JP4002409B2 - ウェハ加熱装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主にウェハを加熱するために用いるウェハ加熱装置に関するものであり、例えば、半導体ウェハや液晶装置あるいは回路基盤等のウェハ上に薄膜を形成したり、前記ウェハ上に塗布されたレジスト液を乾燥焼き付けしてレジスト膜を形成するために好適なウェハ加熱装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、半導体製造装置の製造工程における、半導体薄膜の成膜装置、エッチング処理、レジスト膜の焼き付け処理等においては、半導体ウェハ(以下、ウェハと略す)を加熱するためにウェハ加熱装置が用いられている。
【0003】
従来の半導体製造装置は、まとめて複数のウェハを成膜処理するバッチ式のものが使用されていたが、ウェハの大きさが200mmから300mmと大型化するにつれ、処理精度を高めるために、1枚づつ処理する枚葉式と呼ばれる手法が近年実施されている。しかしながら、枚葉式にすると1回あたりの処理数が減少するため、ウェハの処理時間の短縮が必要とされている。このため、ウェハ支持部材に対して、ウェハの加熱時間の短縮や温度精度の向上が要求されていた。
【0004】
このうち、半導体ウェハ上へのレジスト膜の形成にあたっては、図4に示すような、炭化珪素、窒化アルミニウムやアルミナ等のセラミックスからなる均熱板32の一方の主面を、ウェハWを載せる載置面とし、他方の主面には酸化膜53、絶縁層34を介して発熱抵抗体35が設置され、さらに前記発熱抵抗体35に導通端子37が弾性体38により固定された構造のウェハ加熱装置31が用いられていた。そして、前記均熱板32は、支持体41にボルト47で固定され、さらに均熱板32の内部には熱電対40が挿入され、これにより均熱板32の温度を所定に保つように、導入端子37から発熱抵抗体35に供給される電力を調整するシステムとなっていた。また、導入端子37は、板状構造部43に絶縁層39を介して固定されていた。
【0005】
そして、ウェハ加熱装置31の載置面33に、レジスト液が塗布されたウェハWを載せたあと、発熱抵抗体35を発熱させることにより、均熱板32を介して載置面33上のウェハWを加熱し、レジスト液を乾燥焼き付けしてウェハW上にレジスト膜を形成するようになっていた。
【0006】
このようなウェハ加熱装置31において、ウェハWの表面全体に均質な膜を形成したり、レジスト膜の加熱反応状態を均質にするためには、ウェハWの温度分布を均一にすることが重要である。ウェハWの温度分布を小さくするため、加熱用のヒータを内蔵したウェハ加熱装置において、発熱抵抗体35の抵抗分布を調整したり、発熱抵抗体35の温度を分割制御したり、熱引きを発生したりするような構造部を接続する場合、その接続部の発熱量を増大させる等の提案がされていた。
【0007】
しかし、いずれも非常に複雑な構造、制御が必要になるという課題があり、簡単な構造で温度分布を均一に加熱できるようなウェハ加熱装置が求められている。
【0008】
そこで、別の手法として、特開平10−223642号公報には図5に示すように、均熱板52の載置面53からウェハを浮かせて支持するために支持ピン51を設置し、この位置を調整することにより、ウェハWの反りを発生させることにより載置面53との間隔を調整し、ウェハWの温度を均一にすることが示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、図5に示すウェハ加熱装置は、均熱板52の載置面53から支持ピンによってウェハを浮かせるために、熱源となる均熱板からウェハへの伝熱形態は、均熱板全体からの輻射伝熱と支持ピンからの熱伝導を組み合わせたものとなるため、両者のバランスが調和していないと、支持ピン部のウェハ温度が低温になったり、逆に高温になるといった課題があった。特に、輻射による伝熱量は均熱板52の輻射特性やウェハまでの距離に大きく左右され、熱伝導による伝熱量は支持ピンのサイズや熱伝導率によって変化する。この不調和はウェハの面内温度差となり、成膜バラツキや、レジスト膜の反応状態を不均一にしてしまうという問題を引き起こした。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明は、セラミックスからなる均熱板の一方の主面に非晶質カーボンを被覆してウェハの載置面とし、他方の主面もしくは内部に発熱抵抗体を有するとともに、該発熱抵抗体と電気的に接続される給電部を前記他方の主面に具備してなるウェハ加熱装置において、前記載置面の表面粗さRaが0.8〜3.2μmであるとともに、前記載置面にウェハを支える複数の支持ピンを備え、かつセラミックスからなる均熱板は、100℃以上における波長λ=8μmでの赤外線放射率εが0.8以上であることを特徴としたものである。
