に支持されている。
【0010】
キャリパボディ2は、ディスクロータ3の一側部に配設される作用部2aと、ディスクロータ3の他側部に配設される反作用部2bと、これらをディスクロータ3の外周を跨いで連結するブリッジ部2cとを備えている。作用部2aにはシリンダ孔6が形成され、該シリンダ孔6にピストン7が液密且つスライド可能に内挿され、シリンダ孔6の底部とピストン7との間に液圧室8が画成されている。反作用部2bには、反力爪2fが形成され、また、作用部2aと反作用部2bとの間には、一対の摩擦パッド9,9がディスクロータ3を挟んで対向配置されている。
【0011】
作用部2aのディスク回入側と回出側には一対の取り付け腕2d,2dが、反作用部2bのディスク回入側と回出側には一対の取り付け腕2e,2eが、それぞれ突設されており、各取り付け腕2dにはピン挿通孔10が、また各取り付け腕2eには、スライドピン5を螺着するためのめねじ孔11が同軸上に形成されている。
【0012】
キャリパブラケット4は、一対のウェブ4a,4aの一端間をビーム4bでつないだコ字状に形成され、車体取付孔12,12に挿通される固定ボルト(図示せず)を車体に螺着して、前述のごとくディスクロータ3の一側部に配設されており、ディスク回入側と回出側に配設されるウェブ4a,4aには、キャリパ支持腕4c,4cが連設されている。キャリパ支持腕4c,4cは、キャリパボディ2のブリッジ部2cのディスク回入側と回出側を挟みながら、ディスクロータ3の外周をディスク軸方向へ跨ぎ、その先端をディスクロータ3の他側部でディスク内方へ折り曲げて形成されており、さらにその一部をディスクロータ3の外側で、作用部2aの取り付け腕2d,2dと反作用部2bの取り付け腕2e,2eとの間に突出させている。
【0013】
ディスクロータ3の一側部に位置するキャリパブラケット4のウェブ4a,4aには、パッド装着凹部13a,13bが作用部2aを挟んで相対向して設けられ、ディスクロータ3の他側部に位置するキャリパ支持腕4c,4cの先端には、パッド装着凹部14a,14bが反作用部2bを挟んで相対向して設けられており、これらパッド装着凹部13a,13b,14a,14bを、摩擦パッド9,9からの制動トルクを支承するトルク受け部となしている。
【0014】
前記摩擦パッド9は、ディスクロータ3の側面と摺接するライニング9aを金属製の裏板9bに貼着して構成され、裏板9bの両側部に突出する耳片9c,9cをウェブ4a,4aとキャリパ支持腕4c,4cのパッド装着凹部13a,13b,14a,14bに係止して、ディスク軸方向へスライド可能に吊持されている。
【0015】
各キャリパ支持腕4cのディスク外側部分には、ガイド孔15がキャリパボディ2のピン挿通孔10及びめねじ孔11と同軸上にそれぞれ貫通形成されており、該ガイド孔15にガイドスリーブ16がディスク軸方向へスライド可能に挿通され、さらにガイドスリーブ16に前記スライドピン5がディスク軸方向へスライド可能に挿通されている。
【0016】
各ガイドスリーブ16は、作用部2aの取り付け腕2dと反作用部2cの取り付け腕2dとの間隔と同一長さで形成されており、ガイドスリーブ16の両端を取り付け腕2c,2dとで挟持している。ガイド孔15から突出するガイドスリーブ16の両端部は、それぞれブーツ17に被われており、ガイドスリーブ16がガイド孔15を摺動した際にガイド孔15の内部に塵埃を咬み込まないようにしている。
【0017】
スライドピン5は、軸部5aを作用部2aのピン挿通孔10からガイドスリーブ16に挿通し、先端のおねじ5bを反作用部2bのめねじ孔11に螺着して、キャリパボディ2にガイドスリーブ16と一体に組み付けされる。スライドピン5とガイドスリーブ16とは、この取り付けによって、トルク受け部であるパッド装着凹部13a,13b,14a,14bよりもディスク外周側で且つキャリパ中心側に配設され、またキャリパボディ2が、キャリパブラケット4にスライドピン5,5を介してディスク軸方向にスライド可能に支持される。
【0018】
本形態例のディスクブレーキ1は、以上のように形成されており、運転者の制動操作によって、別途の図示しない液圧マスタシリンダで昇圧された作動液がキャリパボディ2の液圧室8に供給されると、液圧室8の拡大によって、ピストン7がシリンダ孔6を開口部方向へ前進し、作用部2a側の摩擦パッド9を押動して、該摩擦パッド9のライニング9aをディスクロータ3の一側面へ押圧する。次に、この反作用によって、キャリパボディ2がスライドピン5,5に案内されながら作用部2a方向へ移動して、反力爪2fが反作用部2b側の摩擦パッド9を押動し、該摩擦パッド9のライニング9aをディスクロータ3の他側面へ押圧して制動作用が行われる。
【0019】
制動時の摩擦パッド9,9は、ディスクロータ3との摺接によって発生した制動トルクによってディスク回出方向へ引き摺られ、裏板の9b,9bのディスク回出側の耳片9c,9cがウェブ4aとキャリパ支持腕4cのパッド装着凹部13b,14bに当接する。すなわち、作用部側と反作用部側の摩擦パッド9,9の制動トルクは、いずれも車体に取り付けされた高剛性のキャリパブラケット4に伝達され、キャリパボディ2には直接作用しない。
