JP3559549B2 - ウエハ加熱装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主にウエハを加熱するのに用いるウエハ加熱装置に関するものであり、例えば、半導体ウエハや液晶基板あるいは回路基板等のウエハ上に半導体薄膜を生成したり、前記ウエハ上に塗布されたレジスト液を乾燥焼き付けしてレジスト膜を形成するのに好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、半導体製造装置の製造工程における、半導体薄膜の成膜処理、エッチング処理、レジスト膜の焼き付け処理等においては、半導体ウエハ(以下、ウエハと略す)を加熱するためにウエハ加熱装置が用いられている。
【0003】
従来の半導体製造装置は、まとめて複数のウエハを成膜処理するバッチ式のものが使用されていたが、ウエハの大きさが8インチから12インチと大型化するにつれ、処理精度を高めるために、一枚づつ処理する枚葉式と呼ばれる手法が近年実施されている。しかしながら、枚葉式にすると1回当たりの処理数が減少するため、ウエハの処理時間の短縮が必要とされている。このため、ウエハ支持部材に対して、ウエハの加熱時間の短縮、ウエハの吸着・脱着の迅速化と同時に加熱温度精度の向上が要求されていた。
【0004】
このうちウエハ上へのレジスト膜の形成にあたっては、図4に示すような、窒化アルミニウムやアルミナ等のセラミックスからなる均熱板32の一方の主面を、ウエハWを載せる載置面33とし、他方の主面には絶縁層34を介して発熱抵抗体35および給電部36が設置され、さらに弾性体38により導通端子37が給電部36に押圧固定された構造のウエハ加熱装置31が用いられていた。そして、前記均熱板32は支持体41にボルト47により固定され、さらに均熱板32の内部には測温素子40が挿入され、これにより均熱板32の温度を所定の温度に保つように、導通端子37から発熱抵抗体35に供給される電力を調節するシステムとなっていた。また、導通端子37は、板状構造部43に絶縁層39を介して固定されていた。
【0005】
そして、ウエハ加熱装置31の載置面33には、凹部45に挿入された支持ピン44が設置されており、ウエハWを載置面33に載せた際にウエハWが載置面33から非接触となるようにしている。そして、該支持ピン44上にレジスト液が塗布されたウエハWを載せたあと、発熱抵抗体35を発熱させることにより、均熱板32を介して載置面33上のウエハWを加熱し、レジスト液を乾燥焼付けしてウエハW上にレジスト膜を形成するようになっていた。
【0006】
また、均熱板32を構成するセラミック材料としては、窒化物セラミックスまたは炭化物セラミックスが用いられていた。
【0007】
また、測温素子の取付構造については、特開平9−45752号公報に示されている。図5を用いて構造を説明すると、金属製の均熱板62のウエハ載置面63近傍に測温素子64が挿入されている。この測温素子64は、Ptからなる測温抵抗体66が保護管65の中に前記載置面63に対し平行となるように設置されリード線67が結線されている。さらに保護管65内の空所には充填材として伝熱セメント68が充填されている。特に、発熱抵抗体を分割制御する場合は、測定の正確さと同時に測定バラツキを管理しないと均熱板62の正確な温度制御ができなくなるので、このような取付構造とすることが好ましいとされていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のようなウエハ加熱装置において、図5に示すような測温素子64の取付構造では、測温素子64を均熱板62に挿入しただけであるため、長期な熱サイクルを加えると、均熱板62を成すセラミックスと充填材との熱膨張差によるひずみが生じ、熱膨張率が大きな樹脂に固定された測温素子64が凹部45から抜けやすくなり、これにより測定温度がばらついたり、均熱を良くするために熱容量を大きくすると測温の応答速度が遅くなるくという問題があった。特に、発熱抵抗体を複数のブロックに分割して温度制御する場合、ブロック毎の測温素子64の測定温度がばらつくとブロック毎の制御が不均一となり、均熱板62の温度が一定になるまでに時間が掛かるという問題があった。
【0009】
