JP3904433B2 - 導電性ペーストとそれを用いた導電パターンの形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性ペーストと、それを用いた導電パターンの形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子機器の発達により、電気回路等に利用される微細な導電パターンを、精度よくしかも効率よく形成する技術の重要性が増加する傾向にある。
導電パターンには、線幅が極めて細く微細であっても、表面が平坦でかつエッジがシャープに再現されており、しかも断線などの不良を生じないことが必要とされる。
【0003】
かかる高精度の導電パターンを形成するための代表的な方法としてはフォトリソグラフ法が挙げられる。しかしフォトリソグラフ法は、使用する設備に極めて高い精度とクリーン度とが要求され、製造工程が煩雑で、しかも有害な廃液が多量に生じることから環境に対する負荷や廃液処理に要する負担も大きいという問題がある。このため製造コストが極めて高くついてしまう。
そこで近年、印刷法を用いて導電パターンを形成することが試みられている。
【0004】
印刷法は、導電成分とバインダ樹脂とを含む導電性ペーストを用いて、被印刷物上に印刷パターンを形成したのちこれを乾燥させ、さらに必要に応じて焼成して樹脂を分解除去することで導電パターンを形成する方法であって、製造工程が簡単で量産性に優れている。
印刷法には種々があるが、中でも凹版オフセット印刷法は、微細なパターンを高い寸法精度で形成できることから、微細な導電パターンの形成に適していると考えられる。
【0005】
凹版オフセット印刷法においては、まず凹版の表面に形成した、パターンに対応した凹部内に導電性ペーストを充てんして印刷パターンを形成する。次にこの凹版に、ブランケットなどの転写体を圧接させることで、印刷パターンを転写体の表面に転写させる。そしてこの転写体を被印刷物に圧接させることで、印刷パターンを当該被印刷物上に再度転写させたのち乾燥させ、さらに必要に応じて焼成すると導電パターンを形成することができる。
【0006】
とくに焼成によって樹脂を完全に分解、除去する場合には、導電パターンを任意の、目的とする抵抗値の範囲まで低抵抗化することが容易である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
転写体としては、被印刷物への印刷パターンの転写性を高めるために、少なくともその表面を、転写時の印刷パターンの離型性に優れたシリコーンゴムによって形成したものが広く用いられる。
上記の転写体においては、シリコーンゴムの内部に、当該シリコーンゴムを加硫させる際に生じた比較的低分子量の成分としてシリコーンオイルが含まれており、このシリコーンオイルが徐々に転写体の表面にブリージングすることで、印刷パターンの離型性が確保されている。
【0008】
しかしブリージングしたシリコーンオイルのかなりの部分は、印刷パターンとともに被印刷物上に移動してしまうため、とくに連続的に印刷を繰り返した際には、内部からのブリージングによるシリコーンオイルの供給が追いつかず、転写体表面のシリコーンオイルの量が徐々に減少して、印刷パターンの転写体からの離型性が徐々に低下する。またシリコーンゴムは、導電性ペースト中に含まれる溶剤に対する耐性が不十分で、印刷を繰り返すと溶剤によって徐々に膨潤して変形したり、印刷時の圧縮特性が不均一に変化したりする。
【0009】
このため、形成される導電パターンの、とくにエッジ部の形状に乱れを生じるなどの問題がある。それゆえ従来は、転写体を、印刷をおよそ100回程度、行うごとに交換する必要があった。
そこでこの問題を解決するため、特開平9−71061号公報では、印刷を1回ないし数回、行うごとに、転写体の表面に撥水剤を塗布すること、転写体の表面を、シリコーンゴムよりも導電性ペースト中の溶剤や上記撥水剤などに強いゴムによって形成することが提案された。
【0010】
しかしブランケットの表面に、撥水剤をムラなく塗布することは困難であり、ほとんどの場合、塗布ムラを生じる。そしてこの塗布ムラがそのまま印刷パターンのムラとなって表れるため、形成される導電パターンの、とくにエッジ部の形状に却って乱れを生じやすいという問題がある。
本発明の目的は、転写体表面の経時的な変化を抑制しつつ、印刷パターンの、転写体から被印刷物への転写性を良好な状態で安定させることができるため、凹版オフセット印刷法などによって、ムラなどのない良好な導電パターンを、転写体を頻繁に交換することなく連続して形成することができる、新規な導電性ペーストを提供することにある。
