JP3904826B2 - ウェハ加熱装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主にウェハを加熱するのに用いるウェハ加熱装置に関するものであり、例えば、半導体ウェハや液晶装置あるいは回路基盤等のウェハ上に薄膜を形成したり、前記ウェハ上に塗布されたレジスト液を乾燥焼き付けしてレジスト膜を形成するのに好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、半導体製造装置の製造工程における、半導体薄膜の成膜装置、エッチング処理、レジスト膜の焼き付け処理等においては、半導体ウェハ(以下、ウェハと略す)を加熱するためにウェハ加熱装置が用いられている。
【0003】
従来の半導体製造装置は、まとめて複数のウェハを成膜処理するバッチ式のものが使用されていたが、ウェハの大きさが200mmから300mmと大型化するにつれ、処理精度を高めるために、1枚づつ処理する枚葉式と呼ばれる手法が近年実施されている。しかしながら、枚葉式にすると1回あたりの処理数が減少するため、ウェハの処理時間の短縮が必要とされている。このため、ウェハ支持部材に対して、ウェハの加熱時間の短縮や温度精度の向上が要求されていた。
【0004】
このうち、半導体ウェハ上へのレジスト膜の形成にあたっては、図1に示すような、炭化珪素、窒化アルミニウムやアルミナ等のセラミックスからなる均熱板2の一方の主面を、ウェハWを載せる載置面とし、他方の主面には酸化膜12、絶縁層4を介して発熱抵抗体5が設置され、さらに前記発熱抵抗体5に導通端子7が弾性体8により固定された構造のウェハ加熱装置1が用いられていた。そして、前記均熱板2は、支持体11にボルト17で固定され、さらに均熱板2の内部には熱電対10が挿入され、これにより均熱板2の温度を所定に保つように、導通端子7から発熱抵抗体5に供給される電力を調整するシステムとなっていた。また、導入端子7は、板状構造部3に絶縁層9を介して固定されていた。
【0005】
そして、ウェハ加熱装置1の載置面3に、レジスト液が塗布されたウェハWを載せたあと、発熱抵抗体5を発熱させることにより、均熱板2を介して載置面3上のウェハWを加熱し、レジスト液を乾燥焼き付けしてウェハW上にレジスト膜を形成するようになっていた。
【0006】
このようなウェハ加熱装置1において、ウェハWの表面全体に均質な膜を形成したり、レジスト膜の加熱反応状態を均質にするためには、ウェハWの温度分布を均一にすることが重要である。ウェハWの温度分布を小さくするため、加熱用のヒータを内蔵したウェハ加熱装置1において、発熱抵抗体5の抵抗分布を調整したり、発熱抵抗体5の温度を分割制御したり、熱引きを発生したりするような構造部を接続する場合、その接続部の発熱量を増大させる等の提案がされていた。
【0007】
また、半導体の設計ルールは年々微細化の方向に進んでおり、さらに均一な温度分布で加熱できるようなウェハ加熱装置1が求められている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の発熱抵抗体5の抵抗分布を、ある任意の条件に調整するだけでは、載置面の平面状態によって、温度特性を満足しないものが発生していた。具体的に述べると、実際のウェハ加熱装置1の載置面3は、完全な平面ではなく、凹形状であったり、凸形状であったりと様々である。その為、載置面3とウェハWの間隔は、載置面3の形状により外周部が小さくなったり、中央部が小さくなったりしてしまう。このような状態で載置面3にウェハWを載せて加熱処理を行うと、前記間隔が小さい部分は均熱板2の昇温の影響を大きく受けて速やかに温度が高くなり、逆に前記部分が大きい部分はウェハWの温度が遅れ気味に上昇するので、両者の間で温度差が大きくなるという課題があった。そして、この温度差は、成膜バラツキや、レジスト膜の反応状態を不均一にしてしまうという問題を引き起こした。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の問題について鋭意検討した結果、セラミックスからなる均熱板の一方の主面をウェハの載置面とし、他方の主面もしくは内部に発熱抵抗体を有するとともに、該発熱抵抗体と電気的に接続される給電部を前記他方の主面に具備してなるウェハ加熱装置において、前記発熱抵抗体は少なくとも個以上の中央パターンと個以上に分割された外側パターンからなり、前記2個以上に分割された複数の外側パターン間の電力密度差が外側パターンの平均電力密度の60%以下とすることにより、上記課題を解決できることを見出した。