特に、近年半導体配線の微細化の為に用いられるようになってきた化学増幅型レジストの熱処理に於いては、ウエハWを均熱板62上に差し替えした際に温度が安定するまでの過渡特性、ウエハ面内の温度バラツキが、露光後のレジストの化学増幅処理に極めて重要であり、従来に増して、緻密かつ応答性の良い温度制御が必要となってきている。しかしながら、図5に示されるような構造では、測温素子64の測温体部に保護管や充填材など付帯し熱容量が大きくなる上に均熱板62の凹部69に挿入しただけの構造であるために空隙の存在による応答性の低下は避けられず、上記ウエハ加熱時の過渡的な温度バラツキや温度安定までにかかる時間などに問題があった。
【0010】
また、均熱板62のセラミック基板をなす窒化アルミニウムは脆いため、均熱板62の凹部69を生加工時に形成して焼成したり、焼成後に凹部69を形成する場合は、加工時の応力で均熱板62が破壊しないように滑らかな表面になるように加工していた。すなわち、前記凹部69の側面の表面粗さをRmaxで0.25μm程度としていた。前記凹部69の表面粗さをこのようなレベルに加工した場合、初期はウエハ加熱時の過渡的な温度バラツキや温度安定までにかかる時間は問題ないが、熱サイクルを加えて行くと熱膨張率の大きな充填材68が前記凹部69から徐々に抜け出し、応答性の良い温度制御ができなくなるという問題が生じていた。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記の課題について鋭意検討した結果、セラミックスからなる均熱板の一方の主面をウエハ載置面とし、他方の主面または内部に発熱抵抗体を形成してなるウエハ加熱装置において、上記他方の主面からウエハ載置面に向けて凹部を設けると共に、該凹部の少なくとも側面の表面粗さRmaxを0.3〜200μmとし、前記凹部の側面に、深さ方向に対して略垂直な方向のスジを有することが有効であると見出した。
【0012】
また、前記凹部の角部の少なくとも一部に面取部を形成し、該面取部は凹部の深さ方向に対して略垂直な方向のスジを形成することも有効である。
【0013】
また、前記凹部の深さは前記均熱板の厚みの1/2〜3/4であることも有効である。以上のようなことにより、上記課題を更に改善できることを見出した。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
図1は本発明に係るウエハ加熱装置1の一例を示す断面図で、炭化珪素、炭化硼素、窒化硼素、窒化珪素または窒化アルミニウムを主成分とするセラミックスからなる均熱板2の一方の主面を、ウエハWを載せる載置面3とするとともに、他方の主面にガラス又は樹脂等からなる絶縁層4を介して発熱抵抗体5を形成したものである。
【0017】
発熱抵抗体5のパターン形状としては、円弧状の電極部と直線状の電極部とからなる略同心円状をしたものや渦巻き状をしたものなど、載置面3を均一に加熱できるパターン形状であれば良い。均熱性を改善するため、発熱抵抗体5を複数のパターンに分割することも可能である。
【0018】
また、発熱抵抗体5には、金や銀、パラジウム、白金等の材質からなる給電部6が形成され、該給電部6に導通端子7を弾性体8を介して押圧固定することにより、導通が確保されている。
【0019】
さらに、均熱板2と支持体11の外周にボルト17を貫通させ、均熱板2側より弾性体8、座金18を介在させてナット19を螺着することにより支持体11に弾性的に固定している。これにより、均熱板2の温度を変更したり載置面3にウエハを載せ均熱板2の温度が変動した場合に支持体11変形が発生しても、上記弾性体8によってこれを吸収し、これにより均熱板2の反りを防止し、ウエハW加熱におけるウエハW表面に温度分布が発生することを防止できる。
【0020】
また、支持体11は複数の層から構成された板状構造体13と側壁部からなり、該板状構造体13には発熱抵抗体5に電力を供給するための導通端子7が絶縁材9を介して設置され、不図示の空気噴射口や測温素子保持部が形成されている。
【0021】
さらに、図2、3を用いて本発明の実施形態を詳細に説明する。図2は、均熱板2を発熱抵抗体5側から見た平面図であり、均熱板2には各発熱抵抗体5ブロックの内部に測温素子10を保持する部分に凹部21を形成されている。そして、該凹部21には、図3に示すように測温素子10の測温接点10aを配置し、充填材22等により充填保持する。また、測温接点10aは、凹部21の底に接するように設置するか、もしくは前記底からの熱をすぐに検知できるように、Au、Ag、Al等の高熱伝導性の金属箔を介して前記凹部21の底に設置する。