【0011】
また本発明の他の目的は、上記導電性ペーストを用いて、被印刷物上に、良好な導電パターンを連続的に形成するための導電パターンの形成方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
請求項1記載の発明は、導電成分とバインダ樹脂と、バインダ樹脂100重量部あたり8〜150重量部のシリコーンオイルとを含有しており、凹版の凹部に充てんしてパターン形成し、次いで形成した印刷パターンを、凹版から、少なくともその表面をシリコーンゴムにて形成した転写体の表面に転写させたのち、転写体から基材表面に転写させて、当該基材表面に、凹版のパターンに対応した導電パターンを形成するために用いられることを特徴とする導電性ペーストである。
請求項1の構成では、凹版オフセット印刷法などによって、印刷パターンを凹版から転写体に転写させるたびごとに、転写体の表面に、当該印刷パターン中に含まれる新たなシリコーンオイルが供給される。
【0013】
このため転写体の表面には、常に十分な量のシリコーンオイルが存在することになり、印刷パターンを転写体から被印刷物へ転写させる際の離型性を維持することができる。また転写体の表面に存在するシリコーンオイルは、導電性ペースト中の溶剤による、とくにシリコーンゴム製の転写体の膨潤を抑制するためにも機能する。
したがって請求項1の構成によれば、転写体表面の経時的な変化を抑制しつつ、印刷パターンの、転写体から被印刷物への転写性を良好な状態で安定させることができるため、凹版オフセット印刷法などによって、良好な導電パターンを、転写体を頻繁に交換することなく連続して形成することが可能となる。
【0014】
なおシリコーンオイルの量が、バインダ樹脂100重量部あたり8重量部未満では、導電性ペーストにシリコーンオイルを含有させたことによる上述した作用効果が得られない。そして印刷を繰り返した際に、転写体表面のシリコーンオイルの量が徐々に減少して、印刷パターンの転写体からの離型性が徐々に低下したり、とくにシリコーンゴム製の転写体が、導電性ペースト中の溶剤によって膨潤したりする。
【0015】
また逆に、シリコーンオイルの量が、バインダ樹脂100重量部あたり150重量部を超えてもそれ以上の添加効果が得られないだけでなく、過剰のシリコーンオイルの、離型剤としての機能によって、印刷パターンの、転写体から被印刷物への転写性が低下してしまう。
したがって請求項1の構成では、シリコーンオイルの量を、前記のようにバインダ樹脂100重量部あたり8〜150重量部とする必要がある。
【0016】
またシリコーンオイルを添加したことによる、上述した作用効果をより一層、良好に発揮させるためには、当該シリコーンオイルの、バインダ樹脂100重量部あたりの含有量は、上記の範囲内でもとくに15〜100重量部であるのが好ましい。
したがって請求項2記載の発明は、シリコーンオイルを、バインダ樹脂100重量部あたり15〜100重量部含有する請求項1記載の導電性ペーストである。
【0017】
バインダ樹脂としては、とくに焼成して導電パターンを形成することを考慮すると、焼成する分解温度が比較的低いアクリル系樹脂が好ましい。
また、かかるアクリル系樹脂を溶解する溶剤としては、シリコーンオイルとの相溶性にも優れるため均一な導電性ペーストを形成しうる、ブチルカルビトールアセテートが好ましい。
したがって請求項3記載の発明は、バインダ樹脂がアクリル系樹脂であり、当該アクリル系樹脂を溶解する溶剤としてブチルカルビトールアセテートを含有する請求項1記載の導電性ペーストである。
【0018】
さらに導電成分としては、とくに焼成して導電パターンを形成することを考慮すると金属粉末が好ましく、かかる金属粉末としては、導電パターンの導電性等を考慮すると、Cu、Ni、Au、Pb、Sn、Cr、Ag、Fe、Ti、Al、Co、Wからなる群より選ばれた1種の金属、2種以上の金属の合金、または2種以上の金属のめっき複合体からなるものが好ましい。
したがって請求項4記載の発明は、導電成分として、Cu、Ni、Au、Pb、Sn、Cr、Ag、Fe、Ti、Al、Co、Wからなる群より選ばれた1種の金属、2種以上の金属の合金、または2種以上の金属のめっき複合体からなる金属粉末を用いる請求項1記載の導電性ペーストである。
【0019】