また、本発明者等は、セラミックスからなる均熱板の一方の主面をウェハの載置面とし、他方の主面もしくは内部に発熱抵抗体を有するとともに、該発熱抵抗体と電気的に接続される給電部を前記他方の主面に具備してなるウェハ加熱装置において、前記発熱抵抗体は少なくとも1個以上の中央パターンと2個以上に分割された外側パターンからなり、前記載置面の外周部に対する中心部の高さをX(μm)とし、前記外側パターンを内側と外側の2つの範囲に等分割し、外周パターンの内外電力密度比Z=((前記外側範囲の平均電力密度)/(前記内側範囲の平均電力密度)×100)(%)とした時、前記電力密度比Zが90〜250%とすることにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1は本発明に係わるウェハ加熱装置1の1例を示す断面図であり、炭化珪素、炭化硼素、窒化硼素、窒化珪素、窒化アルミニウムを主成分とするセラミックスからなる均熱板2の一方の主面を、ウェハWを載せる載置面3とすると共に、他方の主面に発熱抵抗体5を形成したものである。
【0012】
また、発熱抵抗体5には、金や銀、パラジウム、白金等の材質からなる給電部6が形成され、該給電部6に導通端子7を押圧して接触させることにより、導通が確保されている。
【0013】
さらに、均熱板2と支持体11の外周にボルトを貫通させ、均熱板2側より弾性体8、座金18を介在させてナットを螺着することにより弾性的に固定している。これにより、均熱板2の温度を変更したり載置面3にウェハを載せ均熱板2の温度が変動した場合に支持体11変形が発生しても、上記弾性体8によってこれを吸収し、これにより均熱板2の反りを防止し、ウェハ加熱におけるウェハW表面に温度分布が発生することを防止できる。
【0014】
また、支持体11は板状構造体13と側壁部とからなり、該板状構造体13には発熱抵抗体5に電力を供給するための導通端子7が絶縁材9を介して設置され、不図示の空気噴射口や熱電対固定部が形成されている。そして、前記導通端子7は、給電部6に弾性体8により押圧される構造となっている。また、前記板状構造体13は、複数の層から構成されている。
【0015】
本発明のウェハ加熱装置1は、上記発熱抵抗体5が少なくとも1個以上の中央パターンと2個以上に分割された外側パターンからなることを特徴とする。例えば図2に示すように、主にウェハの中心部を加熱するための中央パターン5−1と、ウェハの外周部を加熱するための外側パターン5−3〜5−6と、これらの中間に形成されたパターン5−2のように構成され各パターンを独立に制御して温度分布を調整している。そして、外側パターン5−3〜5−6は、それぞれがさらに内側のパターン5Aと外側のパターン5Bとに分割されて抵抗調整されている。
【0016】
た、前記載置面3の外周部に対する中心部の高さを(μ)とし、前記発熱抵抗体5の中央パターン5−1に対する外側パターン5−3〜5−6の電力密度比を(%)とした時、
−70≦X≦120、
0.3X+70≦Y≦207、
Y≧3.55X−255、
Y≦0.86X+119(X≦0)、
Y≦1.76X+119(X≧0)
であることが望ましい
【0017】
そして、均熱板2の平坦度の指標としてのXが−70(μm)より小さいと、ウェハWを急速昇温させる場合に、中心部付近の温度上昇が遅れてしまうので好ましくない。また、Xが120(μm)を越えると、ウェハWの外周部の温度上昇が遅くなってしまうので好ましくない。さらに好ましくは、Xを0〜100(μm)とする方がよい。
【0018】
また、Yが207を越えるか、もしくはX≧0の場合にYが1.76X+119より大きくなるか、もしくはX≦0の場合にYが0.86X+119より大きくなると、中央部の発熱量が少なくなるので、昇温過渡時に、外周部に較べて中央部付近の昇温が遅くなってしまう。
【0019】
また、Yが0.3X+70より小さいか、もしくは3.55X−255より小さいと、中央パターン5−1の発熱量が外側パターン5−3〜5−6に較べ大きくなり、逆にウェハWの中心部の昇温が早くなり過ぎて昇温過渡時のウェハWの均熱を調整し難くなるので好ましくない。
【0020】
ここで、載置面3の中心部の高さXは、図3に示すように均熱板2の外周部の半径の90%の部分の高さを平均した平均面に対する高さを意味し、マイナスの場合、均熱板2の中心部が凹んでいることを意味する。
【0021】