【0011】
また本発明は、前記載置面からの突出高さを0.05〜0.5mmとし、かつ該支持ピンの径はφ2〜φ10mmであり、かつ該支持ピンとウェハの接触面積は支持ピン1本あたり10mm 2以下としたことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0013】
図1は本発明に係わるウェハ加熱装置の1例を示す断面図であり、炭化珪素、炭化硼素、窒化硼素、窒化珪素、窒化アルミニウム、アルミナを主成分とするセラミックスからなる均熱板2の一方の主面を、ウェハWを載せる載置面3とすると共に、他の主面に絶縁層4を介して発熱抵抗体5を形成したものである。
【0014】
発熱抵抗体5のパターンとしては、円弧状の帯状電極部と直線上の帯状電極部とならなる略同心円状をしたものや渦巻き状をしたものなど、載置面3を均一に加熱できるパターン形状であれば良い。均熱性を改善するため、発熱抵抗体5を複数のパターンに分割することも可能である。発熱抵抗体5は、金や銀、パラジウム、白金族の金属や、タングステン、チタン、窒化チタン、ニッケル等の高融点金属を使用することができる。
【0015】
また、発熱抵抗体5には、金や銀、パラジウム、白金等の材質からなる給電部6が形成され、該給電部6に導通端子7を押圧して接触させることにより、導通が確保されている。
【0016】
さらに、均熱板2と支持体11の外周にボルトを貫通させ、均熱板2側より弾性体8、座金18を介在させてナットを螺着することにより弾性的に固定している。これにより、均熱板2の温度を変更したり載置面3にウェハを載せ均熱板2の温度が変動した場合に支持体11変形が発生しても、上記弾性体8によってこれを吸収し、これにより均熱板2の反りを防止し、ウェハW加熱におけるウェハW表面に温度分布が発生することを防止できる。
【0017】
また、金属製の支持体11は、側壁部と板状構造体13を有し、該板状構造体13には、その面積の5〜50%にあたる開口部が形成されている。さらに、該板状構造体13には、必要に応じて他に、均熱板2の発熱抵抗体5に給電するための給電部6と導通するための導通端子7、均熱板2を冷却するためのガス噴出口、均熱板2の温度を測定するための熱電対10を設置する。上記導通端子7は絶縁材9を介して設置され、給電部6に弾性体8により押圧される構造となっている。また、前記板状構造体13は、複数の層から構成されている。
【0018】
また、不図示のリフトピンは支持体11内に昇降自在に設置され、ウェハWを載置面3上に載せたり、載置面3より持ち上げるために使用される。そして、このウェハ加熱装置1により半導体ウェハWを加熱するには、不図示の搬送アームにて載置面3の上方まで運ばれたウェハWをリフトピンにより支持したあと、リフトピンを降下させてウェハWを載置面3上に載せる。次に、給電部6に通電して発熱抵抗体5を発熱させ、絶縁層4及び均熱板2を介して載置面3上のウェハWを加熱する。
【0019】
そして、図2に示すように載置面3には複数の凹部21が形成されており、該凹部21の中にウェハWを支えるための支持ピン20を配置している。そして、前記支持ピン20の載置面3からの突出高さhは、0.05〜0.5mmであり、該支持ピン20の径はφ2〜φ10mmであり、かつ該支持ピン20とウェハWの接触面積は支持ピン1本あたり10mm 2以下となるように調整されている。
【0020】
前記突出高さhが0.05mm未満となると、支持ピン部からの伝熱量が増し、ウェハWに温度ムラが生じるので好ましくない。また、前記突出高さhが0.5mmを越えると
支持ピン部からの伝熱量が低下し、ウェハWに温度ムラが生じるので好ましくない。
これに対し、前記突出高さhを0.05〜0.5mmとすると、支持ピン部からの伝熱と、支持ピン部以外の輻射伝熱のバランスがとれ、ウェハWの温度バラツキを小さくすることができる。
【0021】
