JP3905044B2 - センタバルブ型車両用液圧マスタシリンダ - Google Patents

センタバルブ型車両用液圧マスタシリンダ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種走行車両のブレーキやクラッチを液圧で作動するセンタバルブ型の車両用液圧マスタシリンダに係り、詳しくは、センタバルブの後退限を規制するストッパピンを含むストッパ手段の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車のブレーキやクラッチの液圧発生源として用いられるセンタバルブ型の液圧マスタシリンダでは、シリンダボディに穿設された有底のシリンダ孔にピストンの前部軸を液密に内挿し、該前部軸とシリンダ孔底部側との間に液圧室を、また、後部軸とシリンダ孔との間に補給液室を画成したものがある。前記前部軸の中心軸上には液圧室に開口するステム孔が、前記後部軸には前記ステム孔と前記補給液室とに連通する径方向の連通孔がそれぞれ形成され、連通孔には、ステム孔に挿通されたセンタバルブのバルブステム後端に当接してセンタバルブの後退限を規制するストッパピンが配設されている。このストッパピンは、連通孔内から突出する両端部を、前記後部軸に外嵌装着したストッパ環に保持させている。また、このストッパピンの抜け止めは、ストッパピンをストッパ環に形成した挿通孔に圧入したり、挿通孔近傍に爪部を形成してストッパピンに係止させること等により行われている。
【0003】
前記ピストンの前部軸に装着されたセンタバルブは、弁ばねの弾発力によって常時シリンダ孔の開口部方向へ付勢されている。ピストンがシリンダ孔開口部側の後退限へ位置した非作動持には、バルブステムの後端がストッパピンに当接してセンタバルブの後退限が規制され、弁体がピストン液圧室側端面の弁座より離間して、液圧室と補給液室とがステム孔と連通孔を通して連通する。またピストンが後退限位置から液圧室方向へ前進する作動時には、バルブステムの後端とストッパピンとの当接が離れて、弁体が弁ばねの弾発力に抗してピストン液圧室側端面の弁座に着座することにより、上述の液圧室と補給液室との連通が遮断されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−310728号公報(第1−2頁,図2)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述のものでは、ストッパ環は、ピストン後端軸に外嵌装着可能な径を有したリング部材に、ストッパピンの挿通孔を穿設したり、ストッパピンの脱落防止用の爪片や溝部等を加工して形成されるため、ストッパ環の製造に手間や時間がかかっていた。また、ストッパピンの脱落防止は、ストッパピンの両端を前記挿通孔に圧入したり、前記爪部に支持させることにより行われるため、ストッパピンとストッパ環の組み付けにも手間がかかり製造コストが嵩んでいた。
【0006】
そこで本発明は、ピストンに装着するストッパ環を、プレス加工によって製造し安価に提供するとともに、ストッパピンとストッパ環との組み付け性が良好で、ストッパピンの抜け止めも安価で且つ確実に図ることのできるセンタバルブ型車両用液圧マスタシリンダを提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため本発明は、シリンダボディに穿設された有底のシリンダ孔にピストンの前部軸を液密に内挿し、該前部軸とシリンダ孔底部側との間に液圧室を画成し、前記前部軸の中心軸上に液圧室に開口するステム孔を形成し、前記前部軸から後方に延びるピストンの後部軸とシリンダ孔との間に補給液室を画成し、前記後部軸に前記ステム孔と前記補給液室とに連通する径方向の連通孔を貫通形成し、前記ステム孔の液圧室開口側からセンタバルブのバルブステムを挿通し、該バルブステム後端に当接してセンタバルブの後退限を規制するストッパピンを前記連通孔内に配設し、該連通孔内から突出するストッパピンの両端部を、前記後部軸に外嵌装着したストッパ環に保持させたセンタバルブ型液圧マスタシリンダにおいて、前記ストッパ環は、帯状板材をロール加工して形成したリング体で形成し、該リング体には、前記ストッパピンの両端を挿通させる相対向する挿通孔と、前記リング体の外周面から突出し、リング体の周方向に複数列に配設される複数の突起とが形成されているとともに、前記挿通孔に差し込んだストッパピンを抜け止めするリング状の係止クリップを、前記ストッパ環の複数列に配設した突起間に装着したことを特徴としている。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一形態例を図面に基づいて詳しく説明する。液圧マスタシリンダ1は、二系統式のブレーキに用いられるタンデム型で、シリンダボディ2の内部に穿設された有底のシリンダ孔3には、プライマリ用とセカンダリ用の2つ液圧発生ユニット4,5が直列に設けられている。
【0009】