【0022】
測温素子10として用いる熱電対の材質については、Pt/Rh−Pt/Rh系、Pt/Rh−Pt系、Ni/Cr/Si−Ni/Si/Mg系、Ni/Cr−Al/Mn系、Ni/Cr−Cu/Ni系、Cu−Cu/Ni系、W−Re系等が使用可能であり、使用雰囲気や温度に対して適切なものを選定すればよい。例えば、大気中300℃以下で用いるような場合には、Ni/Cr−Al/Mn系やPt/Rh−Pt系やNi/Cr−Cu/Ni系等が望ましく、還元性雰囲気下においては、Fe−Cu/Ni系等が望ましい。
【0023】
また、図3に示すように、測温素子10の先端部には、測温接点10aが形成されている。測温接点10aは、測温検知のバラツキを小さくするために、レーザー溶接等により溶融接合し、均一な形状で形成することが望ましい。また、測温接点10a以降については、素線同士の接触による測温障害を防止するために適当な角度で引き出されているが、測温接点以外からの受熱を避けるため凹部21に接触しない程度の角度にすることが望ましい。
【0024】
また、測温素子10の素線同士の接触による測温障害を防ぐ為、測温接点以降は適当な角度をつけて、素線同士が接触しないように設置することも重要である。また、測温素子10の素線自体に樹脂コート・ガラスコート・セラミックコート等の絶縁材料をコーティングしたものを用いることも有効である。また、必要に応じて、充填保持部以降に絶縁スリーブ等を用いても良い。
【0025】
また、充填材22で保持していない部分については、絶縁性のスリーブ23等で保護することが望ましい。また、素線自体にもガラスコートやセラミックコート等の絶縁被覆を施したものを使用することも可能である。
【0026】
前記凹部21の側面の表面粗さRmaxは、0.3〜200μmとする。さらに好ましくは1〜20μmとすることが望ましい。該凹部21の表面粗さRmaxが0.3μmより小さいと測温素子10の設置及び充填材22の接着力が低下し測温素子10の抜けが生じ易く測温がばらついてしまう。また、前記表面粗さRmaxが200μmより大きいと、加工スジが欠陥となり凹部21が割れてしまう恐れが大きくなるので好ましくない。
【0027】
また、凹部21の加工スジの方向は、凹部21の側面が穴深さ方向に対して略垂直なスジを有するように加工することが望ましい。従来の窒化アルミニウムからなるセラミック基板は、ドクターブレード法によって、厚さ0.5mmのグリーンシートを得、パンチングにより凹部21を設けた為、凹部21の加工スジの方向は、凹部21の側面が穴深さ方向に対して略平行のスジを有していた。前記穴深さ方向に対して略水平なスジ方向であると凹部21と樹脂との接着力が小さくなるため昇降温を繰り返すうちに隙間が発生し測温にずれが生じ、ウエハを目的の温度に昇温させられない。
【0028】
また、前記凹部21の深さdは、均熱板2の厚みtの1/2〜3/4とすることが好ましい。前記深さdが均熱板2の厚みtの1/2未満であると、測温素子10の測温接点10aが発熱抵抗体5の近くにあるので、測温接点10aが発熱抵抗体5から直接加熱されるようになるので、載置面3側の温度が十分上がらないうちに発熱抵抗体5に印加される電力に制動がかかり、均熱板2の温度がなかなか均一にならなくなるので好ましくない。また、前記凹部21の深さdが3/4より大きいと、凹部21の底から載置面3までの距離Lが薄くなるので、測温接点10aへの熱伝導が遅くなり、均熱板2の温度がオーバーシュートしてしまい好ましくない。
【0029】
さらに、測温素子10を固定する充填材22としては、耐熱性樹脂もしくはセラミックセメントを用いることが好ましい。
【0030】
また、凹部21の底部21aおよび入口部分21bにC面もしくはR面の面取り加工を施し、さらにこの面取り部にも、凹部21の深さ方向に対して垂直なスジを加工することが好ましい。
【0031】
以下、測温素子10を固定する凹部21の加工方法および測温素子10の固定方法について説明する。
【0032】
前記凹部21の加工方法としては、まず、加工速度を落として、加工する穴径の80〜95%程度の穴を加工し、その後、狙いの穴径となるように凹部21を形成する。さらに、仕上げ加工として、220番程度の粗いダイヤモンドドリルで凹部21の内面を仕上げ加工して内面の表面粗さを目標のレベルに加工する。この際に形成した凹凸が、測温素子10固定用に凹部21に充填した樹脂を固定するアンカーの役目を果たしてくれる。