また上記金属粉末の中では、導電性とコスト、そして耐酸化性、すなわち絶縁性の高い酸化物を生成しにくい特性を考慮すると、とくにAg粉末が好適であり、その含有割合は、バインダ樹脂100重量部あたり500〜2000重量部であるのが好ましい。
Ag粉末の含有割合が、バインダ樹脂100重量部あたり500重量部未満では、とくに印刷パターンを焼成して導電パターンを形成する際の寸法変化量が大きくなるため、寸法精度の高い良好な導電パターンを形成するのが容易でない。また、Ag粉末の充てん密度が低下して、導電パターンの導電性が低下するおそれもある。
【0020】
一方、Ag粉末の含有割合が、バインダ樹脂100重量部あたり2000重量部を超えた場合には、当該Ag粉末同士を結合させるバインダ樹脂の結合力が弱まるために、やはり導電パターンの導電性が低下するおそれがある。
したがって請求項5記載の発明は、導電成分がAg粉末であり、当該Ag粉末を、バインダ樹脂100重量部あたり500〜2000重量部含有する請求項4記載の導電性ペーストである。
【0021】
さらに請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の導電性ペーストを凹版の凹部に充てんしてパターン形成し、次いで形成した印刷パターンを、凹版から、少なくともその表面をシリコーンゴムにて形成した転写体の表面に転写させたのち、転写体から基材表面に転写させて、当該基材表面に、凹版のパターンに対応した導電パターンを形成することを特徴とする導電パターンの形成方法である。
【0022】
請求項6の構成によれば、上述した本発明の導電性ペーストの働きによって、被印刷物上に、良好な導電パターンを連続的に形成することが可能となる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を説明する。
〔導電性ペースト〕
本発明の導電性ペーストは、前記のように導電成分とバインダ樹脂とシリコーンオイルとを含有するものである。
(シリコーンオイル)
上記のうちシリコーンオイルとしては、常温もしくは印刷時の温度条件下で液状を呈する、種々のシリコーンオイルが、何れも使用可能である。かかるシリコーンオイルとしては、例えばストレートシリコーンオイルに分類されるジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルや、これらストレートシリコーンオイルの分子中に種々の有機基を導入した変性シリコーンオイルなどがあげられる。
【0024】
シリコーンオイルの、導電性ペースト中での含有割合は、バインダ樹脂100重量部あたり8〜150重量部に限定され、その中でもとくに15〜100重量部であるのが好ましい。これらの理由は先に説明したとおりである。
(導電成分)
導電成分としては金属粉末の他、導電性を有する金属化合物の粉末、カーボンブラックやグラファイト粉末等の炭素粉末などが挙げられ、特に金属粉末が好適に使用される。
【0025】
金属粉末としては、Cu、Ni、Au、Pb、Sn、Cr、Ag、Fe、Ti、Al、Co、Wからなる群より選ばれた1種の金属、2種以上の金属の合金、または2種以上の金属のめっき複合体(例えば銀メッキ銅)からなるものがあげられる。
金属粉末は、印刷パターンを焼成してバインダ樹脂を除去することで導電パターンを形成する際の寸法安定性を高めて、導電パターンの寸法精度を向上するという観点から、その充填密度が高いほど好ましい。
【0026】
また形成される導電パターンの導電性は、使用する金属粉末自体の体積固有抵抗のみで決まるものではなく、パターン中での金属粉末間の接触抵抗によっても大きく左右される。例えば、パターン内部に金属粒子が高密度で充填されていても、金属粉末間の接触抵抗が大きければ、導電パターンの全体としての導電性は低くなる。
それゆえ金属粉末としては、金属粉末同士の接触面を大きくすることを考慮して鱗片状や、あるいは球状でかつ粒径の小さいものが好ましく使用されるが、例えば粟状などの、他の形状のものを排除するものではない。
【0027】
上記金属粉末としては、とくにAg粉末が好適に使用され、かかるAg粉末の、導電性ペースト中での含有割合は、バインダ樹脂100重量部あたり500〜2000重量部であるのが好ましい。これらの理由も、先に説明したとおりである。
なお、より良好な特性を有する導電パターンを形成することを考慮すると、Ag粉末の、導電性ペースト中での含有割合は、上記の範囲内でもとくに、バインダ樹脂100重量部あたり1000〜1400重量部であるのがさらに好ましい。