ところで、前記支持ピン20の突出高さhのバラツキが15μmを越えると、ウェハWを投入した際の過渡昇温時に、載置面3とのギャップが小さい部分は均熱板2の昇温の影響を大きく受けて温度は速やかに上昇し、逆に前記ギャップが大きい部分はウェハWの温度が遅れながら上昇するので、両者の間で温度差が過大となってしまうので好ましくない。ゆえに、外周上の前記支持ピン20高さのバラツキは、15μm以下とした方が望ましい。
【0022】
また、前記支持ピン20の径をφ2〜φ10mmとしたのは、前記支持ピン20によって阻害されてしまう均熱板2からウェハWへの熱伝達を、前記支持ピン20がウェハWに直接触れることによって得られる熱伝導加熱によって、バランス良く補わなければならないからである。
【0023】
すなわち、前記支持ピン20の径がφ2mmより小さくなると、前記支持ピン20からウェハWに伝わる熱量が減少し、ウェハWの前記支持ピン20で支持部分のみが低温となってしまい、逆に前記支持ピン20の径がφ10mmより大きくなると、前記支持ピン20からウェハWに伝わる熱量が大きすぎて、ウェハWの前記支持ピン20で支持部分のみが高温となってしまうためである。
【0024】
なお、前記支持ピン20は、同心円上に少なくとも3点配置しておけば良い。異なるサイズのウェハに対応する場合等には、用途に応じて多数個配置すれば良い。
【0025】
また、該支持ピン20とウェハWの接触面積を支持ピン1本あたり10mm 2以下としたのは、前記支持ピン20とウェハWの接触面積が10mm2を越えると支持ピン20からの伝熱量が増え、この部分のウェハ温度が上昇しウェハの温度ムラとなってしまうからである。よって、前記支持ピン20は、先細り加工や先端R面加工など先端形状を変化させることによって、前記支持ピン20とウェハの接触面積を支持ピン1本あたり10mm 2以下とし、より望ましくは3mm2以下とした方が良い。なお、ウェハWに対するパーティクル付着を低減させる観点からも、ウェハWに接触する支持ピン20の面積は少ない方が好ましい。
【0026】
この支持ピン20は凹部21に接合せずに単に載置しておくだけでよい。その場合、脱落を防止するために、図3に示すように固定治具24を凹部21の上部に設置する。この固定治具24は、支持ピン20とは接触しても接触しなくても特に支障はなく、固定治具24は市販のスナップリングを用いても何ら問題ない。
【0027】
なお、該支持ピン20の熱伝導率は、一般的なアルミナ等のセラミックスで得られる10〜20W/m・Kであれば、特に問題ない。一方、固定治具24の材質としては、Ni、SUS316、SUS631、42アロイ、インコネル、インコロイ等、耐熱金属のものを使用すべきである。
【0028】
一方、均熱板2は、100℃以上での波長λ=8μmにおける放射率εが0.8以上としておかなければならない。なぜならば、支持ピンを介して熱が伝導される以外のウェハWの加熱は、均熱板2からの熱輻射によって行われるため、この輻射熱量が重要となるためである。
【0029】
すなわち、ウェハWの熱吸収は波長λ=8μm程度で最大となるため、この波長域での均熱板2の赤外線放射率εを0.8以上としておくと、ウェハWの被加熱をより高いものとすることができるのである。ウェハWの赤外線吸収率は、熱源である均熱板2の赤外線波長や温度によって変化してしまうため、最も効率の良い波長帯でウェハWを輻射加熱しなければならない。例えば、W(タングステン)やNi(ニッケル)等の金属は、最大赤外線放射率εの得られる波長が3μm以下であり、8μm以上での赤外線放射率εは0.1以下と極めて小さくなってしまう。そして、SiウェハWは3μmの波長域での赤外線をほとんど透過してしまい、十分に加熱されない。よって、均熱板2を上記金属で構成したり、上記金属でコーティングすることは好ましくないことになる。
【0030】
一般に、物質の赤外線放射率εは、物質によって大まかに分類することもできるが、実際には温度や表面状態や色調によっても大きく変動する。
【0031】
特に、均熱板2の色調については重要で、均熱板2の明度をJISZ 8721に規定するN3以下としておくと、きわめて明度の低い黒色となり、赤外線放射率εを高くすることができる。アルミナや窒化アルミニウムを主成分とするセラミックスは、一般にN5以上の高い明度を有する白〜灰色であるが、ホットプレスやHIP等の焼結方法を用いて、炭素を多く含む雰囲気焼成を行うと、明度を低く抑え、赤外線放射率εを高めることが可能となる。また、高い明度を有する均熱板を、明度の低い材料で覆うことも有用である。具体的には、白〜灰色のアルミナや窒化アルミニウム製の均熱板2に対し、その表面を明度の低い非晶質カーボン(DLC)で、CVDやPVD等の手法を用いて数μm程コーティングすることが重要である。