【0033】
更に、凹部21に挿入設置する測温素子10の素線径は、0.05mm〜1.0mm、さらに好ましくは0.1〜0.5mmとすることが望ましい。素線径が0.05mmより細いと、強度がなく取り扱いが安定しない為、該凹部21への組み付けの際に位置ずれを起こし易く安定した設置が行えず好ましくない。また、1.0mmより太いと、測温素子10自体の熱容量が大きくなりすぎる為、素線を通しての熱引きが大きくなり温度検知に遅れが生じ、オーバーシュートが大きくなり過ぎるため好ましくない。
【0034】
また、測温素子10として、0.5mmφ以下の外径のシース型熱電対を上記のような方法で固定することも可能である。
【0035】
更に、凹部21に測温素子10を保持するために用いる充填材22は、主成分がアルミナ系、窒化アルミ系、グラファイト系、ジルコニア系等、窒化硼素系の無機系接着剤や主成分がポリイミド系等の有機系接着剤のいずれを用いてもよいが、使用温度や環境に応じて適切なものを選択して使用する。選択基準としては均熱板2との濡れ性、熱膨張率が重要であり、熱膨張率については、均熱板2の熱膨張係数に対して50%〜200%の範囲のものがより望ましい。また、充填については、充填後常温でしばらく放置し脱泡を行うなどして、気泡の巻き込みが生じないように充填することが望ましい。
【0036】
また、充填材22として樹脂を用いた場合、粉末を分散したタイプの充填材22に較べ流動性がいいので、充填時の作業性がよくなる。また、高熱伝導性かつ電気絶縁性のフィラーを分散させると、熱伝導性も改善できる。樹脂の種類としては、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアミドイミド等の耐熱温度が300℃以上の樹脂を用いることが好ましい。これに対し、耐熱温度が200℃以下のエポキシ樹脂、シリコン樹脂等を用いた場合、固着強度は高いが使用中に樹脂が炭化して脆くなり、測温素子10が剥離して正確な温度が測定できなくなる。
【0037】
なお、発熱抵抗体5を複数のゾーンに分割して温度制御する場合は、ゾーンの数に応じて、測温素子10の数を増やすことが好ましい。これにより、ウエハWの温度をより実温に近い値に制御することが可能となる。また、この場合は特に、測温素子10の個々の設置条件を均一にする必要がある。これは、個々の測温素子10間の温度検知がばらつくと、個々の発熱抵抗体5ブロックの制御がばらつき、昇温過渡時のウエハの温度分布に悪影響を与えるためである。
【0038】
さらに、図1において、金属製の支持体11は、側壁部と板状構造体13を有し、該板状構造体13には、その面積の5〜50%にあたる開口部が形成されている。また、該板状構造体13には、必要に応じて他に、均熱板2の発熱抵抗体5に給電するための給電部6と導通するための導通端子7、均熱板2を冷却するためのガス噴出口、均熱板2の温度を測定するための測温素子10を設置する。
【0039】
また、不図示のリフトピンは支持体11内に昇降自在に設置され、ウエハWを載置面3上に載せたり、載置面3より持ち上げるために使用される。そして、このウエハ加熱装置1により半導体ウエハWを加熱するには、不図示の搬送アームにて載置面3の上方まで運ばれたウエハWをリフトピンにより支持したあと、リフトピンを降下させてウエハWを載置面3上に載せる。次に、給電部6に通電して発熱抵抗体5を発熱させ、絶縁層4及び均熱板2を介して載置面3上のウエハWを加熱する。
【0040】
このとき、本発明によれば、均熱板2を炭化珪素質焼結体、炭化硼素質焼結体、窒化硼素質焼結体、窒化珪素質焼結体、もしくは窒化アルミニウム質焼結体により形成してあることから、熱を加えても変形が小さく、板厚を薄くできるため、所定の処理温度に加熱するまでの昇温時間及び所定の処理温度から室温付近に冷却するまでの冷却時間を短くすることができ、生産性を高めることができるとともに、60W/m・K以上の熱伝導率を有することから、薄い板厚でも発熱抵抗体5のジュール熱を素早く伝達し、載置面3の温度ばらつきを極めて小さくすることができる。しかも、大気中の水分等と反応してガスを発生させることもないため、半導体ウエハW上へのレジスト膜の貼付に用いたとしても、レジスト膜の組織に悪影響を与えることがなく、微細な配線を高密度に形成することが可能である。
【0041】