【0028】
(バインダ樹脂)
バインダ樹脂としては、例えばアクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル−メラミン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ−メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリエステルなどが挙げられる。
中でも、前記のようにとくに焼成して導電パターンを形成することを考慮すると、アクリル系樹脂が好ましい。
【0029】
アクリル系樹脂としては、熱可塑性アクリル系樹脂、熱硬化性アクリル系樹脂、紫外線硬化性アクリル系樹脂等の、アクリル酸、メタクリル酸もしくはこれらのエステル類を主成分とするアクリル系の主鎖を備えた種々のアクリル系樹脂が、いずれも使用可能である。
またアクリル系樹脂としては、導電性ペーストに使用される溶剤に対する溶解性に優れた、重量平均分子量Mwが10000〜500000程度のものが好ましい。
【0030】
さらにアクリル系樹脂としては、500℃以上の高温で焼成すると完全に分解し、ガス化してパターン中から除去しうるものが好ましい。
(その他の成分)
導電性ペーストには、上記各成分の他に、種々の成分を配合することができる。
例えば導電性ペーストには、焼成後の導電パターン中で、バインダ樹脂に代わってバインダとして機能させるべく、ガラスフリット等の無機の結着剤を添加してもよい。その添加量は特に限定されないが、バインダ樹脂100重量部に対して5〜20重量部であるのが好ましい。
【0031】
溶剤は、前記バインダ樹脂を溶解するとともに導電性粉末やガラスフリットを分散して、凹版オフセット印刷に適した粘度を有する導電性ペーストを形成するためのものである。シリコーンオイルは、溶剤の種類によって、つまり溶剤との相溶性の大小に応じて、バインダ樹脂とともに溶剤中に溶解する場合と、溶解せずに、導電性粉末やガラスフリットとともに溶剤中に分散する場合とがあるが、この何れでも構わない。
【0032】
上記溶剤としては、従来公知の種々の溶剤の中から、例えばその沸点が150℃以上であるものが好適に使用される。溶剤の沸点が150℃未満では印刷時に乾燥しやすくなって、導電性ペーストが経時変化を起こしやすくなるためである。
かかる溶剤の具体例としては、例えばアルコール類〔ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ベンタデカノール、ステアリルアルコール、セリルアルコール、シクロヘキサノール、テルピネオールなど〕や、アルキルエーテル類〔エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテートなど〕があげられ、この中から1種または2種以上が、印刷適性や作業性等を考慮して適宜、選択される。
【0033】
とくにブチルカルビトールアセテートは、アクリル樹脂を好適に溶解しうる上、前述したようにシリコーンオイルとの相溶性にも優れており、均一な導電性ペーストを形成できるため、好適に使用される。
なお溶剤として高級アルコールを使用する場合は、導電性ペーストの乾燥性や流動性が低下するおそれがあるため、これらよりも乾燥性が良好なブチルカルビトール、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテートなどを併用すればよい。
【0034】
溶剤は、導電性ペーストの粘度が50〜2000ポイズ(P)程度、特に200〜1000P程度となるように、その添加量を調整するのが好ましい。
導電性ペーストの粘度がこの範囲を下回るか、あるいは逆に上回った場合には、そのいずれにおいても、導電性ペーストの印刷適性が低下して、微細なパターンを形成できなくなるおそれがあるからである。
導電性ペーストは、上記の各成分を配合し、十分に攪拌混合したのち、混練することによって調製される。
【0035】
〔導電パターンの形成方法〕
本発明の導電パターンの形成方法は、上記本発明の導電性ペーストを凹版の凹部に充てんしてパターン形成し、次いで形成した印刷パターンを、凹版から、少なくともその表面をシリコーンゴムにて形成した転写体の表面に転写させたのち、転写体から基材表面に転写させて、当該基材表面に、凹版のパターンに対応した導電パターンを形成する方法である。
【0036】
(凹版)