【0032】
また、均熱板2の表面状態については、滑らかな鏡面仕上げとすると赤外線反射率が高まり、赤外線放射率εが低下してしまう。そこで、表面粗さRaは0.8μm以上としておく方が良い。あまりに粗野な面は洗浄が困難となり、清浄でなくなる虞があるため、好ましくは表面粗さRaを0.8〜3.2μmとしておく方が良い。このようにして、表面粗さRaを適宜調整することによっても赤外線反射率を抑え、赤外線放射率εを高めることが可能となる。
【0033】
このことは、均熱板2が炭化珪素質焼結体や窒化珪素質焼結体や窒化硼素質焼結体など他のセラミックス材料であっても同様の結果となる。なお、このようなウェハ加熱装置を使ったウェハWの処理は、一般に100℃以上で行われるため、均熱板2は100℃以上において、波長λ=8μmでの放射率εが0.8以上であれば良い。
【0034】
もちろん、支持ピン20部分はウェハWへの輻射熱が遮断されてしまうのであるが、支持ピン20の載置面3からの突出高さhと支持ピンの径を最適になるように調整しているので、支持ピン20からの熱伝導によって、輻射熱の代わりに伝熱することができる。
【0035】
また、均熱板2の平坦度に関しては、100μm以下好ましくは50μm以下とすることが好ましい。また、均熱板2を弾性的に支持体11に保持することにより、支持体11内の温度分布によって発生する反りを、この弾性的構造で緩和することができるので、均熱板2の平坦度を維持することが可能となる。
【0036】
このとき、本発明によれば、均熱板2を炭化珪素質焼結体や窒化アルミニウム質焼結体等のセラミックスにより形成してあることから、熱を加えても変形が小さく、板厚を薄くできるため、所定の処理温度に加熱するまでの昇温時間及び所定の処理温度から室温付近に冷却するまでの冷却時間を短くすることができ、生産性を高めることができる。
【0037】
ところで、このような特性を満足するには、均熱板2の板厚を1mm〜7mmとすることが良い。これは、板厚が1mm未満であると、板厚が薄すぎるために温度バラツキを平準化するという均熱板2としての効果が小さく、発熱抵抗体5におけるジュール熱のバラツキがそのまま載置面3の温度バラツキとして表れるため、載置面3の均熱化が難しいからであり、逆に板厚が7mmを越えると、均熱板2の熱容量が大きくなり過ぎ、所定の処理温度に加熱するまでの昇温時間や温度変更時の冷却時間が長くなり、生産性を向上させることができないからである。
【0038】
また、均熱板2を形成するセラミックスとしては、炭化珪素、炭化硼素、窒化硼素、窒化珪素、窒化アルミニウム、アルミナのようないずれか1種以上を主成分とするものを使用することができる。
【0039】
炭化珪素質焼結体としては、主成分の炭化珪素に対し、焼結助剤として硼素(B)と炭素(C)を含有した焼結体や、主成分の炭化珪素に対し、焼結助剤としてアルミナ(Al2O3)とイットリア(Y2O3)を含有し1900〜2200℃で焼成した焼結体を用いることができ、また、炭化珪素はα型を主体とするもの、あるいはβ型を主体とするもののいずれであっても構わない。
【0040】
また、炭化硼素質焼結体としては、主成分の炭化硼素に対し、焼結助剤として炭素を3〜10重量%混合し、2000〜2200℃でホットプレス焼成することにより焼結体を得ることができる。
【0041】
そして、窒化硼素質焼結体としては、主成分の窒化硼素に対し、焼結助剤として30〜45重量%の窒化アルミニウムと5〜10重量%の希土類元素酸化物を混合し、1900〜2100℃でホットプレス焼成することにより焼結体を得ることができる。窒化硼素の焼結体を得る方法としては、他に硼珪酸ガラスを混合して焼結させる方法があるが、この場合熱伝導率が著しく低下するので好ましくない。
【0042】
また、窒化珪素質焼結体としては、主成分の窒化珪素に対し、焼結助剤として3〜12重量%の希土類元素酸化物と0.5〜3重量%のAl2O3、さらに焼結体に含まれるSiO2量として1.5〜5重量%となるようにSiO2を混合し、1650〜1750℃でホットプレス焼成することにより焼結体を得ることができる。ここで示すSiO2量とは、窒化珪素原料中に含まれる不純物酸素から生成するSiO2と、他の添加物に含まれる不純物としてのSiO2と、意図的に添加したSiO2の総和である。