シリンダ孔3の開口部側には、プライマリ用の液圧発生ユニット4が配設され、この液圧発生ユニット4に用いられるプライマリピストン6は、前部外周のフランジ6aをシリンダ孔3に収容し、後部軸6bをシリンダ孔3の大径開口孔3aに嵌着されたピストンガイドユニット7に挿通して、シリンダ中心軸上に保持されている。
【0010】
フランジ6aの前部にはカップシール8が嵌着され、フランジ6aとピストンガイドユニット7とに挟まれた後部軸6bとシリンダ孔3との間には補給液室9が画成され、該補給液室9とシリンダボディ2の上部に一体に設けられたリザーバユニオン10の内部とは、液通孔11を介して連通している。
【0011】
プライマリピストン6の前方には、シリンダ孔3の底部側に配設されたセカンダリ用の液圧発生ユニット5に用いられるセカンダリピストン12が収容されており、該セカンダリピストン12のカップシール13とプライマリピストン6のカップシール8との間にプライマリ側の液圧室14が液密に画成されている。
【0012】
プライマリピストン6の前部軸6cの先端側には、バルブケース15が液圧室14へ突出して設けられ、該バルブケース15とセカンダリピストン12の後部に設けたスプリングリテーナ16とが連結軸17にて連結される。また、バルブケース15とスプリングリテーナ16との間には、リターンスプリング18が縮設されている。
【0013】
プライマリピストン6には、ステム孔19と連通孔20とが連設されている。ステム孔19は、プライマリピストン6の前部軸6c中心軸上に前端面へ開口して設けられ、連通孔20は、ステム孔19の後端に連続して後部軸6bに設けられ、後部軸6bの中心軸と直交するディスク半径方向へ貫通形成されている。前述の液圧室14と補給液室9とは、前記ステム孔19と連通孔20とを介して連通している。また、プライマリピストン6の後部軸6bには凹部6dが形成されていて、該凹部6dにプッシュロッドが差し込まれる。
【0014】
ステム孔19には、センタバルブ21のバルブステム21aが挿通され、また連通孔20にはストッパピン22がシリンダ軸直交方向に貫通して配設され、このストッパピン22の両端部22a,22aは、連通孔外側に装着されるストッパ環23に支持されている。ステム孔19は、バルブステム21aよりも大径に形成されていて、作動液がバルブステム21aの外側を流通できるようになっている。また連通孔20は、ピストン軸方向に長い長円形で、ステム孔19と同様に作動液の流通を許容すると同時に、プライマリピストン6がシリンダ孔3を移動できるようにしている。
【0015】
バルブケース15の内部には弁室24が画成され、該弁室24にセンタバルブ21頭部の弁体21bを配設すると共に、バルブケース15に開口15aを設けて弁室24と液圧室14とを連通させている。バルブケース15と弁体21bとの間には弁ばね25が縮設されていて、センタバルブ21をシリンダ孔開口部方向へ付勢しており、ステム孔19が開口するプライマリピストン6の前端面を、弁体21bが着座する弁座6eとしている。
【0016】
前記ストッパ環23は、帯状板材に、ストッパピン22の両端部22a,22aを挿通させる挿通孔26,26と、長手方向両側方に複数列(本形態例では2列)に配設される複数の突起27と、軽量化を図るための円弧状の肉抜き部28とをプレス加工により一度に形成し、該帯状板材をロール加工してリング状に形成されたリング体Rで形成される。このリング体Rは、プライマリピストン6の後部軸6bに外嵌装着可能な径を有するとともに、リング状に加工されたときに、挿通孔26,26がリング体Rの中心線上に対向して配設され、また、複数の突起27がリング体Rの外周面から突出し、周方向に2列に並ぶように加工される。
【0017】
このように形成されたストッパ環23は、プライマリピストン6の後端部より後部軸6bに挿入され、連通孔外側に外嵌装着される。連通孔外側に装着されたストッパ環23の一方の挿通孔26より他方の挿通孔26に向けて、ストッパピン22を挿通し、該ストッパピン22を連通孔26のシリンダ軸直交方向に配設させる。ついで、ストッパ環23の外周に係止クリップ29が装着され、挿通孔26,26に挿通されたストッパピン22の両端部22a,22aに当接させて、ストッパピン22の抜け止めを図る。
【0018】
係止クリップ29は、線材をリング状に巻回し縮径方向に弾性力を有するもので、拡径方向に押し開きながらプライマリピストン6の後端部より後部軸6bに挿入され、ストッパピン22の両端部22a,22aと当接する位置で拡径方向への押し開き力を解除し、ストッパ環23に装着される。このように装着された係止クリップ29は、ストッパ環23に形成された2列の突起27間に配設されてその位置決めがなされ、係止クリップ29の位置が、ストッパピン22の両端部22a,22aと当接する位置から外れないようにしている。
【0019】
上述のように形成された本形態例のマスタシリンダ1は、非制動時には、弁ばね25によってシリンダ孔開口部方向へ付勢されるセンタバルブ21が、バルブステム21aの後端部がストッパピン22の中央に当接することによって後退限が規制され、弁室24内の弁体21bが弁座6eから所定距離離間しており、液圧室14と補給液室9とは弁室24とステム孔19と連通孔20とを通して連通している。