凹版としては、平板状の基板の表面に、印刷パターンに対応した所定の凹部を形成した平板状のものや、平板状のものを円筒状に巻き付けたもの、最初から円筒状に形成したもの、あるいは円柱状のものなどがあげられる。
基板は、表面の平滑性が重要である。平滑性が悪いと、導電性ペーストを、例えばドクターブレードによって凹版の凹部に充てんする際に、凹版表面の、凹部以外の個所に導電性ペーストのかき残りが生じて、非画線部の汚れ(地汚れ)が発生する。
【0037】
平滑性の程度については特に限定されないが、十点平均粗さで表しておよそ1μm以下程度であるのが好ましく、0.5μm以下程度であるのがさらに好ましい。
基板としては、たとえばソーダライムガラス、ノンアルカリガラス、石英ガラス、低アルカリガラス、低膨張ガラスなどのガラス製の基板のほか、フッ素樹脂、ポリカーポネート(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエステル、ポリメタクリル樹脂等の樹脂板、ステンレス、銅、ニッケル、低膨脹合金アンバー等の金属基板などが使用可能である。中でも、最も安価に表面平滑性の良好な凹版を製造できる上、パターンのエッジ形状を非常にシャープに形成することが可能なガラス製のものを用いるのが好ましい。
【0038】
ただし、LSIなどの分野でフォトリソグラフ用の印刷原版などに用いられるノンアルカリガラスは非常に高価であるため、凹版オフセット印刷用の凹版程度の精度であれば、ソーダライムガラスで十分である。
凹版の凹部は、フォトリングラフ法、エッチング法もしくは電鋳法等により形成される。
凹部の深さは、目的とする印刷パターンの厚みに応じて適宜、設定すればよいが、凹部内への導電性ペーストの残り(通常は、その深さの約半分量程度の導電性ペーストが凹部内へ残る)や、あるいは溶剤の蒸発による印刷後の厚みの減少などを考慮すると、およそ1〜50μm程度、特に3〜20μm程度であるのが好ましい。
【0039】
(転写体)
転写体は、その表面をシリコーンゴムにて形成したものであれば特に限定されないが、導電性ペーストの離型性を示す指標としての表面エネルギーの値が15〜30dyn/cm、特に18〜25dyn/cmであるものが好ましい。
かかる転写体は導電性ペーストの離型性に優れており、凹版から転写された印刷パターンをほぼ100%、被印刷物上に転写することができる。
【0040】
シリコーンゴムとしては加熱硬化型(HTV)、室温硬化型(RTV)等の種々のシリコーンゴムがあげられるが、特に室温硬化型の付加型シリコーンゴムが、硬化の際に副生成物を全く発生せず、寸法精度において優れている。
転写体の表面の硬さは、印刷精度などを考慮すると、日本工業規格JIS K6301-1975「加硫ゴム物理試験方法」に規定されたスプリング式硬さ(JIS A硬さ)で表して20〜70°、特に30〜60°であるのが好ましい。
【0041】
表面の硬さがこの範囲を超える硬い転写体は、凹版オフセット印刷において凹版に圧接した際に、その表面が凹部内に十分に圧入されないため、凹部内の導電性ペーストが転写体の表面に十分に転写されず、精度のよい印刷を行えないおそれがある。また表面の硬さがこの範囲未満の柔らかい転写体は、凹版オフセット印刷において凹版や被印刷物に圧接した際に表面の変形が大きくなるため、やはり精度のよい印刷を行えないおそれがある。
【0042】
また転写体の表面は、これも印刷精度などを考慮すると平滑で、その表面の凹凸などが印刷に影響を及ぼさないことが好ましく、具体的には十点平均粗さで表して1.0μm以下、特に0.5μm以下であるのが好ましい。
転写体の形状はブランケット状(シート状)のもの(円筒状の胴に巻き付けるなどして使用)、ローラ状のもの、あるいは印刷ずれの生じないものであればパット印刷等に用いられる曲面状の弾性体などであってもよい。
【0043】
(凹版オフセット印刷)
凹版オフセット印刷においては、まず前記凹版の、印刷パターンに対応した凹部に、従来同様にドクターブレード等を用いて、本発明の導電性ペーストを充てんして印刷パターンを形成する。
次にこの凹版に転写体を圧接させて、印刷パターンを転写体に転写したのち、この転写体を被印刷物に圧接させて、印刷パターンを、当該被印刷物上に再度転写する。
【0044】
そして印刷パターンを乾燥させると、凹版オフセット印刷が完了する。
(焼成)
印刷後の印刷パターンは、単に乾燥するだけで、導電パターンとして使用しうる場合もあるが、より低抵抗化された導電パターンを形成するには焼成して、バインダ樹脂を除去するのが好ましい。