ところで、このような特性を満足するには、均熱板2の板厚を1mm〜7mmとすることが良い。これは、板厚が1mm未満であると、板厚が薄すぎるために温度ばらつきを平準化するという均熱板2としての効果が小さく、発熱抵抗体5におけるジュール熱のばらつきがそのまま載置面3の温度ばらつきとして現れるため、載置面3の均熱化が難しいからであり、逆に板厚が7mmを越えると、均熱板2の熱容量が大きくなり過ぎ、所定の処理温度に加熱するまでの昇温時間や温度変更時の冷却時間が長くなり、生産性を向上させることができないからである。
【0042】
また、以上詳述した本発明のウエハ加熱装置1において、図1に示すように、均熱板2の表面に、絶縁層4を介して発熱抵抗体5を形成し、発熱抵抗体5を露出させてあることから、使用条件等に合わせて載置面3の温度分布が均一となるように、発熱抵抗体5にトリミングを施して抵抗値を調整することもできる。
【0043】
また、均熱板2を形成するセラミックスとしては、炭化珪素、炭化硼素、窒化硼素、窒化珪素、窒化アルミニウムのいずれか1種以上を主成分とするものを使用することができる。炭化珪素質焼結体としては、主成分の炭化珪素に対し、焼結助剤として硼素(B)と炭素(C)を含有した焼結体や、主成分の炭化珪素に対し、焼結助剤としてアルミナ(Al2O3)とイットリア(Y2O3)を含有し1900〜2200℃で焼成した焼結体を用いることができ、また、炭化珪素はα型を主体とするもの、あるいはβ型を主体とするもののいずれであっても構わない。
【0044】
また、炭化硼素質焼結体としては、主成分の炭化硼素に対し、焼結助剤として炭素を3〜10重量%混合し、2000〜2200℃でホットプレス焼成することにより焼結体を得ることができる。
【0045】
そして、窒化硼素質焼結体としては、主成分の窒化硼素に対し、焼結助剤として30〜45重量%の窒化アルミニウムと5〜10重量%の希土類元素酸化物を混合し、1900〜2100℃でホットプレス焼成することにより焼結体を得ることができる。窒化硼素の焼結体を得る方法としては、他に硼珪酸ガラスを混合して焼結させる方法があるが、この場合熱伝導率が著しく低下するので好ましくない。
【0046】
また、窒化珪素質焼結体としては、主成分の窒化珪素に対し、焼結助剤として3〜12重量%の希土類元素酸化物と0.5〜3重量%のAl2O3、さらに焼結体に含まれるSiO2量として1.5〜5重量%となるようにSiO2を混合し、1650〜1750℃でホットプレス焼成することにより焼結体を得ることができる。ここで示すSiO2量とは、窒化珪素原料中に含まれる不純物酸素から生成するSiO2と、他の添加物に含まれる不純物としてのSiO2と、意図的に添加したSiO2の総和である。
【0047】
また、窒化アルミニウム質焼結体としては、主成分の窒化アルミニウムに対し、焼結助剤としてY2O3やYb2O3等の希土類元素酸化物と必要に応じてCaO等のアルカリ土類金属酸化物を添加して十分混合し、平板状に加工した後、窒素ガス中1900〜2100℃で焼成することにより得られる。
【0048】
これらの焼結体は、その用途により材質を選択して使用する。例えば、レジスト膜の乾燥に使用する場合は、窒化物は水分と反応してアンモニアガスを発生し、これがレジスト膜に悪影響を及ぼすので使用できない。また、800℃程度の高温で使用する可能性のあるCVD用のウエハ加熱装置の場合は、ガラスを多く含む窒化硼素系の材料は、均熱板2が使用中に変形してしまい均熱性が損なわれてしまう可能性がある。
【0049】
さらに、均熱板2の載置面3と反対側の主面は、ガラスや樹脂からなる絶縁層4との密着性を高める観点から、平面度20μm以下、面粗さを中心線平均粗さ(Ra)で0.1μm〜0.5μmに研磨しておくことが好ましい。
【0050】
一方、炭化珪素質焼結体を均熱板2として使用する場合、多少導電性を有する均熱板2と発熱抵抗体5との間の絶縁を保つ絶縁層4としては、ガラス又は樹脂を用いることが可能であり、ガラスを用いる場合、その厚みが100μm未満では耐電圧が1.5kVを下回り絶縁性が保てず、逆に厚みが500μmを越えると、均熱板2を形成する炭化珪素質焼結体や窒化アルミニウム質焼結体との熱膨張差が大きくなり過ぎるために、クラックが発生して絶縁層4として機能しなくなる。その為、絶縁層4としてガラスを用いる場合、絶縁層4の厚みは100μm〜500μmの範囲で形成することが好ましく、望ましくは150μm〜400μmの範囲で形成することが良い。
【0051】