また、電力密度比Yは、(均熱板2の外側から半径1/3の範囲内の平均電力密度)/(均熱板2の中央部の半径1/3以内の範囲内の電力密度)×100(%)とする。ここで、「外側から均熱板2の半径1/3の範囲内の平均電力密度」とは、均熱板2を径方向に3等分し、その外側パターン全体の発熱時の電力を外側パターン全体の面積で割ったものである。また、「中央部の均熱板2の半径1/3の範囲内の電力密度」とは、均熱板2を径方向に3等分し、その中心部の発熱時の電力を中心部の面積で割ったものである。
【0022】
例えば、図2の例では、「外側から均熱板2の半径1/3以内の範囲」とは外側パターン5−3〜5−6を意味し、「中央部の均熱板2の半径1/3の範囲」とは中央パターン5−1を意味する。
【0023】
また、本発明のウェハ加熱装置1は、前記2個以上に分割された外側パターン5−3〜5−6間の電力密度差を外側パターン5−3〜5−6の平均電力密度の60%以下とするものである。
【0024】
ここで、電力密度とは、それぞれのパターンで消費される電力をそれぞれのパターンの面積で除したものであり、外側パターン5−3〜5−6間の電力密度差は、下の式で定義した。
【0025】
外側パターン間の電力密度差=(4つのパターンの最大電力密度)−(4つのパターンの最小電力密度)
該電力密度差が、4つのパターンの平均電力密度の60%を越えると均熱板2の周方向の温度差を調整できなくなってしまうので好ましくない。
【0026】
また、本発明のウェハ加熱装置1は、前記4つの外側パターン5−3〜5−6を、破線で示すように径方向に外側パターン5Aと内側パターン5Bの2つの範囲に2等分した時の、両者の電力密度比Zを=((外側パターン5Aの平均電力密度)/(内側パターン5Bの平均電力密度)×100)(%)とした時、前記電力密度比Zを90〜250%としたものである。
【0027】
また、電力密度の調整は、発熱抵抗体5をレーザー加工や研磨加工等の手法を用いトリミングにより調整することができる。発熱抵抗体5は、金や銀、パラジウム、白金族の金属や、タングステン、チタン、窒化チタン、ニッケル等の高融点金属を使用することができる。
【0028】
さらに、本発明のウェハ加熱装置1の構造について、図を用いて説明する。
【0029】
また、本発明のウェハ加熱装置1は、図4に示すように載置面3には複数の凹部21が形成されており、該凹部21の中にウェハWを支えるための支持ピン20を配置している。そして、前記支持ピン20の載置面3からの突出高さhは、0.05〜0.5mmであり、該支持ピン20はウェハ中心部1点と、さらに少なくとも3点のウェハ径×0.6以上の同心円外周上に配列され、外周上の該支持ピン20高さのバラツキは15μm以下であり、かつ該中央部の支持ピン20高さは外周上の支持ピン20高さより低くなるように調整されている。
【0030】
前記突出高さhが0.05mm未満となると、均熱板2の温度を拾いやすくなり昇温過渡時の温度バラツキが大きくなりすぎるので好ましくない。また、前記突出高さhが0.5mmを越えるとウェハW交換後のウェハW温度の昇温応答性が悪くなり、ウェハWの温度が安定するまでの時間が長くなるので好ましくない。これに対し、前記突出高さhを0.05〜0.5mmとすると、昇温過渡時の温度バラツキを小さくすることができ、かつウェハWの温度を速やかに安定させることができる。より好ましくは0.05〜0.3mmの範囲とする方がよい。
【0031】
また、前記支持ピン20の先端は曲面形状をなすとともに、該曲面部分の表面粗さはRa≦0.8μmでなければならない。なぜならば、ウェハWに対するパーティクル付着を低減させるためには、ウェハWを支持する部材はウェハWを傷つけるものであってはならないことは勿論のこと、ウェハWに接触する面積は少ない方が良いためである。ウェハWに接触する面積を極小とするには、前記支持ピン20の先端は鋭利形状とすべきであるが、逆にウェハWを削り取りパーティクルを発生させる恐れがある。よって、前記支持ピン20の先端は曲面形状とするとともに、該曲面部分の表面粗さはRa≦0.8μmとして、ウェハWと摺動してもウェハWや前記支持ピン20自身を傷つけないような滑らかな仕上げとしなければならない。
【0032】
なお、支持ピン20は凹部21に接合せずに単に載置しておくだけでよい。その場合、脱落を防止するために、図5に示すように固定治具24を凹部21の上部に設置する。この固定治具24は、支持ピン20とは接触しても接触しなくても特に支障はなく、固定治具24は市販のスナップリングを用いても何ら問題ない。ただし、固定治具24の材質としては、Ni、SUS316、SUS631、42アロイ、インコネル、インコロイ等、耐熱金属のものを使用すべきである。
【0033】
また、均熱板2を弾性的に支持体11に保持することにより、支持体11内の温度分布によって発生する反りを、この弾性的構造で緩和することができるので、均熱板2の平坦度を維持することが可能となる。