【0020】
また、制動時には、プライマリピストン6が、リターンスプリング18の弾発力に抗してシリンダ孔3を底部方向へ前進して行く。プライマリピストン6の前進初期には、センタバルブ21とストッパ環23とに押込み力が作用しないため、センタバルブ21とストッパ環23は引続き停止位置にあり、弁座6eがプライマリピストン6の前進によって徐々に弁体30aへ近づいて行く。
【0021】
そして、弁体21bが弁座6eに着座すると、プライマリピストン6からセンタバルブ21に押込み力が作用し、センタバルブ30がストッパ環23を非作動位置に残してストッパピン22を離れ、プライマリピストン6と共にシリンダ孔3の底部方向へ前進を始める。また、プライマリピストン6とセンタバルブ21の前進が進み、ストッパピン22が連通孔20のシリンダ孔開口部側壁に当接すると、ストッパ環23とストッパピン22とがプライマリピストン6とセンタバルブ21と一体となってシリンダ孔3の底部方向へ移動して行く。
【0022】
液圧室14と補給液室9は、弁体21bが弁座6eに着座することによって連通が遮断され、液圧室14内部の作動液がプライマリピストン6の前進に伴って昇圧されて行く。液圧室14の内部で昇圧した作動液は、シリンダボディ2の周壁に開設された出力ポートから、プライマリ側ブレーキ系統のディスクブレーキやドラムブレーキに送られ、これらブレーキを作動する。
【0023】
本形態例は以上のように、ストッパ環をプレス加工により形成するので安価に製造でき、製造コストの低減化を図ることができるとともに、ストッパ環とストッパピンと係止クリップとの組み付け性が良好で、ストッパピンの抜け止めも安価で且つ確実に図ることができる。
【0024】
尚、本形態例では、リング体の周方向に、複数の突起を2列に配設させているが、本発明では、複数の突起を2列以上の複数列に配設するものでもよく、突起を2列以上に配設することによって、係止クリップも2つ以上設けることが可能となり、より確実にストッパピンの抜け止めを図ることができる。また、本発明の車両用液圧マスタシリンダは、形態例に示したタンデム型以外に、一系統のシングル型のものにも適用が可能である。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、バルブステムの後退限を規制するストッパピンをピストンの連通孔に保持させるためのストッパ環を、プレス加工により安価に製造できるようになり、製造コストの低減化を図ることができる。また、ストッパ環とストッパピンとの組み付け性が良好で、ストッパピンの抜け止めも安価で且つ確実に図ることができ、バルブステムの後退限を確実に規制することができ、液圧マスタシリンダの良好な作動を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一形態例を示すセンタバル型液圧マスタシリンダの要部断面正面図
【図2】 本発明の一形態例を示すロール加工前のリング体を示す斜視図
【図3】 本発明の一形態例を示すストッパ環とストッパピンと係止クリップとを組み付けた状態を示す斜視図
【図4】 本発明の一形態例を示すセンタバル型液圧マスタシリンダの断面正面図
【符号の説明】
1…液圧マスタシリンダ、2…シリンダボディ、3…シリンダ孔、4,5…液圧発生ユニット、6…プライマリピストン、6a…フランジ、6b…後部軸、6c…前部軸、9…補給液室、10…リザーバユニオン、14…液圧室、19…ステム孔、20…連結孔、21…センタバルブ、21a…バルブステム、21b…弁体、22…ストッパピン、22a…端部、23…ストッパ環、26…連通孔、27…突起、28…肉抜き部、29…係止クリップ、R…リング体

Claims (1)

  1. シリンダボディに穿設された有底のシリンダ孔にピストンの前部軸を液密に内挿し、該前部軸とシリンダ孔底部側との間に液圧室を画成し、前記前部軸の中心軸上に液圧室に開口するステム孔を形成し、前記前部軸から後方に延びるピストンの後部軸とシリンダ孔との間に補給液室を画成し、前記後部軸に前記ステム孔と前記補給液室とに連通する径方向の連通孔を貫通形成し、前記ステム孔の液圧室開口側からセンタバルブのバルブステムを挿通し、該バルブステム後端に当接してセンタバルブの後退限を規制するストッパピンを前記連通孔内に配設し、該連通孔内から突出するストッパピンの両端部を、前記後部軸に外嵌装着したストッパ環に保持させたセンタバルブ型液圧マスタシリンダにおいて、前記ストッパ環は、帯状板材をロール加工して形成したリング体で形成し、該リング体には、前記ストッパピンの両端を挿通させる相対向する挿通孔と、前記リング体の外周面から突出し、リング体の周方向に複数列に配設される複数の突起とが形成されているとともに、前記挿通孔に差し込んだストッパピンを抜け止めするリング状の係止クリップを、前記ストッパ環の複数列に配設した突起間に装着したことを特徴とするセンタバルブ型液圧マスタシリンダ。
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