【0043】
また、窒化アルミニウム質焼結体としては、主成分の窒化アルミニウムに対し、焼結助剤としてY2O3やYb2O3等の希土類元素酸化物と必要に応じてCaO等のアルカリ土類金属酸化物を添加して十分混合し、平板状に加工した後、1900〜2100℃でホットプレス焼成することにより得られる。窒化アルミニウムは窒素中で常圧焼成も可能だが、この時の呈色は一般に白〜灰色であって、JISZ 8721に規定する明度がN3より大きくなり、ウェハを加熱するに十分な輻射熱量を得られない。しかし、カーボン雰囲気でホットプレス焼成することによって、JISZ 8721に規定する明度がN3以下の窒化アルミニウム焼結体が得られる。
【0044】
これらの焼結体は、その用途により材質を選択して使用する。例えば、レジスト膜の乾燥に使用する場合は、窒化物は水分と反応してアンモニアガスを発生し、これがレジスト膜に悪影響を及ぼすので使用できない。また、800℃程度の高温で使用する可能性のあるCVD用のウェハ加熱装置の場合は、ガラスを多く含む窒化硼素系の材料は、均熱板2が使用中に変形してしまい均熱性が損なわれてしまう可能性がある。
【0045】
さらに、均熱板2の載置面3と反対側の主面は、ガラスや樹脂からなる絶縁層4との密着性を高める観点から、平面度20μm以下、面粗さを中心線平均粗さ(Ra)で0.1μm〜0.5μmに研磨しておくことが好ましい。
【0046】
一方、炭化珪素質焼結体を均熱板2として使用する場合、多少導電性を有する均熱板2と発熱抵抗体5との間の絶縁を保つ絶縁層4としては、ガラス又は樹脂を用いることが可能であり、ガラスを用いる場合、その厚みが100μm未満では耐電圧が1.5kVを下回り絶縁性が保てず、逆に厚みが350μmを越えると、均熱板2を形成する炭化珪素質焼結体や窒化アルミニウム質焼結体との熱膨張差が大きくなり過ぎるために、クラックが発生して絶縁層4として機能しなくなる。その為、絶縁層4としてガラスを用いる場合、絶縁層4の厚みは100μm〜350μmの範囲で形成することが好ましく、望ましくは200μm〜350μmの範囲で形成することが良い。
【0047】
また、均熱板2を、窒化アルミニウムを主成分とするセラミック焼結体で形成する場合は、均熱板2に対する発熱抵抗体5の密着性を向上させるために、ガラスからなる絶縁層4を形成する。ただし、発熱抵抗体5の中に十分なガラスを添加し、これにより十分な密着強度が得られる場合は、省略することが可能である。
【0048】
次に、絶縁層4に樹脂を用いる場合、その厚みが30μm未満では、耐電圧が1.5kVを下回り、絶縁性が保てなくなるとともに、発熱抵抗体5にレーザ加工等によってトリミングを施した際に絶縁層4を傷付け、絶縁層4として機能しなくなり、逆に厚みが150μmを越えると、樹脂の焼付け時に発生する溶剤や水分の蒸発量が多くなり、均熱板2との間にフクレと呼ばれる泡状の剥離部ができ、この剥離部の存在により熱伝達が悪くなるため、載置面3の均熱化が阻害される。その為、絶縁層4として樹脂を用いる場合、絶縁層4の厚みは30μm〜150μmの範囲で形成することが好ましく、望ましくは60μm〜150μmの範囲で形成することが良い。
【0049】
上記絶縁層4を形成するガラスの特性としては、結晶質又は非晶質のいずれでも良く、例えばレジスト乾燥用に使用する場合、耐熱温度が200℃以上でかつ0℃〜200℃の温度域における熱膨張係数が均熱板2を構成するセラミックスの熱膨張係数に対し−5〜+5×10-7/℃の範囲にあるものを適宜選択して用いることが好ましい。即ち、熱膨張係数が前記範囲を外れたガラスを用いると、均熱板2を形成するセラミックスとの熱膨張差が大きくなりすぎるため、ガラスの焼付け後の冷却時において、均熱板2に反りが発生したり、クラックや剥離等の欠陥が生じ易いからである。
【0050】
また、絶縁層4を形成する樹脂としては、200℃以上の耐熱性と、発熱抵抗体5との密着性を考慮すると、ポリイミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、ポリアミド樹脂等が好ましい。
【0051】