【0020】
したがって、キャリパボディ2には、摩擦パッド9,9からの制動トルクを起因とする曲げモーメントが発生しないので、制動及び制動解除時のキャリパボディ2をディスク軸方向へ円滑にスライドさせることができ、また摩擦パッド9のライニング9aの偏摩耗やブレーキ鳴きを有効に防止することができる。
【0021】
さらに本形態例は、スライドピン5とガイドスリーブ16とを、トルク受け部であるパッド装着凹部13a,13b,14a,14bよりもディスク外周側で且つキャリパ中心側に配設したので、これらをトルク受け部のディスク回転方向後側に配設した従来品に較べると、スライドピン5やガイドスリーブ16が制動トルクからの影響を受けにくくなり、スライドピン5やガイドスリーブ16の変形を防止できて、キャリパボディ2のスライド性を有効に確保することができるようになる。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のピンスライド型車両用ディスクブレーキによれば、制動時のキャリパボディに、摩擦パッドからの制動トルクを起因とする曲げモーメントが発生しなくなるので、キャリパボディをディスク軸方向へ円滑にスライドさせることができ、また摩擦パッドのライニングの偏摩耗やブレーキ鳴きを有効に防止することができる。
【0023】
また、スライドピンやガイドスリーブを、トルク受け部よりもディスク外周側で且つキャリパ中心側に配設することにより、スライドピンやガイドスリーブが制動トルクの影響を受けにくくなり、スライドピンやガイドスリーブの変形を極力防止して、キャリパボディのスライド性を有効に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一形態例を示すディスクブレーキの半断面正面図
【図2】 本発明の一形態例を示すディスクブレーキの半断面背面図
【図3】 本発明の一形態例を示すディスクブレーキの一部断面平面図
【図4】 本発明の一形態例を示すディスクブレーキの断面平面図
【符号の説明】
1…ディスクブレーキ、2…キャリパボディ、2a…作用部、2b…反作用部、2c…ブリッジ部、2d,2e…取り付け腕、2f…反力爪、3…ディスクロータ、4…キャリパブラケット、4c…キャリパ支持腕、5…スライドピン、9…摩擦パッド、10…ピン挿通孔、11…めねじ孔、13a,13b,14a,14b…パッド装着凹部(本発明のトルク受け部)、15…ガイド孔、16…ガイドスリーブ
Claims (1)
- キャリパボディに、ディスクロータの一側部に配設される作用部及び他側部に配設される反作用部並びにこれらを前記ディスクロータの外周を跨いで連結するブリッジ部とを備え、前記ディスクロータの一側部で車体に固設されるキャリパブラケットのディスク回入側及び回出側に、前記ブリッジ部を挟んで、前記ディスクロータの外周をディスク軸方向へ跨ぐ一対のキャリパ支持腕を形成し、該キャリパ支持腕にガイド孔をディスク軸方向に貫通形成し、該ガイド孔にガイドスリーブをディスク軸方向へスライド可能に挿通すると共に、ディスクロータの外周を跨いで配設されるキャリパボディの作用部と反作用部のディスク回入側及び回出側にそれぞれ突設した取り付け腕に、軸部を前記ガイドスリーブに挿通させたスライドピンをそれぞれ取り付け、該スライドピンを介して前記キャリパブラケットに前記キャリパボディをディスク軸方向にスライド可能に取り付け、前記作用部と反作用部との間にディスクロータを挟んで対向配置される一対の摩擦パッドを備えたピンスライド型車両用ディスクブレーキにおいて、前記キャリパブラケットのディスク回入側と回出側とに、前記一対の摩擦パッドからの制動トルクを支承するトルク受け部をそれぞれ形成し、前記一対のキャリパ支持腕の先端を前記ディスクロータの他側部でディスク内方へ折り曲げて形成し、該折り曲げて形成した一部を、ディスクロータの外側で、作用部及び反作用部のディスク回入側にそれぞれ突設した前記取り付け腕の間並びに作用部及び反作用部のディスク回出側にそれぞれ突設した前記取り付け腕の間にそれぞれ突出させ、前記ガイドスリーブの長さを、前記作用部の取り付け腕と反作用部の取り付け腕との間隔と同一長さで形成して、前記ガイド孔にスライド可能に挿通された前記ガイドスリーブの両端を作用部と反作用部との前記取り付け腕にて挟持し、前記作用部のピン挿通孔から前記ガイドスリーブに挿通した前記スライドピンの先端のおねじを前記反作用部のめねじ孔に螺着して、前記キャリパボディに前記スライドピンを前記ピンガイドスリーブと一体に組み付け、前記スライドピンを、前記トルク受け部よりもディスク外周側で且つキャリパ中心側に設けたことを特徴とするピンスライド型車両用ディスクブレーキ。
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