この焼成により、印刷パターン中のバインダ樹脂が分解し、ガス化してパターン中から除去される。それとともに導電性粉末が焼結されて、任意の、目的とする抵抗値の範囲まで低抵抗化された導電パターンが形成される。
【0045】
また、前記のようにガラスフリット等の無機の結着剤を添加している場合は、当該結着剤が溶融し、導電性粉末間に浸透して、バインダ樹脂に代わってバインダとして機能するため、導電パターンの強度を高めることができる。
またシリコーンオイルは、場合によっては先の乾燥工程で一部が蒸発、除去されることもあるが、その大部分は印刷パターン中に残っており、それがこの焼成によって分解、除去される。
【0046】
焼成の温度は特に限定はされないが、アクリル系樹脂等のバインダ樹脂やシリコーンオイルを完全に分解、除去するためには500℃以上であるのが好ましい。ただしあまりに高温であると、昇温および降温に長時間を要するなど、膨大なエネルギー消費を生じるおそれがある。それゆえ被印刷物の耐熱温度等も併せ考慮した上で、好適な焼成温度を設定するのが望ましいが、通常は650℃以下、特に600℃以下であるのが好ましい。
【0047】
上記の形成方法によって導電パターンを形成する対象物としては、配線基板の電気回路の他、プラズマディスプレイパネル(PDP)の前面および背面電極や、あるいはPDPなどの表示素子の前面に配置されて電磁波をシールドする電磁波シールド部材等が挙げられる。これらの、比較的面積の広い被印刷物に対して導電パターンを形成する際に、本発明の形成方法は特に有効である。
【0048】
【実施例】
以下、実施例、比較例を挙げて本発明を説明する。
実施例1
〔導電性ペーストの調製〕
下記の各成分を十分にかく拌、混合したのち、3本ロールで混練して導電性ペーストを調製した。
【0049】
なおアクリル系樹脂としては、共栄社化学(株)製の商品名オリコックス(重量平均分子量Mw:50000〜200000)を用いた。銀粉末としては、平均粒径5μmの鱗片状のものを用いた。さらにジメチルシリコーンオイルとしては、信越化学工業(株)製のKF96を用いた。
【0050】
〔導電パターンの形成〕
上記の導電性ペーストを、下記の凹版、および転写体としてのシリコーンブランケットを使用した凹版オフセット印刷法によって、被印刷物としてのガラス基板の表面に印刷した。
(凹版)
ソーダライムガラス製の、平板状の基板の表面に、幅150μm、深さ30μmの直線を、150μmのピッチで多数、ストライプ状に形成したもの。
【0051】
(シリコーンブランケット)
最表面に、スプリング式硬さ(JIS A硬さ)が40°の、付加型RTVシリコーンゴムの層(十点平均粗さ0.3μm)を形成したもの。
次に、クリーンオーブンを用いて、100℃で1時間、加熱乾燥させることで、上記凹版のパターンに対応したストライプ状の印刷パターンを形成した。
そしてこの印刷パターンを形成したガラス基板を、オーブンを用いて、さらに550℃で1時間、焼成して樹脂とシリコーンオイルとを完全に分解、除去して導電パターンを形成した。
【0052】
上記導電パターンの形成工程を、同じ凹版、および同じシリコーンブランケットを用いて1000回、連続して行った後、印刷1回目と1000回目に形成した導電パターンを、電子顕微鏡を用いて観察した。そうしたところ印刷1回目の導電パターンは、図1に示すようにエッジ部に形状の乱れのない良好なものであった。また印刷1000回目の導電パターンも図1とほとんど変わらない、エッジ部に形状の乱れのない良好なものであった。
【0053】
また1000回の形成工程の間、シリコーンブランケットの表面を目視にて観察したが、その表面に導電性ペーストの残留は見られなかった。また1000回の形成工程を行った後のシリコーンブランケットの表面を観察したが、膨潤などは見られず、使用前の状態を維持していた。
比較例1
シリコーンオイルを含有させなかったこと以外は実施例1と同様にして導電性ペーストを調製し、この導電性ペーストを使用したこと以外は実施例1と同様にして、導電パターンの形成工程を、同じ凹版、および同じシリコーンブランケットを用いて1000回、連続して行った。そして印刷1回目と1000回目の導電パターンを、電子顕微鏡を用いて観察したところ、印刷1回目の導電パターンは、図1とほとんど変わらない、エッジ部に形状の乱れのない良好なものであった。しかし印刷1000回目の導電パターンは、図2に示すように、エッジ部に形状の大きな乱れが観察された。
【0054】