【0034】
ところで、金属製の支持体11は、側壁部と板状構造体13を有し、該板状構造体13には、その面積の5〜50%にあたる開口部が形成されている。また、該板状構造体13には、必要に応じて他に、均熱板2の発熱抵抗体5に給電するための給電部6と導通するための導通端子7、均熱板2を冷却するためのガス噴出口、均熱板2の温度を測定するための熱電対10を設置する。
【0035】
また、不図示のリフトピンは支持体11内に昇降自在に設置され、ウェハWを載置面3上に載せたり、載置面3より持ち上げるために使用される。そして、このウェハ加熱装置1により半導体ウェハWを加熱するには、不図示の搬送アームにて載置面3の上方まで運ばれたウェハWをリフトピンにより支持したあと、リフトピンを降下させてウェハWを載置面3上に載せる。次に、給電部6に通電して発熱抵抗体5を発熱させ、絶縁層4及び均熱板2を介して載置面3上のウェハWを加熱する。
【0036】
このとき、本発明によれば、均熱板2を炭化珪素質焼結体、炭化硼素質焼結体、窒化硼素質焼結体、窒化珪素質焼結体、もしくは窒化アルミニウム質焼結体により形成してあることから、熱を加えても変形が小さく、板厚を薄くできるため、所定の処理温度に加熱するまでの昇温時間及び所定の処理温度から室温付近に冷却するまでの冷却時間を短くすることができ、生産性を高めることができるとともに、60W/m・K以上の熱伝導率を有することから、薄い板厚でも発熱抵抗体5のジュール熱を素早く伝達し、載置面3の温度バラツキを極めて小さくすることができる。しかも、大気中の水分等と反応してガスを発生させることもないため、半導体ウェハW上へのレジスト膜の貼付に用いたとしても、レジスト膜の組織に悪影響を与えることがなく、微細な配線を高密度に形成することが可能である。
【0037】
ところで、このような特性を満足するには、均熱板2の板厚を1mm〜7mmとすると良い。これは、板厚が1mm未満であると、板厚が薄すぎるために温度バラツキを平準化するという均熱板2としての効果が小さく、発熱抵抗体5におけるジュール熱のバラツキがそのまま載置面3の温度バラツキとして現れるため、載置面3の均熱化が難しいからであり、逆に板厚が7mmを越えると、均熱板2の熱容量が大きくなり過ぎ、所定の処理温度に加熱するまでの昇温時間や温度変更時の冷却時間が長くなり、生産性を向上させることができないからである。
【0038】
また、均熱板2を形成するセラミックスとしては、炭化珪素、炭化硼素、窒化硼素、窒化珪素、窒化アルミニウムのようないずれか1種以上を主成分とするものを使用することができる。
【0039】
炭化珪素質焼結体としては、主成分の炭化珪素に対し、焼結助剤として硼素(B)と炭素(C)を含有した焼結体や、主成分の炭化珪素に対し、焼結助剤としてアルミナ(Al23)とイットリア(Y23)を含有し1900〜2200℃で焼成した焼結体を用いることができ、また、炭化珪素はα型を主体とするもの、あるいはβ型を主体とするもののいずれであっても構わない。
【0040】
また、炭化硼素質焼結体としては、主成分の炭化硼素に対し、焼結助剤として炭素を3〜10重量%混合し、2000〜2200℃でホットプレス焼成することにより焼結体を得ることができる。
【0041】
そして、窒化硼素質焼結体としては、主成分の窒化硼素に対し、焼結助剤として30〜45重量%の窒化アルミニウムと5〜10重量%の希土類元素酸化物を混合し、1900〜2100℃でホットプレス焼成することにより焼結体を得ることができる。窒化硼素の焼結体を得る方法としては、他に硼珪酸ガラスを混合して焼結させる方法があるが、この場合熱伝導率が著しく低下するので好ましくない。
【0042】
また、窒化珪素質焼結体としては、主成分の窒化珪素に対し、焼結助剤として3〜12重量%の希土類元素酸化物と0.5〜3重量%のAl23、さらに焼結体に含まれるSiO2量として1.5〜5重量%となるようにSiO2を混合し、1650〜1750℃でホットプレス焼成することにより焼結体を得ることができる。ここで示すSiO2量とは、窒化珪素原料中に含まれる不純物酸素から生成するSiO2と、他の添加物に含まれる不純物としてのSiO2と、意図的に添加したSiO2の総和である。
【0043】
また、窒化アルミニウム質焼結体としては、主成分の窒化アルミニウムに対し、焼結助剤としてY23やYb23等の希土類元素酸化物と必要に応じてCaO等のアルカリ土類金属酸化物を添加して十分混合し、平板状に加工した後、窒素ガス中1900〜2100℃で焼成することにより得られる。
【0044】