なお、ガラスや樹脂から成る絶縁層4を均熱板2上に被着する手段としては、前記ガラスペースト又は樹脂ペーストを均熱板2の中心部に適量落とし、スピンコーティング法にて伸ばして均一に塗布するか、あるいはスクリーン印刷法、ディッピング法、スプレーコーティング法等にて均一に塗布したあと、ガラスペーストにあっては、600℃の温度で、樹脂ペーストにあっては、300℃以上の温度で焼き付ければ良い。また、絶縁層4としてガラスを用いる場合、予め炭化珪素質焼結体又は炭化硼素質焼結体から成る均熱板2を1200℃程度の温度に加熱し、絶縁層4を被着する表面を酸化処理し酸化膜23を形成することで、ガラスから成る絶縁層4との密着性を高めることができる。
【0052】
さらに、絶縁層4上に被着する発熱抵抗体5としては、金(Au) 、銀(Ag)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)等の金属単体を、蒸着法やメッキ法にて直接被着するか、あるいは前記金属単体や酸化レニウム(Re2O3)、ランタンマンガネート(LaMnO3)等の酸化物を導電材として含む樹脂ペーストやガラスペーストを用意し、所定のパターン形状にスクリーン印刷法等にて印刷したあと焼き付けて前記導電材を樹脂やガラスから成るマトリックスで結合すれば良い。マトリックスとしてガラスを用いる場合、結晶化ガラス、非晶質ガラスのいずれでも良いが、熱サイクルによる抵抗値の変化を抑えるために結晶化ガラスを用いることが好ましい。
【0053】
ただし、発熱抵抗体5に銀又は銅を用いる場合、マイグレーションが発生する恐れがあるため、このような場合には、発熱抵抗体5を覆うように絶縁層4と同一の材質から成る保護膜を30μm程度の厚みで被覆しておけば良い。
【0054】
また、図示しないが、発熱抵抗体5を内蔵するタイプの均熱板2に関しては、熱伝導率が高く電気絶縁性が高い窒化アルミニウム質焼結体を用いることが好ましい。この場合、窒化アルミニウムを主成分とし焼結助剤を適宜含有する原料を十分混合したのち円盤状に成形し、その表面にWもしくはWCからなるペーストを発熱抵抗体5のパターン形状にプリントし、その上に別の窒化アルミニウム成形体を重ねて密着した後、窒素ガス中1900〜2100℃の温度で焼成することにより発熱抵抗体を内蔵した均熱板2を得ることが出来る。また、発熱抵抗体5からの導通は、窒化アルミニウム質基材にスルーホール19を形成し、WもしくはWCからなるペーストを埋め込んだ後焼成するようにして表面に電極を引き出すようにすれば良い。また、給電部6は、ウェハWの加熱温度が高い場合、Au、Ag等の貴金属を主成分とするペーストを前記スルーホール19の上に塗布し900〜1000℃で焼き付けることにより、内部の発熱抵抗体5の酸化を防止することができる。
【0055】
【実施例】
実施例 1
平均粒子径1.2μm程度で、かつ焼結助剤としてのEr2 O 3と、不純物としてのSiO2を含む純度93%以上のAlN粉末に、バインダーと溶媒を添加混合したスラリーをスプレードライにて造粒したのち、100MPaで成形し、真空雰囲気下にて2000℃で焼成して、熱伝導率が100W/(m・K)以上、外径が200mmであり、薄灰色の呈色をした円盤状の窒化アルミニウム焼結体を得た。
【0056】
この焼結体の両主面に研削加工を施し、板厚4mm、外径200mmの円盤状をした均熱板2とし、さらに大気中で1000℃×1時間の熱処理を施し前記焼結体の表面に0.5μm程の酸化膜24を形成した。その後、ガラス粉末に対してバインダーとしてのエチルセルロースと有機溶剤としてのテルピネオールを混練して作製したガラスペーストをスクリーン印刷法にて敷設し、80℃に加熱して有機溶剤を乾燥させたあと、450℃で30分間脱脂処理を施し、さらに700〜900℃の温度で焼き付けを行うことにより、ガラスからなる厚み400μmの絶縁層4を形成した。次いで絶縁層4上に発熱抵抗体5を被着するため、導電材としてAu粉末とPt粉末を混合したガラスペーストを、スクリーン印刷法にて所定のパターン形状に印刷したあと、80℃に加熱して有機溶剤を乾燥させ、さらに450℃で30分間脱脂処理を施したあと、700〜900℃の温度で焼き付けを行うことにより、厚みが30μmの発熱抵抗体5を形成した。
【0057】
発熱抵抗体5は中心部と外周部を周方向に4分割し、中央部を加えた5パターン構成とした。しかるのち発熱抵抗体5に給電部6を導電性接着剤にて固着させることにより、均熱板2を製作した。
【0058】
支持体11は、主面の40%に開口部を形成した厚み2.5mmのSUS304からなる2枚の板状構造体13を準備し、この内の1枚に、熱電対10、10本の導通端子7を所定の位置に形成し、同じくSUS304からなる側壁部とネジ締めにて固定して得た。
【0059】