炭化珪素質焼結体からなる均熱板2の表面に絶縁層4を形成する場合、予め表面を酸化処理することにより、0.01〜2μm厚みのSiO2からなる酸化膜12を形成したのち、さらにその表面に絶縁層4を形成する。
【0052】
また、均熱板2を、窒化アルミニウムを主成分とするセラミック焼結体で形成する場合は、均熱板2に対する発熱抵抗体5の密着性を向上させるために、ガラスからなる絶縁層4を形成する。ただし、発熱抵抗体5の中に十分なガラスを添加し、これにより十分な密着強度が得られる場合は、省略することが可能である。
【0053】
次に、絶縁層4に樹脂を用いる場合、その厚みが30μm未満では、耐電圧が1.5kVを下回り、絶縁性が保てなくなるとともに、発熱抵抗体5にレーザー加工等によってトリミングを施した際に絶縁層4を傷付け、絶縁層4として機能しなくなり、逆に厚みが400μmを越えると、樹脂の焼付け時に発生する溶剤や水分の蒸発量が多くなり、均熱板2との間にフクレと呼ばれる泡状の剥離部ができ、この剥離部の存在により熱伝達が悪くなるため、載置面3の均熱化が阻害される。その為、絶縁層4として樹脂を用いる場合、絶縁層4の厚みは30μm〜400μmの範囲で形成することが好ましく、望ましくは60μm〜200μmの範囲で形成することが良い。
【0054】
また、絶縁層4を形成する樹脂としては、200℃以上の耐熱性と、発熱抵抗体5との密着性を考慮すると、ポリイミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、ポリアミド樹脂等が好ましい。
【0055】
なお、ガラスや樹脂から成る絶縁層4を均熱板2上に被着する手段としては、前記ガラスペースト又は樹脂ペーストを均熱板2の中心部に適量落とし、スピンコーティング法にて伸ばして均一に塗布するか、あるいはスクリーン印刷法、ディッピング法、スプレーコーティング法等にて均一に塗布したあと、ガラスペーストにあっては、600℃の温度で、樹脂ペーストにあっては、300℃以上の温度で焼き付ければ良い。また、絶縁層4としてガラスを用いる場合、予め炭化珪素質焼結体又は炭化硼素質焼結体から成る均熱板2を1200℃程度の温度に加熱し、絶縁層4を被着する表面を酸化処理しておくことで、ガラスから成る絶縁層4との密着性を高めることができる。
【0056】
さらに、絶縁層4上に被着する発熱抵抗体5としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)等の金属単体を、蒸着法やメッキ法にて直接被着するか、あるいは前記金属単体や酸化レニウム(Re2O3)、ランタンマンガネート(LaMnO3)等の酸化物を導電材として含む樹脂ペーストやガラスペーストを用意し、所定のパターン形状にスクリーン印刷法等にて印刷したあと焼付けて前記導電材を樹脂やガラスから成るマトリックスで結合すれば良い。マトリックスとしてガラスを用いる場合、結晶化ガラス、非晶質ガラスのいずれでも良いが、熱サイクルによる抵抗値の変化を抑えるために結晶化ガラスを用いることが好ましい。
【0057】
ただし、発熱抵抗体5に銀又は銅を用いる場合、マイグレーションが発生する恐れがあるため、このような場合には、発熱抵抗体5を覆うように絶縁層4と同一の材質もしくは発熱抵抗体5のマトリックス成分と同等の材質から成る保護膜を30μm程度の厚みで被覆しておけば良い。
【0058】
また、発熱抵抗体5を内蔵するタイプの均熱板2に関しては、熱伝導率が高く電気絶縁性が高い窒化アルミニウム質焼結体を用いることが好ましい。この場合、窒化アルミニウムを主成分とし焼結助剤を適宜含有する原料を十分混合したのち円盤状に成形し、その表面にWもしくはWCからなるペーストを発熱抵抗体5のパターン形状にプリントし、その上に別の窒化アルミニウム成形体を重ねて密着した後、窒素ガス中1900〜2100℃の温度で焼成することにより発熱抵抗体5を内蔵した均熱板2得ることが出来る。また、発熱抵抗体5からの導通は、窒化アルミニウム質基材にスルーホール19を形成し、WもしくはWCからなるペーストを埋め込んだ後焼成するようにして表面に電極を引き出すようにすれば良い。また、給電部6は、ウエハWの加熱温度が高い場合、Au、Ag等の貴金属を主成分とするペーストを前記スルーホール19の上に塗布し900〜1000℃で焼き付けることにより、内部の発熱抵抗体5の酸化を防止することができる。
【0059】