これらの焼結体は、その用途により材質を選択して使用する。例えば、レジスト膜の乾燥に使用する場合は、窒化物は水分と反応してアンモニアガスを発生し、これがレジスト膜に悪影響を及ぼすので使用できない。また、800℃程度の高温で使用する可能性のあるCVD用のウェハ加熱装置の場合は、ガラスを多く含む窒化硼素系の材料は、均熱板2が使用中に変形してしまい均熱性が損なわれてしまう可能性がある。
【0045】
さらに、均熱板2の載置面3とは反対側の主面は、ガラスや樹脂からなる絶縁層4との密着性を高める観点から、平面度20μm以下、面粗さを中心線平均粗さ(Ra)で0.1μm〜0.5μmに研磨しておくことが好ましい。
【0046】
一方、炭化珪素質焼結体を均熱板2として使用する場合、多少導電性を有する均熱板2と発熱抵抗体5との間の絶縁を保つ絶縁層4としては、ガラス又は樹脂を用いることが可能であり、ガラスを用いる場合、その厚みが100μm未満では耐電圧が1.5kVを下回り絶縁性が保てず、逆に厚みが350μmを越えると、均熱板2を形成する炭化珪素質焼結体や窒化アルミニウム質焼結体との熱膨張差が大きくなり過ぎるために、クラックが発生して絶縁層4として機能しなくなる。その為、絶縁層4としてガラスを用いる場合、絶縁層4の厚みは100μm〜350μmの範囲で形成することが好ましく、望ましくは200μm〜350μmの範囲で形成することが良い。
【0047】
また、均熱板2を、窒化アルミニウムを主成分とするセラミック焼結体で形成する場合は、均熱板2に対する発熱抵抗体5の密着性を向上させるために、ガラスからなる絶縁層4を形成する。ただし、発熱抵抗体5の中に十分なガラスを添加し、これにより十分な密着強度が得られる場合は、省略することが可能である。
【0048】
次に、絶縁層4に樹脂を用いる場合、その厚みが30μm未満では、耐電圧が1.5kVを下回り、絶縁性が保てなくなるとともに、発熱抵抗体5にレーザ加工等によってトリミングを施した際に絶縁層4を傷付け、絶縁層4として機能しなくなり、逆に厚みが150μmを越えると、樹脂の焼付け時に発生する溶剤や水分の蒸発量が多くなり、均熱板2との間にフクレと呼ばれる泡状の剥離部ができ、この剥離部の存在により熱伝達が悪くなるため、載置面3の均熱化が阻害される。その為、絶縁層4として樹脂を用いる場合、絶縁層4の厚みは30μm〜150μmの範囲で形成することが好ましく、望ましくは60μm〜150μmの範囲で形成することが良い。
【0049】
また、絶縁層4を形成する樹脂としては、200℃以上の耐熱性と、発熱抵抗体5との密着性を考慮すると、ポリイミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、ポリアミド樹脂等が好ましい。
【0050】
なお、ガラスや樹脂から成る絶縁層4を均熱板2上に被着する手段としては、前記ガラスペースト又は樹脂ペーストを均熱板2の中心部に適量落とし、スピンコーティング法にて伸ばして均一に塗布するか、あるいはスクリーン印刷法、ディッピング法、スプレーコーティング法等にて均一に塗布したあと、ガラスペーストにあっては、600℃の温度で、樹脂ペーストにあっては、300℃以上の温度で焼き付ければ良い。また、絶縁層4としてガラスを用いる場合、予め炭化珪素質焼結体又は炭化硼素質焼結体から成る均熱板2を1200℃程度の温度に加熱し、絶縁層4を被着する表面を酸化処理し酸化膜12を形成することで、ガラスから成る絶縁層4との密着性を高めることができる。
【0051】
さらに、絶縁層4上に被着する発熱抵抗体5としては、金(Au) 、銀(Ag)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)等の金属単体を、蒸着法やメッキ法にて直接被着するか、あるいは前記金属単体や酸化レニウム(Re23)、ランタンマンガネート(LaMnO3)等の酸化物を導電材として含む樹脂ペーストやガラスペーストを用意し、所定のパターン形状にスクリーン印刷法等にて印刷したあと焼付けて前記導電材を樹脂やガラスから成るマトリックスで結合すれば良い。マトリックスとしてガラスを用いる場合、結晶化ガラス、非晶質ガラスのいずれでも良いが、熱サイクルによる抵抗値の変化を抑えるために結晶化ガラスを用いることが好ましい。
【0052】
ただし、発熱抵抗体5に銀又は銅を用いる場合、マイグレーションが発生する恐れがあるため、このような場合には、発熱抵抗体5を覆うように絶縁層4と同一の材質から成る保護膜を30μm程度の厚みで被覆しておけば良い。
【0053】