その後、前記支持体11の上に、均熱板2を重ね、その外周部を弾性体8を介してネジ締めすることにより図1に示した本発明のウェハ加熱装置1とした。
【0060】
その後、バネを有する導通端子7を装着した支持体11にその外周部を弾性体8を介してネジ締めすることにより図1に示した本発明のウェハ加熱装置1とした。
【0061】
この均熱板2の載置面3の表面粗さは、Ra=0.1μm、0.6μm、0.8μm、3.2μm、4.0μmのものを準備し、かつ載置面上にイオンプレーティング法により厚さ0.5μmと2μmのDLC(非晶質カーボン)を被覆した。厚さ2μmのDLC被覆によっても、均熱板2の表面粗さが変化することはなかったが、均熱板2の呈色は厚さ0.5μmのDLC被覆であっても変化し、茶褐色となった。そして、DLC被覆厚みが1μmを越えると、窒化アルミニウム特有の薄灰色の呈色をした均熱板2は、黒色となった。ここで、均熱板2の表面粗さおよびDLC被覆厚みが、JISZ 8721に規定する明度Nおよび赤外線放射率εに及ぼす影響について調べた結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
表1より、赤外線放射率は表面粗さRaや明度Nによって、さまざまに変化することが判る。
【0064】
もちろん、赤外線放射率εは温度によっても変化するが、ウェハ加熱装置は100℃以上での特性が重要であり、100℃以上で必要な特性が達成できれば良い。また、何もDLCコーティングに限らずとも、均熱板2を構成するセラミックスだけで前述の赤外線放射特性が達成できれば良いことは言うまでもない。
【0065】
ところで、均熱板2の表面粗さRaを大きくすることによって、赤外線放射率εを高めることが可能になるものの、表面粗さRaが3.2μmを越えると洗浄が困難となる不具合が認められた。したがって、均熱板2の表面粗さRaは0.8〜3.2μmとするのが良い。なお、赤外線放射率εは、真空中においた黒体の赤外線放射率を1.0とし、これに対する比で表したものであり、ここでは日本分光工業製フーリエ変換赤外分光光度計(FT/IR-5M)を使って求めた。
【0066】
次に、この均熱板2を使って、ウェハWを輻射加熱する実験を行った。均熱板2とウェハの距離は50μmとなるようφ2mmの支持ピンをPCD180mm上の3箇所に設置し、均熱板2を200℃に加熱したとき、ウェハWが飽和する温度を調べた。ただし、ここでは支持ピンで支持した部分のウェハ温度は無視した。この結果を表2に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
表2より、波長λ=8μmでの赤外線放射率εが0.8以上の均熱板2を使うことによって、ウェハWは98%以上の効率で加熱され、好適であることが判る。そして、より望ましくは99%以上の効率が得られる赤外線放射率ε≧0.85の均熱板2を使うのが良いといえる。
【0069】
ところで、ウェハWの赤外線吸収率は、その波長や温度によって変化してしまうため、最も効率の良い波長帯で輻射加熱しなければならない。そこで、前述のDLCの代わりに、WやNiをCVDコーティングすることによって、最大赤外線放射率の得られる波長が異なる均熱板2を製作した。そして、前項と同様に均熱板2を200℃に加熱したとき、ウェハWが飽和する温度を調べた。この結果を表3に示す。
【0070】
【表3】
【0071】
表3より、赤外線放射率ε=0.8の得られる波長λが6〜13μmの均熱板2を使うことによって、ウェハWは97%以上の効率で加熱され好適であることが判る。そして、より望ましくは赤外線放射率ε=0.8の得られる波長λが8μmの均熱板2を使うことによって、ウェハの加熱効率を最大にできることが判った。
【0072】
実施例 2
前述の実験は、支持ピンで支持した部分のウェハ温度を考慮しなかったが、実際には支持ピンからの熱伝導による影響が無視できない。
【0073】
そこで、支持ピンによって生じるウェハ温度ムラに関する実験を行った。
【0074】
図2に示すように均熱板2の載置面3に、均熱板2と同心の180mmφの円上の3等配の位置に凹部21を形成し、支持ピン20の載置面3からの突出高さhを30μm、50μm、100μm、300μm、500μm、600μmとなるように設置したサンプルを準備した。また、支持ピン20の径をφ1mm、φ2mm、φ5mm、φ10mm、φ12mmとし、前記支持ピン20の先端形状を加工することによって、前記支持ピン20とウェハWの接触面積を支持ピン1本あたり3mm2、5mm2、10mm2、15mm2、20mm2とした試料を作製し、支持ピン部と支持ピン部以外のウェハ温度を調べた。