上記絶縁層4を形成するガラスの特性としては、結晶質又は非晶質のいずれでも良く、例えばレジスト乾燥用に使用する場合、耐熱温度が200℃以上でかつ20℃〜200℃の温度域における熱膨張係数が均熱板2を構成するセラミックスの熱膨張係数に対し−5〜+5×10−7/℃の範囲にあるものを適宜選択して用いることが好ましい。即ち、熱膨張係数が前記範囲を外れたガラスを用いると、均熱板2を形成するセラミックスとの熱膨張差が大きくなりすぎるため、ガラスの焼付け後の冷却時において、均熱板2に反りが発生したり、クラックや剥離等の欠陥が生じ易いからである。
【0060】
【実施例】
実施例 1
熱伝導率が80W/m・Kの炭化珪素質焼結体に研削加工を施し、板厚4mm、外径230mmの円盤状をした均熱板2を複数製作し、各均熱板2の一方の主面に絶縁層4を被着するため、ガラス粉末に対してバインダーとしてのエチルセルロースと有機溶剤としてのテルピネオールを混練して作製したガラスペーストをスクリーン印刷法にて敷設し、150℃に加熱して有機溶剤を乾燥させたあと、550℃で30分間脱脂処理を施し、さらに700〜900℃の温度で焼き付けを行うことにより、ガラスからなる厚み200μmの絶縁層4を形成した。次いで絶縁層4上に発熱抵抗体5を被着するため、導電材としてAu粉末とPt粉末を添加したガラスペーストを、スクリーン印刷法にて所定のパターン形状に印刷したあと、150℃に加熱して有機溶剤を乾燥させ、さらに550℃で30分間脱脂処理を施したあと、700〜900℃の温度で焼き付けを行うことにより、厚みが50μmの発熱抵抗体5を形成した。発熱抵抗体5は中心部と外周部を周方向に4分割した5パターン構成とした。しかるのち発熱抵抗体5に給電部6を導電性接着剤にて固着させることにより、均熱板2を製作した。
【0061】
また、支持体11は、主面の30%に開口部を形成した厚み2.5mmのステンレスからなる2枚の板状構造体13を準備し、この内の1枚に、10本の導通端子7を所定の位置に形成し、同じくステンレスからなる側壁部とネジ締めにて固定して支持体11を準備した。
【0062】
その後、前記支持体11の上に、発熱パターン形成部の略中央部に該凹部21を形成し、測温素子10を設置し、無機系の充填材で保持固定した均熱板2を重ね、その外周部を弾性体8を介してネジ締めすることにより図1に示した本発明のウエハ加熱装置1とした。
【0063】
また、窒化アルミニウムを主成分とし、焼結助剤として5重量%のY2O3を含有する1mmのグリーンシートを5枚積層して5mmにしたグリーンシート上に、WCからなる発熱抵抗体5を所望の形状に形成し、その上に電極引出部となるWCからなるペーストを充填したビアホールを形成した別のグリーンシートを5mm分重ねて密着したものから円盤状の生成形体を切り出し、これを窒素ガス中800℃で脱脂したのち、1900〜2100℃で焼成して円盤状の窒化アルミニウムからなる均熱板2を得た。
【0064】
そして、転写法により金ペーストからなる給電部6を形成し、900℃で焼き付け処理した。その後、発熱パターンの略中央部に該凹部21を形成し、測温素子10を設置し、無機系充填材で保持固定した均熱板2をバネを有する導通端子7を装着した支持体11にその外周部を弾性体8を介してネジ締めした。
【0065】
ここで、実施例、および、比較例に示す該凹部21を形成方法を述べる。
【0066】
該凹部21の表面粗さをRmax0.1〜200の範囲で、凹部21の側面を加工穴方向に対して略垂直にマシニングにて加工し、本発明のウエハ加熱装置1を作製した。種々の表面粗さはダイヤの番定、加工条件(切り込み量)を変えて作製した。該凹部21の深さdを均熱板2の厚みtに対して、d=2t/3、測温素子10である熱電対素線径を0.2mm、更に該凹部21の底面から熱電対の測温接点との距離Lを0.3mmとし、凹部21の側面を加工穴に対して略垂直にマシニングにて加工し、本発明のウエハ加熱装置1を作製した。種々の表面粗さはダイヤの番定、加工条件(切り込み量)を変えて作製した。
【0067】
また、比較例はドクターブレード法によって成形した厚さ1mmのグリーンシートを5枚重ね、凹部21は焼成前にパンチングにより作製し、加工スジの方向は、凹部21の側面が穴深さ方向に対して略水平のスジをドリルのダイヤモンドの番定を変更することにより作製した。
【0068】