また、図示しないが、発熱抵抗体5を内蔵するタイプの均熱板2に関しては、熱伝導率が高く電気絶縁性が高い窒化アルミニウム質焼結体を用いることが好ましい。この場合、窒化アルミニウムを主成分とし焼結助剤を適宜含有する原料を十分混合したのち円盤状に成形し、その表面にWもしくはWCからなるペーストを発熱抵抗体5のパターン形状にプリントし、その上に別の窒化アルミニウム成形体を重ねて密着した後、窒素ガス中1900〜2100℃の温度で焼成することにより発熱抵抗体5を内蔵した均熱板2得ることが出来る。また、発熱抵抗体5からの導通は、窒化アルミニウム質基材にスルーホール19を形成し、タングステン(W)もしくはタングステンカーバイド(WC)からなるペーストを埋め込んだ後焼成するようにして表面に電極を引き出すようにすれば良い。また、給電部6は、ウェハWの加熱温度が高い場合、Au、Ag等の貴金属を主成分とするペーストを前記スルーホール19の上に塗布し900〜1000℃で焼き付けることにより、内部の発熱抵抗体5の酸化を防止することができる。
【0054】
上記絶縁層4を形成するガラスの特性としては、結晶質又は非晶質のいずれでも良く、例えばレジスト乾燥用に使用する場合、耐熱温度が200℃以上でかつ0℃〜200℃の温度域における熱膨張係数が均熱板2を構成するセラミックスの熱膨張係数に対し−5〜+5×10-7/℃の範囲にあるものを適宜選択して用いることが好ましい。即ち、熱膨張係数が前記範囲を外れたガラスを用いると、均熱板2を形成するセラミックスとの熱膨張差が大きくなりすぎるため、ガラスの焼付け後の冷却時において、均熱板2に反りが発生したり、クラックや剥離等の欠陥が生じ易いからである。
【0055】
【実施例】
実施例 1
炭化珪素原料に3重量%のBCと2重量%の炭素を適量のバインダーおよび溶剤を用いて混合し、造粒した後成形圧100MPaで成形し、1900〜2100℃で焼成して、熱伝導率が80W/(m・K)以上であり外径が200mmの円盤状の炭化珪素質焼結体を得た。
【0056】
この焼結体の両主面に研削加工を施し、板厚4mm、外径200mmの円盤状をした均熱板2とし、さらに大気中で1200℃×1時間の熱処理を施し前記焼結体の表面に酸化膜24を形成した。その後、ガラス粉末に対してバインダーとしてのエチルセルロースと有機溶剤としてのテルピネオールを混練して作製したガラスペーストをスクリーン印刷法にて敷設し、80℃に加熱して有機溶剤を乾燥させたあと、450℃で30分間脱脂処理を施し、さらに700〜900℃の温度で焼き付けを行うことにより、ガラスからなる厚み400μmの絶縁層4を形成した。次いで絶縁層4上に発熱抵抗体5を被着するため、導電材としてAu粉末とPt粉末を混合したガラスペーストを、スクリーン印刷法にて所定のパターン形状に印刷したあと、80℃に加熱して有機溶剤を乾燥させ、さらに450℃で30分間脱脂処理を施したあと、700〜900℃の温度で焼き付けを行うことにより、厚みが30μmの発熱抵抗体5を形成した。
【0057】
発熱抵抗体5は図2に示すような中心部と外周部を径方向に3等分し、さらに外周部を周方向に4等分した6パターン構成とした。しかるのち発熱抵抗体5に給電部6を導電性接着剤にて固着させることにより、均熱板2を製作した。
【0058】
また、支持体11は、主面の40%に開口部を形成した厚み2.5mmのSUS304からなる2枚の板状構造体13を準備し、この内の1枚に、熱電対10、10本の導通端子7を所定の位置に形成し、同じくSUS304からなる側壁部とネジ締めにて固定して支持体11を準備した。
【0059】
その後、前記支持体11の上に、均熱板2を重ね、その外周部を弾性体8を介してネジ締めすることにより図1に示した本発明のウェハ加熱装置1とした。
【0060】
さらに、転写法により金ペーストからなる給電部6を形成し、900℃で焼き付け処理した。その後、バネを有する導通端子7を装着した支持体11にその外周部を弾性体8を介してネジ締めすることにより図1に示した本発明のウェハ加熱装置1とした。
【0061】
また、支持ピン20の載置面3からの突出高さhは、100μとした。
【0062】
そして、均熱板2の載置面3の平坦度を図3に示すように外側90%位置の平均面に対する中心部高さXμと定義し、−100μ、−70μ、−30μ、0μ、30μ、50μ、70μ、100μ、120μ、150μとなるよう研磨調整し平坦度を変動させたサンプルを準備し、前記サンプルの発熱抵抗体5の図2に示す各パターン内の電力密度分布が一様になるように、レーザートリマーを用い抵抗値を変えることにより調整した。また、外側パターン5−3〜5−6と中央パターン5−1の電力密度比を下式として定義し、
電力密度比Y=(外側パターン5−3〜5−6の電力密度の平均値)/(中央パターン5−1の電力密度)(%)