また1000回の形成工程の間、シリコーンブランケットの表面を目視にて観察したところ、500回目あたりから導電性ペーストの残留が観察された。そして、残留した導電ペーストを1回ごとに除去して作業を続けたが、回数が進むごとに導電ペーストの残留量が増加した。また1000回の形成工程を行った後のシリコーンブランケットの表面を観察したところ、膨潤しているのが確認された。
【0055】
比較例2
シリコーンオイルの含有割合を、アクリル系樹脂100重量部に対して3重量部としたこと以外は実施例1と同様にして導電性ペーストを調製し、この導電性ペーストを使用したこと以外は実施例1と同様にして、導電パターンの形成工程を、同じ凹版、および同じシリコーンブランケットを用いて1000回、連続して行った。そして印刷1回目と1000回目の導電パターンを、電子顕微鏡を用いて観察したところ、印刷1回目の導電パターンは、図1とほとんど変わらない、エッジ部に形状の乱れのない良好なものであった。しかし印刷1000回目の導電パターンは、図2と同様に、エッジ部に形状の大きな乱れが観察された。
【0056】
また1000回の形成工程の間、シリコーンブランケットの表面を目視にて観察したところ、800回目あたりから導電性ペーストの残留が観察された。そして、残留した導電ペーストを1回ごとに除去して作業を続けたが、回数が進むごとに導電ペーストの残留量が増加した。また1000回の形成工程を行った後のシリコーンブランケットの表面を観察したところ、膨潤しているのが確認された。
【0057】
比較例3
シリコーンオイルの含有割合を、アクリル系樹脂100重量部に対して300重量部としたこと以外は実施例1と同様にして導電性ペーストを調製し、この導電性ペーストを使用したこと以外は実施例1と同様にして、導電パターンの形成工程を、同じ凹版、および同じシリコーンブランケットを用いて1000回、連続して行った。そして印刷1回目と1000回目の導電パターンを、電子顕微鏡を用いて観察したところ、印刷1回目の導電パターンから既に、図2と同様に、エッジ部に形状の大きな乱れが観察され、この状態が1000回目まで続いた。
【0058】
なお1000回の形成工程の間、シリコーンブランケットの表面を目視にて観察したが、その表面に導電性ペーストの残留は見られなかった。また1000回の形成工程を行った後のシリコーンブランケットの表面を観察したが、膨潤などは見られず、使用前の状態を維持していた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1で形成した印刷1回目の導電パターンの、とくにエッジ部の状態を示す平面図である。
【図2】本発明の比較例1で形成した印刷1000回目の導電パターンの、とくにエッジ部の状態を示す平面図である。
Claims (6)
- 導電成分とバインダ樹脂と、バインダ樹脂100重量部あたり8〜150重量部のシリコーンオイルとを含有しており、凹版の凹部に充てんしてパターン形成し、次いで形成した印刷パターンを、凹版から、少なくともその表面をシリコーンゴムにて形成した転写体の表面に転写させたのち、転写体から基材表面に転写させて、当該基材表面に、凹版のパターンに対応した導電パターンを形成するために用いられることを特徴とする導電性ペースト。
- シリコーンオイルを、バインダ樹脂100重量部あたり15〜100重量部含有する請求項1記載の導電性ペースト。
- バインダ樹脂がアクリル系樹脂であり、当該アクリル系樹脂を溶解する溶剤としてブチルカルビトールアセテートを含有する請求項1記載の導電性ペースト。
- 導電成分として、Cu、Ni、Au、Pb、Sn、Cr、Ag、Fe、Ti、Al、Co、Wからなる群より選ばれた1種の金属、2種以上の金属の合金、または2種以上の金属のめっき複合体からなる金属粉末を用いる請求項1記載の導電性ペースト。
- 導電成分がAg粉末であり、当該Ag粉末を、バインダ樹脂100重量部あたり500〜2000重量部含有する請求項4記載の導電性ペースト。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の導電性ペーストを凹版の凹部に充てんしてパターン形成し、次いで形成した印刷パターンを、凹版から、少なくともその表面をシリコーンゴムにて形成した転写体の表面に転写させたのち、転写体から基材表面に転写させて、当該基材表面に、凹版のパターンに対応した導電パターンを形成することを特徴とする導電パターンの形成方法。
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