【0075】
なお、均熱板2は表面粗さRa=0.8μmで、前述の0.5μmのDLCコーティングを施し、100℃以上における波長λ=8μmでの赤外線放射率εが0.80であるものを用いた。また、支持ピン20は純度99%・熱伝導率20W/m・Kのアルミナセラミックス製とした。
【0076】
前記支持ピンとウェハの接触面積は、支持ピンの先端形状によって変化させることが可能であり、支持ピンの先端形状は鋭利であっても、R面であっても、前記支持ピンとウェハの接触面積を低減させることができる。
【0077】
このようにして得られた結果を表4に示す。
【0078】
【表4】
【0079】
表4より、ウェハの載置面を基準としたときの支持ピンの突出高さは0.05〜0.5mmであって、かつ前記支持ピンの径はφ2〜φ10mmであり、かつ前記支持ピンとウェハの接触面積は支持ピン1本あたり10mm 2以下であれば、ウェハの温度分布を2℃以下の好適に保てることが判った。
【0080】
また、前記支持ピンとウェハWの接触面積は、10mm 2 を越えると支持ピン部分の伝熱量が増え、この部分のウェハ温度が上昇し温度ムラとなってしまった。温度ムラについては、2℃以上を不合格、2℃未満を合格、1℃未満を特に優れているとして判断した。
【0081】
この結果、前記支持ピン20とウェハの接触面積は支持ピン1pあたり10mm 2 以下、望ましくは3mm2以下が良いことが判った。
【0082】
なお、以上の結果は、均熱板2に100℃以上における波長λ=8μmでの赤外線放射率εが0.80である炭化珪素セラミックスを用いた場合や、支持ピン20に純度93%・熱伝導率15W/m・Kのアルミナセラミックスを用いた場合でも、同じであった。
【0083】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、セラミックスからなる均熱板の一方の主面に非晶質カーボンを被覆してウェハの載置面とし、他方の主面もしくは内部に発熱抵抗体を有するとともに、該発熱抵抗体と電気的に接続される給電部を前記他方の主面に具備してなるウェハ加熱装置において、前記載置面の表面粗さRaが0.8〜3.2μmであるとともに、前記載置面にウェハを支える複数の支持ピンを備え、かつ均熱板の100℃以上における波長λ=8μmでの赤外線放射率εを0.8以上とすることによって、ウェハの輻射加熱を効率良いものとすることができ、かつ支持ピン部における熱伝導量も適正化できることによって、ウェハの温度ムラを極めて小さなものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のウェハ加熱装置を示す断面図である。
【図2】(a)は、本発明のウェハ加熱装置の均熱板の平面図であり、(b)はそのX−X断面図である。
【図3】本発明のウェハ加熱装置の支持ピン載置部の断面図である。
【図4】従来のウェハ加熱装置を示す断面図である。
【図5】従来のウェハ加熱装置の均熱板を示す断面図である。
【符号の説明】
1:ウェハ加熱装置
2:均熱板
3:載置面
4:絶縁層
5:発熱抵抗体
6:給電部
7:導通端子
8:弾性体
10:熱電対
11:支持体
20:支持ピン
21:凹部
24:固定治具
W:ウェハ
Claims (3)
- セラミックスからなる均熱板の一方の主面に非晶質カーボンを被覆してウェハの載置面とし、他方の主面もしくは内部に発熱抵抗体を有するとともに、該発熱抵抗体と電気的に接続される給電部を前記他方の主面に具備してなるウェハ加熱装置において、前記載置面の表面粗さRaが0.8〜3.2μmであるとともに、前記載置面にウェハを支える複数の支持ピンを備え、かつ前記均熱板の100℃以上における波長λ=8μmでの赤外線放射率εが0.8以上であることを特徴とするウェハ加熱装置。
- 前記載置面を基準としたときの前記支持ピンの突出高さは0.05〜0.5mmであることを特徴とする請求項1記載のウェハ加熱装置。
- 前記支持ピンの径はφ2〜φ10mmであり、かつ前記支持ピンとウェハの接触面積は支持ピン1本あたり10mm 2 以下であることを特徴とする請求項1記載のウェハ加熱装置。
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