前記式のYの値が、39%、48%、59%、70%、84%、100%、119%、142%、171%、207%、254%になるように、各パターンへの印加電圧を変えて調整した。
【0063】
そして、このようにして得られたウェハ加熱装置1の導電端子7に通電して200℃で保持し、載置面3の上に載せたウェハ表面の温度分布を、図4に示すように均熱板2の同心円で半径40mm、60mm、90mmの円周上の3等分点9点の合計9点の温度バラツキが1℃以内となることを確認した後、さらに、150℃に30分保持し、その後、ウェハWを載せてウェハWが150℃に保持されるまでのウェハ面内の温度バラツキの過渡特性を評価した。評価基準としては、昇温過渡時の温度バラツキが10℃以下のもの、ウェハ面の温度上昇時における温度のオーバーシュートが2.0℃以内であるものをOKとし、それ以上となるものはNGとした。ここでいうオーバーシュート量とは、均熱板2の温度を制御してウェハの温度を所定の温度に制御する際に、勢い余ってその設定温度より高めになってしまった温度差のことである。
【0064】
また、ウェハを入れ替えた際の温度が±1.0℃に安定するまでの時間を同時に測定した。これについては、50秒以内に安定したものを良好とし、これ以上の時間を要するものは、不良として判定した。
【0065】
結果を表1に示した。
【0066】
【表1】
Figure 0003904826
【0067】
表1から判るように、平坦度Xがプラス方向に大きくなるNo.57〜59は、外周部の載置面3とウェハWの間隔が大きくなり、外周部の昇温が遅くなるので好ましくない。また逆に、平坦度Xがマイナス方向に大きくなるNo.1〜3は、載置面3とウェハWの間隔が中心部では大きく、外周部では小さくなり、中心部の昇温が遅く温度バラツキが大きくなるので好ましくない。その他、図5に示した包絡線の外の点であるNo.4、7〜10、15〜17、22〜24、30、31、36、37、44、45、51〜53、56は、温度安定時間が50秒を越えるか、もしくはオーバーシュート量が2.0℃を越える値となるので好ましくない。
【0068】
これに対し、図5に示した包絡線の中の点であるNo.5、6、11〜14、18〜21、25〜29、32〜35、38〜43、46〜50、54、55は、温度安定時間が50秒以下であり、オーバーシュート量が2.0℃以下となった。
【0069】
実施例 2
ここでは、外周部の4つのパターンの電力密度の差を下式として定義し、
パターン間の電力密度差=(4つのパターンの最大電力密度)−(4つのパターンの最小電力密度)
4つの外側パターンの平均電力密度に対する前記式の外パターン間の電力密度差の比を0%、30%、60%、90%になるように印加電圧を調整し、実施例1と同様にしてサンプルを評価した。
【0070】
結果を表2に示した。
【0071】
【表2】
Figure 0003904826
【0072】
表2から判るように、外周パターン間の電力密度差の比が平均電力密度に対して60%を越えるNo.4は、昇温過渡時の温度バラツキを10℃以下にすることが出来なかった。これに対し、外周パターン間の電力密度差を平均電力密度に対して60%以内に調整したNo.1〜3は、昇温過渡時の温度バラツキを10℃以下とすることができた。
【0073】
実施例 3
ここでは、図2に示すように外周部のパターンを径方向に外側パターン5A、内側パターン5Bと破線で示すように2等分した時の、両者の電力密度比を下式として定義し、
外周パターンの内外電力密度比Z=(外周パターン5Aの平均電力密度)/(外周パターン5B領域の平均電力密度)×100(%)
前記式の外周パターンの内外電力密度比Zを80%、90%、100%、150%、200%、250%、300%としたサンプルを前述のレーザートリマーによる抵抗調整を行い作製した。
【0074】
また、全ての条件において、パターン5−2の電力密度は、外側パターン5−3〜5−6の平均電力密度と中央パターン5−1の電力密度の平均値とした。発熱抵抗体5に掛かる全電力については、1000W固定とした。
【0075】
これによって、ウェハ交換時のウェハ温度のオーバーシュート量と安定時間に対する影響を調べた。
【0076】
結果は表3に示した。
【0077】
【表3】
Figure 0003904826
【0078】
表3から判るように、外側パターン5−3〜5−6の内外の電力密度比Zが90%未満であるNo.1は温度安定時間が50秒以上となり、また、前記電力密度比が250%を越えるNo.7は、昇温過渡時の温度バラツキが顕著に大きくなり10℃以下とすることが出来なかった。