そして、このようにして得られた本発明実施例及び比較例の10種類のウエハ加熱装置1の導電端子7に通電して250℃で保持し、載置面3の上に載せたウエハ表面の温度分布を中心とウエハ半径の1/2の周上の6分割点6点の合計7点の温度バラツキが1℃以内となるように温度コントローラーの設定温度を各発熱パターンの制御チャンネル毎に補正し、その設定バラツキを確認した。また、150℃でも同様の設定温度の補正を行い、ウエハを外し加熱装置のみで60分以上保持した後、常温に維持されたウエハWを、加熱装置に投入、載置面3に載せた瞬間から150℃に安定するまでのウエハWのオーバーシュート、および150±0.5℃に安定するまでの昇温安定時間を過渡性能評価として、各サンプル5回づつ計測し、その最大値を測定値とした。
【0069】
常温から250℃の昇温サイクルを繰り返し3000サイクル経過後に、250℃に保持した場合の均熱板2面内温度バラツキ、150℃オーバーシュート、昇温安定性を評価した。
【0070】
評価基準としては、昇温サイクル前の結果を基準として、昇温サイクル後の結果が、50%以上変化しているものをNG、50%以内であるものをOKとした。
【0071】
それぞれの結果は表1に示す通りである。
【0072】
【表1】
【0073】
表1から判るように、No.1は、加工スジの方向が水平のため、昇温サイクル時に均熱板2と充填材22の熱膨張率の差により充填材22が抜ける方向に変化し、測温素子10の設置に変化が生じた。また、No.2は、該凹部21の開口部の表面粗さが0.3μmより小さいため、昇温サイクルを掛けた際に均熱板2と充填材22の熱膨張率の差により充填材22が抜けるように移動し、このため250℃までの昇温3000サイクルテスト後のウエハ面内の温度バラツキ、オーバーシュートが悪くなった。
【0074】
また、No.8については、該凹部21の開口部の表面粗さが大きくなりすぎて、加工の際、該凹部21の開口部に亀裂が生じてしまった。
【0075】
これに対し、本特許の請求範囲内で作製されたウエハ加熱装置1であるNo.3〜7、9については、いずれも目標値をクリアーできた。
【0076】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、セラミックスからなる均熱板の一方の主面をウエハの載置面とし、他方の主面もしくは内部に発熱抵抗体を有するとともに、該発熱抵抗体と電気的に接続される給電部を前記他方の主面に具備してなるウエハ加熱装置において、前記均熱板の他方の主面に開口部表面粗さRmax0.1〜200μm、加工スジの方向が穴深さ方向に対して略垂直、深さdが均熱板厚みtに対し t/4≦d≦3t/4 となる凹部を具備し、素線径0.05〜1.0mmで、先端部に測温接点を備えた測温素子を上記凹部に挿入し、かつ充填材により接着固定することにより、良好なウエハの温度調整ができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のウエハ加熱装置を示す断面図である。
【図2】本発明のウエハ加熱装置の均熱板を示す平面図である。
【図3】本発明のウエハ加熱装置の測温素子設置部を示す断面図である。
【図4】従来のウエハ加熱装置を示す断面図である。
【図5】従来のウエハ加熱装置の測温素子設置部を示す断面図である。
【符号の説明】
1:ウエハ加熱装置
2:均熱板
3:載置面
4:絶縁層
5:発熱抵抗体
6:給電部
7:導通端子
8:弾性体
10:測温素子
11:支持体
21:凹部
22:充填材
W:半導体ウエハ
t:厚み
Claims (4)
- セラミックスからなる均熱板の一方の主面をウエハ面載置面とし、他方の主面または内部に発熱抵抗体を形成してなるウエハ加熱装置において、上記他方の主面からウエハ載置面に向けて凹部を設けると共に、該凹部の少なくとも側面の表面粗さRmaxを0.3〜200μmとし、前記凹部の側面に、深さ方向に対して略垂直な方向のスジを有することを特徴とするウエハ加熱装置。
- 前記凹部の角部の少なくとも一部に面取部を形成し、該面取部は凹部の深さ方向に対して略垂直な方向のスジを有することを特徴とする請求項1記載のウエハ加熱装置。
- 前記凹部の深さは前記均熱板の厚みの1/2〜3/4であることを特徴とする請求項1または2に記載のウエハ加熱装置。
- 前記凹部に測温素子を配置して充填材を充填したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のウエハ加熱装置。
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