【0079】
これに対し、外側パターン5−3〜5−6間の電力密度バラツキが60%以下であり、且つ外側パターン5−3〜5−6の内外の電力密度比が90〜250%であるNo.1〜3およびNo.6〜10は、温度安定時間が50秒以下であり、且つ昇温過渡時の温度バラツキは10℃以下と小さくすることができた。
【0080】
なお、本実験は、φ200mm径のウェハWを用いて行ったが、φ300mm径のウェハWであっても同様の結果であった。
【0081】
また、本実験は、反りのないウェハWを用いて行ったが、反りを有するウェハWを用いた場合も同様の結果となった。
【0082】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、セラミックスからなる均熱板の一方の主面をウェハの載置面とし、他方の主面もしくは内部に少なくとも1個以上の中央パターンと2個以上に分割された外側パターンからなる発熱抵抗体を有するとともに、該発熱抵抗体と電気的に接続される給電部を前記他方の主面に具備してなるウェハ加熱装置において、前記発熱抵抗体は少なくとも1個以上の中央パターンと2個以上に分割された外側パターンからなり、前記2個以上に分割された複数の外側パターン間の電力密度差が外側パターンの平均電力密度の60%以下とすることにより、ウェハを交換した際のウェハ温度の昇温過渡時のオーバーシュートを10℃以下に小さくし、オーバーシュート量を小さくするとともに、所定温度±1℃にウェハ温度が安定するまでの時間を短縮することが可能となる。
また、セラミックスからなる均熱板の一方の主面をウェハの載置面とし、他方の主面もしくは内部に発熱抵抗体を有するとともに、該発熱抵抗体と電気的に接続される給電部を前記他方の主面に具備してなるウェハ加熱装置において、前記発熱抵抗体は少なくとも1個以上の中央パターンと2個以上に分割された外側パターンからなり、前記載置面の外周部に対する中心部の高さをX(μm)とし、前記外側パターンを内側と外側の2つの範囲に等分割し、外周パターンの内外電力密度比Z=((前記外側範囲の平均電力密度)/(前記内側範囲の平均電力密度)×100)(%)とした時、前記電力密度比Zが90〜250%とすることにより、ウェハを交換した際のウェハ温度の昇温過渡時のオーバーシュートを10℃以下に小さくし、オーバーシュート量を小さくするとともに、所定温度±1℃にウェハ温度が安定するまでの時間を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のウェハ加熱装置を示す断面図である。
【図2】本発明のウェハ加熱装置の発熱抵抗体パターン配置の一例を示す図である。
【図3】本発明のウェハ加熱装置の均熱板の断面図である。
【図4】(a)は、本発明のウェハ加熱装置の均熱板の平面図であり、(b)はそのX−X断面図である。
【図5】本発明のウェハ加熱装置の均熱板の一部拡大断面図である。
【図6】本発明のウェハ加熱装置の均熱板の平坦度と発熱抵抗体の電力密度分布に関する好ましい範囲を示す図である。
【符号の説明】
1:ウハ加熱装置
2:均熱板
3:載置面
4:絶縁層
5:発熱抵抗体
6:給電部
7:導通端子
8:弾性体
10:熱電対
11:支持体
20:支持ピン
21:凹部
24:固定治具
W:ウェハ

Claims (2)

  1. セラミックスからなる均熱板の一方の主面をウェハの載置面とし、他方の主面もしくは内部に発熱抵抗体を有するとともに、該発熱抵抗体と電気的に接続される給電部を前記他方の主面に具備してなるウェハ加熱装置において、前記発熱抵抗体は少なくとも個以上の中央パターンと個以上に分割された外側パターンからなり、前記2個以上に分割された複数の外側パターン間の電力密度差が外側パターンの平均電力密度の60%以下であることを特徴とするウェハ加熱装置。
  2. セラミックスからなる均熱板の一方の主面をウェハの載置面とし、他方の主面もしくは内部に発熱抵抗体を有するとともに、該発熱抵抗体と電気的に接続される給電部を前記他方の主面に具備してなるウェハ加熱装置において、前記発熱抵抗体は少なくとも個以上の中央パターンと個以上に分割された外側パターンからなり、前記載置面の外周部に対する中心部の高さを(μ)とし、前記外側パターンを内側と外側の2つの範囲に等分割し、外周パターンの内外電力密度比Z=((前記外側範囲の平均電力密度)/(前記内側範囲の平均電力密度)×100)(%)とした時、前記電力密度比Zが90〜250%であることを特徴とするウェハ加熱装置。
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